JP4372285B2 - 加工安定性が改良されたポリカーボネート系高難燃樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繰り返しコンパウンディングや、材料の回収再使用、さらには射出成形等の成形加工による物性の低下が改善された非臭素、非塩素系のポリカーボネート系難燃樹脂組成物に関する。特に、高流動性と高耐衝撃性を併せ持ち、成形加工による物性の低下が改善された高度の難燃性を有するポリカーボネート系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート(PC)とABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)系樹脂に代表されるゴム強化スチレン系重合体からなる樹脂組成物に、難燃剤としてリン酸エステル化合物を配合した難燃ポリカーボネート系樹脂組成物は、流動性、耐衝撃性、耐光性等のバランスに優れており、非臭素、非塩素系の難燃材料として、電気製品、コンピュータ、プリンタ、ワープロ、コピー機等のOA機器のハウジング材料として幅広く利用されている。さらに近年、同材料には軽量薄肉化志向に伴い、高い流動性はもとより、剛性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性の更なる改良が強く求められている。
【0003】
一方、難燃剤としてリン酸エステル化合物を使用するPC/ABS系難燃材料に関する技術は、特開平2−32154号公報、特開平2−115262号、特開平6−240127号公報等に開示されている。しかしながら、上記材料において、しばしばリン酸エステルの加水分解や熱分解が原因と考えられる樹脂組成物の機械的物性の低下が生じている。例えば、成形用樹脂材料は染顔料着色のためにさらなるコンパウンディングが必要とされることがあるが、リン酸エステル難燃剤を使用する難燃ポリカーボネート系樹脂組成物では、この着色コンパウンディングにおいて伸びや耐衝撃性の低下が生じることがある。
【0004】
また、樹脂組成物ペレットから最終製品を成形加工する際において同様に物性の低下が生じることがあり、特にそのことは経済性を高めるために成形時に発生するスプル部やランナー部等の回収再使用材料を一部混合して使用される場合に生じやすい。更には、成形体とした後にも、特に成形体が高温高湿の環境下に曝された場合において、しばしば物性の低下が生じる場合がある。このような成形加工時及び成形後の物性低下は製品の信頼性を損なうものであり、その改善が強く望まれている。
【0005】
特に、最近の難燃PC/ABS系難燃材料は高い難燃性能と薄肉成形のための高い流動性、さらには高い剛性と高い難燃性が同時に求められるために、組成物中のPCの配合比率を高くするとともにリン酸エステル系難燃剤の配合比率を高くし、さらに高流動性を獲得するために主材料であるPCの分子量を低くした組成物構成が主流になりつつあり、このような組成物構成では繰り返し加工や高温高湿環境下に曝された場合の樹脂組成物の機械的性質の低下がさらに起こりやすくなる傾向にあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、繰り返しコンパウンディングや、材料の回収再使用、さらには射出成形等の成形加工による物性の低下が改善された、高い難燃性を有する非臭素、非塩素系のポリカーボネート系難燃樹脂組成物を提供することを目的とする。特に、成形加工による物性の低下が進行しやすい高流動性のポリカーボネート系難燃樹脂組成物に対して、繰り返しコンパウンディングや射出成形等の成形加工成形を行っても優れた耐衝撃性や伸び特性が維持される高い難燃性のポリカーボネート系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、リン酸エステル系難燃剤を使用するポリカーボネート系難燃樹脂組成物において、上記した高度な難燃性、高い流動性、高い伸び特性や耐衝撃性、高い剛性、高い耐熱性を同時に併せ持ち、さらには繰り返しコンパウンディングや、射出成形等の成形加工による物性の低下が改善された樹脂組成物は、組成物中のPCの配合比率を高くし、PCの分子量を低くし、さらに耐衝撃性改良剤を配合し、これに加えて低い酸価を有するリン酸エステルを難燃剤として使用することにより、達成できることを見い出した。
【0008】
ところで、特開平10−168227号公報には酸価が1未満のリン酸エステル系難燃剤を使用することにより耐熱水性、高温安定性に優れ金型付着物が低減できることが開示されており、さらに同公報の応用例4にはPC/ABS系材料に酸価が1未満のリン酸エステルを使用した結果、熱水環境における黄変が少なくさらに成形付着物が改善されることが記載されている。
【0009】
しかしながら、同公報の発明はポリフェニレンエーテル系樹脂を使用する樹脂組成物が中心であり、本発明が対象とするポリカーボネート系難燃樹脂組成物については、使用するリン酸エステルの酸価を低減させることにより繰り返しコンパウンディングや射出成形等の成形加工による機械的物性の低下を抑制でき、材料の信頼性を著しく高めることができるという驚くべきことは本発明以前には見出されていなかったのである。なお、同公報の応用例4で示されている樹脂組成物は樹脂成分中のPC配合量が65重量部(PC/ABS100重量部中では72.3重量部)であり難燃性が十分であるとはいえない。また、耐衝撃性や耐熱性が不十分である。
【0010】
本発明は、[1](A)ポリカーボネート樹脂75〜99重量部、(B)スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂及び/またはブチルアクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂24〜3重量部、(C)C(a)(c1)芳香族ビニル単量体成分及び(c2)シアン化ビニル単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体と、C(b)(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体との組み合わせであって、該C(a)成分と該C(b)成分の全量に対して該C(b)成分が60〜20wt%である組み合わせ1〜25重量部、及び(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、(D)酸価が1未満のリン酸エステル系難燃剤8〜30重量部からなるポリカーボネート系難燃樹脂組成物、
【0011】
[2]C(b)成分がメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体である上記[1]記載の樹脂組成物、
[3](B)成分がスチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂である上記[1]又は[2]記載の樹脂組成物、
【0012】
[4](A)成分の重量平均分子量が15,000以上30,000以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物、
【0013】
[5](A)成分の全末端にしめるフェノール性水酸基末端比率が20〜80モル%である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物、
【0014】
[6](B)成分の重量平均分子量が20,000以上200,000以下の共重合体である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物、
【0015】
[7](D)リン酸エステル系難燃剤が、下記式(1)で表される1種または2種以上のオリゴマー系リン酸エステル化合物である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物、
【0016】
【化3】
(Ra,Rb,Rc,Rdはそれぞれ独立してアリール基であり、その一つ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。nは自然数、Xは2価のフェノール類より誘導される芳香族基、j,k,l,mはそれぞれ独立して0または1である。平均縮合度Nはnの平均値である。)
【0017】
[8](D)リン酸エステル系難燃剤が、下記式(2)で表される1種または2種以上のオリゴマー系リン酸エステル化合物である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物、
【0018】
【化4】
(Ra,Rb,Rc,Rdはそれぞれ独立してアリール基であり、その一つ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。nは自然数、j,k,l,mはそれぞれ独立して0または1である。平均縮合度Nはnの平均値である。)
【0019】
[9]さらに(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、ポリテロラフルオロエチレン0.05〜5重量部を含む上記[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物である。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)ポリカーボネート樹脂は、下記式(3)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
【0021】
【化5】
(式中、Arは、二価の芳香族残基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレンや、下記式(4)で表されるものが挙げられる。)
【0022】
【化6】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれアリーレン基である。例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表し、Yは下記式(5)で表されるアルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0023】
【化7】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、アルコキシ基で置換されていてもよく、kは3〜11の整数であり、R5及びR6は、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に水素原子、または低級アルキル基、アリール基であって、場合によりハロゲン原子、アルコキシ基で置換されていてもよく、Xは炭素原子を表す。)
また、下記式(6)で示される二価の芳香族残基を共重合体成分として含有していても良い。
【0024】
【化8】
(式中、Ar1、Ar2は式(3)と同じ。Zは単なる結合、または、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、−CON(R1)−(R1は式(5)と同じ)等の二価の基である。)
これら二価の芳香族残基の例としては、下記式(7)及び下記式(8)で表されるもの等が挙げられる。
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10シクロアルキル基またはフェニル基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R8はそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
【0027】
なかでも、下記式(9)で表されるものが好ましい一例である。特に、下記式(9)で表されるものをArとする繰り返しユニットを85モル%以上含むものが好ましい。
【0028】
【化11】
【0029】
また、本発明に用いることができるポリカーボネートは、三価以上の芳香族残基を共重合成分として含有していても良い。
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール性水酸基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。アリールカーボネート末端基は、下記式(10)で表され、具体例としては、例えば、下記式(11)が挙げられる。
【0030】
【化12】
(式中、Ar3は一価の芳香族残基であり、芳香環は置換されていても良い。)
【0031】
【化13】
アルキルカーボネート末端基は下記式(12)で表され、具体例としては、例えば下記式(13)等が挙げられる。
【0032】
【化14】
(式中、R9は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。)
【0033】
【化15】
これらの中で、フェノール性水酸基、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート等が好ましく用いられる。
【0034】
本願において、フェノール性水酸基末端と他の末端との比率は、特に限定されないが、全末端にしめるフェノール性水酸基末端比率が20〜80モル%の範囲にあることが好ましい。
フェノール性水酸基末端量の測定方法は、一般にNMRを用いて測定する方法や、チタン法や、UVもしくはIR法で求めることができる。
【0035】
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、13,000〜50,000の範囲であるが、好ましくは15,000〜30,000であり、さらに好ましくは17,000〜25,000であり、特に好ましくは18,500〜23,000である。13,000未満では耐衝撃性が不十分であり、また、50,000を越えると、流動性が悪く成形加工が困難である。
【0036】
本発明における重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行われ、測定条件としては、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
【0037】
これらポリカーボネートは、公知の方法で製造することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体と反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンを水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(ホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートと反応させるエステル交換法(溶融法)、結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033、1−271426、3−68627等)等の方法により製造することができる。
【0038】
好ましいポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂があげられる。
本発明では異なる構造や分子量の2種以上のポリカーボネート樹脂を組み合わせて使用することも可能である。
【0039】
本発明における前記(A)の割合は、前記の(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対し、75重量部〜99重量部であり、好ましくは78〜95重量部、さらに好ましくは80〜90重量部である。成分(A)が75重量部未満であると難燃性と耐熱性が不十分であり、一方、99重量部を超えると流動性が不足する。
【0040】
本発明における(B)スチレン系重合体とは、(b1)芳香族ビニル単量体成分を主体とする重合体、及び/または、(b1)芳香族ビニル単量体成分及び(b2)シアン化ビニル単量体成分を含む共重合体である。成分(B)は必ずしも含まれなくてもよいが、成分(B)により、樹脂組成物の流動性を改善することができる。
【0041】
ここで、(b1)芳香族ビニル単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルキシレン、p−ターシャリーブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等を挙げることができ、これらを1種または2種以上使用する。好ましくはスチレン、α−メチルスチレンである。
【0042】
また、(b2)シアン化ビニル単量体成分としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらを1種または2種以上使用する。
【0043】
スチレン系重合体が(b1)と(b2)を含む共重合体である場合は該共重合体中の(b1)/(b2)の組成比は特に限定されないが、好ましくは(b1)が95〜50重量%、(b2)が5〜50重量%であり、更に好ましくは、(b1)が92〜65重量%、(b2)が8〜35重量%である。
【0044】
また、成分(B)では本発明の趣旨を妨げない範囲で、上記の成分(b1)成分及び(b2)成分の他にこれらの成分と共重合可能な単量体を使用することができる。そのような共重合可能な単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート単量体成分好ましくはブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体が挙げられる、これらの単量体は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
(B)成分の好ましい例として、スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂(SAN)やブチルアクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂(BAAS)等を挙げることができ、中でもBAAS(好ましくはブチルアクリレート単量体成分が2〜20重量%)は樹脂組成物の流動性を改良する上で特に好適である。
【0046】
成分(B)の製造方法としては、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など通常公知の製造方法を挙げることができる。
成分(B)の重量平均分子量(Mw)は、通常、20,000〜200,000の範囲である。好ましくは50,000〜180,000であり、さらに好ましくは70,000〜150,000であり、特に好ましくは80,000〜140,000である。20,000未満では耐衝撃性が不十分であり、また、200,000を越えると、高流動の組成物を得ることが困難である。
【0047】
成分(B)の割合は、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対し、24重量部〜0重量部であり、好ましくは20〜1重量部、さらに好ましくは15〜3重量部である。成分(B)が配合されることにより流動性が向上するが、24重量部を超えると耐熱性や難燃性が不足する。成分(B)は異なる構造や分子量の2種以上の成分(B)を組み合わせて使用することも可能である。
【0048】
本発明における(C)グラフト共重合体は(c1)芳香族ビニル単量体成分、(c2)シアン化ビニル単量体成分、および(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分のうちの少なくとも1種あるいは2種以上が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合されたグラフト共重合体である。
【0049】
(c1)芳香族ビニル単量体成分および(c2)シアン化ビニル単量体成分は、前記の成分(B)で示した(b1)および(b2)を挙げることができる。
また、(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート単量体を挙げることができ、これらを1種または2種以上使用する。好ましくはメチルメタクリレートである。
【0050】
(c4)のゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば用いることができる。具体的には、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合ゴム等のブロック共重合体及びそれらの水素添加物、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレート成分を含む複合ゴム(シリコン・アクリル複合ゴム)等を使用することができる。これらの重合体の中で、好ましくは、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリアクリル酸ブチル、シリコン・アクリル複合ゴムが挙げられる。
【0051】
成分(C)は、上記(c4)ゴム質重合体に、(c1)芳香族ビニル単量体成分、(c2)シアン化ビニル単量体成分、および(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分のうちの少なくとも1種あるいは2種以上が、さらに必要に応じて、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体成分の1種以上を、塊状重合、懸濁重合、塊状・懸濁重合、溶液重合あるいは乳化重合等の方法、特に乳化重合でグラフト重合させてなるものである。
【0052】
ここに、(c4)ゴム質重合体の使用量は通常、10〜90重量%、好ましくは30〜85重量%、更に好ましくは40〜82重量%であり、ゴム質重合体としてブタジエン系重合体を用いる場合にはブタジエン系重合体のブタジエン成分の割合は50重量%以上が好ましい。成分(C)におけるゴム質重合体の使用量が10重量%未満では耐衝撃性の改良効果が低く、90重量%を超えると組成物中での(C)成分の分散が不十分となり好ましくない。
【0053】
また本発明では、成分(C)として、乳化重合により得られた粒子状のグラフト共重合体を好適に使用することができるが、この場合にグラフト共重合体の平均粒径は0.05〜1.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.8μmであり、特に好ましくは0.15〜0.6μmである。0.05μm未満になると樹脂組成物の耐衝撃性の改良効果が不足し、1.5μmを超えると流動性や成形品の外観が悪くなる。
【0054】
本発明で用いる成分(C)の好ましい例として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体(MB)、アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・アクリル系弾性重合体・スチレン共重合体を挙げることができる。
【0055】
本発明では(C)成分として、(c1)芳香族ビニル単量体成分及び(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体、または、(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体であって、さらに(C)成分中における(c4)成分の重量比率が70wt%以上であるグラフト共重合体を使用することが特に好ましい。これらの中で、とりわけ、(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフトされ、かつ、(c4)成分の重量比率が70wt%以上であるグラフト共重合体、中でも(c3)成分としてメチルメタクリレートがグラフトされ、(c4)ゴム質重合体成分の重量比率が70wt%以上であるグラフト共重合体を使用することが高流動性と耐衝撃性を高レベルでバランスさせる上で特に好ましい。
【0056】
特に好ましい(C)成分の例として、スチレン・ブタジエン系ゴムあるいはブタジエン系ゴムにメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体やシリコン・アクリルゴムにメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体を好適に使用することができ、例えば、三菱レーヨン(株)から製造されている、「メタブレンC−223A」、「メタブレン C−323A」、「メタブレン S−2001」、呉羽化学工業(株)から製造されている「クレハパラロイドEXL2600シリーズ」(いずれも商品名)は特に好適に使用される。
【0057】
成分(C)は1種、または2種以上の組み合わせで使用することができるが、その配合量は(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対し、1重量部〜25重量部である。好ましくは2〜20重量部、さらに好ましくは3〜15重量部である。成分(C)が1重量部未満であると耐衝撃性の改良効果がほとんどなく、一方、25重量部を超えると流動性や剛性が不足する。
【0058】
特に、(C)成分として、ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体成分及びシアン化ビニル単量体成分がグラフト重合された共重合体、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(以下C(a)成分と称す)と、ゴム質重合体にメチルメタクリレートがグラフト重合された共重合体、例えばスチレン・ブタジエン・メチルメタクリレート共重合体やメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、シリコン・アクリルゴムにメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体(以下C(b)成分と称す)を組み合わせて使用することにより、流動性と耐衝撃性が高レベルでバランスされた樹脂組成物を得るのに好適である。
【0059】
また、C(a)とC(b)を組み合わせて使用することにより組成物総量中に占めるゴム成分量を少なくして耐衝撃性と流動性のバランスを高レベルに維持できるので、組成物の剛性を高めることができ、薄肉成形により適した組成物とすることができる。この場合、C(a)とC(b)の組成比は特に限定されないが、C(a)とC(b)の全量に対してC(b)成分は90〜10wt%が好ましく、さらに好ましくは70〜20wt%、より好ましくは60〜30wt%である。
【0060】
本発明に用いられる(D)リン酸エステル系難燃剤は、酸価が1未満の下記式(1)で表される1種または2種以上のオリゴマー系リン酸エステル化合物、及び/または下記式(14)で表される1種または2種以上のモノ系リン酸エステル化合物である。
【0061】
【化16】
(Ra,Rb,Rc,Rdはそれぞれ独立してアリール基であり、その一つ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。nは自然数、Xは2価のフェノール類より誘導される芳香族基、j,k,l,mはそれぞれ独立して0または1である。平均縮合度Nはnの平均値である。)
【0062】
【化17】
(Re,Rf,Rgはそれぞれ独立してアリール基、または2価のフエノ一ル類より誘導される芳香族基であり、そのーつ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。q,r,sはそれぞれ独立して0または1である。)
【0063】
オリゴマー系リン酸エステル化合物は上記式(1)で表され、該式(1)における置換基Ra,Rb,Rc,Rdは、アリール基でありその一つ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。置換基Ra,Rb,Rc,Rdがアルキル基やシクロアルキル基である化合物は射出成形を行う際の成形機内の溶融樹脂の滞留安定性が不十分であり、樹脂の物性の低下を招きやすい。
【0064】
置換基Ra、Rb、Rc、Rdの一つ以上の水素が置換されている場合、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン化アリール基等が挙げられ、またこれらの置換基を組み合わせた基(例えばアリールアルコキシアルキル基等)又はこれらの置換基を酸素原子、硫黄原子、窒素原子等により結合して組み合わせた基(例えば、アリールスルホニルアリール基等)を置換基として用いてもよい。
【0065】
好ましいアリール基は、フェニル基、クレジル基、キシリル基、プロピルフェニル基、およびブチルフェニル基であり、特に流動性と難燃性が共に優れるのはフェニル基である。また、置換基Ra,Rb,Rc,Rdは同じであっても、それぞれが異なっていても良い。
【0066】
また、上記式(1)におけるXは、2価のフェノール類より誘導される芳香族基であり、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノール、4−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールSスルフィド、ビスフェノールF、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等から誘導される芳香族基を挙げることができるが、本発明では特に下記式(2)
【0067】
【化18】
(Ra,Rb,Rc,Rdはそれぞれ独立してアリール基であり、その一つ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。nは自然数、j,k,l,mはそれぞれ独立して0または1である。平均縮合度Nはnの平均値である。)
で表される、Xがジフェニロールジメチルメタン基(ビスフェノールAより誘導される芳香族基)であるオリゴマー系リン酸エステル化合物を使用することにより、滞留安定性や耐加水分解性を向上させ、さらに成形の際に金型表面に付着するモールドデポジット(MD)の発生を低減化することができる。
【0068】
式(1)及び式(2)で表されるオリゴマー系リン酸エステル化合物は、通常、式(1)及び式(2)において異なるnの値(nは自然数)を有する化合物の混合物として使用される場合が多い。平均縮合度Nはnの平均値である。Nはゲルパーミエーションクロマトグラフィーあるいは液体クロマトグラフィーにより異なるnを有するそれぞれの成分の重量分率を求め、nの重量平均により算出される。検出器はUV検出器、あるいはRI検出器が使用される。ただし、本発明ではnが0の成分、すなわち分子中のリン原子が1つのみである化合物はNの計算から除外する。
【0069】
オリゴマー系リン酸エステルのnの平均値N(平均縮合度)は、通常1以上5以下であり、1以上2以下が好ましく、1以上1.5以下が更に好ましく、1以上1.2未満が特に好ましい。Nが小さいほど樹脂との相溶性に優れ、流動性に優れ、かつ難燃性が高い。特に、N=1の化合物は樹脂組成物における難燃性と流動性のバランスが特に優れる。Nが5以上である場合は粘度が大きくなり、高流動の組成物、特に高せん断速度領域での流動性が低下し、また、難燃性が低下する。
【0070】
Nが1以上1.2未満であるオリゴマー系リン酸エステル化合物を得る方法としては、例えば、
[ア]オキシハロゲン化リンにフェノールや2,6−キシレノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物をルイス酸触媒の下で反応させ、予めジアリールホスホロハリデードを得て、引き続いてこれに、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物(2価フェノール化合物)をルイス酸触媒の下で反応させて得る方法。
【0071】
[イ]芳香族ジヒドロキシ化合物とそれに対して大過剰(約3倍モル当量以上)のオキシハロゲン化リンをルイス酸触媒の下で反応させ、引き続いて過剰のオキシハロゲン化リンを加熱減圧下で完全に除去した後に、上記反応生成物に芳香族モノヒドロキシ化合物をルイス酸触媒の下で反応させて得る方法。
等が挙げられる。
【0072】
モノ系リン酸エステル化合物は前記式(14)で表され、該式(14)で表されるモノ系リン酸エステル化合物における、置換基Re、Rf、Rgはそれぞれ独立して、前記式(1)における置換基Ra、Rb、Rc、Rdで示したもの他、2価フェノール類から誘導される芳香族基が含まれる。具体的な好ましいモノ系リン酸エステル化合物の例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0073】
本発明で用いられるリン酸エステル化合物は、その酸価が1mgKOH/g未満であり、好ましくは0.8mgKOH/g未満であり、更に好ましくは0.6mgKOH/g未満であり、特に好ましくは0.4mgKOH/g未満である。
【0074】
本発明者らによる検討結果では、リン酸エステル化合物の加水分解速度は温度とリン酸エステル化合物の初期酸価の値に大きく依存し、これと対応してリン酸エステル化合物を難燃剤として使用するポリカーボネート系樹脂組成物においても初期酸価が低いリン酸エステル化合物を使用することにより、繰り返しコンパウンディングや射出成形等の成形加工による物性の低下が少ない樹脂組成物を得ることができる。リン酸エステル化合物の酸価が1mgKOH/g以上である場合は、繰り返しコンパウンディングや射出成形等の成形加工による物性の低下が顕著となり、主材料であるPCの分子量の低下が顕著となる。
【0075】
リン酸エステル化合物(D)の配合量は(A)と(B)と(C)成分の合計100重量部に対して、8〜30重量部である。尚、本発明の樹脂組成物では(A)、(B)、(C)以外のその他の熱可塑性樹脂を含むことができるが、その場合におけるリン酸エステル化合物(D)の配合量は(A)、(B)、(C)及びその他の熱可塑性樹脂成分の合計を100重量部として、8〜30重量部配合される。(D)成分の使用量が8重量部未満では高い難燃効果が得られ難い。一方、30重量部を超えると樹脂組成物の耐衝撃性や耐熱性を低下させる。好ましくは9〜20重量部の範囲であり、特に好ましい範囲は、10〜15重量部の範囲である。
【0076】
また、本発明の樹脂組成物には滴下防止剤を用いることは効果的であり、好ましい。滴下防止剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のパーフルオロアルカンポリマー、シリコンゴム、ポリカーボネート・ジオルガノシロキサン共重合体、シロキサンポリエーテルイミド、液晶ポリマー、シリコン・アクリル複合ゴムなどがある。特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンであり、(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対して0.05〜5重量部の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、更に好ましくは0.2〜1重量部である。0.05重量部未満の場合は、燃焼時の滴下防止効果が不十分であり、高い難燃性が得られない。また、5重量部を超える場合は成形加工性および剛性が低下する。
【0077】
また、本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の加工安定性をさらに高め、熱劣化を抑制する目的で各種の酸化防止剤や安定剤を使用することができる。
酸化防止剤としては、分子量500以上のフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、及び、ホスファイト系酸化防止剤等があり、特にフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0078】
フェノール系酸化防止剤としてはフェノール系化合物の−OH基の性質を遮蔽した分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物が好ましく、特にn−オクタデシル−3−(3’,5’−ジターシャリーブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリーブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトルテトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0079】
チオエーテル系酸化防止剤としては、ジアルキル−3,3’−チオジプロピネート、テトラキス[メチレン−3−(アルキルチオ)プロピオネート]メタン、ビス[2−メチル−4−(3−アルキル−チオプロピオニルオキシ)−5−ターシャリーブチルフェニル]スルフィドが好ましい。
【0080】
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、分子内にペンタエリスリトール骨格を有するものが好ましく、特にジ(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0081】
これらの成分は、通常、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して0.01〜0.8重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、更に好ましくは0.1〜0.6重量部で使用される。
【0082】
また、本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の改質を行う目的で、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、雲母、などの無機フィラーや炭素繊維、木炭等の強化剤、その他の熱可塑性樹脂を添加することができる。ここで、その他の熱可塑性樹脂とはポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリサルホン、シンジオタクテックポリスチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等のスーパーエンジニアリングプラスチック類等を挙げることができる。好ましい添加量は、(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対して、0.01〜60重量部、より好ましくは5〜55重量部である。
【0083】
さらに必要に応じて他の添加剤、すなわち、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化チタン、表面改質剤、分散剤、可塑剤などを添加することができる。
本発明における樹脂組成物の製造方法については、特に限定されず、通常の方法、例えば、押出混練によるメルトブレンド等により製造することができる。さらに、これらの熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の成形方法は、押し出し成形、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト成形等があり、特に限定されない。
【0084】
【発明の実施の形態】
以下実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明する。用いた材料を以下に示す。
1.樹脂成分((A)、(B)、及び(C)成分)
(ポリカーボネート:PC)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから溶融エステル交換法により製造されたMwが21,300であり、ヒドロキシ基末端量が32%のビスフェノールA系ポリカーボネート
(アクリロニトリル・スチレン共重合体:SAN)
アクリロニトリル単位26.0wt%、スチレン単位74.0wt%からなるMwが128,000のアクリロニトリル・スチレン共重合体
【0085】
(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体ゴム:ABS)
10メッシュ残分が、90%未満であるパウダー状ABS樹脂(三菱レーヨン(株)社製、RC)
(メチルメタクリレート・スチレン・ブタジエン共重合体ゴム:MBS)
最外層(シェル層)がポリメチルメタクリレートであるメチルメタクリレートグラフト・スチレン・ブタジエンゴム(三菱レーヨン(株)社製、商品名 メタブレンC−223A)
【0086】
(メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体ゴム:MB)
最外層(シェル層)がポリメチルメタクリレートであるメチルメタクリレートグラフト・ブタジエンゴム(呉羽化学工業(株)社製、商品名 クレハパラロイドEXL2602)
(メチルメタクリレートグラフト・シリコンアクリル複合ゴム:シリコンアクリル複合ゴム)
最外層がポリメチルメタクリレートであるポリオルガノシロキサン成分およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互進入網目構造を有している複合ゴム(三菱レーヨン(株)社製、商品名 メタブレンS−2001)
【0087】
2.リン酸エステル成分((D)成分)
(リン酸エステル1(D1))
下記参考例1の方法により得られたリン酸エステル
【0088】
(参考例1)
攪拌機、コンデンサを装備した3リットルのガラス製丸底フラスコを用いて、乾燥処理を施したビスフェノールA 379g(1.66モル)に対し、蒸留精製したオキシ塩化リン 906g(5.91モル)と塩化マグネシウム 2.83g(0.025モル)を加え、オイルバスにより徐々に加熱しながら攪拌し、130℃まで昇温し、さらに8時間反応させた。反応で副生する塩酸はアルカリトッラプに導いて処理した。得られた反応混合物からオキシ塩化リンを140℃、10mmHgの条件で攪拌しながら2時間減圧除去した。その後精製フェノール 667g(7.08モル)を攪拌しながら徐々に加え、150℃で10時間反応させ、反応を完結させた。
【0089】
反応終了後に反応混合物を90℃において0.1N塩酸溶液で1回、さらに続けて90℃において純水で3回バッチ洗浄処理を行った。洗浄後の反応生成物は、真空乾燥機を用いて残存する水分及びフェノールを完全に除去し、下記式(15)で表されるオリゴマー系リン酸エステル化合物を得た。生成物の二量体(nが1の成分)含有量を求めたところ83wt%であり、その平均縮合度Nは、1.15であった。また、酸価は0.21mgKOH/gであった。
【0090】
【化19】
【0091】
(リン酸エステル2(D2))
参考例1と同様の方法により得られたリン酸エステルを、90℃において純水を加えて攪拌し、部分的に加水分解処理を行うことにより酸価が1.52mgKOH/gのリン酸エステルとしたもの。
【0092】
(リン酸エステル3(D3))
参考例1と同様の方法により得られたリン酸エステルを、リン酸エステル2よりもさらに加水分解を進行させ、酸価を3.5mgKOH/gとしたもの。
【0093】
(リン酸エステル4(D4))
大八化学工業(株)社製 商品名 CR733S
平均縮合度Nが1.41の式(16)で表されるオリゴマー系リン酸エステル。酸価は0.72mgKOH/gであった。
【0094】
【化20】
【0095】
(リン酸エステル5(D5))
大八化学工業(株)製 商品名 PX−200
平均縮合度Nが1.00の下記式(17)で表されるオリゴマー系リン酸エステル。酸価は0.75mgKOH/gであった。
【0096】
【化21】
【0097】
3.その他の成分
(フッ素系樹脂:PTFE)
三井デュポンフロロケミカル社製 商品名 テフロン30J
PTFE固形分の含有量が60wt%であるPTFE水性ディスパージョン
【0098】
実施例及び比較例における試験項目の内、次の試験項目は以下に示す方法で行った。
(1)難燃性試験
得られたペレットを乾燥し、射出成形機(オートショット50D、ファナック社製)で成形し、燃焼試験用験片形状成形体を作成した。難燃性評価はUL94規格垂直燃焼試験(UL94)に基づいてランク付けを行った。
(2)MFR
ASTM D1238に準じて、220℃、10kg荷重条件で測定した。
(単位:g/10min)
(3)アイゾット衝撃試験
ASTM D256に準じて、1/8インチ厚、ノッチ付きで測定した。(単位:kgf・cm/cm)
【0099】
【実施例】
参考例1、2、及び実施例3、及び比較例1、2
表1の参考例1、2、及び実施例3、並びに比較例1、2に掲げる組成(単位は重量部)で2軸押出機(ZSK−25、W&P社製)でシリンダー設定温度250℃で溶融混練し、ペレタイズを行うことにより樹脂組成物ペレットを調製した。オリゴマー系リン酸エステル化合物は押出機の中段より、ギアポンプで圧入して配合した。得られた樹脂組成物のペレットを80℃で2時間温風乾燥させた後、さらに2軸押出機に投入し、シリンダー設定温度を250℃として溶融混練を行い、ペレットとした。この操作を4回続けて実施し、繰り返し混練操作に伴う樹脂組成物の性能の変化を調べた。
【0100】
表1の下段にそれぞれのMFRとアイゾット衝撃強度の繰り返し押出操作依存性を示す。アイゾット衝撃試験用の1/8インチ厚短冊片は射出成形機(オートショット50D、ファナック社製)を用いて240℃の設定温度(金型温度は60℃)で成形した。酸価が0.21mgKOH/gであるリン酸エステル1を使用した実施例3は繰り返し押出しに対するアイゾット衝撃値及びMFRの変化が少なく加工安定性に優れていた。一方、比較例1、2は繰り返し押出しに対するアイゾット衝撃強度の低下、並びにMFRの増大が顕著であった。尚、表中に示すUL94難燃レベルは1/10インチ厚短冊片について行った結果である。
【0101】
実施例4〜6、及び比較例3〜5
表2の実施例4〜6、並びに比較例3〜5に掲げる組成で2軸押出機によりシリンダー設定温度250℃で溶融混練し、ペレタイズを行うことにより樹脂組成物ペレットを調製した。
得られた樹脂組成物のペレットを乾燥し、240℃、260℃、280℃の設定温度(金型温度は60℃)で射出成形機で1/8インチ厚短冊片を成形し、アイゾット衝撃試験を行った。さらに、各温度で成形した1/8インチ厚短冊片を細かく切り出して、MFR測定を行った。
【0102】
また、UL94難燃レベルは240℃設定温度で成形した1/10インチ厚短冊片について行った。耐熱性(HDT)は240℃設定温度で成形した1/8インチ厚試験片で18.6kgf/cm2でASTM D684に準じて行った。
結果を表2の下段に示す。表2の実施例4、5、6は高い成形温度で成形を行っても耐衝撃性の低下が小さく、さらに、MFRの増大も小さいことがわかる。一方、比較例3、4は成形温度の上昇に伴い、アイゾット衝撃強度が著しく低下し、さらにMFRの増大が顕著であった。また、比較例5は難燃レベル及び耐熱性が劣る。
【0103】
実施例7、8、及び比較例6、7
表3の実施例7、8、並びに比較例6、7に掲げる組成で2軸押出機によりシリンダー設定温度250℃で溶融混練し、ペレタイズを行うことにより樹脂組成物ペレットを調製した。
得られたペレットを乾燥し、射出成形機を用いてシリンダー設定温度240℃にて1/8インチ厚短冊片を調製した。得られた試験片は60℃、85RH%の環境下に放置し、200時間後に取り出して、アイゾット衝撃試験を実施した。
【0104】
さらに、60℃、85RH%の環境下に200時間放置後の試験片を切り出して塩化メチレンに溶解させ、濾過処理を行って不溶成分を除去した後、アセトン中で再沈殿させることによりポリカーボネート(PC)成分を取り出し、その分子量測定をGPCを用いて行った。
結果を表3の下段に示す。実施例7〜9は高温高湿環境下に200時間放置した後もアイゾット強度が維持され、さらにPCの分子量が維持されていた。一方、比較例6、及び7はアイゾット衝撃値が著しく低下し、さらにPCの分子量の低下がみられる。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【発明の効果】
以上に示すように、本発明により、繰り返しコンパウンディングや、材料の回収再使用、さらには射出成形等の成形加工による物性の低下が改善された、高い難燃性を有する非臭素、非塩素系のポリカーボネート系難燃樹脂組成物を提供することができる。
Claims (9)
- (A)ポリカーボネート樹脂75〜99重量部、(B)スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂及び/またはブチルアクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂24〜3重量部、(C)C(a)(c1)芳香族ビニル単量体成分及び(c2)シアン化ビニル単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体と、C(b)(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体との組み合わせであって、該C(a)成分と該C(b)成分の全量に対して該C(b)成分が60〜20wt%である組み合わせ1〜25重量部、及び(A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、(D)酸価が1未満のリン酸エステル系難燃剤8〜30重量部からなるポリカーボネート系難燃樹脂組成物。
- C(b)成分がメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
- (B)成分がスチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- (A)成分の重量平均分子量が15,000以上30,000以下である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (A)成分の全末端にしめるフェノール性水酸基末端比率が20〜80モル%である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (B)成分の重量平均分子量が20,000以上200,000以下の共重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (A)、(B)及び(C)の合計100重量部に対し、ポリテロラフルオロエチレン0.05〜5重量部を含む請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
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