JP4326625B2 - 耐暗所変色性に優れた高流動の難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温成形においても物性の低下が少なく、さらに耐暗所変色性に優れ、かつ、成形の際に成形金型に発生するモールドデポジット(MD)の発生量が極めて少なく、さらには薄肉成形に適した高い流動性と高度な難燃性を有した難燃性のポリーカーボネート系の樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート(PC)にABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)系樹脂と有機リン系難燃剤をブレンドした樹脂組成物(難燃PC/ABS系アロイ)は、非ハロゲン系の難燃材料であり、かつ、機械的特性や耐熱性や耐光性に優れるので、電気製品、コンピュータ、プリンタ、ワープロ、コピー機等のOA機器のハウジング材料として幅広く利用されている。
【0003】
近年、OA機器のハウジングは軽量薄肉化が強く求められるようになり、難燃PC/ABS系アロイは、薄肉成形のための高い流動性と併せて、薄肉の成形体においても優れた難燃性能を発現する材料の開発が求められている。
流動性と耐衝撃性と難燃性が高度にバランスされた難燃PC/ABS系組成物に関する技術は、特開平6−240127号公報、特開平7−82466号公報、特開平8−127686号公報、特開平8−25366号公報等に開示されている。
【0004】
高い流動性を有する難燃PC/ABS系アロイのデザインは、組成物中のPCの分子量を低くし、かつその組成比を高くした組成物構成が主流になりつつある。また、PCの分子量が低くなることによって生じる耐衝撃性の低下をポリオルガノシロキサン及びポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴムにビニル系単量体がグラフトしてなる複合ゴム系グラフト共重合体を配合する技術が開示されている。このような高流動化のために低分子量のPCを主体成分とした難燃PC/ABS系アロイにおいては、加工時、特に高温で成形した場合に樹脂成分やゴム成分の熱劣化により、物性低下が著しい場合がある。薄肉の成形体を得るためには溶融樹脂の流動性を向上させる方法として、しばしば成形温度を高温に設定する場合があるが、難燃PC/ABS系アロイでは高温成形における物性の低下が生じることにより成形加工範囲が制約されることがある。
【0005】
このため、樹脂やゴム成分の熱劣化を防ぐために酸化防止剤が配合されるが、酸化防止剤を配合することにより、しばしば組成物に暗所変色が発生することがある。暗所変色は製品の色調を損なうことになるのでその改良が望まれる。
また、高流動性を有する組成物を得るためには使用する有機リン系難燃剤が低粘度であることが望ましい。特に組成物におけるPCの組成比が高い場合は、有機リン系難燃剤自身の粘性が組成物としての流動性に与える影響が大きくなる。従って、高流動性の組成物を得るためにはオリゴマー系有機リン化合物よりも粘性が低いモノ系有機リン化合物を使用することがその改良効果は一般に高い。しかしながら、モノ系有機リン化合物を難燃剤として使用すると成形時に金型表面に付着するMDの発生量が多いという欠点がある。特開平7−82466号公報、ならびに特開平8−25366号公報では有機リン系難燃剤としてオリゴマー系有機リン化合物とモノ系有機リン化合物を併用した組成物が開示されているが、同組成物ではモノ系有機リン化合物の配合量が多いために成形時に金型表面に付着するMDの発生量は依然として多く、その改良が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高温成形においても物性の低下が少なく、さらに耐暗所変色性に優れ、かつ、成形の際に成形金型に発生するモールドデポジット(MD)の発生量が極めて少なく、さらには薄肉成形に適した高い流動性と高度な難燃性を有した難燃性のポリーカーボネート系の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オリゴマー系有機リン化合物を主体とした有機リン系難燃剤全量に対して数wt%のモノ系有機リン化合物を併用し、さらに酸化防止剤を配合することにより、高温成形における物性の低下が抑制され、かつ組成物の暗所変色性が著しく改善された組成物が得られること、また少量のモノ系有機リン化合物を配合では成形の際に成形金型に発生するMDの発生量が極めて低レベルであること、さらに難燃剤であるオリゴマー系有機リン化合物の平均縮合度Nを1以上1.2未満に制御することにより、高い流動性と高度な難燃性を有する難燃PC/ABSアロイが得られること、等を見い出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、[1](A)ポリカーボネート樹脂50〜98重量部、(B)芳香族ビニル単量体成分、及び(b2)シアン化ビニル単量体成分を含む共重合体49〜0.1重量部、(C)(c1)芳香族ビニル単量体成分、(c2)シアン化ビニル単量体成分、及び(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分のうちの少なくとも1種あるいは2種以上が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体1〜30重量部を含み、さらに(A)、(B)、及び(C)の合計100重量部に対して、(D)(d1)式(3)で表される1種または2種以上のオリゴマー系有機リン化合物99〜93wt%と、(d2)式(2)で表される1種または2種以上のモノ系有機リン化合物1〜7wt%(ただし、(d1)と(d2)の合計を100wt%とする)の組み合わせからなる有機リン化合物5〜20重量部、さらに(E)酸化防止剤0.01〜0.8重量部からなる難燃性樹脂組成物、
【0009】
【化4】
【0010】
【化5】
【0013】
[2](A)成分の重量平均分子量が15,000以上25,000以下であり、(B)成分の重量平均分子量が50,000以上150,000以下である上記[1]記載の難燃性樹脂組成物、[3](C)成分が、(c1)芳香族ビニル単量体成分および(c2)シアン化ビニル単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体と、(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体の組み合わせからなることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の難燃性樹脂組成物、[4]成分(d1)が平均縮合度Nが1以上1.2未満である上記[1]、[2]および[3]のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物、[5](E)成分が分子量が500以上のフェノール系酸化防止剤である上記[1]、[2]、[3]および[4]のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物、[6]さらにポリテトラフルオロエチレンを含む上記[1]、[2]、[3]、[4]および[5]のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物、である。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂(A)は、式(4)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
【0015】
【化7】
【0016】
(式中、Arは、二価の芳香族残基であり、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレンや、式(5)で表されるものが挙げられる。)
【0017】
【化8】
【0018】
(式中、Ar1及びAr2は、それぞれアリーレン基である。例えばフェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ピリジレン等の基を表し、Yは式(6)で表されるアルキレン基または置換アルキレン基である。)
【0019】
【化9】
【0020】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基であって、場合によりハロゲン原子、アルコキシ基で置換されていてもよく、kは3〜11の整数であり、R5及びR6は、各Xについて個々に選択され、お互いに独立に水素原子、または低級アルキル基、アリール基であって、場合によりハロゲン原子、アルコキシ基で置換されていてもよく、Xは炭素原子を表す。)
また、式(7)で示される二価の芳香族残基を共重合体成分として含有していても良い。
【0021】
【化10】
【0022】
(式中、Ar1、Ar2は式(4)と同じ。Zは単なる結合、または、−O−、−CO−、−S−、−SO2−、−CO2−、−CON(R1)−(R1は式(6)と同じ)等の二価の基である。)
これら二価の芳香族残基の例としては、式(8)及び式(9)で表されるもの等が挙げられる。
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
(式中、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10シクロアルキル基またはフェニル基である。m及びnは1〜4の整数で、mが2〜4の場合には各R7はそれぞれ同一でも異なるものであってもよいし、nが2〜4の場合は各R8はそれぞれ同一でも異なるものであっても良い。)
なかでも、式(10)で表されるものが好ましい一例である。特に、式(10)で表されるものをArとする繰り返しユニットを85モル%以上含むものが好ましい。
【0026】
【化13】
【0027】
また、本発明に用いることができるポリカーボネートは、三価以上の芳香族残基を共重合成分として含有していても良い。
ポリマー末端の分子構造は特に限定されないが、フェノール性水酸基、アリールカーボネート基、アルキルカーボネート基から選ばれた1種以上の末端基を結合することができる。アリールカーボネート末端基は、式(11)で表され、具体例としては、例えば、式(12)が挙げられる。
【0028】
【化14】
【0029】
(式中、Ar3は一価の芳香族残基であり、芳香環は置換されていても良い。)
【0030】
【化15】
【0031】
アルキルカーボネート末端基は式(13)で表され、具体例としては、例えば式(14)等が挙げられる。
【0032】
【化16】
【0033】
(式中、R7は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。)
【0034】
【化17】
【0035】
これらの中で、フェノール性水酸基、フェニルカーボネート基、p−t−ブチルフェニルカーボネート基、p−クミルフェニルカーボネート等が好ましく用いられる。
本願において、フェノール性水酸基末端と他の末端との比率は、特に限定されないが、全末端にしめるフェノール性水酸基末端比率が20〜80モル%の範囲にあることが好ましい。
【0036】
フェノール性水酸基末端量の測定方法は、一般にNMRを用いて測定する方法や、チタン法や、UVもしくはIR法で求めることができる。
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000〜50,000であり、15,000〜25,000の範囲が好ましい。より好ましくは17,000〜24,000であり、さらに好ましくは18,000〜230,000であり、特に好ましくは18,500〜22,000である。15,000未満では耐衝撃性が不十分であり、また、25,000を越えると、本発明の目的とする高流動の組成物を得ることが困難となる。
【0037】
本発明における重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行われ、測定条件としては、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
これらポリカーボネートは、公知の方法で製造することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体と反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンを水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(ホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートと反応させるエステル交換法(溶融法)、結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(特開平1−158033、1−271426、3−68627等)等の方法により製造することができる。
【0038】
好ましいポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂があげられる。
本発明では異なる構造や分子量の2種以上の成分(A)を組み合わせて使用することも可能である。
【0039】
本発明の目的とする、流動性と耐衝撃性と難燃性が高いレベルでバランスされた樹脂組成物を得るための成分(A)の割合は、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対し、50重量部〜98重量部、好ましくは70〜95重量部、さらに好ましくは75〜90重量部である。成分(A)が50重量部未満であると耐熱性と難燃性が不十分であり、一方、98重量部を超えると流動性が不足する。
【0040】
本発明で用いられる成分(B)は、(b1)芳香族ビニル単量体成分及び(b2)シアン化ビニル単量体成分を含む共重合体である。成分(B)により、樹脂組成物の流動性を改善することができる。
ここで、(b1)芳香族ビニル単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルキシレン、p−ターシャリーブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等を挙げることができ、これらを1種または2種以上使用する。好ましくはスチレン、α−メチルスチレンである。
【0041】
また、(b2)シアン化ビニル単量体成分としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらを1種または2種以上使用する。
該共重合体中の(b1)/(b2)の組成比は特に限定されないが、好ましくは(b1)が95〜50重量%、(b2)が5〜50重量%であり、更に好ましくは、(b1)が92〜65重量%、(b2)が8〜35重量%である。
【0042】
また、成分(B)では本発明の趣旨を妨げない範囲で、上記の成分(b1)成分及び(b2)成分の他にこれらの成分と共重合可能な単量体を使用することができる。そのような共重合可能な単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート単量体成分好ましくはブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体が挙げられる、これらの単量体は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
(B)成分の好ましい例として、スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂(SAN)やブチルアクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂(BAAS)等を挙げることができ、中でもBAAS(好ましくはブチルアクリレート単量体成分が2〜20重量%)は樹脂組成物の流動性を改良する上で特に好適である。
【0044】
成分(B)の製造方法としては、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など通常公知の製造方法を挙げることができる。
成分(B)の重量平均分子量(Mw)は通常30,000〜250,000であり、好ましくは50,000〜150,000であり、より好ましくは60,000〜140,000であり、さらに好ましくは70,000〜130,000であり、特に好ましくは80,000〜120,000である。30,000未満では耐衝撃性が不十分であり、また、250,000を越えると、高流動の組成物を得ることが困難である。
【0045】
本発明の目的を達成するための成分(B)の割合は、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対し、49重量部〜0.1重量部、好ましくは30〜1重量部、さらに好ましくは20〜3重量部である。成分(B)が0.1重量部未満であると流動性が不足し、一方、49重量部を超えると耐熱性や難燃性が不足する。成分(B)は異なる構造や分子量の2種以上の成分(B)を組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
次に成分(C)について述べる。(C)は(c1)芳香族ビニル単量体成分、(c2)シアン化ビニル単量体成分、および(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分のうちの少なくとも1種あるいは2種以上が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体である。
(c1)芳香族ビニル単量体成分および(c2)シアン化ビニル単量体成分は、前記の成分(B)で示した(b1)および(b2)を挙げることができる。
【0047】
また、(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート単量体を挙げることができ、これらを1種または2種以上使用する。好ましくはメチルメタクリレートである。
【0048】
(c4)のゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものであれば用いることができる。具体的には、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合ゴム等のブロック共重合体およびそれらの水素添加物、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレート成分を含む複合ゴム(シリコン・アクリル複合ゴム)等を使用することができる。これらの重合体の中で、好ましくは、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリアクリル酸ブチル、シリコン・アクリル複合ゴムが挙げられる。
【0049】
成分(C)は、上記(c4)ゴム質重合体に、(c1)芳香族ビニル単量体成分、(c2)シアン化ビニル単量体成分、および(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分のうちの少なくとも1種あるいは2種以上が、さらに必要に応じて、アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸類、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体成分の1種以上を、塊状重合、懸濁重合、塊状・懸濁重合、溶液重合あるいは乳化重合等の方法、特に乳化重合でグラフト重合させてなるものである。
【0050】
ここに、(c4)ゴム質重合体の使用量は通常、10〜95重量%、好ましくは30〜82重量%、更に好ましくは40〜80重量%であり、ゴム質重合体としてブタジエン系重合体を用いる場合にはブタジエン系重合体のブタジエン成分の割合は50重量%以上が好ましい。成分(C)におけるゴム質重合体の使用量が10重量%未満では耐衝撃性の改良効果が低く、85重量%を超えると組成物中での(C)成分の分散が不十分となり好ましくない。
【0051】
また本発明では、成分(C)として、乳化重合により得られた粒子状のグラフト共重合体を最も好適に使用することができるが、この場合にグラフト共重合体の平均粒径は0.1〜1.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.8μmであり、特に好ましくは0.2〜0.6μmである。0.1μm未満になると樹脂組成物の耐衝撃性の改良効果が不足し、1.5μmを超えると流動性や成形品の外観が悪くなる。
【0052】
本発明にかかわる成分(C)の好ましい例として、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・アクリル系弾性重合体・スチレン共重合体を挙げることができる。ルキル(メタ)アクリレート単量体成分のみがグラフトされた共重合体を用いることが、高流動性と耐衝撃性を高レベルでバランスさせる上でさらに好ましく、特に(c3)成分としてメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体が好ましい。このような例として、スチレン・ブタジエン・メチルメタクリレート共重合体やシリコン・アクリルゴムにメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体を好適に使用することができ、例えば三菱レーヨン(株)から製造されている、「メタブレン C−233A」、「メタブレン C−323A」、「メタブレン S−2001」(いずれも商品名)は特に好適に使用される。
【0053】
本発明の樹脂組成物では上記の成分(C)は1種、または2種以上の組み合わせで使用することができるが、その配合量は(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対し、1重量部〜30重量部である。好ましくは2〜20重量部、さらに好ましくは3〜15重量部である。成分(C)が1重量部未満であると耐衝撃性の改良効果がほとんどなく、一方、30重量部を超えると流動性や剛性が不足する。
【0054】
特に、本発明の組成物においては(C)成分として、ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体成分及びシアン化ビニル単量体成分がグラフト重合された共重合体、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(以下C(a)成分と称す)と、ゴム質重合体にメチルメタクリレートがグラフト重合された共重合体、例えばスチレン・ブタジエン・メチルメタクリレート共重合体やシリコン・アクリルゴムにメチルメタクリレートがグラフトされた共重合体(以下C(b)成分と称す)を組み合わせて使用することにより、流動性と耐衝撃性が高レベルでバランスされた樹脂組成物を得るのに好適である。この場合、C(a)とC(b)の組成比は特に限定されないが、C(a)とC(b)の全量に対してC(b)成分は90〜10wt%が好ましく、さらに好ましくは70〜20wt%、より好ましくは60〜30wt%である。
【0055】
本発明に用いられる成分(D)は、下記式(3)で表される1種または2種以上のオリゴマー系有機リン化合物99〜93wt%と、(d2)下記式(2)で表される1種または2種以上のモノ系有機リン化合物1〜7wt%(ただし、(d1)と(d2)の合計を100wt%とする)の組み合わせからなる有機リン化合物である。
【0056】
【化18】
【0057】
【化19】
【0058】
(d1)成分は式(3)で表され、式(3)における置換基Ra 、Rb 、Rc 、Rdは、アリール基でありその一つ以上の水素が置換されていてもいなくてもよい。置換基Ra 、Rb 、Rc 、Rdがアルキル基やシクロアルキル基である化合物は射出成形を行う際の成形機内の溶融樹脂の滞留安定性が不十分であり、樹脂の物性の低下を招きやすい。置換基Ra、Rb 、Rc 、Rdの一つ以上の水素が置換されている場合、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン化アリール基等が挙げられ、またこれらの置換基を組み合わせた基(例えばアリールアルコキシアルキル基等)またはこれらの置換基を酸素原子、硫黄原子、窒素原子等により結合して組み合わせた基(例えば、アリールスルホニルアリール基等)を置換基として用いてもよい。好ましいアリール基は、フェニル基、クレジル基、キシリル基、プロピルフェニル基、およびブチルフェニル基であり、特に流動性と難燃性が共に優れるのはフェニル基である。また、置換基Ra 、Rb 、Rc 、Rdは同じであっても、それぞれが異なっていても良い。
【0061】
これにより、滞留安定性を向上させ、MDの発生を低減化することができる。式(3)で表されるオリゴマー系有機リン系化合物は、通常、式(3)において異なるnの値(nは自然数)を有する化合物の混合物として使用される場合が多い。平均縮合度Nはnの平均値である。Nはゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより異なるnを有するそれぞれの成分の重量分率を求め、nの重量平均により算出される。検出器はRI検出器を使用する。ただし、本発明ではnが0の成分、すなわち分子中のリン原子が1つのみである化合物はNの計算から除外する。
【0062】
本発明ではnの平均値N(平均縮合度)は通常1以上5以下であり、Nが1以上1.2未満である場合が特に好ましい。Nが小さいほど樹脂との相溶性に優れ、流動性に優れ、かつ難燃性が高い。特に、N=1の化合物は樹脂組成物における難燃性と流動性のバランスが特に優れる。
本発明にかかわるオリゴマー系有機リン系化合物において、特にNが1以上1.2未満であるオリゴマー系有機リン系化合物を得る方法としては、例えば、
[ア]オキシハロゲン化リンにフェノールや2,6−キシレノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物をルイス酸触媒の下で反応させ、予めジアリールホスホロハリデードを得て、引き続いてこれに、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物(2価フェノール化合物)をルイス酸触媒の下で反応させて得る方法。
[イ]芳香族ジヒドロキシ化合物とそれに対して大過剰(約4倍モル当量以上)のオキシハロゲン化リンをルイス酸触媒の下で反応させ、引き続いて過剰のオキシハロゲン化リンを加熱減圧下で完全に除去した後に、上記反応生成物に芳香族モノヒドロキシ化合物をルイス酸触媒の下で反応させて得る方法。
等が挙げられる。
【0063】
(d2)成分は式(2)で表され、式(2)で表されるモノ系有機リン化合物における、置換基Re、Rf、Rgはそれぞれ独立して、式(3)における置換基Ra、Rb、Rc、Rdで示したものである。具体的な好ましいモノ系有機リン化合物の例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルフェニルホスフェート等が挙げられ、トリフェニルホスフェートが特に好ましい。
【0064】
(d2)成分は組成物の暗所変色を抑制する作用があり、(D)成分全量に対して1〜7wt%、好ましくは1.5〜6.5wt%、さらに好ましくは2〜6wt%が含まれる。1wt%未満では暗所変色の抑制効果が不十分であり、一方、7wt%を超える場合はMDの発生量が多くなる。さらに、(d2)成分は組成物のシアー・センシティビティ(シアー速度の増大に対する溶融樹脂の粘性低下の感受率)を向上させ、射出成形において必要とされる高シアー速度領域での流動性を改善し、薄肉成形性を高める作用がある。
【0065】
(d2)成分は所定量を配合して溶融混練を行う方法の他、オリゴマー系有機リン系化合物に含まれる副生されたモノ系有機リン化合物をそのまま使用することもできる。オリゴマー系有機リン系化合物の製造方法として前記[イ]の方法を用いる場合は、製造条件により副生するモノ系有機リン化合物の含有量を制御することができる。
【0066】
有機リン化合物(D)の組成物中の含有量は成分(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、5〜20重量部である。5重量部未満では難燃効果が不十分である。また、20重量部を超えると樹脂組成物の耐衝撃性や耐熱性を低下させる。好ましくは8〜17重量部の範囲であり、特に好ましい範囲は、10〜15重量部の範囲である。
【0067】
さらに、成分(D)に併用して滴下防止剤を用いることは効果的であり、好ましい。滴下防止剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のパーフルオロアルカンポリマー、シリコンゴム、ポリカーボネート・ジオルガノシロキサン共重合体、シロキサンポリエーテルイミド、液晶ポリマー、前記のシリコン・アクリル複合ゴムなどがある。特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンであり、成分(A)〜(C)の合計を100重量部としたとき0.01〜3重量部の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.05〜2部である。0.01重量部未満の場合は、燃焼時の滴下防止効果が不十分であり、高い難燃性が得られない。また、3重量部を超える場合は成形加工性および剛性が低下する。
【0068】
さらに、成分(D)に併用して、(D)以外のその他の難燃剤、例えば、メラミンなどの窒素含有有機化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物、赤燐、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、無水リン酸等の無機系リン化合物、膨張黒鉛、シリカ、シリカ系ガラス溶融物等を本発明の趣旨に反しない範囲で含有していてもよい。
【0069】
本発明の樹脂組成物に使用される成分(E)は、酸化防止剤であり、(E)成分の配合により、樹脂組成物の加工安定性を高め、熱劣化を抑制することができる。さらに高温成形においても物性を維持することができる。
酸化防止剤としては、分子量500以上のフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、及び、ホスファイト系酸化防止剤等があり、特にフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0070】
フェノール系酸化防止剤としてはフェノール系化合物の−OH基の性質を遮蔽した分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物が好ましく、特にn−オクタデシル−3−(3’,5’−ジターシャリーブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリーブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトルテトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0071】
チオエーテル系酸化防止剤としては、ジアルキル−3,3’−チオジプロピネート、テトラキス[メチレン−3−(アルキルチオ)プロピオネート]メタン、ビス[2−メチル−4−(3−アルキル−チオプロピオニルオキシ)−5−ターシャリーブチルフェニル]スルフィドが好ましい。
ホスファイト系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、分子内にペンタエリスリトール骨格を有するものが好ましく、特にジ(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0072】
成分(E)は、成分(A)、(B)、及び(C)の合計100重量部に対して0.01〜0.8重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、更に好ましくは0.1〜0.6重量部で使用される。0.01重量部未満では効果が得られず、0.8重量部を超えると組成物に黄変が生じたり、MDの発生量が増えるなどして好ましくない。成分(E)は1成分または2成分以上の組み合わせとして使用することができる。
【0073】
また、本発明の樹脂組成物には、樹脂組成物の改質を行う目的で、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、雲母、などの無機フィラーや炭素繊維、木炭等の強化剤を添加することができる。好ましい添加量は、(A)〜(C)の合計100重量部に対して、0.01〜60重量部、より好ましくは5〜55重量部である。
【0074】
さらに必要に応じて他の添加剤、すなわち、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化チタン、表面改質剤、分散剤、可塑剤などを添加することができる。
本発明における樹脂組成物の製造方法については、特に限定されず、通常の方法、例えば、押出混練によるメルトブレンド等により製造することができる。さらに、これらの熱可塑性樹脂組成物からなる成形品の成形方法は、押し出し成形、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト成形等があり、特に限定されない。
【0075】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。用いた材料を以下に示す。
1.(A)成分
(ポリカーボネート:PC)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから溶融エステル交換法により製造されたMwが20,600であり、ヒドロキシ基末端量が33%のビスフェノールA系ポリカーボネート
2.(B)成分
(アクリロニトリル・スチレン共重合体:SAN)
アクリロニトリル単位25.0wt%、スチレン単位75.0wt%からなるMwが140,000のアクリロニトリル・スチレン共重合体
(ブチルアクリレート・アクリロニトリル・スチレン共重合体:BAAS)
ブチルアクリレート単位10.0wt%、アクリロニトリル単位27.0wt%、スチレン単位63.0wt%からなるMwが110,000のブチルアクリレート・アクリロニトリル・スチレン共重合体
3.(C)成分
(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体ゴム:ABS)
10メッシュ残分が、90%未満であるパウダー状ABS樹脂(三菱レーヨン(株)社製、商品名 RC)
(メチルメタクリレート・スチレン・ブタジエン共重合体ゴム:MBS)
最外層がメチルメタクリレートで被覆されたメチルメタクリレートグラフトスチレン・ブタジエンゴム(三菱レーヨン(株)社製、商品名 メタブレンC−233A)
(メチルメタクリレートグラフトシリコンアクリル複合ゴム:シリコンアクリル複合ゴム)
最外層がメチルメタクリレートで被覆されたポリオルガノシロキサン成分およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分が相互進入網目構造を有している複合ゴム(三菱レーヨン(株)社製、商品名 メタブレンS−2001)
4.(D)成分
(有機リン化合物(D1))
下記参考例1の方法により得られた有機リン化合物
(参考例1)
攪拌機、コンデンサ、加熱用ジャケットを装備したオートクレーブ(30リットル容器)にビスフェノールA(1モル当量)に対し、オキシ塩化リン(5モル当量)と塩化マグネシウム(0.025モル当量)を加え、徐々に加熱攪拌し、120℃まで昇温し、さらに7時間反応させた。反応で副生する塩酸は塩酸吸収塔に導かれる。得られた反応混合物からオキシ塩化リンを160℃、1mmHgの条件で4時間減圧除去した。その後フェノール(4.5モル等量)を攪拌しながら徐々に加え、150℃で8時間反応させ、反応を完結させた。反応終了後に反応混合物から残存フェノールを170℃、20mmHgの条件で3時間減圧除去し、得られた生成物を洗浄、乾燥させた後、更に薄膜蒸留法により残存するフェノールを完全に除去し、下記式(15)で表されるオリゴマー系有機リン化合物を得た。GPC測定により、平均縮合度N、及び生成物中のモノ系有機リン化合物の含有量(wt%)を求めたところ、それぞれ1.12、及び0.8wt%であった。
【0076】
【化21】
【0077】
(有機リン化合物(D2))
下記参考例2の方法により得られた有機リン化合物
(参考例2)
実施例1で用いたオートクレーブでビスフェノールA(1モル当量)に対してオキシ塩化リンを(1.5モル当量)と塩化マグネシウム(0.025モル当量)を加え、徐々に加熱攪拌し、120℃まで昇温し、さらに7時間反応させた。反応で副生する塩酸は塩酸吸収塔に導かれる。得られた反応混合物からオキシ塩化リンを120℃、30mmHgの条件で2時間減圧除去した。その後フェノール(4.5モル等量)を攪拌しながら徐々に加え、150℃で8時間反応させ、反応を完結させた。反応終了後に反応混合物から残存するフェノールを170℃、20mmHgの条件で3時間減圧除去し、得られた生成物を洗浄、乾燥させた後、更に薄膜蒸留法により残存するフェノールを完全に除去し、式(15)で表されるオリゴマー系有機リン化合物を得た。得られた有機リン化合物の平均縮合度N、及び生成物中のモノ系有機リン化合物の含有量(wt%)は、それぞれ2.12、及び3.5wt%であった。
(有機リン化合物(D3))
大八化学工業(株)製 商品名 PX−200
平均縮合度Nが1.00、モノ系リン化合物の含有量が3.2wt%の下記式(16)で表されるオリゴマー系有機リン化合物
【0078】
【化22】
【0079】
(有機リン化合物(D4))
大八化学工業(株)社製 トリフェニルホスフェート(TPP)
(有機リン化合物(D5))
大八化学(株)社製 商品名 CR733S
平均縮合度Nが1.4、モノ系有機リン化合物の含有量が4.8wt%の下記式(17)で表されるオリゴマー系有機リン化合物
【0080】
【化23】
【0081】
(有機リン系化合物(D6))
平均縮合度Nが1.12、モノ系有機リン化合物の含有量が3.5wt%の下記式(18)で表されるオリゴマー系有機リン化合物
【0082】
【化24】
【0083】
5.(E)成分
(フェノール系酸化防止剤(E1))
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名 IRGANOX 1076n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジターシャリーブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(ホスファイト系酸化防止剤(E2))
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名 IRGAFOS 168トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト
6.その他の成分
(フッ素系樹脂:PTFE)
三井デュポンフロロケミカル社製 商品名 テフロン30J
ポリテトラフルオロエチレン水性ディスパージョン
実施例及び比較例における各試験は以下に示す方法で行った。
(1)難燃性試験
得られたペレットを乾燥し、シリンダー温度240℃、金型温度65℃に設定した射出成型機(オートショット50D、ファナック社製)で成形し、燃焼試験用験片形状成形体を作成した。難燃性評価はUL94規格垂直燃焼試験(UL94)に基づいてランク付けを行った。
(2)MFR
ASTM D1238に準じて、220℃、10kg荷重条件で測定した。
(単位:g/10min)
(3)アイゾット衝撃試験
ASTM D256に準じて、1/8インチ、ノッチ付きで測定した。(単位:kgf・cm/cm)
(4)モールドデポジット(MD)評価
シリンダー温度260℃、金型温度40℃に設定した射出成型機(NIIGATA CN75)を用いて、射出圧力905kgf/cm2、射出時間3秒、冷却時間1.2秒、休止時間2秒、成形サイクル8.3秒の条件で、試験片重量4gの成形体を連続成形し、100、500、1,000、2,000ショット後の金型表面状態を目視観察した。
○:1,000ショットでMDの発生が見られない。
△:500ショット以下でMDの発生が見られる。
×:100ショット以下でMDの発生が見られる。
(5)暗所変色性の評価
シリンダー温度260℃、金型温度65℃にて平板試験片(50mm×90mm×3mm(厚み))を作製し、60℃で24時間キセノンランプ照射を行い、さらに80℃の暗所中で3日間放置して成形体の黄変度を目視観察した。
○:黄変がほとんどみられない。
△:少し黄変がみられる。
×:明らかに黄変がみられる。
【0084】
【実施例1〜4、比較例1、2、3】
樹脂組成物を表1に掲げる組成(単位は重量部)でブレンドし、シリンダー温度が250℃に設定された2軸押出機(ZSK−25、W&P社製)で溶融混練し、押出機の途中から難燃剤をポンプで圧入し、造粒し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0085】
得られたペレットを乾燥し、シリンダー設定温度を240℃、250℃、260℃、270℃、280℃とし、金型温度は65℃に設定して、射出成型機(オートショット50D、ファナック社製)で成形し、耐衝撃性を評価した。また、難燃性試験も同時に行った。
結果を表1に示す。実施例1と比較例1の結果は、本発明の組成物は260℃〜270℃の高温で成形を行う場合においても耐衝撃性を維持できることを示している。比較例2は酸化防止剤の配合量が本発明の範囲外であり、暗所黄変が見られた。比較例3は暗所黄変がみられた。
【0086】
【実施例5〜7、参考例1、2、比較例4】
樹脂組成物を表2に掲げる組成(単位は重量部)でブレンドし、実施例1と同様に樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを乾燥し、シリンダ−設定温度を260℃、金型温度は65℃に設定して、射出成型機で成形し、各種評価を行った。
【0087】
結果を表2に示す。実施例5〜7はいずれも流動性、耐衝撃性、難燃性、低MD性、耐暗所変色性が同時に優れることがわかる。比較例4はMDの発生が顕著であった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【発明の効果】
本発明により、高温成形においても物性の低下が少なく、さらに耐暗所変色性に優れ、かつ、成形の際に成形金型に発生するモールドデポジット(MD)の発生量が極めて少なく、さらには薄肉成形に適した高い流動性と高度な難燃性を有した難燃性のポリーカーボネート系の樹脂組成物を提供することができる。
Claims (6)
- (A)ポリカーボネート樹脂50〜98重量部、(B)芳香族ビニル単量体成分、及び(b2)シアン化ビニル単量体成分を含む共重合体49〜0.1重量部、(C)(c1)芳香族ビニル単量体成分、(c2)シアン化ビニル単量体成分、及び(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分のうちの少なくとも1種あるいは2種以上が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体1〜30重量部を含み、さらに(A)、(B)、及び(C)の合計100重量部に対して、(D)(d1)式(3)で表される1種または2種以上のオリゴマー系有機リン化合物99〜93wt%と、(d2)式(2)で表される1種または2種以上のモノ系有機リン化合物1〜7wt%(ただし、(d1)と(d2)の合計を100wt%とする)の組み合わせからなる有機リン化合物5〜20重量部、さらに(E)酸化防止剤0.01〜0.8重量部からなる難燃性樹脂組成物。
- (A)成分の重量平均分子量が15,000以上25,000以下であり、(B)成分の重量平均分子量が50,000以上150,000以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- (C)成分が、(c1)芳香族ビニル単量体成分および(c2)シアン化ビニル単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体と、(c3)アルキル(メタ)アクリレート単量体成分が(c4)ゴム質重合体にグラフト重合された共重合体の組み合わせからなることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
- 成分(d1)の平均縮合度Nが1以上1.2未満である請求項1、2および3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- (E)成分が分子量が500以上のフェノール系酸化防止剤である請求項1、2、3および4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- さらにポリテトラフルオロエチレンを含む請求項1、2、3、4および5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
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