JP5258130B2 - 着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、PC/ABS/リン系難燃剤組成物は、溶融混練工程や、成形時の成形機内部での溶融滞留、あるいは成形体が高温環境下に曝された場合に、熱老化が進行する場合があり、これを防ぐ目的で、各種の耐熱安定剤を組成物中に配合する場合がある。しかしながら、該耐熱安定剤の配合により、樹脂組成物の難燃性能が低下する場合があり、特にオリゴマー系のリン系難燃剤が使用される場合においての組成物の難燃性の低下がしばしば生じることがあった。
PC/ABS/リン系難燃剤組成物では、通常、様々な「滑剤」が含まれる。尚、本明細書中で使用する「滑剤」とは、樹脂の加工滑性や、樹脂の着色剤としての染顔料の分散性や、更には成形体の金型からの離型性を向上させる効果を有する化合物であり、一般に「滑剤」、「加工助剤」、「分散剤」、「離型剤」、「展着剤」などと称される化合物が包含され、脂肪族炭化水素、ポリオレフィン系ワックス、高級カルボン酸、高級カルボン酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、及び高級アルコール等の化合物群から選ばれる化合物を示す。
例えば、PC/ABS/リン系難燃剤組成物の原料PC樹脂には離型剤や加工助剤としての滑剤成分が含まれている場合があり、同様に原料ABS樹脂には乳化剤由来の脂肪酸あるいは脂肪酸金属塩、加工助剤、及び離型剤等が含まれている場合がある。
さらには、PC/ABS/リン系難燃剤組成物を着色剤(主として染顔料)により着色する過程において、樹脂中の着色剤の分散性を高める目的で着色剤分散剤が使用されたり、あるいは樹脂ペレット表面への着色剤の展着を良好ならしめて色調の均一性を高めるために展着剤が使用されたりする場合がある。
また、PC/ABSリン系難燃剤組成物では溶融状態での樹脂の着色や熱老化、さらには成形体を高温時に保持した際の熱老化を防止する目的で、各種の耐熱安定剤が一般的に用いられる。しかしながら、これら耐熱安定剤が難燃性に与える影響についてもこれまで検討されていなかった。
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜95重量部、ゴム変性スチレン系樹脂(B)50〜5重量部、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、少なくとも1種の有機リン化合物オリゴマー(C)5〜30重量部、フルオロポリマー(D)0.05〜1重量部、耐熱安定剤(E)0.01〜0.5重量部、及び着色剤(F)0.0001〜10重量部を含む着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物であ
って、滑剤(G)の総量が207〜3,000重量ppmであり、無機フィラーを含有しないことを特徴とする着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物、
[2]滑剤(G)が、脂肪族炭化水素、ポリオレフィン系ワックス、高級カルボン酸、高級カルボン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及び高級アルコールから選ばれる化合物であることを特徴とする前記[1]記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物、
[3]少なくとも1種の有機リン化合物オリゴマー(C)が下記式(1)で表される化合物群より選ばれることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物、
[5]滑剤(G)が、脂肪族炭化水素、ポリオレフィン系ワックス、高級カルボン酸、高級カルボン酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、及び高級アルコールから選ばれる化合物であることを特徴とする前記[4]記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物の製造方法、
[6]少なくとも1種の有機リン化合物オリゴマー(C)が下記式(1)で表される化合物群より選ばれることを特徴とする前記[4]または[5]に記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物の製造方法、
[8]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物を成形して得られる成形品、
[9]成形品が、肉厚2mm以下である部分が成形品全体の30重量%以上であることを特徴とする前記[8]記載の成形品、
である。
本発明の樹脂組成物の成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、下記式(2)で表される繰り返し単位からなる主鎖を有する。
また、本発明に用いることができるポリカーボネートは、三価以上の芳香族残基を分岐点とする分岐構造を有していても良い。
フェノール基末端量の測定方法は、一般にNMRを用いて測定する方法(NMR法)や、チタンを用いて測定する方法(チタン法)や、UVもしくはIRを用いて測定する方法(UV法もしくはIR法)で求めることができる。
本発明において、ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行い、測定条件は以下の通りである。
すなわち、テトラヒドロフランを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求められる。
MPC=0.3591MPS 1.0388
(MPCはポリカーボネートの重量平均分子量、MPSはポリスチレンの重量平均分子量である。)
好ましいポリカーボネート樹脂としては、2価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まないポリカーボネート樹脂が挙げられる。
本発明の組成物における成分(A)の量は、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対し、50〜95重量部、好ましくは60〜90重量部、さらに好ましくは70〜85重量部である。成分(A)が50重量部未満であると耐熱性と薄肉成形体での難燃性が不十分になり、一方、95重量部を超えると溶融流動性が不足する。
本発明で用いられる成分(B)は、ゴム変性スチレン系樹脂である。ここでゴム変性スチレン系樹脂とは、ゴム質重合体、および1種または2種以上のビニル化合物を成分に含むゴム変性スチレン系樹脂全般を表す。
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム質重合体の割合は1〜95重量%の範囲で用いられるが、必要とする機械的強度、剛性、成形加工性に応じて決められる。好ましくは5〜45重量%であり、より好ましくは10〜40重量%である。
また、ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など通常公知の製造方法を挙げることができる。
中でも、バルク重合、あるいは溶液重合により製造されたゴム変性スチレン系樹脂は、乳化剤を使用せずにゴム変性スチレン系樹脂を得ることが出来るために、乳化剤に由来する脂肪酸あるいは脂肪酸金属塩をゴム変性スチレン系樹脂中に実質的に含まないので、成分(B)として特に好適に使用できる。
本発明で用いられる成分(C)は、少なくとも1種の有機リン化合物であり、リン原子をその構造内に2つ以上有する化合物である有機リン化合物オリゴマーである。
有機リン化合物の例としての化合物群を表す上記式(1)におけるXは、上記のようにジフェニルジメチルメタン基である。オリゴマー系リン酸エステルとしては、Xがレゾルシノール基やヒドロキノン基であるものがあるが、これらと比較して、(Xがジフェニルジメチルメタン基である)上記式(1)で表される化合物群から選ばれるものを有機リン化合物として使用する場合は、有機リン化合物の耐加水分解性や熱安定性が向上し、好ましい。
N=Σ(n・An)/Σ(An)
ここで、Anを求めるために、検出器として、UV検出器、あるいはRI検出器が通常使用される。ただし、nの計算において、上記式(1)におけるnが0である構造のものが、併用あるいは含まれる場合(すなわち1分子中のリン原子が1つのみである有機リン化合物を用いるか、あるいは含まれる場合)は、nが0の化合物はNの計算から除外する。重量平均縮合度Nは、通常1以上5以下であり、1以上2以下が好ましく、1以上1.5以下が更に好ましく、1以上1.2未満が特に好ましい。Nが小さいほど樹脂との相溶性に優れ、溶融流動性に優れ、かつ難燃性が高い。特に、N=1の化合物は樹脂組成物における難燃性と溶融流動性のバランスが特に優れる。有機リン化合物としての式(1)の化合物のNが5以上である場合は、該化合物の粘度が大きくなり、特に高せん断速度領域での溶融流動性が低下する傾向にあり、また、難燃性が低下する傾向がある。
さらに、有機リン化合物中に含まれる塩素分は、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下、更に好ましくは5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下、であることが耐湿熱性により優れたポリカーボネート系難燃樹脂組成物を得る上で望ましい。
本発明で用いられる成分(D)はフルオロポリマーであり、燃焼物の滴下を防止する目的で使用される。本発明では、フィブリル形成能力を有するフルオロポリマーを使用する事ができ、ファインパウダー状のフルオロポリマー、フルオロポリマーの水性ディスパージョン、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物等、様々な形態のフルオロポリマーを使用することができる。
すなわち、懸濁重合または乳化重合によって得られるフルオロポリマー微粒子の分散液を40〜70wt%の濃度に濃縮した後、界面活性剤により安定化した乳白色状の水性ディスパージョンを示す。フルオロポリマーの水性ディスパージョンにおけるフルオロポリマーの濃度は分散状態が安定する濃度であれば水で希釈することも可能であるが、5〜70wt%が好ましく、更に好ましくは20〜65wt%、特に好ましくは30〜60wt%である。
本発明で用いられる成分(E)は耐熱安定剤であり、PC/ABS/リン系難燃剤組成物の溶融混練工程や、成形時の成形機内部での溶融滞留、あるいは成形体が高温環境下に曝された場合の、主として空気中の酸素による熱老化の進行を防ぐ目的で使用される。
本発明で好ましく用いられる成分(E)としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系熱安定剤、及び硫黄系熱安定剤を挙げることができる。
本発明では、成分(E)は単一成分として使用しても良いし、複数の成分(E)を組み合わせて使用することもできる。
本発明で用いられる成分(F)は着色剤である。該着色剤とは、樹脂の着色に使用される顔料や染料であり、例えば、チタンホワイト(酸化チタン)、チタンイエロー、ベンガラ、群青、スピネルグリーン等の無機顔料、縮合アゾ系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、アンスラキノン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料等の有機顔料、カーボンブラック、ペリレン系染料、ペリノン系染料、アンスラキノン系染料、複素環系染料などの染料をあげることができる。
これらの滑剤(G)は、樹脂原料中に既に含まれているものもあるが、樹脂組成物を製造するときの加工助剤として、あるいは樹脂組成物の着色を行う際の着色剤の分散剤や展着剤として、更には成形時において成形体の金型離型を向上させるための離型剤として、樹脂組成物に配合されるものもある。
前記成分(G)のうち、脂肪族炭化水素とは、炭素数5〜100の脂肪族炭化水素化合物であり、リグロイン、パラフィン油、鉱油、流動パラフィン等を例示することができる。
また、高級カルボン酸とは、炭素数が5〜50の飽和または不飽和結合を有する脂肪酸であり、例えば、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ナフテン酸、ロジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。
また、脂肪酸アミドとは、分子内に1つ以上の酸アミド結合を有する炭素数12〜150の化合物であり、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等を例示することができる。
また、高級アルコールとは、分子内に1以上の水酸基を有する炭素数5〜50の化合物であり、例えばステアリルアルコールを挙げることができる。
本発明にかかわる着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物中の成分(G)の含有量は、組成物中からこれらを良溶媒/貧溶媒の組み合わせにより分離あるいは抽出して、プロトンNMR法、GC/MS法、LC/MS法等の分析手法を組み合わせて定量することができる。
さらに、本発明の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物では、本発明の趣旨を損なわない範囲内で必要に応じて紫外線吸収剤、エポキシ化合物、帯電防止剤等を添加することができる。
本発明の樹脂組成物は前記の各成分(A)〜(F)、必要に応じて滑剤(G)及びその他の成分を本明細書記載の組成割合で配合し、押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混練することにより得ることが出来るが、本発明では着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物中に含まれる滑剤(G)の総量が3,000重量ppm以下となるように配慮して溶融混練を行う。
このときの各構成成分の配合及び溶融混練は一般に使用されている装置、例えば、タンブラー、リボンブレンダー等の予備混合装置、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することが出来る。
本発明の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物は、薄肉の成形体においても優れた難燃性を有し、優れた溶融流動性、耐衝撃性を有するので、薄肉部分を有する成形体を得る場合に好適であり、好ましくは成形品が肉厚2mm以下である部分が成形品全体の30重量%以上である成形品、より好ましくは肉厚2mm以下である部分が成形品全体の50重量%以上である成形品、さらに好ましくは肉厚2mm以下である部分が成形品全体の70重量%以上である成形品を得る場合において好適に使用することが出来る。
本発明の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物を用いた成形品の例としては、パソコン用モニター、ノート型パソコン、コピー機、プリンター等のOA機器筐体、OA機器シャーシ、携帯電話筐体、等が挙げられる。
実施例あるいは比較例においては、以下の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び必要に応じて成分(G)を用いて着色ポリカーボネート樹脂組成物を製造した。但し、比較例において用いた成分(C)には、本発明における成分(C)の要件を満足しないものもあるが、便宜上、(C)に分類した。
1.成分(A):芳香族ポリカーボネート
(PC1)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造されたビスフェノールA系ポリカーボネートであり、耐熱安定剤成分(E)及び滑剤成分(G)を全く含まないもの。
重量平均分子量(Mw)=22,500
フェノール性末端基比率(フェノール性末端基が全末端基数に占める割合)=35モル%
滑剤成分(成分(G))含有量=0重量ppm
市販のホスゲン法により得られたビスフェノールA系ポリカーボネートであり、離型剤としての滑剤成分(G)を2,500重量ppm、かつ、ホスファイト系熱安定剤(成分(E))としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを400重量ppm含むもの。
重量平均分子量(Mw)=28,000
モノグリセリン系離型剤含有量(成分(G))=2,500重量ppm
ホスファイト系熱安定剤(成分(E):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)=400重量ppm
(PC3)
市販のホスゲン法により得られたビスフェノールA系ポリカーボネートであり、離型剤としての滑剤成分(G)を500重量ppm含むもの。
重量平均分子量(Mw)=15,000
パラフィン系離型剤含有量(成分(G))=500重量ppm
(ABS1)
乳化重合法により重合し、硫酸塩析法にて凝固させた後に、洗浄、乾燥処理を行って得たABSグラフト共重合体を、重量平均分子量(Mw)が110,000であり、アクリロニトリル単位27wt%とスチレン単位73wt%からなるAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)で希釈混練して得た、ブタジエンゴム含有量含有量が25wt%、ゴム重量平均粒径が0.26μmの乳化重合系アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂であり、乳化剤残渣としての滑剤成分(成分(G):ロジン酸)を1,200重量ppm、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分(E):オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を3,000重量ppm、および、ホスファイト系熱安定剤(異なる成分(E))としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを500重量ppm含むもの。
ロジン酸含有量(成分(G))=1,200重量ppm
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分(E):オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)=3,000重量ppm
ホスファイト系熱安定剤(異なる成分(E):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)=500重量ppm
溶液重合法によって得られた、ブタジエンゴム含有量が12重量%、スチレン単位66重量%、アクリロニトリル単位22重量%で、ゴムの重量平均粒径が0.7μmであり、非グラフト共重合体成分の重量平均分子量(Mw)が110,000である溶液重合系アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂であり、滑剤成分(G)を全く含ず、かつ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分(E))としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを1,000重量ppm、また、ホスファイト系熱安定剤(異なる成分(E))としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを500重量ppm含むもの。
滑剤成分(成分(G))含有量=0重量ppm
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(成分(E):オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート=1,000重量ppm
ホスファイト系熱安定剤(異なる成分(E):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト=500重量ppm
乳化重合法により重合し、硫酸塩析法にて凝固させた後に洗浄、乾燥処理を行って得た、ブタジエンゴム含有量含有量が55wt%、ゴム重量平均粒径が0.31μm、アクリロニトリル単位25wt%とスチレン単位75wt%の共重合成分45wt%からなるパウダー状のアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂であり、乳化剤残渣としての滑剤成分(ロジン酸)を2,000重量ppm含むもの。
ロジン酸含有量(成分(G))=2,000重量ppm
アクリロニトリル単位25wt%、スチレン単位75wt%からなる重量平均分子量(Mw)が110,000のAS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)であり、滑剤成分及び耐熱安定剤成分を全く含まないもの。
重量平均分子量(Mw)=110,000
滑剤成分(成分(G))含有量=0重量ppm
(ホスフェート1)
前記式(1)で表される有機リン化合物オリゴマーであって、置換基Ra 、Rb 、Rc 、Rd が全てフェニル基であり、重量平均縮合度(N)が1.15であり、マグネシウム含有量が3.5ppmであり、塩素含有量が1ppm以下であり、酸価が0.008mgKOH/gであるもの。
(ホスフェート2)
大八化学(株)社製 レゾルシノール−ジ−ホスフェート(CR733S)
重量平均縮合度(N)が1.43であり、マグネシウム含有量が7.2ppmであり、塩素含有量が1ppm以下であり、酸価が0.02mg/KOHであるもの。
(ホスフェート3)
大八化学(株)社製 トリフェニルホスフェート(TPP)
モノリン酸エステル化合物
(PTFE)
GEスペシャリティケミカルズ社製 ポリテトラフルオロエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体の混合粉末(商品名、Blendex449)
PTFE含有量=50wt%
5.成分(E):耐熱安定剤
(I−1076:ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製(商品名、IRGANOX1076)
オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
(P−168:ホスファイト系熱安定剤)
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製(商品名、IRGAFOS168)
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
(ホワイト)
デュポン社製酸化チタン(商品名 Ti−Ture R103−08)
(ブラック)
東海カーボン(株)製カーボンブラック(商品名 カーボンブラック 7550F)
(イエロー)
シェファード社製チタンイエロー(商品名 Yellow 29)
7.成分(G):滑剤
(離型剤)
花王(株)製ステアリン酸モノグリセライド系離型剤(商品名 エキセル T−95)(分散剤)
花王(株)製エチレンビスステアリルアマイド(商品名 花王ワックス EB−P)
(展着剤)
エッソ石油(株)製パラフィンオイル(商品名 クリストール J−352)
溶融混練装置は2軸押出機(ZSK−25、L/D=37、Werner&Pfleiderer社製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数250rpm、混練樹脂の吐出速度10〜23kg/Hr、押出機内部の原料樹脂の滞留時間が30〜100秒となる条件で溶融混線を行った。溶融混練中に、押出機ダイ部で熱電対により測定した溶融樹脂の温度は260〜270℃であった。
得られたペレットを乾燥し、射出成形機(オートショット50D、ファナック社製)で成形し、以下の各試験を実施した。
得られたペレットを乾燥し、シリンダー温度260℃、金型温度60℃に設定した射出成形機で成形し、燃焼試験用の短冊形状成形体(厚さ2.0mm、1.5mm及び1.4mm)を作成し、UL94規格20MM垂直燃焼試験を行いV−0、V−1またはV−2に分類した。尚、表中の記号NCは分類不能(non-classification)を意味する。(難燃性の程度:V−0>V−1>V−2>NC)
(2)MFR
ASTM−D1238に準じて、220℃、10kg荷重条件で測定した。
(単位:g/10min)
(3)アイゾット(Izod)衝撃試験
得られたペレットを乾燥し、シリンダー温度240℃、金型温度60℃に設定した射出成形機で1/8インチ厚短冊片を成形しASTM−D256に準じて、アイゾット衝撃強度を1/8インチ厚、ノッチ付きで測定した。測定温度は23℃である。(単位:kgf・cm/cm)
シリンダー温度260℃、金型温度40℃に設定した射出成型機(NIIGATA CN75、新潟鐵工所製)を用いて、射出圧力905kgf/cm2 、射出時間3秒、冷却時間1.2秒、型開閉時間2.1秒、休止時間2秒、成形サイクル8.3秒の条件で、試験片重量4gの成形体を連続成形し、100、500、1,000、及び2,000ショット後の金型表面状態を目視観察した。
◎:2,000ショットでMDの発生が見られない。
○:101〜2,000ショットでMDの発生が見られる。
×:100ショット以下でMDの発生が見られる。
ここでMDは金型面に付着した固形状及び液状の堆積物の両方を含むものとする。
得られたペレットを乾燥し、シリンダー温度240℃で、金型温度60℃に設定した射出成形機で1/8インチ厚短冊片を成形した。成形した短冊片を60℃、85RH%(相対湿度)環境下に168Hr保持した後に取り出し、ASTM−D256に準じて、アイゾット衝撃強度をノッチ付きで測定した。アイゾット衝撃強度の測定温度は23℃である。(単位:kgf・cm/cm)
(6)耐熱老化性
射出成形機(オートショット50D、ファナック社製)のシリンダー温度を240℃とし、成形機内で溶融樹脂を10分間滞留させた後に成形を行った1/8インチ厚短冊片について、D256に準じてアイゾット衝撃強度をノッチ付きで測定した。ここで形成用金型の温度は60℃とした。該方法により測定したアイゾット衝撃強度を滞留アイゾット強度(単位:kgf・cm/cm)とし、耐熱老化性の尺度とする。
結果を表1に示す。
得られたペレットを乾燥し、実施例1〜5と同様の評価を行った。
結果を表2及び表3に示す。
比較例2は成分(B)の部数が本発明の範囲上限を超える場合であり、難燃性が劣る。
比較例3は成分(C)の部数が本発明の範囲下限以下の場合であり、難燃性が劣る。
比較例4は成分(C)の部数が本発明の範囲上限を超える場合であり、難燃性及び耐衝撃性が劣る。
比較例5は成分(D)を欠く場合であり、難燃性が劣る。
比較例7は成分(E)を欠く場合の結果であり、耐老化性が劣る。
比較例8は成分(E)の部数が本発明の範囲上限を超える場合であり、難燃性が劣る。
比較例9は成分(G)の総量が本発明の範囲上限を超える場合の結果であり、難燃性が劣る。
比較例10は有機リン化合物オリゴマーの代わりにモノ系のリン化合物難燃剤であるTPPを使用した結果であるが、金型汚染が顕著である。
Claims (9)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜95重量部、ゴム変性スチレン系樹脂(B)50〜5重量部、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、少なくとも1種の有機リン化合物オリゴマー(C)5〜30重量部、フルオロポリマー(D)0.05〜1重量部、耐熱安定剤(E)0.01〜0.5重量部、及び着色剤(F)0.0001〜10重量部を含む着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物であって、滑剤(G)の総量が207〜3,000重量ppmであり、無機フィラーを含有しないことを特徴とする着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物。
- 滑剤(G)が、脂肪族炭化水素、ポリオレフィン系ワックス、高級カルボン酸、高級カルボン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及び高級アルコールから選ばれる化合物であることを特徴とする請求項1記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)50〜95重量部、ゴム変性スチレン系樹脂(B)50〜5重量部、成分(A)と成分(B)の合計100重量部に対して、少なくとも1種の有機リン化合物オリゴマー(C)5〜30重量部、フルオロポリマー(D)0.05〜1重量部、耐熱安定剤(E)0.01〜0.5重量部、及び着色剤(F)0.0001〜10重量部を含む着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物を溶融混練装置により製造する方法であって、滑剤(G)の総量が207〜3,000重量ppmであり、無機フィラーを含有しないことを特徴とする着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物の製造方法。
- 滑剤(G)が、脂肪族炭化水素、ポリオレフィン系ワックス、高級カルボン酸、高級カルボン酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、及び高級アルコールから選ばれる化合物であることを特徴とする請求項4記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物の製造方法。
- 溶融混練装置が2軸押出機である請求項4〜6のいずれかに記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の着色ポリカーボネート系難燃樹脂組成物を成形して得られる成形品。
- 成形品が、肉厚2mm以下である部分が成形品全体の30重量%以上であることを特徴とする請求項8記載の成形品。
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