JP4368960B2 - ゴムクロ−ラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主として低振動・低巻き付け抵抗性のゴムクロ−ラに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建設車両や土木作業車両の走行部に鉄クロ−ラに代わりゴムクロ−ラが広く用いられている。その従来のゴムクロ−ラは芯金が一定ピッチで埋設され、その外側をスチ−ルコ−ドにて囲んでいる。そして芯金は中央がスプロケット係合部であり、このスプロケット係合部を挟んでゴムクロ−ラの内周面に突出する一対の突起と、場合によってはこの外側に転輪走行部が形成され、更にゴムクロ−ラ内に埋設される翼部が左右にのびている。そして、転輪走行部が形成されたものは通常はゴムクロ−ラの内周面に露出している。
【0003】
さて、この従来のゴムクロ−ラにあっては、転輪はゴムクロ−ラ内周面を走行するが、芯金のゴムクロ−ラ内での揺動や芯金から外れて転輪がゴム部分を走行する際には、荷重によってゴム部分が大きく変形するため、転輪の上下動(振動)の発生はさけられない。このため、転輪が転動する走行面のばね性をできるだけ一様にする必要があり、このため走行面のゴム部を少なくする試みがなされる場合が多い。この場合には結果的にゴムクロ−ラの芯金(転輪の走行部)間のばね性を硬くし、ばね性をできるだけ均一化することによって芯金間での転輪の落ち込みが少なくなるという効果がある。
【0004】
しかしながら、転輪は通常はプレス加工又は鋳造法により熱処理をしないで製造されているため、芯金の転動の走行部(ゴムクロ−ラの内周面より露出した部位)との接触によって摩耗、亀裂等が発生し易く耐久性が劣るという欠点があり、勿論、芯金の転動走行部の摩耗、亀裂も生じることは当然である。
【0005】
本出願人はこの課題を解決するために新たなゴムクロ−ラ用芯金及びゴムクロ−ラを提案している。即ち、中央部をスプロケットとの係合部とし、これを挟んで一対の突起が形成され、この突起の外側に翼部が形成され、更にこの翼部に前記突起に隣接して翼部の前後の双方にほぼ均等な長さをもって張出部を形成した芯金を用い、突起とスプロケット係合部以外は全てゴムクロ−ラのゴム弾性体中に埋設された構造としたものである。
【0006】
かかる芯金を用いたゴムクロ−ラにあっては、この張出部に対応して転輪が転動するが、張出部が存在するためにそれだけ転輪の落ち込みが少なくなり、振動は低減することとなったものである。しかしながら、この張出部が存在するためにスプロケットやアイドラ−に巻き付く際にはゴムクロ−ラのゴム部に大きな負担がかかることとなり、巻き付き抵抗を増し、ゴムクロ−ラの特定部位に歪みが集中しゴムクロ−ラの寿命が短くなる可能性があるとの指摘がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はゴムクロ−ラの振動の発生を更に低減するために既提案を改良し、更にスプロケットやアイドラ−への巻き付け抵抗を少なくしたゴムクロ−ラを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は以上の課題を解決するためになされたものであり、その要旨は、無端状ゴム弾性体の長手方向に一定ピッチをもって芯金が埋設され、この芯金を外囲いしてスチールコードをゴム弾性体の長手方向に向かって埋設したゴムクローラであって、前記芯金はスプロケット係合部と、これを挟む一対の第1の突起とこれにより更に左右にのびる翼部と、転輪の転動走行部に対応する翼部よりその前後に向けて張り出した張出部と、この張出部のゴムクローラ周方向先端を翼部の内側面よりもゴムクローラ内周側に位置させたこと、よりなり、この張出部のゴムクローラ周方向先端は付根よりゴムクローラ内周側に位置させ、当該芯金の翼部及び張出部をゴム弾性体中に埋設すると共に、前記張出部のゴムクローラ内周側への張出角度θを、10度<θ≦30度としており、ゴムクローラ幅方向側から見た時に、前記張出部は、ゴムクローラ周方向に隣接する前記芯金の前記張出部とゴムクローラ周方向に離間しているものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴムクローラにおいて、前記翼部の内側面には、前記第1の突起よりもゴムクローラ幅方向外側に、前記転輪のゴムクローラ幅方向外側へのずれを規制する第2の突起が設けられている、ことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は上記の構造を有するゴムクローラであって、特定の構造の芯金即ち転輪の走行部に対応して芯金の翼部における前後方向に張出部を形成し、このゴムクローラ周方向先端を翼部の内側面よりも内側に位置させて翼部及び張出部をゴム中に埋設し、かつ張出部の外側表面を芯金の側面から見て湾曲面或いは直線状面としたもので、この張出部は転輪が走行する際にゴム部のみにてこれを支えるという部位を少なくして走行部全体としてばね性を均一化するものである。
【0010】
転輪がゴムクローラ内周面を走行する際には、通常は芯金が荷重のかかる方向に前後に揺動することとなるが、この揺動の程度を考慮して張出部のゴムクローラ周方向先端を翼部の内側面よりも内側に位置させておき、翼部が前後にゆれた際にも転輪の走行方向をほぼ一定として上下動をほぼ無くしたものである。
【0011】
そして、本発明に用いられる芯金は特に張出部の形状を最も好ましい範囲に限定したものであり、特にこの張出部の内側への張出角度を特定したことによりスプロケットやアイドラ−に対する巻き付けをスム−ズになしたものである。
【0012】
ここで張出角度θについて更に説明する。図11はここで用いられる芯金1の各種張出部における拡大断面図であり、4は芯金1の翼部、5はこの翼部4より前後に形成した張出部である。この図例で分るように、張出部5の外表面は一つ又は複数の平面或いは湾曲面となっている。そして張出部5は好ましくは芯金1の内側に向って張り出しているものである。
【0013】
そして張出角度θは、翼部4の接地面側水平面をP1、張出部5の基点をx、張出部5の最外部yとすると、P1に対するx・yを結ぶ傾斜平面P3の角度を言う。この張出部5の内側への張出角度θが10度以下の場合にあっては、スプロケットやアイドラ−に巻き付けられた際にこの張出部5を外囲いするスチ−ルコ−ドが張出部5の先端により曲がるような形状をなし、このため巻き付き抵抗が大きいものとなってしまう。一方、張出角度θが30度を越えると今度は転輪が転動する際に逆に上下動をするようになってしまうので好ましくない。尚、張出角度θの好ましい範囲は15〜25度である。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を図面をもって更に詳細に説明する。
図1は本発明のゴムクロ−ラに用いられる芯金の内周側平面図、図2は図1の正面図、図3は図1のA−A線での断面図、図4は図1のB−B線での断面図である。図中、符号1は芯金であり、2は芯金1の中央部に位置するスプロケットとの係合部である。そして、この係合部2を挟んで一対の突起3、3が形成され、この突起3、3の外側に翼部4、4が形成され、更にこの翼部4、4に前記突起3、3に隣接して翼部4、4の前後の双方に張り出した張出部5、5が形成されている。この突起3、3はゴムクロ−ラのゴム弾性体中に埋設された際にこの内周面より突出するものであり転輪の外れ防止に供され、場合によってはその頂面が転輪の走行に供される。翼部4、4及び張出部5、5はゴムクロ−ラのゴム弾性体中に埋設されて芯金を一定ピッチをもって配置するものであり、中でも張出部5、5は外転輪の転動部の走行部位に対応して形成されたものである。
【0015】
この例にあっては張出部5、5は翼部4、4の前後に均等な長さをもって張り出しているものであり、そのゴムクローラ周方向先端(即ちゴムクローラにおける内周側先端)は翼部4の内周面よりも内側に位置させてある。一方、張出部5、5の外側表面は芯金の側面からみて湾曲面とするもので、特にその外側先端近傍はスチールコードとの関係から少なくとも湾曲面とすべきである。
【0016】
図5は図1の側面図であり、図6は図1のC−C線での断面図である。これらの図からも分るように、この例における芯金1には翼部4、4の両端に第2の突起6、6を突起3、3と同じ側に形成した例であり、転輪はこの突起3と6の間を走行するため脱輪は極めて低減される。
【0017】
さて、本発明にて用いられる芯金1は張出部5、5の両端間隔Wを60mm、芯金1の翼部4の前後幅WOを35mm、厚さTを5〜7mmとし、張出部5の前後幅Lを12.5mmとしたものである。
尚、芯金1の翼部4の水平内面と張出部5の端部の水平位置の高低差Aをその中央部で5mmとしたもので、張出部5の前後幅Lとの関係で言えば、A/Lは0.25〜0.4程度とするのがよい。
そして、この張出部5の拡大断面図は前記の図11に示した通りであって、その張出角度θは約20度である。
【0018】
図7は図1〜図6にて示した芯金を用いた本発明のゴムクロ−ラの内周側平面図であり、図8はその側面から見た芯金のみを取り出した転輪との関係図、図9はD−D線での断面図である。
図中、符号11は横幅400mmのゴムクロ−ラであって、多数の芯金1が一定のピッチ、この例では芯金1の埋設ピッチPは84mmをもって配置されている。即ち、芯金1の翼部4、4と張出部5、5がゴム弾性体12中に埋設されており、中央のスプロケット係合部2が幅方向の中央に連続して露出し、更に突起3、3、6、6がゴムクロ−ラ11の内周面より突出している。そしてスプロケット係合部2、2によってスプロケット係合孔13が形成され、翼部4、4、張出部5、5の外側を囲んでスチ−ルコ−ド14がゴム弾性体12中に埋設されている。尚、張出部5、5の両端は内周面に露出することなく、ゴム弾性体中に埋没しているものであって、両端内面よりのゴム弾性体の厚さはゴムクロ−ラの大きさにもよるが3〜5mmである。符号15はゴムラグである。
【0019】
本発明のゴムクロ−ラは以上のような構造であって、外転輪20の転動部21がゴムクロ−ラ11の内周面を転動する際、芯金1が転輪20の転動によってゴム弾性体中にて揺動した場合でも芯金1に形成した張出部5の存在、そして、その先端が芯金1の翼部4の面より内側に位置させ、かつ好ましい張出角度θとしてあるために上下動は低減されるものである。
【0020】
そして、芯金1の張出部5はゴム中に埋設されており、転輪20の転動部21とは直接的に接触することがないので、金属同士の接触による摩耗や亀裂の発生もなく、ゴムクロ−ラとしての寿命も著しくのびることとなる。
尚、第2の突起6、6が備えられた芯金を用いた場合にあっては、転輪20が外方にズレようとする動きをこの第2の突起6、6にて規制するため脱輪の発生は極めて低くなる。
【0021】
さて、図10は前記図例のゴムクロ−ラ11における特に芯金1とスチ−ルコ−ド14との関係を示す主要部の断面図である。この図からも分るように、ゴム弾性体12中に埋設される芯金1の翼部4及び張出部5にあって、特に張出部5の外側表面を芯金の側面からみて湾曲面、即ちゴムクロ−ラの長手方向に湾曲面とすることと共に、張出部5の張出角度θを特定したことにより、ゴムクロ−ラ11がスプロケット30に巻き掛けされた際のスチ−ルコ−ド14の曲げとの関係において、翼部4や張出部5の部位でもバランスよく曲げられることとなる。このため、スチ−ルコ−ド切れ等の発生も低下することとなり、ゴムクロ−ラ11の耐久性向上をもたらすこととなった。
【0022】
【発明の効果】
本発明のゴムクロ−ラにあっては、転輪と芯金との金属同士の接触が回避されると共に、転輪の上下動が低減され、更に巻き付き抵抗を小さくしたものであって、ゴムクロ−ラとしての寿命も著しく向上したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のゴムクロ−ラに用いられる芯金の内周側平面図である。
【図2】図2は図1の正面図である。
【図3】図3は図1のA−A線での断面図である。
【図4】図4は図1のB−B線での断面図である。
【図5】図5は図1の側面図である。
【図6】図6は図1のC−C線での断面図である。
【図7】図7は図1にて示した芯金を用いたゴムクロ−ラの内周側平面図である。
【図8】図8は図7における芯金と転輪との関係を示す側面図である。
【図9】図9は図7のD−D線での断面図である。
【図10】図10は図7のゴムクロ−ラにおける芯金とスチ−ルコ−ドとの関係を示す主要部の断面図である。
【図11】図11は角度θを説明するための芯金の張出部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1‥ゴムクロ−ラ用芯金、
2‥スプロケット係合部、
3‥突起、
4‥翼部、
5‥張出部、
6‥第2突起、
11‥ゴムクロ−ラ、
12‥ゴム弾性体、
13‥スプロケット係合孔、
14‥スチ−ルコ−ド、
15‥ラグ、
20‥外転輪、
21‥外転輪の転動部、
30‥スプロケット、
A‥芯金翼部の内面と張出部端部の高低差、
L‥張出部の前後幅、
P‥芯金の埋設ピッチ、
W‥芯金の張出部5、5の両端間隔、
WO‥芯金の翼部の前後幅、
θ‥張出部の張出角度。
Claims (2)
- 無端状ゴム弾性体の長手方向に一定ピッチをもって芯金が埋設され、この芯金を外囲いしてスチールコードをゴム弾性体の長手方向に向かって埋設したゴムクローラであって、
前記芯金はスプロケット係合部と、これを挟む一対の第1の突起とこれにより更に左右にのびる翼部と、転輪の転動走行部に対応する翼部よりその前後に向けて張り出した張出部と、この張出部のゴムクローラ周方向先端を翼部の内側面よりもゴムクローラ内周側に位置させたこと、よりなり、
この張出部のゴムクローラ周方向先端は付根よりゴムクローラ内周側に位置させ、当該芯金の翼部及び張出部をゴム弾性体中に埋設すると共に、前記張出部のゴムクローラ内周側への張出角度θを、10度<θ≦30度としており、
ゴムクローラ幅方向側から見た時に、前記張出部は、ゴムクローラ周方向に隣接する前記芯金の前記張出部とゴムクローラ周方向に離間している、ことを特徴とするゴムクローラ。 - 前記翼部の内側面には、前記第1の突起よりもゴムクローラ幅方向外側に、前記転輪のゴムクローラ幅方向外側へのずれを規制する第2の突起が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のゴムクローラ。
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