JP4368453B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車のエンジン等を支持するために設けられるサブフレームと車体フレームとの間に設けられるサブフレームマウント等に使用して好適な液封防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平7−269637号には、内筒と外筒を同心配置して、これら内外筒間にゴム弾性体を介在させるとともに、ゴム弾性体の内筒を挟んだ左右に弾性仕切壁で仕切られた一対の液室を設け、これら各液室に流体を封入し、かつ各液室をオリフィス通路で連結した液体封入式ブッシュが示されている。弾性仕切壁は外筒側から内筒へ向かって径方向に延び、その先端は楔状をなして内筒へ当接している。
【0003】
また、特開平7−293630号には、同様の液封ブッシュであって、一対の弾性仕切壁をそれぞれ内筒側から径方向外方へ延出させてその先端を外筒の内周面へ当接させるとともに、当接部の一部を可動にして外筒側へ固定したものが示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような液封防振装置には一般的に低動バネ化の要請があり、そのためには弾性仕切壁を上記各従来例のように内筒又は外筒のいずれか側と分離させることにより一体化させないようにすることが効果的である。また、単に低動バネ化するだけでなく、入力振動の大きさに応じて次第にバネレートが高くなるような可変バネレート特性を有することが望ましい。そのうえさらに、弾性仕切壁を有効に利用して特定方向の入力振動を効果的に吸収することも望まれている。
【0005】
しかしながら、上記特開平7−269637号は、弾性仕切壁を外筒側から内方へ延出させ、その先端部を内筒へ当接させているので、外筒に対して内筒が相対的に移動するとき、先端部が内筒の表面を摺動することにより弾性仕切壁の内筒近傍部に対する応力集中緩和を狙っただけのものである。
【0006】
すなわち、軸直交横断面内において、弾性仕切壁の延出方向へ内筒が相対移動する場合は、腕状弾性仕切壁の弾性変形によりこれを吸収できるが、これと直交する方向もしくは斜交する方向に相対移動するときは、弾性仕切壁の弾性変形による吸収を期待できず、したがって、弾性仕切壁を有効に活用できていない。
【0007】
そのうえ、この弾性仕切壁が略くさび状をなしているため、弾性仕切壁の延出方向へ内筒が移動する場合は上記のような可変バネレート特性が得られると考えられるが、直交及び斜交方向では期待できないことは上記の通りである。
【0008】
また、特開平7−293630号では、弾性仕切壁の先端部をT字状断面にして広い面積で外筒へ当接させるとともに、その中央部を除き周方向の移動が不能に固定されているため、弾性仕切壁にて内筒の相対移動を受け止める場合、最初からバネレートが高くなり、前記したような可変バネレート特性を期待できない。
【0009】
そのうえ、弾性仕切壁は先端部を外筒へ、基部側を内筒側へそれぞれ固定されているから、入力振動により内筒が弾性仕切壁の延出方向と直交方向又は斜交方向へ移動するに対するときにおける、弾性仕切壁の挙動は、単なる一般的な弾性仕切壁のものと異ならず、振動吸収における方向性や十分な低動バネ化を発揮することはできない。
【0010】
そこで本願発明は、弾性仕切壁の当接部が摺動する形成の液封防振装置において、全方向の振動に対して可変バネレート特性を発揮して振動を効果的に吸収でき、かつ弾性仕切壁の延出方向へ入力する振動に対しては方向性のある振動吸収を行うことができるようにすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の液封防振装置に係る第1の発明は、略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材とを備え、この弾性防振部材には、外周面へ開口する液室凹部を設け、この液室凹部の開口部を内面が円弧状の外周壁で覆うとともに、液室凹部内を仕切るための弾性仕切壁を内側部材を挟んだ対称位置に設け、これら各弾性仕切壁の径方向外方となる先端部を前記外周壁内面へ当接させることにより液室凹部内を複数の液室に区画し、これらの各液室内へ液体を封入するとともに液室間を流体通路で連通した液封防振装置において、前記弾性仕切壁は径方向外方へ向って先細り状に変化する先端部を有し、この先端部を前記外周壁内面へ摺動可能に当接させるとともに、
前記液室凹部は、弾性防振部材の外周部へ開口して略環状に形成される環状溝であり、前記外周壁はこの環状溝の開口部をリング状に覆うリング状部材であり、
このリング状部材は、周方向で半円弧状に分割された一対の円弧状部材からなり、両リング状部材の接続部を前記弾性仕切壁の先端部が当接する位置から周方向へずらして配置し、
前記接続部は前記各リング状部材の周方向端部に形成された対面する接合面を突き合わせて接合することにより対向して形成され、
この接続部を跨いで隣り合うリング状部材に延びてるオリフィス通路が形成され、
このオリフィス通路は一端が前記接合面に開口し、他端がリング状部材の内周面へ開口するよう各リング状部材に形成された一対の流体通路を接続部で接続することにより形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記弾性仕切壁の先端部にシール突起を設け、これを弾性変形させて前記外周壁内面へ摺接させたことを特徴とする。
【0015】
第3の発明は、上記第1の発明において、前記弾性仕切壁の内側部材側へより硬質の芯部材を一体化したことを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材とを備え、この弾性防振部材には、外周面へ開口する液室凹部を設け、この液室凹部の開口部を内面が円弧状の外周壁で覆うとともに、液室凹部内を仕切るための弾性仕切壁を内側部材を挟んだ対称位置に設け、これら各弾性仕切壁の径方向外方となる先端部を前記外周壁内面へ当接させることにより液室凹部内を複数の液室に区画し、これらの各液室内へ液体を封入するとともに液室間を流体通路で連通した液封防振装置において、前記弾性仕切壁は径方向外方へ向って先細り状に変化する先端部を有し、この先端部を前記外周壁内面へ摺動可能に当接させるとともに、前記外周壁内面のうち、前記弾性仕切壁の先端部が摺動する部分のみを、他の部分と異なる変曲部としたことを特徴とする。なお、この変曲部構造としては、他の部分と異なる曲面すなわち異なる曲率の円弧又は楕円弧等の曲面や、略V字状又は階段状をなす傾斜面がある。
【0017】
第5の発明は、略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材とを備え、この弾性防振部材には、外周面へ開口する液室凹部を設け、この液室凹部の開口部を内面が円弧状の外周壁で覆うとともに、液室凹部内を仕切るための弾性仕切壁を内側部材を挟んだ対称位置に設け、これら各弾性仕切壁の径方向外方となる先端部を前記外周壁内面へ当接させることにより液室凹部内を複数の液室に区画し、これらの各液室内へ液体を封入するとともに液室間を流体通路で連通した液封防振装置において、前記弾性仕切壁は径方向外方へ向って先細り状に変化する先端部を有し、この先端部を前記外周壁内面へ摺動可能に当接させるとともに、前記一対の弾性仕切壁をそれぞれ他方と異なるバネ特性を有する構造にしたことを特徴とする。
【0018】
第6の発明は、上記第1の発明において、前記外周壁が外筒であることを特徴とする。
【0019】
【発明の効果】
第1の発明によれば、弾性仕切壁の先端部を先細り状とし、かつ外周壁内面へ摺動可能に当接させたので、弾性仕切壁方向へ振動が入力すると、その大きさに応じて弾性仕切壁が弾性変形し、小さな振動には低いバネレート、振動が大きくなるにつれてより高いバネレートへと変化し、好ましい可変バネレート特性を発揮する。
【0020】
また、お弾性仕切壁方向と直交もしくは斜交方向へ振動が入力した場合であっても、内側部材の移動とともに先端部が外周壁の内周面を摺動するので、外周壁から内側部材方向へ圧縮を受け、しかもこの圧縮程度は移動量に応じて次第に強くなるから、やはり可変バネレート特性を発揮できる。
【0021】
したがって、全方向の振動に対して弾性仕切壁が可変バネレート特性を発揮して振動を効果的かつ好ましい特性で吸収できる。しかも、弾性仕切壁の先端部を外周壁へ摺接させることにより低動バネ化を実現でき、かつ弾性仕切壁の延出方向へ入力する振動に対しては弾性仕切壁により方向性のある振動吸収を行うことができる。
また、環状溝の開口部を覆うリング状部材を外周壁として有効に利用できる。
さらに、リング状部材を半円状に分割された一対のリング状部材で構成したので、これらを円弧状溝に対して径方向外方より嵌合させることにより取付けでき、組立性が向上する。そのうえ、両リング状部材の接合部を弾性仕切壁の先端部が当接する範囲からずらしたので、3部材を一ヶ所で集中接合しないで済むため、それだけ組立が容易となり、かつ先端部の摺動に対して支障が生じない。
【0022】
第2の発明によれば、弾性仕切壁の先端部は、その先端に設けられたシール突起を弾性変形させて外周壁内面へ摺接するので、外周壁内面を摺動しても十分なシール性を維持できる。
【0025】
第3の発明によれば、弾性仕切壁の内側部材側部分に芯部材を一体化したため、先細り状をなすことによる可変バネレート特性に加えてさらに大きなバネレートを実現でき、より広範囲の入力振動の変化に対応できる。
【0026】
第4の発明によれば、外周壁内面のうち、弾性仕切壁の先端部が摺動する部分のみを、他の部分と異なる変曲部としたので、先端部の摺動に伴う可変バネレート特性を種々にチューニング可能になる。
【0027】
第5の発明によれば、一対の弾性仕切壁の材質乃至構造等のバネ特性をそれぞれ他方と異ならせたため、各弾性仕切壁の可変バネレート特性が異なる。その結果、弾性仕切壁の延出方向における一方側の振動と反対側の振動に対する吸収が異なり、入力振動方向に対する振動吸収の方向性を付与できる。
【0028】
第6の発明によれば、外周壁を外筒の内面としたので、前記リング状部材もしくはその具体例である円弧状部材等を用いなくても済み、部品点数を削減し、全体の構造をさらに簡単化できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて実施例を説明する。図1乃至図4は第1実施例に係る自動車用サブフレームマウントを示し、図1は、このサブフレームマウントの円弧状溝部分を通る横断面図、図2はその上面図、図3は図2の3−3線に沿う断面図(外筒は省略)、図4は組立時の斜視図である。
【0030】
まず、このサブフレームマウントの概略構造を説明する。このサブフレームマウントは、適宜金属からなる外筒1、その内側へ同心もしくは偏心配置される同様材料製で筒状等適宜形状の内側部材2及びこれらの間に介在して相互を弾性的に連結するゴムやエラストマー等の適宜公知材料よりなる弾性防振部材3を備える。
【0031】
図4に示すように、全体として略筒状をなす弾性防振部材3の周囲には、一対の半円弧状をなす円弧状溝4,5がそれぞれ弾性防振部材3の径方向(以下、単に径方向という)外方へ開放されて形成され、それぞれは内側部材2を挟んで径方向反対側へ延出する一対の弾性仕切壁6,7により分断されるとともに、各円弧状溝4,5には円弧状部材8,9が嵌合され、これにより液室10,11が形成されている(図1)。
【0032】
液室10,11内には非圧縮性の公知液体が封入されるとともに、円弧状部材8,9の各端部のうち対向する接続面12,13の各近傍部に形成された流体通路14,15を介して連通し、この流体通路14,15により一つのオリフィス通路が構成されている。なお、図1は流体通路15が液室11に連通していない状態を示す(図5〜7も同様)。また、図3においては流体通路15を省略してある。
【0033】
これら円弧状部材8,9を弾性防振部材3へ取付けた小組体18(図4)は、外筒1内へ圧入され、外筒1の一端に設けられた突起19及び他端をカシメることにより、全体が一体化したサブフレームマウントとなる(図3)。
【0034】
このサブフレームマウントは、図1に示すように、弾性仕切壁6,7を車体の左右へ向けて配置し、この状態で使用すると、液室10,11を通じる流体通路14,15がオリフィス通路をなすので、振動入力時にはこのオリフィス通路における液柱共振により減衰される。
【0035】
また、前後方向への振動に対しては、弾性仕切壁6,7の弾性変形により液室10,11の体積が変化し、その際の体積変動に伴って液室10,11内の液体がが流体通路14,15間を移動することにより減衰吸収する。さらに、左右方向の振動が加わった場合には、液室10,11間の流体移動は関与せず、弾性仕切壁6,7の弾性変形及び弾性防振部材3全体の変形によりこれを吸収する。
【0036】
次に、細部を説明する。弾性防振部材3は内側部材2と一体にその周囲へ形成され、このとき同時に円弧状溝4,5並びに弾性仕切壁6,7が一体に形成され、図1に示すように、弾性仕切壁6,7の径方向内側端部は内側部材2と一体となり、他端側の径方向外端側の先端部6a,7aは組立前の状態で自由になっている。
【0037】
これら先端部6a,7aは先端側が細くなる先細り状に変化する鋭角状をなし、それぞれリング状部材8,9の各内周面へ液密に当接し、液室10,11を区画している。図中の拡大部に示すように、先端部7aの先端にはシール突起7bが予め形成され、先端部7aはシール突起7bを弾性変形させて円弧状部材8の接続端部近傍の内周面へ押しつけられて当接し、かつ液密に摺動可能である。なお先端部6a側も同様である。
【0038】
先端部6a,7aが当接する円弧状部材8,9の接続端部近傍部分における各内周面は、先端部6a,7aが液密に摺動可能なように他の部分と連続一様の曲面をなし、円弧状部材8,9の接続部は先端部6a,7aの摺動範囲から周方向へずれた位置になっている。
【0039】
各円弧状部材8,9は、一つのリングを2分割したものに相当し、プラスチックや金属等弾性防振部材3よりも硬質の適宜材料で構成されるが、本実施例では、プラスチックを用いて、型成形によりそれぞれ略半円弧状に形成される。
【0040】
この円弧状部材8,9を円弧状溝4,5の開放部へ弾性防振部材3の径方向外方より嵌合し、互いの端部を接続させて組合わせることにより一つの連続するリング状をなし、円弧状溝4,5の各開放部を覆うとともに弾性防振部材3の周囲へ取付けられる。
【0041】
図4中に示す符号8a,9aは、それぞれ円弧状部材8,9の外周部適宜位置に一体形成された位置決め突起であり、組立てたとき円弧状溝4,5に臨んで弾性防振部材3の外周部に形成されている位置決め凹部3aへ嵌合し(図3)、弾性防振部材3の周方向に対する円弧状部材8,9の回り止めになっている。
【0042】
この取付により、円弧状部材8の両端における接続面12と16は、それぞれ円弧状部材9の両端における接続面13と17へ接合するとともに、円弧状部材8,9の各接続端部のうち、接続面12,13近傍に設けられている流体通路14,15が連通接続する。
【0043】
なお、図1に明らかなように、円弧状部材8,9の他方側における各接続面16,17近傍の各接続端部には流体通路が形成されず、液室10,11はこの部分で連通していない。ただし、必要により流体通路14,15を同様のものを設けることができる。
【0044】
各流体通路14,15は、一端が接続面12,13へ開口する部分と、それぞれの他端側で屈曲して内方へ延び、各一端が液室10又は11へ開放される部分で構成されている。流体通路14は大きく、円弧状部材9に設けられる流体通路15は小さくなる大小の組合せとされ、接続面12と13の接合部において、流体通路14,15は大小に相違したままの状態で接続している。
【0045】
これらの流体通路14,15は、円弧状部材8,9を成形する際、それぞれの成形型の型面にて円弧状溝8,9の成形と同時に形成することができる。但し、肉厚内を貫通する穴としてもよく、さらには機械加工によって形成することもできる。
【0046】
次に、本実施例の作用を説明する。図1に示すように、内側部材2を挟んで反対方向へ延出する弾性仕切壁6,7をそれぞれ車体の左右へ向けて配設する。サブフレームマウントへ左右方向から振動が入力すると、弾性仕切壁6,7の先端部6a,7aのいずれか一方が圧縮されて弾性変形する。
【0047】
この弾性変形は先端6a,7aが先細り状であるため、入力振動の大きさに応じて大きくなり、その結果入力振動に応じて変化する可変バネレート特性が得られる。その結果、左右方向の振動に対して固有の可変バネレート特性で対処でき、サブフレームマウントへ顕著な方向性を与えることができる。
【0048】
また、前後又は斜め方向の振動により内側部材2が相対的に前後又は斜めに移動すると、内側部材2と共に弾性仕切壁6,7も移動し、このとき先端部6a又は7aはリング状部材8又は9の内周面を摺動する。
【0049】
しかし、リング状部材8,9の内面は円弧状をなすので、先端部6a又は7aは次第に圧縮されて弾性変形し、やはり可変バネレート特性を生じる。したがって前後又は斜め方向への振動入力に対しても、弾性仕切壁6,7が可変バネレート特性を発揮できることになる。
【0050】
このように外方端6a,7aを鋭角状にすることにより、弾性仕切壁6,7の延出方向から加わる入力振動を吸収する方向性を有するとともに入力振動の大きさに応じてバネレートを変化させることができ、かつ、円弧状部材8,9の内周面を摺動可能にすることにより低動バネ化を実現できる。しかも、弾性仕切壁6,7は左右方向の入力振動を主体的に吸収するので、振動吸収の方向性が得られる。
【0051】
そのうえ、シール突起7bにより摺動部のシール性を高度に維持でき、かつ円弧状溝8,9及び弾性仕切壁6又は9の計3部材を一点で集合接続しないで済むため、それだけ液密に接合させることが容易になる。
【0052】
次に、別実施例を図5乃至図9に示す。これらはいずれも図1に対応する断面で示す概略図あり、かつ部分的に変更があるだけなので、変更部のみを別符号とし、他の第1実施例共通部分は同一符号を用いる。
【0053】
図5は第2実施例に係り、この実施例では前実施例の構造において、弾性仕切壁6,7のうち各内側部材2側部分に内側部材2から一体に径方向へ突出する突部2aを埋め込み一体化し、この部分のバネレートを高くしてある。
【0054】
このようにすると、弾性仕切壁6,7の先端部6a,7aにおける弾性変形だけでは吸収しきれないような大きな振動が入力したとき、突部2aで支持されてバネレートの高い部分でこの振動を十分に吸収することがで、さらに広い変化範囲を有する可変バネレート特性を発揮できる。
【0055】
図6は第3実施例に係り、この実施例ではリング状部材8,9の内周面における一般半径Rに対して、先端部6a,7aの摺動範囲だけ、より小さな半径rをなす曲面の変曲部20,21になっている。
【0056】
このようにすると、弾性仕切壁6,7が内側部材2とともに相対的に前後又は斜め方向へ移動するとき、弾性変形量を急激に変化させることができるので、バネレート特性の変化を大きくできる。
【0057】
なお、このような変曲部20,21は必ずしも円弧状をなす必要はなく、楕円弧等の適宜非円弧状曲面や、略V字状もしくは階段状の傾斜面で構成することもでき、これらの変曲部構造を適宜に選択することにより、多様な可変バネレート特性を得ることができる。そのうえ左右の変曲部20,21の構造を互いに異ならせれば、左右で振動吸収特性を異ならせた方向性を得ることができる。
【0058】
図7は第4実施例に係り、弾性仕切壁6と7の幅を変化させてある。本例では左側の弾性仕切壁6を広い幅をW1、右側の弾性仕切壁7を狭い幅W2(W1>W2)としてある。
【0059】
このようにすると、左右方向における可変バネレート特性を顕著に相違させることができる。なお、左右のいずれかを広くするか又どの程度相違させるか等は使用目的により任意に決定できる。
【0060】
図8は第5実施例に係り、リング状部材を省略した例である。すなわち、円弧状溝4,5の開放部は直接外筒1で覆われ、先端部6a,7aはそれぞれ外筒1の内周面へ直接液密に当接されている。符号30はオリフィス通路である。
【0061】
このようにすると、外筒1をリング状部材として利用でき、リング状部材を省略できるので、部品点数を削減して構造を簡単にでき、かつ組立を容易にする。
【0062】
図9は第6実施例に係り、前記の2分割された円弧状部材8,9を用いずに単一のリング状部材40を用いてある。この場合、弾性防振部材3の周囲に連続する一つの環状溝を形成するとともに、内側部材2及び弾性防振部材3を例えば円弧状溝部分で上下2分割するよう構成し、この分割体の間にリング状部材40を間に入れて組立てる。
【0063】
このようにすると、同一軸方向で組立作業ができるので、組立作業性が向上するとともに、2分割された円弧状部材を用いずに済むので、これら円弧状部材をリング状に組合せる手間が省け、この点でも組立作業性を向上できる。なお、符号41はオリフィス通路であり、リング状部材40の表面又は肉厚内に形成されている。
【0064】
図10は、図1,5〜7及び10,11の各実施例に示した大小の流体通路14,15の組合せで構成されるオリフィス通路によって得られる減衰特性を示す図であり、図中の実線はこのオリフィス通路によって得られる減衰特性の一般的な傾向を示し、破線は比較例として小さい流体通路15に相当する流体通路のみで構成したオリフィス通路における減衰特性の一般的な傾向を示す。
【0065】
この図に明らかなように、大小の流体通路14,15の組合せで構成されるオリフィス通路によれば、単一の流体通路では期待できないような減衰特性のブロード化を実現でき、より広範囲の周波数帯域で液柱共振による減衰効果が得られている。
【0066】
なお、本願発明は上記実施例に限定されず、種々に変形可能であり、例えば、用途して各種のエンジンマウントやサスペンション用ブッシュなどの自動車用各種防振部材等がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例に係るサブフレームマウントの液室を通る横断面図
【図2】 その上面図
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 その組立説明図
【図5】 第2実施例に係る図1と同様の部位を示す概略図
【図6】 第3実施例に係る図5と同様の概略図
【図7】 第4実施例に係る図5と同様の概略図
【図8】 第5実施例に係る図5と同様の概略図
【図9】 第6実施例に係る図5と同様の概略図
【図10】大小の流体通路を組合せたオリフィス通路の減衰特性図
【符号の説明】
1:外筒、2:内側部材、3:弾性防振部材、4:円弧状溝、5:円弧状溝、6:弾性仕切壁、6a:先端部、7:弾性仕切壁、7a:先端部、7b:シール突起、8:円弧状部材,9:円弧状部材、10:液室、11:液室、14:流体通路、15:流体通路、20:変曲部、21:変曲部、30:オリフィス通路、40:リング状部材、41:オリフィス通路
Claims (6)
- 略筒状をなす外筒と、
この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、
これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材とを備え、
この弾性防振部材には、外周面へ開口する液室凹部を設け、
この液室凹部の開口部を内面が円弧状の外周壁で覆うとともに、
液室凹部内を仕切るための弾性仕切壁を内側部材を挟んだ対称位置に設け、
これら各弾性仕切壁の径方向外方となる先端部を前記外周壁内面へ当接させることにより液室凹部内を複数の液室に区画し、
これらの各液室内へ液体を封入するとともに液室間を流体通路で連通した液封防振装置において、
前記弾性仕切壁は径方向外方へ向って先細り状に変化する先端部を有し、この先端部を前記外周壁内面へ摺動可能に当接させるとともに、
前記液室凹部は、弾性防振部材の外周部へ開口して略環状に形成される環状溝であり、前記外周壁はこの環状溝の開口部をリング状に覆うリング状部材であり、
このリング状部材は、周方向で半円弧状に分割された一対の円弧状部材からなり、両リング状部材の接続部を前記弾性仕切壁の先端部が当接する位置から周方向へずらして配置し、
前記接続部は前記各リング状部材の周方向端部に形成された対面する接合面を突き合わせて接合することにより対向して形成され、
この接続部を跨いで隣り合うリング状部材に延びてるオリフィス通路が形成され、
このオリフィス通路は一端が前記接合面に開口し、他端がリング状部材の内周面へ開口するよう各リング状部材に形成された一対の流体通路を接続部で接続することにより形成されている、ことを特徴とする液封防振装置。 - 前記弾性仕切壁の先端部にシール突起を設け、これを弾性変形させて前記外周壁内面へ摺接させたことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記弾性仕切壁の内側部材側へより硬質の芯部材を一体化したことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材とを備え、この弾性防振部材には、外周面へ開口する液室凹部を設け、この液室凹部の開口部を内面が円弧状の外周壁で覆うとともに、液室凹部内を仕切るための弾性仕切壁を内側部材を挟んだ対称位置に設け、これら各弾性仕切壁の径方向外方となる先端部を前記外周壁内面へ当接させることにより液室凹部内を複数の液室に区画し、これらの各液室内へ液体を封入するとともに液室間を流体通路で連通した液封防振装置において、前記弾性仕切壁は径方向外方へ向って先細り状に変化する先端部を有し、この先端部を前記外周壁内面へ摺動可能に当接させるとともに、
前記外周壁内面のうち、前記弾性仕切壁の先端部が摺動する部分のみを、他の部分と異なる変曲部としたことを特徴とする液封防振装置。 - 略筒状をなす外筒と、この外筒の内側へ同心又は偏心して配置される内側部材と、これら外筒及び内側部材との間に介在される弾性防振部材とを備え、この弾性防振部材には、外周面へ開口する液室凹部を設け、この液室凹部の開口部を内面が円弧状の外周壁で覆うとともに、液室凹部内を仕切るための弾性仕切壁を内側部材を挟んだ対称位置に設け、これら各弾性仕切壁の径方向外方となる先端部を前記外周壁内面へ当接させることにより液室凹部内を複数の液室に区画し、これらの各液室内へ液体を封入するとともに液室間を流体通路で連通した液封防振装置において、前記弾性仕切壁は径方向外方へ向って先細り状に変化する先端部を有し、この先端部を前記外周壁内面へ摺動可能に当接させるとともに、
前記一対の弾性仕切壁をそれぞれ他方と異なるバネ特性を有する構造にしたことを特徴とする液封防振装置。 - 前記外周壁が外筒であることを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
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