JP3736155B2 - 流体封入式筒型防振装置およびその製造方法 - Google Patents

流体封入式筒型防振装置およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内部に封入された流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした筒型の流体封入式防振装置に係り、特に、流体の流動通路としてのオリフィス通路を備えた流体封入式筒型防振装置とその製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体の一種として、軸金具と該軸金具の径方向外方に離間して配された外筒金具を本体ゴム弾性体で連結した筒型防振装置が知られており、例えば自動車用のエンジンマウントやサスペンションブッシュ,デフマウント,ボデーマウント等に用いられている。また、より優れた防振効果を得るために、本体ゴム弾性体の外周面に開口して形成された複数のポケット状凹所を外筒金具で覆蓋することにより、非圧縮性流体が封入された複数の流体室を、軸金具と外筒金具の間において、互いに周方向に離間して複数形成すると共に、それらの流体室をオリフィス通路を通じて相互に連通した流体封入式の筒型防振装置が提案されている。このような防振装置では、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用を利用することにより、ゴム弾性体だけでは得難い優れた防振効果を得ることが出来るのである。
【0003】
ところで、上記オリフィス通路は、例えば、本体ゴム弾性体の外周部分にオリフィス形成用ゴムを設け、該オリフィス形成用ゴムに対して、ポケット状凹所の開口部間に跨がって延びる凹溝を形成し、該凹溝を外筒金具で覆蓋することによって、形成される。このようなオリフィス形成構造を採用すれば、特別なオリフィス形成金具等を用いることなく、少ない部品点数でオリフィス通路を形成することが出来るのである。
【0004】
しかしながら、本発明者が検討したところ、かくの如きオリフィス形成構造の防振装置においては、特に流体の流動作用に基づく防振効果がばらつき易く、目的とする防振特性を安定して得難いことが見い出された。そこで、更なる検討を加えた結果、かかる防振装置では、外筒金具を圧入や絞り等によって本体ゴム弾性体に外嵌固定したり、完成した防振装置の外筒金具をアームアイ等の装着孔に圧入して装着固定すること等によって、外筒金具が小径化することに伴い、オリフィス形成用ゴムが圧縮変形せしめられる結果、オリフィス形成用ゴムで構成されたオリフィス通路の両側壁部がオリフィス通路内に膨出変形することとなり、それによって、オリフィス通路の断面積が設計値と異なってしまうことが大きな原因であろうとの知見を得た。
【0005】
【解決課題】
本発明は、かかる知見に基づいて為されたものであって、その解決課題とするところは、上述の如き、オリフィス形成用ゴムに設けられた凹溝を外筒金具で覆蓋せしめてオリフィス通路を形成するに際して、オリフィス通路の断面積を目標とする大きさに安定して設定することの出来る流体封入式筒型防振装置とその有利な製造方法を提供することにある。
【0006】
【解決手段】
このような課題を解決するために為された本発明の態様を、以下に記載する。なお、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせをもって採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されるものでなく、明細書全体の記載および図面に記載の発明思想に基づいて認識されることが理解されるべきである。
【0007】
本発明の第一の態様は、軸部材と該軸部材の径方向外方に離間して配された外筒部材を本体ゴム弾性体で連結し、該本体ゴム弾性体の外周面に開口して形成された複数のポケット状凹所を該外筒部材で覆蓋することにより、非圧縮性流体が封入された複数の流体室を、互いに周方向に離間して複数形成すると共に、該本体ゴム弾性体の外周部分にオリフィス形成用ゴムを設け、該オリフィス形成用ゴムに対して、前記ポケット状凹所の開口部間に跨がって延びる凹溝を形成し、該凹溝を前記外筒部材で覆蓋することにより、前記流体室を相互に連通するオリフィス通路を形成した流体封入式筒型防振装置において、前記凹溝の両側壁部分を構成する前記オリフィス形成用ゴムに対して、該凹溝の幅方向の少なくとも一方の側に位置し、該凹溝に沿って該オリフィス形成用ゴムの外周面に開口して延びる変形吸収溝を、少なくとも前記外筒部材で覆蓋された状態下において前記ポケット状凹所間を接続しない状態で形成した流体封入式筒型防振装置を、特徴とする。
【0008】
このような第一の態様に係る流体封入式防振装置においては、その製造や装着等に際しての外筒部材の小径化によって、オリフィス形成用ゴムに径方向(筒型防振装置の径方向)の圧縮力が及ぼされた際、かかる径方向の圧縮変形量に対応する分だけ、該オリフィス形成用ゴムが軸方向(筒型防振装置の軸方向)に延びるように変形する。その際、このオリフィス形成用ゴムの軸方向変形に伴って、オリフィス形成用ゴムが凹溝内に膨出することとなるが、それと共に、該オリフィス形成用ゴムは変形吸収溝内にも膨出する。それ故、この変形吸収溝内への膨出変形量の分だけ、オリフィス形成用ゴムの凹溝内への膨出変形量、即ち凹溝の側壁部分の変形量が抑えられ得て、オリフィス通路の断面積の変化が軽減乃至は防止されるのであり、以て、目的とするオリフィス通路の断面積が有利に且つ安定して確保され得て、所期の防振効果を有効に得ることが出来るのである。
【0009】
なお、かかる第一の態様の筒型防振装置において、オリフィス形成用ゴムは、本体ゴム弾性体と実質的に別体形成することも可能であるが、本体ゴム弾性体によってオリフィス形成用ゴムを構成しても良い。また、変形吸収溝は、凹溝の両側に形成することが望ましく、それによって、オリフィス通路の断面積を、より安定して設定することが出来る。更にまた、凹溝の形状等は、要求される防振特性等に応じて決定されるものであって限定されるものでなく、例えば、ポケット状凹所の開口部間に跨がって直線的に延びる形状の他、蛇行する形状や往復する形状等も採用可能である。更に、変形吸収溝は、凹溝に実質的に沿って形成されていれば良く、凹溝と一定距離を隔てて平行に延びる形状の他、凹溝の形状に拘わらずに周方向に略直線的に延びる形状等も採用可能である。また、変形吸収溝は、オリフィス形成用ゴムの変形を有効に吸収し得るものであれば良く、その深さや幅等は特に限定されるものでないが、オリフィス形成用ゴムの変形をより有効に吸収するためには、例えば、変形吸収溝の深さを、凹溝の深さと略同じに設定することが望ましい。更にまた、変形吸収溝は、周方向に連続している必要はなく、周方向に分断された複数の分割溝で構成しても良い。また、変形吸収溝は、少なくとも前記外筒部材で覆蓋されてオリフィス形成用ゴムが弾性変形せしめられた状態下において前記ポケット状凹所間を接続しない構造とされていれば良く、当初からポケット状凹所間よりも短い長さをもって変形吸収溝を形成する他、外筒部材の外嵌固定に伴うオリフィス形成用ゴムの弾性変形によって変形吸収溝の一部乃至は全部が潰れて実質的に非連通状態とされる構造をもって形成することも可能である。
【0010】
また、上記第一の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、例えば、前記変形吸収溝を、一方のポケット状凹所にだけ連通した状態で形成した構成が、好適に採用され得る。このような構成を採用すれば、外筒部材の外嵌固定に際してオリフィス形成用ゴムが弾性変形せしめられることに伴って、変形吸収溝の容積変化(減少)が生ぜしめられることとなるが、変形吸収溝と流体室の間での流体流動が許容されることにより、この変形吸収溝における容積変化が一層容易に許容されるといった利点がある。なお、かかる変形吸収溝の流体室への連通状態は、外筒部材の外嵌固定後、実質的に閉塞状態とされても良い。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、第一の態様に係る流体封入式筒型防振装置において、前記凹溝の両側壁面を、前記オリフィス形成用ゴムに外力が及ぼされていない状況下で、外周側に向かって互いに拡開する方向に傾斜するテーパ面とする一方、前記変形吸収溝の該凹溝側の側壁面を、前記オリフィス形成用ゴムに外力が及ぼされていない状況下で、外周側に向かって略径方向に延びる垂直面としたことを、特徴とする。
【0012】
このような第二の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、オリフィス形成用ゴムに径方向の圧縮力が及ぼされた際、凹溝のテーパ面を構成する側壁部分が、オリフィス形成用ゴムの凹溝内への膨出方向の変形を抑えるように作用する。その結果、オリフィス形成用ゴムが径方向に圧縮された際、オリフィス形成用ゴムが、凹溝内よりも変形吸収溝内に、優先的に膨出変形せしめられるのであり、凹溝内への膨出変形がより効果的に軽減乃至は防止され得る。なお、かかる第二の態様の筒型防振装置においても、凹溝の少なくとも一方の側に変形吸収溝が形成されていれば良いが、凹溝の両側にそれぞれ変形吸収溝を設けることが望ましい。
【0013】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る流体封入式筒型防振装置において、前記凹溝の両側壁部分を構成する前記オリフィス形成用ゴムの外周面において、該凹溝と前記変形吸収溝の間を周方向に連続して延びて、前記外筒部材に圧接されるシールリップを一体形成し、且つ該シールリップを、該凹溝と該変形吸収溝の開口部間の中央から該変形吸収溝の間に位置せしめたことを、特徴とする。
【0014】
このような第三の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、凹溝と変形吸収溝を仕切る隔壁部分が、その外周面上に突設されたシールリップにより、外筒部材に対してより強く圧接される。これにより、凹溝で形成されたオリフィス通路から変形吸収溝への非圧縮性流体の流出入がより有効に防止され、オリフィス通路からの流体漏れに起因する防振特性の変化が防止されて、目的とする防振性能をより安定して得ることが出来る。加えて、シールリップを、凹溝と変形吸収溝の中央か、或いは中央よりも変形吸収溝側に偏倚させて位置せしめたことにより、外筒部材のシールリップへの圧接に伴うオリフィス形成用ゴムの圧縮量の増大が、該オリフィス形成用ゴムの変形吸収溝側への膨出によって有利に吸収されて、凹溝側への膨出量の増加に伴うオリフィス通路の断面積の変化も有利に軽減乃至は回避され得る。
【0015】
なお、オリフィス形成用ゴムの外周面に突出して外筒部材に圧接されるシールリップは、上述の如く凹溝と変形吸収溝の間を周方向に延びるシールリップに加えて、或いはそれに代えて、変形吸収溝の開口部幅方向外側を周方向に延びる構造や、凹溝および変形吸収溝と交差して軸方向に延びる構造、または凹溝の開口部幅方向両側に沿って周方向に延びる構造等をもって、適宜に形成され得る。
【0016】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る流体封入式筒型防振装置において、前記本体ゴム弾性体の外周面に対して、前記ポケット状凹所の形成部位に対応する位置に窓部を有する金属スリーブを接着し、該金属スリーブに前記外筒部材を外嵌固定すると共に、該金属スリーブの外周面上に前記オリフィス形成用ゴムを設けて、該オリフィス形成用ゴムを前記本体ゴム弾性体に対して実質的に独立せしめたことを、特徴とする。
【0017】
このような第四の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、オリフィス形成用ゴムが本体ゴム弾性体から実質的に独立されることにより、軸部材と外筒部材の間に及ぼされる外力にて本体ゴム弾性体が弾性変形せしめられた場合でも、オリフィス形成用ゴムの変形が防止される。それ故、振動荷重等の外力の入力時にも、オリフィス通路の断面形状が有利に維持されて、より優れた防振性能の安定化が実現されるのである。
【0018】
また、本発明の第五の態様は、前記第四の態様に係る流体封入式筒型防振装置において、前記金属スリーブの軸方向中間部分を径方向内方に凹ませて、前記窓部間に跨がって周方向に延びる周溝を形成し、該周溝内に前記オリフィス形成用ゴムを配設すると共に、該金属スリーブの軸方向両端部分に対して、それぞれ、前記外筒部材をシールゴム層を挟んで密着固定したことを、特徴とする。
【0019】
このような第五の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、オリフィス形成用ゴムを、本体ゴム弾性体から、有利に独立形成することが出来る。しかも、金属スリーブの軸方向両端部分を、外筒部材に対して、優れたシール性を確保しつつ固定することが出来るのであり、優れた封入流体の流体密性を得ることが可能となる。
【0020】
また、本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係る流体封入式筒型防振装置において、前記外筒部材の軸方向両側部分に前記シールゴム層を接着して設け、該シールゴム層を挟んで、該外筒部材を前記金属スリーブの軸方向両端部分に密着固定する一方、該外筒部材の軸方向中央部分を前記オリフィス形成用ゴムに対して直接に密着せしめたことを、特徴とする。
【0021】
このような第六の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、オリフィス形成用ゴムの外周面に対して、外筒部材が、シールゴム層等を介することなく直接に圧接されることから、オリフィス形成用ゴムの径方向の圧縮量がより安定して設定され得、オリフィス通路の断面積の設定精度の更なる向上が図られ得る。また、金属スリーブの軸方向両端部分は、そこにシールゴム層等が被着されることなく、直接に外周面に露出されることから、本体ゴム弾性体の外周面に金属スリーブを加硫接着して形成した一体加硫成形品に対して、絞り加工を施して予圧縮を加えることも容易に可能となる。
【0022】
また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る流体封入式筒型防振装置において、前記変形吸収溝を前記外筒部材によって覆蓋することで形成される中空領域を外部空間に連通する連通路を設けたことを、特徴とする。
【0023】
このような第七の態様に係る流体封入式筒型防振装置においては、変形吸収溝と外部空間の間で、連通路を通じての流体の給排が許容される。それ故、変形吸収溝を外筒部材で覆蓋するに際しても、変形吸収溝の内圧増大が回避されるのであり、以て、変形吸収溝において、壁面の膨出変形が容易に許容されることとなる。なお、連通路は、例えば、外筒部材を貫通して形成したり、或いは本体ゴム弾性体や金属スリーブと外筒部材の嵌着面間を延びる形態をもって形成したりすることが可能である。
【0024】
ところで、上述の如き構造の流体封入式筒型防振装置は、従来と同様な手法に従って製造することが可能であり、例えば、本体ゴム弾性体を、別途形成した外筒部材に対して軸方向に圧入固定することにより、外筒部材を本体ゴム弾性体に組み付けることも可能であるが、そこにおいて、特に、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係る流体封入式筒型防振装置を製造するに際して、前記本体ゴム弾性体に、別途形成した前記外筒部材を外挿した後、該外筒部材を絞り加工することにより、該外筒部材を該本体ゴム弾性体に組み付けるようにした流体封入式筒型防振装置の製造方法を、特徴とする。
【0025】
このような第八の態様に係る流体封入式筒型防振装置の製造方法に従えば、外筒部材を本体ゴム弾性体に組み付けるに際して、オリフィス形成用ゴムに及ぼされる圧縮力が径方向に安定して及ぼされるのであり、オリフィス形成用ゴムを軸方向に傾斜して押し潰すような不安定な圧縮力の作用が軽減乃至は防止され得る。それ故、オリフィス通路の断面積と断面形状が、より安定して確保されるのであり、以て、安定した防振性能を得ることが出来るのである。
【0026】
また、本発明の第九の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係る流体封入式筒型防振装置を製造するに際して、前記本体ゴム弾性体を、外周面に金属スリーブが加硫接着された一体加硫成形品にて構成し、該金属スリーブを絞り加工等で縮径して本体ゴム弾性体に予圧縮を加える一方、前記外筒部材の少なくとも軸方向両端部の内周面にシールゴム層を加硫接着し、該外筒部材を該金属スリーブに外挿して該外筒部材を絞り加工することにより、該外筒部材を該金属スリーブの軸方向両端部の外周面に対して、該シールゴム層を挟んで嵌着固定するようにした流体封入式筒型防振装置の製造方法を、特徴とする。
【0027】
このような第九の態様に係る流体封入式筒型防振装置の製造方法に従えば、本体ゴム弾性体の加硫収縮に起因する引張応力を、金属スリーブの絞り加工で軽減乃至は解消することが出来、以て、耐久性の向上が達成され得る。また、外筒部材と金属スリーブの嵌着面におけるシール性、ひいては封入流体の流体密性が、高度に実現され得る。
【0028】
更にまた、本発明の第十の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係る流体封入式筒型防振装置を製造するに際して、本体ゴム弾性体に外筒部材を外挿状態で組み付けることによって、密閉された流体室およびオリフィス通路を形成した後に、それら流体室やオリフィス通路に対して非圧縮性流体を注入して充填するようにした流体封入式筒型防振装置の製造方法を、特徴とする。
【0029】
このような第十の態様に係る流体封入式筒型防振装置の製造方法に従えば、外筒部材を縮径して本体ゴム弾性体に組み付ける際、変形吸収溝に非圧縮性流体が充填されておらず、該変形吸収溝が空間として存在することから、該変形吸収溝の側壁部の膨出変形が一層容易に許容される。それ故、外筒部材の組み付けに際してオリフィス形成用ゴムが径方向に圧縮せしめられた際、オリフィス形成用ゴムの変形吸収溝内への膨出変形によって、凹溝の側壁部分の膨出変形がより効果的に軽減乃至は防止されることとなり、オリフィス通路の断面積が一層有利に維持され得るのである。
【0030】
なお、外筒金具を本体ゴム弾性体に組み付けた後での非圧縮性流体の注入は、例えば、注射針状の中空針を本体ゴム弾性体に突き刺し、該中空針を通じて非圧縮性流体の注入と空気の吸引を行ったり、或いは、外筒部材等に設けた貫通孔を通じて非圧縮性流体の注入と空気の吸引を行った後に、該貫通孔をブラインドリベット等で封止することなどによって、行うことが可能である。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
先ず、図1〜2には、本発明の一実施形態としての自動車用エンジンロールマウント10が示されている。かかるマウント10は、軸部材としての内筒金具12と、外筒部材としての外筒金具14が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造を有している。そして、内筒金具12がパワーユニットに固定されると共に、外筒金具14がボデーに固定されることにより、パワーユニットとボデーの間に介装されるようになっている。
【0033】
より詳細には、内筒金具12は、直管状の中空円筒形状を有しており、その中心孔18に挿通されるボルト等によって、図示しないパワーユニットに対して固定的に取り付けられるようになっている。また、内筒金具12の軸方向中央部分には、ストッパブロック20が圧入固定されている。このストッパブロック20は、合成樹脂等の硬質材で形成されており、嵌着孔22を有する取付筒部24を有している。また、取付筒部24の外周面には、径方向一方向(図1中、上下方向)で対向する部分において、それぞれ径方向外方に向かって突出し、先端部に向かって周方向両側に略扇状に広がるストッパ突部26,26が一体形成されている。
【0034】
また、内筒金具12の外周側には、大径円筒形状の金属スリーブ28が、径方向外方に離間して内筒金具12の周りを囲む状態で、略同軸的に配設されている。そして、内筒金具12と金属スリーブ28の径方向対向面間に、本体ゴム弾性体16が介装されており、該本体ゴム弾性体16にて、内筒金具12と金属スリーブ28が弾性的に連結されている。即ち、本体ゴム弾性体16は、略厚肉の円筒形状を有しており、その内周面が内筒金具12の外周面に接着されていると共に、その外周面が金属スリーブ28の内周面に接着されている。特に、本実施形態では、内筒金具12と金属スリーブ28を各所定位置にセットした成形キャビティにゴム材料を充填して本体ゴム弾性体16を加硫成形することにより、図3に示されている如く、本体ゴム弾性体16が、その内外周面に内筒金具12と金属スリーブ28がそれぞれ加硫接着された一体加硫成形品30として形成されている。
【0035】
この一体加硫成形品30を構成する本体ゴム弾性体16には、径方向一方向で対向する部分において、外周面に開口するポケット状凹所としてのポケット部32が一対形成されている。また、金属スリーブ28には、径方向一方向で対向する部分において、周方向に半周以下の長さで延びる窓部34が一対形成されている。そして、これらの窓部34,34を通じて、本体ゴム弾性体16のポケット部32,32が、それぞれ開口せしめられている。また、各ポケット部32の内部には、内筒金具12に固設されたストッパブロック20のストッパ突部26が、ポケット部32の底面の中央から突出し、ポケット部32の開口部までは至らない高さで位置せしめられている。更に、各ストッパ突部26は、突出先端面の周方向両側の肩部分が中央部分よりも段差状に低くされて、突出高さが小さくされており、これら両肩部分の突出先端面上に、緩衝ゴム層36,36が形成されている。なお、これらの緩衝ゴム層36,36は、ストッパ突部26の表面に沿ってまわされた本体ゴム弾性体16によって形成されている。また、図面上では必ずしも明確でないが、各緩衝ゴム層36,36の表面には、波状の多数の凹凸が付されており、外筒金具14への当接時の打音や衝撃の軽減が図られている。
【0036】
また、金属スリーブ28の軸方向中央部分38は、軸方向両側部分40よりも小径とされている。これにより、一体加硫成形品30の外周部分において、ポケット部32,32の周方向両端部間に跨がって、外周面に開口して周方向に延びる幅広の周溝42,42が形成されている。更に、これらの周溝42,42には、それぞれ、ゴム弾性体が充填されてオリフィス形成用ゴム44が形成されている。特に本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、金属スリーブ28の窓部34から周溝42内にまわされることにより、オリフィス形成用ゴム44が、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されている。しかし、オリフィス形成用ゴム44は、その周囲が金属スリーブ28で囲まれており、該金属スリーブ28によって、オリフィス形成用ゴム44が、本体ゴム弾性体16から実質的に独立せしめられて、本体ゴム弾性体16からオリフィス形成用ゴム44への応力伝達が防止されるようになっている。
【0037】
ここにおいて、オリフィス形成用ゴム44は、金属スリーブ28の周溝42の全体に略完全に充填されており、その外周面(表面)が、金属スリーブ28の両側部分40,40の外周面と略面一とされている。そして、このオリフィス形成用ゴム44に対して、周方向に直線的に延びる一つの凹溝46が形成されている。かかる凹溝46は、周溝42の幅方向(金属スリーブ28の軸方向)の中央部分に位置し、金属スリーブ28の両窓部34,34間に跨がって延びている。特に本実施形態では、図4に示されているように、全長に亘って略一定の逆台形状断面とされており、底幅寸法よりも開口幅寸法が大きくされている。換言すれば、凹溝46の両側壁面48,48は、何れも、底部から開口部側に向かって次第に幅方向両側に広がる傾斜面(テーパ面)とされている。なお、かかる側壁面48の傾斜角度は、特に限定されるものでなく、金属スリーブ28の軸直面よりも軸方向外方に僅かでも傾斜していれば良いが、本実施形態では、金属スリーブ28の軸直面に対して軸方向外方に30〜60度の角度で傾斜するように、設定されることが望ましい。
【0038】
さらに、オリフィス形成用ゴム44には、凹溝46を周溝42の幅方向で挟んだ両側に位置して、一対の変形吸収溝50,50が形成されている。これらの変形吸収溝50は、何れも、凹溝46の側壁部分を構成するオリフィス形成用ゴム44において、凹溝46から周溝42の幅方向に所定距離だけ離間した位置を、凹溝46と略一定の間隔を保った状態で、凹溝46に沿って周方向に延びている。また、かかる変形吸収溝50の周方向長さは、オリフィス形成用ゴム44および周溝42より短くされており、周方向両側に終端部を有する有限長の構造とされて、何れの窓部34にも僅かに至らない周方向長さとされている。なお、変形吸収溝50の周方向長さは、周溝42の周方向長さの1/2以上が望ましく、より好適には2/3以上とされる。また、変形吸収溝50は、全長に亘って略一定の矩形状断面とされており、その両側壁面52,54は、何れも、金属スリーブ28の中心軸に対して略垂直な垂直面とされている。これにより、変形吸収溝50における凹溝46側の壁面52が、少なくとも凹溝46の壁面48以上の角度で開口部側に向かって拡開しない構造とされている。なお、かかる変形吸収溝50における凹溝46側の壁面52は、必ずしも垂直面である必要はなく、凹溝46の壁面48より小さな傾斜角度であれば開口部側に向かって拡開する方向に傾斜したテーパ面であっても良く、或いは開口部側に向かって開口幅が小さくなる方向に傾斜した逆テーパ面であっても良い。また、変形吸収溝50における凹溝46と反対側の壁面54は、その傾斜角度が限定されるものでない。
【0039】
なお、本実施形態では、凹溝46と変形吸収溝50,50の何れもが、オリフィス形成用ゴム44の肉厚の略全体に亘る深さ、換言すれば金属スリーブ28にまで略達する程の深さで形成されている。尤も、これらの深さ寸法は、特に限定されるものでなく、例えば、凹溝46は、要求される防振性能に応じて適宜の深さで形成される。また、凹溝46と変形吸収溝50,50は、必ずしも同じ深さとする必要はなく、例えば変形吸収溝50を、凹溝46より浅く形成しても良い。更にまた、凹溝46の幅は、要求される防振性能に応じて適宜の大きさとされる。また、変形吸収溝50,50の幅は、凹溝46の大きさに関わらずに、適宜に設定可能であるが、後述するオリフィス形成用ゴム44の変形量の吸収作用を充分に確保するために、例えば、1mm以上の幅寸法をもって形成することが望ましく、凹溝46の幅寸法よりも小さくて良い。
【0040】
さらに、オリフィス形成用ゴム44には、その外周面上に第一〜第三の複数条のシールリップ56,58,60が、金属スリーブ28の両側部分40の外周面よりも外方に突出する高さで一体的に突出形成されている。なお、本実施形態では、シールリップ56,58,60の何れも、略半円断面形状とされているが、その断面形状は特に限定されるものでない。第一のシールリップ56,56は、凹溝46を挟んだ両側に位置して、オリフィス形成用ゴム44の周方向全長に亘って連続して、凹溝46と略平行に形成されている。換言すれば、第一のシールリップ56,56は、凹溝46とその両側の変形吸収溝50を仕切る隔壁部分62の外周面上において、それら凹溝46と変形吸収溝50の間に形成されている。しかも、この第一のシールリップ56は、隔壁部分62の外周面において、その幅方向中央か、該幅方向中央よりも変形吸収溝50側に偏倚して位置せしめられており、図4においてA≧Bとされている。また、第二のシールリップ58,58は、各変形吸収溝50よりも更に軸方向外側に位置して、オリフィス形成用ゴム44の両側端部近くを周方向の全長に亘って連続して延びる構造とされている。更にまた、第三のシールリップ60は、凹溝46の幅方向両側に形成された第一のシールリップ56から、それぞれ周溝42の幅方向外方に向かって延び出し、第二のシールリップ58と直交して、オリフィス形成用ゴム44の幅方向端部にまで至る構造をもって形成されている。特に、本実施形態では、かかる第三のシールリップ60が、オリフィス形成用ゴム44の外周面上において、互いに周方向に離間して、凹溝46を挟んで軸方向に延びる形態で4本設けられている。なお、図3から明らかなように、各変形吸収溝50は、第一〜三のシールリップ56,58,60によって、その周囲を取り囲まれた状態となっている。
【0041】
そして、このような構造とされた一体加硫成形品30に対して、外筒金具14が外挿され、嵌着固定されている。かかる外筒金具14は、全体として大径の円筒形状とされており、幅方向中央部分が所定幅に亘って内周面側に突出せしめられている。これにより、軸方向の中央部分が厚肉円筒形状の密着部64とされていると共に、軸方向の両側部分が薄肉円筒形状の嵌着部66,66とされている。また、各嵌着部66には、薄肉のシールゴム層68が接着されており、嵌着部66の内周面は、その略全面に亘って、シールゴム層68で覆われている。なお、本実施形態では、シールゴム層68の肉厚が、密着部64と嵌着部66の間の段差寸法と略同じにされることにより、シールゴム層68の内周面と密着部64の内周面が略面一とされている。なお、かかるシールゴム層68は、外筒金具14の内周面に加硫接着されることが望ましい。
【0042】
また、外筒金具14を一体加硫成形品30に組み付けるに際しては、例えば、一体加硫成形品30を外筒金具14に圧入固定することも可能であるが、好ましくは、外筒金具14の内径寸法を、一体加硫成形品30に対して圧入だけで固定するには不十分な程度に大きく設定し、先ず、外筒金具14を一体加硫成形品30に外挿した後、八方絞り加工等を施して外筒金具14を小径化せしめて一体加硫成形品30に外嵌固定する。なお、外筒金具14の組み付け前に、一体加硫成形品30には、必要に応じて、金属スリーブ28に八方絞り等を加えて、縮径加工を施す。これにより、本体ゴム弾性体16において、加硫時の収縮による引張応力を軽減乃至は解消したり、予圧縮を加えること等によって、耐久性の向上を図ることが出来る。特に本実施形態では、金属スリーブ28の両側部分40,40が、何れも、ゴム層等で被覆されることなく直接外部に露呈されていることから、金属スリーブ28に対する絞り加工を容易に且つ有利に施すことが可能である。
【0043】
これにより、外筒金具14の嵌着部66,66が、それぞれシールゴム層68を介して、金属スリーブ28の両側部分40,40に対して圧着固定される。また、金属スリーブ28の窓部34,34が外筒金具14で覆蓋されることにより、ポケット部32,32によって、内部に非圧縮性流体が封入された一対の流体室70,70が形成される。さらに、金属スリーブ28の密着部がオリフィス形成用ゴム44の外周面に密着されることにより、凹溝46が外筒金具14で覆蓋されて、前記一対の流体室70,70を相互に連通するオリフィス通路72,72が形成される。なお、非圧縮性流体の封入は、例えば、一体加硫成形品30と外筒金具14の組み付けを、かかる流体中で行うこと等によって行うことが出来る。或いは、一体加硫成形品30と外筒金具14を組み付けた後に、流体室70の壁部を構成する本体ゴム弾性体16に中空針を突き刺して貫通させ、該中空針を通じて空気の吸引と非圧縮性流体の注入を行うようにしても良い。また、一体加硫成形品30と外筒金具14を組み付けた後、流体室70の外周壁部を構成する外筒金具14に対して、貫通孔を予め穿孔し或いは後穿孔し、該貫通孔を通じて空気の吸引と非圧縮性流体の注入を行うようにしても良い。
【0044】
このような構造とされたマウント10は、内筒金具12が、前述の如くボルト等を介してパワーユニットに取り付けられる一方、外筒金具14が、ボデー側に設けられた装着孔に圧入固定されることによって取り付けられ、以て、パワーユニットとボデーの間に装着される。そして、かかる装着状態下、内外筒金具12,14間に対して、流体室70,70が対向する径方向の振動が入力されると、両流体室70,70間で相対的な内圧変化が生ぜしめられることとなり、その相対的な内圧変化に基づいて、両流体室70,70間で、オリフィス通路72,72を通じての流体流動が生ぜしめられる。その結果、オリフィス通路72を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用に基づいて、有効な防振効果が発揮されるのである。
【0045】
ところで、流体の流動作用に基づく防振効果が発揮されるシステム(理論)は公知であるから、ここでは詳述しないが、発揮される防振効果は、オリフィス通路72の断面積と長さの比の値に対応する。それ故、防振すべき振動に応じて、オリフィス通路72の断面積と長さが、設計段階で設定されることとなる。
【0046】
ここにおいて、上述の如き構造とされたマウント10では、外筒金具14を一体加硫成形品30に外嵌固定し、一体加硫成形品30の外周面に形成された凹溝46を外筒金具14で覆蓋することによって、オリフィス通路72が形成されており、外筒金具14は、凹溝46を形成するオリフィス形成用ゴム44の外周面に対して、充分な流体密性が発揮されるように、ある程度の当接圧力をもって密着せしめられている。それ故、図5に示される如く、外筒金具14が装着されることにより、オリフィス形成用ゴム44には、径方向の圧縮変形が生ぜしめられるのであり、この径方向の圧縮変形量分だけ、オリフィス形成用ゴム44が周方向や軸方向等の外筒金具14に沿った方向に拡張(伸長)変形せしめられる。これにより、オリフィス通路72を形成する凹溝46の両側壁部(隔壁部分)62,62にも、両側壁面48,48が凹溝46の内方に膨出変形する方向の弾性変形力が及ぼされることとなる。そして、仮に、両側壁面48,48が凹溝46の内方に大きく膨出変形するとオリフィス通路72の断面積が減少する結果、設計段階で設定されたオリフィス通路72の断面積を安定して得ることが出来なくなり、非圧縮性流体の流動作用に基づく目的とする防振効果が有効に発揮されなくなるおそれがある。
【0047】
しかしながら、上述の如き構造とされたマウント10においては、凹溝46の両側壁面48,48が、外周面側に拡開するテーパ面とされていることから、凹溝46の両側壁部(隔壁部分)62,62に対して径方向の圧縮力が及ぼされた際にも、両側壁面48,48を凹溝46の内方に膨出変形させる方向の分力が抑えられて、両側壁面48,48の凹溝46内への膨出変形量が抑えられる。しかも、凹溝46の両側には、変形吸収溝50,50が形成されており、これらの変形吸収溝50の壁面52,54も、変形吸収溝50の内方への膨出変形が許容されるようになっている。加えて、変形吸収溝50の壁面52は、凹溝46の壁面48に比して、外周側に向かって拡開する方向のテーパ角が小さく(特に本実施形態では、略径方向に延びる垂直面)されていることから、凹溝46の壁面48よりも、変形吸収溝50の壁面52の方が、オリフィス形成用ゴム44に径方向の圧縮力が及ぼされた際における膨出変形する方向の分力が大きく生ぜしめられるようになっている。
【0048】
従って、オリフィス形成用ゴム44の外周面に外筒金具14が圧接されることによってオリフィス形成用ゴム44に生ぜしめられる、外筒金具14に沿った方向の拡張変形が、凹溝46の壁面48よりも、変形吸収溝50の壁面52に対して、優先的に生ぜしめられる。そして、この変形吸収溝50の壁面52が膨出変形した量だけ、凹溝46の壁面48の膨出変形量が軽減される。それ故、凹溝46、ひいてはオリフィス通路72の断面積が、有利に且つ安定して確保され得るのであり、以て、該オリフィス通路72を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づいて、目的とする防振効果を有効に且つ安定して得ることが出来るのである。
【0049】
特に、本実施形態では、変形吸収溝50が、何れの流体室70およびオリフィス通路72からも独立した密閉室構造とされていると共に、第一〜第三のシールリップ56,58,60によって、変形吸収溝50の流体室70およびオリフィス通路72に対する流体密性の一層の向上が図られていることから、変形吸収溝50による流体流路の短絡や流体漏れ等が有利に防止されるのであり、それによって、より安定した防振効果が発揮される。
【0050】
また、凹溝46と変形吸収溝50の間に形成された第一のシールリップ56の圧縮量に相当する分だけ、オリフィス通路72と変形吸収溝50の間のシール性をより向上させることが出来ると共に、この第一のシールリップ56を、凹溝46よりも変形吸収溝50側に偏倚して位置させることにより、第一のシールリップ56の圧縮変形に伴う凹溝46の壁面48の膨出変形量の増大を、変形吸収溝50の壁面52の膨出変形量を優先的に増大させて、抑えることが出来るのである。なお、第一のシールリップ56は、凹溝46の壁面48の膨出変形量を抑えつつ、良好なるシール性を得るために、好ましくは金属スリーブ28の両側部分40の外周面と面一とされたオリフィス形成用ゴム44の外周面から、外方に0.2〜0.4mm程度の突出高さで形成される。
【0051】
更にまた、本実施形態のマウント10では、外筒金具14が、その密着部64において、オリフィス形成用ゴム44の外周面に対して、シールゴム層68等を介することなく、直接に圧接されていることから、オリフィス形成用ゴム44の変形状態がより安定して実現されて、オリフィス通路72の断面積が一層安定して確保されるといった利点がある。
【0052】
さらに、本実施形態のマウント10においては、外筒金具14を一体加硫成形品30に外挿した後、八方絞り加工等を施して外筒金具14を金属スリーブ28に嵌着固定する製造方法を採用することにより、オリフィス形成用ゴム44に対して、外筒金具14の圧接力を、径方向に安定して及ぼすことが出来るのであり、それによって、オリフィス形成用ゴム44の変形形態が安定化されて、オリフィス通路72の断面積の安定化、引いては発揮される防振性能の安定化が一層有利に実現され得る。
【0053】
そして、変形吸収溝50を設けたこと等による、凹溝46の壁面48の膨出量の抑制効果は、マウント10をボデーに装着するに際して、ボデー側部材に設けられた装着孔に外筒金具14を圧入固定することに伴って、外筒金具14が縮径変形されて、外筒金具14のオリフィス形成用ゴム44に対する圧接力が更に増大された場合にも、有効に発揮される。それ故、マウント10の最終的な装着状態下においても、オリフィス通路72の断面積が、設計値に近い値に安定して維持され得るのであり、以て、目的とする防振効果を安定して得ることが出来るのである。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって何等、限定的に解釈されるものでない。
【0055】
例えば、前記実施形態では、一対の流体室70,70が形成されていたが、三つ以上の流体室を備えた防振装置に対しても、本発明は適用可能である。また、前記実施形態では、振動入力時に互いに増減が逆となる内圧が積極的に生ぜしめられる一対の流体室70,70が形成されていたが、その一つの流体室を、変形が容易に許容される可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積変化が容易に許容されて内圧変化が吸収される平衡室にて構成することも可能である。なお、その際、平衡室の可撓性膜は、例えば、前記実施形態のマウント10において、本体ゴム弾性体16に対して、軸方向に貫通するスリットを形成して、一方の流体室の底壁部を薄肉の変形容易な可撓性ゴム膜とすること等によって、有利に実現され得る。
【0056】
また、互いに異なるチューニングが施された二つ以上のオリフィス通路を備える場合には、そのうちの少なくとも一つのオリフィス通路を、本発明に従う構造をもって形成することも可能である。
【0057】
更にまた、一つの流体室の壁部の一部を加振すること等によって、該流体室の内圧を制御する内圧制御手段を設けた能動型の筒型防振装置にも、本発明は、適用可能である。
【0058】
さらに、本体ゴム弾性体16の外周面に金属スリーブ28を設けることは、本体ゴム弾性体16に対する外筒金具14の組付強度の確保や封入流体のシール性の確保等において極めて有効であるが、かかる金属スリーブは、本発明において必須のものではない。
【0059】
加えて、本発明が、エンジンマウント以外の自動車用、或いはそれ以外に用いられる各種の流体封入式筒型防振装置に対して、何れも、適用され得ることは、勿論である。
【0060】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0061】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明によれば、製造や装着等に際しての外筒部材の小径化に伴って生ぜしめられるオリフィス形成用ゴムの圧縮変形が、変形吸収溝内へのオリフィス形成用ゴムの膨出変形にて吸収されることにより、オリフィス通路の断面形状の変化が軽減乃至は防止され得る。それ故、目的とするオリフィス通路の断面積が有利に且つ安定して確保され得て、該オリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づく所期の防振効果を有効に得ることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用エンジンロールマウントを示す横断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1におけるII−II断面図である。
【図3】図1に示されたエンジンロールマウントを構成する一体加硫成形品を示す側面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面の要部を拡大して示す説明図である。
【図5】図1に示されたエンジンロールマウントにおける、図4に対応する断面説明図である。
【符号の説明】
10 エンジンロールマウント
12 内筒金具
14 外筒金具
16 本体ゴム弾性体
28 金属スリーブ
30 一体加硫成形品
32 ポケット部
44 オリフィス形成用ゴム
46 凹溝
50 変形吸収溝
70 流体室
72 オリフィス通路

Claims (8)

  1. 軸部材と該軸部材の径方向外方に離間して配された外筒部材を本体ゴム弾性体で連結し、該本体ゴム弾性体の外周面に開口して形成された複数のポケット状凹所を該外筒部材で覆蓋することにより、非圧縮性流体が封入された複数の流体室を、互いに周方向に離間して複数形成すると共に、該本体ゴム弾性体の外周部分にオリフィス形成用ゴムを設け、該オリフィス形成用ゴムに対して、前記ポケット状凹所の開口部間に跨がって延びる凹溝を形成し、該凹溝を前記外筒部材で覆蓋することにより、前記流体室を相互に連通するオリフィス通路を形成した流体封入式筒型防振装置において、
    前記凹溝の両側壁部分を構成する前記オリフィス形成用ゴムに対して、該凹溝の幅方向の少なくとも一方の側に位置し、該凹溝に沿って該オリフィス形成用ゴムの外周面に開口して延びる変形吸収溝を、少なくとも前記外筒部材で覆蓋された状態下において前記ポケット状凹所間を接続しない状態で形成したことを特徴とする流体封入式筒型防振装置。
  2. 前記凹溝の両側壁面を、前記オリフィス形成用ゴムに外力が及ぼされていない状況下で、外周側に向かって互いに拡開する方向に傾斜するテーパ面とする一方、前記変形吸収溝の該凹溝側の側壁面を、前記オリフィス形成用ゴムに外力が及ぼされていない状況下で、外周側に向かって略径方向に延びる垂直面とした請求項1に記載の流体封入式筒型防振装置。
  3. 前記凹溝の両側壁部分を構成する前記オリフィス形成用ゴムの外周面において、該凹溝と前記変形吸収溝の間を周方向に連続して延びて、前記外筒部材に圧接されるシールリップを一体形成し、且つ該シールリップを、該凹溝と該変形吸収溝の開口部間の中央から該変形吸収溝の間に位置せしめた請求項1又は2に記載の流体封入式筒型防振装置。
  4. 前記本体ゴム弾性体の外周面に対して、前記ポケット状凹所の形成部位に対応する位置に窓部を有する金属スリーブを接着し、該金属スリーブに前記外筒部材を外嵌固定すると共に、該金属スリーブの外周面上に前記オリフィス形成用ゴムを設けて、該オリフィス形成用ゴムを前記本体ゴム弾性体に対して実質的に独立せしめた請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式筒型防振装置。
  5. 前記金属スリーブの軸方向中間部分を径方向内方に凹ませて、前記窓部間に跨がって周方向に延びる周溝を形成し、該周溝内に前記オリフィス形成用ゴムを配設すると共に、該金属スリーブの軸方向両端部分に対して、それぞれ、前記外筒部材をシールゴム層を挟んで密着固定した請求項4に記載の流体封入式筒型防振装置。
  6. 前記外筒部材の軸方向両側部分に前記シールゴム層を接着して設け、該シールゴム層を挟んで、該外筒部材を前記金属スリーブの軸方向両端部分に密着固定する一方、該外筒部材の軸方向中央部分を前記オリフィス形成用ゴムに対して直接に密着せしめた請求項5に記載の流体封入式筒型防振装置。
  7. 前記変形吸収溝を前記外筒部材によって覆蓋することで形成される中空領域を外部空間に連通する連通路を設けた請求項1乃至6の何れかに記載の流体封入式筒型防振装置。
  8. 請求項1乃至7の何れかに記載の流体封入式筒型防振装置を製造するに際して、
    前記本体ゴム弾性体に、別途形成した前記外筒部材を外挿した後、該外筒部材を絞り加工することにより、該外筒部材を該本体ゴム弾性体に組み付けることを特徴とする流体封入式筒型防振装置の製造方法。
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