JP4179705B2 - 液封防振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車用サブフレームマウント等に使用して好適な液封防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特公平7−99187号には、内筒金具と外筒金具を内外に配置し、これらの金具間をゴム弾性体で連結するとともに、ゴム弾性体の周囲に外周へ開口し、かつ内筒金具を挟んで形成された一対の弾性仕切壁により区画された一対の液室を設け、さらにこれら液室の開口部を組立時にリング状をなす一対の半円弧状部材で覆い、各液室間をこれら半円弧状部材に予め形成された流体通路により構成されるオリフィス通路で連通した液封防振装置が示されている。
【0003】
また、このような液封防振装置におけるオリフィス通路構造として、例えば、特開平6−307493号には、各半円弧状部材の外周部に流体通路を形成し、それぞれの接続端部を接続面で接続するとき、同時にこの接合部で各流体通路が接続するようにしたものが示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記各従来例のように、一対の半円弧状部材もしくはより多数に分割された円弧状部材をリング状に組合せて液室を覆う形式を採用した場合、特開平6−307493号のように、両半円弧状部材の接合部でそれぞれに形成されている各流体通路を接続する構造を要求されることがある。
【0005】
しかしこのような場合には、各円弧状部材の接続部でそれぞれの流体通路を正確に連通接続しなければならず、流体通路の正確な接続を可能にするためには、かなりの高い部品精度と組立に必要な精度が要求され、その結果、生産性を低くし、コストアップを招くことになる。そこで、本願発明はこのような問題の解決を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の液封防振装置に係る第1の発明は、筒状の外筒と、その内側の同心又は偏心位置へ配設される内側部材と、これら外筒及び内側部材間に介在する弾性防振部材とを備え、弾性防振部材の周囲に径方向外方へ向かって開放され、かつ内側部材側から径方向外方へ延出するよう形成された弾性仕切壁により区画された複数の円弧状溝を設け、これら円弧状溝内を液体が封入される液室にするとともに、各円弧状溝の開放部を組立時に連続したリング状をなす複数の円弧状部材で覆い、隣り合う円弧状部材の各接続面にそれぞれ開口して形成されている一対の流体通路を接続することによりなるオリフィス通路で隣り合う液室間を連通した液封防振装置において、
前記隣り合う円弧状部材の各接続端部近傍部分を径方向で互いに重なり合う階段状に形成し、これら階段状部を重ね合わせて各円弧状部材をリング状に接続したことを特徴とする液封防振装置。
【0007】
また、前記階段状部を利用して前記流体通路を形成したことを特徴とする。
【0008】
の発明は、上記第の発明において、前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の肉厚内に形成したことを特徴とする。
【0009】
の発明は、上記第の発明において、前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の内面側に液室へ開放される溝として形成したことを特徴とする。
【0010】
の発明は、上記第の発明において、前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の外面側に外方へ開放される溝として形成したことを特徴とする。
【0011】
の発明は、上記第乃至のいずれかの発明において、前記流体通路の少なくとも一部を前記各階段状部の接合面にて形成したことを特徴とする。
【0012】
の発明は、上記第乃至のいずれかの発明において、前記互いに接続する一対の流体通路は、接続部にて一方を大きくかつ他方を小さくなるように形成し、この大小に異なる流体通路を連通接続させたことを特徴とする。
【0013】
【発明の効果】
第1の発明によれば、隣り合う円弧状部材の各接続端部近傍部分を径方向で互いに重なり合う階段状に形成し、これら階段状部を重ね合わせて各円弧状部材をリング状に接続したので、接合部面積が増大して確実な接合が可能になるとともに、この重なり合いによって径方向及び周方向の位置が決められるので、各接続部の位置決めが正確になり、組み立て作業を容易かつ迅速化できる。
【0014】
また、前記階段状部を利用して前記流体通路を形成したので、流体通路を容易に形成できるようになり、流体通路の形状、構造、寸法並びに成形方法等の自由度も大きくなる。
【0015】
そのうえ、従来のこの種の防振装置のうちの一部に採用されているような仕切壁側に流体通路を形成しないで済むため、仕切壁や弾性防振部材の弾性変形による通路断面積の影響を減少させることができ、安定した防振性能を維持できる。
【0016】
の発明によれば、前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の肉厚内に形成したので、通路断面積を常時一定にできる。
【0017】
の発明によれば、前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の内面側に液室へ開放される溝として形成したので、円弧状部材の成形と同時に形成する等流体通路の形成が容易になる。そのうえ液室との連通路も一体に形成できるので、この部分のための特別な機械加工等を省略することもできる。
【0018】
の発明によれば、前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の外面側に外方へ開放される溝として形成したので、円弧状部材の成形と同時に形成する等流体通路の形成が容易になるとともに、オリフィス通路を外筒側との間で形成するので、オリフィス通路を確実かつ堅牢に構成できる。
【0019】
の発明によれば、前記流体通路の少なくとも一部を前記各階段状部の接合面にて形成したので、各階段状部の対面する接合面を利用してオリフィス通路を容易に形成できるとともに、確実かつ堅牢に構成できる。
【0020】
の発明によれば、前記互いに接続する一対の流体通路を接続部にて大小に異ならせたので、同じ大きさの流体通路を接続する場合と比べて遥かに接続が容易になる。このため、部品精度及び組立に必要な精度を大きく下げることができ、部品製造及び組立作業を容易にできるとともに、生産性を向上しかつコストダウン可能となる。
【0021】
そのうえ、大小の流体通路を組合せた結果、単一の流体通路では期待できないような減衰特性のブロード化を実現でき、より広範囲の周波数帯域で液柱共振による減衰効果が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図7に基づき、自動車のサブフレームマウントとして構成された第1実施例を説明する。このサブフレームマウントは自動車のエンジン等を支持するために設けられるサブフレームと車体フレームとの間に設けられる防振装置である。
【0023】
図1は、このサブフレームマウントの液室を通る横断面図、図2はその上面図、図3は図1及び図2の各3−3線断面図(外筒は省略)、図4はその組立説明図、図5は円弧状部材の接続部拡大断面図、図6は接続端部の斜視図(図中Aは円弧状部材9、Bは円弧状部材8の各接続端部を内周面側から示す)、図7は流体通路の成形方法を示す図である。
【0024】
まず、図1乃至図4によりこのサブフレームマウントの概略構造を説明する。このサブフレームマウントは、適宜金属からなる外筒1、その内側へ同心もしくは偏心配置される同様材料製で筒状等適宜形状の内側部材2及びこれらの間に介在して相互を弾性的に連結するゴムやエラストマー等の適宜公知材料よりなる弾性防振部材3を備える。
【0025】
全体として略筒状をなす弾性防振部材3の周囲には、一対の半円弧状をなす円弧状溝4,5がそれぞれ弾性防振部材3の径方向(以下、単に径方向という)外方へ開放されて形成され、それぞれは内側部材2を挟んで径方向反対側へ延出する一対の弾性仕切壁6,7により分断されるとともに、各円弧状溝4,5には円弧状部材8,9が嵌合され、これにより液室10,11が形成されている(図1)。
【0026】
液室10,11内には非圧縮性の公知液体が封入されるとともに、円弧状部材8,9の各端部のうち一組の対向する端部である階段状端部12,13にそれぞれ形成された流体通路14,15を介して連通し、この流体通路14,15により一つのオリフィス通路が構成されている。
【0027】
円弧状部材8,9は一つのリングを2分割したものに相当し、互いの端部を接続させて組合わせることにより一つの連続するリング状をなして円弧状溝4,5の各開放部を覆うとともに弾性防振部材3の周囲へ取付けられる。
【0028】
なお、図1に明らかなように、円弧状部材8,9の他方側端部も、互いに径方向で重なり合う階段状端部16,17をなしているが、このにおける各階段状端部16,17近傍部には流体通路が形成されず、液室10,11はこの部分で連通していない。ただし、必要により流体通路14,15と同様のものを設けることができる。
【0029】
図3及び図4中に示す符号8a,9aは、それぞれ円弧状部材8,9の外周部適宜位置に一体形成された位置決め突起であり、組立てたとき円弧状溝4,5に臨んで弾性防振部材3の外周部に形成されている位置決め凹部3aへ嵌合し(図3)、弾性防振部材3の周方向に対する円弧状部材8,9の回り止めになっている。なお、円弧状部材9側の位置決め凹部3aは見えていないが同様に設けられている。
【0030】
図4に示すように、これら円弧状部材8,9を弾性防振部材3へ取付けた小組体18は、外筒1内へ圧入され、外筒1の一端に設けられた突起19及び他端をカシメることにより、全体が一体化したサブフレームマウントとなる(図2,3)。
【0031】
このサブフレームマウントを図1に示すように、弾性仕切壁6,7を車体の左右へ向けて配置し、この状態で使用すると、液室10,11を通じる流体通路14,15がオリフィス通路をなすので、前後方向の振動はこのオリフィス通路における液柱共振により減衰される。
【0032】
また、前後方向への振動に伴う弾性仕切壁6,7の弾性変形により液室10,11の体積が変化し、その際の体積変動に伴って液室10,11内の液体が流体通路14,15間を移動することにより減衰吸収する。さらに、左右方向の振動が加わった場合には、液室10,11間の流体移動は関与せず、弾性仕切壁6,7の弾性変形及び防振弾性部材3全体の弾性変形によりこれを吸収する。
【0033】
次に、弾性仕切壁6,7及び円弧状部材8,9の接続構造の詳細を説明する。図1に明らかなように、弾性仕切壁6,7の各径方向外端側部分である先端部6a,7aは先端側が細くなる先細り状に変化する鋭角状をなしている。
【0034】
先端部7aの先端には図中の拡大部に示すようにシール突部7bが形成されている。先端部7aはシール突部7bを弾性変形させて円弧状部材8の接続端部近傍の内周面へ押しつけられて当接し、かつ液密に摺動可能である。なお先端部6a側も同様である。
【0035】
また、先端部6a,7aが当接する円弧状部材8,9の接続端部近傍部分における各内周面は、先端部6a,7aが液密に摺動可能なように他の部分と連続一様の曲面をなし、円弧状部材8,9の接続部は先端部6a,7aの摺動範囲から周方向へずれた位置になっている。
【0036】
このように外方端6a,7aを鋭角状にすることにより、弾性仕切壁6,7の延出方向から加わる入力振動を吸収する方向性を有するとともに入力振動の大きさに応じてバネレートを変化させることができ、かつ、円弧状部材8,9の内周面を摺動可能にすることにより低動バネ化を実現できる。
【0037】
そのうえ、シール突起7bにより摺動部のシール性を高度に維持でき、隣り合う液室10,11間を確実にシールできるとともに、円弧状部材8,9及び弾性仕切壁6又7の計3部材を一点で集合接続しないで済むため、それだけ液密に接合させることが容易になる。
【0038】
図5及び6に明らかなように、円弧状部材9の階段状端部13は外周側が切り欠かれた状態の内側薄肉部20とされ、この部分の肉厚内に流体通路15を設けてある。流体通路15は、横穴15aと縦穴15bからなる屈曲通路であり、横穴15aは内側薄肉部20の肉厚内を先端面21へ向かって円弧状部材9の周方向へ延び、一端が先端面21に開口している。
【0039】
縦穴15bは内面9bから外面9d側へ彫り込まれて横穴15aの他端へ接続している。なお、符号22及び23はそれぞれ内面9b及び先端面21に形成された開口部である。また、符号24は一般外周面との段差部である。
【0040】
一方、円弧状部材8の階段状端部12近傍部には、内面側を切り欠いた状態の外側薄肉部25を形成し、弾性防振部材3の径方向にて内側薄肉部20の外側へ重なり合い、かつ先端面26が段差部24と、先端面21が段差部27とそれぞれ当接するようにする。
【0041】
さらに、段差部27のうち開口部23と接続する部分を切り欠いて、開口部23の開口幅よりも大きな幅の溝28を形成する。溝28は内側薄肉部20と重なる外側薄肉部25の接合面から内面8bに達し、かつ段差部27から一般肉厚側へ食い込んで形成し、段差部27及び内面8b側を開放しておく。
【0042】
内側薄肉部20と外側薄肉部25を内外に重ねて円弧状部材8,9を接合したとき、流体通路15の小さな開口部23が大きな溝28へ臨む。この溝28は液室10と連通するための大きな流体通路14として機能するので、結局、小さな流体通路15と大きな流体通路14が連通接続する。
【0043】
この流体通路15を形成方法を図7に示す。この図において、円弧状部材9を成形するための外型30に外面成形部31を形成し、これと合わせる内型32の一部に外面形成部33と流体通路15の横穴15a側部分を形成する突起部34及びスライド凹部35、内面形成部36を設ける。
【0044】
また、スライド凹部35には内側薄肉部20及びその近傍部内面側を形成するスライド型37を設け、さらに流体通路15の縦穴15b部分を形成する突起部38をスライド方向へ突出形成する。
【0045】
スライド型37を所定位置にセットして外型30と内型32を図の上下方向から合わせ、突起部34と突起部38の各先端を連続させた状態で、キャビテイ内へ溶融材料を注入して成形し、外型30と内型32を上下に開き、かつスライド型37を図の左右へスライドさせると、連続する屈曲通路をなす流体通路15が一体に形成された円弧状部材9を形成できる。
【0046】
なお、円弧状部材8の溝28も同様に円弧状部材8の成形と同時に成形可能できる。また、内側薄肉部20と外側薄肉部25を円弧状部材8及び9に対して逆に設けてもよく、さらに流体通路15を外側薄肉部25側に設けてもよい。この場合、溝28に代えて内面9bから段差部24へ達する穴を形成する。さらに、流体通路15を構成する穴のうち、いずれか一方又は双方をドリル等の機械加工により形成することもできる。
【0047】
次に、本実施例の作用を説明する。このサブフレームマウントを組立てるには、図5に示すように、円弧状溝4,5へ円弧状部材8,9を嵌合し、それぞれの階段状端部12と13及び16と17を径方向で重ね合わせる。
【0048】
このとき、内側薄肉部20と外側薄肉部25が比較的広い範囲で内外に重なるので、接合部面積が増大して確実な接合が可能になる。しかもこの重なり合いによって径方向位置が決められ、かつ段差部24,27と先端面21,26を当接させることにより周方向位置が決められるので、各接続部の位置決めが正確になり、組み立て作業を容易かつ迅速化できる。
【0049】
また、階段状端部12と13の接合部において、流体通路14と15が連通接続する。このとき、流体通路14を大、流体通路15を小の組合せとして形成したので、接合部において小さい方の流体通路15は大きい方の流体通路14へ包含される状態で接続される。
【0050】
したがって、円弧状溝4,5を含む弾性防振部材3や円弧状部材8,9の各成形精度や組立に必要な精度を従来と同様程度まで高くしなくても確実に連通でき、その結果、成形や組立条件を緩和でき、部品製造及び組立容易となり、生産性が向上しかつコストダウン可能になる。
【0051】
しかも、従来のこの種防振の一部に採用されているような弾性仕切壁6,7側に流体通路を形成しないで済むため、弾性仕切壁6,7や弾性防振部材3の弾性変形による通路断面積の影響を減少させることができ、安定した防振性能を維持できる。
【0052】
そのうえ、内側薄肉部20と外側薄肉部25等を利用して流体通路14,15を容易に形成でき、特に、大きな流体通路14をなす溝28は、円弧状部材8の成形時に一体的に形成できるから手間がからない。また、流体通路15も図13のようにすれば円弧状部材9の成形と同時に形成できる。
【0053】
さらに、流体通路15を内側薄肉部20の肉厚内に形成するので、通路断面積を常時一定にできる。また、以下の別実施例にも示すように、階段状端部12,13を利用してこのような流体通路14,15を設けると、流体通路14,15の形成が容易となり、かつその形状、構造、寸法並びに成形方法等の自由度を大きくできる。
【0054】
図8は、本実施例のように大小の流体通路で構成された本願発明のオリフィス通路によって得られる減衰特性を示す図であり、図中の実線は本実施例のオリフィス通路によって得られる減衰特性の一般的な傾向を示し、破線は本実施例中に示したような小さい流体通路15に相当する流体通路のみで構成したオリフィス通路における減衰特性の一般的な傾向を示す。
【0055】
この図に明らかなように、破線で示す単一の流体通路からなるオリフィス通路の減衰特性が比較的比較的急峻な曲線をなすのに対して、本実施例のオリフィス通路による減衰特性はより緩やかな高原状の曲線をなす。これは本実施例が大小の流体通路14,15を組合せてオリフィス通路を形成したことによる結果であり、単一構造のオリフィス通路と比べてより広範囲の周波数帯域で液柱共振による減衰効果が得られていることを示す。したがって、本実施例は減衰効果をより広範囲の周波数帯域へ拡大すること、すなわち減衰特性のブロード化を実現できる。
【0056】
図9及び10は第2実施例に係り、図9は図5に対応する図、図10は図6に対応する図である。また、図10中には、Aとして円弧状部材9の接続端部を内周面側から示す斜視図、Bとして円弧状部材8の接続端部を内周面側から示す斜視図、Cとして円弧状部材8の接続端部を外周面側から示す斜視図をそれぞれ示してある。なお、以下の説明において、第1実施例と共通する部分は同一符号を用いるものとする。
【0057】
この実施例では、円弧状部材9に外側薄肉部40が形成され、この部分には、図10のAに示すように、流体通路15が外側薄肉部40の内面側と段差部41の各表面側に開放されるように肉厚内へ彫り込まれた屈曲溝として形成されている。流体通路15は一端が内面9bへ開放される縦溝43と一端が先端面42へ開放される横溝44とで構成される。
【0058】
一方、円弧状部材8には、内側薄肉部45が形成され、図10のB及びCにも明らかなように、先端面42の当接する段差部46に開口部47が開口し、この開口部47と連通して内面8bへ開放される穴48が形成されている。穴48は内面8bへ開放されているため、開口部47と穴48が流体通路14をなす。
【0059】
開口部47は流体通路15の先端面42側端部が段差部46と重なるべき位置に流体通路15よりも大きな面積で開口し、かつ穴48は開口部47と同程度の幅を有し、内側薄肉部45と段差部46の境界部を含むように外面8d側から彫り込むことにより開口部47と同時に形成されている。
【0060】
したがって、図9に示すように、外側薄肉部40と内側薄肉部45を内外に重ねて接合したとき、流体通路15の開放部は両端を除き、内側薄肉部45とその先端面69で覆われ、縦溝43の一端で液室へ連通するとともに、横溝44はその先端面42に開口する一端部で開口部47と接続しさらに穴48へ連通する。
【0061】
このようにすると、穴48は内面8bへ開放されているため、開口部47と穴48が流体通路14をなす。なお、小さい流体通路15を大きい流体通路14と接続することになり、前記各実施例と同様の効果を得られるとともに、流体通路14及び流体通路15がそれぞれ縦溝43、横溝44,開口部47及び穴48で構成されるため、円弧状部材8,9の成形と同時に効率よく成形できる。但し機械加工で形成することも当然可能である。
【0062】
しかも、流体通路14,15を各階段状端部12,13の接合面間、すなわち、外側薄肉部40の内周側表面と内側薄肉部45の外側表面の間及び外側薄肉部40の先端面42と内側薄肉部45の段差部46の間並びに内側薄肉部45の先端面49と外側薄肉部40の段差部41の間に形成するので、これらの流体通路14,15からなるオリフィス通路を容易に形成できるとともに、確実かつ堅牢に構成できる。
【0063】
図11及び図12は前実施例において、流体通路を外周側に設けたものに相当する第3実施例に係り、図11は図9と、図12は図10とそれぞれ対応する同様の図である。また、図12中には、Aとして円弧状部材9の接続端部を外周面側から示す斜視図、Bとして円弧状部材8の接続端部を外周面側から示す斜視図をそれぞれ示してある。
【0064】
この例では、円弧状部材9に設けた外側薄肉部40の外周面側に周方溝50を設け、この一端を貫通穴71へ接続させてある。貫通穴71は内面9bから外面9dへ貫通するとともに、段差部41の一部を先端面49により塞がれないように彫り込んだものである。
【0065】
周方溝50の一端はこの貫通穴51と連通し、他端は先端面42へ開放された開口部72をなし、ここで円弧状部材8側の段差部46に設けられた溝53と連通接続するようになっている。溝53は内面8bから外面8dへ貫通する穴48の延長に形成され、開口部52の開口面積よりも大きく形成されている。
【0066】
このようにすると、円弧状部材8,9を接合したとき、周方溝50、貫通穴51、溝53及び穴48を結ぶ屈曲通路が形成され、周方溝50及び貫通穴51が小さい流体通路15に相当し、溝53及び穴48が大きい流体通路14に相当することになる。
【0067】
他の部分は前実施例と同様構造であり、この例でも、前実施例と同様の効果を得られるとともに、これら周方溝50、貫通穴51、溝53及び穴48は円弧状部材8,9と同時又は機械加工により容易に形成できる。また、外周側に流体通路を設けることにより周方溝50部分は外筒1との間でオリフィス通路を形成するので、正確でより変形しにくい堅牢なオリフィス通路を確実に形成できる。
【0068】
図13及び図14は前実施例と同じく外周側に流体通路を設け他第4実施例である。この例では、外側薄肉部40の外周面に蛇行する溝55が形成され、その一端は貫通穴51を介して内面9bへ開口し、他端は先端面42へ開放される開口部52をなし、ここで段差部46側の溝53と連通する。
【0069】
図14は接合部を内周面側から示す展開図であり、この図にも明らかなように溝53はその延長上にある穴48を介して内面8b側へ開口し、その結果、貫通穴51、溝55、溝53、及び穴48からなる流体通路が形成され、貫通穴51及び溝55が小さい流体通路15に相当し、溝53及び穴48が大きい流体通路14に相当することになる。なお、貫通穴51、溝53及び穴48並びに溝55を除く他の部分は前実施例と同様である。
【0070】
このようにすると、外側薄肉部40の外周面を利用して蛇行する溝55を形成できるので、十分に長いオリフィス長を形成でき、オリフィス通路の共振点に関するチューニングの自由度を高めることができる。しかも、蛇行回数等を変化させることにより任意のオリフィス長を得ることができる。
【0071】
なお、溝55を内側薄肉部45と外側薄肉部40の接合面に形成することもでき、この場合は一方側の面のみに溝55を形成して、他方側の面でこれを覆うようにするか、又は双方の面に断面半円形の溝を設けて合わせ面で一つのオリフィス通路を形成するようにもできる。この断面半円形の溝を合わせる場合は、径の大小異なる組合せにすれば接合がさらに容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例に係るサブフレームマウントの液室を通る横断面図
【図2】 その上面図
【図3】 図1,2の各3−3線断面図
【図4】 その組立説明図
【図5】 円弧状部材の接続部断面図
【図6】 その各接続端部を内周面側から示す斜視図
【図7】 その接続端部の一部に関する形成方法を示す図
【図8】 本実施例における減衰特性図
【図9】 第2実施例に係る図5に対応する図
【図10】同図6に対応する図
【図11】第3実施例に係る図9と同様の図
【図12】同図10と同様の図
【図13】第4実施例に係る各円弧状部材の接続部を外周面側から示す斜視図
【図14】その接合部を内周面側から示す展開図
【符号の説明】
1:外筒、2:内側部材、3:弾性防振部材、4:円弧状溝、5:円弧状溝、6:弾性仕切壁、7:弾性仕切壁、8:円弧状部材,9:円弧状部材、10:液室、11:液室、12:階段状端部、13:階段状端部、14:流体通路、15:流体通路、20:内側薄肉部、25:外側薄肉部、28:溝、30:外型、31:外面成形部、37:スライド型、40:外側薄肉部、43:縦溝、45:内側薄肉部、48:穴、50:周方向溝、51:貫通穴、53:溝、55:溝

Claims (6)

  1. 筒状の外筒と、その内側の同心又は偏心位置へ配設される内側部材と、これら外筒及び内側部材間に介在する弾性防振部材とを備え、弾性防振部材の周囲に径方向外方へ向かって開放され、かつ内側部材側から径方向外方へ延出するよう形成された弾性仕切壁により区画された複数の円弧状溝を設け、これら円弧状溝内を液体が封入される液室にするとともに、各円弧状溝の開放部を組立時に連続したリング状をなす複数の円弧状部材で覆い、隣り合う円弧状部材の各接続面にそれぞれ開口して形成されている一対の流体通路を接続することによりなるオリフィス通路で隣り合う液室間を連通した液封防振装置において、前記隣り合う円弧状部材の各接続端部近傍部分を径方向で互いに重なり合う階段状に形成し、これら階段状部を重ね合わせて各円弧状部材をリング状に接続し
    前記階段状部を利用して前記流体通路を形成したことを特徴とする液封防振装置。
  2. 前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の肉厚内に形成したことを特徴とする請求項に記載した液封防振装置。
  3. 前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の内面側に液室へ開放される溝として形成したことを特徴とする請求項に記載した液封防振装置。
  4. 前記流体通路のうち前記円弧状部材の周方向へ延びる部分を前記階段状部の外面側に外方へ開放される溝として形成したことを特徴とする請求項に記載した液封防振装置。
  5. 前記流体通路の少なくとも一部を前記各階段状部の接合面にて形成したことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載した液封防振装置。
  6. 前記互いに接続する一対の流体通路は、接続部にて一方を大きくかつ他方を小さくなるように形成し、この大小に異なる流体通路を連通接続させたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載した液封防振装置。
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