しかしながら、上述した特許文献1の技術では、短絡経路46が仕切部材72の隔壁88を連通する貫通孔として形成される。そのため、仕切部材72を型成形する場合には、成形金型の構造が複雑となり、その分、製品コストが嵩むという問題点があった。この場合仕切部材72の型成形後にドリルによる切削加工により貫通孔を貫通形成する方法であっても、切削工程が更に必要となる分、工数が増加するため、製品コストが嵩む。
また、上述した特許文献2の技術においても、オリフィス金具16に仕切金具17を圧入することで、短絡経路SCを形成する構造であるため、オリフィス金具16の他に仕切金具17が必要となり、部品点数が増加すると共に、圧入工程の分、工数が増加するため、製品コストが嵩むという問題点があった。
更に、上述した特許文献1の技術では、短絡経路46が貫通孔からなり、特許文献2の技術では、第1立壁23aと仕切金具17との対向面間を短絡経路SCとするものであるため、短絡経路46,SCが直線状の形状に限定され、その設計の自由度が低いという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、製品コストを抑制しつつ短絡経路の設計の自由度を高めることができる液封入式防振装置を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段および発明の効果
請求項1記載の液封入式防振装置によれば、一対のオリフィス形成部材のうちの少なくとも一方のオリフィス形成部材の周方向の端面に凹設溝が凹設されるので、一対のオリフィス形成部材の周方向の端面どうしが互いに当接された状態を形成することで、周方向の端面どうしの間に、オリフィスどうしを連通させる又はオリフィスと液室とを連通させる短絡経路が凹設溝によって形成することができる。よって、型成形する場合には、成形金型の構造を簡素化でき、従来品のように、型構造が複雑となることがない。また、型成形する場合には、ドリルによる後加工や別部材の圧入が必要となることもない。その結果、製品コストの削減を図ることができる。
また、凹設溝は、オリフィス形成部材の周方向の端面に凹設されるので、かかる周方向の端面を利用して、凹設溝の形状を任意に設定することができる。よって、短絡経路の設計の自由度を高めることができる。
請求項2記載の液封入式防振装置によれば、請求項1記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、一方のオリフィス形成部材の端面に第1凹設溝が凹設されると共に、他方のオリフィス形成部材の端面に第2凹設溝が凹設され、一方のオリフィス形成部材の端面と他方のオリフィス形成部材の端面とが当接された状態では、第1凹設溝の他端側と第2凹設溝の他端側とが重ね合わされ、それら第1凹設溝と第2凹設溝とによって短絡経路が形成されるので、かかる短絡経路の途中に、端面の重ね合わせ方向に屈曲する部分を形成することができる。その結果、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路を流動し難くでき、その分、オリフィスの流動量を確保できるので、減衰効果を高めることができる。
請求項3記載の液封入式防振装置によれば、請求項2記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、第1凹設溝または第2凹設溝の少なくとも一方は、一端と他端との間の少なくとも1カ所が屈曲して形成されるので、端面の重ね合わせ方向に屈曲した部分に加え、端面の面内で屈曲した部分を短絡経路に形成することができる。その結果、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路を流動し難くでき、その分、オリフィスの流動量を確保できるので、減衰効果を更に高めることができる。
請求項4記載の液封入式防振装置によれば、請求項2記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、第1凹設溝および第2凹設溝は、一端と他端との間が直線状に延設されるので、これら第1凹設溝および第2凹設溝の形状を簡素化して、その分、オリフィス形成部材の製造時における歩留りの向上を図ることができる。この場合、一方のオリフィス形成部材の端面と他方のオリフィス形成部材の端面とが当接された状態では、端面の正面視において、第1凹設溝の延設方向と第2凹設溝の延設方向とが異なる方向に設定されるので、かかる延設方向の変化を利用して、短絡経路を液体が流動し難くできる。即ち、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路を流動し難くできる。よって、その分、オリフィスの流動量を確保できるので、減衰効果を更に高めることができる。
請求項5に記載の液封入式防振装置によれば、請求項2から4のいずれかに記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、一方のオリフィス形成部材と他方のオリフィス形成部材とが互いに同一の形状に形成されるので、軸方向の一側および他側の向きを互いに逆とした姿勢で端面どうしを互いに当接させることで、第1凹設溝の他端側と第2凹設溝の他端側とを重ね合わせて、短絡経路を形成できる。よって、一対のオリフィス形成部材が互いに異なる形状の2種類のオリフィス形成部材からなる場合と比較して、部品点数を削減でき、その分、製品コストの削減を図ることができる。また、一対のオリフィス形成部材が互いに異なる形状の2種類のオリフィス形成部材からなる場合には、2種類のオリフィス形成部材のうちの一方のオリフィス形成部材どうしを組み合わせて一対のオリフィス形成部材として組み付けるといった誤った組み付けが生じるおそれがあるところ、本発明によれば、かかる誤った組み付けが生じることを回避できる。
請求項6記載の液封入式防振装置によれば、請求項1記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、一対のオリフィス形成部材のうちの一方のオリフィス形成部材の端面に凹設溝が凹設されると共に、一対のオリフィス形成部材のうちの他方のオリフィス形成部材の端面には、凹設溝が非形成とされ、第1凹設溝は、一端および他端が前記一方のオリフィス形成部材の端面の外縁に連なるので、一方のオリフィス形成部材の凹設溝のみにより短絡経路を形成できる。
ここで、例えば、一方のオリフィス形成部材の凹設溝と他方のオリフィス形成部材の凹設溝とを接続して1の短絡経路を形成する場合には、両凹設溝が接続可能な位置に配置される必要があり、そのため、各凹設溝の形成位置の精度や一対のオリフィス形成部材の組み付け精度を確保する必要がある。これに対し、本発明によれば、凹設溝どうしの接続を考慮する必要がないので、その分、かかる凹設溝の形成位置の精度や一対のオリフィス形成部材の組み付け精度を緩やかとすることができる。その結果、製品コストの削減を図ることができる。
また、例えば、一方のオリフィス形成部材の凹設溝と他方のオリフィス形成部材の凹設溝とを接続して1の短絡経路を形成する場合には、走行時の振動や防振基体の経時劣化に起因して、一対のオリフィス形成部材の相対位置に位置ずれが発生すると、一方の凹設溝と他方の凹設溝との接続状態(即ち、短絡経路の状態)が変化して、動的な特性に影響を与えるおそれがある。これに対し、本発明によれば、一対のオリフィス形成部材の相対位置に位置ずれが発生したとしても、短絡経路の状態が変化し難く、動的な特性に影響を与えることを抑制できる。
請求項7記載の液封入式防振装置によれば、請求項6記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、凹設溝は、一端と他端との間の少なくとも1カ所が屈曲して形成されるので、屈曲した部分を有する短絡経路に形成することができる。その結果、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路を流動し難くでき、その分、オリフィスの流動量を確保できるので、減衰効果を更に高めることができる。
請求項8記載の液封入式防振装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載の液封入式防振装置の奏する効果に加え、一対のオリフィス形成部材は、鋳造または射出成型により形成されるので、製品コストの削減を図ることができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1(a)は、第1実施形態における液封入式防振装置100の平面図であり、図1(b)は、液封入式防振装置100の正面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように液封入式防振装置100は円環状に形成された内側部材10と、内側部材10を同心状に取り囲む円環状の外側部材20と、外側部材20及び内側部材10の間に介設される防振基体30とを備えて構成される。
図2(a)は、図1(a)のIIa−IIa線における液封入式防振装置100の断面図であり、図2(b)は、図1(a)のIIb−IIb線における液封入式防振装置100の断面図である。図3は、図1(b)のIII−III線における液封入式防振装置100の断面図である。
図2(a)に示すように、内側部材10は、円筒状に形成された筒部11と、筒部11の軸方向(図2(a)上下方向)中央から径方向(図2(a)左右方向)外側に向かって略球状に膨出する膨出部12とを備えている。
外側部材20は、内側部材10を同心状に取り囲む円筒状の部材であり、円筒状に形成された筒部21と、内筒21の内周面に加硫接着されると共にゴム状弾性体から構成されるゴム膜22と、筒部21が外嵌される中間筒40とを備えている。
防振基体30は、内側部材10と外側部材20とを連結すると共にゴム状弾性体から構成される部材である。防振基体30は、内側部材10及び外側部材20の軸方向両側に円環状に形成される一対の径方向隔壁31と、一対の径方向隔壁31の間に形成されるゴム膜部32とを備えている。径方向隔壁31及びゴム膜部32は、一体に加硫成形され、径方向隔壁31の内周は筒部11の外周に加硫接着される。径方向隔壁31の外周は内側部材10を同心状に取り囲む中間筒40の嵌合周壁41の内周に加硫接着される。一対の径方向隔壁31によって、外側部材20の軸方向両端が閉鎖されることにより、液室71,72が形成される。液室71,72にはエチルグリコールなどの不凍液(液体)が封入される。
図2(b)に示すように、中間筒40は、筒部21が外嵌される一対のリング状の嵌合周壁41と、嵌合周壁41同士を連結すると共に嵌合周壁41よりも径方向内側に位置し軸直方向断面が円弧状の連結壁42とを備えている。連結壁42は、径方向隔壁31と一体に加硫形成される一対の軸方向隔壁33が、内周面に加硫接着される。また、連結壁42は、径方向隔壁31と一体加硫成形されるゴム膜状の外面部34が、外周面に加硫接着される。
外周面34の軸方向両側に、ゴム状弾性体から構成される壁面部36,38が形成される。壁面部36,38は、内側部材10を挟んで軸方向隔壁33の各々の径方向外側に配置され、それぞれ径方向外側へ向かって延設される。一対の壁面部36は、壁面部36の間の軸方向距離が、壁面部38の軸方向距離より大きく設定される。
図3に示すように、液室71,72は、径方向隔壁31の間を軸方向に連結する軸方向隔壁33により、周方向に区画される。これにより、内側部材10を挟んで相対する略対称な2つの液室71,72が形成される。図2及び図3に示すように、内側部材10と外側部材20(筒部21)との間に一対のオリフィス形成部材50が配置される。オリフィス形成部材50は、液室71,72を連通するオリフィス73(図3参照)を形成するための部材である。
次に、図4を参照してオリフィス形成部材50について説明する。図4は、オリフィス形成部材50の斜視図である。図4に示すように、オリフィス形成部材50は、断面円弧状に形成される本体部51と、本体部51の径方向内側に形成されると共にゴム膜部32(内側部材10)の軸直角方向(図3左右方向)に配置される断面円形状のストッパ52と、本体部51の周方向両側にそれぞれ突出する第1突部53及び第2突部58とを備えている。なお、オリフィス形成部材50は、合成樹脂から射出成型により一体成型される。よって、後述する凹設溝62を、その形状に寄らず、別工程を行うことなく形成することができる。従って、例えば、凹設溝62を切削加工により形成する場合と比較して、製品コストの削減を図ることができる。
第1突部53は、湾曲状に形成される底面部54と、底面部54の幅方向(軸方向)の両側縁に径方向外側へ向けて立設させると共に周方向に延在する一対の立設部55と、一対の立設部55の間に並設されつつ径方向外側へ向けて底面部54に立設されると共に周方向へ延在する仕切部56とを備えている。底面部54に立設部55及び仕切部56が立設されることで、仕切部56を挟んで軸方向に隣り合う第1凹溝57a及び第2凹溝57bが形成される。第1凹溝57a及び第2凹溝57bは、第1突部53の周方向端部に開口する。
仕切部56には、その周方向の端面に断面略コ字状の凹設溝62が凹設される。凹設溝62は、一端が仕切部56の端面の外縁(第2凹溝57b側、図4下側)に連なる(即ち、凹設溝62の内部空間を第2凹溝57bの内部空間に連通させる)と共に他端が仕切部56の端面内に位置し、仕切部56(オリフィス形成部材50)の軸方向(図4上下方向)に沿って直線状に延設される。本実施形態では、凹設溝62の延設長さが仕切部56の幅寸法(厚み寸法、図4上下方向寸法)の略2/3の寸法に設定される。
第2突部58は、湾曲状に形成される底面部59と、底面部59の幅方向(軸方向)の両側縁に径方向外側に向けて立設されると共に周方向に延在する一対の立設部60とを備えている。底面部59に立設部60が立設されることで、第2凹溝57bが形成される。第2凹溝57bは、オリフィス形成部材50(第1突部53、本体部51及び第2突部58)の周方向に亘って形成される。第1突部53に凹設された第1凹溝57aは、本体部51の第2突部58寄りに形成された連通開口61が端部に形成され、本体部51の軸方向に開口する。
一対のオリフィス形成部材50は、軸方向の一側(図4上側)及び他側(図4下側)の向きを互いに逆とした姿勢(一方のオリフィス形成部材50を他方のオリフィス形成部材50に対して裏返した姿勢)で第1突部53の端面どうし及び第2突部58の端面どうしがそれぞれ互いに突き合わされ、連結壁42と筒部21との間に配置される(図3参照)。本実施形態では、図2(b)に示すように、第1突部53(底面部54)は、一対の壁面部36の軸方向内側に配設され、第2突部58(底面部59)は、一対の壁面部38の軸方向内側に配置される。第1突部53及び第2突部58がそれぞれ突き合わされることにより、第1凹溝57a及び第2凹溝57bにより筒部21(ゴム膜22)の内側にオリフィス73が形成される。
また、一対のオリフィス形成部材50は、それらの第1突部53の端面どうしが互いに突き合わされると、一方のオリフィス形成部材50の仕切部56に形成した凹設溝62の他端側と他方のオリフィス形成部材50の仕切部56に形成した凹設溝62の他端側とが重なり合わされ、オリフィス73の2点間を連通させる短絡経路74が形成される。この短絡経路74の詳細構成について、図5(a)及び図5(b)を参照して説明をする。
図5(a)は、図2(b)のVa部における拡大断面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における拡大断面図である。なお、図5(a)では、理解を容易とするため、図5(a)に図示される一方の凹設溝62に重ね合わされる他方の凹設溝62が破線を用いて図示される。
凹設溝62は、上述したように、仕切部56の周方向の端面において、一端を第2凹溝57b側の縁部に連ならせると共にその一端から第1凹溝57a側に向かって直線状に延設され、一端から他端までの長さ寸法が、仕切部56の幅寸法(軸方向寸法、図5(a)上下方向寸法)の略2/3の寸法に設定される(図4参照)。
これにより、図5(a)及び図5(b)に示すように、一対のオリフィス形成部材50が互いに上下反転された姿勢とされ、第1突部53(仕切部56)の端面どうしが互いに突き合わされると、一方の仕切部56に形成される凹設溝62の他端側と、他方の仕切部56に形成される凹設溝62の他端側とが周方向(図5(b)左右方向)に重ね合わされ、両凹設溝62の内部空間が互いに連通されることで、オリフィス73の断面積よりも小さく且つオリフィス73よりも流路長さが短い短絡経路74が形成される。
以上のように構成される液封入式防振装置100によれば、軸直角方向に比較的大きな振幅が入力されると、軸方向隔壁が弾性変形して、内側部材10と外側部材20とが相対変位される。これにより、液室71,72を区画する軸方向隔壁33が変形するので、液室71,72の液圧変動が生じ、液室71,72内の液体がオリフィス73を通って流れる。
この場合、比較的大きな振幅の入力時は、オリフィス73を通過する液体の流速が比較的速いので、オリフィス73の断面積より小さい断面積で形成される短絡経路74を液体が通過し難くできる。よって、オリフィス73の流通(流動量)を確保して、減衰効果を高めることができる。
一方、比較的小さな振幅の入力時には、液体の流速が比較的遅くなり、短絡経路74を液体が通過しやすくなるため、オリフィス73の流通量を少なくでき、その分、流体流動効果(液柱共振)を抑制することができる。その結果、反共振時の動ばね定数の低減を図ることができる。
特に、本実施形態では、一方のオリフィス形成部材50における仕切部56の端面と他方のオリフィス形成部材50における仕切部56の端面とが突き合わされた状態では、一方の凹設溝62の他端側と他方の凹設溝62の他端側とが重ね合わされ、それら両凹設溝62によって短絡経路74が形成されるので、かかる短絡経路74の途中(流路上)に、仕切部56の端面どうしの重ね合わせ方向(図5(b)左右方向)に屈曲する部分を形成することができる。その結果、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路74を流動し難くでき、その分、オリフィス73の流動量を確保できるので、減衰効果を高めることができる。
次に、図6及び図7を参照して、液封入式防振装置100の製造工程について説明する。図6(a)は、成形体80の側面図であり、図6(b)は、成形体80の正面図である。図7(a)は、オリフィス形成部材50が組み付けられた成形体80の正面図であり、図7(b)は、オリフィス形成部材50が組み付けられた成形体80の背面図である。
成型体80は、内側部材10と中間筒40とを成形金型(図示せず)に装着した後、防振基体30を加硫接着すると共に内側部材10及び中間筒40に加硫接着することにより形成される。形成された成形体80に対して、中間筒40を縮径加工することにより防振基体30に予圧縮を与える。なお、図6(a)及び図6(b)は、縮径加工された後の状態が図示される。
次いで、図7(a)及び図7(b)に示すように、一対のオリフィス形成部材50を成形体80に組み付ける。即ち、図7(a)に示すように、一対の壁面部36の間には、一対のオリフィス形成部材50の底面部54を嵌挿する。一方、図7(b)に示すように、一対の壁面部38の間には、一対のオリフィス形成部材50の底面部59を嵌挿する。
次いで、一対のオリフィス形成部材50が組み付けられた成形体80に、液体中で筒部21を被せた後に筒部21を縮径して、その両端部を内側に折曲することにより外側部材20配置する。筒部21が縮径されることで、一対のオリフィス形成部材50の底面部54,54の隙間と底面部59,59の隙間とが詰められる。これにより、第1突部53,53の各端面及び第2突部58,58の各端面が突き当てられる。その結果、壁面部36間で第1凹溝57aと第2凹溝57bとが連通接続され、壁面部38間で第2凹溝57b同士が連通接続されることで、オリフィス73が形成されると共に、短絡経路74が形成される。これにより、液封入式防振装置100が形成される。
液封入式防振装置100は、周方向に延びるオリフィス73により、液室71,72が互いに連通される。具体的には、一方の液室71に開口する連通開口61と他方の液室72に開口する連通開口61とが、第1凹溝57a、第2凹溝57b及び第1凹溝57aにより連通される。その結果、オリフィス形成部材50により外側部材20の内周側を略一周反する長さのオリフィス73が形成される。
液封入式防振装置100によれば、一対のオリフィス形成部材50(一方のオリフィス形成部材50及び他方のオリフィス形成部材50)が互いに同一の形状に形成される。よって、例えば、一方のオリフィス形成部材と他方のオリフィス形成部材とが互いに異なる形状の2種類のオリフィス形成部材からなる場合と比較して、部品点数を削減でき、その分、製品コストの削減を図ることができる。
更に、一方のオリフィス形成部材と他方のオリフィス形成部材とが互いに異なる形状の2種類のオリフィス形成部材からなる場合には、2種類のオリフィス形成部材のうちの一方のオリフィス形成部材どうしを組み合わせて一対のオリフィス形成部材として組み付けるといった誤った組み付けが生じるおそれがあるところ、本発明によれば、かかる誤った組み付けが生じることを回避できる。
次に、図8を参照して第2実施の形態について説明する。図8(a)は、第2実施形態における液封入式防振装200の断面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIb−VIIIb線における液封入式防振装置200の断面図である。なお、図8(a)は、図5(a)に対応する。また、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8(a)及び図8(b)に示すように、第2実施形態における液封入式防振装置200は、一方(図8(b)右側)のオリフィス形成部材250における仕切部256の端面には、凹設溝262が凹設される一方、他方(図8(b)左側)のオリフィス形成部材250における仕切部256の端面には、凹設溝が非形成とされる。
凹設溝262は、一方のオリフィス形成部材50における仕切部256の端面において、一端および他端を第1凹溝57a側の縁部および第2凹溝57b側の縁部にそれぞれ連ならせると共に、それら一端および他端の間が、仕切部256(オリフィス形成部材250)の軸方向(図8(a)上下方向)に沿って直線状に延設される。
これにより、一対のオリフィス形成部材250が互いに上下反転された姿勢とされ、仕切部256の端面どうしが互いに突き合わされることで、オリフィス73の断面積よりも小さく且つオリフィス73よりも流路長さが短い流路であって、オリフィス73の2点間を連通させる短絡経路274を形成できる。
ここで、第1実施形態の場合のように、一方のオリフィス形成部材50の凹設溝62と他方のオリフィス形成部材50の凹設溝62との他端どうしを接続して短絡経路74を形成する場合には、両凹設溝62が他端どうしを接続可能な位置に配置される必要があり、そのため、各凹設溝62の形成位置の精度や一対のオリフィス形成部材50どうしの組み付け精度を確保する必要がある。これに対し、本実施形態によれば、凹設溝どうしの接続を考慮する必要がないので、その分、凹設溝262の形成位置の精度や一対のオリフィス形成部材250どうしの組み付け精度を緩やかとすることができる。その結果、製品コストの削減を図ることができる。
また、第1実施形態の場合のように、一方のオリフィス形成部材50の凹設溝62と他方のオリフィス形成部材50の凹設溝62との他端どうしを接続して短絡経路74を形成する場合には、走行時の振動や防振基体30の経時劣化(へたり)に起因して、一対のオリフィス形成部材50の相対位置に位置ずれが発生すると、一方の凹設溝62と他方の凹設溝62との他端どうしの接続状態(即ち、短絡経路74の状態)が変化して、動的な特性に影響を与えるおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、一対のオリフィス形成部材250の相対位置に位置ずれが発生したとしても、短絡経路274の状態が変化し難く、動的な特性に影響を与えることを抑制できる。
次に、図9(a)及び図9(b)を参照して、第3実施形態および第4実施形態における液封入式防振装置300,400について説明する。
図9(a)は、第3実施形態における液封入式防振装置300の断面図であり、図9(b)は、第4実施形態における液封入式防振装置400の断面図である。なお、図9(a)及び図9(b)は、図8(a)に対応する。
第3実施形態及び第4実施形態における液封入式防振装置300,400は、上述した第2実施形態の場合と同様に、一方(図9(a)及び図9(b)紙面奥側)のオリフィス形成部材350,450における仕切部356,456の端面のみに凹設溝362,462が凹設され、他方(図示せず)のオリフィス形成部材における仕切部の端面には、凹設溝が非形成とされる。
図9(a)に示すように、第3実施形態における液封入式防振装置300の凹設溝362は、一端および他端を第1凹溝57a側の縁部および第2凹溝57b側の縁部にそれぞれ連ならせると共に、それら一端および他端の間が、仕切部356(オリフィス形成部材350)の軸方向(図9(a)上下方向)に対して傾斜しつつ直線状に延設される。これにより、短絡経路374の流路長さを、上述した第2実施形態の場合と比較して、長い寸法とすることできる。
図9(b)に示すように、第4実施形態における液封入式防振装置400の凹設溝462は、一端および他端を第1凹溝57a側の縁部および第2凹溝57b側の縁部にそれぞれ連ならせると共に、それら一端および他端の間の2カ所が屈曲して形成される。これにより、短絡経路474を、2カ所に屈曲部分を有する形状(即ち、略直角に屈曲する流路が交互に2つ繋がるクランク形状)に形成できる。その結果、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路474を流動し難くでき、その分、オリフィス73の流動量を確保できるので、減衰効果を高めることができる。
次に、図10(a)及び図10(b)を参照して、第5実施形態における液封入式防振装置500について説明する。
図10(a)は、第5実施形態における液封入式防振装置500の断面図であり、図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線における液封入式防振装置500の断面図である。なお、図10(a)では、理解を容易とするため、図10(a)に図示される一方の凹設溝562に重ね合わされる他方の凹設溝562が破線を用いて図示される。
図10(a)及び図10(b)に示すように、第4実施形態における液封入式防振装置500の凹設溝562は、一端が仕切部556の端面の外縁(第2凹溝57b側、図10(a)下側)に連なる(即ち、凹設溝562の内部空間を第2凹溝57bの内部空間に連通させる)と共に他端が仕切部556の端面内に位置し、それら一端および他端の間の2カ所が屈曲して形成される。即ち、凹設溝562は、2カ所に屈曲部分を有する形状(略直角に屈曲する流路が交互に2つ繋がるクランク形状)に形成される。
よって、一対のオリフィス形成部材550が互いに上下反転された姿勢とされ、仕切部556の端面どうしが互いに突き合わされると、一方の仕切部556に形成される凹設溝562の他端側と、他方の仕切部556に形成される凹設溝562の他端側とが周方向(図10(b)左右方向)に重ね合わされ、両凹設溝562の内部空間が互いに連通されることで、オリフィス73の断面積よりも小さく且つオリフィス73よりも流路長さが短い流路であって、オリフィス73の2点間を連通させる短絡経路574を形成できる。
この場合、本実施形態では、短絡経路74の途中(流路上)に、仕切部556の端面どうしの重ね合わせ方向(図10(b)左右方向)に屈曲する部分を、一方の凹設溝562の他端と他方の凹設溝562の他端とが重ね合わされる部分に形成することができるだけでなく、各凹設溝562の一端および他端の間において、それぞれ2カ所に屈曲する部分を形成することができる。即ち、短絡経路74を、全体で5カ所に屈曲する部分を有する形状とすることができる。その結果、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路574を流動し難くでき、その分、オリフィス73の流動量を確保できるので、減衰効果を高めることができる。
次に、図11(a)及び図11(b)を参照して、第6実施形態における液封入式防振装置600について説明する。
図11(a)は、第6実施形態における液封入式防振装置600の断面図であり、図11(b)は、図11(a)のXIb−XIb線における液封入式防振装置600の断面図である。なお、図11(a)では、理解を容易とするため、図11(a)に図示される一方の凹設溝662に重ね合わされる他方の凹設溝662が破線を用いて図示される。
図11(a)及び図11(b)に示すように、第6実施形態における液封入仕式防振装置600の凹設溝662は、仕切部656の周方向の端面を略球状の凹面として凹設した凹部(溝)として形成される。
なお、この場合、凹設溝662は、仕切部656の周方向の端面において、一端を第2凹溝57b側の縁部に連ならせると共に一端から他端(第1凹溝57a側の端部、図11(a)上側端)までの長さ寸法が、仕切部656の幅寸法(軸方向の長さ、図11(a)上下方向寸法)の略2/3の寸法に設定される。よって、一対のオリフィス形成部材650が互いに上下反転された姿勢とされ、仕切部656の端面どうしが互いに突き合わされると、一方の仕切部656に形成される凹設溝662の他端側と、他方の仕切部656に形成される凹設溝662の他端側とが周方向(図11(b)左右方向)に重ね合わされ、両凹設溝662の内部空間が互いに連通されることで、オリフィス73の断面積よりも小さく且つオリフィス73よりも流路長さが短い短絡経路674が形成される。
本実施形態によれば、上述した第1実施形態の場合と同様に、短絡経路674の途中(流路上)に、仕切部656の端面どうしの重ね合わせ方向(図11(b)左右方向)に屈曲する部分を形成することができるので、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路674を流動し難くでき、その分、オリフィス73の流動量を確保して、減衰効果を高めることができる。
これに加え、上述したように、凹設溝662の形状が、仕切部656の周方向の端面を略球状の凹面として凹設した凹部(溝)として形成されるので、オリフィス形成部材650を成形する成形金型(図示せず)において、凹設溝662を成形するための突出部分に鋭角な部位(角ばった形状)が形成されることを抑制できる。これにより、突出部分の欠けや摩耗を抑制でき、その分、成形金型の耐久性の向上を図ることができる。また、鋭角な部位(角ばった形状)が形成されることが抑制されることで、オリフィス形成部材650を鋳造または射出成型で成形する際には、仕切部656の凹設溝662近傍における素材の流動性を確保して、歩留りの向上を図ることができる。
次に、図12(a)及び図12(b)を参照して、第7実施形態における液封入式防振装置700について説明する。
図12(a)は、第7実施形態における液封入式防振装置700の断面図であり、図12(b)は、図12(a)のXIIb−XIIb線における液封入式防振装置700の断面図である。なお、図12(a)では、理解を容易とするため、図12(a)に図示される一方の凹設溝762に重ね合わされる他方の凹設溝762が破線を用いて図示される。
図12(a)及び図12(b)に示すように、第7実施形態における液封入仕式防振装置700の凹設溝762は、一端と他端との間が直線状に延設され、一方のオリフィス形成部材750における仕切部756の端面と他方のオリフィス形成部材750における仕切部756の端面とが突き合わされた状態では、端面の正面視(即ち、図12(a)に図示する状態)において、一方の凹設溝762の延設方向と他方の凹設溝762の延設方向とが異なる方向に設定される(即ち、略V字状に交差される)。
なお、この場合、凹設溝762は、仕切部756の周方向の端面において、一端を第2凹溝57b側の縁部に連ならせると共にその一端から仕切部756(オリフィス形成部材750)の軸方向(図12(a)上下方向)に対して傾斜しつつ仕切部56の幅方向(軸方向寸法、図12(a)上下方向寸法)の中央を越える位置まで直線状に延設される。
よって、一対のオリフィス形成部材750が互いに上下反転された姿勢とされ、仕切部756の端面どうしが互いに突き合わされると、一方の仕切部756に形成される凹設溝762の他端側と、他方の仕切部756に形成される凹設溝762の他端側とが周方向(図12(a)紙面垂直方向)に重ね合わされ、両凹設溝762の内部空間が互いに連通されることで、オリフィス73の断面積よりも小さく且つオリフィス73よりも流路長さが短い短絡経路774が形成される。
本実施形態によれば、上述した第1実施形態の場合と同様に、短絡経路774の途中(流路上)に、仕切部756の端面どうしの重ね合わせ方向(図12(b)左右方向)に屈曲する部分を形成することができるので、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路774を流動し難くでき、その分、オリフィス73の流動量を確保して、減衰効果を高めることができる。
これに加え、上述したように、一方の仕切部756の端面と他方の仕切部756の端面とが突き合わされた状態では、端面の正面視(即ち、図12(a)に図示する状態)において、一方の凹設溝762の延設方向と他方の凹設溝762の延設方向とが異なる方向に設定される(即ち、略V字状に交差される)ので、かかる延設方向の変化(略V字状の交差)を利用して、短絡経路774を液体が流動し難くできる。即ち、比較的大きな振幅の入力時に、液体が短絡経路774を流動し難くして、その分、オリフィスの流動量を確保できるので、減衰効果を更に高めることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施形態における構成の一部または全部を他の実施形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
上記第1実施形態、第5実施形態、第6実施形態および第7実施形態では、一対のオリフィス形成部材50,550,650,750が互いに同一の形状で形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、一対のオリフィス形成部材50,550,650,750は、互いに同一の形状でなくても良い。
即ち、一方のオリフィス形成部材の凹設溝と、他方のオリフィス形成部材の凹設溝とが異なる形状とされ、且つ、それら一方および他方のオリフィス形成部材の仕切部の端面どうしが突き合わされた場合に互いの凹設溝の一部(他端どうし)が重なり合って、短絡経路を形成するものであっても良い。
上記第2実施形態、第3実施形態および第4実施形態では、一方のオリフィス形成部材250,350,450のみに凹設溝262,362,462を設け、他方のオリフィス形成部材250,350,450には凹設溝262,362,462を設けない(非形成とする)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他方オリフィス形成部材250,350,450にも凹設溝262,362,462を設けても良い。即ち、凹設溝262,362,462が形成された一方のオリフィス形成部材250,350,450を2枚組み合わせて、液封入式防振装置200,300,400を形成しても良い。これにより、オリフィス形成部材の種類を1種類として、部品点数を削減できるので、その分、製品コストの削減を図ることができる。
なお、この場合、第3実施形態および第4実施形態では、一方および他方の凹設溝362,462が一部で交差(重なり合う)ことで、流路の一部が交差(連通)する2本の短絡経路がそれぞれ形成されるが、かかる短絡経路は、オリフィス73よりも断面積が小さく且つ流路長さが短い経路となるので、上述した場合と同様の効果(比較的小振幅の振動入力時は動ばね定数を低減しつつ比較的大振幅の振動入力時には減衰効果を高める)を奏することができる。
上記各実施形態では、短絡経路74〜674が、オリフィス73の2点間(第1凹溝57a及び第2凹溝57b)を連通する流路として形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、オリフィス73(第1凹溝57a又は第2凹溝57b)と液室71又は液室72とを連通する流路として形成しても良い。
なお、この場合には、凹設溝を、仕切部56〜756ではなく、第1突部53における立設部55の周方向の端面または第2突部58における立設部60の周方向の端面に形成(凹設)すると共に、その凹設溝(短絡経路)と液室71又は液室72とを連通させるための流路を防振基体30の壁面部36,38に形成する。
上記各実施形態では、オリフィス形成部材50〜750が、合成樹脂で形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の素材から形成されるものであっても良い。他の素材としては、例えば、鉄やアルミニウム合金などが例示される。
上記各実施形態では、凹設溝62〜762が凹設された状態のオリフィス形成部材50〜750を鋳造または射出成型により型成形する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、凹設溝62〜762が非形成の状態でオリフィス形成部材50〜750を鋳造または射出成型により型成形し、別工程(例えば、切削や研削、レーザー加工など)において、凹設溝62〜762を形成するものであっても良い。この場合には、成形金型を流用しつつ、車種ごとに異なる形状の短絡経路を設定できる。
上記各実施形態では、第6実施形態を除き、仕切部56〜556,756の端面の正面視における凹設溝62〜562,762の形状が、直線からなる又は直線を組み合わせた形状とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、曲線からなる又は直線と曲線とを組み合わせた形状であっても良い。
上記各実施形態では、第6実施形態を除き、凹設溝62〜562,762が断面コ字状とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の断面形状であっても良い。他の断面形状としては、例えば、断面円弧状、断面半円状、断面U字状、断面V字状、断面台形状などが例示される。