JP4367000B2 - クラッチレリーズ軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に用いられるクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両等に搭載され摩擦板を用いた動力断続装置であるクラッチを動作させる場合において、入力部材であるレリーズフォークでクラッチカバーのダイヤフラムスプリングを軸線方向に押圧することにより、スプリングの付勢力を摩擦板から解除して動力伝達の切り離しが行なわれている。
【0003】
ところで、レリーズフォークは車体等の固定側に通常配置されているが、クラッチカバーはエンジンのフライホイール等に取り付けられてそれと一体的に回転するようになっている。従って、クラッチカバーのダイヤフラムスプリングをレリーズフォークが直に押圧するとなると、当接部の摩耗を招来することとなる。そこで、ダイヤフラムスプリングに当接して一体的に回転する回転輪を含むクラッチレリーズ軸受と、この軸受を所定の状態に保持すると共にレリーズフォークからの入力を受けるようになっている回転しない軸受保持部材とからなるクラッチレリーズ軸受装置を、例えば以下の特許文献1に示すようにダイヤフラムスプリングとレリーズフォークとの間に設けている。
【特許文献1】
実公平7−28418号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この特許文献1に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、クラッチレリーズ軸受を保持するガイドスリーブのフランジ部と、レリーズ力を入力するレリーズフォークとの間に、クラッチレリーズ軸受の軸線と直交する方向に移動可能となっているレース板を設け、レリーズフォークの揺動と共に移動させることで、ガイドスリーブ等の磨耗を防止している。
【0005】
しかるに、レース板が限界まで移動すると、それ以上の移動が制限されるので、レリーズフォークの揺動に対して固定状態におかれ、レース板とレリーズフォークとの磨耗の防止が図れないこととなる。又、運搬時・組付時等においてガイドスリーブからレース板が分離しないようにする必要もある。そこで、特許文献1に記載のクラッチレリーズ軸受装置では、リターンスプリングと呼ばれる単一のワイヤバネをガイドスリーブとレース板との間に設け、ガイドスリーブに対するレース板のセンタリング機能及び分離防止機能を実現するようにしている。ところが、従来のリターンスプリングは、ワイヤを3次元的に複雑に曲げたものであり、これの組み付けに手間取ると共に、製造コスト的にも割高なものであった。又、比較的細いワイヤの弾性力でレース板のセンタリング機能を発揮させているので、強大なレリーズ力に対処するためにレース板を厚くした場合、そのセンタリング機能を十分発揮できない恐れもあるが、十分なセンタリング機能を発揮すべく線径を太くすると、更に組付性が悪化する。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、比較的低コストでありながら、組付性に優れ、磨耗を抑制できるクラッチレリーズ軸受装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、
互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合され、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する軸受保持部材と、前記クラッチレリーズ軸受にレリーズ力を伝達するために揺動する入力部材と前記軸受保持部材との間に配置され、前記入力部材の揺動に応じて前記クラッチレリーズ軸受の軸線と交差する方向に移動する移動部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
板材から折り曲げ形成された付勢部材を設けており、
前記付勢部材は、前記軸受保持部材と前記移動部材との間に配置されてなり、前記軸受保持部材に対して前記移動部材を所定位置に向かって付勢する、短い円筒の外周の一部を切り欠いたC字形状の付勢部と、前記軸受保持部材と前記移動部材の分離を阻止する、前記付勢部の上縁から外側に折り曲げられた係止部とを有することを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明のクラッチレリーズ軸受装置は、板材から折り曲げ形成された付勢部材を設けており、前記付勢部材は、前記軸受保持部材と前記移動部材との間に配置されてなり、前記軸受保持部材に対して前記移動部材を所定位置に向かって付勢する、短い円筒の外周の一部を切り欠いたC字形状の付勢部と、前記軸受保持部材と前記移動部材の分離を阻止する、前記付勢部の上縁から外側に折り曲げられた係止部とを有するので、従来のようにワイヤ部材を3次元に折り曲げるより低コストで前記付勢部材を形成でき、しかも前記付勢部の付勢力は、前記板材の板厚を代えるなどして任意に設定できるため、広範囲な仕様のクラッチレリーズ軸受装置に適用できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図2は、図1の構成をII-II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【0012】
図2において、クラッチレリーズ軸受装置は、クラッチレリーズ軸受10と、軸受保持部材であるガイドスリーブ20と、移動部材であるレース板30と、付勢部材であるバネ部材40とからなる。クラッチレリーズ軸受10は、左方端を当接部11aとする略円管状の内輪11と、内輪11を同心的に内包する短い円管状の外輪12と、内輪11と外輪12との間に転動自在に配置された複数のボール15と、ボール15を所定間隔で保持する保持器16と、ボール15の軸線方向両側で内輪11と外輪12とにより画成される空間を防塵油密的に密封するシール17、18とからなる。内輪11は外輪12に対して回転自在に支持されている。また内輪11の当接部11aは、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに当接するようになっている。
【0013】
一方、ガイドスリーブ20は、樹脂製である円管状の本体21と、本体21の中央近傍の外周に鋳込まれ且つ半径方向に延在する金属製のフランジ部22と、フランジ部22の外周にカシメられた(図1参照)円筒状のケース23とを有する。本体21の内方には図示しないガイド軸が延在しており、本体21はガイド軸上を摺動自在となっている。なお、本体21の内方には拡径部21aが設けられている。この拡径部21aは、本体21がガイド軸上を摺動する際に異物を噛みこまないように機能するものである。また、クラッチレリーズ軸受10を内包するケース23は、ダイヤフラムスプリング側の端部23aが縮径している。かかる端部23aとクラッチレリーズ軸受10の外輪12との間には、ばね24が設けられ、その付勢力により、クラッチレリーズ軸受10はガイドスリーブ20に対して押しつけられ、半径方向に移動可能に支持されている。
【0014】
レース板30は環状であり、ガイドスリーブ20の本体21に対し、スキマを空けて嵌合している。レース板30と本体21の間の略環状空間には、バネ部材40が配置されている。
【0015】
図3は、バネ部材40の斜視図である。板材を折り曲げて形成されたバネ部材40は、短い円筒の外周の一部を切り欠いたC字形状の付勢部41と、付勢部41の上縁から外側に折り曲げられた4つの係止部42と、付勢部41における切欠部に形成された曲げ部43とを有する。図1に示すように、レース板30と本体21の間に配置された際に、曲げ部43が本体21の鍔部21bに引っかかることで、ガイドスリーブ20とバネ部材40の分離が防止されると共に、バネ部材40の係止部42がレース板30を抑えるので、ガイドスリーブ20とレース板30の分離が防止されることとなる。又、図1に示す状態を基準位置とし、レース板30が左方(又は右方)に移動した場合、その方向の空間が減少することに伴いバネ部材40の付勢部41が変形するので、その弾性力に基づいてレース板30を押し戻し、すなわちセンタリング機能を発揮するようになっている。
【0016】
次に、本発明の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置の動作につき以下に説明する。図1において、図示しない入力部材であるレリーズフォークが枢動して、その先端がレース板30のアンビル部32(図1で本体21の上方及び下方位置)に当接して一定の荷重を印加する。レース板30の板厚は比較的厚くその剛性も十分であるため、レリーズフォークより受ける大荷重を支持することができる。レース板30は、レリーズフォークの揺動に応じて図1で左右に移動するので、ガイドスリーブ20,レース板30,レリーズフォークの磨耗を抑えることができる。
【0017】
クラッチレリーズ軸受装置は、レリーズフォークからの入力により図示しないガイド軸上を軸線方向に摺動して、図示しないクラッチカバーのダイヤフラムスプリングに内輪11の当接部11aを当接させる。ダイヤフラムスプリングが回転していても、内輪11は回転自在であるので、当接後にダイヤフラムスプリングと一体で回転することとなり、更に軸受装置が軸線方向に移動することによりダイヤフラムスプリングが押圧されてクラッチが動作されるようになっている。
【0018】
ばね24は、ケース23を介してガイドスリーブ20に対してクラッチレリーズ軸受10を、それらの間に作用する摩擦力のみで支持しているため、クラッチレリーズ軸受10は、ガイドスリーブ20に対して半径方向に移動可能となっている。従って、内輪11の当接部11aがダイヤフラムスプリング(クラッチ装置の回転部材)に当接したとき、両者の間に偏心があれば、クラッチレリーズ軸受10を同心に位置させようとする公知の力が生じ、それによりクラッチレリーズ軸受10は半径方向に移動して、自動調心が達成されることとなる。
【0019】
本実施の形態によるバネ部材40は、打ち抜いた1枚の板材から、係止部42と曲げ部43とを折り曲げ形成すれば良く、低コストで大量生産が可能である。また、組み付ける際には、付勢部41を環状に丸めた状態で、ガイドスリーブ20とレース板30との間に挿入すれば良く、組付性にも優れる。更にバネ部材40の付勢力は、板材の板厚を代えるなどして任意に設定できるため、広範囲な仕様のクラッチレリーズ軸受装置に適用できる。
【0020】
図4は、第2の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図5は、図4の構成をV-V線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。図6は、1つの付勢部材即ちバネ部材の斜視図である。本実施の形態に関しては、図1〜3の実施の形態に対し異なる点のみ説明し、共通する構成については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0021】
本実施の形態におけるクラッチレリーズ軸受装置において、同じ形状のバネ部材140は、図4に示すように、レース板30の移動方向両側に二つ配置されているが、第1の実施の形態と同様に、各々板材を折り曲げて形成されている。より具体的には、図6に示すように、バネ部材140は、蛇行するように折り曲げられた付勢部141と、その両端に突出するように形成された係止部142とを有する。
【0022】
本実施の形態において、図4に示すように、バネ部材140がレース板30と本体21の間に配置された際に、付勢部141が本体21の鍔部21bに引っかかることで、ガイドスリーブ20とバネ部材140の分離が防止されると共に、係止部142がレース板30を抑えるので、ガイドスリーブ20とレース板30の分離が防止されることとなる。又、図4に示す状態を基準位置とし、レース板30が左方(又は右方)に移動した場合、その方向の空間が減少することに伴い左側(又は右側)のバネ部材140の付勢部141が変形するので、その弾性力に基づいてレース板30を押し戻し、すなわちセンタリング機能を発揮するようになっている。
【0023】
図7は、第3の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図8は、図7の構成をVIII-VIII線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。図9は、1つの付勢部材即ちバネ部材の斜視図である。本実施の形態に関しても、図1〜3の実施の形態に対し異なる点のみ説明し、共通する構成については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0024】
本実施の形態におけるクラッチレリーズ軸受装置において、同じ形状のバネ部材240は、図7に示すように、レース板30の移動方向両側に二つ配置されているが、第1、2の実施の形態と同様に、各々板材を折り曲げて形成されている。より具体的には、図9に示すように、バネ部材240は、めがね状に折り曲げられた付勢部241と、その両端に突出するように形成された係止部242とを有する。
【0025】
本実施の形態において、図7に示すように、バネ部材240がレース板30と本体21の間に配置された際に、付勢部241が本体21の鍔部21bに引っかかることで、ガイドスリーブ20とバネ部材240の分離が防止されると共に、係止部242がレース板30を抑えるので、ガイドスリーブ20とレース板30の分離が防止されることとなる。又、図7に示す状態を基準位置とし、レース板30が左方(又は右方)に移動した場合、その方向の空間が減少することに伴い左側(又は右側)のバネ部材240の付勢部241が変形するので、その弾性力に基づいてレース板30を押し戻し、すなわちセンタリング機能を発揮するようになっている。
【0026】
図10は、第4の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。図11は、図10の構成をXI-XI線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。本実施の形態に関しても、図1〜3の実施の形態に対し異なる点のみ説明し、共通する構成については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0027】
本実施の形態におけるクラッチレリーズ軸受装置において、同じ形状のバネ部材340は、図10に示すように、レース板30の移動方向両側に二つ配置されているが、本実施の形態においては、各々板材から形成されたものではなく、コイルスプリング状となっている。より具体的には、付勢部材であるバネ部材340は、コイル状の付勢部341と、その両端から対向して突出する係止部342とを有する。
【0028】
本実施の形態において、図11に示すように、バネ部材340がレース板30と本体21の間に配置された際に、係止部342の一方が、レース板30の内周面に形成された孔30aに嵌合し、係止部342の他方が、本体21の外周面に形成された孔21cに嵌合することで、ガイドスリーブ20とレース板30の分離が防止されることとなる。又、図10に示す状態を基準位置とし、レース板30が左方(又は右方)に移動した場合、その方向の空間が減少することに伴い左側(又は右側)のバネ部材340の付勢部341が変形するので、その弾性力に基づいてレース板30を押し戻し、すなわちセンタリング機能を発揮するようになっている。尚、バネ部材340は、クラッチレリーズ軸受装置に別々に組み込めば良いので、たとえ線径が太くても組付は容易である。
【0029】
図4〜11の実施の形態では、バネ部材を複数配置したので、従来のように複雑に曲がった単一のワイヤバネをガイドスリーブ20とレース板30との間に配置する場合に比べ、より容易に組み付けを行うことができる。又、バネ部材を複数とすることで、形状の簡素化が図れ、それらの形状を同じものとすることで、量産効果によるコスト低減も期待できる。
【0030】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば付勢部材は2つに限らず3つ以上設けても良い。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的低コストでありながら、組付性に優れ、磨耗を抑制できるクラッチレリーズ軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図2】図1の構成をII-II線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図3】バネ部材の斜視図である。
【図4】第2の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図5】図4の構成をV-V線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図6】バネ部材の斜視図である。
【図7】第3の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図8】図7の構成をVIII-VIII線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【図9】バネ部材の斜視図である。
【図10】第4の実施の形態であるクラッチレリーズ軸受装置をレリーズフォーク側から見た図である。
【図11】図10の構成をXI-XI線に沿って切断して矢印方向に見た軸線方向断面図である。
【符号の説明】
10 クラッチレリーズ軸受
20 ガイドスリーブ
30 レース板
40 バネ部材
Claims (1)
- 互いに同心的に配置されかつ相対回転する内輪及び外輪を含み、一方の輪が固定され、回転する他方の輪がクラッチ装置の回転部材に当接するようになっているクラッチレリーズ軸受と、ガイド軸上に摺動自在に嵌合され、該クラッチレリーズ軸受の該一方の輪を半径方向に移動可能となるよう保持する軸受保持部材と、前記クラッチレリーズ軸受にレリーズ力を伝達するために揺動する入力部材と前記軸受保持部材との間に配置され、前記入力部材の揺動に応じて前記クラッチレリーズ軸受の軸線と交差する方向に移動する移動部材とからなっているクラッチレリーズ軸受装置において、
板材から折り曲げ形成された付勢部材を設けており、
前記付勢部材は、前記軸受保持部材と前記移動部材との間に配置されてなり、前記軸受保持部材に対して前記移動部材を所定位置に向かって付勢する、短い円筒の外周の一部を切り欠いたC字形状の付勢部と、前記軸受保持部材と前記移動部材の分離を阻止する、前記付勢部の上縁から外側に折り曲げられた係止部とを有することを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。
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JP2003135587A JP4367000B2 (ja) | 2003-05-14 | 2003-05-14 | クラッチレリーズ軸受装置 |
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- 2003-05-14 JP JP2003135587A patent/JP4367000B2/ja not_active Expired - Fee Related
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