JP4366953B2 - 複合半導体基板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、SOI構造を備えた複合半導体基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
絶縁体層上に設けられたシリコン層を半導体装置の形成に利用するSOI(Silicon On Insulator)技術は、α線耐性、ラッチアップ特性、あるいはショートチャネルの抑制効果など、通常の単結晶シリコン基板では達成し得ない優れた特性を示すため、半導体装置の高集積化等を目的としてその開発が進められている。
【0003】
近年では、100nm以下の厚さにまで薄膜化されたSOI層にデバイスを形成したものにより、優れたショートチャネル抑制効果が見いだされている。また、このようにして形成されたSOIデバイスは、放射線耐性に優れていることによる高信頼性を備えるとともに、寄生容量の低減による素子の高速化や低消費電力化を図れること、あるいは完全空乏型電界効果トランジスタを作製できることによるプロセスルールの微細化を図れることなどの優れた点を備えている。
【0004】
このようなSOI構造を形成する方法としては、単結晶シリコン基板の貼り合わせによるSOI基板の製造方法がある。一般に貼り合わせ法と呼ばれるこの方法は、単結晶シリコン基板と支持基板とを酸化膜を介して重ね合わせ、基板表面のOH基を利用して室温程度で貼り合わせた後、単結晶シリコン基板を研削や研磨、またはエッチングによって薄膜化し、続いて700℃〜1200℃程度の熱処理によってシロキサン結合(Si−O−Si)させ、貼り合わせ強度を上げて単結晶シリコン層を支持基板上に形成するものである。この手法によれば、単結晶シリコン基板を直接薄膜化するので、シリコン薄膜が結晶性に優れたものとなり、したがって高性能のデバイスを作製することができる。
【0005】
また、この貼り合わせ法を応用したものとして、単結晶シリコン基板に水素イオンを注入し、これを支持基板と貼り合わせた後、400〜600℃程度の熱処理によって薄膜シリコン層を単結晶シリコン基板の水素注入領域から分離し、次に1100℃程度までの熱処理で貼り合わせ強度を上げる手法や、表面を多孔質化したシリコン基板上に単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させ、これを支持基板と貼り合わせた後にシリコン基板を除去し、多孔質シリコン層をエッチングすることにより支持基板上にエピタキシャル単結晶シリコン薄膜を形成する手法などが知られている。
【0006】
貼り合わせ法によるSOI基板は、通常のバルク半導体基板(半導体集積回路)と同様に様々なデバイスの作製に用いることができる。一方、従来のバルク基板と異なる点としては、支持基板に様々な材料を使用することが可能であることを挙げることができる。すなわち、支持基板としては、通常のシリコン基板はもちろんのこと、透光性を備えた石英基板、あるいはガラス基板などを用いることができる。したがって、透光性基板上に単結晶シリコン薄膜を形成することにより、光透過性を必要とするデバイス、例えば、透過型の液晶装置などの電気光学装置においても、アクティブマトリクス基板上に、結晶性に優れた単結晶シリコン層を用いて高性能なトランジスタ素子を形成することができる。すなわち、画素電極を駆動する画素スイッチング用MIS形トランジスタや、画像表示領域の周辺領域で駆動回路を構成する駆動回路用MIS形トランジスタを単結晶シリコン層であるSOI層に形成することにより表示の微細化、高速化を図ることができるのである。
【0007】
ここで、透過型の液晶装置などの電気光学装置にSOI基板を用いた場合、支持基板である石英基板などの透光性基板とSOI層の熱膨張係数が異なるため、前述の貼り合わせ強度を上げるための熱処理工程や熱酸化処理工程などにおいて、熱膨張係数の違いによる熱応力が発生し、その結果単結晶半導体層(SOI層)にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成され、デバイス特性に支障をきたすおそれがある。
【0008】
このような熱膨張係数の違いによる熱応力に対応する技術として、従来、半導体単結晶領域とガラス物質との間に応力緩和層を設け、基板の反り等を低減した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、貼り合わせ時の熱応力が単結晶半導体層(単結晶シリコン層)に残存してしまうのを防止するため、単結晶シリコン薄膜をパターニングして島状シリコン層を形成し、この島状シリコン層に対して熱酸化処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、陽極酸化によって単結晶半導体基板の一部を多孔質層に変化させ、この多孔質層を応力緩和層として用いる技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−142570号公報
【特許文献2】
特開2000−12864号公報
【特許文献3】
特開2000−106424号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の半導体単結晶領域とガラス物質との間に応力緩和層を設ける技術では、形成した応力緩和層を除去することができず、また、この応力緩和層は有色であり非透明であることから、例えば得られた複合半導体基板から透過型の液晶装置を製造することができないといった課題がある。
【0011】
また、島状シリコン層に対して熱酸化処理を行う技術では、特にシリコン層を薄厚化するため犠牲酸化を行い、その後犠牲酸化層をウエットエッチングで除去する場合に、ウエットエッチング液が島状シリコン層の間を通ってシリコン層の下地の絶縁層を溶解し、支持基板との間の貼り合わせ界面にまで到達してしまうおそれがある。このようにウエットエッチング液が貼り合わせ界面にまで到達してしまうと、貼り合わせ界面に剥離を生じさせてしまうなどの不都合を生じさせ、例えば得られた複合半導体基板から透過型の液晶装置(ライトバルブ)を製造した場合に、貼り合わせ界面の剥離に起因して表示不良を起こしてしまう。
【0012】
また、多孔質層を応力緩和層として用いる技術では、前述したように貼り合わせ後に単結晶シリコン層を薄膜化するため予め水素イオンを注入しておき、熱処理によって薄膜シリコン層を単結晶シリコン基板の水素注入領域から分離する際、単結晶シリコン層と多孔質層との間で水素イオン注入のプロファイルが異なってしまっていることにより、分離が良好になされないおそれがある。また、このようにして分離した後の単結晶シリコン基板については、通常はそのまま別のSOI基板作製に用いるものの、この技術では、多孔質層が分離した後の単結晶シリコン基板にも残存しているため、これを直接用いることができない。また、貼り合わせのための酸化シリコン層を形成した際、単結晶シリコン層から形成される酸化シリコン層と多孔質層から形成される酸化シリコン層との間に膜質の差が生じ、これによって貼り合わせにむらが生じるおそれもある。
【0013】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、貼り合わせ強度を上げるための熱処理工程などで生じる熱応力を緩和して単結晶半導体層にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのを防止することができ、さらに透過型の液晶装置の製造にも適用でき、その場合に表示不良を起こすことも防止することができ、また、貼り合わせむらも生じないようにした複合半導体基板の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の複合半導体基板の製造方法は、単結晶半導体層を備えた半導体基板を支持基板上に貼り合わせてなる複合半導体基板の製造方法であって、前記支持基板上に前記半導体基板を貼り合わせて貼り合わせ基板とする工程と、前記貼り合わせ基板における前記単結晶半導体層の所定領域にイオン注入を行う工程と、前記イオン注入後の前記貼り合わせ基板を熱処理する工程と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
この複合半導体基板の製造方法によれば、単結晶半導体層の所定領域にイオン注入を行い、その後、貼り合わせ基板を熱処理するので、熱処理によって貼り合わせ強度を上げることができ、またその際、イオン注入を行った所定領域が例えば非晶質化していることによってこの部分が応力緩和層として機能し、単結晶半導体層にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのが防止される。
【0016】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記支持基板と半導体基板とを貼り合わせて貼り合わせ基板とする工程と、この貼り合わせ基板の前記所定領域にイオン注入を行う工程との間に、前記貼り合わせ基板の前記半導体基板をその厚さ方向で分離して前記単結晶半導体層を薄厚化する工程を備えているのが好ましい。
このようにした場合に、貼り合わせ基板中の前記半導体基板をその厚さ方向で分離して前記単結晶半導体層を薄厚化した際、この薄厚化前の単結晶半導体層には多孔質層等が設けられていないことから、分離後の単結晶半導体基板については、そのまま別の複合半導体基板(SOI基板)作製に用いることができる。また、前記半導体基板に貼り合わせのための酸化層を形成した場合に、前記単結晶半導体層には多孔質層等が設けられていないことから、単結晶半導体層から形成される酸化層と多孔質層から形成される酸化層との間に膜質の差による貼り合わせむらの発生も防止される。
【0017】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記熱処理を行った後に、熱酸化を行う工程と、この熱酸化によって形成した熱酸化膜をエッチング除去して単結晶半導体層を所望厚さにする工程と、前記所定領域の単結晶半導体層をエッチング除去する工程と、を備えているのが好ましい。
このようにすれば、熱酸化膜のエッチング除去にウエットエッチングを採用しても、薄厚化した単結晶半導体層が島状に分離させられることなくそのまま残っているので、これを覆って形成された熱酸化膜をエッチングした際にエッチング液が貼り合わせ界面にまで浸透してしまうことがなく、したがって貼り合わせ界面に剥離が生じるといった不都合が防止される。
【0018】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記イオン注入を行う工程において、前記貼り合わせ基板における前記単結晶半導体層のうち素子が形成される領域以外の領域に前記イオンが注入されるのが好ましい。
このようにすれば、素子が形成される領域の膜質がイオン注入によって損なわれるのが防止される。
【0019】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記イオン注入後の前記貼り合わせ基板を熱処理する工程では一次熱処理及び二次熱処理を行い、前記一次熱処理を600℃以上で行うのが好ましい。
このようにすれば、イオン注入によって非晶質化した部分が固相成長し、部分的に多結晶半導体となる。すると、この多結晶半導体の粒界が応力を緩和する機能をより良好に発揮し、その後の二次熱処理の際に素子形成領域における単結晶半導体層にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのがより確実に防止される。
【0020】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記二次熱処理を、700℃以上、1200℃以下の範囲で行うのが好ましい。
このようにすれば、この二次熱処理で貼り合わせ基板における貼り合わせ強度を十分に高めることができる。
【0021】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記一次熱処理と二次熱処理とを連続的に行うのが好ましい。
このようにすれば、常温からいきなり高温での二次熱処理を行うことによる過度な熱応力が発生するのを防止することができる。
【0022】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記単結晶半導体層が、単結晶シリコンからなるのが好ましい。
このようにすれば、単結晶半導体層が一般的な単結晶シリコンからなることにより、他の単結晶半導体層を用いた場合に比べ複合半導体基板を安価に製造することが可能になる。
【0023】
また、前記複合半導体基板の製造方法においては、前記支持基板は、透光性基板であるのが好ましい。
このようにすれば、得られた複合半導体基板から例えば透過型の液晶装置(ライトバルブ)を製造することが可能になる。
【0024】
本発明の複合半導体基板は、前記のいずれかの製造方法によって得られたことを特徴としている。
この複合半導体基板によれば、単結晶半導体層にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのが防止されていることから、例えばこの単結晶半導体層を薄膜トランジスタなどの半導体素子に形成した場合に良好で信頼性の高いものとなる。
【0025】
本発明の電気光学装置は、前記複合半導体基板を備えたことを特徴としている。
この電気光学装置によれば、例えば前記の良好で信頼性の高い半導体素子を有することにより、この電気光学装置自体も良好で信頼性の高いものとなる。
【0026】
本発明の電子機器は、前記電気光学装置を備えたことを特徴としている。
この電子機器によれば、前記の良好で信頼性の高い電気光学装置を備えることにより、この電子機器自体も良好で信頼性の高いものとなる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1〜図3は、それぞれ本発明の実施の形態1に係るSOI構造の複合半導体基板(貼り合せ基板)の製造方法を示す工程断面図である。
【0028】
本実施の形態では、まず図1(A)に示すように、厚さが例えば750μmの単結晶シリコン基板(半導体基板)200を用意し、その後、その第1の面201および第2の面202のうちの少なくとも第1の面201の全面に、シリコン酸化膜(絶縁層)210を形成する。このシリコン酸化膜210は、後述する貼り合わせ工程において第1の面201が親水性となる厚さ以上であればよいが、本例では200nm程度に形成する。
【0029】
次に、図1(B)に示すように第1の面201側から水素イオンをシリコン酸化膜210が形成された単結晶シリコン基板200に注入する。その結果、単結晶シリコン基板200の内部には、図1(B)中破線で示すような進入深さ分布を備えるイオン注入層が形成される。このときのイオン注入条件としては、例えば加速エネルギーを60〜150keV、ドーズ量を5×1016cm−2〜10×1016cm−2とする。
【0030】
次に、図1(C)に示すように支持基板500を準備し、続いて、支持基板500の表面全体にスパッタリング法、CVD法などにより、シリコン酸化膜、NSG(ノンドープトシリケートガラス)などの酸化膜(絶縁層)510を形成する。次いで、この酸化膜510の表面をCMP法などによって研磨し、平坦化する。ここで、酸化膜510の膜厚は、例えば、約400〜1000nm、より好ましくは800nm程度とする。なお、支持基板500として石英などのSiOを主成分とする基板を用いた場合には、この酸化膜510の形成工程を省くこともできる。
【0031】
ここで、前記酸化膜(絶縁層)210、510は、単結晶シリコン基板(半導体基板)200と支持基板500との密着性を確保するために形成されたものである。支持基板500としては、ガラスや石英などの透光性材料からなる基板(透光性基板)を用いることができる。その場合、得られた複合半導体基板を透過型の電気光学装置、例えば透過型の液晶装置(ライトバルブ)などに応用することができる。
【0032】
次に、図1(D)に示すように、単結晶シリコン基板200の酸化膜510側の面501と、支持基板500のシリコン酸化膜210側の面とを接合させ、酸化膜210、510を介して単結晶基板200を支持基板500上に室温〜200℃程度で貼り合わせる。すると、基板表面のOH基の作用により、図1(E)に示すように単結晶シリコン層220と支持基板500とが絶縁層550(酸化膜210、510)を介して貼り合わされ、これにより複合半導体基板(貼り合わせ基板)600が形成される。
【0033】
ここで、貼り合わ後の複合半導体基板600における単結晶シリコン基板200については、その単結晶シリコン層を例えば200nm程度に薄厚化して図1(E)に示した単結晶シリコン層220とする。この単結晶シリコン層220は、例えば400℃〜600℃の低温で熱処理することにより、前記イオン注入層の位置で単結晶シリコン基板200が分離切断されて形成されたものである。この分離切断現象は、単結晶シリコン基板200内に導入されたイオンによって半導体結晶の結合が分断されるために生じるものであり、イオン注入層におけるイオン濃度のピーク位置でより顕著なものとなる。したがって、熱処理によって分離切断される位置は、前記イオン濃度のピーク位置と同一となる。なお、上記の分離切断によって露出した単結晶シリコン層220の表面は、数nm程度の凹凸を有するため、CMP法により平滑化を行うか、もしくは水素雰囲気中で熱処理を行う水素アニール法によって表面を平滑化しておくのが好ましい。また、このようにして分離した後の単結晶シリコン基板200については、そのまま別のSOI基板作製に用いることができる。
【0034】
また、支持基板500の表面において、酸化膜510の下層側に、モリブデン、タングステンなどの膜を形成しておいてもよい。このような膜は、例えば、熱伝導性膜として機能するので、支持基板500の温度分布を改善することができる。したがって、例えば、支持基板500と単結晶シリコン基板200とを貼り合わせる工程においては、この熱伝導性膜によって貼り合わせ界面の温度分布を均一化することができ、これによりこの界面での貼り合わせを均一にし、貼り合わせ強度を向上させることができる。さらに、透過型の液晶装置などに用いる場合には、モリブデン、タングステンなどの膜は、遮光層として機能させることができる。なお、このような膜に用いることができる材料は上記に挙げたもの以外にも、タンタル、コバルト、チタン等の高融点金属またはそれらを含む合金、もしくは多結晶シリコン、タングステンシリサイド、モリブデンシリサイド等に代表されるシリサイド膜などを用いることができる。
【0035】
続いて、前記単結晶シリコン層220上にレジスト層を形成し、さらに露光・現像処理を行うことにより、図2(A)に示すように単結晶シリコン層220の素子非形成領域230を露出させるレジストパターン610を形成する。ここで、素子非形成領域とは、単結晶シリコン層220において、能動素子、例えばスイッチング素子や論理回路、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)による素子等を形成しない領域であり、後工程においてエッチング除去する領域である。
【0036】
ただし、本工程では、図2(A)中に示すように素子非形成領域230の全体を露出させることなく、素子形成領域240に接する部分、例えば素子形成領域240との境界から幅1μm程度の部分については、これを露出させることなくレジストパターン610で覆うようにする。これは、後述するようにレジストパターン610をマスクにして素子非形成領域230にイオン注入を行い、この部分を非晶質化した後、熱処理を行った際、素子非形成領域230に注入したイオン(不純物)が素子形成領域240にまで拡散するのを防止するためである。
【0037】
このようにしてレジストパターン610を形成したら、図2(B)に示すようにこのレジストパターン610をマスクにして、露出した素子非形成領域230にイオン注入を行う。注入するイオンとしては、特に限定されることなく一般のイオン注入に用いられる全てのイオンが使用可能であり、具体的には、ボロンやリン、ヒ素、アンチモンといった半導体素子の製造に用いられるものや、アルゴン、酸素、ゲルマニウム、シリコンなどが使用される。このイオン注入は、単結晶シリコン層220の単結晶構造を破壊し、イオン注入箇所を非晶質化するための処理であり、イオン注入条件としては、この非晶質化を起こさせる条件であれば特に限定されることはない。なお、イオン注入条件の一例を示すと、イオンとしてボロンやリンを用いた場合、加速エネルギーを60〜150keV、ドーズ量を1×1015cm−2〜5×1015cm−2程度とする。
【0038】
このようにして単結晶シリコン層220の素子非形成領域230にイオン注入を行い、該素子非形成領域230を非晶質化したら、レジストパターン610を除去した後、このイオン注入後の複合半導体基板(貼り合わせ基板)600を一次熱処理する。この一次熱処理は、後に行う二次熱処理の前処理を兼ねて行うもので、二次熱処理を行う加熱装置内をこの二次熱処理温度より十分に低い温度に調節しておき、その状態で複合半導体基板600を加熱装置内に入れ、加熱処理を行う。この加熱処理温度(一次熱処理温度)としては、最終的に600℃以上となるようにして行う。すなわち、例えば加熱装置内を200℃〜400℃程度の低温状態にしておいてここに複合半導体基板600を入れ、その後600℃以上で700℃未満の温度に上げ、その状態で所定時間熱処理を行う。すると、先のイオン注入によって非晶質化した部分が固相成長し、部分的に多結晶シリコンとなる。
【0039】
次いで、加熱装置内の温度を700℃以上、1200℃以下に上げ、図2(C)に示すように一次熱処理温度より高い温度による二次熱処理を行う。この二次熱処理は貼り合わせ強度を上げるための工程である。すなわち、複合半導体基板600の酸化膜210、510の貼り合わせ界面に存在する水素(H)をこの熱処理で揮散させ、Si−O−Si結合を起こさせることにより、貼り合わせ界面の密着性を上げている。
なお、このような二次熱処理や前記の一次熱処理において、先に注入したイオン(不純物)の拡散が起こるものの、前述したようにマージンをとってレジストパターン610を形成し、素子非形成領域230の全体をイオン注入していないことから、イオン(不純物)が素子形成領域240にまで拡散するのが防止されている。
【0040】
このようにして二次熱処理を行うと、単結晶シリコン基板200(単結晶シリコン層220)と支持基板500とが異なる材質からなり、したがって通常はこれらの間で熱膨張係数に差があることから、熱応力が生じる。しかして、本実施の形態では、先にイオン注入を行って素子非形成領域230を非晶質化しているので、この非晶質部分を応力緩和層として機能させることができ、したがって単結晶シリコン層220の素子形成領域240にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのを防止することができる。
また、特に一次熱処理によって非晶質部分を多結晶シリコンにしているので、この多結晶シリコンの粒界が応力を緩和する機能をより良好に発揮し、したがって二次熱処理の際に単結晶シリコン層220の素子形成領域240にスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのをより確実に防止することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、このようにして二次熱処理を行った後、単結晶シリコン層220を犠牲酸化法によって所望の厚さにするべく、該単結晶シリコン層220を熱酸化(犠牲酸化)して図3(A)に示すように単結晶シリコン層220a上に熱酸化膜225を形成する。
次いで、図3(B)に示すように、この熱酸化によって形成した熱酸化膜225をエッチングで除去し、単結晶シリコン層220aを所望厚さにする。
【0042】
この熱酸化膜225のエッチングにあたっては、その前期ではエッチングの速度を速めて処理時間を短縮するため反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングを採用し、後期では熱酸化膜225の下地層である単結晶シリコン層220にダメージを与えないよう、ウエットエッチングを採用するのが好ましい。ここで、このように熱酸化膜225のエッチング除去にウエットエッチングを採用しても、薄厚化した単結晶シリコン層220aが島状に分離させられることなく連続した状態でそのまま残っているので、これを覆って形成された熱酸化膜225をエッチングした際に、エッチング液が支持基板500と単結晶シリコン基板200との間の貼り合わせ界面、すなわち酸化膜510とシリコン酸化膜210との貼り合わせ界面にまで浸透してしまうことがなく、したがって貼り合わせ界面に剥離が生じるといった不都合が防止される。
【0043】
次いで、図3(C)に示すように、素子形成領域240の単結晶シリコン層220aを覆うレジストパターン620を形成する。続いて、これをマスクにして素子非形成領域230の単結晶シリコン層220aをエッチング除去し、さらに図3(D)に示すようにレジストパターン620を除去し、素子形成領域240に単結晶シリコンパターン220bを形成する。単結晶シリコン層220aのエッチングについては、形成する単結晶シリコンパターン220bにダメージが与えられないよう、ウエットエッチングを採用するのが好ましい。
【0044】
このように本実施の形態によれば、薄厚化した単結晶シリコン層220aの、素子非形成領域230にイオン注入を行って該素子非形成領域230を非晶質化し、その後、複合半導体基板600(貼り合わせ基板)を二次熱処理するようにしたので、二次熱処理によって貼り合わせ強度を上げることができ、またその際、イオン注入を行った素子非形成領域230の非晶質部分を応力緩和層として機能させることができ、したがって素子形成領域240における単結晶シリコン層220aにスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのを防止することができる。
【0045】
また、前記二次熱処理に先立って一次熱処理を600℃以上で行っているので、イオン注入によって非晶質化した部分を固相成長させ、部分的に多結晶シリコンにすることができる。よって、この多結晶シリコンの粒界が応力を緩和する機能をより良好に発揮することから、その後の二次熱処理の際に素子形成領域240における単結晶シリコン層220aにスリップや転位、格子欠陥、HF欠陥等が形成されるのをより確実に防止することができる。
【0046】
また、前記二次熱処理を行った後に熱酸化を行い、この熱酸化によって形成した熱酸化膜225をエッチング除去して単結晶シリコン層220aを所望厚さにしているので、熱酸化膜225のエッチング除去にウエットエッチングを採用しても、薄厚化した単結晶シリコン層220aが島状に分離させられることなくそのまま残っていることにより、これを覆って形成された熱酸化膜225をエッチングした際にエッチング液が貼り合わせ界面にまで浸透してしまうことがなく、したがって貼り合わせ界面に剥離が生じるといった不都合を防止することができる。
【0047】
なお、前記の実施の形態においては、絶縁層550の少なくとも一部に、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などの少なくとも1200℃以下の熱処理時に流動性もしくは弾性をもつ層を形成しておくようにしてもよい。半導体プロセスで一般的に使われるBPSGであれば850℃以上で流動性を持つ。B、Pの濃度によっては700℃から流動性を持たせることができる。この流動性の層によって熱応力がより緩和されるため、熱膨張係数の異なる複合半導体基板(SOI基板)に好適である。なお、PSG、BSG、BPSGを流動性の層に適用する場合には、単結晶シリコンパターン220bに形成される半導体素子に悪影響を及ぼさないように、窒化シリコン膜などの保護層を流動性の層の上部に設けるのが好ましい。
【0048】
[実施の形態2]
上記の実施の形態1で説明した方法を各種半導体装置の製造に適用することができる。そこで、本形態では、実施の形態1で説明した複合半導体基板(貼り合せ基板)600を用いて、液晶装置(電気光学装置)のアクティブマトリクス基板(半導体装置)を構成した例を説明する。
【0049】
(液晶装置の全体構成)
図4は、液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図であり、図5は、対向基板を含めて示す図4のH−H′断面図である。図4において、液晶装置100のアクティブマトリクス基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側領域には、遮光性材料からなる額縁53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路101および外部入力端子102がアクティブマトリクス基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って形成されている。
【0050】
走査線に供給される走査信号の遅延が問題にならない場合には、走査線駆動回路104は片側だけでもよいことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。例えば、奇数列のデータ線は画像表示領域10aの一方の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給し、偶数列のデータ線は画像表示領域10aの反対側の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給するようにしてもよい。このようにデータ線を櫛歯状に駆動するようにすれば、データ線駆動回路101の形成面積を拡張することが出来るため、複雑な回路を構成することが可能となる。さらにアクティブマトリクス基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられており、さらに、額縁53の下などを利用して、プリチャージ回路や検査回路が設けられることもある。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、アクティブマトリクス基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための上下導通材106が形成されている。
【0051】
そして、図5に示すように、図4に示したシール材52とほぼ同じ輪郭をもつ対向基板20がこのシール材52によりアクティブマトリクス基板10に固着されている。なお、シール材52は、アクティブマトリクス基板10と対向基板20とをそれらの周辺で貼り合わせるための光硬化樹脂や熱硬化性樹脂などからなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0052】
詳しくは後述するが、アクティブマトリクス基板10には、画素電極9aがマトリクス状に形成されている。これに対して、対向基板20には、アクティブマトリクス基板10に形成されている画素電極(後述する)の縦横の境界領域と対向する領域にブラックマトリクス、あるいはブラックストライプなどと称せられる遮光膜23が形成され、その上層側には、ITO膜からなる対向電極21が形成されている。
【0053】
このように形成した液晶装置は、たとえば、後述する投射型液晶表示装置(液晶プロジェクタ)において使用される。この場合、3枚の液晶装置100がRGB用のライトバルブとして各々使用され、各液晶装置100の各々には、RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになる。従って、前記した各形態の液晶装置100にはカラーフィルタが形成されていない。
【0054】
ただし、対向基板20において各画素電極9aに対向する領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜とともに形成することにより、投射型液晶表示装置以外にも、後述するモバイルコンピュータ、携帯電話機、液晶テレビなどといった電子機器のカラー液晶表示装置として用いることができる。
【0055】
さらに、対向基板20に対して、各画素に対応するようにマイクロレンズを形成することにより、入射光の画素電極9aに対する集光効率を高めることができるので、明るい表示を行うことができる。さらにまた、対向基板20に何層もの屈折率の異なる干渉層を積層することにより、光の干渉作用を利用して、RGB色をつくり出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付きの対向基板によれば、より明るいカラー表示を行うことができる。
【0056】
(液晶装置100の構成および動作)
次に、アクティブマトリクス型の液晶装置(電気光学装置)の電気的構成および動作について、図6ないし図8を参照して説明する。
【0057】
図6は、液晶装置100の画像表示領域10aを構成するためにマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、および配線などの等価回路図である。図7は、データ線、走査線、画素電極などが形成されたアクティブマトリクス基板において相隣接する画素の平面図である。図8は、図7のA−A′線に相当する位置での断面、およびアクティブマトリクス基板と対向基板との間に電気光学物質としての液晶を封入した状態の断面を示す説明図である。なお、これらの図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0058】
図6において、液晶装置100の画像表示領域10aにおいて、マトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a、および画素電極9aを制御するための画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30が形成されており、画素信号を供給するデータ線6aが該MIS形トランジスタ30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2・・・Snは、この順に線順次に供給する。また、MIS形トランジスタ30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2・・・Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、MIS形トランジスタ30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるMIS形トランジスタ30を一定期間だけそのオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2・・・Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、・・・Snは、後述する対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0059】
ここで、保持された画素信号がリークするのを防ぐことを目的に、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70(キャパシタ)を付加することがある。この蓄積容量70によって、画素電極9aの電圧は、例えば、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い表示を行うことのできる液晶装置が実現できる。なお、蓄積容量70を形成する方法としては、容量を形成するための配線である容量線3bとの間に形成する場合、あるいは前段の走査線3aとの間に形成する場合もいずれであってもよい。
【0060】
図7において、液晶装置100のアクティブマトリクス基板10上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線で囲まれた領域)が各画素毎に形成され、画素電極9aの縦横の境界領域に沿ってデータ線6a(一点鎖線で示す)、走査線3a(実線で示す)、および容量線3b(実線で示す)が形成されている。
図8に示すように、液晶装置100は、アクティブマトリクス基板10と、これに対向配置される対向基板20とを備えている。
【0061】
本形態において、アクティブマトリクス基板10の基体は、後述する貼り合せ基板(複合半導体基板)600からなり、対向基板20の基体は、石英基板や耐熱性ガラス板などの透明基板20bからなる。アクティブマトリクス基板10には画素電極9aが形成されており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が形成されている。画素電極9aは、たとえばITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明な導電性薄膜からなる。また、配向膜16は、たとえばポリイミド薄膜などの有機薄膜に対してラビング処理を行うことにより形成される。なお、対向基板20において、対向電極21の上層側にも、ポリイミド膜からなる配向膜22が形成され、この配向膜22も、ポリイミド膜に対してラビング処理が施された膜である。
【0062】
アクティブマトリクス基板10の画像表示領域10aにおいて、各画素電極9aに隣接する位置には、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30が形成されている。また、貼り合せ基板600の内部には、MIS形トランジスタ30と平面的に重なる領域に、クロム膜などからなる遮光膜11aが形成されている。この遮光膜11aの表面側には層間絶縁膜12が形成され、この層間絶縁膜12の表面側にMIS形トランジスタ30が形成されている。すなわち、層間絶縁膜12は、MIS形トランジスタ30を構成する半導体層1aを遮光膜11aから電気的に絶縁するために設けられるものである。
【0063】
図7および図8に示すように、画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、半導体層1aには、走査線3aからの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域1a′、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1d、並びに高濃度ドレイン領域1eが形成されている。また、半導体層1aの上層側には、この半導体層1aと走査線3aとを絶縁するゲート絶縁膜2が形成されている。
ここで、半導体層1aは、前述した方法で形成された単結晶シリコン層220bからなっている。
【0064】
このように構成したMIS形トランジスタ30の表面側には、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜4、7が形成されている。層間絶縁膜4の表面には、データ線6aが形成され、このデータ線6aは、層間絶縁膜4に形成されたコンタクトホールを介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続している。層間絶縁膜7の表面にはITO膜からなる画素電極9aが形成されている。画素電極9aは、層間絶縁膜4、7およびゲート絶縁膜2に形成されたコンタクトホールを介して高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続している。この画素電極9aの表面側にはポリイミド膜からなる配向膜16が形成されている。この配向膜16は、ポリイミド膜に対してラビング処理が施された膜である。
【0065】
また、高濃度ドレイン領域1eからの延設部分1f(下電極)に対しては、ゲート絶縁膜2aと同時形成された絶縁膜(誘電体膜)を介して、走査線3aと同層の容量線3bが上電極として対向することにより、蓄積容量70が構成されている。
【0066】
なお、MIS形トランジスタ30は、好ましくは上述のようにLDD構造をもつが、低濃度ソース領域1b、および低濃度ドレイン領域1cに相当する領域に不純物イオンの打ち込みを行わないオフセット構造を有していてもよい。また、MIS形トランジスタ30は、ゲート電極(走査線3aの一部)をマスクとして高濃度で不純物イオンを打ち込み、自己整合的に高濃度のソースおよびドレイン領域を形成したセルフアライン型のTFTであってもよい。また、本形態では、MIS形トランジスタ30のゲート電極(走査線3a)をソース−ドレイン領域の間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。この際、各々のゲート電極には同一の信号が印加されるようにする。このようにデュアルゲート(ダブルゲート)、あるいはトリプルゲート以上でMIS形トランジスタ30を構成すれば、チャネルとソース−ドレイン領域の接合部でのリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することが出来る。これらのゲート電極の少なくとも1個をLDD構造或いはオフセット構造にすれば、さらにオフ電流を低減でき、安定したスイッチング素子を得ることができる。
【0067】
このように構成したアクティブマトリクス基板10と対向基板20とは、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置され、かつ、これらの基板間には、前記のシール材53(図4および図5を参照)により囲まれた空間内に電気光学物質としての液晶50が封入され、挟持される。液晶50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜により所定の配向状態をとる。液晶50は、例えば一種または数種のネマティック液晶を混合したものなどからなる。
【0068】
なお、対向基板20およびアクティブマトリクス基板10の光入射側の面あるいは光出射側には、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード等々の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の向きに配置される。
【0069】
(駆動回路の構成)
再び図4において、本形態の液晶装置100では、アクティブマトリクス基板10の表面側のうち、画像表示領域10aの周辺領域を利用してデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104(周辺回路)が形成されている。このようなデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104は、基本的には、図9および図10に示すNチャネル型のMIS形トランジスタとPチャネル型のMIS形トランジスタとによって構成されている。
【0070】
図9は、走査線駆動回路104およびデータ線駆動回路101等の周辺回路を構成するMIS形トランジスタの構成を示す平面図である。図10は、この周辺回路を構成するMIS形トランジスタを図9のB−B′線で切断したときの断面図である。なお、図10にはアクティブマトリクス基板10の画像表示領域10aに形成した画素スイッチング用MIS形トランジスタ30も示してある。
【0071】
図9および図10において、周辺回路を構成するMIS形トランジスタは、Pチャネル型のMIS形トランジスタ80とNチャネル型のMIS形トランジスタ90とからなる相補型MIS形トランジスタとして構成されている。これらの駆動回路用のMIS形トランジスタ80、90を構成する半導体層60(輪郭を点線で示す)は、貼り合せ基板600上に形成された層間絶縁膜12を介して島状に形成されている。
【0072】
MIS形トランジスタ80、90には、高電位線71と低電位線72がコンタクトホール63、64を介して、半導体層60のソース領域に電気的にそれぞれ接続されている。また、入力配線66は、共通のゲート電極65にそれぞれ接続されており、出力配線67は、コンタクトホール68、69を介して、半導体層60のドレイン領域に電気的にそれぞれ接続されている。
【0073】
このような周辺回路領域も、画像表示領域10aと同様なプロセスを経て形成されるため、周辺回路領域にも、層間絶縁膜4、7およびゲート絶縁膜2が形成されている。また、駆動回路用のMIS形トランジスタ80、90も、画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30と同様、LDD構造を有しており、チャネル形成領域81、91の両側には、高濃度ソース領域82、92および低濃度ソース領域83、93からなるソース領域と、高濃度ドレイン領域84、94および低濃度ドレイン領域85、95からなるドレイン領域とを備えている。
なお、半導体層60は、半導体層1aと同様、前述した方法で形成された単結晶シリコン層220bからなっている。
【0074】
(アクティブマトリクス基板の製造方法)
このような構成のアクティブマトリクス基板10を製造するには、前記の実施の形態1で作製した複合半導体基板(貼り合せ基板)600を用いて行う。ただし、本形態では、以下に説明するように、貼り合せ基板600の内部に遮光膜11a(図8を参照)を形成しておく。
【0075】
図11〜図13は、いずれも本形態のアクティブマトリクス基板10の製造方法を示す工程断面図である。
本形態では、まず、図3(D)に示した状態の複合半導体基板600、すなわち図11(A)に示す複合半導体基板600を用意する。ここで、図11(A)では、説明の都合上、図3(D)と縮尺を変え、また要部の寸法も変えている。また、図11(A)に示した複合半導体基板600では、絶縁層12(図3(D)中の絶縁層500)中に遮光膜11aを形成しており、さらに、前述した方法で形成された単結晶シリコン層220bからなる半導体層1a、半導体層60を備えている。
【0076】
また、これら半導体層1a、半導体層60については、それぞれの犠牲酸化の度合いを調整したことにより、異なる厚さに形成したものとする。そして、これら複数の単結晶シリコンパターン220bにより、画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30を構成する半導体層1aと、駆動回路用のMIS形トランジスタ80、90を構成する半導体層60とを島状に形成している。ここで、画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30を構成する半導体層1aは、厚さが100nm以下の単結晶シリコン層であり、駆動回路用のMIS形トランジスタ80、90を構成する半導体層60は、厚さが200〜500nm程度の単結晶シリコン層である。
【0077】
このようにして形成した複合半導体基板600に対し、図11(B)に示すように、熱酸化法などを用いて、半導体膜1a、60の表面にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜2を形成する。なお、図示を省略するが、所定のレジストマスクを介して半導体膜1aの延設部分1fに不純物イオンを打ち込んで、容量線3bとの間に蓄積容量70を構成するための下電極を形成する。
【0078】
次に、CVD法などにより、基板表面全体に、走査線3a、容量線3b、およびゲート電極65を形成するための多結晶シリコン膜、およびモリブデン膜、タングステン膜、チタン膜、コバルト膜、またはこれらの金属のシリサイド膜からなる導電膜を350nm程度の厚さに形成した後、図11(C)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、走査線3a、容量線3b、およびゲート電極65を形成する。
【0079】
次に、図12(A)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用のMIS形トランジスタ80を形成するための半導体層60をレジストマスク301で覆った状態で、画素スイッチング用のMIS形トランジスタ30を構成する半導体層1aと、Nチャネル型の駆動回路用のMIS形トランジスタ90を構成する半導体層60とに対して、走査線3aやゲート電極65をマスクとして、約0.1×1013/cm〜約10×1013/cmのドーズ量で低濃度の不純物イオン(リンイオン)を打ち込んで、走査線3aに対して自己整合的に低濃度ソース領域1b、93、および低濃度ドレイン領域1c、95を形成する。ここで、走査線3aの真下に位置しているため、不純物イオンが導入されなかった部分は半導体膜1aのままのチャネル領域1a′、91となる。
【0080】
次に、図12(B)に示すように、走査線3aおよびゲート電極65より幅が広く、かつ、Pチャネル型の駆動回路用のMIS形トランジスタ80を形成するための半導体層60を覆うレジストマスク302を形成し、この状態で、高濃度の不純物イオン(リンイオン)を約0.1×1015/cm〜約10×10 /cmのドーズ量で打ち込み、高濃度ソース領域1b、92、およびドレイン領域1d、94を形成する。
【0081】
なお、図示を省略するが、Nチャネル型のMIS形トランジスタ30、90の側を覆った状態でゲート電極65をマスクとして、Pチャネル型の駆動回路用のMIS形トランジスタ80を形成するための半導体層60に対して、約0.1×1015/cm〜約10×1015/cmのドーズ量でボロンイオンを打ち込んだ後、ゲート電極65より幅の広いマスクを形成した状態で、Pチャネル型の駆動回路用のMIS形トランジスタ80を形成するための半導体層60に対して高濃度の不純物(ボロンイオン)を約0.1×1015/cm〜約10×1015/cmのドーズ量で打ち込んで、図12(C)に示すように、低濃度ソース領域83、低濃度ドレイン領域85、およびチャネル領域81を形成するとともに、高濃度ソース領域82、およびドレイン領域84を形成する。
【0082】
次に、CVD法などによって走査線3aの表面側にシリコン酸化膜などからなる層間絶縁膜4を形成し、その後、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホールをそれぞれ形成する。
【0083】
次に、図13(A)に示すように、層間絶縁膜4の表面側に、データ線6a(ソース電極)などを構成するためのアルミニウム膜、チタンナイトライド膜、チタン膜、またはこれらの金属のいずれかを主成分とする合金膜からなる導電膜をスパッタ法などで350nm程度の厚さに形成し、その後、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、データ線6a、高電位線71、低電位線72、入力配線66、出力配線67を形成する。その結果、周辺回路領域では、Pチャネル型およびNチャネル型のMIS形トランジスタ80、90が完成する。
【0084】
次に、図13(B)に示すように、データ線6aなどの表面側にプラズマCVD法などにより、シリコン窒化膜あるいはシリコン酸化膜などからなる層間絶縁膜5を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、層間絶縁膜5にコンタクトホールを形成する。
次いで、図8および図10に示すように画素電極9aを所定パターンに形成し、その後、配向膜16を形成する。その結果、アクティブマトリクス基板10が完成する。
【0085】
[電子機器への適用]
次に、電気光学装置を備えた電子機器の一例として投射型液晶表示装置を、図14、図15を参照して説明する。
まず、図14には、上記の各形態に係る電気光学装置と同様に構成された液晶装置100を備えた電子機器の構成をブロック図で示してある。
【0086】
図14において、電子機器が、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、駆動回路1004、液晶装置100、クロック発生回路1008、および電源回路1010を含んで構成される。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Randam Access Memory)、光ディスクなどのメモリ、テレビ信号の画信号を同調して出力する同調回路などを含んで構成され、クロック発生回路1008からのクロックに基づいて、所定フォーマットの画像信号を処理して表示情報処理回路1002に出力する。この表示情報出力回路1002は、たとえば増幅・極性反転回路、相展開回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、あるいはクランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成され、クロック信号に基づいて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロック信号CLKとともに駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、液晶装置100を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定の電源を供給する。なお、液晶装置100を構成するアクティブマトリクス基板の上に駆動回路1004を形成してもよく、それに加えて、表示情報処理回路1002もアクティブマトリクス基板の上に形成してもよい。
【0087】
このような構成の電子機器としては、図15を参照して説明する投射型液晶表示装置(液晶プロジェクタ)を挙げることができる。
【0088】
図15に示す投射型液晶表示装置1100は、前記の駆動回路1004がアクティブマトリクス基板上に搭載された液晶装置100を含む液晶モジュールを3個準備し、各々RGB用のライトバルブ100R、100G、100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。この液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプなどの白色光源のランプユニット1102から光が出射されると、3枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの3原色に対応する光成分R、G、Bに分離され(光分離手段)、対応するライトバルブ100R、100G、100B(液晶装置100/液晶ライトバルブ)に各々導かれる。この際に、光成分Bは、光路が長いので、光損失を防ぐために入射レンズ1122、リレーレンズ1123、および出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G、100Bによって各々変調された3原色に対応する光成分R、G、Bは、ダイクロイックプリズム1112(光合成手段)に3方向から入射され、再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120などにカラー画像として投射される。
【0089】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば実施の形態として説明した液晶装置の具体的な構成は、ほんの一例に過ぎず、その他、種々の構成を有する液晶装置に本発明を適用することができる。また、例えば、本発明は、エレクトロルミネッセンス(EL)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、あるいはプラズマ発光や電子放出による蛍光等を用いた様々な電気光学素子を用いた電気光学装置および該電気光学装置を備えた電子機器に対しても適用可能であるということは言うまでもない。
また、本発明における単結晶半導体層としては、単結晶シリコンに限定されることなく、例えば単結晶ゲルマニウム等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)〜(E)は本発明に係る製造方法の工程断面図である。
【図2】 (A)〜(C)は本発明に係る製造方法の工程断面図である。
【図3】 (A)〜(D)は本発明に係る製造方法の工程断面図である。
【図4】 本発明に係る液晶装置を対向基板側から見た平面図である。
【図5】 図4のH−H′断面図である。
【図6】 複数の画素に形成された各種素子、配線等の等価回路図である。
【図7】 各画素の構成を示す平面図である。
【図8】 図7のA−A′線に相当する位置で切断した断面図である。
【図9】 画像表示領域の周辺領域に形成した回路の平面図である。
【図10】 図9に示す駆動回路用トランジスタの断面図である。
【図11】 (A)〜(C)は液晶装置の製造方法の工程断面図である。
【図12】 (A)〜(C)は液晶装置の製造方法の工程断面図である。
【図13】 (A)、(B)は液晶装置の製造方法の工程断面図である。
【図14】 電子機器の回路構成を示すブロック図である。
【図15】 電子機器の一例としての投射型電気光学装置の断面図である。
【符号の説明】
100…液晶装置(電気光学装置)、
200…単結晶シリコン基板(半導体基板)、
210…シリコン酸化膜(絶縁層)、
220、220a…単結晶シリコン層(単結晶半導体層)、
220b…単結晶シリコンパターン、
230…素子非形成領域、240…素子形成領域、500…支持基板、
510…酸化膜(絶縁層)、550…絶縁層、
600…複合半導体基板(貼り合わせ基板)

Claims (8)

  1. 単結晶半導体層を備えた半導体基板を支持基板上に貼り合わせてなる複合半導体基板の製造方法であって、
    前記支持基板上に前記半導体基板を貼り合わせて貼り合わせ基板とする工程と、
    前記貼り合わせ基板における前記単結晶半導体層の所定領域にイオン注入を行う工程と、
    前記イオン注入後の前記貼り合わせ基板を熱処理する工程と、
    前記熱処理を行った後に、熱酸化を行う工程と、
    前記熱酸化によって形成した熱酸化膜をエッチング除去して単結晶半導体層を所望厚さにする工程と、
    前記所定領域の単結晶半導体層をエッチング除去する工程と、
    を備えたことを特徴とする複合半導体基板の製造方法。
  2. 前記支持基板と半導体基板とを貼り合わせて貼り合わせ基板とする工程と、この貼り合わせ基板の前記所定領域にイオン注入を行う工程との間に、前記貼り合わせ基板の前記半導体基板をその厚さ方向で分離して前記単結晶半導体層を薄厚化する工程
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の複合半導体基板の製造方法。
  3. 前記イオン注入を行う工程においては、前記貼り合わせ基板における前記単結晶半導体層のうち素子が形成される領域以外の領域に前記イオンが注入されることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合半導体基板の製造方法。
  4. 前記イオン注入後の前記貼り合わせ基板を熱処理する工程では一次熱処理及び二次熱処理を行い、前記一次熱処理を600℃以上で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合半導体基板の製造方法。
  5. 前記二次熱処理を、700℃以上、1200℃以下の範囲で行うことを特徴とする請求項4記載の複合半導体基板の製造方法。
  6. 前記一次熱処理と二次熱処理とを連続的に行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の複合半導体基板の製造方法。
  7. 前記単結晶半導体層は、単結晶シリコンからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合半導体基板の製造方法。
  8. 前記支持基板は、透光性基板であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の複合半導体基板の製造方法。
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