JP4366461B2 - 品質の改良された麺類、その製造法および品質改良剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は品質の改良された麺類、その製造法および品質改良剤に関するものであり、さらに詳細には湯のびおよび茹でのびが抑制された麺類、その製造法および品質改良剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
麺類は、製造直後に茹でて食べるか、一旦乾燥して乾麺としたものを茹でて食べるか、あるいは製造直後の生麺、蒸し麺または固茹で麺をプラスチックフィルム製の袋に密封包装し、市場に流通したものを茹でて食べるのが普通である。
ところが、茹でた麺はスープ中で時間が経つとともに水分を吸収していわゆる湯のびしたり、個別包装された蒸し麺は市場に流通している間に水分が麺の内部まで浸透していわゆる茹でのびしたりするという問題があった。
【0003】
この問題を解決しようとするものとして、特開昭53−47549号および特開平10−155440号などが知られている。前者は原料粉に蕨の根茎粉末および石灰処理コンニャクを添加するものであり、後者は小麦粉にコンニャク粉末を添加するものである。いずれもコンニャクの粉末を使用しており、麺ののびをある程度は抑制できるものの、なお満足できるものではなかった。
【0004】
他方、乾燥こんにゃくの粉末を小麦粉に20%添加してなる、低カロリーと食物繊維補給を目的としたうどんやそばなども知られている。しかしながら、乾燥こんにゃくの粉末を小麦粉に少量添加することにより、麺類ののびを抑制できることは知られていなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の発明者らは、のびがさらに抑制された麺類を開発すべく鋭意研究の結果、コンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをアルカリの存在下に加熱して不可逆的にゲル化させて得られるこんにゃくを、さらに中和し、必要に応じて糖液に浸漬し、乾燥して得られるいわゆる乾燥こんにゃくを粉末化したものを、麺類の原料粉に少量添加すると、従来のコンニャク(A.KonjacK.Koch)粉末を加えたものよりも麺ののびをさらに一層抑制できることを見出して、この発明を完成した。
【0006】
この発明によれば、原料粉100重量部に対して、ジャワムカゴコンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをゲル化させて得られるこんにゃくを乾燥して粉粒化した乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体0.05〜3重量部および大豆蛋白質、小麦蛋白質またはとうもろこし蛋白質から製造された、重量平均分子量が約500〜約110,000であり、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比(Mw/Mo)が0.004〜0.85である穀物蛋白質の部分分解物0.01〜3重量部を添加することにより品質の改良された麺類、かかる品質の改良された麺類の製造法ならびにそのための品質改良剤が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明における品質の改良された麺類は、原料粉100重量部、ジャワムカゴコンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをゲル化させて得られるこんにゃくを乾燥して粉粒化した乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体0.05〜3重量部および大豆蛋白質、小麦蛋白質またはとうもろこし蛋白質から製造された、重量平均分子量が約500〜約110,000であり、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比(Mw/Mo)が0.004〜0.85である穀物蛋白質の部分分解物0.01〜3重量部を、水とともに混練し、製麺して得られる麺類である。
【0008】
この発明における麺類としては、例えば、うどん、きしめん、素麺、そば、中華麺、スパゲッティのように細長く成形したもの、マカロニのように任意の形状に成形したもの、ワンタンやギョウザの皮のように膜状に成形したものなどが挙げられる。
【0009】
この発明における原料粉は、製造されるべき麺類の種類に応じて、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、そば粉あるいはそれらの混合粉などから適宜選択される。
【0010】
原料粉に添加される乾燥こんにゃくの粉粒体は、コンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをアルカリの存在下に加熱して不可逆的にゲル化させて得られるこんにゃくを、さらに中和し、必要に応じて糖液に浸漬し、乾燥して得られるいわゆる乾燥こんにゃくを粉末化、細粒化あるいは顆粒化したものである。乾燥こんにゃくの原料としては、ジャワムカゴコンニャク(A.Oncophyllus Plain)のムカゴ、コンニャク(A.Konjac K.Koch)の根茎などが挙げられるが、前者を原料として得られたものが好ましい。前者を原料とした乾燥こんにゃくの粉粒体は、例えばアイレス株式会社から「アイレス(粉末)」あるいは「アイレス(粒)」として販売されている。
乾燥こんにゃくの粉末、細粒および顆粒は、いずれもこの発明における乾燥こんにゃくの粉粒体として使用できるが、原料粉中に均一に分散させ得るという点で、粉末が最も好ましい。
【0011】
乾燥こんにゃくの粉粒体の添加割合は、原料粉100重量部に対して0.05〜3重量部であり、好ましくは0.4〜1.5重量部である。
乾燥こんにゃくの粉粒体の添加割合が3重量部を超えると、麺のコシが弱くなり、またそれが0.05重量部より少ないと、十分な効果が得られず好ましくない。
【0012】
乾燥こんにゃくの粉粒体に加えて、さらに添加されることのある穀物蛋白質の部分分解物は、例えば特公平6−91793号公報に記載のように、小麦、とうもろこし、大豆等の植物性蛋白質をアルカリによる加水分解処理と酸、酵素、酸化剤または還元剤を用いる分解処理の1種または2種以上との組み合わせによる部分分解処理に付すことによって製造することができ、例えば株式会社片山化学工業研究所から「グルパール」(登録商標)として販売されている。
【0013】
そして、この発明の目的のためには、上記のようにして得られる部分分解物のうち、平均分子量が約500〜約110,000であり、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比(Mw/Mo)が0.004〜0.85である穀物蛋白質の部分分解物を使用することができる。
穀物蛋白質の部分分解物の平均分子量が約500より小さかったり、あるいはMw/Moの値が0.004より小さかったりすると、実質的にアミノ酸やそのオリゴマーが主体となるため効果が低下するので好ましくない。逆に、部分分解物の平均分子量が約110,000より大きかったり、あるいはMw/Moの値が0.85より大きかったりすると、未分解のものの性状に近くなり、効果が低減するので好ましくない。
【0014】
穀物蛋白質の部分分解物の添加割合は、原料粉100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.1〜2重量部である。
穀物蛋白質の部分分解物の添加割合が3重量部を超えると、麺の弾性が低下し、またそれが0.01重量部より少ないと、十分な効果が得られず好ましくない。
【0015】
この発明の品質改良剤における乾燥こんにゃくの粉末と穀物蛋白質の部分分解物との配合割合は、1:60〜300:1であり、好ましくは1:10〜150:1である。
【0016】
この発明の麺類の製造に際しては、上記の乾燥こんにゃくの粉粒体および穀物蛋白質の部分分解物のほかに、通常の添加剤、例えばグルテン、卵白、カラーギナン、グアーガム、タマリンドガム、ペクチン等の増粘多糖類、食塩、酸化防止剤、防腐剤、色素、香料等を適宜加えてもよい。増粘多糖類としてはグルテンおよび卵白が特に好ましい。
【0017】
この発明の麺類は通常の方法により製造することができる。すなわち、原料粉と所定量の乾燥こんにゃくの粉粒体、および所望により所定量の穀物蛋白質の部分分解物、さらに任意の添加剤をまず混合し、これに水を加えて混練し、所望の形状に成形することにより製造することができる。
なお、水溶性の添加剤は、原料粉と混合すべき水に予め溶解して用いてもよい。
【0018】
この発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、この発明は以下の実施例により限定されるものではない。
なお、実施例で用いられた乾燥こんにゃくの粉末は、ジャワムカゴコンニャク(A.Oncophyllus Plain)のムカゴを原料として得られた乾燥こんにゃくを粉末化したものである。
また、穀物蛋白質の部分分解物としては、(株)片山化学工業研究所製の「グルパール」(登録商標)を使用した。
【0019】
実施例1
小麦粉 1000g
乾燥こんにゃくの粉末 4g
食塩 10g
かん粉 10g
水 350ml
小麦粉、乾燥こんにゃくの粉末およびかん粉を混合し、これに食塩を溶解した水を加え、よく混練し、常法に従って厚さ1mm、幅1.5mmの中華麺を製造した。
【0020】
実施例2
乾燥こんにゃくの粉末の量を7gに変えた以外は、実施例1と同様にして中華麺を製造した。
実施例3
乾燥こんにゃくの粉末の量を10gに変えた以外は、実施例1と同様にして中華麺を製造した。
実施例4
乾燥こんにゃくの粉末の量を15gに変えた以外は、実施例1と同様にして中華麺を製造した。
実施例5
乾燥こんにゃくの粉末の量を20gに変えた以外は、実施例1と同様にして中華麺を製造した。
【0021】
実施例6
小麦粉 1000g
乾燥こんにゃくの粉末 4g
穀物蛋白質の部分分解物 16g
食塩 10g
かん粉 10g
水 350ml
小麦粉、乾燥こんにゃくの粉末、穀物蛋白質の部分分解物およびかん粉を混合し、これに食塩を溶解した水を加え、よく混練し、常法に従って厚さ1mm、幅1.5mmの中華麺を製造した。
【0022】
実施例7
乾燥こんにゃくの粉末の量を10gに、麺の厚さを3mmに、幅を3mmにそれぞれ変えた以外は、実施例1と同様にして中華麺を製造した。
【0023】
実施例8
そば粉 300g
小麦粉 700g
乾燥こんにゃくの粉末 4g
水 350ml
そば粉、小麦粉および乾燥こんにゃくの粉末を混合し、これに水を加えてよく混練し、常法に従って厚さ1mm、幅1.5mmのそばを製造した。
【0024】
実施例9
そば粉 300g
小麦粉 700g
乾燥こんにゃくの粉末 4g
穀物蛋白質の部分分解物 16g
水 350ml
そば粉、小麦粉、乾燥こんにゃくの粉末および穀物蛋白質の部分分解物を混合し、これに水を加えてよく混練し、常法に従って厚さ1mm、幅1.5mmのそばを製造した。
【0025】
実施例10
小麦粉 1000g
乾燥こんにゃくの粉末 4g
食塩 20g
水 350ml
小麦粉および乾燥こんにゃくの粉末を混合し、これに水を加えてよく混練し、常法に従って厚さ3mm、幅3mmのうどんを製造した。
上記の実施例1〜5および7〜10は参考例である。
【0026】
比較例1
実施例1の乾燥こんにゃくの粉末を除いた以外は、実施例1と同様にして中華麺を製造した。
【0027】
比較例2
小麦粉 1000g
コンニャク粉 4g
穀物蛋白質の部分分解物 16g
食塩 10g
かん粉 10g
水 350ml
小麦粉、コンニャク粉、穀物蛋白質の部分分解物およびかん粉を混合し、これに食塩を溶解した水を加え、よく混練し、常法に従って厚さ1mm、幅1.5mmの中華麺を製造した。
【0028】
比較例3
麺の厚さを3mmに、幅を3mmにした以外は、比較例1と同様にして中華麺を製造した。
【0029】
試験例1
(湯のび試験)
実施例1〜6ならびに比較例1および2で得られた中華麺、各200gを熱湯10リットル中で2分15秒間茹でた後、それぞれの麺を12人分に分けて、硬さおよび弾力を12名のパネラーで官能評価した。
また、各パネラーの中華麺をそれぞれ85℃のスープ100ml中に入れ、5分後に同じパネラーで麺の硬さ、弾力を官能評価した。結果を次の表1に示す。なお、それぞれのサンプルについて1点〜10点の10段階評価とし、パネラー12名の平均点を四捨五入したものを表1の評点とした。
【0030】
【表1】
【0031】
上の表1から明らかなように、乾燥こんにゃくの粉末を0.4〜2重量部加えた実施例1〜5の中華麺ならびに乾燥こんにゃくの粉末と穀物蛋白質の部分分解物とを添加した実施例6の中華麺では、無添加の比較例1の中華麺およびコンニャク粉と穀物蛋白質の部分分解物とを添加した比較例2の中華麺と比べて、湯のび抑制効果が顕著に表れている。
【0032】
試験例2
(結露試験)
実施例6および比較例2で得られた中華麺、各300gを生のままそれぞれ50gずつに分け、ポリエチレン製の袋6つにそれぞれ密封した。流通経路を考慮して、これを30℃で1日間、次いで3℃で1日間、次いで30℃で3時間、そして3℃で1日間静置した。一群6つの袋の内面に付着した水分を集めてその重さ(A)を測定する。他方、袋詰め前の生の中華麺を105℃で4時間乾燥して得られた乾燥減量に基づいて生麺300gの水分含量(B)を算出する。結露防止率を次式により算出した。
結露防止率=[(B−A)/B]×100
結果を次の表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
上の表2から明らかなように、乾燥こんにゃくの粉末と穀物蛋白質の部分分解物とを添加した実施例6の中華麺は、コンニャク粉末と穀物蛋白質の部分分解物とを加えた比較例2の中華麺と比べて、結露防止効果の面においても優れている。
【0035】
試験例3
(茹でのび試験)
実施例7および比較例3で得られた中華麺をそれぞれ5分間茹でた後、3cmの長さに切り、蓋つきシャーレ中(温度20℃、湿度55%)に入れる。所定時間(0,1,2,3,4,5,6時間)経過ごとに、中華麺を縦に1mm×1mmの太さに切り取り、麺の外側の水分含量と麺の中央部の水分含量を乾燥減量(105℃、4時間)に基づいて求め、それぞれについて水分の含有率(%)を算出し、麺の外側の水分含有率と中央部の水分含有率との差(水分差%)を求めた。結果を次の表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
上の表3から明らかなように、乾燥こんにゃくの粉末を添加した実施例7の中華麺は、無添加の比較例3の中華麺に比べて、麺の外側から中央部への水分の浸透、すなわち茹でのびが著しく抑制されている。
【0038】
【発明の効果】
この発明によれば、原料粉に乾燥こんにゃくの粉粒体を添加して製麺されているので、いわゆる湯のびや茹でのびを最小限にとどめることができる。乾燥こんにゃくの粉粒体に加えて穀物蛋白質の部分分解物がさらに添加されていると、その効果が一層すぐれている。
さらに、製麺後の生麺などをプラスチック製の袋に密封した場合には、時間の経過に伴う温度差によって生じる袋内面の結露を最小限に抑えることができ、商品としての外観を損なわないという効果も併せ有している。
Claims (6)
- 原料粉100重量部に対して、ジャワムカゴコンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをゲル化させて得られるこんにゃくを乾燥して粉粒化した乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体0.05〜3重量部および大豆蛋白質、小麦蛋白質またはとうもろこし蛋白質から製造された、重量平均分子量が約500〜約110,000であり、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比(Mw/Mo)が0.004〜0.85である穀物蛋白質の部分分解物0.01〜3重量部を添加したことを特徴とする品質の改良された麺類。
- 乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体がジャワムカゴコンニャク(A.Oncophyllus Plain)のムカゴを原料として得られた乾燥こんにゃくを粉粒化したものであることを特徴とする請求項1に記載の品質の改良された麺類。
- 原料粉100重量部、ジャワムカゴコンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをゲル化させて得られるこんにゃくを乾燥して粉粒化した乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体0.05〜3重量部および大豆蛋白質、小麦蛋白質またはとうもろこし蛋白質から製造された、重量平均分子量が約500〜約110,000であり、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の重量平均分子量Moとの比(Mw/Mo)が0.004〜0.85である穀物蛋白質の部分分解物0.01〜3重量部を、水とともに混練し、製麺することを特徴とする品質の改良された麺類の製造法。
- 乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体がジャワムカゴコンニャク(A.Oncophyllus Plain)のムカゴを原料として得られた乾燥こんにゃくを粉粒化したものであることを特徴とする請求項3に記載の品質の改良された麺類の製造法。
- ジャワムカゴコンニャクの主成分であるグルコマンナンのゾルをゲル化させて得られるこんにゃくを乾燥して粉粒化した乾燥ジャワムカゴコンニャクの粉粒体と、大豆蛋白質、小麦蛋白質またはとうもろこし蛋白質から製造された、重量平均分子量が約500〜110,000であり、かつ分解後の重量平均分子量Mwと分解前の平均分子量Moとの比(Mw/Mo)が0.004〜0.85である穀物蛋白質部分分解物とを、重量比1:60〜300:1の割合で含有することを特徴とする麺類の品質改良剤。
- 乾燥ジャワムカゴコンニャク粉粒体が、ジャワムカゴコンニャク(A.Oncophyllus Plain)のムカゴを原料として得られた乾燥こんにゃくを粉粒化したものであることを特徴とする請求項5に記載の麺類の品質改良剤。
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