JP4365114B2 - 無電解めっき素材の前処理方法とめっき被覆部材の製造方法及びめっき部品 - Google Patents

無電解めっき素材の前処理方法とめっき被覆部材の製造方法及びめっき部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂素材表面に無電解めっき処理を施してめっき被膜を形成する場合に、めっき被膜の密着性を向上させるために行う前処理方法と、その前処理方法で処理された無電解めっき素材を用いためっき被覆部材の製造方法、及びそのめっき被覆部材の製造方法で製造されためっき部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂素材に導電性や金属光沢を付与する方法として、無電解めっき処理が知られている。この無電解めっきとは、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させ、素材表面に金属被膜を形成する方法をいい、電力によって電解析出させる電気めっきと異なり樹脂などの絶縁体にも金属被膜を形成することができる。また金属被膜が形成された樹脂素材には電気めっきすることもでき、用途が拡大される。そのため、自動車部品、家電製品などの分野に用いられる樹脂素材に金属光沢を付与したり、導電性を付与したりする方法として、無電解めっき処理は広く用いられている。
【0003】
ところが、無電解めっき処理によって形成されためっき被膜は、被膜形成までに時間がかかったり、被膜の樹脂素材に対する密着性が十分でないという問題がある。そのため、先ず樹脂素材に対して化学的エッチング処理を行って表面を粗面化し、その後無電解めっき処理する工程が一般に行われている。
【0004】
例えば特開平01−092377号公報には、樹脂素材をオゾンガスで前処理し、その後無電解めっき処理する方法が開示されている。同公報によれば、オゾンガスによって樹脂素材の不飽和結合が開裂して低分子化し、表面に化学組成の異なる分子が混在することになって平滑性が失われ粗面化する。したがって、無電解めっきによって形成された被膜が粗面にしっかり入りこみ容易に剥離しなくなる、と記載されている。
【0005】
上記した従来の技術では、樹脂素材を粗面化し、いわゆる投錨効果によってめっき被膜の密着性を高めている。しかしながら粗面化する方法では、樹脂素材の表面平滑度が低くなってしまう。したがって意匠性の高い金属光沢を得るためには、めっき被膜を厚くしなければならず、工数が多大となるという不具合がある。
【0006】
また特開平08−092752号公報には、ポリオレフィンをめっき素材とし、エッチングによる粗面化後にオゾン水に接触させ、その後カチオン系界面活性剤含有溶液で処理する方法が記載されている。しかしエッチングによって粗面化する方法では、クロム酸、硫酸などの毒劇物を用いる必要があり、廃液処理などに問題がある。また樹脂素材の表面平滑度が低くなるという問題も解決することができない。
【0007】
そこで特開平10−088361号公報あるいは特開平08−253869号公報には、樹脂素材に紫外線を照射し、その後に無電解めっき処理する方法が記載されている。紫外線の照射により樹脂素材表面が活性化され、活性化された樹脂素材表面の活性基がめっき材料である活性な金属粒子と化学的な結合を生じるため、密着性に優れためっき被膜を形成することができる。
【0008】
ところで、自動車のオーナメントなどの装飾品には、 ABS樹脂からなる樹脂素材に無電解めっきを施し、その後電気めっきにより金属光沢を付与することが行われている。このような場合に、無電解めっきの前処理として紫外線を照射すると、めっき被膜の密着性が向上することが知られている。
【0009】
ところが、このようにして製造された装飾品では、−10℃以下の低温域において、めっき被膜の密着性が低下するという問題があることが明らかとなった。
【0010】
【特許文献1】
特開平01−092377号
【特許文献2】
特開平08−092752号
【特許文献3】
特開平10−088361号
【特許文献4】
特開平08−253869号
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、不飽和結合を有する樹脂素材に紫外線を照射する紫外線処理を行った後に無電解めっき処理する無電解めっき素材の前処理方法において、−10℃以下の低温域におけるめっき被膜の密着性を向上させることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の無電解めっき素材の前処理方法の特徴は、不飽和結合を有する樹脂素材を無電解めっき処理するにあたり、樹脂素材に紫外線を照射する紫外線処理を行った後に無電解めっき処理する無電解めっき素材の前処理方法であって、樹脂素材はジエン系ゴム成分を30〜40質量%含むことにある。
【0013】
また本発明のめっき被覆部材の製造方法の特徴は、本発明の前処理方法で処理された無電解めっき素材に無電解めっき処理を行うことにある。無電解めっき処理の後に電解めっき処理を行うことが好ましく、これにより本発明のめっき部品が製造される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の無電解めっき素材の前処理方法では、不飽和結合を有する樹脂素材を用いている。不飽和結合とは C=C結合、 C≡N結合、 C≡C結合などをいい、このような不飽和結合を有する樹脂としては、 ABS樹脂、AS樹脂、 AAS樹脂、PS樹脂、AN樹脂などが知られている。本発明では、不飽和結合を有する樹脂単体で樹脂素材としてもよいし、不飽和結合を有する樹脂と不飽和結合を有しない樹脂との複合樹脂を樹脂素材とすることもできる。
【0015】
従来、無電解めっき用の樹脂素材として一般に用いられている ABS樹脂は、ブタジエンゴム量が10〜20質量%と低いのが一般的であったが、本発明者らの研究により、このジエン系ゴム量が低温域におけるめっき被膜の密着性に大きく影響していることが見出された。そこで本発明では、樹脂素材としてジエン系ゴム成分を30〜40質量%含む樹脂を用いている。ジエン系ゴム成分量が30質量%未満では、低温域におけるめっき被膜の密着性が低下し、ジエン系ゴム成分が40質量%を超える樹脂では流動性が極端に劣るため、射出成形することが困難となるからである。なおジエン系ゴム成分量の質量%は、アセトン、クロロホルムなどの溶媒を用いた溶媒分別によるオゾン分解法により算出できる。
【0016】
ジエン系ゴム成分を構成するものとしてはブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどの重合物が挙げられ、ブタジエンの重合物が特に好ましい。また、これら重合物は10質量%以下の範囲で共重合成分を含有していてもよく、この共重合成分としてはスチレン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、イソプレンなどが例示される。ジエン系ゴム成分の好ましい重合物の例としては、ポリブタジエンゴム、SBR(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム)が挙げられる。本発明に用いられる樹脂素材は、これらのジエン系ゴム成分を30〜40質量%含むものである。
【0017】
ジエン系ゴム成分は、一般的には、別の(共)重合体と化学的に結合した構造からなるグラフト共重合体の形態で用いられる。また本発明で使用される樹脂素材は、このグラフト共重合体単独で構成される場合と、グラフト共重合体と硬質(共)重合体とから構成される場合とがある。
【0018】
グラフト共重合体のグラフト部(共)重合体、及び硬質(共)重合体を構成する成分としては、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物を必須成分として、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどの不飽和エステル化合物、無水マレイン酸、N−置換マレイミド化合物から選ばれる1種以上の化合物との共重合体が挙げられ、好ましい例としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−メチレン−N−フェニルマレイミド共重合体が挙げられる。
【0019】
そして本発明の前処理方法では、不飽和結合を有する樹脂素材に紫外線が照射される。照射される紫外線は、 310nm以下の波長のものが好ましく、 260nm以下、さらには 150〜 200nm程度のものが望ましい。また紫外線照射量は、50mJ/cm2 以上とすることが望ましい。このような紫外線を照射できる光源としては、低圧水銀ランプ,高圧水銀ランプ,エキシマレーザー,バリア放電ランプ,マイクロ波無電極放電ランプなどを用いることができる。
【0020】
この紫外線照射によって、ジエン系ゴム成分の二重結合が切断され、樹脂素材表面が活性化されることによってめっき被膜の密着性が向上する。そしてジエン系ゴム成分が30〜40質量%含まれることで、活性点が多くなり、密着性がさらに向上する。またジエン系ゴム成分が30〜40質量%含まれることで、低温域におけるゴム弾性が向上し、めっき被膜の密着性が低下するような不具合がない。
【0021】
本発明の前処理方法を行った後に、無電解めっき処理を行うことができるが、紫外線を照射された樹脂素材に対して、特開平10−088361号公報に示されたような、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液を樹脂素材と接触させる第2の処理工程を行うことが望ましい。これによりめっき被膜の密着性がさらに向上する。
【0022】
紫外線の照射により、樹脂素材表面の化学結合の一部が切断してラジカルが生じ、酸素と結合することで一種の酸化劣化が生じるため、樹脂素材表面に C=OあるいはC-OHなどの官能基が生成している。そこへ陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液が接触すると、図1(A),(B)に示すように、界面活性剤1は、表出する上記官能基にその疎水基が吸着すると考えられる。またアルカリ成分は、樹脂素材の表面を分子レベルで水に可溶化する機能をもち、樹脂素材表面の脆化層を除去して上記官能基をより多く表出させる。したがって、脆化層の除去により表出した新たな官能基にも界面活性剤1が吸着する。
【0023】
界面活性剤としては、 C=O及びC-OHからなる少なくとも一方の官能基に対して疎水基が吸着しやすいものが用いられ、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方が用いられる。陽イオン性界面活性剤及び中性界面活性剤では、めっき被膜が形成できなかったり、効果の発現が困難となる。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸カリウムなどが例示される。また非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどが例示される。
【0024】
アルカリ成分としては、樹脂素材の表面を分子レベルで溶解して脆化層を除去できるものを用いることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどを用いることができる。
【0025】
界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液の溶媒としては、極性溶媒を用いることが望ましく、水を代表的に用いることができるが、場合によってはアルコール系溶媒あるいは水−アルコール混合溶媒を用いてもよい。また界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液を樹脂素材と接触させるには、樹脂素材を溶液中に浸漬する方法、樹脂素材表面に溶液を塗布する方法、樹脂素材表面に溶液をスプレーする方法などで行うことができる。
【0026】
界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液中の界面活性剤の濃度は、0.01〜10g/Lの範囲とすることが好ましい。界面活性剤の濃度が0.01g/Lより低いとめっき被膜の密着性が低下し、10g/Lより高くなると、樹脂素材表面に界面活性剤が会合状態となって余分な界面活性剤が不純物として残留するため、めっき被膜の密着性が低下するようになる。この場合には、前処理後に樹脂素材を水洗して余分な界面活性剤を除去すればよい。
【0027】
また界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液中のアルカリ成分の濃度は、pH値で12以上が望ましい。pH値が12未満であっても効果は得られるが、表出する上記官能基が少ないために、所定膜厚だけめっき被膜を形成するための時間が長大となってしまう。
【0028】
界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液と紫外線処理後の樹脂素材との接触時間は特に制限されないが、室温で1分以上とするのが好ましい。接触時間が短すぎると、官能基に吸着する界面活性剤量が不足してめっき被膜の密着性が低下する場合がある。しかし接触時間が長くなり過ぎると、 C=O及びC-OHから選ばれる少なくとも一方の官能基が表出した層まで溶解して無電解めっきが困難となる場合がある。1〜5分間程度で十分である。また温度は高い方が望ましく、温度が高いほど接触時間を短縮することが可能であるが、室温〜60℃程度で十分である。
【0029】
第2の処理工程は、アルカリ成分のみを含む水溶液で処理した後に界面活性剤を吸着させてもよいが、界面活性剤を吸着させるまでの間に再び脆化層が形成されてしまう場合があるので、本発明のように陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とが共存する状態で行うことが望ましい。
【0030】
また紫外線処理工程の後に第2の処理工程を行うのが好ましいが、場合によっては紫外線処理工程と第2の処理工程を同時に行うことも可能である。この場合には、界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液中に樹脂素材を浸漬し、その状態で樹脂素材に紫外線を照射すればよい。この場合には紫外線と樹脂素材表面との反応が律速となるので、処理時間は紫外線の強度及び樹脂種に応じて決められる。
【0031】
なお第2の処理工程後、水洗してアルカリ成分を除去する工程を行ってもよい。界面活性剤は官能基に強固に吸着しているので、水洗する程度では除去されず吸着した状態が維持されることがわかっている。したがって、本発明によって前処理されためっき素材は、無電解めっき工程までに時間が経過しても効果が失われることがない。
【0032】
そして無電解めっき工程では、界面活性剤が吸着した樹脂素材が触媒と接触される。すると、図1(C)に示すように、触媒2が上記官能基に吸着している界面活性剤1の親水基に吸着すると考えられる。
【0033】
そして触媒が十分に吸着している樹脂素材に対して無電解めっき処理を施すことにより、界面活性剤が官能基から外れるとともに金属が C-O基及び/又は C=O基と結合すると考えられ、密着性に優れためっき被膜を形成することができる。
【0034】
触媒としては、Pd2+など、従来の無電解めっき処理に用いられる触媒を用いることができる。触媒を樹脂素材の表面に吸着させるには、触媒イオンが溶解している溶液を付着素材の表面に接触させればよく、上記した界面活性剤とアルカリ成分とを含む溶液の接触と同様に行うことができる。また接触時間、温度などの条件も、従来と同様でよい。
【0035】
また無電解めっき処理の条件、析出させる金属種なども制限されず、従来の無電解めっき処理と同様に行うことができる。
【0036】
本発明の前処理後に無電解めっき処理された樹脂素材は、さらに電解めっき処理することができる。電解めっき処理で被覆される金属種は特に制限されず、導電性金属を用いて配線基板としたり、光輝金属を用いて装飾部材とするなど、得られためっき被覆部材は種々の用途に用いることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0038】
(実施例1)
固形分35%、平均粒径0.28μmの
ポリブタジエンラテックス(固形分として) 50重量部
不均化ロジン酸カリウム 2.0重量部
ピロリン酸ソーダ 0.2重量部
硫酸第一鉄 0.01重量部
デキストローズ 0.35重量部
水(ラテックスからくるものも含む) 200重量部
の混合物を用い、重合開始温度40℃にし、下記混合物を 120分かけて滴下し、その後1時間保持することでグラフト重合を行った。
【0039】
スチレンモノマー 35重量部
アクリロニトリル 15重量部
クメンハイドロパーオキサイド 0.15重量部
得られた重合体ラテックスに、
ブチル化ヒドロキシトルエン(抗酸化剤) 2重量部
ジラウリルチオプロピオネート 0.5重量部
を加え、5%硫酸水溶液で凝固させ、洗浄、乾燥してグラフト共重合体(C−1)の白色粉末を調製した。
アクリルニトリル 30重量部
スチレンモノマー 70重量部
アゾビスイソブチロニトリル 0.15重量部
t-ドデシルメルカプタン 0.40重量部
リン酸カルシウム 0.50重量部
蒸留水 150重量部
を 100リットルのオートクレーブに仕込み、激しく撹拌した。系内分散を確認した後、75℃に昇温し30分間熟成させた。これを冷却後、脱水、洗浄、乾燥して、還元粘度0.55dl/gである硬質共重合体(E−1)の粉末を調製した。
【0040】
次に、グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を表1に示すように重量比60:40で配合し、抗酸化剤 0.2重量部と、金属石鹸 0.2重量部と、EBS 0.4重量部と、シリコーンオイル0.05重量部とをさらに加え、ヘンシェルミキサーで5分間(3000 rpm)混合した後、シリンダー温度 230℃で押し出してペレット化した。このペレットのメルトフローレートは、表1に示すように 200℃−5kgの条件で 2.3である。
【0041】
このペレットを用い、スクリュー式射出成形機(シリンダー温度 230℃、金型温度60℃)を用いて、樹脂基板を成形した。この樹脂基板中には、ブタジエン系ゴム状重合体が30質量%含まれている。
【0042】
この樹脂基板に対し、放射強度 170mW/cm2 の水銀ランプを用いて紫外線を5分間照射した。次に、NaOHを50g/L溶解するとともに、ラウリル硫酸ナトリウムを1g/L溶解した混合水溶液を60℃に加熱し、そこへ紫外線照射後の樹脂基板を2分間浸漬して陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を吸着させた。
【0043】
界面活性剤が吸着した樹脂基板を引き上げ、水洗・乾燥後、3N塩酸水溶液に塩化パラジウムを 0.1重量%溶解するとともに塩化錫を5重量%溶解し50℃に加熱された触媒溶液中に3分間浸漬し、次いでパラジウムを活性化するために、1N塩酸水溶液に3分間浸漬した。これにより触媒が吸着した樹脂基板を得た。
【0044】
その後、40℃に保温されたNi−P化学めっき浴中に触媒が吸着した樹脂基板を浸漬し、10分間Ni−Pめっき被膜を析出させた。析出したNi−Pめっき被膜の厚さは 0.5μmである。さらに硫酸銅系Cu電気めっき浴にて、Ni−Pめっき被膜の表面に銅めっきを 100μm析出させた。
【0045】
めっき被膜の形成後に70℃で2時間保持した後、得られためっき被膜に樹脂基板に達する切り込みを1cm幅で入れ、引張り試験機にて25℃,−10℃,−20℃,−30℃及び−40℃におけるめっき被膜の密着強度をそれぞれ測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0046】
(実施例2)
グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を、表1に示すように重量比70:30で配合したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを調製し、同様にして樹脂基板を成形した。この樹脂基板中には、ブタジエン系ゴム状重合体が35質量%含まれている。
【0047】
そして実施例1と同様にして紫外線を照射し、全く同様に処理してめっき被膜を形成し、同様にめっき被膜の密着強度を測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0048】
(実施例3)
グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を、表1に示すように重量比80:20で配合したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを調製し、同様にして樹脂基板を成形した。この樹脂基板中には、ブタジエン系ゴム状重合体が40質量%含まれている。
【0049】
そして実施例1と同様にして紫外線を照射し、全く同様に処理してめっき被膜を形成し、同様にめっき被膜の密着強度を測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0050】
(比較例1)
グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を、表1に示すように重量比30:70で配合したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを調製し、同様にして樹脂基板を成形した。この樹脂基板中には、ブタジエン系ゴム状重合体が15質量%含まれている。
【0051】
そして実施例1と同様にして紫外線を照射し、全く同様に処理してめっき被膜を形成し、同様にめっき被膜の密着強度を測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0052】
(比較例2)
グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を、表1に示すように重量比40:60で配合したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを調製し、同様にして樹脂基板を成形した。この樹脂基板中には、ブタジエン系ゴム状重合体が20質量%含まれている。
【0053】
そして実施例1と同様にして紫外線を照射し、全く同様に処理してめっき被膜を形成し、同様にめっき被膜の密着強度を測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0054】
(比較例3)
グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を、表1に示すように重量比50:50で配合したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを調製し、同様にして樹脂基板を成形した。この樹脂基板中には、ブタジエン系ゴム状重合体が25質量%含まれている。
【0055】
そして実施例1と同様にして紫外線を照射し、全く同様に処理してめっき被膜を形成し、同様にめっき被膜の密着強度を測定した。結果を表2及び図2に示す。
【0056】
(比較例4)
グラフト共重合体(C−1)と硬質共重合体(E−1)を、表1に示すように重量比90:10で配合したこと以外は実施例1と同様にしてペレットを調製した。このペレットには、ブタジエン系ゴム状重合体が45質量%含まれている。
【0057】
しかしこのペレットは、表1に示すようにメルトフローレートが 0.2と流動性が極めて低く、射出成形による成形が困難であった。したがってめっき被膜の密着強度の測定はできなかったため、表2及び図2には結果を示していない。
【0058】
<評価>
【0059】
【表1】
Figure 0004365114
【0060】
【表2】
Figure 0004365114
【0061】
表2及び図2より、比較例1〜3の方法では−10℃以下の低温におけるめっき被膜の密着強度が25℃における密着強度に比べて大きく低下している。しかし実施例1−3の方法によれば、−10℃以下の低温においても密着強度の低下度合いが小さく、−40℃においても1000g/cmの高い密着強度が発現されている。したがって、ブタジエン系ゴム状重合体は30質量%以上必要であることが明らかである。またブタジエン系ゴム状重合体量が増大するほどが密着強度の低下度合いが小さいこともわかる。
【0062】
しかしブタジエン系ゴム状重合体が40質量%を超えると、比較例4のように射出成形することが困難となるので、ブタジエン系ゴム状重合体は30〜40質量%が必要な範囲であることが明らかである。
【0063】
【発明の効果】
すなわち本発明の無電解めっき素材の前処理方法及びめっき被覆部材の製造方法によれば、−10℃以下の低温域においてもめっき被膜の密着強度を高く維持することができる。また樹脂素材表面を粗面化する必要がないので、高い金属光沢を有するめっき被膜を薄い膜厚で形成することができ、かつクロム酸などが不要となるので廃液処理も容易である。
【0064】
そして本発明のめっき部品によれば、めっき被膜が剥離するような不具合が解消され、しかも高い金属光沢が発現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】紫外線処理後に、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の少なくとも一方とアルカリ成分とを含む溶液を樹脂素材と接触させる第2の処理工程を行った場合の推定される作用を示す説明図である。
【図2】実施例及び比較例で形成されためっき被膜の温度と密着強度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:界面活性剤 2:触媒

Claims (5)

  1. 不飽和結合を有する樹脂素材を無電解めっき処理するにあたり、該樹脂素材に紫外線を照射する紫外線処理を行った後に無電解めっき処理する無電解めっき素材の前処理方法であって、
    該樹脂素材はジエン系ゴム成分を30〜40質量%含むことを特徴とする無電解めっき素材の前処理方法。
  2. 前記樹脂素材は ABS樹脂からなる請求項1に記載の無電解めっき素材の前処理方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の前処理方法で処理された無電解めっき素材に無電解めっき処理を行うことを特徴とするめっき被覆部材の製造方法。
  4. 無電解めっき処理の後に電解めっき処理を行う請求項3に記載のめっき被覆部材の製造方法。
  5. 請求項4に記載のめっき被覆部材の製造方法を用いて製造されてなることを特徴とするめっき部品。
JP2003053073A 2003-02-28 2003-02-28 無電解めっき素材の前処理方法とめっき被覆部材の製造方法及びめっき部品 Expired - Fee Related JP4365114B2 (ja)

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