JP7313329B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品及びその製造方法、ポリプロピレン系樹脂製配線基材及びその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品及びその製造方法、ポリプロピレン系樹脂製配線基材及びその製造方法 Download PDF

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本件出願にかかる発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品及びその製造方法、ポリプロピレン系樹脂製配線基材及びその製造方法に関する。
オレフィン系樹脂であるポリプロピレン系樹脂は、軽量で機械強度に優れ、加工性が良いため、家電製品や自動車部品、日用品等といった様々な分野で広く利用されている。これらのポリプロピレン系樹脂製品は、その用途に応じて、意匠性や耐久性の向上、帯電防止、電磁波シールド等の目的で、ポリプロピレン系樹脂の表面に金属被膜を設けることが行われている。樹脂表面に金属被膜を設ける方法には、印刷、蒸着、転写、無電解めっき等がある。このうち、無電解めっきは、経済性に優れ、複雑な形状を有する樹脂表面にも被膜を設けることが容易という利点を備えている。
無電解めっきで樹脂表面に金属被膜を設ける場合、樹脂表面と金属被膜との密着性を確保するために、予め酸性水溶液で樹脂表面をエッチングする前処理が行われている。ところが、ポリプロピレン系樹脂は化学的安定性が高いため、ポリプロピレン系樹脂の表面を酸性水溶液でエッチングすることが困難であり、無電解めっきで形成した金属被膜の密着が不十分なものとなる傾向があった。
このようなポリプロピレン系樹脂に対する無電解めっき被膜の密着性を向上させるため、次のような方法が提案されている。特許文献1では、「めっき金属が樹脂表面部の内部に形成された連続した穴に侵入し相互網目構造を形成している金属めっきされた樹脂成形品」を用いるという方法を採用している。ここでは、「樹脂成型品」として、平均粒子径が0.1μm~2μmの酸可溶性無機フィラーを20重量%~60重量%含有するポリプロピレン系樹脂が採用されている。
また、特許文献2では、「ポリオレフィン樹脂成形物の表面に無水マレイン酸をグラフト重合させ、しかるのち無電解めっきを行うポリオレフィン樹脂めっき成形物の製造方法」を採用している。
さらに、特許文献3では、「(1)非導電性基材の表面にアニオン化処理を行う工程、(2)カチオン性界面活性剤を含有する水溶液に接触させる工程、(3)パラジウムコロイド水溶液に接触させる工程、及び(4)無電解めっきを行う工程、を順に含む無電解めっき物の製造方法」を採用している。この工程(1)では、ポリオレフィン樹脂からなる基材の表面にマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂等の酸変性樹脂を塗布して、アニオン化処理を行っている。
特開平11-310880号公報 特開昭54-116066号公報 特開2016-222823号公報
しかしながら、特許文献1~特許文献3に記載された発明は、いずれも以下のような実用上の問題が指摘されている。
特許文献1に開示の発明の場合、ポリプロピレン系樹脂に炭酸カルシウム等の無機フィラーを多量に添加する必要があるため、当該樹脂の物性に大きな影響を与え、樹脂本来の性能を発揮し得ず、むしろ性能劣化を起こす可能性があるという問題がある。
特許文献2に開示の発明の場合、無電解めっきの前処理工程にグラフト重合処理が採用されている。このグラフト重合処理は、ポリオレフィン樹脂成形物を有機ラジカル発生剤と無水マレイン酸とを順次添加した85℃~90℃の水に、合計8.5時間浸漬することを必要とするものである。このようにグラフト重合処理に長時間を要するため生産性が低く、製造コストの上昇を招く要因となる。また、加熱時間の長さから、ポリオレフィン樹脂成形物に変形や劣化等が起こる可能性も高くなるという問題があった。
特許文献3に開示の発明の場合、めっき用プライマー(酸変性樹脂)を用いているが、被めっき対象物の表面が複雑な形状を有する場合、被めっき対象物の表面へのめっき用プライマーの均一な塗布が困難となり、被めっき対象物の表面への均一な無電解めっき被膜の形成が困難となる問題がある。
以上のことから理解できるように、当業者間では、ポリプロピレン系樹脂本来の性能を発揮できる樹脂組成物、その樹脂組成物を用いて得られた被めっき対象物への密着性に優れた無電解めっき被膜等が求められてきた。
そこで、本件発明者は、鋭意研究の結果、以下の発明に想到し、上述の課題を解決した。
A.本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物は、被めっき対象物を形成するために用いるポリプロピレン系樹脂組成物であって、無変性ポリプロピレン系樹脂と、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及び/又はセルロースナノファイバーとを含んだことを特徴とする。
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物は、当該ポリプロピレン系樹脂組成物が無変性ポリプロピレン系樹脂とマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂との2成分からなる場合、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物は、当該ポリプロピレン系樹脂組成物が無変性ポリプロピレン系樹脂とセルロースナノファイバーとの2成分からなる場合、セルロースナノファイバーを1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物は、当該ポリプロピレン系樹脂組成物が無変性ポリプロピレン系樹脂、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーの3成分からなる場合、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーを合計1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物において、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーは、[マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(質量%)]/[セルロースナノファイバー(質量%)]=0.2~1.2であることが好ましい。
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物において、セルロースナノファイバーは、植物由来のものを用いることが好ましい。
B.本件出願にかかる被めっき対象物
本件出願にかかる被めっき対象物は、上述のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする。
C.本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品は、上述のポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物の表面に金属層を備えることを特徴とする。
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品において、金属層は、ニッケル、銅、金、白金、銀及びこれらの合金のいずれかの成分で構成した、金属薄膜層とバルク金属層とからなることが好ましい。
D.本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の中には、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の金属層を導体回路に加工して得られたことを特徴とするポリプロピレン系樹脂製配線基材が含まれる。
E.本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法は、以下の工程1~工程8を備えることを特徴とする。
工程1: 酸水溶液又はアルカリ水溶液を用いてポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物の表面の脱脂処理を行う。
工程2: 脱脂処理した被めっき対象物の表面を重金属塩類水溶液又は硫酸過水でエッチング処理し、凹凸表面を備える粗化表面付被めっき対象物を得る。
工程3: 前記粗化表面付被めっき対象物の表面に残存するエッチング処理に用いた溶液を完全に除去するための中和処理を行う。
工程4: 中和処理後の前記粗化表面付被めっき対象物の無極性表面をマイナスに帯電させ、金属成分の析出可能な状態とするコンディショニング処理を行う。
工程5: コンディショニング処理後の粗化表面付被めっき対象物の表面に触媒を付着させるための触媒吸着処理(キャタライズ)を行う。
工程6: 粗化表面付被めっき対象物の表面に付着した触媒を活性化させるための活性化処理(アクセレーター)を行う。
工程7: 活性化した粗化表面付被めっき対象物の表面に無電解めっき法で金属層を形成し、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を得る。
工程7: 活性化した粗化表面付被めっき対象物の表面に無電解めっき法で金属薄膜層を形成し、金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品を得る。
工程8: 金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品の表面にバルク金属層を形成し、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を得る。
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法において、工程1の脱脂処理でアルカリ水溶液を用いる場合は、アルカリ水溶液は、アミン化合物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及びそれらの塩から選択された一種以上を含み、pH9~pH12、液温20℃~70℃に調整したものを用いることが好ましい。
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法において、工程2のエッチング処理で重金属塩類水溶液を用いる場合は、重金属塩類水溶液は、クロム酸水溶液、クロム酸と硫酸との混合溶液、過マンガン酸カリウム水溶液のいずれかを用いることが好ましい。
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法において、工程5の触媒吸着処理は、パラジウム又は銀のいずれかを含む酸性又はアルカリ性触媒を用いて行うことが好ましい。
F.本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造方法
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造方法は、上述の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法において得られた金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を用い、その表面にある金属層の表面に、回路エッチング用レジスト層を形成し、回路パターンを露光し、現像することでエッチングパターンの形成を行い、その後回路エッチングを行い、エッチングレジスト除去を行い導体回路を形成することを特徴とする。
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物は、電子部品材料、装飾品等に用いる被めっき対象物を製造するのに好適である。そして、この被めっき対象物は、その表面に良好な密着性をもって無電解めっき被膜を設け、良好な品質を備えた金属層付きポリプロピレン系樹脂製品となる。さらに、この金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を用いて配線回路基板を製造すると、良好な外観特性を有すると共に、導体回路の密着性が高いポリプロピレン系樹脂製配線基材を得ることができる。
(A)~(C)は実施例及び比較例のポリプロピレン系樹脂板に対して、工程2のエッチング処理を各々行った後の走査型電子顕微鏡像である。 実施例及び比較例の金属層付きポリプロピレン系樹脂板における樹脂板表面に対する金属層の引き剥がし強さ(以下、ピール強度とも称する。)を示すグラフである。
以下に、図1及び図2を参照して、本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品及びその製造方法、ポリプロピレン系樹脂製配線基材及びその製造方法の一実施形態を説明する。
A.本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物は、被めっき対象物を形成するために用いるポリプロピレン系樹脂組成物であり、主成分である「無変性ポリプロピレン系樹脂」と、添加剤である「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」、「セルロースナノファイバー」とを用いて得られるものである。
A-1.構成成分
無変性ポリプロピレン系樹脂: この無変性ポリプロピレン系樹脂は、炭化水素からなる化学的に安定な構造を有し、官能基をもつほかの化合物をグラフト重合させていない無変性のポリプロピレン樹脂を意味している。念のために記載しておくが、本件発明の無変性ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを単独で重合させたホモポリマー(ホモポリプロピレン)のみを示すものではなく、これにエチレンを加えたランダムコポリマー又はブロックコポリマーも含有するものである。
なお、ポリプロピレンのランダムコポリマーとは、ホモポリプロピレンを構成する炭化水素の主鎖に対して、その一部にランダムにエチレンが取り込まれた構造を有するポリプロピレン系樹脂を示し、原料として更に1-ブテンが加えられる場合もある。また、ブロックコポリマーとは、同主鎖に対して、その一部に規則的にエチレンが取り込まれた構造を有するポリプロピレン系樹脂又は、ホモポリプロピレンの中にポリエチレンが島状に分散した構造を有するポリプロピレン系樹脂を示すものである。
マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂: このマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂は、上述の無変性ポリプロピレン系樹脂に、無水マレイン酸をグラフト重合させた化合物のことである。このマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の主成分は、無変性ポリプロピレン系樹脂と同じ「ポリプロピレン」である。そのため、ポリプロピレン系樹脂本来の物性を大きく変化させるものではない。したがって、無水マレイン酸のグラフト量は、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の0.5質量%~15質量%の範囲内とすることが好ましい。このグラフト量が0.5質量%未満の場合には、無変性ポリプロピレン系樹脂の樹脂性能に変化を与えることのできるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂が得られないため好ましくない。一方、このグラフト量が15質量%を超えると、得られるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の樹脂品質が劣化し、ポリプロピレン樹脂としての物性を大きく変化させる可能性が高くなり好ましくない。なお、念のために記載しておくが、「無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」と称される化合物も、この本件出願にいう「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」に包含する。
セルロースナノファイバー: このセルロースナノファイバーは、木材チップ等から取り出したパルプ繊維を解繊して得たナノメータサイズの繊維である。セルロースナノファイバーとは、通常、繊維幅(直径)が数nm~30nm、アスペクト比(繊維長/繊維幅)が3~150の繊維状の物質をいう。しかし、本件出願では、各々の繊維寸法が更に小さく、紡錘形等の形状を有するセルロースナノクリスタルも、このセルロースナノファイバーに包含した概念を採用している。
このセルロースナノファイバーには、植物由来のものを用いることが好ましい。ファイバーサイズの調整が容易で、材料コストが低廉で、入手も容易だからである。
また、このセルロースナノファイバーは、樹脂と混合して用いることを想定したものであるから、樹脂成分中での分散性を高めるため、予め所定の表面処理を施し表面改質したものであることが好ましい。この表面改質の方法は、シランカップリング剤処理、薬剤による疎水化処理、樹脂組成物による表面被覆等を用いることができる。
A-2.樹脂組成物の構成形態
以下に、本件出願において用いる3種類(2種類の2成分系、1種類の3成分系)のポリプロピレン系樹脂組成物に関して述べる。
2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(1): このポリプロピレン系樹脂組成物(1)は、「無変性ポリプロピレン系樹脂」と「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」との2成分からなる。このような組成を採用したのは、無変性ポリプロピレン系樹脂のみで製造した被めっき対象物は、無電解めっき被膜を形成することが困難で、めっき被膜の密着性が極度に低下することを改善するためである。
そこで、「無変性ポリプロピレン系樹脂」と「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」とを組み合わせた樹脂組成物とし、これを用いて得られる被めっき対象物へのめっき層の密着性を飛躍的に向上させている。「無変性ポリプロピレン系樹脂」と「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」とを組み合わせた樹脂組成物で得られた被めっき対象物の場合、後述するめっき方法を採用することで、主にマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の偏在部位の一部が溶解や脱落して、被めっき対象物の表面を粗化させ凹部が形成される。このような粗化面には無水マレイン酸由来のCHO基が多く露出し、極性が低い被めっき対象物の表面が極性を有する状態になるため、後述する無電解めっき法の前処理工程に適した構造となり、均一なめっき析出を促すことになる。そして、この凹部に析出するめっきが侵入し「アンカー効果」を発揮するため、めっき被膜の密着性が飛躍的に向上する。
また、本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物(1)のように「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」を含有させることによって、樹脂の流動性が向上する傾向にある。したがって、本件出願にいう被めっき対象物の形状が複雑なものであっても、成型加工が容易となり好ましい。
本件出願に係る2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の場合、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載している。マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が、この範囲外であると、めっき被膜の密着強度が、JIS-H8630「プラスチック上への装飾用電気めっき」における「付属書1 密着力試験方法」で必要とされる5N/cm未満となる傾向が高く、外観不良も生じやすくなるため好ましくない。マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が1質量%未満の場合、後述するめっき被膜の形成方法において、被めっき対象物の表面にめっき被膜の密着性を向上させるための凹部形成が困難となり好ましくない。一方、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が20質量%を超えると、被めっき対象物の樹脂強度が低下し脆くなるため、めっき被膜の引き剥がし強さが低下して好ましくない。
また、本件出願に係る2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の場合、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を5質量%~12質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが、より好ましい。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載している。マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が、この範囲外であると、めっき被膜の密着強度が、製品の実用上必要とされる10N/cm未満となる傾向が高くなるため好ましくない。マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が5質量%未満の場合、後述するめっき被膜の形成方法において、被めっき対象物の表面にめっき被膜の密着性を向上させるための凹部発生が不足するため好ましくない。一方、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が12質量%を超えると、被めっき対象物表面の平坦部分が減少し、めっき被膜の引き剥がし強さが低下する傾向にあるため好ましくない。
ここで図2を参照すると、ポリプロピレン系樹脂組成物(1)は、添加剤であるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(図2では「MAPP」と省略して記載する。)の含有量が1質量%~20質量%である樹脂組成物のときに、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含有しない樹脂組成物を用いた比較例に対して、めっき被膜との密着性が向上することが確認できる。また、ポリプロピレン系樹脂組成物(1)は、添加剤であるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が5質量%~12質量%であるときに、めっき被膜との密着性が更に良好なものとなることが確認できる。
なお、上述のポリプロピレン系樹脂組成物(1)は、その他成分として、酸化防止剤や耐候安定剤等の一般的な添加剤を含有させてもよい。この点に関しては、以下の樹脂組成物も同様である。
2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(2): このポリプロピレン系樹脂組成物(2)は、「無変性ポリプロピレン系樹脂」と「セルロースナノファイバー」との2成分からなる。2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の場合と同様に、このような組成を採用したのは、無変性ポリプロピレン系樹脂のみで製造した被めっき対象物は、無電解めっき被膜を形成することが困難で、めっき被膜の密着性が極度に低下することを改善するためである。
そこで、「無変性ポリプロピレン系樹脂」と「セルロースナノファイバー」とを組み合わせた樹脂組成物とし、これを用いて得られる被めっき対象物へのめっき層の密着性を飛躍的に向上させている。「無変性ポリプロピレン系樹脂」と「セルロースナノファイバー」とを組み合わせた樹脂組成物で得られた被めっき対象物の場合、後述するめっき方法を採用することで、被めっき対象物表面への微細な凹部の形成反応が助長されて、当該表面が粗化される。その結果、その凹部に析出するめっきが侵入し「アンカー効果」を発揮するため、めっき被膜の密着性が飛躍的に向上する。
また、本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物(2)のように「セルロースナノファイバー」を含有させることによって、硬化後の樹脂としての強度も向上する傾向にある。したがって、製品化後に重量のある電子部品等を搭載することも可能となる。
本件出願に係る2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(2)の場合、セルロースナノファイバーを1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(2)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載している。セルロースナノファイバーの含有量が、この範囲外であると、JIS-H8630「プラスチック上への装飾用電気めっき」における「付属書1 密着力試験方法」で必要とされる5N/cm未満となる傾向が高く、外観不良も生じやすくなるため好ましくない。セルロースナノファイバーの含有量が1質量%未満の場合、後述するめっき被膜の形成方法において、被めっき対象物の表面にめっき被膜の密着性を向上させるための凹部形成が困難となり好ましくない。一方、セルロースナノファイバーの含有量が20質量%を超えると、硬化後のポリプロピレン系樹脂としての強度が低下し脆くなるため好ましくない。
また、本件出願に係る2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(2)の場合、セルロースナノファイバーを5質量%~12質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが、より好ましい。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(2)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載している。セルロースナノファイバーの含有量が、この範囲外であると、めっき被膜の密着強度が、製品の実用上必要とされる10N/cm未満となる傾向が高くなるため好ましくない。セルロースナノファイバーの含有量が5質量%未満の場合、後述するめっき被膜の形成方法において、被めっき対象物の表面にめっき被膜の密着性を向上させるための凹部発生が不足するため好ましくない。一方、セルロースナノファイバーの含有量が12質量%を超えると、被めっき対象物表面の平坦部分が減少し、めっき被膜の引き剥がし強さが低下する傾向にあるため好ましくない。
3成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(3): このポリプロピレン系樹脂組成物(3)は、「無変性ポリプロピレン系樹脂」、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」、「セルロースナノファイバー」の3成分からなる。2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の場合と同様に、このような組成を採用したのは、無変性ポリプロピレン系樹脂のみで製造した被めっき対象物は、無電解めっき被膜を形成することが困難で、めっき被膜の密着性が極度に低下することを改善するためである。
そこで、「無変性ポリプロピレン系樹脂」、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」を組み合わせた樹脂組成物とし、これを用いて得られる被めっき対象物へのめっき層の密着性を飛躍的に向上させている。このような樹脂組成物で得られた被めっき対象物の場合、後述するめっき方法を採用することで、被めっき対象物表面にあるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の偏在部位の一部が溶解や脱落して、被めっき対象物の表面に効率よくアンカー効果を発揮する凹部を形成することができる。そして、被めっき対象物表面に位置するセルロースナノファイバーは、当該表面の粗化を助長する。2成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(1)と同様に、このような粗化面には無水マレイン酸由来のCHO基が多く露出し、極性が低い被めっき対象物の表面が極性を有する状態になるため、後述する無電解めっき法の前処理工程に適した構造となり、均一なめっき析出を促すことになる。その結果、被めっき対象物表面に設けるめっき被膜の密着性が飛躍的に向上する。
ここでいう「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」に関する概念は上述と同様である。そして、本件出願に係る3成分系ポリプロピレン系樹脂組成物(3)の場合、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」を合計含有量として1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。更に、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」を合計含有量として5質量%~12質量%の範囲で含有し、残部は無変性ポリプロピレン系樹脂であることがより好ましい。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(3)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載している。また、これらの数値範囲の上限及び下限の意味合いは、上述と同様である。
ここで図2を参照すると、ポリプロピレン系樹脂組成物(3)は、添加剤である「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」の合計含有量が1質量%~20質量%である樹脂組成物のときに、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」を含有しない樹脂組成物を用いた比較例に対して、めっき被膜との密着性が向上することが確認できる(なお、図2では、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバー」を「MAPP及びCNF」と省略して記載する。)。また、ポリプロピレン系樹脂組成物(3)は、添加剤である「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」の合計含有量が5質量%~12質量%である樹脂組成物のときに、めっき被膜との密着性が更に良好なものとなることが確認できる。なお、図2で用いたセルロースナノファイバーには、植物由来のものを利用した。
ただし、本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂組成物(3)において、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂」及び「セルロースナノファイバー」を同時に用いる場合、[マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(質量%)]/[セルロースナノファイバー(質量%)]=0.2~1.2(以下、単に「含有割合比率」と称する。)の条件を満たすことが好ましい。この含有割合比率が0.2未満の場合には、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の含有量が過少となり、セルロースナノファイバーのみを用いた場合との差異がなくなり好ましくない。一方、含有割合比率が1.2を超える場合には、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂のみを用いた場合との差異がなくなり好ましくない。
B.本件出願にかかる被めっき対象物の形態
本件出願にかかる被めっき対象物は、上述のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とする。被めっき対象物としての形状、サイズ、用途等に特段の限定はない。被めっき対象物を製造するにあたり、以下のような方法を採用することが可能である。
本件出願の場合、ポリプロピレン系樹脂組成物は、無変性ポリプロピレン系樹脂、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及び/又はセルロースナノファイバーを混練造粒機に投入し、加熱しながら溶融及び混練して、粉末やペレット等の形状で製造できる。なお、このときのセルロースナノファイバーは、無変性ポリプロピレン系樹脂への分散性を向上させるため、予め所定の表面処理を施したものを用いることが好ましい。また、セルロースナノファイバー又は、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーは、予め無変性ポリプロピレン系樹脂にこれらを混錬し、60質量%~90質量%の範囲でこれらを含有するペレット状の複合化樹脂として用いてもよい。以上に述べた混練物を原料とする場合、混練物を型枠に入れ、加熱溶融させて所望の被めっき対象物の形状とする。
C.本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の形態
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品は、上述のポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物の表面に金属層を備えることを特徴とする。そして、この被めっき対象物の形状等に関しては、上述のように特段の限定はない。したがって、この金属層付きポリプロピレン系樹脂製品には、平板状、湾曲状、屈曲状、立体状のものも包含している。この金属層付きポリプロピレン系樹脂製品は、金属層を備えることで、意匠性や耐久性の向上、帯電防止、電磁波シールド等の様々な付加価値を高い信頼性をもって発揮できるようになる。
この被めっき対象物の表面に設ける金属層は、無電解めっき法で形成可能なニッケル、銅、金、白金、銀及びこれらの合金のいずれかの成分で構成したものであればよい。そして、この被めっき対象物の表面に設ける金属層は、同様の金属成分である、ニッケル、銅、金、白金、銀及びこれらの合金のいずれかの成分で構成した、金属薄膜層とバルク金属層とからなるものであってもよい。例えば、被めっき対象物が板状であり、その表面に金属層を備えていれば、その金属層を導体回路に加工したポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造も可能になる。なお、ポリプロピレン系樹脂組成物を用いてポリプロピレン系樹脂製品を製造する方法としては、ホットプレス法、射出成形法、押出成形法、金型成形法等の公知の方法を採用することができる。
D.本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材は、上述の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の金属層を導体回路に加工して得られたことを特徴とする。この金属層付きポリプロピレン系樹脂製品が板状であれば、平面のポリプロピレン系樹脂製配線基材となる。また、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品が立体であれば、3次元構造を備えるポリプロピレン系樹脂製配線基材となる。ポリプロピレン系樹脂製配線基材は、プリント配線基板等として用いることができる。
E.本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造形態
本件出願にかかる金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法は、以下の工程1~工程8を備えることを特徴とする。
ここでいう工程1~工程8は、被めっき対象物を、各処理溶液と接触させて行うことが好ましい。このような溶液処理法を採用することで、被めっき対象物の表面形状が複雑であっても、確実に処理することができるようになる。その結果、被めっき対象物の未処理部分が無くなり、均一且つ優れた外観品質を備えためっき被膜(金属層)を設けることが可能になる。また、各工程を全て溶液処理法で行うことにより、一貫した製造ラインとすることが容易となる。以下、工程ごとに説明する。
工程1: この工程では、酸水溶液又はアルカリ水溶液を用いてポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物の表面の脱脂処理を行う。この脱脂処理は、被めっき対象物表面の付着物を除去して、めっき被膜を被めっき対象物の表面上に均一且つ密着性良く形成できるようにするためのものである。
また、脱脂処理でアルカリ水溶液を用いる場合は、当該アルカリ水溶液は、アミン化合物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及びそれらの塩から選択された一種以上を含有する水溶液を用いることが好ましい。ここで、アミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエチレントリアミン等のエタノールアミンやN-メチル-2-ピロリドン等の2-ピロリドン類の化合物が挙げられる。そして、これらの成分を含む溶液は、溶液pH9~pH12の範囲となるように含有量を調整する。この溶液pHが9未満の場合、十分な脱脂処理が行えず、清浄化効果を得ることができないため好ましくない。一方、溶液pHが12を超える場合、被めっき対象物の表面が過剰に浸食され、被めっき対象物の表面樹脂の劣化が起こる傾向にあるため好ましくない。また、脱脂に用いるアルカリ水溶液は、液温20℃~70℃であることが好ましい。この液温が20℃未満の場合、脱脂速度が低下するため、迅速な脱脂処理が行えないため好ましくない。一方、液温が70℃を超えると、上述の溶液濃度の範囲での洗浄反応の制御が困難となり、均質な処理が困難となり好ましくない。
一方、脱脂処理で酸水溶液を用いる場合は、硫酸溶液を用いることが好ましい。被めっき対象物表面の付着物に対する反応性が高く、比較的安価な材料だからである。
工程2: この工程は、脱脂処理した被めっき対象物の表面を重金属塩類水溶液又は硫酸過水でエッチング処理し、当該被めっき対象物を構成するポリプロピレン系樹脂に含まれたマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及び/又はセルロースナノファイバーの一部を溶解させ凹凸表面を備える粗化表面付被めっき対象物を得るためのものである。
エッチング処理で重金属塩類水溶液を用いる場合は、重金属塩類水溶液は、クロム酸水溶液、クロム酸と硫酸との混合溶液、過マンガン酸カリウム水溶液のいずれかを用いることが好ましい。重金属塩類水溶液又は硫酸過水(硫酸と過酸化水素水との混合溶液)を用いてエッチング処理を行うことで、比較的短時間で被めっき対象物の表面をエッチングし、粗化できるという利点がある。このようにクロム酸を含んだ水溶液等を使用して、本件出願にいう被めっき対象物の表面に、めっき被膜の密着性を飛躍的に向上させるための凹部を形成するのである。ここで、クロム酸と硫酸とを併用した混合溶液の場合、硫酸を適正に配合することにより、クロム酸のエッチング能力を損なうことなく、安定したエッチングが可能になる。
このエッチング液として「クロム酸水溶液」を用いる場合、クロム酸濃度200g/l~400g/lのものを用いることが好ましい。クロム酸濃度200g/l未満の場合には、エッチング速度が遅く工業的に必要な生産性を得ることができないため好ましくない。一方、クロム酸濃度400g/lを超えても、クロム酸成分の配合量が過多となり溶媒である水に安定的に溶解することができず、樹脂表面や当該表面上に形成した金属皮膜表面等にクロム酸成分の不溶解塩が付着するなどして良好なめっきができなくなり、実用的でないため好ましくない。
そして、このエッチング液として「クロム酸と硫酸との混合溶液」を用いる場合には、「クロム酸(g/l)」/「硫酸(g/l)」=0.2~1.0(以下、単に「薬液混合比」と称する。)の配合バランスを備えた混合溶液として用いることが好ましい。この薬液混合比が0.2未満の場合には、クロム酸量が過少となり、エッチング速度が低下するため好ましくない。一方、薬液混合比が1.0を超えると、クロム酸に対する硫酸の配合量が少なくなり、硫酸へのクロム酸の溶解量が飽和してエッチング速度も上がらないため好ましくない。
以上に述べた「クロム酸水溶液」又は「クロム酸と硫酸との混合溶液」は、液温25℃~80℃であることが好ましい。この液温が25℃未満の場合、エッチング速度の低下が顕著であり好ましくない。一方、液温が80℃を超えると、金属被膜の外観に悪影響を及ぼし、外観不良を起こしやすい傾向にあるため好ましくない。
上述のポリプロピレン系樹脂組成物で形成した被めっき対象物は、上述のエッチング液に接触すると、被めっき対象物の表面近傍に存在するマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及び/又はセルロースナノファイバーの一部が溶解や脱落、又はエッチング液による樹脂表面の粗化反応を助長するなどして、被めっき対象物表面に凹部が形成された粗化面になる。このような粗化面には、無水マレイン酸由来のCHO基が多く露出し、当該表面が極性を有する状態になるため、触媒の定着性も向上し、均一なめっき析出を促すことになる。そして、この凹部にめっきが析出し、アンカー効果を発揮して、めっき被膜の密着性が飛躍的に向上する。
工程3: この工程では、粗化表面付被めっき対象物の表面に残存するエッチング処理に用いた溶液を完全に除去するための中和処理を行う。この中和処理を行うことによって、エッチング液成分を完全に除去し、次工程への影響を無くし、安定しためっき被膜の形成を行うためのものである。中和処理に用いる溶液は、酸水溶液であれば特に限定はないが、コスト面を考慮し、塩酸、硫酸等の水溶液を用いることが好ましい。
工程4: この工程では、中和処理後の粗化表面付被めっき対象物の無極性表面をマイナスに帯電させ、金属成分の析出可能な状態とするコンディショニング処理を行う。このコンディショニング処理は、粗化表面付被めっき対象物表面を金属成分の析出が容易な状態とするものである。コンディショニング処理に用いる溶液は、硫酸を主成分とする市販のコンディショニング処理溶液等を用い、液温25℃~50℃で1分間~5分間接触させ、水洗等すればよい。このような硫酸系コンディショニング処理溶液を用いると、硫酸から電離したアニオンが吸着し、被めっき対象物表面がマイナスに帯電する。その結果、次工程での触媒の付着が促進される。
工程5: この工程では、コンディショニング処理後の粗化表面付ポリプロピレン系樹脂板の表面に触媒を付着させるための触媒吸着処理を行う(キャタリスト)。触媒吸着処理に用いるのは、パラジウム、スズ、銀等から選択された一種以上の金属のイオンを含有する酸性又はアルカリ性の触媒溶液であり、市販のものを用いることができる。これらの触媒溶液は、二種以上の金属イオンを含有する混合溶液(例えばパラジウムイオン及びスズイオンを含有する混合溶液)を一液で用いてもよく、スズイオン含有の触媒溶液を用いた後でパラジウムイオン含有の触媒溶液を用いるなど、複数の触媒溶液を順に用いてもよい。このような触媒溶液に、上述のコンディショニング処理によって表面がマイナスに帯電した粗化表面付被めっき対象物を接触させると、金属イオンが粗化表面付被めっき対象物表面に引き寄せられ、当該表面に付着する。このとき、粗化表面付被めっき対象物の場合、表面が平坦である場合に比べて比表面積が大きくなり、触媒付着が安定化する。
工程6: この工程では、粗化表面付被めっき対象物の表面に付着した触媒を活性化させるための活性化処理(アクセレーター)を行う。この活性化処理には、還元剤を含有する市販の活性化処理溶液等を用いることができる。この活性化処理溶液に、触媒吸着処理後の粗化表面付被めっき対象物を接触させると、その表面に付着した触媒(金属イオン成分)が還元され触媒金属となる。
工程7: この工程では、活性化した粗化表面付被めっき対象物の表面に無電解めっき法で金属薄膜層を形成し、金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品を得る。触媒処理後の粗化表面付被めっき対象物を、無電解めっき液と接触させることにより表面に付着した触媒と無電解めっき液に含まれた金属成分との間で置換反応が促進され金属薄膜層が形成できる。ここで用いる無電解めっき液の組成及びめっき操業条件に関しては、目的とする金属薄膜層(無電解めっき層)の形成が可能である限り、特段の限定はない。
工程8: この工程では、金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品の表面にバルク金属層を形成し、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を得る。このバルク金属層は、電解めっき法や蒸着法等の従来公知の方法で形成することができる。バルク金属層を電解めっき法で形成する場合は、金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品を電解めっき液と接触させて、金属電極(対向電極)との間に電圧を印可することにより、金属薄膜層の表面にバルク金属層が形成できる。ここで用いる電解めっき液の組成及びめっき操業条件に関しては、目的とするバルク金属層(電解めっき層)の形成が可能である限り、特段の限定はない。この工程が終了すると、水洗、乾燥することで金属層付きポリプロピレン系樹脂製品となる。なお、この工程8の処理は、製品要求に応じて省略することもできる。その場合、工程7の無電解めっき法で形成した金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品が、本件発明でいう金属層付きポリプロピレン系樹脂製品となる。
F.本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造形態
本件出願にかかるポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造方法は、上述の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造方法において得られた金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を用い、その表面にある金属層の表面に、回路形成を行ったものである。
配線回路の具体的な形成方法は、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の金属層に回路エッチング用レジスト層を形成し、回路パターンを露光し、現像することでエッチングパターンの形成を行い、その後回路エッチングを行い、エッチングレジスト除去を行い導体回路を形成するものである。回路エッチング用レジスト層の形成には、レジスト形成材料として特段の限定はなく、ドライフィルム、液体レジスト等を用いる。露光、現像、エッチングレジスト除去に関しても、従来から公知の技術の使用が可能である。
以下に、本件出願にかかる実施例を示し、より具体的に説明する。なお、本件出願にかかる発明の技術的思想は、以下に述べる実施例等の記載に限定して解釈されるものではない。
A.樹脂組成物の調整と被めっき対象物の形成
実施例1では、上述のポリプロピレン系樹脂組成物(1)を調整した。すなわち、無変性ポリプロピレン系樹脂(株式会社プライムポリマー製)の含有量が90質量%、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(化薬ヌーリオン株式会社製)の含有量が10質量%となるよう配合して樹脂組成物とした。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(1)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載したものである。これらを二軸混練押出機に投入し、180℃で加熱溶解し、3分間混錬した。これをプレス成型機に投入し、180℃に加熱し、押圧4.1Paで5分間保持して、板状のポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物を得た。
B.金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造
続いて、以下の手順で工程1~工程8を行った。
工程1: 被めっき対象物を、液温42℃のアミン化合物を含有した市販のアルカリ水溶液に5分間浸漬して脱脂処理を行った。脱脂処理の終了後、十分に水洗し、水切りを行った。
工程2: 脱脂処理した被めっき対象物の表面を重金属塩類水溶液でエッチング処理し、当該被めっき対象物表面に凹部形成を行い粗化表面付被めっき対象物を得た。このエッチング処理は、重金属塩類水溶液(エッチング液)として、液温67℃の「クロム酸(g/l)」/「硫酸(g/l)」=1.0の薬液混合比を備える「クロム酸と硫酸との混合溶液」を用い、これに10分間浸漬することにより行った。
工程3: 粗化表面付被めっき対象物を濃度35体積%、液温25℃の塩酸水溶液に2分間浸漬し中和処理を行った。
工程4: 中和処理後の粗化表面付被めっき対象物を、液温25℃の市販の硫酸系のコンディショニング液に2分間浸漬してコンディショニング処理を行った。
工程5: コンディショニング処理後の粗化表面付被めっき対象物を、液温42℃のパラジウムイオンを含有した市販のキャタライズ液に5分間浸漬し触媒吸着処理を行った。
工程6: 触媒吸着処理後の粗化表面付被めっき対象物の表面にある触媒を活性化させるため、液温25℃のホウ素化合物からなる還元剤を含有した市販の活性化処理液に5分間浸漬して活性化処理(アクセレーター)を行った。
工程7: 活性化した粗化表面付被めっき対象物の表面に、無電解めっき法で金属薄膜層を形成し、金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品を得た。この工程では、pH10の市販の無電解ニッケルめっき液を用いて、液温35℃で10分間のめっき処理を行い厚さ0.3μmの無電解ニッケルめっき被膜を形成した。
工程8: 金属薄膜層付きポリプロピレン系樹脂製品の表面に、バルク金属層を形成し、金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を得た。この工程では、ニッケルめっき被膜の上に、硫酸銅を含有する市販の電解銅めっき液を用いて、液温25℃で60分間のめっき処理を行い厚さ30μmの銅めっき被膜を形成し、板状の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品を製造した。
C.ポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造
上述の板状の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の金属層の表面にドライフィルムをラミネートし、回路エッチング用レジスト層を形成した。そして、この回路エッチング用レジスト層に露光フィルムを載置し、回路パターン(試験回路パターン)をUV露光した。その後、現像することでエッチングパターンの形成を行った。そして、硫酸銅系エッチング液で回路エッチングを行い、アルカリ溶液でエッチングレジストを膨潤除去し導体回路を形成し、ポリプロピレン系樹脂製配線基材を得た。
この実施例2は、実施例1と「樹脂組成物」のみが異なるため、樹脂組成物に関してのみ記載する。その他は、全て実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂製配線基材を得た。
実施例2では、上述のポリプロピレン系樹脂組成物(3)を調整した。すなわち、無変性ポリプロピレン系樹脂(株式会社プライムポリマー製)の含有量が90質量%、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(化薬ヌーリオン株式会社製)及びセルロースナノファイバー(植物由来)の合計含有量が10質量%になるように配合して樹脂組成物とした。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物(3)の上記組成は、不可避不純物を除外した組成として記載したものである。また、このときマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーは、これらを予め無変性ポリプロピレン系樹脂に配合してペレット状の複合化樹脂となっているものを使用した。この複合化樹脂は、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーを、[マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(質量%)]/[セルロースナノファイバー(質量%)]=0.50の割合で含むものである。
比較例
この比較例は、実施例1と「樹脂組成物」のみが異なるため、樹脂組成物に関してのみ記載する。その他は、全て実施例1と同様にして、上述の「金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造」の各工程を行った。しかし、この比較例で得た板状の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品は、樹脂製品表面への金属層の密着性が低く、当該表面上に金属の未析出部分が多く発生したため、「ポリプロピレン系樹脂製配線基材の製造」の途中で金属被膜の一部が脱落するなどしてポリプロピレン系樹脂製配線基材は得られなかった。
比較例で用いた樹脂組成物に関して述べる。比較例では、無変性ポリプロピレン系樹脂(株式会社プライムポリマー製)のみで、板状のポリプロピレン系樹脂製の被めっき対象物を得た。
[実施例と比較例との対比]
以下に、上述の実施例と比較例とを対比して説明する。
走査型電子顕微鏡観察: ここでは、「金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造」における工程2のエッチング処理を行った直後の被めっき対象物表面の状態を走査型電子顕微鏡で観察した。図1(A)に示す比較例の場合は、被めっき対象物表面がエッチング処理溶液で溶解又は脱落しておらず、概ね平坦な形状を示している。これに対し、図1(B)及び図1(C)に示すとおり、実施例1及び実施例2における被めっき対象物の表面は一部溶解や脱落して凹部形状を有する粗化表面となっていることが理解できる。すなわち、被めっき対象物を構成する樹脂組成物が、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を含有する場合」、「マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーを含有する場合」には、めっき被膜形成に好適な構造となっていることが理解できる。
密着性評価: ここでは、「金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造」で得られた実施例1、実施例2及び比較例の板状の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品について、樹脂表面に対する金属層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定を行った。なお、測定は、JIS-H8630「プラスチック上への装飾用電気めっき」における「付属書1 密着力試験方法」に基づいて行い、測定機器には島津製作所社製オートグラフAG-Xplusを使用した。その結果、実施例1及び実施例2の引き剥がし強さは14.8N/cmであった。これに対し、比較例の引き剥がし強さは2N/cmであった。
冷熱サイクル試験: 上述の密着性試験と同様に、「金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造」で得られた実施例1、実施例2及び比較例の板状の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品について、JIS-H8630「プラスチック上への装飾用電気めっき」における「冷熱繰り返し試験方法」の等級-4級に基づき、冷熱サイクル試験を行った。その結果、実施例に関しては外観異常は認められなかった。これに対し、比較例の場合、樹脂表面に設けた金属層の一部に膨れ等の外観異常が認められた。
耐食性試験: ここでも、「金属層付きポリプロピレン系樹脂製品の製造」で得られた実施例1、実施例2及び比較例の板状の金属層付きポリプロピレン系樹脂製品について、JIS-H8630「プラスチック上への装飾用電気めっき」における「表6耐食性試験時間」の等級-4級相当の耐食性試験を行った。なお、試験方法は、JIS-H8502「メッキの耐食性試験方法」における「キャス試験方法」に基づいて行った。その結果、実施例に関しては外観異常は認められなかった。これに対し、比較例の場合、樹脂表面に設けた金属層の一部にフクレの発生等の外観異常が認められた。
本件出願にかかる発明において、難めっき材であるポリプロピレン系樹脂を、ポリプロピレン系樹脂本来の性能を発揮できる樹脂として、無電解めっき被膜の形成に適する樹脂組成物等に改良している。よって、これまでポリプロピレン系樹脂の使用が困難とされてきた電子部品、自動車部品、装飾用部品等の分野での利用が可能になる。

Claims (11)

  1. 被めっき対象物を形成するために用いるポリプロピレン樹脂組成物であって、
    当該ポリプロピレン樹脂組成物は、官能基をもつほかの化合物をグラフト重合させていない無変性のポリプロピレン樹脂である無変性ポリプロピレン樹脂と、当該無変性ポリプロピレン樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合させた化合物であるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂との2成分からな
    当該ポリプロピレン樹脂組成物は、当該マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は当該無変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
  2. 被めっき対象物を形成するために用いるポリプロピレン樹脂組成物であって、
    当該ポリプロピレン樹脂組成物は、官能基をもつほかの化合物をグラフト重合させていない無変性のポリプロピレン樹脂である無変性ポリプロピレン樹脂、当該無変性ポリプロピレン樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合させた化合物であるマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーの3成分からな
    当該ポリプロピレン樹脂組成物は、当該マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーを合計1質量%~20質量%の範囲で含有し、残部は当該無変性ポリプロピレン樹脂であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
  3. 前記マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂及びセルロースナノファイバーは、[マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(質量%)]/[セルロースナノファイバー(質量%)]=0.2~1.2である請求項に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  4. 前記セルロースナノファイバーは、植物由来のものを用いる請求項2又は請求項3に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
  5. 請求項1~請求項のいずれか一項に記載のポリプロピレン樹脂組成物を用いて得られたことを特徴とするポリプロピレン樹脂製の被めっき対象物。
  6. 請求項に記載のポリプロピレン樹脂製の被めっき対象物の表面に金属層を備えることを特徴とする金属層付きポリプロピレン樹脂製品。
  7. 前記金属層は、ニッケル、銅、金、白金、銀及びこれらの合金のいずれかの成分で構成した、金属薄膜層とバルク金属層とからなる請求項に記載の金属層付きポリプロピレン樹脂製品。
  8. 請求項又は請求項に記載の金属層付きポリプロピレン樹脂製品の製造方法であって、
    以下の工程1~工程8を備えることを特徴とする金属層付きポリプロピレン樹脂製品の製造方法。
    工程1: 酸水溶液又はアルカリ水溶液を用いてポリプロピレン樹脂製の被めっき対象物の表面の脱脂処理を行う。
    工程2: 脱脂処理した被めっき対象物の表面を、クロム酸水溶液、クロム酸と硫酸との混合溶液、過マンガン酸カリウム水溶液硫酸過水のいずれかでエッチング処理し、凹凸表面を備える粗化表面付被めっき対象物を得る。
    工程3: 前記粗化表面付被めっき対象物の表面に残存するエッチング処理に用いた溶液を完全に除去するための中和処理を行う。
    工程4: 中和処理後の前記粗化表面付被めっき対象物の無極性表面をマイナスに帯電させ、金属成分の析出可能な状態とするコンディショニング処理を行う。
    工程5: コンディショニング処理後の粗化表面付被めっき対象物の表面に触媒を付着させるための触媒吸着処理(キャタライズ)を行う。
    工程6: 粗化表面付被めっき対象物の表面に付着した触媒を活性化させるための活性化処理(アクセレーター)を行う。
    工程7: 活性化した粗化表面付被めっき対象物の表面に無電解めっき法で金属薄膜層を形成し、金属薄膜層付きポリプロピレン樹脂製品を得る。
    工程8: 金属薄膜層付きポリプロピレン樹脂製品の表面にバルク金属層を形成し、金属層付きポリプロピレン樹脂製品を得る。
  9. 前記工程1の脱脂処理でアルカリ水溶液を用いる場合は、アルカリ水溶液は、アミン化合物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム及びそれらの塩から選択された一種以上を含み、pH9~pH12、液温20℃~70℃に調整したものを用いる請求項に記載の金属層付きポリプロピレン樹脂製品の製造方法。
  10. 前記工程5の触媒吸着処理は、パラジウム又は銀のいずれかを含む酸性又はアルカリ性触媒を用いて行うものである請求項8又は請求項9に記載の金属層付きポリプロピレン樹脂製品の製造方法。
  11. 請求項~請求項10のいずれか一項に記載の金属層付きポリプロピレン樹脂製品の製造方法において得られた金属層付きポリプロピレン樹脂製品を用いたポリプロピレン樹脂製配線基材の製造方法であって、
    当該金属層付きポリプロピレン樹脂製品の表面にある金属層の表面に、回路エッチング用レジスト層を形成し、回路パターンを露光し、現像することでエッチングパターンの形成を行い、その後回路エッチングを行い、エッチングレジスト除去を行い導体回路を形成することを特徴とするポリプロピレン樹脂製配線基材の製造方法。
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