JP4364547B2 - 液封防振装置及びその共振制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、共振オリフィスを備えその液柱共振によって防振するようにした、車両のエンジンマウントに使用される液封防振装置の共振制御方法に係り、特に共振周波数を広域化できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画してオリフィス通路を介して連絡するとともに、主液室を囲む壁部の一部に内圧吸収膜を設け、この内圧吸収膜の膜張力を変化させるようにした内圧吸収型液封エンジンマウントは公知である。この形式のエンジンマウントにおいては、内圧吸収膜を柔にすれば、内圧変化を吸収して低動バネとし、剛にすればエンジンマウントにおける内部圧力の変化により発生するバネである拡張バネを高めてオリフィス通路に対する流量を増大させ、これによって共振効率を大きくして振動伝達を少なくするようになっている。
【0003】
また、オリフィス長を可変にしたオリフィス長可変手段を備えたものも公知である。さらに内圧吸収膜と一体にしたオリフィス長可変バルブを備えることにより、膜張力可変手段とオリフィス長可変手段を一体化した膜制御手段を設け、膜張力の変化とオリフィス長切り替えを同一手段でできるようにしたものもある。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−14335号公報
【特許文献2】
特開平8−320048号公報
【特許文献3】
特開平10−281214号公報
【特許文献4】
特開2001−18937号公報
【特許文献5】
特開2001−280405号公報
【特許文献6】
特開2002−250391号公報
【特許文献7】
特開平7−305740号公報
【特許文献8】
特開2002−70930号公報
【特許文献9】
特開2002−70931号公報
【特許文献10】
特開2002−168284号公報
【特許文献11】
特開2002−250392号公報
【特許文献12】
特開2003−4090号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内圧吸収膜を設けることによって、非制御時には、内圧吸収膜が自由に弾性変形して内圧変動を吸収し、液封防振装置における内部圧力の変化により発生するバネである拡張バネを低下させることにより低動バネとする。一方、制御時では内圧吸収膜の張力を発生させ、拡張バネを向上させ、オリフィス共振を高効率化させる。このとき、共振周波数の変化Δfxと拡張バネの変化ΔKfの間には、Δfx∝(ΔKf)1/2
なる関係がある。
【0006】
このように、膜張力制御を活用した場合の共振周波数の変化は、拡張バネの変化(ΔKf)に対して発生するが、内圧吸収膜は非制御時にダンピング性能を維持する必要性から、ΔKfを極端に変化できず、制御周波数帯Δfxは非常に限られた範囲となってしまう。したがって、仮に、アイドル状態から発進時の領域において所定以上の位相が必要な場合、このような位相の得られる制御周波数帯Δfxが限られた狭い範囲ものとなり、他の領域では有効な遮断効果が得られないことになる。したがって制御周波数帯Δfxの広域化が望まれる。
【0007】
このために、内圧吸収膜の膜張力変化を入力振動の大きさに対して非線形的に変化させることが考えられる。膜張力が非線形的変化にすると、ΔKfを増加させ、その分だけ制御周波数帯Δfxを拡大することができる。したがって、内圧吸収膜の膜張力を非線形的に変化させることができれば、制御周波数帯Δfxを拡大することができる。
また、オリフィス長可変手段によりオリフィス長を長短に切り替えると、極端な共振周波数の上昇となるため、必要な位相を得ることのできない領域が生じる。すなわち、連続制御切替が困難であることより、位相を必要とする全領域の位相獲得が成しえない。
そこで本願発明は、オリフィス長可変手段と膜張力可変手段を組み合わせて制御周波数帯Δfxを広域化するとともに、高位相を連続的に発生させることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1は、振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡し、この共振オリフィス内に液柱共振を発生させるとともに、この液柱共振の共振周波数を制御する液封防振装置であって、
前記主液室を囲む壁部の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる第1内圧吸収膜を設け、その膜張力を多段階又は連続的に変化させる第1膜張力可変手段と、
前記共振オリフィスの一端に設けられた第1入り口よりも出口側に設けられている第2入り口を開閉することによりオリフィス長さを長短に変化させるオリフィス長可変手段とを備えた液封防振装置の共振制御方法において、
前記第1膜張力可変手段により内圧吸収膜の張力を連続的又は多段階に変化させ、その後、前記オリフィス長可変手段によりオリフィス長を短い方へ切り替え、
前記オリフィス長可変手段によりオリフィス長を短い方へ切り替えるとき、膜張力を一度中立へ戻し、その後再び膜張力を変化させることを特徴とする。
【0014】
請求項2は、振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡し、この共振オリフィス内に液柱共振を発生させるとともに、この液柱共振の共振周波数を制御する液封防振装置であって、
前記主液室を囲む壁部の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる第1内圧吸収膜を設け、その膜張力を多段階又は連続的に変化させる第1膜張力可変手段と、
前記共振オリフィスの一端に設けられた第1入り口よりも出口側に設けられている第2入り口を開閉することによりオリフィス長さを長短に変化させるオリフィス長可変手段とを備え、
前記前記オリフィス長可変手段は、オリフィス長可変バルブを備えるとともに、前記第1膜張力可変手段の第1内圧吸収膜と同様な第2内圧吸収膜の膜張力を多段階又は連続的に変化させる第2膜張力可変手段を備え、この第2内圧吸収膜に前記オリフィス長可変バルブを一体化することにより、膜張力可変手段と前記オリフィス長可変手段を一体化した膜制御手段をなす液封防振装置の共振制御方法において、
前記膜制御手段は、前記第1膜張力可変手段の制御に続いて、オリフィス長可変バルブが前記第2入り口を閉じたままの状態を維持しつつ前記第2内圧吸収膜を一方側へ押して膜張力を変化させ、その後逆方向へ移動させてオリフィス長を切り替えることを特徴とする。
【0021】
【発明の効果】
請求項1によれば、第1膜張力可変手段は、オリフィス長可変手段によりオリフィス長を短い方へ切り替えるとき、膜張力を一度中立へ戻し、その後再び膜張力を変化させるので、オリフィス長切り替え後においてもさらに膜張力を変化させることができる。
【0022】
請求項2によれば、膜制御手段は、第1膜張力可変手段の制御に続いて、オリフィス長可変バルブが第2入り口を閉じたままの状態を維持しつつ第2内圧吸収膜を一方側へ押して膜張力を変化させるので、オリフィス長可変手段側でも膜張力を連続的又は多段階に変化させることができ、その後第2内圧吸収膜を逆方向へ移動させてオリフィス長を切り替えることができる。したがって、同一手段で膜張力の連続的又は多段階変化とオリフィス長の切り替えをおこなうことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。図1及び2は各実施例に共通する液封エンジンマウントに係り、図1はその上面図、図2は図1の2−2線相当断面図である。なお、以下の説明において上下とは、図2における状態を基準とする。
【0024】
図1において、液封エンジンマウント1は、第1の取付部材2,第2の取付部材3及びインシュレータ4を備える。第1の取付部材2は図示しないエンジン等の振動源側へ連結され、第2の取付部材3は同じく図示しない車体等の振動受側へ連結される。
【0025】
図2に示すように、インシュレータ4は、ゴムからなる略円錐状をなす公知の防振ゴムである。但し、ゴム及び他のエラストマー等の適宜弾性材料からなる略円錐状をなす公知の弾性防振部材とすることができ、第1の取付部材2と第2の取付部材3の間を連結一体化する。
【0026】
第1の取付部材2,第2の取付部材3及びインシュレータ4に囲まれた内部に主液室5が形成され、ここに公知の非圧縮性の作動液が封入されている。主液室5は仕切部材6の外周部に形成されたダンピングオリフィス7を介して副液室8と連通されている。ダンピングオリフィス7は10Hz前後の低周波数小振幅の乗り心地に影響する通常走行時の振動を高減衰で吸収する。副液室8はダイアフラム9によって覆われている。
【0027】
仕切部材6は樹脂又は金属製の上部材10、ゴム製の中部材11及び樹脂又は金属製の下部材12を上下方向に重ねて一体化したものであり、それぞれはデイスク状の部材であり、その材料も特に限定されない。ダンピングオリフィス7はこれら3部材の各外周部感に形成されている。図中の7bは出口である。
【0028】
上部材10と中部材11の間にはアイドルオリフィス13が形成されている。アイドルオリフィス13は主液室5と副液室8を連通してアイドル時のエンジン振動周波数で液柱共振を発生して低動バネ化することにより、第1の取付部材2側から第2の取付部材3側への振動伝達を遮断する。アイドルオリフィス13は開閉式である。
【0029】
主液室5の周壁は第2の取付部材3の一部である上円筒部材14とその内側を被覆する筒状弾性壁15で構成されている。筒状弾性壁15はインシュレータ4と連続一体に形成された延長部である。上円筒部材14の一部に開口16が形成され、筒状弾性壁15のうち、この開口16に重なる部分が第1内圧吸収膜17になっている。第1内圧吸収膜17はゴム等の適宜弾性材料からなる弾性膜であり、主液室5の内圧に影響を与えることのできる程度のバネを有する。本実施例では筒状弾性壁15と一体であるが、この部分を別体にしてバネ定数等の異なるものとしてもよい。
【0030】
第1内圧吸収膜17の外側、すなわち第1内圧吸収膜17を挟んで主液室5の反対側には、第1膜張力可変手段18が設けられ、上円筒部材14下端のフランジ19上に支持されている。第1膜張力可変手段18は、第1内圧吸収膜17へ押し当てられる押し当て部材20と、これに一体化されたアーマチュア21を軸方向へ移動自在にするソレノイド22を備える。アーマチュア21は磁性体からなり、ソレノイド22が発生する磁力線の方向により第1内圧吸収膜17に対して進退し、そのストローク量はソレノイド22が発生する磁界の強弱に比例する。
【0031】
ソレノイド22に対する駆動電流の制御は制御装置23によって行われ、エンジンの回転数を検出する回転センサ24の検出信号に基づいて制御される。なお、制御の基礎となるセンサ信号は回転数に限らず、第1内圧吸収膜17の状態を示す変位センサや主液室5内における内圧を検知する内圧センサによるセンサ検知量であっても良い。また、エンジンの運転状況を示す他の適宜のセンサ検知量や、直接入力振動に関するセンサ検知量でもよい。駆動手段はソレノイド22に限定されず、エンジンの吸気負圧等公知の種々な手段が可能である。
【0032】
押し当て部材20の第1内圧吸収膜17へ押し当てられる押し当て面25は階段状に変化している。これについての詳細は後述するが、押し当て部材20のストローク量に応じて第1内圧吸収膜17における押し当て部材20によって押し当てられる押し当て面積が変化するので、第1内圧吸収膜17の膜張力が変化する。その結果、第1内圧吸収膜17の膜張力が大きくなると、防振装置としての内部圧力の変化により発生するバネである拡張バネが大きくなる。第1内圧吸収膜17の膜張力調節は多段階または連続的のいずれにも制御できる。
【0033】
アイドルオリフィス13の副液室8側の出口26はダイアフラム9の中央部に形成されたアイドル開閉バルブ27で開閉自在であり、アイドル周波数域でのみ開き、それ以外では閉じている。アイドル開閉バルブ27は伸縮部材30の頭部31が押し当てられ、伸縮部材30の伸縮によって開閉される。
【0034】
伸縮部材30の頭部31と底部32との間は中空の負圧室33が形成される。負圧室33は通気ノズル34を介して吸気負圧と大気とを接続切替えするようになっている。吸気負圧が適用されると、リターンバネ35に抗して図の下方へ移動してアイドル開閉バルブ27が出口26を開き、吸気負圧を遮断して大気開放すると、リターンバネ35により図の上方に移動して出口26を閉じる。
【0035】
主液室5の側面で第1膜張力可変手段18と反対側には膜制御手段40が設けられ、フランジ19上もしくは別の部材に支持されている。膜制御手段40は、アーマチュア41、ソレノイド42、押し当て部材43、オリフィス可変長バルブ44及び内圧吸収膜47を備えている。オリフィス可変長バルブ44はダンピングオリフィス7の中間部に形成された第2入り口7cを開閉する。第2入り口7cは上部材10に形成されて主液室5へ連通している。
【0036】
ソレノイド42に対する駆動電流の制御も第1膜張力可変手段18と同じ制御装置23によって行われ、第1膜張力可変手段18と同様にエンジンの回転数を検出する回転センサ24の検出信号に基づいて制御される。なお、制御の基礎となるセンサ信号は、回転数に限らず、第2内圧吸収膜47の状態を示す変位センサや主液室5内における内圧を検知する内圧センサによるセンサ検知量であっても良い。また、エンジンの運転状況を示す他の適宜のセンサ検知量や、直接入力振動に関するセンサ検知量でもよい。駆動手段はソレノイド42に限定されず、進退動できる公知の種々な手段が可能である。
【0037】
図3は共振オリフィス構造を図2の上方から見た状態(上面視)で示す図であり、ダンピングオリフィス7は仕切部材6において略S字状に蛇行して形成され、その一端は第1入り口7aをなし、他端は出口7bをなす。また第1入り口7aから出口7bの間の途中に第2入り口7cが設けられ、ここにオリフィス可変長バルブ44が開閉自在に設けられる。アイドルオリフィス13は仕切部材6の中央部にダンピングオリフィス7と別に形成されている。
【0038】
第1膜張力可変手段18を構成する押し当て部材20の第1内圧吸収膜17へ押し当てられる押し当て面25は階段状に変化している。押し当て部材20のストローク量に応じて第1内圧吸収膜17における押し当て部材20によって押し当てられる押し当て面積が変化するので、第1内圧吸収膜17の膜張力が非線形的に変化する。その結果、第1内圧吸収膜17の膜張力が大きくなり、防振装置の拡張バネが大きくなる。
【0039】
このように膜張力が多段階に変化すると、この膜張力に応じて拡張バネKfが多段階に増大する。したがって、押し当て部材20の押し込み変位量(ストローク量)を制御すれば、非線形性のKf変化を得ることができる。すなわち膜張力を非線形化することでΔKfを大きくし、Δfxを拡大することができる。
【0040】
なお、このような膜張力変化は、必ずしも押し当て面25が階段状に変化することを要するものではなく、例えば、略砲弾状のような連続曲面であっても良い。要は第1内圧吸収膜17の押さえ面積が連続的又は段階的に変化できるものであれば足りる。また、第1内圧吸収膜17の膜張力調節は多段階または連続的のいずれにも制御できる。特に、押し当て面25が連続曲面の場合は、ストローク量を段階的に変化させれば、膜張力も段階的に変化し、連続的に変化させれば膜張力は無段階に連続的変化をする。
【0041】
膜制御手段40は主液室5の中心を挟んで反対側面に設けられ、膜張力可変手段とオリフィス長可変手段を兼ねたものであり、両手段は膜制御手段40として一体化されている。なおこの膜張力可変手段は第1膜張力可変手段18に対して第2膜張力可変手段をなす。膜制御手段40のオリフィス可変長バルブ44は内圧吸収膜47と一体になっている。第2内圧吸収膜47は第1内圧吸収膜17と同様に形成されている。但し、オリフィス可変長バルブ44は第2内圧吸収膜47と連続する同一材料でも別材料でも良い。
【0042】
膜制御手段40は第2内圧吸収膜47へ押し当てられる押し当て部材43と、これに一体化されたアーマチュア41を軸方向へ移動自在にするソレノイド42を備える。アーマチュア41は磁性体からなり、ソレノイド42が発生する磁力線の方向により第2内圧吸収膜47に対して進退し、そのストローク量はソレノイド42が発生する磁界の強弱に比例する。これらのアーマチュア41、ソレノイド42及び押し当て部材43も第1膜張力可変手段18と同様構造であり、動作方向についても同様とする。
【0043】
図4は第1膜張力可変手段18及び膜制御手段40の拡大断面図である。第1膜張力可変手段18は、通常時(非制御状態)において、第1内圧吸収膜17が中立位置(N)にて自由振動することにより入力振動による内圧変化を吸収する。大入力時には押し当て部材20と第1内圧吸収膜17の干渉により、変位規制される。また、押し当て部材20を前進方向(+方向)へ移動させて第1内圧吸収膜17へ押し当てると、第1内圧吸収膜17の膜張力が段階的に上昇し、共振周波数も膜張力変化に応じて段階的に上昇する。
【0044】
膜制御手段40においては、オリフィス可変長バルブ44が上部材10の肩部に形成された段部10aの上を摺動自在に進退動するようになっている。この例では、第2入り口7cの外周側が高くなっており、オリフィス可変長バルブ44の第2入り口7cに臨む下面は外周側が上方へ向かうテーパー面44aをなし、第2入り口7cの外周部7dが係合する突起44bが形成されている。第2入り口7cを閉じているときは、オリフィス可変長バルブ44が後退しても突起44bが外周部7dに係合して開かない。
【0045】
しかし、より大きな力でオリフィス可変長バルブ44を後退すると、突起44bが外周部7dの上を乗り越えて外周側へ移動する。このとき、突起44bによりオリフィス可変長バルブ44は自由端側を上方へ傾けるよう首振りをするので、第2入り口7cの開放を迅速化することができる。
【0046】
第2入り口7cを閉じた状態でオリフィス可変長バルブ44を前進させる場合は、閉じたままの状態を維持して段部10a上を移動できる。なお、オリフィス可変長バルブ44の開閉動作は、この例のように上下動するもの、単純に進退動するもの、さらには図3に示す平面内でアーマチュアの進退方向に対して左右に首振り運動する(横方向とする)もの等、いずれも可能である。
【0047】
膜制御手段40は、通常時(非制御状態)において、オリフィス長可変バルブ44が中立位置(N)に存在し、第2内圧吸収膜47は自由振動する。但し、大入力時には押し当て部材20と第1内圧吸収膜17の干渉により、変位規制される。
【0048】
中立位置から第1段階として、ソレノイド42により押し当て部材43を前進方向(+方向)へ移動させると、第2内圧吸収膜47の膜張力が段階的に上昇し、共振周波数が徐々に上昇する。このとき第2入り口7cは閉じられたままである。
【0049】
続いて、第2段階としてソレノイド42により押し当て部材43を後退方向(−方向)へ引き、オリフィス長可変バルブ44を後退させて第2入り口7cを開口させる。これによってダンピングオリフィス7は第2入り口7cから出口7bへ通じて短くなり、共振周波数はさらに上昇する。なお、この切替状態では第2内圧吸収膜47が外方へ弾性変形して引張り方向へ移動しているため、膜張力の段階的制御ができない。
【0050】
次に、本実施例の作用を説明する。図5は共振周波数の変化とそれに伴う位相変化の関係を示すグラフである。図5は横軸に共振周波数、縦軸に位相をとり、この共振周波数変化に対応する位相のピークを示したものである。図中の共振周波数は、位相制御区間;f1〜f5、必要とするレベルの高位相(δ1以上)区間;fa〜fbである。共振周波数f1〜f5は制御ポイントに対応し、f1〜f2は膜張力可変手段の制御による変化、f2〜f3は膜制御手段の膜張力制御による変化、f3〜f4は膜制御手段によるオリフィス長切り替え制御による変化、f4〜f5はオリフィス長切り替え状態における膜張力可変手段の同時制御による変化を示す。
【0051】
図6は制御タイミングを示すグラフであり、横軸に共振周波数をとり、この共振周波数変化に対応して、上段に装置全体の位相曲線P及び動バネ曲線Kを示す。下段には共振周波数変化に対応する、第1膜張力可変手段18及び膜制御手段40の各膜張力変化を示す。
図中の共振周波数は、図5と同様であるが、アイドル域;fa〜f3近傍(f3より若干高周波側)、発進域:f3近傍(f3より若干高周波側)〜f5である。
【0052】
まず、初期のアイドルオリフィス13における共振周波数f1をアイドル時主成分の最低周波数に設定しておき、通常走行時には第1膜張力可変手段18及び膜制御手段40をそれぞれ非制御にしておく。このため、第1膜張力可変手段18,膜制御手段40の各第1内圧吸収膜17及び47による液圧吸収のために低バネ化が行われる。
【0053】
アイドル時において、faから回転数上昇に応じて図5の▲1▼で示す制御を行う。すなわち、共振周波数がf1の状態から、第1膜張力可変手段18を(+)方向へ作用させ、f2まで段階的な拡張バネの上昇による共振周波数の向上を行う。このf1〜f2間における共振周波数の変化はΔKfの変化のみによる作用である。
【0054】
第1膜張力可変手段18の制御が(+)方向に一定変位となると、予め取り付けられた変位センサもしくは内圧センサ等にてこれを感知し、f2にて膜制御手段40が(+)方向へ作用を開始し、膜制御手段40側においても段階的な共振周波数の向上を行う。これが図5中の▲2▼の段階である。なお、これらのセンサを用いなくても、エンジン回転数を検出し、これに追従して制御可能であることは前述の通りである。
【0055】
膜制御手段40が(+)方向に一定変位に到達するとこれを感知して、f3にて第1膜張力可変手段18が制御を停止し、押し当て部材20はニュートラル位置へ戻される。
同時に、膜制御手段40では第1膜張力可変手段18の変位の戻りもしくは内圧の低下を感知し、(−)方向への作用を開始し、図5中における▲3▼段階となる。
【0056】
図5中の▲3▼段階になると、第2入り口7cが開口し、共振周波数が上昇してf4になる。この時、共振周波数の極端な変化及び膜制御手段40の(−)方向への張力による内圧変化を感知した第1膜張力可変手段18は、f4にて再び(+)方向へ作用し、第2入り口7c開口状態での段階的な共振周波数変化を行う。このため、膜制御手段40が引っ張り状態で膜張力変化を生じることができない状態にもかかわらず、第1膜張力可変手段18の膜張力制御による相乗効果でさらに高周波数側のf5まで上昇する。
【0057】
エンジン回転数がある一定の回転数f5に達すると、第1膜張力可変手段18及び膜制御手段40が共に制御を停止し、通常走行状態に戻り、第1内圧吸収膜17及び第2内圧吸収膜47による内圧吸収によって再び低バネ化される。
【0058】
このように、アイドル域から発進域を含む極めて広範囲な周波数域において、位相制御区間をf1〜f5と拡大することができる。また高位相(δ1以上)区間をfa〜fbと広域化できる。特に、オリフィス長切替前後の過渡期におけるf3〜f4の設定である切替後の周波数チューニングを行うことにより、連続的に高位相が得られる。
【0059】
したがって、膜張力による共振周波数変化領域を拡大できるため、切替え後の共振周波数をより高く設定できる。このため、制御可能周波数の広域化が可能になる。
また、位相レベルを低下させることなく、制御することができる。
さらに、通常時においては第1内圧吸収膜17及び第2内圧吸収膜47の複数膜によるさらなる低バネ化による有効な振動遮断を実現することができる。
【0060】
同様の手法により、制御部位を3ヵ所以上に増加させることも可能である。図7は第1膜張力可変手段を1つ追加して計2個とした第2実施例に係る図6と同様の図である。この例では、まず第1の膜張力可変手段の一方を制御し、続いてf1aにて他方の第1の膜張力可変手段を制御する。その後、f2で膜制御手段を制御する。但し、この場合のf2は前実施例と比べてよりf3に近くなっている。
【0061】
このようにすると、膜制御手段による膜張力変化を少なくするとともに、膜制御手段40によるオリフィス長切り替え直後のf3aにて第1の膜張力可変手段による膜張力制御を再開できるので、前実施例でオリフィス長切り替え時にf3とf4の間に生じていた位相の谷間V1がより小さなV2と変化し、より広範囲の周波数域にてより高位相の獲得が可能になる。しかも、この位相の谷間に対応して前実施例で生じていた動バネのピークTが殆ど解消されるから、全体がより低動バネになる。
【0062】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、押し当て部材の駆動手段としては種々なものが可能であるが、膜張力可変手段にはエンジンの吸気負圧による吸引力を用いることもできる。この場合には負圧供給源となる吸気通路側から瞬時に供給される。また、本願発明はエンジンマウント以外の適当な液封防振装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る液封エンジンマウントの上面視図
【図2】図1の2−2線に沿う断面図
【図3】第1実施例に係る膜張力制御構造の概略上面視図
【図4】同上断面図
【図5】共振周波数変化と位相ピークの変化を示すグラフ
【図6】制御タイミング及び特性変化を示すグラフ
【図7】第2実施例に係る図6と同様のグラフ
【符号の説明】
1:液封エンジンマウント、2:第1取付金具、3:第2取付金具、4:インシュレータ、5:主液室、6:仕切部材、7:ダンピングオリフィス、7a:第1入り口、7b:出口、7c:第2入り口、8:副液室、9:ダイアフラム、13:アイドルオリフィス、17:第1内圧吸収膜、18:第1膜張力可変手段、20:押し当て部材、22:ソレノイド、25:押し当て面 、40:膜制御手段、42:ソレノイド、43:押し当て部材、44:オリフィス長可変バルブ、47:第2内圧吸収膜
Claims (2)
- 振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡し、この共振オリフィス内に液柱共振を発生させるとともに、この液柱共振の共振周波数を制御する液封防振装置であって、
前記主液室を囲む壁部の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる第1内圧吸収膜を設け、その膜張力を多段階又は連続的に変化させる第1膜張力可変手段と、
前記共振オリフィスの一端に設けられた第1入り口よりも出口側に設けられている第2入り口を開閉することによりオリフィス長さを長短に変化させるオリフィス長可変手段とを備えた液封防振装置の共振制御方法において、
前記第1膜張力可変手段により内圧吸収膜の張力を連続的又は多段階に変化させ、その後、前記オリフィス長可変手段によりオリフィス長を短い方へ切り替え、
前記第1膜張力可変手段は、前記オリフィス長可変手段によりオリフィス長を短い方へ切り替えるとき、膜張力を一度中立へ戻し、その後再び膜張力を変化させることを特徴とする液封防振装置の共振制御方法。 - 振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡し、この共振オリフィス内に液柱共振を発生させるとともに、この液柱共振の共振周波数を制御する液封防振装置であって、
前記主液室を囲む壁部の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる第1内圧吸収膜を設け、その膜張力を多段階又は連続的に変化させる第1膜張力可変手段と、
前記共振オリフィスの一端に設けられた第1入り口よりも出口側に設けられている第2入り口を開閉することによりオリフィス長さを長短に変化させるオリフィス長可変手段とを備え、
前記前記オリフィス長可変手段は、オリフィス長可変バルブを備えるとともに、前記第1膜張力可変手段の第1内圧吸収膜と同様な第2内圧吸収膜の膜張力を多段階又は連続的に変化させる第2膜張力可変手段を備え、この第2内圧吸収膜に前記オリフィス長可変バルブを一体化することにより、膜張力可変手段と前記オリフィス長可変手段を一体化した膜制御手段をなす液封防振装置の共振制御方法において、
前記膜制御手段は、前記第1膜張力可変手段の制御に続いて、オリフィス長可変バルブが前記第2入り口を閉じたままの状態を維持しつつ前記第2内圧吸収膜を一方側へ押して膜張力を変化させ、その後逆方向へ移動させてオリフィス長を切り替えることを特徴とする液封防振装置の共振制御方法。
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