JP4420619B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、共振オリフィスを備えその液柱共振によって防振するようにした、車両のエンジンマウントに使用される液封防振装置に係り、特に共振周波数を広域化できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画してオリフィス通路を介して連絡するとともに、主液室を囲む壁部の一部に内圧吸収膜を設け、この内圧吸収膜の膜張力を変化させるようにした内圧吸収型液封エンジンマウントは公知である。この形式のエンジンマウントにおいては、内圧吸収膜を柔にすれば、内圧変化を吸収して低動バネとし、剛にすればエンジンマウントの内部圧力の変化により発生するバネである拡張バネを高めてオリフィス通路に対する流量を増大させ、これによって共振効率を大きくして振動伝達を少なくするようになっている。
【0003】
また、オリフィス長を可変にしたオリフィス長可変手段を備えたものも公知である。このものは、図17及び図18に略図を示すように、内圧吸収膜aと一体にしたオリフィス長可変バルブbを備え、内圧吸収膜aとオリフィス長可変バルブbを一緒に膜制御手段cにて動かすようになっている。このオリフィス長可変バルブbは長い共振オリフィスdの中間部に形成された第2入り口eを開閉することにより長さを変化するものである。共振オリフィスdは一端に第1入り口f、他端に出口gを有する(図18)。
【0004】
図17に示すように、オリフィス長可変バルブbは先端側が上下動し、オリフィス長可変バルブbが引張り方向(A方向)へ移動することにより、先端側が上方向(B方向)へ持ち上がり、第2入り口eを開く。
したがって、閉塞時に第1入り口f〜出口gの長さL1だった共振オリフィスdが、第2入り口e〜出口gの長さL2へと変化する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図17及び18において、オリフィス長をL1とL2に設定することにより共振周波数は自由に変化できる。すなわち、次の関係がある。
共振fn∝(オリフィス長)−1/2
また、この時、内圧吸収膜aには引張り方向の張力が作用するため、通常時より拡張バネは上昇しやすく、共振効率は上昇する。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−14335号公報
【特許文献2】
特開平8−320048号公報
【特許文献3】
特開平10−281214号公報
【特許文献4】
特開2001−18937号公報
【特許文献5】
特開2001−280405号公報
【特許文献6】
特開2002−250391号公報
【特許文献7】
特開平7−305740号公報
【特許文献8】
特開2002−70930号公報
【特許文献9】
特開2002−70931号公報
【特許文献10】
特開2002−168284号公報
【特許文献11】
特開2002−250392号公報
【特許文献12】
特開2003−4090号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図19は、上記従来例における共振周波数と位相ピークの関係を示す。この図に示すように、Aの非制御状態(長いオリフィス)に対して、Bの制御状態(短いオリフィス長)にすると、位相及び共振周波数ともに急激に増大する。しかし、極端な共振周波数の上昇となるため、Cで示す部分の位相をカバーできない。すなわち、連続制御切替が困難であることより、位相を必要とする全領域の位相獲得が成しえない。
【0008】
また、内圧吸収膜aを設けることによって、非制御時には、内圧吸収膜aが自由に弾性変形して内圧変動を吸収し、Kfを低下させることにより低動バネとする。一方、制御時では、膜制御手段cによって内圧吸収膜aの張力を発生させ、Kfを向上させ、オリフィス共振を高効率化させる。このとき、共振周波数の変化ΔfxとKf変化ΔKfの間には、Δfx∝(ΔKf)1/2
なる関係がある。
【0009】
このように、膜張力制御を活用した場合の共振周波数の変化は、Kfの変化(ΔKf)に対して発生するが、内圧吸収膜は非制御時にダンピング性能を維持する必要性から、ΔKfを極端に変化できず、制御周波数帯Δfxは非常に限られた範囲となってしまう。したがって、仮に、アイドル状態から発進時の領域において所定以上の位相が必要な場合、このような位相の得られる制御周波数帯Δfxが限られた狭い範囲ものとなり、他の領域では有効な遮断効果が得られないことになる。したがって制御周波数帯Δfxの広域化が望まれる。
【0010】
このために、内圧吸収膜の膜張力変化を入力振動の大きさに対して非線形的に変化させることが考えられる。膜張力が非線形的変化にすると、ΔKfを増加させ、その分だけ制御周波数帯Δfxを拡大することができる。したがって、内圧吸収膜の膜張力を非線形的に変化させることができれば、制御周波数帯Δfxを拡大することができる。そこで本願発明は、オリフィス長可変手段と膜張力可変手段を組み合わせて制御周波数帯Δfxを広域化するとともに、高位相を連続的に発生させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る液封防振装置は、振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡し、この共振オリフィスの長さを変化させるオリフィス長可変手段を備えるとともに、
前記主液室を囲む壁部の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる内圧吸収膜を設けた液封防振装置において、
前記オリフィス長可変手段は、常開の第1入り口と開閉式の第2入り口とを有する前記共振オリフィスと、この第2入り口を開閉するためのオリフィス長可変バルブを備え、
さらに、前記内圧吸収膜に対して押し当てられる押し当て部材を備え、この押し当て部材の進退ストローク量により前記内圧吸収膜の張力を連続的又は多段階に変化させる膜張力可変手段を設け、この膜張力可変手段の前記内圧吸収膜に前記オリフィス長可変手段の前記オリフィス長可変バルブを一体化するとともに、
前記押し当て部材は内圧吸収膜に押し当てられる押し当て面を備え、この押し当て面は押し当て部材の進退ストローク量に応じて内圧吸収膜に押し当てられる押し当て面積が変化し、
さらに、前記内圧吸収膜は、中立位置を挟んで膜張力を増大させる位置と、前記第2入り口を開く位置へ動かされて制御される、さらに、前記内圧吸収膜は、中立位置を挟んで膜張力を増大させる位置と、前記第2入り口を開く位置へ動かされて制御されることを特徴とする。
【0012】
請求項2によれば、上記請求項1において、前記オリフィス長可変バルブを前後・左右・上下のいずれかに動かすことを特徴とする。
【0014】
請求項3は上記請求項1において、前記押し当て部材の押し当て面形状が階段状に変化していることを特徴とする。
【0015】
請求項4は上記請求項1において、前記内圧吸収膜の断面形状が不規則に変化していることを特徴とする。
【0016】
請求項5は上記請求項4において、前記内圧吸収膜に変形規制用ストッパを設けて断面形状を不規則にしたことを特徴とする。
【0017】
請求項6は上記請求項4において、前記内圧吸収膜の中心部に位置決め部を設けて断面形状を不規則にしたことを特徴とする。
【0018】
請求項7は上記請求項1〜6のいずれかにおいて、前記共振オリフィスがアイドルオリフィスであり、その共振周波数の制御に使用することを特徴とする。
【0019】
請求項8は上記請求項1〜6のいずれかにおいて、前記共振オリフィスがダンピングオリフィスであり、その液柱共振の周波数依存性をなくすために使用することを特徴とする。
【0020】
請求項9は上記請求項1〜8のいずれかにおいて、前記押し当て部材の駆動手段がソレノイド又は吸気負圧であることを特徴とする。
【0021】
【発明の効果】
請求項1によれば、押し当て部材の進退ストローク量により前記内圧吸収膜の張力を連続的又は多段階に変化させる膜張力可変手段を設け、この膜張力可変手段とオリフィス長可変手段を一体化したので、両手段を連係させることができ、オリフィス長可変手段による大きな共振周波数変化と高位相の獲得を可能とし、両切り替え点の中間領域を膜張力可変手段により連続的又は多段階に制御して共振周波数及び位相を変化させることができる。したがって、広範な周波数域で共振周波数を制御でき、かつ高位相を獲得できる。しかも膜張力可変手段とオリフィス長可変手段を一体化した膜制御手段とすることができるので、従来の能動型液封防振装置に比べて、より簡単な構造でかつ安価に製造することができる。
そのうえ、内圧吸収膜が中立位置を挟んで膜張力を増大させる位置へ移動させて膜張力を変化させ、第2入り口を開く位置へ動かすことによりオリフィス長を変化させることができる。内圧吸収膜に対して弾性変形方向を変化させることで簡単に実現させることができる。
【0022】
請求項2によれば、内圧吸収膜を動作させてオリフィス長可変バルブを前後・左右・上下のいずれかに動かすことによりオリフィス長を可変制御できる。
【0024】
請求項3によれば、押し当て部材の押し当て面形状を階段状に変化させたので、ストローク量によって押さえ面積を容易に変化させることができる。
【0025】
請求項4によれば、内圧吸収膜の断面形状を不規則形状にすることにより、押し当て部材のストローク量に対して膜張力を非線形的に変化させることができる。
【0026】
請求項5によれば、内圧吸収膜に変形規制用ストッパを設けたので、内圧吸収膜の弾性変形が大きくなるにつれて変形規制用ストッパの突っ張りが大きくなって内圧吸収膜の弾性変形をしにくくさせ、拡張バネを非線形的に増大させることができる。
【0027】
請求項6によれば、内圧吸収膜の中心部に位置決め部を設けたので、押し当て部材のストローク時における位置ズレを防止できる。
【0028】
請求項7によれば、アイドリング時に内圧吸収膜の膜張力を制御することにより、共振周波数を広域化するととももに、高位相を獲得できるので、防振しにくいベクトル成分の振動を防振するベクトル制御が可能になり、車体側の振動を効果的に抑制できる。
【0029】
請求項8によれば、ダンピングオリフィスによる液柱共振発生時に内圧吸収膜の膜張力を制御することにより、共振周波数の変化を制御すると共振により発生する位相を高位相にすることができるので、本来、液封防振装置の変形量及び変形スピードによって、共振周波数が変化する周波数依存性を有するところ、高位相によって共振周波数を一定に維持することが可能になり、周波数依存性をなくすことができる。
【0030】
請求項9によれば、押し当て部材の駆動手段をソレノイド又は吸気負圧とすることにより、容易に駆動させることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。図1及び2は各実施例に共通する液封エンジンマウントに係り、図1はその上面図、図2は図1の2−2線相当断面図である。なお、以下の説明において上下とは、図2における状態を基準とする。
【0032】
図1において、液封エンジンマウント1は、第1の取付部材2,第2の取付部材3及びインシュレータ4を備える。第1の取付部材2は図示しないエンジン等の振動源側へ連結され、第2の取付部材3は同じく図示しない車体等の振動受側へ連結される。
【0033】
図2に示すように、インシュレータ4は、ゴムからなる略円錐状をなす公知の防振ゴムである。但し、ゴム及び他のエラストマー等の適宜弾性材料からなる略円錐状をなす公知の弾性防振部材とすることができ、第1の取付部材2と第2の取付部材3の間を連結一体化する。
【0034】
第1の取付部材2,第2の取付部材3及びインシュレータ4に囲まれた内部に主液室5が形成され、ここに公知の非圧縮性の作動液が封入されている。主液室5は仕切部材6の外周部に形成されたダンピングオリフィス7を介して副液室8と連通されている。ダンピングオリフィス7は10Hz前後の低周波数小振幅の乗り心地に影響する通常走行時の振動を高減衰で吸収する。副液室8はダイアフラム9によって覆われている。
【0035】
仕切部材6は樹脂又は金属製の上部材10、ゴム製の中部材11及び樹脂又は金属製の下部材12を上下方向に重ねて一体化したものであり、それぞれはデイスク状の部材であり、その材料も特に限定されない。ダンピングオリフィス7はこれら3部材の各外周部感に形成されている。図中の7bは出口である。
【0036】
ダンピングオリフィス7はその中間部が上部材10に形成された第2入り口7cにて主液室5へ連通し、この主液室5をオリフィス可変長バルブ13で開閉自在になっている。オリフィス可変長バルブ13は内圧吸収膜17と一体になっている。但し、オリフィス可変長バルブ13は内圧吸収膜17と連続する同一材料でも別材料でも良い。
【0037】
さらに、膜制御手段18を後退させると、すなわち押し当て部材20を後退させて内圧吸収膜17を外方へ弾性変形させると、オリフィス可変長バルブ13が後退して、第2入り口7cを開き、ダンピングオリフィス7は第2入り口7cから出口7bへ通じて短い通路に切り替る。
【0038】
主液室5の周壁は第2の取付部材3の一部である上円筒部材14とその内側を被覆する筒状弾性壁15で構成されている。筒状弾性壁15はインシュレータ4と連続一体に形成された延長部である。上円筒部材14の一部に開口16が形成され、筒状弾性壁15のうち、この開口16に重なる部分が内圧吸収膜17になっている。内圧吸収膜17はゴム等の適宜弾性材料からなる弾性膜であり、主液室5の内圧に影響を与えることのできる程度のバネを有する。本実施例では筒状弾性壁15と一体であるが、この部分を別体にしてバネ定数等の異なるものとしてもよい。
【0039】
内圧吸収膜17の外側、すなわち内圧吸収膜17を挟んで主液室5の反対側には、膜制御手段18が設けられ、上円筒部材14下端のフランジ19上もしくは別の部材に支持されている。膜制御手段18は、膜張力可変手段とオリフィス長可変手段を兼ねたものであり、両手段は膜制御手段18として一体化されている。膜制御手段18は内圧吸収膜17へ押し当てられる押し当て部材20と、これに一体化されたアーマチュア21を軸方向へ移動自在にするソレノイド22を備える。アーマチュア21は磁性体からなり、ソレノイド22が発生する磁力線の方向により内圧吸収膜17に対して進退し、そのストローク量はソレノイド22が発生する磁界の強弱に比例する。
【0040】
ソレノイド22に対する駆動電流の制御は制御装置23によって行われ、エンジンの回転数を検出する回転センサ24の検出信号に基づいて制御される。なお、制御の基礎となるセンサ信号は、回転数に限らず、エンジンの運転状況を示す他の適宜のセンサ検知量や、直接入力振動に関するセンサ検知量でもよい。また、駆動手段はソレノイド22に限定されず、エンジンの吸気負圧等公知の種々な手段が可能である。
【0041】
上部材10と中部材11の間にはアイドルオリフィス26が形成されている。アイドルオリフィス26は主液室5と副液室8を連通してアイドル時のエンジン振動周波数で液柱共振を発生して低動バネ化することにより、第1の取付部材2側から第2の取付部材3側への振動伝達を遮断する。アイドルオリフィス26は開閉式である。
【0042】
アイドルオリフィス26の副液室8側の出口26aはダイアフラム9の中央部に形成されたアイドル開閉バルブ27で開閉自在であり、アイドル周波数域でのみ開き、それ以外では閉じている。アイドル開閉バルブ27は伸縮部材30の頭部31が押し当てられ、伸縮部材30の伸縮によって開閉される。
【0043】
伸縮部材30の頭部31と底部32との間は中空の負圧室33が形成される。負圧室33は通気ノズル34を介して吸気負圧と大気とを接続切替えするようになっている。吸気負圧が適用されると、リターンバネ35に抗して図の下方へ移動してアイドル開閉バルブ27が出口26aを開き、吸気負圧を遮断して大気開放すると、リターンバネ35により図の上方に移動して出口26aを閉じる。
【0044】
図3は共振オリフィス構造を図2の上方から見た状態(上面視)で示す図であり、ダンピングオリフィス7は仕切部材6において略S字状に蛇行して形成され、その一端は第1入り口7aをなし、他端は出口7bをなす。また、第1入り口7aから出口7bまでの間の途中に第2入り口7cが設けられ、ここにオリフィス可変長バルブ13が開閉自在に設けられる。アイドルオリフィス26は仕切部材6の中央部にダンピングオリフィス7と別に形成されている。
【0045】
図4は膜制御手段18の拡大断面図であり、オリフィス可変長バルブ13は上部材10の肩部に形成された段部10aの上を摺動自在に進退動するようになっている。
この例では、第2入り口7cの外周側が高くなっており、オリフィス可変長バルブ13の第2入り口7cに臨む下面は外周側が上方へ向かうテーパー面13aをなし、第2入り口7cの外周部7dが係合する突起13bが形成されている。第2入り口7cを閉じているときは、オリフィス可変長バルブ13が後退しても突起13bが外周部7dに係合して開かない。
【0046】
しかし、より大きな力でオリフィス可変長バルブ13を後退すると、突起13bが外周部7dの上を乗り越えて外周側へ移動する。このとき、突起13bによりオリフィス可変長バルブ13は自由端側を上方へ傾けるよう首振りをするので、第2入り口7cの開放を迅速化することができる。なお、第2入り口7cを閉じた状態でオリフィス可変長バルブ13を前進させる場合は、閉じたままの状態を維持して段部10a上を移動できる。
【0047】
次に、図5〜図7により、膜張力制御における第1実施例を説明する。押し当て部材20の内圧吸収膜17へ押し当てられる押し当て面25は階段状に変化している。押し当て部材20のストローク量に応じて内圧吸収膜17における押し当て部材20によって押し当てられる押し当て面積が変化するので、内圧吸収膜17の膜張力が変化する。その結果、内圧吸収膜17の膜張力が大きくなると、防振装置における内部圧力の変化により発生するバネである拡張バネが大きくなる。内圧吸収膜17の膜張力調節は多段階または連続的のいずれにも制御できる。
【0048】
押し当て面25は階段状をなし、内圧吸収膜17との間に、先端部(頂上部)25aは初期クリアランスd0をなし、次段25bとはd1、その次の段25cとはd2と変化し、最下段25dとはd3をなす。そこでソレノイド22により押し当て部材20を押し出すと、図6のA〜Cに示すように、d1〜d3の押し込み変位量に伴い、内圧吸収膜17が押さえられる押さえ面積はS1〜S3と変化する。
【0049】
図7は上記押し当て部材20のストローク量変化に伴う内圧吸収膜17に与えられる影響を示すグラフであり、押し当て部材20の押し込み変位量の変化に応じて実線で示すように、押さえ面積は階段状に増大し、その結果、内圧吸収膜17の自由に弾性変形できる面積が減少し、膜張力は点線のように全体として右肩上がりの折れ線状をなして多段階に変化する。このとき、各押し込み変位量に対応する膜張力の折れ線部の傾きはθ1〜θ3と多段階に増大変化し、θ1<θ2<θ3と変化する。
【0050】
このように膜張力が多段階に変化すると、この膜張力に応じて拡張バネが多段階に増大する。したがって、押し込み変位量をd1〜d3と制御すれば、非線形性のKf変化を得ることができる。すなわち膜張力を非線形化することでΔKfを大きくし、Δfxを拡大することができる。
【0051】
次に作用を説明する。図4において、通常時(非作動状態)は中立位置(N)にオリフィス長可変バルブ13が存在し、内圧吸収膜17は自由振動する。但し、大入力時には押し当て部材20と内圧吸収膜17の干渉により、変位規制される。
中立位置から第1段階として、ソレノイド22により押し当て部材20を(+)方向へ移動させると、後述する理由で内圧吸収膜17の膜張力が段階的に上昇し、共振周波数が徐々に上昇する
【0052】
続いて、第2段階としてソレノイド22により押し当て部材20を(−)方向へ引き、オリフィス長可変バルブ13を後退させて第2入り口7cを開口させる。これによってダンピングオリフィス7が短くなり、共振周波数はさらに上昇する。なお、この切替状態では内圧吸収膜17が外方へ弾性変形して引張り方向へ移動しているため、膜張力の段階的制御ができない
【0053】
図8は、この制御における位相変化を示し、横軸の共振周波数fnがf1〜f2の間は第1段階の膜張力制御であり、共振周波数とともに位相も増大する。その後のf2〜f3は第2段階のオリフィス長切替状態であり、この段階では、最も高い共振周波数f3となり、かつ位相も最高になる。
したがって、共振周波数の変化域はf1〜f3と広域化し、かつ位相も高位相を確保できることになる。グラフ中のδ1は必要レベルであり、f1〜f3はこのレベルを満たす。
【0054】
図9〜図11はオリフィス可変長バルブ13のバリエーションである。図9は第2実施例であり、オリフィス可変長バルブ13には自由端側に穴13cが形成されており、通常時のAでは、第2入り口7cとずれているため、これを閉じた状態にあるが、Bに示す制御時にはオリフィス可変長バルブ13が後退して穴13cが第2入り口7c上に来るため、第2入り口7cを開く。このようにすると、オリフィス可変長バルブ13の上下動が伴わないだけ、動作がスムーズになる。
【0055】
図10は第3実施例であり、押し当て部材20側が進退動すると、オリフィス可変長バルブ13は回動して第2入り口7cを開く。すなわち拡大部に示すように、オリフィス可変長バルブ13は通常時に第2入り口7cを覆うように筒状弾性壁15から突出して一体に形成されている。また、首部13dで回動自在であり、押し当て部材20から主液室の中心側へ突出する押し当て部13cの先端側が当接している。
【0056】
但し、この部分はオリフィス可変長バルブ13と連続一体であっても、または分離したもの相互を当接させた状態でもよい。穴13cを前進させると、オリフィス可変長バルブ13は首部13dを支点として回動し、第2入り口7cを開く。この動作方向を横方向というものとする。このようにすると、押し当て部材20を押し込むことによりオリフィス可変長バルブ13を横方向へスライドさせるので、押し当て部材20のストローク量をあまり大きくしないで済むので、オリフィス可変長バルブ13の開閉制御を有利にできる。
【0057】
図11はこの際のオリフィス可変長バルブ13の移動を示す断面図であり、オリフィス可変長バルブ13は上部材10の上面に形成された斜面10b上を摺動する。このようにするとオリフィス可変長バルブ13が斜面10bへ屈曲した首部13dにおける復元弾性により密着するので、打音の発生を防止できる。
なお、オリフィス可変長バルブ13の開閉動作は、前後や横方向に限らず、上下方向も可能である。
【0058】
図12〜図15は第4実施例であり、図12に示すように、この実施例では押し当て部材20は略砲弾状をなし、押し当て面25は連続する略流線形である。この押し当て部材20を連続的に内圧吸収膜17へ向かって押し出すと、図13のA〜Cに示すように、押し込み量xに応じて押し当て部材20における内圧吸収膜17を押さえ部分の断面積が増大変化する。このため、押し当て部材20の押さえ面積も対応して増大する。
【0059】
図14は、図7に対応して、上記押し当て部材20のストローク量変化に伴う内圧吸収膜17に与えられる影響を示すグラフであり、押し当て部材20の押し込み変位量の変化に応じて実線で示すように、押さえ面積は右上がりの直線状に増大し、その結果、内圧吸収膜17の自由に弾性変形できる面積が減少し、膜張力は点線のように全体として右肩上がりの連続曲線状をなして変化する。したがって、無段階的かつ連続的に非線形的な変化をすることになる。したがって、このようにすると、より構造を簡素化できる。
【0060】
図15は、第1及び第4実施例における膜張力制御における共振周波数の変化と位相の関係を示し、fa、fbは要求される基準位相δ1となる周波数、f1はフリー状態における共振周波数、f2は膜張力のみを変化させる場合における制御可能な最大の共振周波数、f3は押さえ面積を変化させた場合における制御可能な最大の共振周波数である。
この図に明らかなように、膜張力だけを変化させる場合のΔf(1−2)と、押さえ面積を変化させる場合のΔf(1−3)は、Δf(1−2)<Δf(1−3)であり、それだけΔfを広域化できることになる。なお、点線は共振周波数が一つだけの従来の一例である。
【0061】
そこで、ダンピング周波数域において、このように拡張バネを増大させると、周波数依存性をなくすことができる。すなわちダンピング周波数域において、減衰力が変化すると共振周波数が変化するという周波数依存性が知られているが、位相を増大させることにより、共振周波数の変化を阻止し、共振周波数を一定にすることができる。
【0062】
また、アイドリング周波数域においては、車体側の曲げ振動の抑制をするためにベクトル制御が必要になるが、共振周波数が広域化し、共振周波数が高くなるにつれて位相も高くなるから、ベクトル制御が可能になり、車体の曲げ振動を効果的に抑制することができる。
【0063】
図16は内圧吸収膜17の外部変形規制に関する第5実施例であり、内圧吸収膜17と一体に形成され、外周方向へ斜めに開くリング状の脚部をなすストッパ17aを設け、その先端を押し当て部材20のストローク通路28に押し当てるようにしてある。このようにすると、内圧吸収膜17が押し当て部材20側へ湾曲して弾性変形するとき、弾性変形量が大きくなるほどストッパ17aがストローク通路28へ強く押し当てられて突っ張るので、内圧吸収膜17を変形しにくくして拡張バネを増大させることができ、内圧増大を内圧吸収膜17へ入力を分散化させることもできる。しかもストッパ17aが常時ストローク通路28へ当接するので、押し当て部材20との干渉音を防ぐ構造にできる。
【0064】
なお、内圧吸収膜17側の断面形状を不規則にすることによって、押し当て部材20のストローク量に応じた拡張バネの変化を実現できる。図16のストッパ17aはこの一具体例である。また、内圧吸収膜17の中央部に柱状の位置決め部17bを一体に突出形成してもよい。この位置決め部17bの突出端を押し当て部材20の頂部25aに設けた位置決め凹部25eへ嵌合させる。このようにすると、押し当て部材20のストロークに伴う位置ズレを防止できるとともに、ストローク量の小さい段階で初期変形部をなすから、やはり不規則断面形状部に相当する。
【0065】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、押し当て部材の駆動手段としては種々なものが可能であるが、エンジンの吸気負圧による吸引力を用いることもできる。この場合には負圧供給源となる吸気通路側から瞬時に供給される。また、本願発明はエンジンマウント以外の適当な液封防振装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る液封エンジンマウントの上面視図
【図2】図1の2−2線に沿う断面図
【図3】第1実施例に係る膜張力制御構造の概略上面視図
【図4】同上断面図
【図5】膜張力制御構造を示す図
【図6】上記膜張力制御の説明図
【図7】押さえ面積と膜張力変化を示すグラフ
【図8】共振周波数変化と位相ピークの変化を示すグラフ
【図9】第2実施例に係る膜張力制御構造の概略断面図
【図10】第3実施例に係る膜張力制御構造の概略上面視図
【図11】第3実施例に係るオリフィス長可変バルブの動作を示す図
【図12】第4実施例に係る図5に対応する図
【図13】第4実施例に係る図6に対応する図
【図14】第4実施例に係る図7に対応する図
【図15】膜張力制御による共振周波数の広域化を示すグラフ
【図16】第5実施例に係る膜張力制御構造を示す図
【図17】従来例における膜制御原理を示す断面図
【図18】同上概略上面視図
【図19】オリフィス長可変制御による共振周波数と位相ピークの関係を示図
【符号の説明】
1:液封エンジンマウント、2:第1取付金具、3:第2取付金具、4:インシュレータ、5:主液室、6:仕切部材、7:ダンピングオリフィス、7a:第1入り口、7b:出口、7c:第2入り口、8:副液室、9:ダイアフラム、13:オリフィス長可変バルブ、17:内圧吸収膜、18:膜制御手段、20:押し当て部材、22:ソレノイド、25:押し当て面 、26:アイドルオリフィス
Claims (9)
- 振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡し、この共振オリフィスの長さを変化させるオリフィス長可変手段を備えるとともに、
前記主液室を囲む壁部の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる内圧吸収膜を設けた液封防振装置において、
前記オリフィス長可変手段は、常開の第1入り口と開閉式の第2入り口とを有する前記共振オリフィスと、この第2入り口を開閉するためのオリフィス長可変バルブを備え、
さらに、前記内圧吸収膜に対して押し当てられる押し当て部材を備え、この押し当て部材の進退ストローク量により前記内圧吸収膜の張力を連続的又は多段階に変化させる膜張力可変手段を設け、この膜張力可変手段の前記内圧吸収膜に前記オリフィス長可変手段の前記オリフィス長可変バルブを一体化するとともに、
前記押し当て部材は内圧吸収膜に押し当てられる押し当て面を備え、この押し当て面は押し当て部材の進退ストローク量に応じて内圧吸収膜に押し当てられる押し当て面積が変化し、
さらに、前記内圧吸収膜は、中立位置を挟んで膜張力を増大させる位置と、前記第2入り口を開く位置へ動かされて制御されることを特徴とする液封防振装置。 - 前記オリフィス長可変バルブを前後・左右・上下のいずれかに動かすことを特徴とする請求項1記載の液封防振装置。
- 前記押し当て部材の押し当て面形状が略階段状に変化していることを特徴とする請求項1記載の液封防振装置。
- 前記内圧吸収膜の断面形状が不規則に変化していることを特徴とする請求項1記載の液封防振装置。
- 前記内圧吸収膜に変形規制用ストッパを設けて断面形状を不規則にしたことを特徴とする請求項4記載の液封防振装置。
- 前記内圧吸収膜の中心部に位置決め部を設けて断面形状を不規則にしたことを特徴とする請求項4に記載した液封防振装置。
- 前記共振オリフィスがアイドルオリフィスであり、その共振周波数の制御に使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載した液封防振装置。
- 前記共振オリフィスがダンピングオリフィスであり、その液柱共振の周波数依存性をなくすために使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載した液封防振装置。
- 前記押し当て部材及びオリフィス長可変バルブの駆動手段がソレノイド又は吸気負圧であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載した液封防振装置。
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