JP4356967B2 - 液封防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は液封防振装置に係り、特に車両のエンジンマウントに用いて発進時等における振動伝達を低減させることができるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画してオリフィス通路を介して連絡するとともに、主液室を囲む璧部の一部に内圧吸収膜を設け、この内圧吸収膜の膜剛性を剛又は柔に切り換えて変化させるようにした内圧吸収型液封エンジンマウントは公知である。この形式のエンジンマウントにおいては、内圧吸収膜を柔にすれば、内圧変化を吸収して低動バネとし、剛にすればエンジンマウントにおける内部圧力の変化により発生するバネである拡張バネを高めてオリフィス通路に対する流量を増大させ、これによって共振効率を大きくして振動伝達を少なくするようになっている。
【0003】
また、主液室と副液室を区画する仕切壁に開口を設けてこれを弾性膜で覆うことにより所定の周波数で液柱共振する共振オリフィス(この形式をホールオリフィスと呼ぶことにする)を設けることも公知である。なお、ホールオリフィスの共振周波数は拡張バネに比例して変化することが知られている。すなわち、ホールオリフィスの共振周波数をfw、拡張バネをKfとしたとき、
fw∝(Kf)1/2
となっている。
【0004】
【特許文献1】
特開2003−4090号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内圧吸収膜を設けた形式であっても、その調整によって対応できる周波数域は限られたものである。例えば、乗り心地に影響する通常走行時における10Hz前後の低周波小振幅の振動や、約20Hz付近のアイドル周波数域に対応できる程度であって、それ以上高周波数側となる、例えば、約60Hz以上の発進時のエンジン振動域には、共振オリフィスとしてダンピングオリフィス通路やアイドルオリフィス通路を設けた場合であっても、これらとの組合せでは有効に対処できない。
【0006】
また、内圧吸収膜を備えるとともに,発進オリフィスとして前記ホールオリフィスを追加するものもあるが、この場合にも予め設定されたホールオリフィスの共振周波数を可変内圧吸収膜の剛・柔切り換えに伴って高低いずれかへ変えることができるだけである。しかも、このような高周波数域では比較的広範囲の周波数にわたる制御が要求されるが、上記前記従来例のホールオリフィスでは予め可変内圧吸収膜を剛又は柔の状態にしたときのチューニング周波数のみで調整できるだけであり、広範囲の周波数域で調整することはできない。
【0007】
さらに、車体フレームの曲げ振動のように、ベクトル成分を有する振動に対しては、位相を制御しなければならないが、このような位相を簡単な構造で自由に制御し、位相を広範囲に変化させてベクトル成分の振動を的確に遮断することも望まれるが、このようなことは実現できていない。
そこで、本願発明は比較的簡単な構造で広範囲の周波数域にて位相を変化させて制御できるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願の液封防振装置に係る請求項1は、振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡した液封防振装置において、
前記主液室に臨んで所定の開口径を有しかつ弾性膜にて閉じられることにより、所定の周波数にて液柱共振を発生するホールオリフィスを設けるとともに、
前記第2の取付部材の主液室を囲む部分の一部に弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる可変内圧吸収膜を設け、この可変内圧吸収膜の膜張力を変化させて内圧吸収能を連続的又は多段階に変化させることにより、前記ホールオリフィスにおける液柱共振の周波数を連続的又は多段階に変化させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
ここで内圧吸収能とは、可変内圧吸収膜の内圧を吸収できる能力であり、これが高ければ、拡張バネが低くなって低動バネ化し、逆に内圧吸収能が低ければ拡張バネが高くなって高動バネ化する。このような内圧吸収能を制御する方法はその動き易さを変化させることであり、例えば可変内圧吸収膜の膜張力を変化させる等によって実現できる。
【0010】
請求項2は上記請求項1において、前記可変内圧吸収膜と主液室の間を仕切る弾性膜からなり、初期状態でたるませた遊び膜を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3は上記請求項2において、前記遊び膜と可変内圧吸収膜との間を液体が封入された内圧調整室とし、この内圧調整室に臨む前記可変内圧吸収膜の面積よりも、前記遊び膜の主液室に臨む面積を大きくしたことを特徴とする。
【0012】
請求項4は上記請求項1において、エンジン振動の防振用に用いられるエンジンマウントに適用したことを特徴とする。
【0013】
請求項5は上記請求項4において、前記ホールオリフィスは発進時のエンジン振動に合わせて共振周波数をチューニングしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項6は上記請求項4において、前記可変内圧吸収膜に対する内圧吸収能可変手段を備え、この内圧吸収能可変手段はエンジンの回転数に応じて内圧吸収能を変化させることを特徴とする。
【0015】
【発明の効果】
請求項1によれば、主液室に入力する振動により、ホールオリフィスが所定の周波数にて液柱共振を発生する。このとき、可変内圧吸収膜の内圧吸収能を変化させると、拡張バネが変化し、ホールオリフィスの液柱共振周波数はこの拡張バネの変化に応じて追随変化し、同時に位相も変化する。そこで可変内圧吸収膜の内圧吸収能を連続的又は多段階に変化させると、ホールオリフィスに発生する液柱共振は、共振周波数及び位相が連続的又は多段階に追随変化して広範囲における共振周波数及び位相の制御が可能になる。特に位相の広範囲な制御によってベクトル成分の振動を吸収して振動伝達を低減させることができる。
また、ホールオリフィス及び可変内圧吸収膜はそれぞれ一つで足りるから、広範囲の制御を簡単な構造で実現できる。
【0016】
請求項2によれば、可変内圧吸収膜と主液室の間を区画する弾性膜からなる遊び膜を初期状態でたるませて設けたので、小振幅の振動入力に対しては遊び膜は殆どばね弾性を有さず、低動バネ状態を維持できる。一方、大きな振幅の振動が入力すると、遊び膜はたるみのとれた段階からばね性を発揮する。このため、遊び膜が内圧増大分を受け止め、液体の可変内圧吸収膜側へ逃げる量を少なくするので、ダンピング特性を良好にすることができる。
【0017】
請求項3によれば、遊び膜と可変内圧吸収膜との間を液体が封入された内圧調整室とし、この内圧調整室に臨む可変内圧吸収膜の面積よりも、遊び膜の主液室に臨む面積を大きくしたので、可変内圧吸収膜を制御する力を比較的小さくできることになり、制御を容易にすることができる。
【0018】
請求項4によれば、エンジン振動の防振用に用いられるエンジンマウントとして適用することにより、広範囲の周波数域におけるエンジン振動の伝達を遮断できる。
【0019】
請求項5によれば、ホールオリフィスの共振周波数を発進時のエンジン振動に合わせてチューニングしてあるので、高周波数側における比較的広範囲の発進時の振動を遮断できる。特に位相制御によって発生させた位相により、ベクトル成分による車体フレームの曲げ振動を防止できる。
【0020】
請求項6によれば、可変内圧吸収膜に対する内圧吸収能可変手段を備え、この内圧吸収能可変手段をモーター、吸気負圧又はソレノイド等の公知駆動手段により駆動させるとともに、この駆動制御をエンジンの回転数に応じて連続的又は多段階に行うことにより、膜剛性を簡単且つエンジンの運転状態に合わせて正確に追随変化させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて実施形態を説明する。図1〜4は第1実施例に係り、図1は液封防振装置の全体断面図、図2は図1のA矢示方向図、図3は拡張バネの変化に伴う共振点の変化を示す図、図4は拡張バネの変化に伴う位相の変化を示す図である。
【0022】
図1において、エンジンマウント小組体1は、第1の取付部材2,第2の取付部材3及びインシュレータ4を備える。第1の取付部材2は図示しないエンジン等の振動源側へ連結され、第2の取付部材3はブラケット5に嵌合され、ブラケット5は同じく図示しない車体等の振動受側へ連結される。インシュレータ4は、ゴムからなる略円錐状をなす公知の防振ゴムである。但し、ゴム及び他のエラストマー等の適宜弾性材料からなる略円錐状をなす公知の弾性防振部材とすることができ、第1の取付部材2と第2の取付部材3の間を連結一体化する。
【0023】
第1の取付部材2,第2の取付部材3及びインシュレータ4に囲まれた内部に主液室6が形成され、ここに公知の非圧縮性の作動液が封入されている。主液室6は仕切部材7の外周部に形成されたダンピングオリフィス8を介して副液室9と連通されている。ダンピングオリフィス8は10Hz前後の低周波数小振幅の乗り心地に影響する通常走行時の振動を高減衰で吸収する。副液室9はダイアフラム10によって覆われている。
【0024】
仕切部材7は樹脂等の適宜材料からなるデイスク状の部材であり、その中央部に開口11が形成され、ここに弾性膜12が取り付けられている。この開口11と弾性膜12は主液室6における液体振動により、所定周波数(本実施例の場合約60Hz)で液柱共振するホールオリフィス13を形成してある。この共振周波数域は発進時の振動周波数域である。
【0025】
ダンピングオリフィス8は、仕切部材7の外周部に径方向外方へ開放されて形成され、その一部に形成された入り口14aで主液室6と連通し、出口14bで副液室9と連通する。仕切部材7の外周部におけるダンピングオリフィス8を形成する上下の部分のうち上部は主液室に臨む筒状弾性壁15に密接してシールされる。筒状弾性壁15はインシュレータ4と連続一体に形成された延長部であり、第2の取付部材3の内周面を覆っている。
【0026】
第2の取付部材3は、略カップ状をなす内側筒状部材16と外側筒状部材17を内外に嵌合し、その間に内圧調整室18を形成したものであり、内圧調整室18内にも作動液が充填されている。内側筒状部材16の表面は筒状弾性壁15に覆われている。外側筒状部材17の周囲全体はダイアフラム10と連続一体の被覆19で覆われ、仕切部材7の外周部におけるダンピングオリフィス8を形成する上下の部分のうち下部が内側筒状部材16の下端と外側筒状部材17の底部20との間に挟まれてシールされる。
【0027】
外側筒状部材17の内部へ仕切部材7を挿入して外周部を底部20の上に乗せてから、さらに内側筒状部材16を挿入して下端部で仕切部材7の外周部を押さえ、内側筒状部材16の上端部に形成されたフランジ22aを外側筒状部材17の上端に形成されたフランジ22bに重ねてリベット等の適宜手段で一体化することにより、エンジンマウント小組体1が組み立てられる。
【0028】
このとき外側筒状部材17の被覆19の上端部と内側筒状部材16のフランジ22aに密接して内圧調整室18をシールする。その後、このエンジンマウント小組体1をブラケット5の内部へ挿入して外側筒状部材17の底部20をブラケット5の内面に形成された段部21上へ乗せ、同時に外側筒状部材17のフランジ22bをブラケット5の上端部へ重ねてリベット等の適宜手段で一体化することにより、エンジンマウントが組み立てられる。
【0029】
内側筒状部材16の一部には開口24が設けられ、ここに遊び膜25が形成されている。遊び膜25は筒状弾性部材15の一部であり、当初のバネが主液室6の内圧に実質的に影響しない程度に低くなるよう薄く、かつ初期状態でたるませてある。但し、後述するように内圧上昇によってたるみがとれた状態では所定のバネにより内圧に影響するようになる。
【0030】
開口24および遊び膜25に対応する外側筒状部材17の一部にも開口26が設けられ、ここに可変内圧吸収膜27が形成されている。可変内圧吸収膜27はゴム等の適宜弾性材料からなる弾性膜であり、主液室6の内圧に影響を与えることのできる程度のバネを有し、遊び膜25に対してより厚肉でバネが高く、かつ大径になっている。すなわち開口26も開口24より大径である。
【0031】
可変内圧吸収膜27の中央にはアクチュエータロッド28の頭部29が埋設一体化されている。アクチュエータロッド28の他端側にネジ30が形成され、この部分はブラケット5の側部に形成された取付穴31から外方へ突出し、駆動ナット32へ係合する。駆動ナット32はモーター33によって正逆いずれかに所定量回転することにより、アクチュエータロッド28が回転量に応じて進退動する。本実施例では主液室6側へ向かって移動することを進むとし、反対側への動作を後退ということにする。
【0032】
アクチュエータロッド28を初期位置から進めて可変内圧吸収膜27を内圧調整室18内へ押し出すと、可変内圧吸収膜27の張力が大きくなって内圧吸収能が低くなり、防振装置としての拡張バネを大きくし、ホールオリフィス13の共振周波数を高くする。
【0033】
逆に、後退させて初期位置に戻して可変内圧吸収膜27の張力を下げると、拡張バネが小さくなり、ホールオリフィス13の共振周波数を低くくする。なお、可変内圧吸収膜27とブラケット5の間は、可変内圧吸収膜27の動作を容易にするための大気開放空間34になっている。
【0034】
可変内圧吸収膜27の内圧吸収能調節は多段階または連続的のいずれにも制御できる。このための駆動手段の一例であるモーター33は図示しない制御手段によって出力を制御され、制御手段によって指令された量だけ正逆回転することによりアクチュエータロッド28を対応量進退させて可変内圧吸収膜27の膜張力を調整して内圧吸収能を変化させる。本実施例における可変内圧吸収膜27の膜張力は3段階に制御でき、その結果、内圧吸収能も3段階に調節できるようになっている。この設定については後述する。
【0035】
モーター33はブラケット5の外部に形成された棚部35に適宜手段で取り付けられている。モーター33の制御はエンジンの運転状況を的確に示すエンジンの回転数に基づいて行うことができる。但し、エンジンの回転数以外の他の適宜センサー量に基づいてもよい。なお、駆動手段はモーターに限定されず、ソレノイドやエンジンの吸気負圧等公知の種々な手段が可能である。
【0036】
図2は、可変内圧吸収膜27と遊び膜25の関係を示し、図1のA矢示方向から両部材を示したものである。この図から明らかなように、遊び膜25は略長方形をなし、可変内圧吸収膜27は遊び膜25の中央に重なる円形をなす。これにより、可変内圧吸収膜27に対する遊び膜25の面積比が1:2〜3程度になっている。このようにすると、可変内圧吸収膜27を可変制御駆動するモーター33の出力を比較的小さくしても、より大きな面積の遊び膜25を動作させることができる。
【0037】
次に、可変内圧吸収膜27における内圧吸収能の設定方法を説明する。図3は3段階の拡張バネにおけるホールオリフィス13の共振点変化を示す図であり、横軸に周波数、縦軸に動バネを示し、各曲線の極小点が共振点である。この図から明らかなように、拡張バネが小−中−大と変化すると、それぞれの共振点が約45Hz、約60Hz、約90Hzになる。
【0038】
この拡張バネは可変内圧吸収膜27の膜張力を変化させることにより内圧吸収能調整を実現できる。そこで、この共振点変化に対応する拡張バネが得られるように可変内圧吸収膜27の膜張力を設定する。本実施例における可変内圧吸収膜27の膜張力は3段階に制御でき、これに伴って内圧吸収能も3段階に制御できる。
【0039】
約90Hzの共振点を実現する拡張バネとなる最大膜張力を例えば20kg/cm2、とすれば、拡張バネが中に対しては、膜張力を10kg/cm2、拡張バネが小に対しては6kg/cm2、とすることにより、膜張力を3段階に切替え、内圧吸収能を3段階に調節することにより、共振点を約45Hz、約60Hz、約90Hzと変化させることができる。
【0040】
次に、本実施例の作用を説明する。発進時において、可変内圧吸収膜27の膜張力が当初は小の段階に設定され、内圧吸収能は高となり、ホールオリフィス13は約45Hzで液柱共振を発生して入力振動を吸収する。その後、エンジンの回転数が大きくなるにしたがって主液室6への入力振動の周波数が増大し、この周波数の増大に応じてモーター33が回転制御され、可変内圧吸収膜27の膜張力を中及び大へ切替え制御し、内圧吸収能を中及び低に調整する。なお、設定によっては拡張バネをほぼゼロ(0)まで下げることもできる。この場合には著しく低動バネにすることができる。
【0041】
これにより、拡張バネを切替え制御して共振点を約60Hz及び約90Hzへ段階的に変化させる。その結果、約45〜約90Hzの範囲で、可変内圧吸収膜27の内圧吸収能を3段階に切替え制御し、これに応じて拡張バネを3段階に切替え制御して、ホールオリフィス13の共振点を3段階に変化させて共振領域を広範囲にする。
【0042】
しかも、共振点の変化に応じて位相も変化する。図4はこの位相変化を示す図であり、横軸に周波数、縦軸に位相を示し、各曲線は拡張バネの大中小の3段階に対応する位相曲線であり、その極大値が各拡張バネで発生する最大位相である。この図に明らかなように、共振周波数が増大するにしたがって最大位相も破線で示すようにほぼ直線的に増大する。本実施例の予測最大位相は、拡張バネが小中大と変化するのに対応して、約70deg台、約90deg台、約100deg以上に変化する。
【0043】
この結果、広範囲の周波数域(約45〜90Hz)で、比較的大きな位相を発生することができ、位相制御の必要な振動、例えば、車体振動を抑制できる。しかも、このような共振領域の広域化及び比較的大きな位相の発生を、一つのホールオリフィス13だけで実現でき、各共振点に応じた複数のオリフィスを設ける必要がないから、構造が簡単になる。しかもエンジンの回転数に応じて制御すれば、エンジンの運転状況に応じて正確に共振周波数や位相を追随変化させることができる。
【0044】
また、遊び膜25を設け、初期状態でたるませてあるので、小振幅の振動入力に対しては遊び膜25は殆どばね弾性を有さず、低動バネ状態を維持できる。一方、大きな振幅の振動が入力すると、遊び膜25はたるみのとれた段階からばね性を発揮する。このため、遊び膜25が内圧増大分を受け止め、液体の可変内圧吸収膜27側へ逃げる量を少なくするので、ダンピング特性を良好にすることができる。
【0045】
そのうえ、遊び膜25と可変内圧吸収膜27との間を液体が封入された内圧調整室18とし、この内圧調整室18に臨む可変内圧吸収膜27の面積よりも、遊び膜25の主液室に臨む面積を大きくしたので、比較的小面積の可変内圧吸収膜27で比較的大面積の遊び膜25を作動させるようになるから、可変内圧吸収膜27を制御する力を比較的小さくできることになり、その分だけモータ−33の小型・軽量かつコストダウンが可能になる。
【0046】
次に、第2実施例を説明する。なお、前実施例と共通する部分には共通符号を用い、原則として共通部の重複説明は省略すものとする。図5〜図7は第2実施例に係り、図5は液封防振装置の全体断面図、図6は図5の6−6線相当断面、図7は図5においてアイドル時の作動を示す図である。
【0047】
図5に示すように、この実施例のエンジンマウントは、仕切部材7が上下部材7a及び7bの上下合わせ構造になっており、その内部にはホールオリフィスに代わってアイドルオリフィス40が設けられている。アイドルオリフィス40は主液室6と副液室9を連通してアイドル時のエンジン振動周波数(約20Hz前後)で液柱共振を発生して低動バネ化することにより、第1の取付部材2側から第2の取付部材3側への振動伝達を遮断する。
【0048】
アイドルオリフィス40の副液室9側の出口41は第1ダイアフラム42の中央部に形成された開閉バルブ43で開閉自在であり、アイドル周波数域でのみ開き、それ以外では閉じている。開閉バルブ43は押し付け部材44の伸縮によって開閉される。第1ダイアフラム42はダイアフラム10と同様に副液室9を覆うが中央に開閉バルブ43を一体化している点が異なる。
【0049】
押し付け部材44と底部45との間に負圧室46が形成され、通気ノズル47を介して吸気負圧と大気とを接続切替えするようになっている。吸気負圧が適用されると、リターンバネ48に抗して図の下方へ移動して開閉バルブ43が出口41を開き、吸気負圧を遮断して大気開放すると、リターンバネ48により図の上方に移動して出口41を閉じる。
【0050】
第2の取付部材3を構成する内側筒状部材16の一部で、可変内圧吸収膜27と対向する位置にホールオリフィス13が形成されている。このホールオリフィス13は内側筒状部材16に形成された開口50とこれを覆う弾性膜51で構成される。ホールオリフィス13近傍における内側筒状部材16と外側筒状部材17の間はホールオリフィス作動室52をなし、ここに作動液が封入され、かつ第2ダイアフラム53が臨んでいる。
【0051】
第2ダイアフラム53は外側筒状部材17に形成された開口54を覆い、第2ダイアフラム53とブラケット5との間に負圧室55を設け、通気ノズル56により吸気負圧と大気とを接続切替えするようになっている。本実施例の場合は負圧室46と連動して切替え制御される。
【0052】
吸気負圧が適用されると、第2ダイアフラム53をブラケット5側へ吸引固定して弾性膜51を剛の状態とし、吸気負圧を遮断して大気開放すると第2ダイアフラムをフリーにして柔の状態にする。なお、第2ダイアフラム53がフリーであれば、ホールオリフィス作動室52内の作動液は弾性膜51の変形に応じて内圧を一定に維持できる。
【0053】
可変内圧吸収膜27側の構造は前実施例と同様である。可変内圧吸収膜27の内圧吸収能は、開閉バルブ43及びホールオリフィス13における弾性膜51の制御と関連させて制御するようになっている。
【0054】
図6は図5の6−6線相当断面であり、内圧調整室18とホールオリフィス作動室52は、内側筒状部材16と外側筒状部材17の間に形成される同一空間に設けられ、ホールオリフィス13近傍位置にて内側筒状部材16を覆う筒状弾性壁15のうち外周側部分から径方向外方へ一体に突出するシール突起60が外側筒状部材17を覆う被覆19の内周側へ密接することにより、2室を区画している。
【0055】
次に、本実施例の作用を説明する。図7に示すように、アイドル時には、開閉バルブ43が開いてアイドルオリフィス40が主液室6と副液室9を連通し、同時に負圧室55を負圧にして第2ダイアフラム53をブラケット5側へ吸着固定する。このため弾性膜51が剛の状態になり、アイドルオリフィス40に対する液体流量を多くして共振効率を大きくする。
【0056】
逆に、アイドル時以外では、開閉バルブ43が閉じ、同時に第2ダイアフラム53をフリーにする。このため弾性膜51が柔の状態になり、主液室6の内圧変動を弾性変形により吸収し、低動バネにする。
【0057】
その後、振動の周波数が上がると、可変内圧吸収膜27の制御が前実施例同様に行われる。このため、ダンピングオリフィス8、アイドルオリフィス40及びホールオリフィス13の3つを使って、約10〜90Hz程度の広範な周波数域において共振域とすることができる。しかもホールオリフィス13を主液室6の側壁側に設けることにより、アイドルオリフィス40と併設できる。また、内側筒状部材16と外側筒状部材17の間に形成される空間に内圧調整室18とホールオリフィス作動室52を効率的に設けることができる。
【0058】
なお、本願発明は上記各実施例に限定されず、種々に変更可能である。例えば、可変内圧吸収膜27のが、内圧吸収能調整段数をより多段階にすることができる。この場合は吸気負圧や電磁石及びソレノイド等による駆動が好適である。また、無段階に連続変化させることができ、この場合は実施例のようなモーター駆動が適している。また、エンジンマウント以外の他の各種防振装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係る液封防振装置の全体断面図
【図2】図1のA矢示方向図
【図3】拡張バネの変化に伴う共振点の変化を示す図
【図4】拡張バネの変化に伴う位相の変化を示す図
【図5】第2実施例に係る液封防振装置の全体断面図
【図6】図5の6−6線相当断面
【図7】図5においてアイドル時の作動を示す図
【符号の説明】
1:エンジンマウント小組体、2:第1の取付部材、3:第2の取付部材、4:インシュレータ、5:ブラケット、6:主液室、7:仕切部材、8:ダンピングオリフィス、9:副液室、10:ダイアフラム、13:ホールオリフィス、18:内圧調整室、24:作動室、25:遊び膜、27:可変内圧吸収膜、28:アクチュエータロッド、33:モーター、40:アイドルオリフィス、42:第2ダイアフラム、43:開閉バルブ、46:負圧室、52:ホールオリフィス作動室、55:負圧室
Claims (6)
- 振動源側へ取付けられる第1の取付部材と、振動受側へ取付けられる第2の取付部材と、これらの間に介在して振動を吸収するインシュレータと、このインシュレータが壁の一部をなす液室とを備え、この液室を主液室及び副液室に区画して共振オリフィスを介して連絡した液封防振装置において、
前記主液室に臨んで所定の開口径を有しかつ弾性膜にて閉じられることにより、所定の周波数にて液柱共振を発生するホールオリフィスを設けるとともに、
前記第2の取付部材の主液室を囲む部分の一部に、前記ホールオリフィスの弾性膜と別に形成され、弾性変形して内圧変化を吸収する弾性膜からなる可変内圧吸収膜を設け、この可変内圧吸収膜の膜張力を変化させて内圧吸収能を連続的又は多段階に変化させることにより、前記ホールオリフィスにおける液柱共振の周波数を連続的又は多段階に変化させるようにしたことを特徴とする液封防振装置。 - 前記可変内圧吸収膜と主液室の間を仕切る弾性膜からなり、初期状態でたるませた遊び膜を設けたことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記遊び膜と可変内圧吸収膜との間を液体が封入された内圧調整室とし、この内圧調整室に臨む前記可変内圧吸収膜の面積よりも、前記遊び膜の主液室に臨む面積を大きくしたことを特徴とする請求項2に記載した液封防振装置。
- エンジン振動の防振用に用いられるエンジンマウントに適用したことを特徴とする請求項1に記載した液封防振装置。
- 前記ホールオリフィスは発進時のエンジン振動に合わせて共振周波数をチューニングしてあることを特徴とする請求項4に記載した液封防振装置。
- 前記可変内圧吸収膜に対する内圧吸収能可変手段を備え、この内圧吸収能可変手段はエンジンの回転数に応じて内圧吸収能を変化させることを特徴とする請求項4に記載した液封防振装置。
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