JP4359011B2 - インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッド及びその製造方法、並びにインクジェット記録装置に係り、更に詳しくは、アクチュエータの駆動に応じて吐出孔(ノズル)からインク滴を吐出するインクジェットヘッド及びその製造方法、並びに前記インクジェットヘッドを含む記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、記録時の振動、騒音が殆どなく、特にカラー化が容易なことから、コンピュータ等のデジタル処理装置のデータを出力するプリンタの他、ファクシミリや複写機等にも用いられるようになっている。かかるインクジェット記録装置は、圧電素子、発熱抵抗体等のアクチュエータを記録信号に応じて駆動してノズルからインク滴を吐出飛翔させることによって記録媒体上に画像(文字を含む)の記録を行うものである。
【0003】
この種の装置に用いられるインクジェットヘッドとして、例えば特開平8−142324号公報、特開平10−95110号公報などに記載されているように、基板上に複数の積層型圧電素子を複数列列状に配設して接合し、前記圧電素子を取り囲む開口が形成されたフレーム部材を前記基板上に接合し、さらに圧電素子及びフレーム部材上に、複数のダイヤフラム部を有する振動板、前記各ダイヤフラム部を介して個別に加圧される加圧液室及び該加圧液室にインクを供給するインク供給路が形成された液室形成部材、及びノズルを形成したノズルプレートを順次積層し接合したものが知られている。
【0004】
インクジェットヘッドでは、上記各公報にも記載されているように、複数の構成部材の接合に接着剤が用いられていることが多く、接合に要する接着剤塗布量をコントロールするために、接着剤塗布手段としてスクリーン印刷や、薄膜印刷の様な方法が一般的に採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パーソナル・コンピュータ等の処理能力の向上に伴い、出力装置の記録速度(プリント速度)の高速化が進んでいる。インクジェット記録装置の場合、高速化への対応のためにノズル数の増加が求められ、それに伴いヘッド全体が長尺化している。また、プリント速度の高速化により、駆動周波数を高くする必要があるが、それに伴いインク供給量の不足が非常に大きな問題となってきた。すなわち、駆動周波数の高周波数化に伴ない、インク供給量を如何にして確保するかが新たな課題となってきた。
【0006】
インク供給量を確保する手段として、例えばフレーム部に複数の加圧液室に連通した共通液室を形成し、その共通液室の容量を拡大することが考えられるが、かかる場合には、その共通液室の容量増加に伴って気泡の発生量が増加し、この気泡が共通液室の端の部分に溜まり、この気泡溜りが噴射性能(吐出性能)を著しく低下させる可能性が高いことが実験段階で確認されている。また、接着剤の性質にもよるが、余剰の接着剤により気泡がトラップされることも考えられる。
【0007】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、インク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能が良好な新たなインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、良好な記録性能を維持しかつ記録速度の向上を図ることができる記録装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、アクチュエータの駆動に応じて吐出孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドであって、内部に少なくとも1つの共通液室とアクチュエータ収納空間とが形成されたフレーム部材と;前記アクチュエータ収納空間内に配置され、独立して駆動可能な複数のアクチュエータを有するアクチュエータ・ユニットと;前記各アクチュエータにより駆動される振動板を前記フレーム部材との境界部材として有し、前記共通液室に前記振動板に形成された供給口を介して個別に連通し前記吐出孔を有する個別液室がその内部に前記複数のアクチュエータに個別に対応して設けられ、前記共通液室の内壁の前記振動板側の開口端縁に接する領域に一側の開口端を有し他側が外部に開口した気泡排出路が形成された液室ユニットと;を備えるインクジェットヘッドである。
【0010】
これによれば、液室ユニットの内部には、フレーム部材の内部に形成された共通液室に振動板に形成された供給口を介して個別に連通し吐出孔を有する個別液室がアクチュエータ・ユニットを構成する複数のアクチュエータに個別に対応してそれぞれ設けられるとともに、共通液室の内壁の前記振動板側の開口端縁に接する領域に一側の開口端を有し他側が外部に開口した気泡排出路が形成されている。このため、共通液室の内容積を増加することにより、インク供給量を十分に確保することが可能になる。また、共通液室の内容積を増加することにより、共通液室内における気泡が発生し易くなるが、この気泡は、共通液室内の端部で滞留することなく、共通液室の内壁の振動板側の開口端縁に接する領域に一側の開口端を有し他側が外部に開口した気泡排出路を介して速やかに外部に排出される。これにより、気泡溜りに起因するインクの吐出性能の低下が防止されるとともに、共通液室内部のインクの充填率が向上する。従って、本発明のインクジェットヘッドによれば、インク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能が良好となるので、長尺化及び記録速度の高速化に容易に対応することができる。
【0011】
この場合において、請求項2に記載のインクジェットヘッドの如く、前記液室ユニットは、前記振動板と、該振動板とともにその内部に前記複数の個別液室を形成する液室形成部材と、前記液室形成部材の前記振動板とは反対側に固定され、前記各個別液室に連通する前記吐出孔が形成された吐出孔形成部材とを含んで構成されることとすることができる。
【0012】
上記請求項1及び2に記載の各インクジェットヘッドにおいて、請求項3に記載のインクジェットヘッドの如く、前記フレーム部材の前記振動板側の面には、前記共通液室を取り囲む凸部が形成されていることとすることができる。かかる場合には、フレーム部材の振動板に対向する面に形成された共通液室を取り囲む凸部を介してフレーム部材と振動板、すなわち駆動ユニットと液室ユニットとが密に接合されることとなるので、インクシール性の向上が可能となる。
【0013】
この場合において、フレーム部材の凸部と振動板との接合方法としては各部材の材質に応じて種々の方法が採用でき、例えば請求項4に記載のインクジェットヘッドの如く、前記フレーム部材と前記振動板とは前記凸部を介して接着剤により接合されていることとしても良い。かかる場合には、凸部に接着剤を塗布することにより、接着剤の表面張力を利用して効率の良い接着剤塗布が可能となる。ここで、凸部をほぼ均一な幅の凸部とすることにより、接着剤塗布量を均一にすることとしても良い。
【0014】
この場合において、請求項5に記載のインクジェットヘッドの如く、前記凸部は、前記共通液室の長手方向に延びる部分が前記共通液室の端部より更に外側に延設されていることとすることができる。
【0015】
上記請求項4及び5に記載の各インクジェットヘッドにおいて、請求項6に記載のインクジェットヘッドの如く、前記凸部の少なくとも前記共通液室の長手方向に延びる部分は、接着剤塗布領域とされ、該接着剤塗布領域の端部に接着剤滞留領域が形成されていることとすることができる。特に、凸部を共通液室の端部より更に外側に延設している場合には、例えばディスペンサを用いて接着剤を塗布する場合などに、共通液室の端部への接着剤溜りを防止することができ、共通液室端部付近の接着剤塗布量を均一にすることができる。
【0016】
この場合において、請求項7に記載のインクジェットヘッドの如く、前記接着剤滞留領域は、前記凸部とは異なる面によって形成されていることとすることができる。かかる場合には、接着剤滞留領域の面積を容易に拡大することができるので、接着剤滞留領域の確保の目的でフレーム部材を必要以上に大型化する必要がなくなり、ひいてはインクジェットヘッドの小型化が可能になる。
【0017】
上記請求項4〜7に記載の各インクジェットヘッドにおいて、請求項8に記載のインクジェットヘッドの如く、前記気泡排出路の前記一側の開口端を形成する前記振動板の開口部分には、前記フレーム部材との接合面に面して凹部が形成されていることとすることができる。かかる場合には、振動板とフレーム部材との接合の際に、フレーム部材に塗布された余分な接着剤が前記凹部に入り込むので、その余分な接着剤が気泡排出路の前記一側の開口端側へはみ出して、その開口を塞ぐのを確実に防止することができる。
【0018】
上記請求項4〜8に記載の各インクジェットヘッドにおいて、請求項9に記載のインクジェットヘッドの如く、前記気泡排出路は、外部に開口した前記他側の排出孔部と該排出孔部に連通して前記一側に設けられた前記排出孔部に比べてその断面積が大きな逃げ部とを有することとすることができる。かかる場合には、振動板とフレーム部材との接合の際に、フレーム部材に塗布された余分な接着剤が、万一、気泡排出路の前記一側の開口端を介して気泡排出路内に進入しても、断面積の大きな逃げ部内に溜り、断面積の小さな排出孔部へ侵入することが防止されるので、気泡排出路の一側から他側への良好な通気を確保することができる。
【0019】
上記請求項4〜9に記載の各インクジェットヘッドにおいて、請求項10に記載のインクジェットヘッドの如く、前記接着剤は、エポキシ系接着剤であることとすることができる。かかる場合には、耐インク性を向上させることができる。
【0020】
上記請求項1〜10に記載の各インクジェットヘッドにおいて、アクチュエータは、その駆動により振動板を介して各個別液室からインクを吐出させることができるものであればその種類は特に問わないが、例えば請求項11に記載のインクジェットヘッドの如く、前記各アクチュエータは、印加電圧に応じて物理的な変形を生じる圧電素子であることとすることができる。
【0021】
請求項12に記載の発明は、アクチュエータの駆動に応じて吐出孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、内部に少なくとも1つの共通液室とアクチュエータ収納空間とが形成されたフレーム部材を用意する工程と;前記アクチュエータ収納空間内に配置可能で、独立して駆動可能な複数のアクチュエータを有するアクチュエータ・ユニットを用意する工程と;前記各アクチュエータにより駆動されるとともに複数の供給口が形成された振動板を有し、前記複数の供給口に個別に連通し前記吐出孔を有する個別液室が、その内部に前記複数のアクチュエータに個別に対応して設けられ、前記振動板に一側の開口端が形成され他側が外部に開口した気泡排出路が形成された液室ユニットを用意する工程と;前記振動板と前記複数のアクチュエータとを所定の位置関係で接合することにより、前記振動板と前記アクチュエータ・ユニットとを一体化する工程と;前記共通液室の内壁の開口端縁に接する領域に前記気泡排出路の前記一側の開口端が位置するような位置関係で、前記フレーム部材を前記振動板に接合する工程と;を含むインクジェットヘッドの製造方法である。
【0022】
これによれば、内部に共通液室が形成されたフレーム部材と、該フレーム部材のアクチュエータ収納空間内に配置可能で、独立して駆動可能な複数のアクチュエータを有するアクチュエータ・ユニットと、各アクチュエータにより駆動されるとともに複数の供給口が形成された振動板を有し、その内部に、複数の供給口に個別に連通し吐出孔を有する個別液室が複数のアクチュエータに個別に対応して設けられ、振動板に一側の開口端が形成され他側が外部に開口した気泡排出路が形成された液室ユニットと、が用意される。そして、振動板と複数のアクチュエータとを所定の位置関係で接合することにより、振動板とアクチュエータ・ユニットとが一体化される。また、共通液室の内壁の開口端縁に接する領域に気泡排出路の前記一側の開口端が位置するような位置関係で、フレーム部材が振動板に接合される。これにより、インクジェットヘッドが製造される。従って、本発明の製造方法によれば、結果的にインク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能が良好なインクジェットヘッドを製造することが可能となる。
【0023】
この場合において、請求項13に記載の製造方法の如く、前記フレーム部材及び前記複数のアクチュエータと前記振動板との接合は、浸透系(低粘度)の接着剤を用いて行うこととすることができる。
【0024】
この場合において、請求項14に記載の製造方法の如く、前記接合に際して、前記フレーム部材の前記振動板に対する接合面の前記気泡排出路近傍の一部に接着剤が塗布されない接着剤非塗布領域を設け、該接着剤非塗布領域以外の前記接合面の領域に前記接着剤を塗布した後、前記フレーム部材及び前記複数のアクチュエータに前記振動板を圧接することとすることができる。かかる場合には、接合に際して、浸透系の接着剤を用いるとともに、フレーム部材の振動板に対する接合面の前記気泡排出路近傍の一部の接着剤非塗布領域以外の領域に接着剤を塗布した後、フレーム部材及び複数のアクチュエータに振動板を圧接するので、接合時に気泡排出路近傍に余剰の接着剤が塗布されるのを効果的に防止することができる。
【0025】
上記請求項13及び14に記載の各製造方法において、請求項15に記載の製造方法の如く、前記接着剤としてエポキシ系接着剤を用いることとすることができる。
【0026】
上記請求項13〜15に記載の各製造方法において、フレーム部材の素材としては種々の素材を用いることができるが、例えば請求項16に記載の製造方法の如く、前記フレーム部材が熱可塑性樹脂により形成されている場合には、前記フレーム部材の前記振動板との接合面に、前記接合に先立ってプラズマ処理により酸化膜を製膜する工程を、更に含むこととすることができる。かかる場合には、フレーム部材の振動板との接合面に、接合に先立ってプラズマ処理により酸化膜を製膜するので、接着剤の接合強度を向上させることができる。
【0027】
上記請求項12〜16に記載の各製造方法において、請求項17に記載の製造方法の如く、前記アクチュエータ・ユニットを用意する工程に先立って、前記複数のアクチュエータと該複数のアクチュエータのベースとなるベース部材とを用いて前記アクチュエータ・ユニットを組み立てる工程を、更に含むこととすることができる。
【0028】
上記請求項12〜17に記載の各製造方法において、請求項18に記載の製造方法の如く、前記液室ユニットを用意する工程に先立って、前記振動板と、その内部に前記複数の供給口に個別に連通する前記複数の個別液室となるべき空間が形成された液室形成部材とを一体化し、前記液室形成部材の前記振動板とは反対側の面に前記複数の個別液室に個別に対応する複数の吐出孔が形成された吐出孔形成部材を固定して前記液室ユニットを組み立てる工程を更に含むこととすることができる。
【0029】
請求項19に記載の発明は、記録信号に応じて駆動されるアクチュエータの発生する駆動エネルギに応じて吐出孔からインク滴を吐出して記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを少なくとも1つ含むヘッドユニットと、該ヘッドユニットに供給される少なくとも1色のインクを内蔵する少なくとも1つのインク室をその内部に形成する少なくとも1つのインク室形成部材とを有する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置である。
【0030】
本明細書において、記録媒体に記録される「画像」には、通常の意味における画像の他、文字も含まれる。
【0031】
これによれば、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを少なくとも1つ含むヘッドユニットと、少なくとも1色のインクを内蔵する少なくとも1つのインク室をその内部に形成する少なくとも1つのインク室形成部材とを有する記録ヘッドを備えている。このため、ヘッドユニットを構成するインクジェットヘッドではインク室からのインク供給量を確実に確保し、かつインクの吐出性能を良好にすることができ、これにより長尺化及び記録速度の高速化に容易に対応することができる。従って、本発明のインクジェット記録装置では、良好な記録性能を維持しかつ記録速度の向上を図ることが可能である。
【0032】
この場合において、ヘッドユニットとインク室形成部材とは一体であっても良いが、請求項20に記載のインクジェット記録装置の如く、前記ヘッドユニットと前記インク室とは、着脱自在であることとしても良い。
【0033】
上記請求項19及び20に記載の各インクジェット記録装置において、請求項21に記載のインクジェット記録装置の如く、前記インク室形成部材は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクに対応して個別に設けられていることとすることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置10が一部破断して概略斜視図にて示され、図2には、インクジェット記録装置10の内部構成が側面図にて示されている。
【0035】
このインクジェット記録装置10は、パーソナル・コンピュータなどの出力装置として用いられるカラープリンタである。インクジェット記録装置10は、図1に示されるように、本体ケース12及び該本体ケース12の内部に収納された印字機構部14等を備えている。
【0036】
前記本体ケース12の下方部分には、給紙カセット挿入用の開口12aが形成されており、この開口12aを介して前方側(図1における−Y側)から多数枚の記録媒体としての用紙Pを積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでも良い)16(図2参照)を着脱自在(抜き差し自在)に装着できるようになっている。また、本体ケース12の前面上半部には、図2に示されるように、用紙Pを手差しで給紙するための手差しトレイ18が起伏回動可能に設けられている。
【0037】
このインクジェット記録装置10では、給紙カセット16あるいは手差しトレイ18から給送される用紙Pを内部の後述する用紙搬送系にて取り込み、印字機構部14によって所要の画像を記録した後、本体ケース12の後面(背面)側に図2に示されるように所定角度傾斜して装着された排紙トレイ20に排紙するようになっている。
【0038】
前記印字機構部14は、本体ケース12内部に配設された記録ヘッド部22及び該記録ヘッド部22を主走査方向である図1におけるX軸方向(図2における紙面直交方向)に駆動する主走査方向駆動機構24等を備えている。これを更に詳述すると、前記記録ヘッド部22は、本体ケース12の左右の側板間にY軸方向に所定間隔を隔てて相互に平行にかつ水平に架設されたガイド部材である主ガイドロッド26,従ガイドロッド28にスライド自在に支持されたキャリッジ30と、該キャリッジに搭載された記録ヘッド32とを備えている。
【0039】
ここで、キャリッジ30は、後方側(−Y側)を主ガイドロッド26の外周面に対して所定のクリアランスを介して摺動自在に装着され、前方側(+Y側)を従ガイドロッド28に摺動自在に載置されている。すなわち、キャリッジ30は、必要に応じて主ガイドロッド26を回転軸として起伏回動が可能な構成となっている。
【0040】
前記記録ヘッド32は、4つのインクジェットヘッド(これについては後述する)を含むヘッドユニット34と、ヘッドユニット34を構成する各インクジェットヘッドへインクを個別に供給する4つのインク室形成部材としてのインクカートリッジ36とを備えている。
【0041】
ヘッドユニット34は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドから成り、各インクジェットヘッドは、後述する複数の吐出孔(ノズル孔)の配列方向が主走査方向と交叉する方向として、かつインク滴吐出方向を下方に向けてキャリッジ30に装着されている。また、インクカートリッジ36は、Y、C、M、Bkの各色毎に設けられ、対応するインクジェットヘッドに対応する色のインクを供給するために、それぞれのインクジェットヘッドに対して着脱自在(交換可能)となるようにキャリッジ30上に搭載されている。
【0042】
各インクカートリッジ36は、上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を有し、インクが充填された多孔質体を内蔵するインク室がその内部に形成されている。このインクカートリッジ36では、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクを僅かな負圧に維持している。
【0043】
なお、ヘッドユニット34は、Y、C、M、Bkの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドにより構成されているが、これに限らず、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のインクジェットヘッドによってヘッドユニット34を構成しても良い。さらに、ヘッドユニット34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの電気機械変換素子で液室壁面を形成する振動板を介してインクを加圧するピエゾ型、或いは発熱抵抗体により気泡を生じさせてインクを加圧するバブル型、若しくはインク流路壁面を形成する振動板とこれに対向する電極との間の静電力で振動板を変位させてインクを加圧する静電型などを使用することができるが、本実施形態のインクジェット記録装置10ではピエゾ型インクジェットヘッドを用いている。
【0044】
前記主走査方向駆動機構24は、図1に示されるように、前述した主ガイドロッド26、従ガイドロッド28、主走査モータ38、駆動プーリ40、従動プーリ42及びタイミングベルト44等を備えている。
【0045】
主走査モータ38は、本体ケース12の+Y側の側壁のX軸方向の一端部(−X側端部)に固定され、その回転軸に駆動プーリ40が連結されている。従動プーリ42は、本体ケース12の+Y側の側壁のX軸方向の他端部に配置され、駆動プーリ40と従動プーリ42との外周部に無端のタイミングベルト44が巻き掛けられ(張設され)、これによってベルト機構が構成されている。この場合、タイミングベルト44に、キャリッジ30が接続されている。このため、主走査モータ38の正逆回転により、上記ベルト機構を介してキャリッジ30が主走査方向に往復駆動される。
【0046】
前記用紙搬送系は、図2に示されるように、給紙ローラ46、フリクションパッド48、ガイド部材50、搬送ローラ52、搬送コロ54、先端コロ56、印写受け部材58、搬送コロ60、拍車62、排紙ローラ64、拍車66及びガイド部材68,70等を備えている。
【0047】
前記給紙ローラ46及びフリクションパッド48は、給紙カセット16から用紙Pを一枚一枚分離して搬送系内に供給する役目を有している。ガイド部材50は、その供給された用紙Pを次段の搬送ローラ52に向けて案内する。搬送ローラ52の上方には、搬送コロ54及び先端コロ56が配置され、これらのコロが搬送ローラ52の外周面に押し付けられている。このため、搬送ローラ52が図2における時計回りに回転することにより、ガイド部材50によって案内された用紙Pは、反転された状態でその下流側のヘッドユニット34下方に設けられた印写受け部材58の方へ送られる。印写受け部材58は、キャリッジ30の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ52から送り出された用紙Pをヘッドユニット34の下方側で案内する用紙ガイド部材である。
【0048】
前記先端コロ56は、位置の微調整が可能な構造となっており、その位置に応じて搬送ローラ52からの用紙Pの送り出し角度を規定する。前記搬送ローラ52は副走査モータ72(図1参照)によって不図示のギヤ列を介して回転駆動されるようになっている。
【0049】
前記ガイド部材68,70は、印写受け部材58の搬送方向下流側に対向して配置され、印写受け部材58下流の用紙の排紙経路を形成する。この排紙経路の途中に搬送コロ60及び拍車62が配置され、搬送ローラ52から送り出され印写受け部材58及びガイド部材68,70を介して案内されてきた用紙Pを介して回転駆動され、その用紙Pを排紙方向へ送り出す。
【0050】
前記排紙ローラ64及び拍車66は、ガイド部材68,70により形成される排紙経路の最下流の位置に配置されており、ガイド部材68,70を介して案内されてきた用紙Pを介して回転駆動され、その用紙Pを排紙トレイ20に排出する。
【0051】
本実施形態のインクジェット記録装置10では、記録時には、キャリッジ30を移動させながら画像信号に応じてヘッドユニット34を構成する各インクジェットヘッドを駆動することにより、停止している用紙Pにインクを吐出して1行分の記録を行い、用紙Pを所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙Pを排紙する。
【0052】
更に、本体ケース12内部のキャリッジ30の移動方向の一端(+X側端)側の記録領域を外れた位置には、インクジェットヘッドの吐出不良を回復するための回復装置74が配置されている。この回復装置74は、キャップ手段と吸引手段とクリーニング手段とを有している。キャリッジ30は印字待機中にはこの回復装置74側に移動されてキャッピング手段でヘッドユニット34をキャッピングされ、各インクジェットヘッドの吐出孔(ノズル)の吐出口を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0053】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッドユニット34の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され、吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体ケース12の下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0054】
次に、前述したヘッドユニット34を構成する各インクジェットヘッドの構造について、詳述する。図3にはインクジェットヘッド100の斜視図が示され、図4には図3の分解斜視図が示され、図5には図3のV−V線断面図が示され、図6には図3のVI−VI線断面図が一部省略して示されている。なお、これら図3〜図6においては、インクジェットヘッド100の構成各部が、説明の便宜上、使用時(インクジェット記録装置10に組み込まれた状態)とは、上下反対で示されている。
【0055】
このインクジェットヘッド100は、図3に示されるように、駆動ユニット102と液室ユニット104とを備えている。
【0056】
駆動ユニット102は、図4及び図5に示されるように、例えば熱可塑性樹脂等から成り、中央部にアクチュエータ収納空間としての中空部80aが形成されたフレーム部材80と、該フレーム部材80の中空部80a内に配置されたアクチュエータ・ユニット82とを備えている。
【0057】
フレーム部材80には、図4の分解斜視図に示されるように、前記中空部80aを挟んでその長手方向に直交する方向(以下、「短手方向」ともいう)の両側に、一対の共通液室80b,80cがそれぞれ形成されている。一方の共通液室80bは、平面視(上方から見て)細長い長方形状で、その長手方向に沿う側面断面は、図4からもわかるように、二等辺三角形状となっている。そして、この共通液室80bの最低部となる三角形の頂点の付近には、フレーム部材80の図4における下面側から共通液室80bに到達する貫通孔(透孔)80eが形成され、該貫通孔80eに不図示のインク供給管の一端が接続されるようになっている。このインク供給管の他端部は、前述したインクカートリッジに着脱自在に接続される。他方の共通液室80cは、上記共通液室80bと同様に構成され、同様にしてインク供給管が接続されるようになっている。
【0058】
前記アクチュエータ・ユニット82は、セラミックスや金属、例えばステンレスなどの硬質材料で形成された直方体状のベース部材84と、該ベース部材84上に2行n列(nは、例えば後述する各列のノズルの数と一致)のマトリックス状に配列された複数の圧電素子86、86、…とを有している。
【0059】
ベース部材84には、各列の圧電素子86の中央部に列方向(ベース部材84の長手方向)に延びる共通溝84aが形成されている(図5参照)。
【0060】
アクチュエータ・ユニット82は、複数の圧電素子86の全てに駆動電圧が印加される、すなわち全ての圧電素子86を駆動部とするノーマルピッチ構造とされている。勿論、これに限らず、駆動部圧電素子と駆動電圧が印加されない固定部圧電素子とを交互に配列したバイピッチ構造としても良い。
【0061】
ここで、各圧電素子86は、図5に示されるように積層型圧電素子からなり、厚さ20〜50μm/1層のPZT(=Pb(Zr・Ti)O3)88と、厚さ数μm/1層の銀・パラジウム(AgPd)合金から成る内部電極90とを交互に積層したものである。圧電素子86を、厚さ20〜50μm/1層の積層型とすることによって駆動電圧の低電圧化を図れ、例えば20〜50Vのパルス電圧で圧電素子の電界強度1000V/mmを得ることができる。なお、圧電素子86として用いる材料は上記に限られるものでなく、一般に圧電素子材料として用いられるBaTiO3、PbTiO3、(NaK)NbO3等の強誘電体などを用いることもできる。
【0062】
各圧電素子86の多数の内部電極90は、1層おきに交互に両端面に取り出され、両端面に形成された例えばAgPd合金から成る個別端面電極(不図示)にそれぞれ接続され、各圧電素子86の同行の他の圧電素子に対向する端面側の個別端面電極はベース部材84上の不図示の共通電極に例えばヤング率200kg/mm2以上の導通処理材料を介して接続されている。
【0063】
また、図示は省略されているが、各圧電素子86の同行の他の圧電素子に対向しない端面側の個別端面電極(以下、「個別電極」とも呼ぶ)及び前述の共通電極には、図4に示されるフレキシブルプリントケーブル(以下、「FPCケーブル」という)92が半田付けにより接合され、そのFPCケーブル92が不図示のドライバに接続されている。ドライバから駆動電圧を与えられることによって各圧電素子86の積層方向に電界が発生し、各圧電素子86には積層方向の伸びの変位(電界と同方向のd33方向の変位)が生起されるようになっている。
【0064】
前記液室ユニット104は、図5に示されるように、液室形成部材(流路板)96と、この液室形成部材96の図5における上面に接合された吐出孔形成部材としてのノズル板98と、液室形成部材96の図5における下面に接合された振動板99とを備えている。
【0065】
前記液室形成部材96は、例えばシリコン基板等から成り、その内部に前述の複数の駆動素子86に個別に対応する個別液室となる複数の断面L字状の流路94が形成されている。
【0066】
前記ノズル板98には、複数の流路94に個別に対応してインク滴を吐出し飛翔させるための微細孔である吐出孔としてのノズル98aが所定間隔で形成されており、該ノズル98aの径はインク滴出口側の直径で例えば35μm以下に形成されている。ノズル板98としては、本実施形態では、例えばエレクトロンフォーミング工法(電鋳)によって製造したNi(ニッケル)の金属プレートが用いられているが、これに限らず、その他の金属材料あるいはSi(ケイ素)を用いることもできる。ノズル板98の品質は、インクの滴形状、飛翔特性を決定し、画像品質に大きな影響を与えるものであるため、より高品位の画像品質を得るためには表面の均一化処理が不可欠である。従って、インク吐出側面に撥水層を形成(成膜)することが望ましい。
【0067】
前記振動板99は、変位部となるダイヤフラム部99aが複数の圧電素子86に個別に対応して所定間隔で形成されるとともに、前述の複数の流路94に個別に対応してインクをその流路内に供給するための供給口99bが形成された薄膜部材から成る。この振動板99としては、本実施形態では、例えばエレクトロンフォーミング工法(電鋳)によって製造したNi(ニッケル)の金属プレートが用いられている。
【0068】
すなわち、本実施形態では、上述のようにしてノズル板98、液室形成部材96及び振動板99によって、複数の圧電素子86に個別に対応して2列に並んだ個別液室が液室形成部材96の各流路94部分に形成されている。従って、以下では、流路94を個別液室94とも呼ぶものとする。一方の列の個別液室94のそれぞれは、供給口99bを介して前述した一方の共通液室80bにそれぞれ連通し、他方の列の個別液室94のそれぞれは、供給口99bを介して前述した他方の共通液室80cにそれぞれ連通している。
【0069】
図7には、インクジェットヘッド100を構成するフレーム部材80と該フレーム部材80の上面に配置された振動板99との平面図が概略的に示されている。この図7に示されるように、フレーム部材80の上面(振動板99に対向する側の面)には、共通液室80b、80cの周囲及び前述したアクチュエータ収納空間80aの周囲を取り囲む、ほぼ一定の幅の凸部80d(図7中に斜線(ハッチング)で表示)が形成されている。この凸部80dは、振動板99との接合面とされ、振動板99と接合した際にインクの漏れがないよう、共通液室80b、80cの周囲を途切れなくシールしている。
【0070】
更に、凸部80dは、図7等に示されるように、共通液室80b、80cの長手方向に延びる部分が共通液室80b、80cの端部より更に外側に延設されている。この理由については後述する。
【0071】
ところで、図7の円A内近傍を拡大して示す図8、及び図6を総合するとわかるように、振動板99には、共通液室80bの長手方向の一端部の共通液室80b内壁106の開口端縁を含む領域に円形開口99cが形成されている。振動板99のフレーム部材80との対向面側(接合面側)には、図6に示されるように、前記円形開口99cの外側部分に所定深さの凹部99dが形成されている。
【0072】
また、液室形成部材96の振動板99との対向面には、前記円形開口99cに対向して該円形開口99cより断面積の大きな空隙から成る逃げ部108と、該逃げ部108の内側上端部に連通し上下方向に伸びる所定断面積の円形の貫通孔110とが形成されている。ここで、貫通孔110の直径は、前述した円形開口99cより更に小さくされている。
【0073】
更に、ノズル板98には、前記貫通孔110に対向する位置に貫通孔110より小径でノズル98aとほぼ同程度あるいは一回り大きい径の開口98bが形成されている。
【0074】
この場合、前述した円形開口99c、逃げ部108、貫通孔110及び開口98bによって、共通液室80bの内壁106の振動板99側の開口端縁に接する領域に一側の開口端を有し他側が外部に開口した気泡排出路120が構成されている。また、開口98bと貫通孔110とによって外部に開口した排出孔部が構成されている。
【0075】
上記気泡排出路120によると、図6中に点線矢印で示される経路に沿って共通液室80b内に発生した気泡が外部に速やかに排出される。
【0076】
液室ユニット104の共通液室80bの長手方向の他端部、及び共通液室80cの長手方向の両端部にも、上記と同様の気泡排出路が形成されている(図7及び図4参照)。
【0077】
前記振動板99は、図5に示されるように、ほぼ同一平面上に位置出しされ、あるいは研削加工により面一とされた圧電素子86及びフレーム部材80の前記凸部80d上に接着剤を用いて接合され、これにより駆動ユニット102と液室ユニット104とが相互に一体化されている。なお、駆動ユニット102と液室ユニット104との接合方法を含む、インクジェットヘッドの製造方法については、後述する。
【0078】
本実施形態のインクジェットヘッド100では、各圧電素子86に共通電極を介して駆動電圧(駆動波形)を印加し、個別電極を介して記録画像に応じた選択信号を印加することによって、選択された圧電素子86に積層方向の変位を生起させて対応する個別液室94を振動板99のダイヤフラム部99aを介して加圧し、これによって個別液室94内のインクが加圧されてノズル98aからインク滴となって噴射され、用紙Pに画像を記録することができるようになっている。
【0079】
次に、本実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法について説明する。本実施形態では、インクジェットヘッド100は、予めアクチュエータ・ユニット82、液室ユニット104とを別々に組み立てて用意するとともに、フレーム部材80を別途用意し、その後に接着剤を用いてこれら3者82、104、80を接合することにより製造している。このような製造工程を採用することによって、3者82、104、80の良品同士を選んで組み付けることができて歩留りが向上するとともに、特に加工組付け工程で塵埃が発生しやすいフレーム部材80、アクチュエータ・ユニット82と、塵埃の付着を完全に避けたい液室ユニット104とを別々の工程で組付けることができるので、完成したインクジェットヘッド100の品質自体が向上する。以下、具体的に説明する。
【0080】
まず、中空部80a及び共通液室80b,80c及び凸部80d等が形成されたフレーム部材80を形成する。この形成は、例えば射出成形などによって行われる。
【0081】
次に、フレーム部材80の凸部80d表面の研削加工を行いその上面が僅かに削れて同一平面になるまで研削を行う。この理由については後述する。
【0082】
その後、フレーム部材80を例えばアセトンなどの有機溶剤により脱脂(洗浄)処理し、乾燥した後、表面処理として、例えば酸素プラズマ処理を行う。
【0083】
一方、アクチュエータ・ユニット82を以下の手順で作製する。
【0084】
すなわち、まず、ベース部材84に共通溝84aを形成して、この共通溝84aを含めて予め共通電極用の電極パターン(不図示)を印刷形成する。この電極パターンとしては、ここではNi−Ag又はAg−Pt等の合金の印刷材料を印刷して焼結したものが用いられるが、これに限られるものではない。
【0085】
次いで、両端面に端面電極となる電極を形成した2つのプレート状の独立した圧電素子を位置決め治具を用いてベース部材84上に位置決めして接着剤にて接着接合し、それぞれのプレート状の圧電素子の相互に対向する側の端面の端面電極をベース部材84上の電極パターンと導電性接着剤により電気的に接続する。
【0086】
次に、ダイヤモンド砥石をセットしたダイサー或いはワイヤソー等を用いて、例えば1ピッチ当たり100μm程度の幅で、ベース部材84表面から例えば深さ数μmを目安にして切り込み、2つのプレート状の圧電素子をスリット加工してアクチュエータとしての圧電素子86を分割形成する。このとき、ベース部材84に深さ数μm程度のスリット溝を入れて切断することによって、個々の分割した圧電素子86を完全に独立させる。なお、ベース部材84の共通溝84aにまでスリット溝が達しないので、前記電極パターンは溝部を通じて各圧電素子86の同行の他の圧電素子に対向する端面側の全ての端面電極と接続されたままであり、共通電極となる。この場合、圧電素子列の各圧電素子86の最上層の上面には電極が形成されない不活性層とされており、その表面の研削加工を行い、圧電素子86上面が僅かに削れて同一平面になるまで研削を行う。この理由については後述する。
【0087】
次に、ベース部材84の共通電極及び複数の圧電素子86の個別電極にFPCケーブル92を熱と加圧で接合することにより、アクチュエータ・ユニット82が完成する。なお、FPCケーブル92は複数の圧電素子86に個別に接続され、各圧電素子86を選択的に駆動できるパターンを有し、その接合部には予め半田メッキが施されている。
【0088】
次に、完成したアクチュエータ・ユニット82を、予め別途加工し組立てておいた液室ユニット104に対し、仮固定する。この仮固定は、例えば、不図示の台状の専用治具上で、位置決め治具を用いて液室ユニット104に対してアクチュエータ・ユニット82を位置決めしながら、複数の圧電素子86と液室ユニット104の振動板99のダイヤフラム部99aとを例えば紫外線硬化型接着剤を介して接合し、該接着剤に紫外線を照射して硬化させることにより行われる。
【0089】
ここで、本実施形態では、予め圧電素子86の表面の研削加工が行われているので、複数の圧電素子86(圧電素子列)の上面はほぼ同一平面となっており、いずれのダイヤフラム部99aも対応する圧電素子86に十分に接着される。すなわち、このような接着不良のダイヤフラム部99aが発生するのを防止するために、前述の如く、予め圧電素子86の表面の研削加工を行っているのである。
【0090】
次いで、アクチュエータ・ユニット82が仮固定された液室ユニット104に対してフレーム部材80を固定する。この固定は、次のようにして行われる。
【0091】
すなわち、フレーム部材80の凸部80d表面(中央部)に、不図示のディスペンサを用いて図9に示されるように、線引きにより接着剤ADを塗布する。この場合、接着剤ADとしては、例えば浸透性(低粘度)のエポキシ系接着剤が用いられる。しかし、接着剤ADとして、ポリイミド系その他の熱可塑性接着剤を用いても良い。
【0092】
また、この場合の接着剤ADの塗布領域は、図9に示されるように凸部80dの全面ではなく、共通液室80b,80cそれぞれの両側の共通液室80b,80cの長手方向に延びる凸部80d部分(の中央部分)のみであり、長手方向両端部の短手方向部分が除かれている。すなわち、前述した気泡排出路120の共通液室80b,80c側の開口端を形成する振動板99の円形開口99cの近傍部分は接着剤ADが塗布されない接着剤非塗布領域とされている。また、図9に示されるように、前述した凸部80dの長手方向の延設部上のディスペンサを用いた線引きによる接着剤ADの塗布が停止される位置には、接着剤の表面張力により、接着剤の溜りADPが形成される。すなわち、本実施形態では、フレーム部材80の凸部80dを共通液室80b,80cの長手方向端部より更に外側に延設し、その延設部の端部を接着剤塗布が停止される位置とし、そこに接着剤滞留領域を形成している。このため、共通液室80b、80cの長手方向の端部付近(気泡排出路120の近傍)の接着剤塗布量を均一にすることが可能となっている。
【0093】
なお、上記の接着剤ADの塗布は、例えば前述したフレーム部材80の表面処理から5時間以内に行われる。
【0094】
そして、フレーム部材80の中空部80aに液室ユニット104に一体化されたアクチュエータ・ユニット82を挿入した状態で、フレーム部材80に、液室ユニット104を位置決め治具を用いて位置あわせ(アライメント)して重ね合わせ、加圧(例えば196133Pa)及び加熱(例えば130℃)で圧着接合する。
【0095】
このとき、上記の加圧により、本実施形態で用いられている浸透系の接着剤は、図10中に矢印で示されるように、凸部80d表面の短手方向の非塗布部を均一になるように拡散する。この場合、共通液室80b、80cの短手方向の凸部80d部分を接着剤非塗布領域としているので、気泡排出路120近傍の余剰の接着剤を低減することができる。
【0096】
また、本実施形態の場合、凸部80dに接着剤が塗布されるので、その表面張力により十分な量の接着剤ADが凸部80dに塗布される。但し、接着剤ADの塗布量によっては、上記の加圧の際に、凸部80dの短手方向の非塗布部に拡散した余分な接着剤が振動板99に形成された円形開口99c(図6参照)の方に向かってはみ出す可能性もあるが、このはみ出した余分な接着剤は、まず、振動板99に形成された前述した凹部99d内に入り込み、その外側、すなわち気泡排出路120の一側の開口端に進入することを防ぐことができる。
【0097】
但し、凹部99dは、必ずしも設けなくとも良い。その理由は、凹部99dを設けない場合には、上記の余分な接着剤が振動板99に形成された円形開口99cにはみ出すことになるが、このはみ出した接着剤は、円形開口99c上方の逃げ部108内、特に、逃げ部108のうち円形開口99cより外側の空間部分に入り込み、気泡排出通路120の共通液室側の開口端である円形開口99cを塞ぐ可能性はないからである。逃げ部108は、凹部99dが設けられている場合であっても、接着剤の塗布量が多い場合には、同様の機能を果たす。また、逃げ部108の断面積(平面断面の断面積)は、貫通孔110に比べてかなり大きく形成されているので、逃げ部108の一部(凹部99dと反対側の空間部分)が接着剤で塞がれても、逃げ部108の最内側の上方に連通している排気孔部が塞がれることはなく、気泡排気路120内の通気状態は良好に維持される。
【0098】
また、本実施形態では、接着剤ADが塗布されるフレーム部材80の凸部表面には、予めプラズマ処理により酸化膜が形成されているので、接合面の清浄化(付着有機物の除去)及び接着剤のぬれ性を高めることができ、接着剤の均一な塗布が可能となってインクシール性が向上し、また接合強度が向上する。また、接着剤としてエポキシ系の接着剤が用いられているので、耐インク性も良好なものとなっている。
【0099】
この場合において、予めフレーム部材80の上端面(凸部80dの上端面)の研削加工が行われ面精度が確保されているので、液室ユニット104がフレーム部材80に対して接触不十分な箇所が生ずることなく、十分に接着される。すなわち、このために、予め前述したフレーム部材80の研削加工を行っているのである。
【0100】
但し、上記接着剤ADが硬化するまでには、時間を要するので、フレーム部材80とアクチュエータ・ユニット82のベース部材84との隙間に、例えば紫外線硬化型接着剤を注入塗布し、該接着剤に紫外線を照射して硬化させ、アクチュエータ・ユニット82とフレーム部材80とを仮固定することが望ましい。
【0101】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット34を構成するインクジェットヘッド100によると、液室ユニット104の内部には、駆動ユニット102を構成するフレーム部材80の内部に形成された共通液室80b,80cに振動板99に形成された供給口99bを介して個別に連通しノズル98aを有する個別液室94が複数の圧電素子86に個別に対応してそれぞれ設けられるとともに、共通液室80b,80cの内壁の振動板99側の開口端縁に接する領域に一側の開口端を有し他側が外部に開口した気泡排出路120が形成されている。このため、例えば共通液室80b,80cの内容積を増加することにより、インク供給量を十分に確保することが可能になる。また、共通液室80b,80cの内容積を増加することにより、共通液室80b,80c内における気泡が発生し易くなるが、この気泡は、共通液室80b,80c内の端部で滞留することなく、前記気泡排出路120を介して速やかに外部に排出される。これにより、気泡溜りに起因するインクの吐出性能の低下が防止されるとともに、共通液室80b,80c内部のインクの充填率が向上する。従って、本実施形態のインクジェットヘッド100によると、インク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能が良好となるので、ヘッドの長尺化及び記録速度の高速化に容易に対応することができる。
【0102】
また、本実施形態のインクジェットヘッド100では、フレーム部材80の振動板99側の面には、共通液室80b,80cを取り囲む凸部80dが形成されているので、該凸部80dを介してフレーム部材80と振動板99、すなわち駆動ユニット102と液室ユニット104とが密に接合され、インクシール性の向上が可能となっている。なお、接着剤を用いることなく、他の接合方法により凸部80dを介してフレーム部材80と振動板99とを接合する場合であっても同様にインクシール性の向上は可能である。
【0103】
また、本実施形態に係るインクジェットヘッド100の製造方法によると、前述のような構成のアクチュエータ・ユニット82、液室ユニット104がそれぞれ別々に組み立てられて予め用意される。また、フレーム部材80が予め形成され別途用意される。そして、振動板99と複数のアクチュエータ86とを所定の位置関係で接合することにより、振動板99とアクチュエータ・ユニット82とが一体化される。その後、フレーム部材80の共通液室80b,80cの内壁の開口端縁に接する領域に気泡排出路120の共通液室80b,80c側の開口端が位置するような位置関係で、フレーム部材80に対して振動板99を接着剤を用いて加圧接合することにより、フレーム部材80に対してアクチュエータ・ユニット82と一体化された液室ユニット104が組み付けられる。従って、この製造方法によれば、気泡溜りに起因するインクの吐出性能の低下を防止し、共通液室80b,80c内部のインクの充填率の向上によりインク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能が良好なインクジェットヘッドを製造することができる。
【0104】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によると、前述したインクジェットヘッド100を4つ含むヘッドユニット34と、該ヘッドユニット34に供給される4色のインクが個別に内蔵された4つのインク室をそれぞれ有するインクカートリッジとを有する記録ヘッド32とを備えている。このため、ヘッドユニット34を構成する各インクジェットヘッド100ではそれぞれのインク室からのイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインク供給量を確実に確保し、かつそれらのインクの吐出性能を良好にすることができ、これにより良好なカラー印刷性能(記録性能)を維持しかつ記録速度の向上を図ることが可能である。
【0105】
なお、上記実施形態では、フレーム部材80の凸部80dの表面に接着剤塗布領域とともに接着剤滞留領域が設定された場合について説明したが、これに限らず、図11(A)及び図11(B)に示されるように、凸部80dとは異なる面に接着剤滞留領域ADPが形成されていても良い。図11(A)は、接着剤塗布時の停止位置付近の領域(すなわち接着剤滞留領域ADP)を凸部80d表面より1段下がった平面に形成した変形例を示し、この場合接着剤停止位置の接着剤ADの溜まりが多い場合のはみ出しや、凸部80d側への回り込みが低減される。また、図11(B)は、接着剤塗布時の停止位置付近の領域(すなわち接着剤滞留領域ADP)を凸部80dに延設された傾斜面に形成した場合の変形例を示す。この場合には、接着剤滞留領域の面積を凸部全長を長くすることなく、容易に拡大することができるので、接着剤滞留領域の確保の目的でフレーム部材を必要以上に大型化する必要がなくなり、ひいてはインクジェットヘッドの小型化が可能になる。
【0106】
また、上記実施形態では、インクジェットヘッド100を構成するアクチュエータとしてd33方向の変位を利用する積層型圧電素子86を用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではなく、アクチュエータとしてd31方向の変位を利用する積層型圧電素子は勿論、その駆動により振動板を介して各個別液室からインクを吐出させることができるものであればその種類は特に問わない。
【0107】
さらに、上記実施形態では、ノズルの開口方向を圧電素子の変位方向と同軸上にしたサイドシュータ方式のインクジェットヘッドに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らずノズルの開口方向を圧電素子の変位方向と直交する方向にしたエッジシュータ方式のインクジェットヘッドにも本発明を適用することができる。
【0108】
また、上記実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが個別に内蔵されたインク室を有するヘッドユニットを備えたインクジェット記録装置について説明したが、これに限らず、いずれか1色のみ、あるいは任意の2色、あるいは任意の3色、あるいは5色以上のインクを内蔵するインク室を有するヘッドユニットを備えたインクジェット記録装置にも本発明は好適に適用できる。
【0109】
また、上記実施形態では、ヘッドユニットとインク室を有するインクカートリッジとが着脱自在である場合について説明したが、これに限らず、ヘッドユニットとインク室との全体が一体のユニットを構成していても良い。
【0110】
また、上記実施形態では、本発明の記録装置の一例としてプリンタ(カラープリンタ)について説明したが、これに限らず、複写機、ファクシミリ、複写機とファクシミリあるいはそれに加えてプリンタの機能を備える複合機などの画像形成装置一般に本発明は適用可能である。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜11に記載の各インクジェットヘッドによれば、インク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能を良好にすることができるという効果がある。
【0112】
また、請求項12〜18に記載の各インクジェットヘッドの製造方法によれば、インク供給量を確実に確保できるとともに、インクの吐出性能が良好なインクジェットヘッドを製造することができる。
【0113】
また、請求項19〜21に記載の各インクジェット記録装置によれば、良好な記録性能を維持しかつ記録速度の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態に係るインクジェット記録装置を一部破断して示す概略斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置の内部構成を示す側面図である。
【図3】図1の装置のヘッドユニットを構成するインクジェットヘッドを示す概略斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面を一部省略して示す図である。
【図7】インクジェットヘッドを構成するフレーム部材と振動板とを概略的に示す平面図である。
【図8】図7の円A内近傍を拡大して示す図である。
【図9】図8に示される凸部上の接着剤の塗布領域及び接着剤の滞留領域を示す図である。
【図10】図9の凸部に塗布された接着剤が拡散する様子を説明するための図である。
【図11】図11(A)及び図11(B)は、それぞれフレーム部材の凸部の変形例を示す図である。
【符号の説明】
10…インクジェット記録装置、32…記録ヘッド、34…ヘッドユニット、36…インクカートリッジ(インク室形成部材)、 80…フレーム部材、80a…中空部(アクチュエータ収納空間)、80b,80c…共通液室、80d…凸部、82…アクチュエータ・ユニット、86…圧電素子(アクチュエータ)、94…個別液室、 96…液室形成部材、98…ノズル板(吐出孔形成部材)、98a…ノズル(吐出孔)、98b…開口(排出孔部の一部)、99…振動板、99b…供給口、99d…凹部、100…インクジェットヘッド、104…液室ユニット、108…逃げ部、110…貫通孔(排出孔部の一部)、120…気泡排出路、AD…接着剤、P…用紙(記録媒体)。

Claims (21)

  1. アクチュエータの駆動に応じて吐出孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドであって、
    内部に少なくとも1つの共通液室とアクチュエータ収納空間とが形成されたフレーム部材と;
    前記アクチュエータ収納空間内に配置され、独立して駆動可能な複数のアクチュエータを有するアクチュエータ・ユニットと;
    前記各アクチュエータにより駆動される振動板を前記フレーム部材との境界部材として有し、前記共通液室に前記振動板に形成された供給口を介して個別に連通し前記吐出孔を有する個別液室が、その内部に前記複数のアクチュエータに個別に対応して設けられ、前記共通液室の内壁の前記振動板側の開口端縁に接する領域に一側の開口端を有し他側が外部に開口した気泡排出路が形成された液室ユニットと;を備えるインクジェットヘッド。
  2. 前記液室ユニットは、前記振動板と、該振動板とともにその内部に前記複数の個別液室を形成する液室形成部材と、前記液室形成部材の前記振動板とは反対側に固定され、前記各個別液室に連通する前記吐出孔が形成された吐出孔形成部材とを含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記フレーム部材の前記振動板側の面には、前記共通液室を取り囲む凸部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記フレーム部材と前記振動板とは前記凸部を介して接着剤により接合されていることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記凸部は、前記共通液室の長手方向に延びる部分が前記共通液室の端部より更に外側に延設されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記凸部の少なくとも前記共通液室の長手方向に延びる部分は、接着剤塗布領域とされ、該接着剤塗布領域の端部に接着剤滞留領域が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記接着剤滞留領域は、前記凸部とは異なる面によって形成されていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
  8. 前記気泡排出路の前記一側の開口端を形成する前記振動板の開口部分には、前記フレーム部材との接合面に面して凹部が形成されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  9. 前記気泡排出路は、外部に開口した前記他側の排出孔部と該排出孔部に連通して前記一側に設けられた前記排出孔部に比べてその断面積が大きな逃げ部とを有することを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  10. 前記接着剤は、エポキシ系接着剤であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  11. 前記各アクチュエータは、印加電圧に応じて物理的な変形を生じる圧電素子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
  12. アクチュエータの駆動に応じて吐出孔からインク滴を吐出するインクジェットヘッドの製造方法であって、
    内部に少なくとも1つの共通液室とアクチュエータ収納空間とが形成されたフレーム部材を用意する工程と;
    前記アクチュエータ収納空間内に配置可能で、独立して駆動可能な複数のアクチュエータを有するアクチュエータ・ユニットを用意する工程と;
    前記各アクチュエータにより駆動されるとともに複数の供給口が形成された振動板を有し、前記複数の供給口に個別に連通し前記吐出孔を有する個別液室が、その内部に前記複数のアクチュエータに個別に対応して設けられ、前記振動板に一側の開口端が形成され他側が外部に開口した気泡排出路が形成された液室ユニットを用意する工程と;
    前記振動板と前記複数のアクチュエータとを所定の位置関係で接合することにより、前記振動板と前記アクチュエータ・ユニットとを一体化する工程と;
    前記共通液室の内壁の開口端縁に接する領域に前記気泡排出路の前記一側の開口端が位置するような位置関係で、前記フレーム部材を前記振動板に接合する工程と;を含むインクジェットヘッドの製造方法。
  13. 前記フレーム部材及び前記複数のアクチュエータと前記振動板との接合は、浸透系の接着剤を用いて行うことを特徴とする請求項12に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  14. 前記接合に際して、前記フレーム部材の前記振動板に対する接合面の前記気泡排出路近傍の一部に接着剤が塗布されない接着剤非塗布領域を設け、該接着剤非塗布領域以外の前記接合面の領域に前記接着剤を塗布した後、前記フレーム部材及び前記複数のアクチュエータに前記振動板を圧接することを特徴とする請求項13に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  15. 前記接着剤としてエポキシ系接着剤を用いることを特徴とする請求項13又は14に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  16. 前記フレーム部材は熱可塑性樹脂により形成され、
    前記フレーム部材の前記振動板との接合面に、前記接合に先立ってプラズマ処理により酸化膜を製膜する工程を、更に含むことを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  17. 前記アクチュエータ・ユニットを用意する工程に先立って、前記複数のアクチュエータと該複数のアクチュエータのベースとなるベース部材とを用いて前記アクチュエータ・ユニットを組み立てる工程を、更に含むことを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  18. 前記液室ユニットを用意する工程に先立って、
    前記振動板と、その内部に前記複数の供給口に個別に連通する前記複数の個別液室となるべき空間が形成された液室形成部材とを一体化し、前記液室形成部材の前記振動板とは反対側の面に前記複数の個別液室に個別に対応する複数の吐出孔が形成された吐出孔形成部材を固定して前記液室ユニットを組み立てる工程を更に含むことを特徴とする請求項12〜17のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドの製造方法。
  19. 記録信号に応じて駆動されるアクチュエータの発生する駆動エネルギに応じて吐出孔からインク滴を吐出して記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを少なくとも1つ含むヘッドユニットと、該ヘッドユニットに供給される少なくとも1色のインクを内蔵する少なくとも1つのインク室をその内部に形成する少なくとも1つのインク室形成部材とを有する記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置。
  20. 前記ヘッドユニットと、前記インク室形成部材とは、着脱自在であることを特徴とする請求項19に記載のインクジェット記録装置。
  21. 前記インク室形成部材は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクに対応して個別に設けられていることを特徴とする請求項19又は20に記載のインクジェット記録装置。
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