以下、第1乃至第3発明に係る洗濯機の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例の洗濯機の外観斜視図、図2は本実施例の洗濯機の内部構成を示す右側面縦断面図、図3はハウジングを構成する上面板に各種部材を取り付けた状態での上面平面図、図4は水加熱ユニットの分解図である。
この洗濯機の外形を成すハウジング1は全体として略直方体形状の箱形状とされ、その内部には、有底円筒形状の外槽2が前吊棒3及び後吊棒4(図では各1本ずつが見えているが実際には各2本ずつ存在する)により前方に向けて傾斜するように吊支されている。この外槽2の上部前方への突出に対応して、ハウジング1の前面上部も張り出している。外槽2の内部には、本発明における洗濯槽として、周壁に多数の脱水孔を有する洗濯脱水槽5が主軸6を中心に回転自在に軸支されている。また、この洗濯脱水槽5の底部には洗濯物を撹拌するためのパルセータ(撹拌翼)7が配置されており、主軸6の延伸上にはダイレクトドライブ用のモータ8と、動力切換え用のクラッチ9とが設けられている。クラッチ9は外槽2の底面下に取り付けられたトルクモータ10の動作により、主として洗い運転やすすぎ運転時にはパルセータ7のみを一方向又は両方向に回転させ、脱水運転時には洗濯脱水槽5とパルセータ7とを一体に一方向(これを正転方向とする)に回転させるべく機械的な切換えを行う。
外槽2の上部後方には、内部に洗剤や柔軟仕上剤を収容しておくための洗剤容器を引き出し自在に備える注水口部11が設置されている。ハウジング1内の上部後方に設置された給水バルブユニット14の吸入口である給水管13の入口端は、ハウジング1後部上面に形成された開口を通して外部に露出した給水口12となっており、外部の水道栓等に連結されたホースがこの給水口12に接続される。給水バルブユニット14に含まれる主給水弁14a及び仕上剤給水弁14bの出口端はそれぞれ注水口部11に接続されている。一方、同じく給水バルブユニット14に含まれる、第1発明における第2の給水手段、又は第2及び第3発明における給水手段の一部を構成するミスト給水弁14cの出口端は、本発明における水加熱手段を含む水加熱ユニット30に接続されている。主給水弁14aが開放されると、給水管13を通して供給される水道水が注水口部11に装填された洗剤容器内の洗剤収容部に流れ込み、一方、仕上剤給水弁14bが開放されると給水管13を通して供給される水道水は洗剤容器内の仕上剤収容部に流れ込み、いずれの場合も、注水口部11の前部に形成された吐水口から洗濯脱水槽5内に向けて水が吐き出される。即ち、主給水弁14a及び注水口部11が第1発明における第1の給水手段に相当する。
また、注水口部11の下面であって吐水口のすぐ近くには、斜め下前方に向けて水を霧状に噴射するノズル31が、第1発明における第2の給水手段を構成する噴霧手段、又は第2及び第3発明における給水手段の一部として設けられており、ミスト給水弁14cが開放されたときに水加熱ユニット30で加熱された水がノズル31に供給され、ノズル31から洗濯脱水槽5内に霧状に噴射されるようになっている。
外槽2の底部の前端部つまり最低部には排水開口15が形成され、排水開口15には排水管16の一端が接続され、排水管16は排水弁17により開閉されるようになっている。排水管16の他端は、底部の脚台の側面に形成された排水口18に至り、図示しない起立自在な排水ホースを介して外部の排水溝に連なっている。排水弁17の開閉動作も上記クラッチ9の連結切り換え動作と同様にトルクモータ10の動作に連動している。即ち、トルクモータ10を駆動させることで、クラッチ9により洗濯脱水槽5とパルセータ7とが一体に回転するように接続したときには排水弁17は開放状態となり、クラッチ9により洗濯脱水槽5とパルセータ7との連結を解除してパルセータ7のみが回転するようにしたとき(洗濯脱水槽5はバンドブレーキにより回転が拘束されている)には排水弁17は閉鎖状態となる。また、図示しないが外槽2の底部にはエアトラップが形成され、エアトラップに接続されたエアホースの他端は本発明における水位検知手段に相当する水位センサ19に接続されている。
ハウジング1の構造について詳細に説明すると、ハウジング1は、背面板1a、右側面板1b及び左側面板1cが一体に繋がった形状の枠体21と、その枠体21とは別部材であって枠体21の前方に取り付けられる前面板22と、枠体21の上部に取り付けられる上面板23と、枠体21及び前面板22の下端を保持する脚台24とを含む。上面板23の略中央には洗濯物を投入するための洗濯物投入口25が形成され、洗濯物投入口25を開閉するための上蓋26が2つ折り起立自在に上面板23に取り付けられている。
図3に示すように、上面板23にあって洗濯物投入口25の後方と前方とにはそれぞれ凹所231、232が形成され、後部凹所231には前述の給水バルブユニット14や図示しない風呂水ポンプなどが収容され、後部凹所231の上面は後部化粧カバー27で被覆される。一方、前部凹所232には各種の電気部品が搭載された電気基板を含む回路ユニット20が収容され、前部凹所232の上面は操作ボタンなどを含む操作パネルが形成された前部化粧カバー28で被覆される。さらにまた、上面板23にあって洗濯物投入口25の左右の縁部233も側部化粧カバー29で被覆される。
水加熱ユニット30は、この上面板23にあって洗濯物投入口25の左縁部と左側面との間の下面に取り付けられている。水加熱ユニット30は、図4に示すように、大別して、本発明における水加熱手段であるユニット本体部320と、これを上下から挟み込むように収納保持する上部ケース部材310及び下部カバー部材330とから成る。ユニット本体部320はそれ自体が高温になるため、上部ケース部材310及び下部カバー部材330は耐熱温度が高く難燃性の材料、例えばガラス繊維入りのポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)の一体成型品である。
ユニット本体部320は、内部に直管状の水管とヒータ挿通穴とが略平行に延伸して設けられた細長い形状のアルミニウム製の2本の熱伝導ブロック323を有し、その2本の水管の一方の端部がシリコーン製のU字管324により接続され、他方の端部には水導入口321と水導出口322とが設けられている。これにより、水導入口321から水導出口322にまで至る略U字形状の通水路が形成される。一方、熱伝導ブロック323の2本のヒータ挿通穴には、ニクロム線を発熱源として利用した棒状のヒータ325がそれぞれ挿通されており、外部より加熱電流が供給されてヒータ325が発熱すると、熱伝導ブロック323の温度が上昇し、水管中を流れる水はその周囲から効率良く加熱される。また、図示していないが、水導出口321の近傍には、通水路内の水の温度を検知するためのサーミスタが第2及び第3発明における温度検知手段として設けられている。
図3に戻って説明すると、給水バルブユニット14に含まれるミスト給水弁14cの出口に接続された導水管32は上面板23の後部凹所231の前壁231bを貫通して上面板23の下面に案内され、水加熱ユニット30の水導入口321に接続されている。一方、水加熱ユニット30の水導出口322に接続された導水管33はほぼ真横に延伸され、ノズル31に接続されている。即ち、ミスト給水弁14cが開放されると、水道水が導水管32を経て水加熱ユニット30内に形成されている上記通水路を通り、導水管33を経てノズル31に至り、ノズル31から霧状の微小径の水滴となって洗濯脱水槽5内に噴射される。水加熱ユニット30のヒータ325に加熱電流が供給されると、上述したように水加熱ユニット30を通過する際に水が加熱されて温水となるから、ノズル31より温水を噴射させることができる。
図5は本実施例の洗濯機の要部の電気系構成図である。制御の中心には、CPU、RAM、ROM、タイマなどを含んで構成される制御部40が第1乃至第3発明における制御手段として据えられている。制御部40には、スタートキー43a、コース選択キー43b、温水ミスト設定キー43cを含む複数の操作キーを備える操作部43からキー信号が、水位センサ19から外槽2の内部に貯留された水の水位に応じた水位検知信号が、回転角センサ44からモータ8の回転速度や回転方向を反映した回転パルス信号が、蓋スイッチ45から上蓋26の開閉に連動する蓋開閉信号が、サーミスタ48から水加熱ユニット30の通水路を通過した後の水の温度に対応した温度検知信号が、それぞれ入力される。制御部40は、インバータ駆動部41を介してモータ8の回転を制御するとともに、負荷駆動部42を介して、主給水弁14a、仕上剤給水弁14b及びミスト給水弁14cの開閉動作と、水加熱ユニット30に含まれるヒータ325のオン/オフ動作と、トルクモータ10の動作とを制御する。上述したようにトルクモータ10により、クラッチ9の連結・離脱動作と、排水弁17の開閉動作とが達成される。さらにまた、制御部40は、操作部43のキー入力の受付状態や洗濯の進行状況などを表示部46に表示させるとともに、使用者の注意を喚起するために必要に応じてブザー47を鳴動させる。
図6は本実施例の洗濯機における標準的な洗濯行程の流れを示すフローチャートである。また、図7は洗濯行程の中での洗い行程の前半の各部の制御動作を示すタイミングチャート、図8はその洗い行程の中での給水行程及び浸透行程の制御動作を示すフローチャート、図9は洗い行程の給水による洗濯脱水槽内の水位の状態の一例を示す模式図である。これら図面を参照して、本実施例の洗濯機における洗濯行程の中での、上記ミスト給水弁14c、水加熱ユニット30、ノズル31等を含む温水ミスト供給装置の使用方法の一例について説明する。
使用者が洗濯物を洗濯脱水槽5に収容し、操作部43においてコース選択キー43bにより所望の運転コース(この場合には標準コース)を選択し、温水ミスト洗浄を行いたい場合には温水ミスト設定キー43cを押して温水ミストの使用を選択した上でスタートキー43aを押すと、制御部40は運転を開始する。まず給水を行う前に、洗濯脱水槽5に投入された洗濯物の量つまり負荷量が検知される(ステップS1)。具体的には、制御部40はモータ8を駆動させることでパルセータ7を短時間回転させ、それによる惰性回転が継続する時間に応じて負荷量を判断する。もちろん、負荷量検知はこの方法に限らず、如何なる方法を用いてもよい。こうして検知された負荷量に応じて、洗いや溜めすすぎ時の水位を決定する。表示部46には、ここで決定された水位に応じた洗剤投入量の指示が表示されるから、使用者はその表示に従って適当な量の洗剤を洗濯脱水槽5内に投入する。
実質的な洗濯が開始されると、まず洗い行程が実行されるが(ステップS2)、その際の制御動作については図7、図8及び図9を参照して詳細に説明する。洗い行程においては、給水行程、浸透行程、濃縮行程、本洗い行程が順次実行される。
まず最初の給水行程では、制御部40は主給水弁14a及びミスト給水弁14cを開放し(ステップS10)、注水口部11とノズル31とから洗濯脱水槽5内に給水を開始する。但し、ノズル31から供給される水の水量は注水口部11から供給される水の水量に比べて格段に少ないので、実質的には注水口部11から供給される水によって洗濯脱水槽5内に水が溜まってゆく。また、このとき、ヒータ325には通電がなされていないので、ノズル31から噴射されるのは加熱されていない水道水である。そのため、サーミスタ48による検知温度は図7(a)に示すように給水行程中はほぼ一定である。
注水口部11の洗剤容器内に粉末洗剤又は液体洗剤が収容されている場合には、この段階で洗剤は洗濯脱水槽5内に落下する。制御部40は給水開始後に水位センサ19による水位検知信号を監視し、洗濯脱水槽5内の水位がリセット水位LRSTに到達したか否かを判定する(ステップS11)。図9に示すように、リセット水位LRSTは洗濯脱水槽5の底壁面近くに設定された水位位置であり、水位センサ19により検知可能な最低水位である。
リセット水位LRSTに到達していなければ、制御部40は給水開始から15分が経過したか否かを判定する(ステップS26)。外部の水道栓からの水道水又は風呂水が問題なく供給されている状況下では、給水開始から15分が経過する前に必ずリセット水位LRSTに到達する。したがって、リセット水位LRSTに到達する前に15分が経過してしまった場合には、給水流量が異常なほど少ないか又は全く水が供給されていない(例えば水道栓が閉栓されている)ものと判断できる。そこで、第1発明における異常報知手段としてのブザー47を鳴動させるとともに表示部46で所定の表示を行うことにより、使用者に対し給水異常を報知する(ステップS27)。この報知によって使用者は例えば水道栓の開栓忘れや断水などの不具合を認識し、適切な処置を採ることができる。
ステップS26で未だ給水開始から15分が経過していない場合にはステップS11に戻る。外部からの水の供給が適切に行われている場合には、ステップS11からS12へと進み、水位センサ19からの水位検知信号により洗濯脱水槽5内の水位が浸透水位Laに到達したか否かを繰り返し判定する。この洗濯機では、上述したように負荷量に応じて洗い運転時の水位が設定されるようになっており、こうした洗い運転のための水位は図9に示すようにL1〜L10の10段階のいずれかに設定されるようになっている。即ち、負荷量が最小である場合には設定水位はL1になり、負荷量が最大である場合には設定水位はL10になる。設定水位がL2〜L10である場合には上記浸透水位LaはL2に定められており、設定水位がL1である場合にのみ浸透水位LaはL1である。いま、ここでは設定水位がL10であるものとすると、浸透水位LaはL2の位置である。
浸透水位Laに到達した時点で、制御部40はモータ8を駆動させることでパルセータ7を左右に反転駆動させ、洗濯脱水槽5内の貯留水に水流を生じさせる(ステップS13)。次に、最初の設定で温水ミスト洗浄が設定されているか否かを判定し(ステップS14)、温水ミスト洗浄が設定されていない場合には、注水口部11からの給水を継続し、ステップS30〜S34の処理を実行する。
即ち、まずパルセータ7の回転開始から30秒が経過したか否かを判定し(ステップS30)、30秒が経過するまでは水位センサ19からの水位検知信号により洗濯脱水槽5内の水位が濃縮水位Lbに到達したか否かを判定する(ステップS31)。設定水位がL7〜L10である場合、濃縮水位Lbはその設定水位よりも4段階低い位置に定められる。ここでは設定水位がL10であるので、図9に示すように、濃縮水位Lbはそれよりも4段階低いL6である。なお、設定水位がL1〜L6である場合には、濃縮水位Lbは浸透水位Laと等しくなる。
ステップS31で未だ濃縮水位Lbに到達していないと判定されるとステップS30に戻る。パルセータ7の回転開始から30秒が経過するか、或いは濃縮水位Lbに到達するか、いずれかの条件が先に満たされた時点でステップS32に進み、主給水弁14aを閉鎖して給水を停止する。そして、その状態で所定の浸透時間が経過するまでその状態を維持し(ステップS33)、その間に洗濯物は高い濃度の洗剤水に浸った状態で緩やかに撹拌され、洗濯物に付着している汚れが剥離し易くなる。そして、所定の浸透時間が経過したならば(ステップS33でYES)、モータ8を停止することでパルセータ7の回転を停止させる(ステップS34)。これで、温水ミスト洗浄設定無し時の浸透行程及び濃縮行程前半の追加給水に相当する期間を終了し、次の濃縮行程における撹拌(水流の発生)に移行する。
一方、温水ミスト洗浄が設定されている場合には、ステップS14からS15へと進み、直ちに主給水弁14aを閉鎖する。そして、それから2秒間待機した後に(ステップS16)、ヒータ325をオンして水加熱ユニット30の通水路を通る水の加熱を開始する(ステップS17)。主給水弁14aの閉鎖によって注水口部11からの水の吐出は停止し、一方、ヒータ325をオンしたことによってノズル31から噴射される水の温度は上昇し温水となる。また、ヒータ325をオンしようとする時点では、ステップS11及びS26の処理により、外部から正常に水の供給が行われていることが判明しているので、例えば水道栓が閉栓しているといったおそれはなく、ヒータ325の空焚きを防止することができる。
一般に、洗濯脱水槽5内に収容されている洗濯物はすぐには吸水しないため、上記のように浸透水位Laまでの水が貯留された状態では洗濯物は未だあまり吸水しておらず、洗濯脱水槽5内に収容された洗濯物の下部の一部のみが水に浸り、水面上に洗濯物の上部が殆ど乾いた状態で存在している。また、使用者により投入された粉末洗剤は多くが、その殆ど乾いた洗濯物の上に乗った状態となっている。この状態で上方から温水が霧状に降り掛かる。
制御部40はヒータ325をオンした後、後述するようにミスト給水弁14c及びヒータ325の動作制御処理を実行し(ステップS18)、その後、所定の浸透時間が経過したか否かを判定する(ステップS19)。ここでの浸透時間は主給水弁14aをオフした時点から5分である。そして、この浸透時間が経過するまではステップS18に戻る。即ち、この5分の浸透行程の期間中には、以下のような制御が実行される。
ステップS15で主給水弁14aが閉鎖された後、ミスト給水弁14cは連続的に開放されるのではなく、10秒毎に開閉が交互に繰り返され、その状態が3分間継続する。ミスト給水弁14cが閉鎖されると、水加熱ユニット30の通水路に水が送り込まれなくなるため、水圧が下がってノズル31からの噴霧も停止する。そのとき、水加熱ユニット30の通水路には水が滞留した状態となり、この水がヒータ325によって加熱され続けるから、その水温は上昇する。10秒が経過してミスト給水弁14cが開放されると、水加熱ユニット30の通水路内に水道水が送り込まれ、その直前に通水路内に滞留していた高温の水がノズル31に送られて洗濯脱水槽5内に噴射される。即ち、ミスト給水弁14cを開閉させることで間欠的にノズル31から洗濯脱水槽5内へ温水を噴射させることにより、図7(a)に示すように、特にミスト給水弁14cが開いた直後に高温の水を洗濯脱水槽5内に噴射することができる。特に洗い行程の初期には、吸水していない洗濯物の上に洗剤が乗った状況になっている場合が多く、そうした状況下で高温の水をそうした洗濯物に吹き掛けることで、洗剤を迅速に溶解させることができる。
この例では、ミスト給水弁14cの開放時に水加熱ユニット30に供給される水の流量は1L/分程度であり、上記のように間欠的にノズル31から温水を噴射する際に、噴射される水の温度は平均して、外部から供給される水道水の温度よりも15℃程度上昇したものとなる。したがって、水道水の水温が20℃である場合には、平均的には35℃程度の温水を噴霧することができ、瞬間的には40〜45℃程度の温水を噴霧することが可能である。
一方、ヒータ325は基本的には連続的に通電しておくことができるが、ここでは、60秒間の中で5秒だけヒータ325への通電を停止し、それを繰り返す。この5秒間の通電停止の間に、ヒータ325へ電流が供給されていないことを検知することによって、ヒータ325への加熱電流をオン/オフする回路部品(具体的には電磁リレー)に短絡が無いか否かをチェックしている。即ち、60秒に1回、短絡検知を行うことによって、高い安全性を確保している。
浸透行程開始当初のモータ8の駆動パターンは、右方向0.5秒オン−0.6秒オフ−左方向0.5秒オン−0.6秒オフを1周期とし、オン時のパルセータ7の回転速度を約100rpmに設定し、これを40秒間繰り返す。こうした制御によって、洗濯脱水槽5内の貯留水には小刻みに水流の方向が反転する浸透A水流が発生する。浸透A水流が生じている期間では、水流に乗って洗濯物が左右に回転し、その洗濯物の上に温水ミストの噴霧による微小径の温水が降り掛かる。そのため、投入された粉末洗剤が洗濯物の上に乗っているような場合に洗剤に湿り気を与えつつ貯留水の中に落下させ、それによって洗剤の溶解を促進させることができる。
40秒間の浸透水流の期間に引き続く4分20秒の期間には、モータ8の駆動パターンを、右方向1.0秒オン−4.0秒オフ−左方向1.0秒オン−4.0秒オフを1周期とし、オン時のパルセータ7の回転速度を75rpmに設定し、これを繰り返す。こうした制御によって、洗濯脱水槽5内の貯留水には水流が左右に反転し且つその反転の間に水流の停止している期間の長い浸透B水流が発生する。浸透B水流が生じている期間では、水流が停止している期間が長いので、同一状態の洗濯物の繊維表面に付着した微小径の温水が繊維内に確実に浸透し、通常の給水よりも高い温度で以て繊維に付着している汚れを浮かせることができる。
浸透行程に移行してから3分が経過すると、ミスト給水弁14cのオン/オフ駆動を停止して連続的に開放させる。それによって、ノズル31から連続的に温水が洗濯脱水槽5内に噴霧される。そして、連続的な温水ミストの噴霧開始から2分が経過したならば、上記ステップS19にて浸透時間が経過したと判定され、制御部40はヒータ325をオフするとともにパルセータ7の回転も停止する。また同時に、主給水弁14aを開いて注水口部11から洗濯脱水槽5内への給水を再開する(ステップS20)。但し、ミスト給水弁14cはすぐには閉鎖せず、ヒータ325をオフしてから30秒が経過するまで待ち(ステップS21)、30秒経過時点でミスト給水弁14cを閉じる(ステップS22)。即ち、ヒータ325をオフしてから30秒間は水加熱ユニット30の通水路内に水道水が流れ続けるため、ヒータ325の余熱はこの水を加熱するために使用される。そのため、ヒータ325の余熱により通水路内の水の温度が異常に過熱されることがなく、高い安全性が確保できる。
制御部40は注水口部11からの給水再開後に水位センサ19による水位検知信号を監視し、洗濯脱水槽5内の水位が浸透水位Laよりも高い濃縮水位Lbに到達したか否かをチェックし、濃縮水位Lbに到達した時点で再び主給水弁14aを閉じて給水を停止する(ステップS23)。以降は図7に戻って説明する。洗濯脱水槽5内の水位が濃縮水位Lbに達すると、温水ミスト洗浄設定有りの場合には、制御部40は浸透行程時の後半の連続的な温水ミスト供給時と同様に、ミスト給水弁14cを開放し、その2秒後にヒータ325をオンする。ここで、2秒間の時間遅延を設けているのは、水加熱ユニット30の通水路内に確実に水が充満した状態で加熱が開始されるようにするためである。これにより、ノズル31から洗濯脱水槽5内に霧状に温水が噴射される。
また、制御部40はミスト給水弁14cの開放と同時にモータ8を駆動させることでパルセータ7を再び回転させ、洗濯脱水槽5内の貯留水に水流を生じさせる。このときのモータ8の駆動パターンは、右方向1.0秒オン−1.0秒オフ−左方向1.0秒オン−1.0秒オフを1周期とし、オン時のパルセータ7の回転速度を約100rpmに設定し、これを2分間繰り返す。このときには、後述の本洗い行程時の水流よりは弱いものの、洗濯物を撹拌し得るような濃縮水流が洗濯脱水槽5内の貯留水に生じる。これによって溶け残っていた洗剤が確実に溶解するとともに、通常、本洗い行程時よりも洗剤含有濃度が高く、しかも水温も高めである洗剤水が洗濯物の繊維に浸透することで、繊維からの汚れの剥離が一層進行する。なお、この濃縮行程においても、ヒータ325は60秒中に5秒間オフされ、その間に上述したような短絡検知が実行される。他方、温水ミスト洗浄設定無しの場合には、温水ミストを供給せずにパルセータ7の反転駆動のみを実行する。
温水ミスト洗浄設定有りの場合には、ミスト給水弁14cの再開放及びパルセータ7の駆動から2分が経過すると、濃縮行程から本洗い行程に移行し、制御部40はヒータ325をオフするとともにパルセータ7の回転も停止する。また同時に、主給水弁14aを開いて注水口部11から洗濯脱水槽5内への給水を再開する。このときにも、ミスト給水弁14cはすぐには閉鎖せず、ヒータ325をオフしてから30秒が経過した時点でミスト給水弁14cを閉じる。その理由は上記と同じである。
ここまでで温水ミストを利用した浸透行程及び濃縮行程は終了する。上述したように温水を洗濯脱水槽5内に噴霧するためにヒータ325による加熱が行われるため、高い安全性を確保するべく、特にヒータ325の空焚き等の異常加熱を確実に防止することが重要である。その対策の一つとして、上述したように洗濯脱水槽5内の水位が規定時間(ここでは15分)以内にリセット水位LRSTに到達しない場合に給水異常であるとみなして給水異常報知を行い、ヒータ325の動作も行わないようにしている。しかしながら、例えば、途中でノズル31が目詰まりしたために温水の噴霧ができなくなって水加熱ユニット30の通水路内に水が滞留したような場合、当初は水道水が供給されていたものの途中で断水等によって水の供給が停止してしまった場合、或いは、ミスト給水弁14cが故障していて注水口部11からの給水は行えるものの水加熱ユニット30への水の送給はできない場合、などの不具合に関しては上記制御では対応することができない。そこで、こうした各種の不具合は発生した場合でもヒータ325による異常加熱を防止するために、制御部40はサーミスタ48による検知温度に基づいて以下のような2種類の異常検知処理を実行している。
図7(a)に示すとともに上述したように、ノズル31から間欠的に温水が噴射されるとき、水道水の水温が20℃であるとすると、噴霧される温水の温度は平均的には35℃程度となり、噴霧開始直後には温水の温度は瞬間的に40〜45℃程度となる。水道水の水温が高ければ加熱後の水温はさらに高くなるものの、ヒータ325やミスト給水弁14cの動作が正常であれば加熱後の水の温度が60℃以上になることは殆どあり得ないと考えられる。例えば、ノズル31がゴミ等で目詰まりして噴霧が行えなくなった場合、或いは、当初は正常に水加熱ユニット30に水が供給されていたのに途中で断水やミスト給水弁14cの故障などによって水が送給されなくなってしまった場合には、水加熱ユニット30の通水路内に水が滞り、同じ水がヒータ325で加熱され続ける。そのため、水の温度は異常に上昇することになる。そこで、この洗濯機では、サーミスタ48で検知した水の温度が異常に高い場合に、水加熱ユニット30の通水路内に水が滞留するような異常であると判断する。
具体的には、制御部40はサーミスタ48による検知温度が得られると、その温度が異常検知閾値(例えば65℃)以上であるか否かを判定する。そして、1秒毎にこうした判定を繰り返し、4回連続して検知温度が異常検知閾値以上である場合に、異常であると判断する。その場合には、ヒータ325への通電を停止して異常加熱を防止する。但し、温水の噴霧が出来なくなっても、注水口部11を介した洗濯脱水槽5への水の供給が可能である場合には、洗濯運転を続行するのには実質的に支障がない。そこで、洗濯運転は続行し、仮に最後まで運転が可能であった場合には、運転終了とともに表示部46により異常があったことを報知する。もちろん、断水等によって注水口部11を介した給水が行えない場合には、以降の本洗い行程やすすぎ行程等において給水不良が検知されて運転が中止されることになる。これが第1の異常検知処理である。
一方、洗濯運転の当初からミスト給水弁14cが故障しているような場合には、ミスト給水弁14cのオン制御を行っても弁が開かず水加熱ユニット30には水が供給されない。このとき主給水弁14aも故障していれば図8のステップS11、S26の処理により給水異常が検知されるが、主給水弁14aが正常である場合にはそうした給水異常の検知は機能しない。そこで、こうした水加熱ユニット30の通水路内に水が供給されないような異常を検知するために、第2の異常検知処理が用意されている。即ち、水加熱ユニット30の通水路内に最初から水が供給されない場合、その通水路内には空気が充満しており、ヒータ325は空気を加熱することになる。空気は水に比べて熱伝導率が格段に低いため加熱されにくく、特に熱伝導ブロック323の外部に配置されたサーミスタ48の位置での空気の温度上昇はそれほど大きくなく、水が通水路内に充満している場合と明確に区別することができる。したがって、ヒータ325をオンする前後の温度変化を監視し、その温度変化が小さい場合には水加熱ユニット30の通水路内に水が無いものと判断することができる。
具体的には、制御部40は浸透行程の開始から2秒経過した後に、ヒータ325をオンするが、そのときにサーミスタ48による検知温度を取得し、これを初期温度Taとして記憶する。次に、浸透行程の開始から30秒が経過した時点でサーミスタ48による検知温度の繰り返し取得(例えば1秒毎)を開始する。このとき検知温度Tbが得られると、温度差ΔT=Tb−Taを計算し、その温度差ΔTが3℃以下であるか否かを判定する。検知温度Tbが得られる毎に温度差ΔTを求めて同様の判定を行い、30秒連続して温度差ΔTが3℃以下である場合に、異常であると判断する。その場合には、ヒータ325への通電を停止して異常加熱を防止する。また、このときにも上記第1の異常検知処理と同様に、洗濯運転は続行させ、仮に最後まで運転が可能であった場合には、運転終了とともに表示部46により異常があったことを報知する。このように様々な不具合に対応して、ヒータ325の異常加熱を防止して、高い安全性を確保することができる。
なお、上記第1及び第2の異常検知処理は、ヒータ325をオンする期間でないと意味がないため、いずれも浸透行程及び濃縮行程の期間中、連続的に処理を実行し、濃縮行程の終了時点で処理を終了する。
図7の本洗い行程の開始時点からの制御に戻って説明すると、制御部40は主給水弁14aを開いた後、水位センサ19による水位検知信号を監視し、洗濯脱水槽5内の水位が本洗い開始水位Lcに到達したか否かをチェックし、本洗い開始水位Lcに到達したならば、給水を継続しつつモータ8を駆動してパルセータ7の回転を再び開始する。本洗い開始水位Lcは設定水位に応じて定められ、設定水位がL1〜L3である場合にはLcはその設定水位、設定水位がL4〜L7である場合にはLcはその設定水位よりも1段階下の水位、設定水位がL8〜L10である場合にはLcはその設定水位よりも2段階下の水位に定められる。ここでは設定水位がL10であるので、図9に示すように、本洗い開始水位Lcはそれよりも2段階低いL8である。
本洗い行程移行後のモータ8の駆動パターンは、右方向1.6秒オン−0.4秒オフ−左方向1.6秒オン−0.4秒オフを1周期としこれを繰り返す。パルセータ7の回転速度としては浸透行程及び濃縮行程のときよりも高くし、約120rpmとする。但し、本洗い行程時のモータ8の駆動パターンは設定水位によって変えるようにし、設定水位が高いほど、つまり負荷量が多いほど強い水流が得られるようにする。
洗濯脱水槽5内の水位が本洗い開始水位Lcに到達した時点から30秒が経過したならば主給水弁14aを閉じ、その後に10秒が経過したならばパルセータ7の回転も一旦停止する。そしてさらに4秒経過後に主給水弁14aを開き、洗濯脱水槽5内の水位が設定水位Ld(この場合にはL10)に到達するまで給水を実行する。
なお、本洗い行程の開始時点から、水位が設定水位Ldに達した後に4秒が経過するまでの期間中には、制御部40は洗濯脱水槽5内の洗濯物の回転状態、つまり布回りを判定する。布回りの判定はパルセータ7に掛かる回転負荷、即ち所定の駆動電流をモータ8に流したときの実際の回転速度に基づいて行う。例えば布回りは普通、悪い、良過ぎる、の3段階で評価され、最初の負荷量に基づいて決められた水位及び水流では布回りが普通になるように定められている。例えば負荷量検知が行われた後に使用者が洗濯物を追加したような場合には、負荷量に対して水位が不足して布回りがかなり悪くなるようなことがある。こうした状態のまま洗いを続行すると、洗いむらが生じる等洗い性能が十分に発揮できなかったり洗濯物の布傷みが酷くなったりするおそれがある。そこで、布回りの判定結果に応じて、布回りが悪い場合には水流を強め、布回りが良過ぎる場合には水流を弱める。
上述のようにして設定水位Ldまでの洗剤水が洗濯脱水槽5内に貯留された状態でパルセータ7が回転することで、洗濯物は撹拌されながら良好に洗浄される。特に、上述したように温水ミストの作用によって本洗い行程の当初から洗剤が十分に溶解しており、さらに洗濯物に付着している汚れが繊維内部から浮き出てきて剥離し易くなっているため、高い洗浄性能が達成される。こうした所定の洗い運転時間が終了すると、モータ8は停止され、トルクモータ10が作動されることで排水弁17が開放されて、洗濯脱水槽5内の水は排水される。その後には、制御部40はモータ8を駆動させ、洗濯脱水槽5とパルセータ7とを一体に高速で回転することにより中間脱水を実行する(ステップS3)。この中間脱水により、洗濯物に染み込んでいる洗剤水が飛散して除去される。
次に、1回目のすすぎとして脱水すすぎを行う(ステップS4)。脱水すすぎでは、制御部40はモータ8を駆動することで洗濯脱水槽5をパルセータ7と一体に比較的低速で回転させつつ、主給水弁14aを開放して注水口部11から水をシャワー状に洗濯脱水槽5内に注ぐ。直前の中間脱水により洗濯物は洗濯脱水槽5の内周壁に張り付いた状態となっているが、注水口部11から吐き出された水は洗濯脱水槽5の内周壁近傍に落ちる。そのため、洗濯脱水槽5の回転に伴って、洗濯脱水槽5の内周壁に張り付いている洗濯物には満遍なく水が降り掛かり、それによって、洗濯物にきれいな水を吸水させ、その代わりに洗濯物に染み込んでいる洗剤水を押し出すことができる。
そして脱水すすぎ行程において洗濯物に十分に水を含ませた後に、ステップS3と同様のステップS5の処理により中間脱水を行い、洗濯物に染み込んでいる水を洗剤分とともに飛散させる。次いで、2回目のすすぎとして溜めすすぎ行程を実行する(ステップS6)。溜めすすぎでは、主給水弁14aを開いて洗濯脱水槽5内に所定のすすぎ水位までの水を貯留させ、パルセータ7を反転駆動することで洗濯物を撹拌することによりすすぎを実行する。なお、最終すすぎの給水時には、主給水弁14aと共に仕上剤給水弁14bも開放され、洗剤容器40の仕上剤収容部に収容されている柔軟仕上剤が水に押されて洗濯脱水槽5内に投入される。
この溜めすすぎが終了すると、排水弁17が開放されて洗濯脱水槽5内の水は排出される。その際に、洗濯脱水槽5内の水位が十分に低くなったならば、所定時間だけ、ミスト給水弁14cを開放するとともにヒータ325をオンする。これにより、洗濯脱水槽5内に霧状の温水が噴射され、すすぎ終了後の洗濯物に温水が染み込んで温まる。この温水の噴射は1分間程度行うが、その間には、上述したようにサーミスタ48の検知温度を使用した異常検知処理を実行し、異常が検知された場合にはヒータ325への通電を停止することで異常加熱を防止する。
その後に、中間脱水と同様に洗濯脱水槽5とパルセータ7とを一体に高速で回転することにより最終脱水を実行する(ステップS7)。水は温度が高いほうが表面張力が小さくなる性質を有するため、洗濯物に染み込んでいる水の温度が高いと、ステップS7で遠心脱水を行った際に水が洗濯物から離脱し易くなり、脱水性能を高めることができるとともに洗濯物に残留する洗剤成分が少なくなる。即ち、最終脱水行程前の温水ミストの使用により、脱水性能及びすすぎ性能を向上させることができる。
以上のように、本実施例の洗濯機では、洗い行程の給水時に温水ミストを使用するが、その前に注水口部11からの給水によって洗濯脱水槽5内に所定水位までの水が溜まることを確認しているので、外部から確実に水が供給されている状態でヒータ325をオンさせることができ、それによってヒータ325の空焚きを防止することができる。さらにまた、サーミスタ48による検知温度を利用し各種の異常状態を検知してヒータ325への通電を停止するようにしているので、これによってもヒータ325の空焚きや異常加熱を防止することができ、高い安全性を確保することができる。
さて、本実施例の洗濯機においては、外部に貯留された水、例えば風呂水を洗濯脱水槽5内へ取り込むための吸水手段として風呂水ポンプを備え、使用者が洗い行程やすすぎ行程に風呂水を利用するか否かを選択設定できるようにしてもよい。図10は、風呂水ポンプによって風呂水の供給ができるよう構成した場合における、洗い行程の中での給水行程及び浸透行程の制御動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、温水ミスト洗浄が設定されていることを前提としたものである。
以下、図10のフローチャートに従って制御動作を説明する。まず、給水行程に入ると、風呂水の利用が設定されているか否かを判定する(ステップS100)。風呂水の利用が設定されていない場合には、制御部40は主給水弁14a及びミスト給水弁14cを開放し(ステップS101)、注水口部11とノズル31とから洗濯脱水槽5内に給水を開始する。
制御部40は給水開始後に水位センサ19による水位検知信号を監視し、洗濯脱水槽5内の水位がリセット水位LRSTに到達したか否かを判定する(ステップS102)。リセット水位LRSTに到達していなければ、制御部40は給水開始から15分が経過したか否かを判定する(ステップS111)。リセット水位LRSTに到達する前に15分が経過してしまった場合には、給水流量が異常なほど少ないか又は全く水が供給されていない(例えば水道栓が閉栓されている)ものと判断できるので、ブザー47を鳴動させるとともに表示部46で所定の表示を行うことにより、使用者に対し給水異常を報知する(ステップS112)。
ステップS111で未だ給水開始から15分が経過していない場合にはステップS102に戻る。外部からの水の供給が適切に行われている場合には、ステップS102からステップS103へと進み、水位センサ19からの水位検知信号により洗濯脱水槽5内の水位が浸透水位Laに到達したか否かを繰り返し判定する。そして、浸透水位Laに到達した時点で、制御部40は、主給水弁14aを閉鎖する(ステップS104)。
次に、浸透行程に入り、制御部40は、モータ8を駆動させることでパルセータ7を左右に反転駆動させ、洗濯脱水槽5内の貯留水に水流を生じさせる(ステップS105)。次に、それから2秒間待機した後に(ステップS106)、ヒータ325をオンして水加熱ユニット30の通水路を通る水の加熱を開始する(ステップS107)。主給水弁14aの閉鎖によって注水口部11からの水の吐出は停止し、一方、ヒータ325をオンしたことによってノズル31から噴射される水の温度は上昇し温水となる。これにより、洗濯脱水槽5内に収容されている洗濯物に上方から温水が霧状に降り掛かる。なお、ヒータ325をオンしようとする時点では、ステップS102及びS111の処理により、外部から正常に水の供給が行われていることが判明しているので、例えば水道栓が閉栓しているといったおそれはなく、ヒータ325の空焚きを防止することができる。
制御部40はヒータ325をオンした後、図8のステップS18と同様に、ミスト給水弁14c及びヒータ325の動作制御処理を実行し(ステップS108)、その後、所定の浸透時間(5分)が経過したか否かを判定する(ステップS109)。このステップS109にて浸透時間が経過したと判定されると、制御部40はヒータ325をオフするとともにパルセータ7の回転も停止する(ステップS110)。こうして、浸透行程が終わると、図8に示す制御動作と同様に、濃縮行程へと移行する。
一方、ステップS100で、風呂水の利用が設定されていると判定すると、制御部40は主給水弁14a及びミスト給水弁14cを開放する(ステップS113)。このとき、主給水弁14aからの水は、洗濯脱水槽5内に供給されるとともに、呼び水として風呂水ポンプ内に供給される。そして、呼び水の供給に必要な時間、例えば5秒が経過すると(ステップS114)、制御部40は主給水弁14aを閉鎖し、風呂水ポンプを駆動する(ステップS115)。制御部40は洗濯脱水槽5内の水位がリセット水位LRSTに到達したか否かを判定し(ステップS116)、リセット水位LRSTに到達していなければ、風呂水ポンプの駆動から4分が経過したか否かを判定する(ステップS122)。リセット水位LRSTに到達する前に4分が経過してしまった場合には、浴槽の中に風呂水がない、風呂水ホースの吸込口が風呂水中に水没していないなど、風呂水が吸水できない状態にあると判断し、風呂水ポンプを停止する(ステップS123)。そして、風呂水の利用をあきらめて、水道水を供給すべく主給水弁14aを開放する(ステップS124)。この後は、ステップS102へと移行し、風呂水の利用が設定されていない場合と同様の制御動作を行う。
洗濯脱水槽5内へ風呂水が適切に供給され、4分が経過する前にリセット水位LRSTに到達した場合には、制御部40は、次に、浸透水位Laに対し、所定水位だけ低い断水検知水位Lsに到達したかを繰り返し判定し(ステップS117)、この水位に到達すると風呂水ポンプを停止する(ステップS118)。そして、主給水弁14aを開放する(ステップS119)。この後、制御部40は浸透水位Laに到達したか否かを判定し(ステップS120)、浸透水位Laに到達していなければ、給水弁14aを開放してから60秒(制限時間)が経過したか否かを判定する(ステップS125)。
制限時間60秒が経過する前に浸透水位Laに到達すれば、制御部40は主給水弁14aを閉鎖して(ステップS121)、ステップS105へ移行し、浸透行程を実行する。この浸透行程においてヒータ325がオンされるが、ステップS120及びS125の処理により、外部から正常に水の供給が行われていることを確認しているので、ヒータ325の空焚きを防止することができる。なお、この浸透行程を終えて濃縮行程に移行した際、濃縮水位Lbへの給水は風呂水ポンプの駆動により行われる。
一方、制限時間60秒が経過しても浸透水位Laに到達しなければ、即ち、主給水弁14aを開いてから制限時間内に所定水位だけ洗濯脱水槽5内に水が溜まらなければ、制御部40は、給水流量が異常なほど少ないか又は全く水が供給されていない、即ち断水状態であると判断する。
そして、主給水弁14aを閉鎖するとともに(ステップS126)、風呂水ポンプを駆動し(ステップS127)、この風呂水の供給によって浸透水位Laに到達すれば(ステップS128)、風呂水ポンプを停止して(ステップS129)、浸透行程を実行する。制御部40は、パルセータ7を左右に反転駆動させ、洗濯脱水槽5内の貯留水に水流を生じさせる(ステップS130)。さらに、ミスト給水弁14cの動作制御処理を実行する(ステップS131)但し、断水によってミスト給水弁14cから水が供給される可能性は極めて少ないので、ヒータ325の空焚きを防止するため、このときヒータ325はオンしない。よって、使用者が異常に気づいて水道栓を開けるなどすることにより、ミスト給水弁14bから水が供給されるようになると、ノズル31からは加熱されない水が噴射される。この水が霧状に洗濯物に降り掛かると、温水ほどの効果はないが、洗剤の溶解を促進させることができる。こうして、浸透時間(5分)が経過すると(ステップS132)、制御部40はパルセータ7の回転を停止させ(ステップS133)、浸透行程を終えて濃縮行程へと移行する。
以上のような制御動作を行うことにより、本実施例の洗濯機においては、風呂水を利用する場合であっても、浸透水位Laに到達してヒータ325をオンする前に、風呂水ポンプを止めて主給水弁14aを開放し、洗濯脱水槽5内に所定水位の水が貯められるかを確認するようにしたので、ミスト給水弁14bを開放したときに外部の水が給水できる状態にあるか確認でき、ヒータ325の空焚きを防止することができる。
さて、本実施例の洗濯機においては、給水を行う前に洗濯脱水槽5内にある程度の水が貯められている場合がある。例えば、使用者がバケツなどで外部の水を洗濯脱水槽5内に汲み入れる場合である。このような場合であっても、ヒータ325の空焚きを防止できるようにした他の制御動作ついて、以下、図11のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートも図10と同様、温水ミスト洗浄が設定されていることを前提としたものである。
洗い行程が開始されると、まず、給水を開始する前に、洗濯脱水槽5内の水位が既にリセット水位LRSTに到達しているか否かを判定する(ステップS200)。リセット水位LRSTに到達していなければ、制御部40は上述した図10のステップS101からS112と同様の制御動作を実行して、給水行程及び浸透行程を実行する(ステップS201〜S212)。
ステップS200において、洗濯脱水槽5内の水位が既にリセット水位LRSTに到達していると判定すると、制御部40は、次に、浸透水位Laに対し所定水位だけ低い規定水位以上であるか否かを判定する(ステップS213)。そして、給水開始前から規定水位以上の水位に到達していると判定すると、制御部40は、主給水弁14a及びミスト給水弁14cを開放する(ステップS214)。
この後、この水位から所定水位だけ水位が上昇したか否かを判定する(ステップS215)。所定水位だけ水位が上昇していなければ、制限時間60秒が経過したかを判定する(ステップS216)。そして、60秒が経過する前に所定水位だけ水位が上昇したと判定すると、制御部40は主給水弁14aを閉鎖して(ステップS226)、ステップS205へ移行し、浸透行程を実行する。この浸透行程においてヒータ325がオンされるが、ステップS215及びS216の処理により、外部から正常に水の供給が行われていることを確認しているので、ヒータ325の空焚きを防止することができる。一方、制限時間60秒が過ぎても所定水位だけの水位上昇がなければ、制御部40は断水の可能性が極めて高いと判断する。そして、主給水弁14aを閉鎖し(ステップS217)、図10のステップS130からS133での処理と同様に、ヒータ325をオンせずに浸透行程を実行する(ステップS218〜ステップS221)。
ところで、ステップS213において、規定水位未満であれば、制御部40は主給水弁14a及びミスト給水弁14cを開放する(ステップS222)。そして、洗濯脱水槽5内の水位が規定水位に到達したか否かを判定し(ステップS223)、規定水位に到達していなければ、給水開始から30分が経過したか否かを判定する(ステップS224)。規定水位に到達する前に30分が経過してしまった場合には、給水流量が異常なほど少ないか又は全く水が供給されていないものと判断できるので、ブザー47を鳴動させるとともに表示部46で所定の表示を行うことにより、使用者に対し給水異常を報知する(ステップS225)。一方、30分が経過する前に規定水位に到達すると、制御部40は、ステップS215に移行し、制限時間60秒が経過する前にこの規定水位から所定水位だけ水位が上昇するかを判定する。このときは、既に規定水位まで正常に水位が上昇しているので、そのまま60秒が経過する前に所定水位だけ上昇する可能性が極めて高い。よって、ステップS226、ステップ205へと移行し、浸透行程が実行され、この浸透行程においてヒータ325がオンされる。
以上の制御動作を行うことにより、本実施例の洗濯機によれば、給水前に洗濯脱水槽5内に水が貯められていても、特に、ヒータ325をオンする浸透水位Laの近傍またはそれ以上に水が貯められていても、ヒータ325をオンする前に、主給水弁14aを開放し、洗濯脱水槽5内に所定水位の水が貯められるかを確認するようにしたので、ミスト給水弁14bを開放したときに外部の水が給水できる状態にあるか確認でき、ヒータ325の空焚きを防止することができる。
なお、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行えることは明らかである。