以下、この発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、図中、各構成成分の大きさ、形状および配置関係は、この発明が理解できる程度に概略的に示してあるにすぎず、また、以下に説明する数値的条件は単なる例示にすぎない。
第1の実施の形態
以下、この発明の第1実施形態に係る静電容量型距離センサについて、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、この実施形態に係る静電容量型距離センサの構成を示す概略図である。
図1に示したように、この実施形態の静電容量型距離センサ100は、センサ部101と、発振回路102と、バッファ回路103と、電流検出抵抗素子104と、シールドケーブル105と、第1差動増幅器106と、バンドパスフィルタ107と、検波回路108と、ローパスフィルタ109と、第2差動増幅器110と、アナログ/デジタル変換器111と、CPU(Central Processing Unit) 112と、デジタル/アナログ変換器113とを備えている。
センサ部101は、送信電極101a、シールド電極101bおよび補助電極101cを備えている。送信電極101aは、被検出物(図示せず)との間に電磁界を形成するための電磁波を放射する。シールド電極101bは、送信電極101aの裏面側から放射される電磁波を遮蔽するための電極である。また、補助電極101cは、送信電極101aとシールド電極101bとの間に流れる電流を遮断するための電極である。この実施形態では、送信電極101aとシールド電極101bとの間に補助電極101cを設け、且つ、異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給することとしたので、被検出物の検出精度を高めることができる(後述)。図1に示したように、シールド電極101bは、接地される。
発振回路102は、送信電極101aに電磁界を放射させるための交流電圧を生成・出力する。以下の説明では、この発振回路102の、発振周波数をf[Hz]とする。
バッファ回路103は、発振回路102が出力する交流電圧を、センサ部101に供給するためのバッファである。図1に示したように、この実施形態では、バッファ回路103を、1個の電圧フォロア回路で構成した。すなわち、この実施形態では、送信電極101aおよび補助電極101cに、同じ電圧フォロア回路で交流電圧を供給することとした。これにより、バッファ回路103の出力側の変動が発振回路102の出力に与える影響を抑えて、被検出物の検出精度を高めることができる(後述)。
電流検出抵抗素子104は、センサ部101に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である(後述)。電流検出抵抗素子104は、バッファ回路103の出力端とシールドケーブル105との間に接続される。
シールドケーブル105は、バッファ回路103が出力する交流電圧をセンサ部101に供給する。このシールドケーブル105は、芯線105aと被覆線105bとを有している。芯線105aの一端は、抵抗素子104を介して、バッファ回路103の出力端に接続される。また、この芯線105aの他端は、送信電極101aに接続される。被覆線105bの一端は、バッファ回路103の出力端に、抵抗素子104を介さずに直接接続される。この被覆線105bの他端は、補助電極101cに接続される。
第1差動増幅器106は、計装用アンプであり、非反転入力端子(+)、反転入力端子(−)とも入力インピーダンスが高く、これら非反転入力端子と反転入力端子との電位差に応じた電圧を出力する。差動増幅器106の非反転入力端子は、抵抗素子104の一端(すなわちバッファ回路103側の端部)に接続される。また、この差動増幅器106の反転入力端子は、抵抗素子104の他端(すなわち送信電極101a側の端部)に接続される。したがって、差動増幅器106は、抵抗素子104の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。後述するように、抵抗素子104を流れる電流は送信電極101aと被検出物との距離に依存し、したがって、この抵抗素子104の端子間電圧も当該距離に依存して変化する。
バンドパスフィルタ107は、入力された交流電圧信号のうち、周波数fの信号成分(すなわち発振回路102と同じ周波数の成分)のみを通過させる。このバンドパスフィルタ107により、差動増幅器106が出力する交流電圧信号からノイズ成分を取り除くことができる。例えば、静電容量型距離センサ100の近傍にモータ等のノイズ源が配置されている場合、このモータ等が発生する電磁波によって交流電圧信号にノイズが混入し、誤検出の原因になる場合があるので、このようなノイズをバンドパスフィルタ107で除去する。
検波回路108は、入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。この実施形態では、検波回路108としては、時定数τを1/f程度に設定した全波整流回路を使用する(fは発振回路102の出力周波数)。図4は、検波回路108の時定数と出力信号との関係を概念的に示す波形図であり、Aは入力信号波形、Bは時定数τが1/fの場合の出力信号波形、Cは時定数τを非常に大きくした場合の出力信号波形である。ここで、入力信号波形Aは、本来の信号波形中にノイズ成分Anが混入している場合を示している。図4から解るように、時定数τが非常に大きい場合、本来の入力信号波形が入力されたときには変動の小さい平坦な出力信号波形(すなわちリップル成分が小さい出力信号波形)Cを得ることができるものの、ノイズ成分Anが入力されたときには出力信号レベルがノイズレベルに維持されてしまう。これに対して、時定数τが1/f程度の場合、本来の入力信号波形が入力されたときに変動の大きい出力信号波形(すなわちリップル成分が大きい出力信号波形)Bとなるものの、ノイズ成分Anが入力されたときに当該ノイズの影響が小さい。ここで、リップル成分は、検波回路108の後段にローパスフィルタを設けて除去することも可能である。このため、この実施形態では、時定数τを1/f程度に設定するとともに、後段にローパスフィルタ109を設けることとした。
ローパスフィルタ109は、入力信号から、高周波成分を除去する。このローパスフィルタ109により、検波回路108が出力した直流電圧信号から、リップル成分を取り除くことができる。
第2差動増幅器110は、非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)との電位差に応じた電圧を出力する。差動増幅器110の非反転入力端子は、ローパスフィルタ109の出力端に接続される。また、この差動増幅器110の反転入力端子は、デジタル/アナログ変換器113の出力端に接続される。後述するように、この差動増幅器110により、被検出物が検出されていないときの値が零となるように、検波回路108の出力信号が補正される。差動増幅器110が出力した直流電圧信号は、検出信号Sdとして、外部に出力される。
アナログ/デジタル変換器111は、差動増幅器110が出力した直流電圧信号(すなわち検出信号Sd)を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。
CPU112は、アナログ/デジタル変換器111から入力されたデジタル信号に所定のアルゴリズムによる演算処理を施すことによって補正信号Saを生成し、内部に保存するとともに、デジタル/アナログ変換器113に出力する。後述するように、この補正信号Saによって、検出信号Sdが補正される。
デジタル/アナログ変換器113は、CPU112の出力信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。
図2および図3はセンサ部101の構成を示す概念図であり、図2は側面図、図3は分解斜視図である。
図2、図3に示したように、センサ部101は、プリント基板201を有している。プリント基板201の表面には送信電極101aとしての金属薄膜が、裏面には補助電極101cとしての金属薄膜が、それぞれプリントされる。このため、プリント基板201の基材202は、送信電極101aおよび補助電極101cが構成するコンデンサの誘電体となる。基材202としては、十分な柔軟性のある絶縁板が使用される。例えば、厚さ0.2〜0.4mmのテフロン(登録商標)板を、基材202として使用することができる。
シールド電極101bは、十分な柔軟性および伸縮性を有する導電性材料で形成される。例えば、導電性ゴム、導電性布等を、シールド電極101bとして使用することができる。
補助電極101cとシールド電極101bとは、スペーサ203を介して固定される。このスペーサ203は、補助電極101cとシールド電極101bとを所定の均一な間隔で固定するために、使用される。このため、スペーサ203は、補助電極101cおよびシールド電極101bに、導電性の接着剤等(図示せず)を用いて接着される。スペーサ203は、柔軟性がある絶縁材料(例えば樹脂)で形成される。図3に示したように、スペーサ203は、格子状に形成され、空洞部分203aは貫通している。この空洞部分203aが、補助電極101cおよびシールド電極101bが構成するコンデンサの絶縁層となる。スペーサ203の高さd1は、大きすぎるとセンサ部101全体としての十分な柔軟性を確保することができず、また、小さすぎるとコンデンサの静電容量が大きくなりすぎる。したがって、スペーサ203の高さd1(図3参照)は、例えば1mm程度とする。また、格子状部分の厚さd2(図3参照)は、スペーサ203と電極101b,101cとを十分な強度で接着するために必要な面積が得られるように、決定される。
次に、この実施形態に係る静電容量型距離センサ100の動作について、図1および図5を用いて説明する。図5において、(A)はセンサ部101の検出可能範囲内に被検出物が存在しない場合を示す概念図であり、(B)はかかる検出可能範囲内に被検出物が存在する場合を示す概念図である。
まず、静電容量型距離センサ100の初期調整の動作について、図1および図5(A)を用いて説明する。この調整は、検出可能範囲内に被検出物が存在しないときに行われる。
バッファ回路103が交流電圧の出力を開始すると、この交流電圧は、抵抗素子104を介して送信電極101aに印加される。ここでは被検出物が存在しないので、被検出物が構成するコンデンサに送信電極101aから電流が流れることはない。したがって、被検出物の存在に起因して抵抗素子104の電圧降下が発生することもない。
また、バッファ回路103から出力された交流電圧は、補助電極101cにも印加される。その一方で、シールド電極101bは接地されている。したがって、補助電極101cおよびシールド電極101bが構成するコンデンサには端子間電圧が発生し、これにより、補助電極101cからシールド電極101bに電流I1が流れる。補助電極101cに電流I1が流れると、シールドケーブル105の被覆線105bの配線抵抗に起因して、当該補助電極101cの電圧が若干低下する。このため、送信電極101aと補助電極101cとの間に、非常に小さい電位差が発生する。したがって、送信電極101aから補助電極101cに微少電流I0が流れ、これにより抵抗素子104で微少な電圧降下が発生する。このため、差動増幅器106の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)との間には、微少な電位差が発生する。
差動増幅器106は、この電位差に応じた交流電圧信号を出力する。この電圧信号は、バンドパスフィルタ107でノイズ成分を除去され、検波回路108で交流信号から直流信号に変換され、ローパスフィルタ109でリップル成分を除去された後、差動増幅器110の非反転入力端子(+)に入力される。このとき、CPU112からは、補正信号Saとして、零が出力されている。したがって、デジタル/アナログ変換器113から差動増幅器110の反転入力端子へは、零ボルトが出力される。このため、この差動増幅器110は、ローパスフィルタ109が出力した直流電圧信号を、そのまま検出信号Sdとして出力する。
ここで、センサ部101が被検出物を検出するときに十分な検出精度を得るためには、被検出物が存在しない場合の信号値が所定値(ここでは零ボルト)となるように、検出信号Sdを補正することが望ましい。この補正は、CPU112等により、以下のようにして行われる。
検出信号Sdは、アナログ/デジタル変換器111でデジタル化されて、CPU112に送られる。CPU112は、このデジタル検出信号Sdの実際の信号値と目標値(ここでは零ボルト)との差を所定のアルゴリズムによって演算し、演算結果を内部に保存するとともに、補正信号Saの値としてデジタル/アナログ変換器113に送る。デジタル/アナログ変換器113は、この補正信号Saに応じた値に、出力電圧を変更する。これにより、差動増幅器110の反転入力端子に供給される信号の値が、変更される。このようにして、当該反転入力端子の入力電圧は、非反転入力端子の入力電圧(すなわちローパスフィルタの出力信号値)と同じになり、差動増幅器110の出力が零ボルトになる。
次に、センサ部101の検出可能範囲内に被検出物が存在する場合の動作について、図1および図5(B)を用いて説明する。
人間や動物等の被検出物501は、誘電体であるとみなすことができる。さらに、被検出物501が床や地面等と接している場合には、この誘電体の一端が接地されているとみなすことができる。このため、被検出物501が送信電極101aに十分に近づいた場合、この送信電極101aと地面等との間には、コンデンサ(静電容量をCsとする)が存在すると考えることができる。このため、バッファ回路103から送信電極101aに交流電圧が印加されると、被検出物501を介して、送信電極101aと地面等との間に電流Isが流れる。被検出物501がセンサ部101に近づいていくと、送信電極101aと被検出物501との距離が短くなっていくので、静電容量Csは増大し、したがって電流Isも増大する。逆に、被検出物501がセンサ部101から遠ざかっていくと、送信電極101aと被検出物501との距離が長くなっていくので、静電容量Csは減少し、したがって電流Isも減少する。
この電流Isは、抵抗素子104を介して、バッファ回路103から送信電極101aに供給される。すなわち、抵抗素子104を流れる電流は、送信電極101aから補助電極101cに流れる電流I0と、送信電極101aから被検出物501に流れる電流Isとの和になる。これにより、差動増幅器106の入力電位差(反転入力端子と非反転入力端子との電位差)は、電流Isが発生したことに起因して、増大する。
上述のように、差動増幅器106は、この電位差に応じた交流電圧信号を出力する。この電圧信号は、バンドパスフィルタ107でノイズ成分を除去され、検波回路108で交流信号から直流信号に変換され、ローパスフィルタ109でリップル成分を除去された後、差動増幅器110の非反転入力端子に入力される。差動増幅器110は、この直流信号と補正信号Saとの差に応じた電圧を、検出信号Sdとして出力する。上述のように、補正信号Saは、被検出物501が存在しないときの検出信号Sdが零ボルトとなるように設定されている。したがって、検出信号Sdは、被検出物501に流れる電流Isに対応した値となる。
このような理由により、この実施形態に係る静電容量型距離センサは、被検出物501の有無および距離を、非接触で検出することができる。
上述のように、この実施形態では、送信電極101aとシールド電極101bとの間に補助電極101cを設けるとともに、1個のバッファ回路103から、異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給することとした。したがって、以下のような理由により、被検出物に対する検出精度を高めることができる。
まず、バッファ回路103を1個にした理由を説明する。
図1に示したように、この実施形態の静電容量型距離センサ100では、センサ部101と、電子回路部分(回路102〜104、106〜112)とが、シールドケーブル105によって接続されている。このため、センサ部101と電子回路部分とを離して設置する場合、シールドケーブル105が他の装置等に近接する場合がある。ここで、シールドケーブル105と接地された金属とが近接している場合、この金属と被覆線105bとの間に静電容量(ここではCL とする)が発生する。したがって、バッファ回路103から被覆線105bに交流電圧が供給されると、この被覆線105bからこの金属に電流(ここではIL とする)が流れる。このため、この静電容量CL は、バッファ回路103の負荷となる。一般に、オペアンプは、容量性の負荷が大きくなると、入力に対する出力の位相遅れが増大する。このため、送信電極101aと補助電極101cとに別々の電圧フォロア回路から交流電圧が供給される場合には、これらの電極101a,101cに供給される交流電圧間で位相差が生じ、これにより、これらの電極101a,101c間に電位差が発生することになる。このため、静電容量CL に起因して抵抗素子104に流れる電流が増大することになる。ここで、静電容量CL の値が一定であれば、この電流の影響は補正信号Sa(図1参照)によって排除される。しかしながら、静電容量CL の値が一定でない場合(すなわち、接地された金属とシールドケーブル105との距離が変動するような場合)には、この静電容量CL の変動は検出誤差の原因になる。これに対して、送信電極101aおよび補助電極101cに同一のバッファ回路103から交流電圧が供給される場合、静電容量CL に起因する位相遅れが発生しても、送信電極101aと補助電極101cとの間で位相差が生じることはない。このため、バッファ回路103を1個とすることにより、被検出物の検出精度を向上させることができる。
次に、補助電極101cを設ける理由と、異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給する理由とを説明する。
センサ部101が被検出物の検出を行うのは、本来は、送信電極101aの表面方向のみである。しかし、実際には、送信電極101aの裏面方向にも電磁波が放出される。したがって、この送信電極101aの裏面方向に何らかの物体が存在する場合でも、その物体と送信電極101aとの間に電界が形成されないようにする必要がある。裏面方向の物体と送信電極101aとの間に電界が形成されると、その物体に位置変化に起因して抵抗素子104を流れる電流が変動してしまい、誤検出や検出精度悪化の原因になるからである。このため、送信電極101aの裏面側には、接地されたシールド電極101bが設けられる。しかしながら、シールド電極101bのみを設けた場合(すなわち、補助電極101cを設けない場合)には、送信電極101aとシールド電極101bとの間に電流が流れてしまうことになる。通常は、送信電極101aとシールド電極101bとの間の静電容量は、送信電極101aと被検出物との間の静電容量と比べて非常に大きくなり、したがって、送信電極101aとシールド電極101bとの間に流れる電流も、送信電極101aと被検出物との間を流れる電流と比較して非常に大きくなる。このため、送信電極101a・シールド電極101b間に電流が流れると、送信電極101a・被検出物間の電流を精度良く検出することは非常に困難になる。これに対して、送信電極101aとシールド電極101bとの間に補助電極101cを設けるとともにこれらの電極101a,101cの電位をほぼ同電位にした場合、送信電極101aの裏面側に存在する物体の影響を無くしつつ当該裏面側に流れる電流を非常に小さく抑えることができる。
加えて、この実施形態では、異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給しており、バッファ回路103と送信電極101aとを接続する配線に抵抗素子104が設けられている。すなわち、送信電極101aはシールドケーブル105の芯線105aおよび抵抗素子104を介してバッファ回路103に接続され、補助電極101cはシールドケーブル105の被覆線105bを介してバッファ回路103に接続されている。すなわち、送信電極101aを流れる電流と補助電極101cを流れる電流とは分離されており、補助電極101cを流れる電流が抵抗素子104を流れることはない。このため、抵抗素子104を流れる電流を小さくすることができ、したがって、送信電極101aから被検出物に流出する電流の検出精度が向上する。
以上説明したように、この実施形態に係る静電容量型距離センサ100によれば、1個のバッファ回路103から異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給するので、送信電極101aから被検出物に流出する電流を精度良く検出することができ、したがって、被検出物の検出精度を向上させることができる。
また、被検出物が検出されていないときの検出信号値を用いて、被検出物が検出されたときの検出信号Sdを補正するので、被検出物の検出精度をさらに向上させることができる。
加えて、プリント基板201およびスペーサ203を柔軟性のある材料で形成し且つシールド電極101bを柔軟性および伸縮性のある材料で形成したので、曲面等へのセンサ部101の取り付けが容易になる。
第2の実施の形態
以下、この発明の第2の実施形態に係る静電容量型距離センサについて、図6を用いて説明する。この実施形態は、温度補正を行うことができる静電容量型距離センサの例である。
図6は、この実施形態に係る静電容量型距離センサの構成を示す概略図である。図6において、図1と同じ符号を付した構成要素は、それぞれ図1と同じものを示している。
この実施形態に係る静電容量型距離センサ600は、温度補正回路610を備えている。温度補正回路610は、本来のセンサ(101〜110,113)の等価回路を成す。また、正確な温度補正を行うためには、温度補正回路610は、本来のセンサの検出回路部分(102〜104,106〜110,113)と同じ温度であることが望ましく、したがって、かかる検出回路部分と同じ基板上に形成されることが望ましい。
図6に示したように、温度補正回路610は、温度補正用擬似センサ部611と、温度補正用バッファ回路612と、温度補正用電流検出抵抗素子613と、温度補正用第1差動増幅器614と、温度補正用バンドパスフィルタ615と、温度補正用検波回路616と、温度補正用ローパスフィルタ617と、温度補正用第2差動増幅器618と、温度補正用デジタル/アナログ変換器619とを備えている。また、この実施形態の静電容量型距離センサ600は、CPU(Central Processing Unit) 630と、アナログ/デジタル変換器620とを備えている。この実施形態の温度補正回路610では、温度補正用擬似センサ部611を他の回路部分(611,612等)と離して配置する必要はなく、このため、シールドケーブルは使用されない。
温度補正用擬似センサ部611は、第1コンデンサ611aおよび第2コンデンサ611bを備えている。第1コンデンサ611aは、送信電極101aと補助電極101cとの間の静電容量と同一の静電容量を有している。また、第2コンデンサ611bは、補助電極101cとシールド電極101bの間の静電容量と同一の静電容量を有している。第2コンデンサ611bは、一端で接地されている。なお、本願において、回路や素子が「同一」(或いは「同じ」)とは、回路或いは素子の構成或いは特性(特に温度依存性)が設計上同一であるという意味である。
温度補正用バッファ回路612は、発振回路102が出力する交流電圧を、擬似センサ部611に供給するためのバッファである。この温度補正用バッファ回路612としては、バッファ回路103と同じものが使用される。図6に示したように、温度補正用バッファ回路612は、バッファ回路103と同様、1個の電圧フォロア回路で構成されている。
温度補正用電流検出抵抗素子613は、第1コンデンサ611aに流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である(後述)。この温度補正用電流検出抵抗素子613としては、電流検出抵抗素子104と同じものが使用される。この温度補正用電流検出抵抗素子613は、一端でバッファ回路612の出力端に接続され、他端で第1コンデンサ611aの一端に接続される。
温度補正用第1差動増幅器614は、非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)との電位差に応じた電圧を出力する。この温度補正用第1差動増幅器614としては、第1差動増幅器106と同じものが使用される。温度補正用差動増幅器614の非反転入力端子は、温度補正用抵抗素子613の一端(すなわち温度補正用バッファ回路612側の端部)に接続される。また、この温度補正用差動増幅器614の反転入力端子は、温度補正用抵抗素子613の他端(すなわち第1コンデンサ611a側の端部)に接続される。したがって、差動増幅器614は、抵抗素子613の端子間電圧に応じた値の交流電圧信号を出力する。
温度補正用バンドパスフィルタ615としては、バンドパスフィルタ107と同じものが使用される。すなわち、温度補正用バンドパスフィルタ615は、周波数fの信号成分(すなわち発振回路102と同じ周波数の成分)のみを通過させることにより、交流電圧信号からノイズ成分を取り除く。
温度補正用検波回路616としては、検波回路108と同じもの(時定数τ≒1/f)が使用される。温度補正用検波回路616は、温度補正用バンドパスフィルタ615から入力された交流電圧信号を直流電圧信号に変換する。
温度補正用ローパスフィルタ617としては、ローパスフィルタ109と同じものが使用される。温度補正用ローパスフィルタ617は、温度補正用検波回路616から直流電圧信号を入力して、高周波成分を除去する。これにより、かかる直流電圧信号からリップル成分を取り除くことができる。
温度補正用第2差動増幅器618としては、第2差動増幅器110と同じものが使用される。この温度補正用第2差動増幅器618は、非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)との電位差に応じた電圧を出力する。温度補正用第2差動増幅器618の非反転入力端子は、ローパスフィルタ617の出力端に接続される。また、この温度補正用第2差動増幅器618の反転入力端子は、デジタル/アナログ変換器619の出力端に接続される。温度補正用第2差動増幅器618が出力した直流電圧信号は、アナログ/デジタル変換器620に送られる。
温度補正用デジタル/アナログ変換器619は、CPU630の出力信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。この温度補正用デジタル/アナログ変換器619としては、デジタル/アナログ変換器113と同じものが使用される。
アナログ/デジタル変換器620は、差動増幅器110,618が出力した直流電圧信号(すなわち検出信号Sd1,Sd2)を、それぞれアナログ信号からデジタル信号に変換する。
CPU630は、アナログ/デジタル変換器620から入力したデジタル信号を用いて補正信号Sa1,Sa0を生成し、内部に保存するとともに、デジタル/アナログ変換器113,619に出力する。これにより、後述のような温度補正を行うことができる。
次に、この実施形態に係る静電容量型距離センサ600の動作を説明する。
まず、静電容量型距離センサ600の初期調整の動作について説明する。この調整は、検出可能範囲内に被検出物が存在しないときに行われる。
バッファ回路103が交流電圧の出力を開始すると、第1実施形態と同様にして、送信電極101aと補助電極101cとの間に、非常に小さい電位差が発生する。この電位差は、第1実施形態と同様にして直流電圧信号Sd1に変換され、アナログ/デジタル変換器620でデジタル信号に変換され、CPU630に入力される。CPU630は、第1実施形態のCPU112と同様にして、補正信号Sa1を生成・出力する。この補正信号Sa1は、デジタル/アナログ変換器113でアナログ信号に変換されて、差動増幅器110の反転入力端子に供給される。これにより、検出信号Sd1の値は、零に補正される。
また、バッファ回路103の動作開始と同時に、温度補正用バッファ回路612も、交流電圧の出力を開始する。この交流電圧は、補正用抵抗素子613を介して、第1コンデンサ611aの一端に印加される。また、温度補正用バッファ回路612の出力は、第1、第2コンデンサ611a,611bの他端に、抵抗素子613を介さずに直接印加される。これにより、第2コンデンサ611bに端子間電圧が発生し、電流I2(図示せず)が流れる。電流I2が流れると、補正用バッファ回路612と第2コンデンサ611b間の配線抵抗に起因して、当該第2コンデンサ611bの他端の電圧が若干低下する。このため、第1コンデンサ611aの端子間に、非常に小さい電位差が発生する。したがって、第1コンデンサ611aに微少電流I3(図示せず)が流れ、温度補正用抵抗素子613で微少な電圧降下が発生する。これにより、温度補正用第1差動増幅器614の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)との間には、微少な電位差が発生する。差動増幅器614の出力信号は、後段の回路素子615〜617で、回路素子107〜109の場合と同様の処理を施され、温度補正用第2差動増幅器618に供給される。そして、温度補正用第2差動増幅器618からは、直流電圧信号Sd0が出力される。直流電圧信号Sd0は、アナログ/デジタル変換器620でデジタル信号に変換され、CPU630に入力される。CPU630は、上述の信号Sd1の場合と同様にして、補正信号Sa0を生成・出力する。この補正信号Sa0は、デジタル/アナログ変換器619でアナログ信号に変換されて、差動増幅器618の反転入力端子に供給される。これにより、信号Sd0の値は、零に補正される。
次に、初期調整後の、静電容量型距離センサ600動作について説明する。
被検出物がセンサ部101の検出可能範囲内に入ると、上述の第1実施形態と同様にして、抵抗素子104に流れる電流I0が変動し、I0+Isとなる(図5(B)参照)。これにより、第1実施形態と同様にして、検出信号Sd1が、零ボルトから、被検出物に流れる電流Isに対応した値に変化する。
一方、温度補正用擬似センサ部611に流れる電流は、被検出物の有無や距離に応じて変化しない。したがって、環境温度が変化しなければ、信号Sd0の値は、上述の初期調整時のまま維持される。
ここで、静電容量型距離センサ600の回路部分(すなわち、センサ部101およびシールドケーブル105以外の部分)の環境温度が変化した場合、この温度変化に起因して、回路103,106〜110を構成する各オペアンプ等のオフセット電圧等が変動する。上述のように、この実施形態では、差動増幅器110の出力が零ボルトになるように初期調整するので、環境温度が初期調整時のままであれば、オフセット電圧等に起因する検出信号Sd1の誤差は問題とならない。しかし、環境温度の変化によるオフセット電圧等が変動が大きい場合には、当該オフセット電圧等に起因する検出信号Sd1の誤差が無視できなくなる。
この実施形態に係る静電容量型距離センサ600は、本来のセンサと等価な温度補正回路610を備えている。本来のセンサ部分でオフセット電圧等が変動した場合、温度補正回路610でも同等の変動が生じる。したがって、温度補正回路610の出力電圧Sd0の変動量を用いて検出信号Sd1を補正すれば、この検出信号Sd1の誤差をキャンセルすることができる。
このために、この実施形態に係る静電容量型距離センサ600では、CPU630が、所定時間毎に信号Sd0の値をチェックする。そして、信号Sd0の値が零ボルトからΔSdだけ変化した場合、CPU630は、予め定められたアルゴリズムによる演算を行い、この信号Sd0が零ボルトになるように補正信号Sa0の値を調整する。これにより、信号Sd0は零ボルトに戻る。上述のように本来のセンサと温度補正回路610とは等価なので、信号Sd0に誤差ΔSdが発生したとき、検出信号Sd1にも誤差ΔSdが発生しているはずである。このため、CPUは、信号Sd0の誤差がキャンセルされたときの補正信号Sa0と同じ値となるように、補正信号Sa1の値を制御する。これにより、検出信号Sd1は、誤差ΔSdが補正されることとなり、環境温度の変化による誤差がキャンセルされる。このような補正処理は、被検出物がセンサ部101の検出可能範囲内に存在しないときだけでなく、被検出物の検出中においても行うことができる。
この実施形態では、被検出物が存在しないときの検出信号Sd1の値を零ボルトに設定したが、他の値に設定しても良いことはもちろんである。
以上説明したように、この実施形態に係る静電容量型距離センサ600によれば、環境温度の変化による検出信号の誤差を補正することができるので、上述の第1実施形態の静電容量型距離センサ100と比較して、さらに検出精度を高めることができる。
また、1個のバッファ回路103から異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給するので検出精度が向上する点、被検出物が検出されていないときの検出信号値を用いて被検出物が検出されたときの検出信号を補正するので検出精度が向上する点、および、プリント基板201およびスペーサ203を柔軟性のある材料で形成し且つシールド電極101bを柔軟性および伸縮性のある材料で形成することにより曲面等へのセンサ部101の取り付けが容易になる点は、第1実施形態と同様である。
第3の実施の形態
以下、この発明の第3の実施形態に係る静電容量型距離センサについて、図7を用いて説明する。この実施形態は、複数個の検出系を有し、各検出系の温度補正を行うことができる静電容量型距離センサの例である。
図7は、この実施形態に係る静電容量型距離センサの構成を示す概略図である。図7において、図1と同じ符号を付した構成要素は、それぞれ図1と同じものを示している。
図7に示したように、この実施形態の静電容量型距離センサ700は、二個の検出系710,720と、1個の温度補正回路730と、3入力1出力のスイッチ741,742と、CPU750とを備えている。
検出系710は、センサ部711と、バッファ回路712と、電流検出抵抗素子713と、シールドケーブル714とを備えている。同様に、検出系720は、センサ部721と、バッファ回路722と、電流検出抵抗素子723と、シールドケーブル724とを備えている。また、温度補正回路730は、温度補正用擬似センサ部731と、温度補正用バッファ回路732と、温度補正用電流検出抵抗素子733とを備えている。
センサ部711,721は、第1実施形態のセンサ部101と同様の構成を有している。すなわち、センサ部711は送信電極711a、シールド電極711bおよび補助電極711cを備えており、センサ部721は送信電極721a、シールド電極721bおよび補助電極721cを備えている。
温度補正用擬似センサ部731は、第2実施形態の擬似センサ部611と同じ構成を有している。すなわち、温度補正用擬似センサ部731は、第1、第2コンデンサ731a,731bを備えている。第1コンデンサ731aの静電容量は、電極711a,711c間および電極721a,721c間の静電容量と同一である。また、第2コンデンサ731bの静電容量は、電極711b,711c間および電極721b,721c間の静電容量と同一である。
バッファ回路712,722,732は、第1実施形態のバッファ回路103と同様の構成を有している。これらのバッファ回路712,722,732の構成や特性は、相互に同一である。
電流検出抵抗素子713,723は、第1実施形態の電流検出抵抗素子104と同様、対応する送信電極711a,721aに流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。また、温度補正用電流検出抵抗素子733は、第2実施形態の温度補正用電流検出抵抗素子613と同様、第1コンデンサ731に流れる電流を電圧に変換するための抵抗素子である。これらの抵抗素子713,723,733の抵抗値は、同一に設定される。
シールドケーブル714,724としても、第1実施形態のシールドケーブル105と同じものが使用される。シールドケーブル714において、芯線714aは抵抗素子713と送信電極711aとを接続し、被覆線714bはバッファ回路712の出力端と補助電極711cとを接続する。同様に、シールドケーブル724において、芯線724aは抵抗素子723と送信電極721aとを接続し、被覆線724bはバッファ回路722の出力端と補助電極721cとを接続する。
スイッチ741は、入力端子S11で抵抗素子713の一端(バッファ回路712側の端部)に接続され、入力端子S12で抵抗素子723の一端(バッファ回路722側の端部)に接続され、且つ、入力端子S13で抵抗素子733の一端(バッファ回路732側の端部)に接続される。また、スイッチ741の出力端子は、差動増幅器106の非反転入力端子に接続される。
スイッチ742は、入力端子S21で抵抗素子713の他端(送信電極711a側の端部)に接続され、入力端子S22で抵抗素子723の他端(送信電極721a側の端部)に接続され、且つ、入力端子S23で抵抗素子733の他端(第1コンデンサ731a側の端部)に接続される。また、スイッチ742の出力端子は、差動増幅器106の反転入力端子に接続される。
CPU750は、アナログ/デジタル変換器111から入力したデジタル信号を用いて補正信号Sa1,Sa2,Sa0を生成し、内部に保存するとともに、デジタル/アナログ変換器113に出力する。これにより、後述のような温度補正を行うことができる。加えて、CPU750は、スイッチ741,742の入力切換等の制御を行う。
次に、この実施形態に係る静電容量型距離センサ700の動作について、図8を用いて説明する。
まず、静電容量型距離センサ700の初期調整の動作について説明する。この調整は、検出可能範囲内に被検出物が存在しないときに行われる。
バッファ回路712,722,732が交流電圧の出力を開始すると、第1実施形態と同様にして、電極711a,711c間および電極721a,721c間に、非常に小さい電位差が発生する。また、第2コンデンサ731bにも、微少電流が流れるようになる。
CPU750がスイッチ741,742に入力端子S11,S21を選択させると、抵抗素子713の端子間電圧が、差動増幅器106に入力されるようになる。そして、差動増幅器106が出力する交流電圧信号は、第1実施形態と同様にして、ノイズ等が除去され、直流電圧信号Sd1に変換され、デジタル信号に変換されて、CPU750に送られる。CPU750は、第1実施形態のCPU112と同様にして、補正値を演算し、演算結果を内部に保存するとともに、補正信号Sa1として出力する。これにより、差動増幅器110が出力する検出信号は零ボルトになる。
次に、CPU750がスイッチ741,742に入力端子S12,S22を選択させると、抵抗素子723の端子間電圧が、差動増幅器106に入力されるようになる。そして、差動増幅器106が出力する交流電圧信号は、上述の場合と同様にして、差動増幅器110から直流電圧信号Sd2が出力され、デジタル信号に変換されて、CPU750に送られる。CPU750は、上述の場合と同様にして、補正値を演算し、演算結果を内部に保存するとともに、補正信号Sa2として出力する。これにより、差動増幅器110が出力する検出信号は零ボルトになる。
さらに、CPU750がスイッチ741,742に入力端子S13,S23を選択させると、抵抗素子733の端子間電圧が、差動増幅器106に入力されるようになる。そして、上述の場合と同様にして、差動増幅器106が出力する交流電圧信号が、差動増幅器110から直流電圧信号Sd0が出力され、デジタル信号に変換されて、CPU750に送られる。CPU750は、上述の場合と同様にして、補正値を演算し、演算結果を内部に保存するとともに、補正信号Sa0として出力する。これにより、差動増幅器110が出力する検出信号は零ボルトになる。
初期調整の終了後、CPU750は、内部のタイマを起動して、一定の時間間隔で割り込みを発生させる。
この割り込みタイミングt1(図8参照)で、CPU750は、まず、スイッチ741,742に入力端子S11,S21を選択させるとともに(図8のP1参照)、デジタル/アナログ変換器113に補正信号Sa1を出力する。これにより、差動増幅器110からは、補正された検出信号Sd1が出力される。
この処理が終了すると、次に、CPU750は、スイッチ741,742に入力端子S12,S22を選択させるとともに(図8のP2参照)、デジタル/アナログ変換器113に補正信号Sa2を出力する。これにより、差動増幅器110からは、補正された検出信号Sd2が出力される。
続いて、CPU750は、スイッチ741,742に入力端子S13,S23を選択させるとともに(図8のP3参照)、デジタル/アナログ変換器113に補正信号Sa0を出力する。これにより、CPU750には、アナログ/デジタル変換器111を介して、補正後の電圧信号Sd0が入力される。CPU750は、第2実施形態と同様、所定のアルゴリズムによる演算を行い、信号Sd0が零ボルトになるような調整値ΔSaを演算する。CPU750が補正信号の値をSa0+ΔSaに変更すると、信号Sd0は零ボルトに戻る。
さらに、CPU750は、内部に保存された補正信号値Sa1,Sa2を、Sa1+ΔSa,Sa2+ΔSaに書き換える。これにより、次回の割り込み発生時の検出では、このΔSaを用いて検出信号Sd1,Sd2を温度補正できることになる。
割り込みタイミングt2以降も、同様の処理P1,P2,P3が繰り返される(図8参照)。
以上説明したように、この実施形態によれば、2個の検出系を有する係る静電容量型距離センサ700において、環境温度の変化による検出信号の誤差を補正することができ、検出精度を高めることができる。
また、1個のバッファ回路から異なる配線を介して送信電極および補助電極に交流電圧を供給するので検出精度が向上する点、被検出物が検出されていないときの検出信号値を用いて被検出物が検出されたときの検出信号Sdを補正するので検出精度が向上する点、および、プリント基板201およびスペーサ203を柔軟性のある材料で形成し且つシールド電極を柔軟性および伸縮性のある材料で形成することにより曲面等へのセンサ部の取り付けが容易になる点は、第1実施形態と同様である。
なお、この実施形態では2個の検出系710,720を設けた場合を説明したが、3個以上の検出系を設けることも可能である。さらには、1個の検出系のみが設けられる場合に、この実施形態を適用することも可能である。検出系が1個のみの場合でも、この実施形態を適用することにより、第1差動増幅器106以降の回路を共通化することができるので、回路の規模やコストを低減することができる。
第4の実施の形態
以下、この発明の第4の実施形態に係る静電容量型距離センサについて、図9および図10を用いて説明する。この実施形態は、センサ部の温度変化に起因する誤差を補正できる静電容量型距離センサの他の例である。
図9は、この実施形態に係る静電容量型距離センサ900の構成を示す概略図である。図9において、図1と同じ符号を付した構成要素は、それぞれ図1と同じものを示している。
この実施形態の静電容量型距離センサ900は、温度補正回路910を備えている。温度補正回路910は、温度補正用抵抗素子911,912,913を備えている。
温度補正用抵抗素子911は、電流検出抵抗素子104(抵抗値をRs1とする)の一端(バッファ回路103側の端部)と、第1差動増幅器106の非反転入力端子(+)との間に設けられる。この抵抗素子911の抵抗値を、Rs2とする。
温度補正用抵抗素子912は、電流検出抵抗素子104の他端(送信電極101a側の端部)に一端で接続され、且つ、他端で接地される。この抵抗素子912の抵抗値を、Rf1とする。
温度補正用抵抗素子913は、第1差動増幅器106の非反転入力端子に一端で接続され、且つ、他端で接地される。この抵抗素子912の抵抗値を、Rf2とする。
ここで、抵抗素子104,911〜913の抵抗値Rs1,Rs2,Rf1,Rf2は、下式(1),(2)を満たすように決定される。
Rs1/Rf1=Rs2/Rf2 ・・・(1)
Rs1=Rf1,Rs2=Rf2 ・・・(2)
式(1),(2)を満たすように各抵抗値を設定することにより、環境温度の変動による誤差を抑制することが可能になる。以下、この理由を説明する。
センサ部101の環境温度が変化すると、センサ部101を構成する誘電体の比誘電率が変化する。そのため、送信電極101aと補助電極101cとの間および補助電極101cとシールド電極101bとの間の静電容量が変化する。特に、補助電極101cとシールド電極101bとの間の静電容量には、バッファ回路103から抵抗を介さずに電流が流れるために、バッファ回路103の負荷は大きくなる。図9に示したように、バッファ回路103は、オペアンプの電圧フォロア回路である。ここで、オペアンプの出力電流が変動すると、かかるオペアンプの温度が変動し、結果的に電圧フォロア回路の利得が変化する。このため、バッファ回路103の出力振幅は、センサ部101の環境温度の変動に応じて変動する。したがって、第1差動増幅器106の非反転入力端子および反転入力端子に入力される交流電圧の振幅も、センサ部101の環境温度に依存して変動することになる。
第1差動増幅器106は、計装用アンプであり、非反転入力端子、反転入力端子とも入力インピーダンスが高くなっているが、かかる非反転入力端子および反転入力端子には微少電流が流入する。そして、この流入電流は、入力電圧の振幅変化に依存して変化する。例えば、環境温度の変化によって振幅が増大した場合、この流入電流も増大することになる。
ここで、温度補正回路910を有さない静電容量型距離センサ(図1参照)の場合、差動増幅器106の非反転入力端子(+)は、抵抗素子を介さずに、バッファ回路103の出力端子と接続されている。したがって、バッファ回路103から当該非反転入力端子までの経路における電気抵抗は零であるとみなせるので、電圧降下は零ボルトである。一方、差動増幅器106の反転入力端子(−)は、抵抗素子104を介して、バッファ回路103の出力端子と接続されている。このため、抵抗素子104を流れる電流のために電圧降下が発生し、当該反転入力端子の電位が低下する。このような理由から、差動増幅器106では、非反転入力端子・反転入力端子間の電位差が発生する。この電位差に起因する検出誤差は、補正信号Saを用いた初期調整により、キャンセルされる。このため、環境温度が変化しなければ(すなわちバッファ回路103の出力振幅が変化しなければ)、検出信号Sdの誤差発生原因にはならない。しかしながら、環境温度が変動した場合には、バッファ回路103の出力振幅も変動し、これにより抵抗素子104による電圧降下量も変動する。したがって、非反転入力端子・反転入力端子間の電位差も初期調整時の値からずれる。この‘ずれ’は、検出信号Sdの誤差となって現れる。
これに対して、この実施形態では、温度補正回路910を設けることにより、非反転入力端子・反転入力端子間の電位差が生じないようにした。この実施形態では、バッファ回路103の出力電位をV0とすると、差動増幅器106の反転入力端子の電位V(-) および非反転入力端子の電位V(+) は、下式(3)、(4)で与えられる。したがって、上式(1),(2)が満たされるとき、V(-) =V(+) となる。V(-) =V(+) の場合、環境温度に拘わらず差動増幅器106の入力端子間の電位差が発生せず、したがって、環境温度の変動に起因して検出信号Sdの誤差が発生することもない。
V(-) =(Rf1/(Rs1+Rf1))・V0 ・・・(3)
V(+) =(Rf2/(Rs2+Rf2))・V0 ・・・(4)
図10は、環境温度と検出信号Sdとの関係の測定結果を示すグラフである。図10において、縦軸は検出信号Sdの電圧値[V]および環境温度[℃]、横軸は経過時間[hour]である。また、図10において、曲線Tは環境温度、曲線Aはこの実施形態に係る静電容量型距離センサ900の検出信号Sd、曲線Bは温度補正回路910を有さない静電容量型距離センサ(図1参照)の検出信号Sdを示している。なお、A,Bともに、センサ部101の検出可能範囲内に被検出物が存在しない場合の値である。
図10から解るように、温度補正回路910を有さない静電容量型距離センサでは、環境温度Tを10℃〜70℃まで変化させると、これにほぼ追随して、検出信号Sdの値が変化する(曲線B参照)。これに対して、この実施形態の静電容量型距離センサ900は、環境温度Tが変化しても、検出信号Sdの変動はほとんど無かった。
以上説明したように、この実施形態に係る静電容量型距離センサ900によれば、環境温度変化による検出信号の誤差を無くすことができるので、上述の第1実施形態の静電容量型距離センサ100と比較して、さらに検出精度を高めることができる。
また、1個のバッファ回路103から異なる配線を介して送信電極101aおよび補助電極101cに交流電圧を供給するので検出精度が向上する点、被検出物が検出されていないときの検出信号値を用いて被検出物が検出されたときの検出信号Sdを補正するので検出精度が向上する点、および、プリント基板201およびスペーサ203を柔軟性のある材料で形成し且つシールド電極101bを柔軟性および伸縮性のある材料で形成することにより曲面等へのセンサ部101の取り付けが容易になる点は、第1実施形態と同様である。
第5の実施の形態
次に、この発明の第5の実施形態に係る静電容量型距離センサについて、図11および図12を用いて説明する。この実施形態では、センサ部の他の例を説明する。
図11は、この実施形態に係るセンサ部1100を概念的に示す図であり、(A)は側面図、(B)は正面図である。
図11に示したように、プリント基板1110は、絶縁基材1111を有している。そして、この絶縁基材1111の表面には送信電極1112が、裏面には補助電極1113が、それぞれプリントされている。
送信電極1112の表面には、接着剤1151によって、カーボンファイバー板1141が接着されている。カーボンファイバー板1141の面積は、例えば、送信電極1112の面積の数倍〜数十倍である。
補助電極1113の裏面には、接着剤1152によって、カーボンファイバー板1142が接着されている。カーボンファイバー板1142の面積は、カーボンファイバー板1141と同じでよい。
カーボンファイバー板1142の裏面には、接着剤1153によって、スペーサ1120が接着されている。スペーサ1120としては、例えば第1実施形態のスペーサ203(図3参照)と同様のものを使用できる。
スペーサ1120の裏面には、接着剤1154によって、カーボンファイバー板1143が接着される。カーボンファイバー板1143の面積は、カーボンファイバー板1141,1142と同じでよい。
カーボンファイバー板1143の裏面には、接着剤1155によって、シールド電極1130が接着されている。このシールド電極1130は、例えば導電性ゴム、導電性布等で形成することができる。
次に、このセンサ部1100の動作原理について、図12を用いて説明する。図12は、この実施形態に係る静電容量型距離センサ1200の要部構成を示している。図12において、センサ部1100以外の構成は第1実施形態に係る静電容量型距離センサ100(図1参照)と同じであるので、一部を省略している。
カーボンファイバー板1141〜1143は、内部は導電性であるが、表面は絶縁性であり、且つ、非常に薄い接着剤層1151,1152,1155を介して電極1112,1113,1130に接続されているため、容量性の結合になる。この実施形態では、接着剤1151〜1155として、絶縁性のものを使用する場合を説明する。ここで、接着剤層1151,1152,1155は非常に薄いので、結合容量は非常に大きくなる。
カーボンファイバー板1141の前方に被検出物1201が存在する場合、送信電極1112とグランドとの間に、コンデンサが存在すると考えることができる。このとき、接着剤層1151、カーボンファイバー板1141、被検出物1201、および、当該カーボンファイバー板1141と当該被検出物1201との間の空間が、当該コンデンサの誘電体を構成する。ここでは、接着剤層1151の静電容量をCcとし、カーボンファイバー板1141、被検出物1201および空間からなる部分の静電容量をCsとする。静電容量Cc,Csは直列接続であるため、合成容量Cは、下式(4)で与えられる。
C=Cs・Cc/(Cs+Cc) ・・・(4)
上述のように、接着剤層1151は非常に薄く、したがって静電容量Ccは非常に大きくなる。これと比較して、カーボンファイバー板1141、被検出物1201および空間からなる部分の静電容量Csは、非常に小さい。すなわち、Cc>>Csである。ここで、Cc>>Csの場合、Cc/(Cs+Cc)≒1となるので、上式(4)よりC≒Csとなる。したがって、カーボンファイバー板1141を用いて、被検出物の有無や距離を検出することが可能になる。
この実施形態に係る静電容量型距離センサ1200では、被検出物1201の位置がカーボンファイバー板1141と平行にずれても、検出信号Sd(図1参照)の値は変化しない。すなわち、図12において、被検出物1201が存在するときと、被検出物1202が存在するときとで、検出信号Sdの値は、同じである。送信電極1112とグランドとの間に流れる電流値は、カーボンファイバー板1141と被検出物1201との距離や、カーボンファイバー板1141に対する被検出物1201の投影面積には依存するが、被検出物1201の位置がカーボンファイバー板1141と平行にずれても変化しないからである。
なお、カーボンファイバー板1141の裏面方向にカーボンファイバー板1142,1143を設けたのは、当該カーボンファイバー板1141の裏面方向にある物体が検出信号Sdに影響を与えないようにするためである。
以上説明したように、この実施形態によれば、電極1112,1113,1130等の面積を広げることなく、センサ部1100の検出可能面積を広げることができる。したがって、この実施形態によれば、検出可能面積が広い静電容量型距離センサ1200を、低コストで提供することができる。
また、1個のバッファ回路103から異なる配線を介して送信電極1112および補助電極1113に交流電圧を供給するので検出精度が向上する点、被検出物が検出されていないときの検出信号値を用いて被検出物が検出されたときの検出信号Sdを補正するので検出精度が向上する点、および、プリント基板1110およびスペーサ1120を柔軟性のある材料で形成し且つシールド電極1130を柔軟性および伸縮性のある材料で形成することにより曲面等へのセンサ部1100の取り付けが容易になる点は、第1実施形態と同様である。