JP4355455B2 - 2−アルケンカルボン酸の合成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2−アルケンカルボン酸、特にケイ皮酸誘導体を合成する方法に関する。また、本発明は、重合性液晶化合物を製造する方法にも関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物には、多様な配向形態がある。液晶化合物は液晶表示装置の液晶セルのように液晶状態で使用される場合が多いが、多様な配向形態を利用して液晶化合物を光学異方性材料として使用する場合もある。例えば、位相差板や光学補償シートの製造に、液晶化合物が使用されている。
液晶化合物を光学異方性材料として使用する場合、液晶化合物を配向させてから配向状態を固定するか、あるいは配向状態を固定しやすい高分子液晶を用いることが望ましい。エチレン性不飽和結合のような重合性基を有する重合性液晶化合物は、配向状態を重合反応により固定することができる。また、高分子液晶を、重合性液晶化合物から合成することもできる。従って、光学異方性材料としては、重合性液晶化合物が一般に使用されている。
【0003】
重合性液晶化合物は、2−アルケンカルボン酸(例、ケイ皮酸誘導体)を用いて製造されている。そして、2−アルケンカルボン酸は、アルデヒド(例、ベンズアルデヒド誘導体)から合成することが普通である。
新実験化学講座14巻5章に、マロン酸/ピリジン/ピペリジンを用いて、ベンズアルデヒド誘導体からケイ皮酸誘導体を合成する方法が開示されている。しかし、ピペリジンは、重合性基(例、アクリロイルオキシ基)と反応しやすく、目的物の収率と純度を低下させる。
Chem. Ber., 59巻、500頁(1926年)には、無水酢酸/酢酸ナトリウムを用いる方法が記載されている。しかし、無水酢酸/酢酸ナトリウム系では、150℃以上の反応温度が必要である。150℃以上の高い反応温度では、重合性基(例、アクリロイルオキシ基)が重合反応を起こしやすい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、副反応が少ない反応条件で、アルデヒドから2−アルケンカルボン酸を高収率で合成することである。
また、本発明の目的は、高収率かつ高純度で得られた2−アルケンカルボン酸を用いて、重合性液晶化合物を製造することでもある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)〜(9)の2−アルケンカルボン酸の合成方法、下記(10)〜(12)のケイ皮酸誘導体の合成方法、および下記(13)の重合性液晶化合物の製造方法を提供する。
(1)下記式(I)で表されるアルデヒドから下記式(II)で表される2−アルケンカルボン酸を合成する方法であって、下記式(I)で表されるアルデヒドとマロン酸とを下記式(III)で表される芳香族アミンの存在下で反応させることを特徴とする2−アルケンカルボン酸の合成方法:
【0006】
【化4】
【0007】
(III) AR−N(−R 31 )(−R 32 )
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり;L 1は、−O−二価の脂肪族基−O−二価の芳香族基−で表される二価の連結基であり;ARは、芳香族基であり;そして、R 31 およびR 32 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である]。
【0008】
(2)R1およびR2が、それぞれ独立に、メチルまたは水素原子である(1)に記載の合成方法。
(3)R1およびR2が、水素原子である(1)に記載の合成方法。
(4)L1が、−O−アルキレン基−O−アリーレン基−で表される二価の連結基である(1)に記載の合成方法。
【0009】
(5)L1が、−O−炭素原子数が1乃至15のアルキレン基−O−フェニレン基−で表される二価の連結基である(1)に記載の合成方法。
(6)L1が、−O−炭素原子数が1乃至6のアルキレン基−O−p−フェニレン基−で表される二価の連結基である(1)に記載の合成方法。
【0010】
(7)芳香族アミンがアニリンである(1)に記載の合成方法。
(8)式(I)で表されるアルデヒドが90%以上消失した後に、さらに3級アミンを添加する(1)に記載の合成方法。
(9)70乃至110℃の温度で式(I)で表されるアルデヒドとマロン酸とを反応させる(1)に記載の合成方法。
【0011】
(10)下記式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体から下記式(2)で表されるケイ皮酸誘導体を合成する方法であって、下記式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体とマロン酸とを下記式(III)で表される芳香族アミンの存在下で反応させることを特徴とするケイ皮酸誘導体の合成方法:
【0012】
【化5】
【0013】
(III) AR−N(−R 31 )(−R 32 )
[式中、Lは、−O−二価の脂肪族基−O−で表される二価の連結基であり;Zは、ハロゲン原子、炭素原子数が1乃至12のアルキル基、炭素原子数が1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数が2乃至13のアシル基、炭素原子数が1乃至12のアルキルアミノ基または炭素原子数が2乃至13のアシルオキシ基であり;aは、1、2、3、4または5であり;bは、0、1、2、3または4であって、a+bは1乃至5であり;ARは、芳香族基であり;そして、R 31 およびR 32 は、それぞれ独立に、水素原子または脂肪族基である]。
【0014】
(11)式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体が90%以上消失した後に、さらに3級アミンを添加する(10)に記載の合成方法。
(12)70乃至110℃の温度で式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体とマロン酸とを反応させる(10)に記載の合成方法。
【0015】
(13)重合性ディスコティック液晶化合物を製造する方法であって、前記式(I)で表されるアルデヒドとマロン酸とを前記式(III)で表される芳香族アミンの存在下で反応させて、前記式(II)で表される2−アルケンカルボン酸を合成し、次に、得られた2−アルケンカルボン酸と、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンとを反応させて、2−アルケンカルボン酸のカルボキシル基と2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのヒドロキシル基とをエステル結合させることを特徴とする重合性ディスコティック液晶化合物の製造方法。
【0016】
【発明の効果】
本発明者は、従来の反応系、すなわち、マロン酸/ピリジン/ピペリジン系あるいは無水酢酸/酢酸ナトリウム系に代わるべき、新たな反応系について検討した。その結果、芳香族アミンは、ピペリジンと比較して、重合性基との反応性が低く、副反応が起こりにくいことが判明した。また、マロン酸/芳香族アミン系は、無水酢酸/酢酸ナトリウム系と比較して、低い反応温度でも合成反応が進行するため、重合性基の重合反応が起こりにくいことが明らかになった。
従って、本発明の方法によれば、高純度の2−アルケンカルボン酸を高収率で合成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
[アルデヒド]
本発明では、下記式(I)で表されるアルデヒドから下記式(II)で表される2−アルケンカルボン酸を合成する。
【0018】
【化6】
【0019】
式(I)および(II)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子(F、Cl、Br、I)である。R1 およびR2 は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基または水素原子であることが好ましく、炭素原子数が1乃至4のアルキル基または水素原子であることがより好ましく、炭素原子数が1または2のアルキル基または水素原子であることがさらに好ましく、メチルまたは水素原子であることがさらにまた好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0020】
式(I)および(II)において、L1 は、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、二価の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。
L1 は、カルボニル(L1 の左側にある−CO−)に隣接する部分が−O−であることが好ましい。すなわち、L1 は、−O−L2 −であって、L2 が、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、二価の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
また、L1 は、ビニレン(L1 の右側にある−CH=CH−)に隣接する部分が二価の芳香族基であることが好ましい。すなわち、L1 は、−L3 −AR−であって、L3 が、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、二価の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり、ARが二価の芳香族基であることが好ましい。
さらに、L1 は、カルボニル基に隣接する部分が−O−であり、かつビニレン基に隣接する部分が二価の芳香族基であることが好ましい。すなわち、L1 は、−O−L4 −AR−であって、L4 が、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、二価の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり、ARが二価の芳香族基であることがさらに好ましい。
【0021】
二価の脂肪族基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基または置換アルキニレン基である。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至15であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、2乃至15であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至10であることがさらに好ましく、2乃至8であることがさらにまた好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
置換アルキレン基、置換アルケニレン基および置換アルキニレン基のアルキレン部分、アルケニレン部分およびアルキニレン部分は、それぞれ、上記アルキレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基と同様である。
置換アルキレン基、置換アルケニレン基および置換アルキニレン基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ、スルホ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−O−CO−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)2 、−SO3 −Rおよび−Si(−R)3 が含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0022】
二価の芳香族基は、アリーレン基または置換アリーレン基である。
アリーレン基は、フェニレンまたはナフチレンが好ましく、フェニレンがさらに好ましく、p−フェニレンが最も好ましい。
置換アリーレン基のアリーレン部分は、上記アリーレン基と同様である。
置換アリーレン基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ、スルホ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−O−CO−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)2 、−SO3 −Rおよび−Si(−R)3 が含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
二価の複素環基は、二価の無置換複素環基または二価の置換複素環基である。二価の複素環基の複素環は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、不飽和複素環であり、一般に最多二重結合を含む。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環の例には、チオフェン環、インドール環およびピリジン環が含まれる。
二価の置換複素環基の置換基の例は、置換アリーレン基の置換基の例と同様である。
【0023】
脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基である。
アルキル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至15であることが好ましく、1乃至12であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
アルケニル基およびアルキニル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルケニル基およびアルキニル基の炭素原子数は、2乃至15であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至10であることがさらに好ましく、2乃至8であることがさらにまた好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アルキニル基のアルキル部分、アルケニル部分およびアルキニル部分は、それぞれ、上記アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基と同様である。
置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アルキニル基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ、スルホ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−O−CO−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)2 、−SO3 −Rおよび−Si(−R)3 が含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0024】
芳香族基は、アリール基または置換アリール基である。
アリール基は、フェニルまたはナフチルが好ましく、フェニルがさらに好ましい。
置換アリール基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。
置換アリール基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ、スルホ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)2 、−O−CO−R、−CO−O−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)2 、−SO3 −Rおよび−Si(−R)3 が含まれる。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
複素環基は、無置換複素環基または置換複素環基である。
複素環基の複素環は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、不飽和複素環であり、一般に最多二重結合を含む。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環の例には、チオフェン環、インドール環およびピリジン環が含まれる。
置換複素環基の置換基の例は、置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0025】
式(II)で表される2−アルケンカルボン酸において、2−アルケン部分の二重結合は、シス型よりもトランス型の方が好ましい。
【0026】
アルデヒドとして下記下記式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体を用いて、下記式(2)で表されるケイ皮酸誘導体を合成することが好ましい。
【0027】
【化7】
【0028】
式(1)および(2)において、Lは、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、二価の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。Lは、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましく、二価の脂肪族基、−O−、−S−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることがより好ましく、二価の脂肪族基、−O−、−S−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることがさらに好ましく、二価の脂肪族基、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることがさらにまた好ましく、二価の脂肪族基、−O−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが最も好ましい。
Lは、−O−二価の脂肪族基−O−であることが特に好ましい。
二価の脂肪族基、二価の芳香族基および二価の複素環基の定義および例は、式(I)および(II)におけるL1 と同様である。
【0029】
式(1)および(2)において、Zは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、炭素原子数が1乃至12のアルキル基、炭素原子数が1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数が2乃至13のアシル基、炭素原子数が1乃至12のアルキルアミノ基または炭素原子数が2乃至13のアシルオキシ基である。
アルキル基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1乃至3であることが最も好ましい。
アルコキシ基およびアルキルアミノ基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表される。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。脂肪族基、芳香族基および複素環基の定義および例は、式(I)および(II)におけるL1 (の置換基)と同様である。
【0030】
式(1)および(2)において、aは、1、2、3、4または5である。aは、1、2、3または4であることが好ましく、1、2または3であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましく、1であることが最も好ましい。
式(1)および(2)において、bは、0、1、2、3または4である。bは、0、1、2または3であることが好ましく、0、1または2であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましく、0であることが最も好ましい。
式(1)および(2)において、a+bは1乃至5である。
【0031】
式(2)で表されるケイ皮酸誘導体において、ベンゼン環とカルボキシル基との間の二重結合は、シス型(アロケイ皮酸誘導体)よりもトランス型(狭義のケイ皮酸誘導体)の方が好ましい。
【0032】
以下に、アルデヒド(I)と、それを用いて合成される2−アルケンカルボン酸(II)との例を示す。
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
【化13】
【0039】
【化14】
【0040】
【化15】
【0041】
【化16】
【0042】
【化17】
【0043】
【化18】
【0044】
【化19】
【0045】
【化20】
【0046】
【化21】
【0047】
【化22】
【0048】
【化23】
【0049】
【化24】
【0050】
【化25】
【0051】
【化26】
【0052】
【化27】
【0053】
【化28】
【0054】
【化29】
【0055】
【化30】
【0056】
【化31】
【0057】
【化32】
【0058】
【化33】
【0059】
【化34】
【0060】
【化35】
【0061】
【化36】
【0062】
【化37】
【0063】
【化38】
【0064】
【化39】
【0065】
【化40】
【0066】
【化41】
【0067】
【化42】
【0068】
【化43】
【0069】
【化44】
【0070】
【化45】
【0071】
【化46】
【0072】
【化47】
【0073】
【化48】
【0074】
【化49】
【0075】
【化50】
【0076】
【化51】
【0077】
【化52】
【0078】
【化53】
【0079】
【化54】
【0080】
【化55】
【0081】
【化56】
【0082】
【化57】
【0083】
【化58】
【0084】
【化59】
【0085】
【化60】
【0086】
【化61】
【0087】
【化62】
【0088】
【化63】
【0089】
【化64】
【0090】
【化65】
【0091】
【化66】
【0092】
【化67】
【0093】
【化68】
【0094】
【化69】
【0095】
[マロン酸]
マロン酸の使用量は、アルデヒドに対するモル比で1乃至10当量であることが好ましく、1乃至5当量であることがさらに好ましい。
マロン酸は予め全量を、アルデヒドと共に反応液中に加えておくことができる。また、反応液中に徐々にマロン酸を添加してもよい。マロン酸を溶媒に溶解した溶液を、反応液中に滴下することができる。また、マロン酸の粉末を、反応液に添加することもできる。粉末よりも溶液で添加する方が好ましい。マロン酸の溶媒としては、反応溶媒(後述)と同じ溶媒を用いることができる。
【0096】
[芳香族アミン]
芳香族アミンは、AR−N(−R1 )(−R2 )で表される。ARは、芳香族基または芳香族性複素環基であり、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、水素原子または脂肪族基であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。芳香族アミンは、1級芳香族アミン(AR−NH2 )または2級芳香族アミン(AR−NHR1 )が好ましく、1級芳香族アミンがさらに好ましい。
脂肪族基、芳香族基および複素環基の定義および例は、式(I)および(II)におけるL1 (の置換基)と同様である。
芳香族性複素環基の複素環は、不飽和複素環であり、一般に最多二重結合を含む。芳香族性複素環基に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。芳香族性複素環基の例には、チオフェン環、インドール環およびピリジン環が含まれる。ピリジン環が好ましい。芳香族性複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、前述した置換アリール基の置換基と同様である。
【0097】
前記ARは、フェニルまたはピリジルであることが好ましく、フェニルであることがさらに好ましい。
芳香族アミンの例には、アニリン、N,N−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N,N,N’−トリメチル−1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−4−ニトロアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−4−ニトロアニリンが含まれる。アニリン、N,N−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N,N,N’−トリメチル−1,4−フェニレンジアミンおよびN−メチル−4−ニトロアニリンが好ましく、アニリン、N,N−ジメチル−1,4−フェニレンジアミンおよび4−ニトロアニリンがさらに好ましく、アニリンが最も好ましい。
【0098】
芳香族アミンの使用量は、アルデヒドに対して0.1乃至200モル%であることが好ましく、0.5乃至50モル%であることがさらに好ましい。
【0099】
[3級アミン]
アルデヒドとマロン酸とが反応して、系内に反応中間体が生成する。三級アミンを用いると、反応中間体を迅速に目的物である2−アルケンカルボン酸に変換できる。すなわち、3級アミンは必須ではないが、3級アミンの使用は、反応時間の短縮と純度の向上に有効である。
3級アミンは、N(−R11)(−R12)(−R13)で表される。R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
脂肪族基、芳香族基および複素環基の定義および例は、式(I)および(II)におけるL1 (の置換基)と同様である。
【0100】
R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基)であることがより好ましく、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基または置換アルケニル基であることがさらに好ましく、アルキル基または置換アルキル基であることがさらにまた好ましく、アルキル基であることが最も好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1乃至3であることが最も好ましい。
【0101】
3級アミンの例には、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリブチルアミンが含まれる。
3級アミンの使用量は、アルデヒドに対するモル比で0.1乃至50当量であることが好ましく、0.5乃至5当量であることがさらに好ましい。
3級アミンは、アルデヒドが90%以上消失した後に反応系に添加することが好ましく、アルデヒドが95%以上消失した後に反応系に添加することがさらに好ましい。
【0102】
[反応条件]
反応溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン)、芳香族性複素環化合物(例、ピリジン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、ペンタン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)あるいはカルボン酸(例、酢酸)を用いることができる。芳香族性複素環化合物およびアミドが好ましく、ピリジンおよびジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0103】
反応温度は、40乃至140℃であることが好ましく、70乃至110℃であることがさらに好ましい。
反応系に重合禁止剤を添加して、二重結合を保護してもよい。重合禁止剤は、(メタ)アクリル酸の重合禁止剤として通常用いられている化合物を利用できる。重合禁止剤の例には、フェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ニトロベンゼンおよびt−ブチルカテコールが含まれる。また、無機塩(例、塩化銅、硫化銅)も重合禁止剤として使用できる。重合禁止剤の添加量は、アルデヒドの使用量に対して、10乃至10000ppmであることが好ましく、100乃至1000ppmであることがさらに好ましい。
【0104】
[重合性液晶化合物の製造]
得られた2−アルケンカルボン酸と、アルコール、フェノールまたはアミンとを反応させて、2−アルケンカルボン酸のカルボキシル基とアルコールかフェノールのヒドロキシル基またはアミンのアミノ基とをエステル結合またはアミド結合させることにより重合性液晶化合物を製造できる。この方法は、代表的な液晶化合物である棒状液晶化合物とディスコティック液晶化合物のいずれにも有効である。
反応条件は、通常のエステル形成反応またはアミド形成反応と同様である。
【0105】
2−アルケンカルボン酸と、アルコール、フェノールまたはアミンとの反応により重合性ディスコティック液晶化合物を製造することが好ましく、2−アルケンカルボン酸とアルコールまたはフェノールとの反応により、2−アルケンカルボン酸のカルボキシル基とアルコールかフェノールのヒドロキシル基とをエステル結合させることにより重合性ディスコティック液晶化合物を製造することがさらに好ましく、2−アルケンカルボン酸とフェノール(水酸基を有する芳香族性円盤状化合物)との反応により、2−アルケンカルボン酸のカルボキシル基とフェノールのヒドロキシル基とをエステル結合させることにより重合性ディスコティック液晶化合物を製造することが最も好ましい。
以下に、重合性ディスコティック液晶化合物の製造に用いることができる水酸基を有する円盤状化合物の例を示す。
【0106】
【化70】
【0107】
【化71】
【0108】
【化72】
【0109】
【化73】
【0110】
【化74】
【0111】
【化75】
【0112】
【化76】
【0113】
【実施例】
[実施例1]
マロン酸/芳香族アミン系
(4−アクリロイルオキシブチルオキシケイ皮酸の合成)
4−アクリロイルオキシブチルオキシベンズアルデヒド5.0g(20.1ミリモル)とマロン酸6.27g(60.3ミリモル)そしてヒドロキノンモノメチルエーテル50mgをピリジン20mlに溶解後、アニリン0.04g(0.43ミリモル)を加え、100℃で5時間攪拌した。冷却後、反応液を100mlの塩酸水に加え、30分間攪拌後、結晶を濾取した。得られた結晶をアセトニトリル/水系で再結晶を行うことにより、目的物を5.25g(18.1ミリモル)得た(収率:90%)。
【0114】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.85(4H,brs)
3.95(2H,brs)
4.25(2H,brs)
5.80(1H,d)
6.10(1H,dd)
6.40(1H,d)
6.50(1H,d)
6.70(2H,d)
7.30(2H,d)
7.85(1H,d)
【0115】
[実施例2]
マロン酸/芳香族アミン系
(4−アクリロイルオキシブチルオキシケイ皮酸の合成)
4−アクリロイルオキシブチルオキシベンズアルデヒド5.0g(20.1ミリモル)とマロン酸6.27g(60.3ミリモル)そしてヒドロキノンモノメチルエーテル50mgをピリジン20mlに溶解後、アニリン0.04g(0.43ミリモル)を加え、95℃で5時間攪拌した。冷却後、反応液を100mlの塩酸水に加え、30分間攪拌後、結晶を濾取した。得られた結晶をアセトニトリル/水系で再結晶を行うことにより、目的物を5.49g(18.9ミリモル)得た(収率:94%)。純度は、99.1%(HPLC)であった。
【0116】
[実施例3]
マロン酸/芳香族アミン/3級アミン系
(4―アクリロイルオキシブチルオキシケイ皮酸の合成)
4―アクリロイルオキシブチルオキシケイ皮酸5.0g(20.1ミリモル)とマロン酸6.27g(60.3ミリモル)そしてヒドロキノンモノメチルエーテル50mgをピリジン20mlに溶解後、アニリン0.04g(0.43ミリモル)を加え、95℃で1時間撹拌し、次いでトリエチルアミン2.64g(26.1ミリモル)を添加した。10分間撹拌後、反応液を100mlの塩酸水に加え、30分間撹拌後、結晶を濾取した。得られた結晶をアセトニトリル/水系で再結晶をおこなうことにより、目的物を5.4g(18.7ミリモル)得た(収率:93%)。純度は、99.4%(HPLC)であった。
【0117】
[比較例1]
ピリジン/ピペリジン系
(4―アクリロイルオキシブチルオキシケイ皮酸の合成)
4−アクリロイルオキシブチルオキシベンズアルデヒド5.0g(20.1ミリモル)とマロン酸3.1g(30.2ミリモル)そしてヒドロキノンモノメチルエーテル50mgをピリジン20mlに溶解後、ピペリジン0.51g(6.03mミリモル)を加え、100℃で5時間攪拌した。冷却後、反応液を100mlの塩酸水に加え、30分間攪拌後、結晶を濾取した。得られた結晶をアセトニトリル/水系で再結晶を行うことにより、目的物を2.5g(8.6ミリモル)を得た(収率:43%)。
【0118】
[比較例2]
無水酢酸/酢酸ナトリウム系
(4―アクリロイルオキシブチルオキシケイ皮酸の合成)
4−アクリロイルオキシブチルオキシベンズアルデヒド5.0g(20.1ミリモル)とヒドロキノンモノメチルエーテル50mgを無水酢酸20mlに溶解後、酢酸ナトリウム8.2g(100mミリモル)を加え、150℃で5時間攪拌した。冷却後、反応液を100mlの塩酸水に加え、30分間攪拌後、結晶を濾取した。得られた結晶をアセトニトリル/水系で再結晶を行ったが、この系に溶解しない不溶物が多く認められた。この不溶物をセライト濾過後、再結晶化を行い目的物を2.1g(7.23ミリモル)得た(収率:36%)。
【0119】
[実施例4]
(重合性液晶化合物の製造)
300mlの三ッ口フラスコに4―アクリロイルオキシブチルオキシベンズアルデヒド10.0g(34.4ミリモル)、ジメチルアセトアミド8ml、ニトロベンゼン0.03gおよび酢酸エチル32mlを仕込み、0℃に冷却した。この溶液に塩化チオニル3.04g(35.1ミリモル)を10分間で滴下した。0℃で30分間撹拌後、ジイソプロピルエチルアミン6.45g(49.9ミリモル),4−ジメチルアミノピリジン0.42g(3.44ミリモル)を添加し、次いで、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン1.57g(4.85ミリモル)のテトラヒドロフラン20ml溶液を10分間で滴下し、最後にジイソプロピルエチルアミン6.45g(49.9ミリモル)を添加した。20℃で1時間撹拌後、反応液にメタノール1ml、次いで水を加え、酢酸エチルで抽出した。分液後、酢酸エチル層にメタノールを徐々に添加し、析出した結晶を濾別した。得られた結晶は酢酸エチル/メタノール混合溶媒で再結晶化を行い、目的物7.6g(80%)を得た。
【0120】
1H−NMR(CDCl3 )δ:
1.85(24H、brs)
3.95(12H、brs)
4.25(12H、brs)
5.80(6H、d)
6.10(6H、dd)
6.40(6H、d)
6.50(6H、d)
6.70(12H、d)
7.30(12H、d)
7.85(6H、d)
8.25(6H、s)
【0121】
得られた重合性液晶化合物について、偏光顕微鏡で観察しながら相転移温度を測定したところ、以下の結果が得られた。
結晶相→124℃→ND 相→222℃→等方性液体
Claims (13)
- 下記式(I)で表されるアルデヒドから下記式(II)で表される2−アルケンカルボン酸を合成する方法であって、下記式(I)で表されるアルデヒドとマロン酸とを下記式(III)で表される芳香族アミンの存在下で反応させることを特徴とする2−アルケンカルボン酸の合成方法:
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり;L 1は、−O−二価の脂肪族基−O−二価の芳香族基−で表される二価の連結基であり;ARは、芳香族基であり;そして、R 31 およびR 32 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である]。 - R1およびR2が、それぞれ独立に、メチルまたは水素原子である請求項1に記載の合成方法。
- R1およびR2が、水素原子である請求項1に記載の合成方法。
- L1が、−O−アルキレン基−O−アリーレン基−で表される二価の連結基である請求項1に記載の合成方法。
- L1が、−O−炭素原子数が1乃至15のアルキレン基−O−フェニレン基−で表される二価の連結基である請求項1に記載の合成方法。
- L1が、−O−炭素原子数が1乃至6のアルキレン基−O−p−フェニレン基−で表される二価の連結基である請求項1に記載の合成方法。
- 芳香族アミンがアニリンである請求項1に記載の合成方法。
- 式(I)で表されるアルデヒドが90%以上消失した後に、さらに3級アミンを添加する請求項1に記載の合成方法。
- 70乃至110℃の温度で式(I)で表されるアルデヒドとマロン酸とを反応させる請求項1に記載の合成方法。
- 下記式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体から下記式(2)で表されるケイ皮酸誘導体を合成する方法であって、下記式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体とマロン酸とを下記式(III)で表される芳香族アミンの存在下で反応させることを特徴とするケイ皮酸誘導体の合成方法:
[式中、Lは、−O−二価の脂肪族基−O−で表される二価の連結基であり;Zは、ハロゲン原子、炭素原子数が1乃至12のアルキル基、炭素原子数が1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数が2乃至13のアシル基、炭素原子数が1乃至12のアルキルアミノ基または炭素原子数が2乃至13のアシルオキシ基であり;aは、1、2、3、4または5であり;bは、0、1、2、3または4であって、a+bは1乃至5であり;ARは、芳香族基であり;そして、R 31 およびR 32 は、それぞれ独立に、水素原子または脂肪族基である]。 - 式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体が90%以上消失した後に、さらに3級アミンを添加する請求項10に記載の合成方法。
- 70乃至110℃の温度で式(1)で表されるベンズアルデヒド誘導体とマロン酸とを反応させる請求項10に記載の合成方法。
- 重合性ディスコティック液晶化合物を製造する方法であって、下記式(I)で表されるアルデヒドとマロン酸とを下記式(III)で表される芳香族アミンの存在下で反応させて、下記式(II)で表される2−アルケンカルボン酸を合成し、次に、得られた2−アルケンカルボン酸と、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンとを反応させて、2−アルケンカルボン酸のカルボキシル基と2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレンのヒドロキシル基とをエステル結合させることを特徴とする重合性ディスコティック液晶化合物の製造方法:
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、水素原子またはハロゲン原子であり;L 1は、−O−二価の脂肪族基−O−二価の芳香族基−で表される二価の連結基であり;ARは、芳香族基であり;そして、R 31 およびR 32 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である]。
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