JP4351325B2 - スチレン系樹脂組成物およびそのブロー成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂組成物および成形品に関する。とくに、ブロー成形に適したスチレン系樹脂組成物およびその成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ボトルなどを得るためのブロー成形(吹込成形)用材料としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンおよびポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が用いられている。また最近では、エアーダクトおよび照明用器具などの電気・電子部品、エアースポイラーおよびコンソールなどの自動車用部品、机の天板などの家具などを得るためには、熱的性質および機械的性質に優れた、いわゆるエンジニアリングプラスチック(たとえば、特開平7−032454号公報に記載のものなど)が用いられる。
【0003】
従来、該特開平7−032454号公報に記載のブロー成形用樹脂組成物は、ブロー成形における酸化劣化を改良しているものの、得られるブロー成形品では成形品表面に小さいながらも多量の凹(以下、「ヘコ」という)が発生し、エアースポイラーの様に平滑な塗装表面を要求される用途では、サンディングによる二次加工が必要となるケースが多かった。そこで、特開平7−108534号公報のように、樹脂の金型面への転写を向上させる目的で加熱する手段と冷却する手段を備えたブロー成形用金型が提案されている。しかし、このようなブロー成形用金型は高価なばかりでなく、成形サイクルが従来に比べ長くなり生産性をも犠牲にすることになり、必ずしも満足できる状況にいたっていない。特公昭63−55541号公報、特開平4−23845号公報に記載の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形における成形品の艶消しされた外観を効果としてあげているが、ブロー成形における効果はいっさい触れられていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ブロー成形加工性、耐衝撃性のバランスに優れるスチレン系樹脂組成物、および表面性に優れた前記樹脂組成物のブロー成形体を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため本発明者らは鋭意検討した結果、スチレン系樹脂に、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物およびオレフィン、さらに必要に応じてエチレン系不飽和化合物を共重合させてなるオレフィン系共重合体と、アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、タルク粉末、およびポリエチレンワックスを配合してなる組成物は、ブロー成形品の表面を均一にし、サンディング工程をなくし、塗装を行っても良品を得ることができ、しかも耐衝撃性、ブロー成形加工性に優れることを見出し本発明を完成するにいたった。
【0006】
すなわち、本発明は、
(A)スチレン系樹脂100重量部に対し、(B)α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物およびオレフィンを共重合させてなるオレフィン系共重合体0.1〜20重量部、(C)アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.01〜10重量部、(D)タルク粉末0.01〜5重量部、および(E)ポリエチレンワックス0.01〜5重量部を配合してなるスチレン系樹脂組成物(請求項1)、
(A)スチレン系樹脂100重量部に対し、(B)α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物、オレフィン、およびエチレン系不飽和化合物を共重合させてなるオレフィン系共重合体0.1〜20重量部、(C)アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.01〜10重量部、(D)タルク粉末0.01〜5重量部、および(E)ポリエチレンワックス0.01〜5重量部を配合してなるスチレン系樹脂組成物(請求項2)、
(A)スチレン系樹脂がABS系樹脂である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物(請求項3)、
(C)アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物の平均粒径が4μm以下である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物(請求項4)、
(D)タルク粉末の平均粒径が5μm以下である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物(請求項5)、
(E)ポリエチレンワックスの分子量が3000以下である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物(請求項6)、
ブロー成形品の表面光沢が60度反射率で5%以下となる請求項1、2、3、4、5または6記載のスチレン系樹脂組成物(請求項7)、および
請求項1、2、3、4、5、6または7記載のスチレン系樹脂組成物をブロー成形してなるブロー成形品(請求項8)
をその内容とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)スチレン系樹脂としては、一般(GP)ポリスチレン、耐衝撃性(HI)ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体であるAS樹脂、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体からなるABS樹脂、前記ABS樹脂のスチレンの一部または大部分をα−メチルスチレンまたはマレイミドなどに置き換えた耐熱ABS樹脂、前記ブタジエンをエチレン−プロピレン系ゴムやポリブチルアクリレートなどに置き換えた(耐熱)AES樹脂および(耐熱)AAS樹脂などのABS系樹脂、前記ブタジエンをシリコンゴム、シリコン−アクリル複合ゴムに置き換えた(耐熱)ABS系樹脂などがあげられる。これらのスチレン系樹脂は、それぞれ単独でまたは2種以上の組み合わせで用いられる。さらに、前記スチレン系樹脂とポリカーボネート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このスチレン系樹脂は、熱変形温度が80℃以上(ASTM D−648−56:4.6kg/cm2荷重)のものが成形品使用時の熱による変形や塗装ラインでの成形品乾燥時の変形が少ないという点から好ましい。
【0008】
ABS樹脂またはABS系樹脂の製造法としてはとくに限定されず、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法などが適用できるが、乳化重合法がゴム粒子の粒子径をコントロールしやすく、成形体の耐衝撃性、光沢の向上の点からとくに好ましく用いられる。たとえば、ゴムの存在下に、ビニル系単量体をグラフト共重合させ、必要によりビニル系単量体を共重合させたものを、塩析凝固させて製造される。
【0009】
本発明に用いられる(B)成分であるオレフィン系共重合体は、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物、オレフィンおよび必要に応じてエチレン系不飽和化合物を共重合させてなるものである。
【0010】
オレフィン系共重合体(B)の組成比は、とくに制限されないが、前記α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物単位を0.1〜95重量%の比率で含有するものが好ましい。
【0011】
前記α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどがあげられる。前記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1などがあげられる。これらは1種単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上併用してもよい。
【0012】
また、必要に応じて使用するエチレン系不飽和化合物としては、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、フェニルマレイミドなどがあげられ、これらも1種単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上併用してもよい。
【0013】
前記エチレン系不飽和化合物は50重量%をこえない範囲で共重合成分として使用することが好ましい。
【0014】
オレフィン系共重合体(B)の製造においても、先にあげた従来公知の種々の重合法を用いることが可能である。一例としては、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物、オレフィン、エチレン性不飽和化合物をラジカル重合開始剤の存在下、高圧法ポリエチレンの重合条件に準じて重合させる方法があげられる。
【0015】
(B)成分の使用量は、(A)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。0.1重量部未満であると表面改良効果が不充分であり、一方、20重量部をこえると効果が飽和し却って不経済となり、またブロー成形時の加工性、衝撃強度などが低下の原因となる。
【0016】
本発明に用いられる(C)成分であるアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどがあげられ、また、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、酸化物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム;炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム;酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどがあげられる。これらは単独または2種以上組み合わせて用いられるが、就中、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムが、効果、安全性および経済性の点からとくに好ましい。
【0017】
(C)成分の使用量は、(A)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部未満では効果が不充分であり、一方、10重量部をこえると効果が飽和し却って不経済となり、また衝撃強度の低下の原因となる。また、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、酸化物の平均粒径(重量平均粒径)は、4μm以下が好ましく、4μmをこえると衝撃強度が低下する傾向がある。アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、酸化物は、ステアリン酸、シラン系カップリング剤などで表面処理して用いてもよい。
【0018】
本発明に用いられる(D)成分であるタルク粉末は、含水ケイ酸マグネシウム(4SiO2・3MgO・H2O)で、SiO2が約60%、MgO2が約30%の主成分よりなる鉱物である。
【0019】
(D)成分の使用量は、(A)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では効果が不充分であり、一方、5重量部をこえると効果が飽和したり、衝撃強度の低下の原因となるので好ましくない。また、タルク粉末の平均粒径(重量平均粒径)は5μm以下が好ましく、5μmをこえると衝撃強度が低下する傾向がある。なお、タルク粉末は、平均粒径の異なるものを併用してもよい。また、タルク粉末を、シランカップリング剤などで表面処理して用いてもよい。
【0020】
本発明に用いられる(E)成分であるポリエチレンワックスの使用量は、(A)スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では効果が不充分であり、一方、5重量部をこえると効果が飽和したり、成形品表面にブリードする原因となるので好ましくない。また、ポリエチレンワックスの平均分子量は3000以下が好ましく、3000をこえるとブロー成形時の加工性が低下する傾向がある。
【0021】
前記樹脂組成物には、さらに滑剤、酸化防止剤などを配合することにより、ブロー成形した場合の成形品の表面性および衝撃強度を向上させることも可能である。
【0022】
滑剤としては、脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなど)、アルキレンビス脂肪酸アミド(メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなど)などのアミド系滑剤、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックスなどの炭化水素系滑剤、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系滑剤、ステアリルアルコールなどの高級アルコール系滑剤、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、硬化ひまし油、ステアリルステアレートなどのエステル系滑剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸などから選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0023】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤およびチオエーテル系酸化防止剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を配合することができる。
【0024】
フェノール系酸化防止剤は、融点が150℃以上のものがより好ましい。融点が75℃未満のものは揮発性が高く、ブロー成形時に容易に揮発したりブリードしたりして有効な効果が得られない。このフェノール系酸化防止剤としては、フェノール性OH基の両オルト位が嵩高い第3級ブチル基で置換されたレスヒンダード型フェノール系酸化防止剤があげられる。さらに好ましい具体例としては、旭電化工業(株)製のアデカスタブAO−20(融点:以降mp=221℃)、アデカスタブAO−30(mp=186℃)、アダカスタブAO−40(mp=210℃)、アダカスタブAO−60(mp=115℃)、アデカスタブAO−80(mp=125℃)、アデカスタブ330(mp=244℃)、チバガイギー社製のイルガノックス245(mp=79℃)、イルガノックス1010(mp=125℃)、ICI社製のトパノールCA(mp>200℃)、住友化学(株)製のスミライザーWX−R(mp=160℃)、スミライザーGS(mp=127℃)があげられる。最も好ましい具体例としては、アデカスタブAO−30、アデカスアブAO−80、およびイルガノックス245などのレスヒンダード型のフェノール系酸化防止剤があげられる。
【0025】
一方、ホスファイト系酸化防止剤は、融点が100℃以上のものが好ましい。ブロー成形時にはパリソンやシートが高温の状態で樹脂組成物が大気にさらされるため、融点が100℃未満では揮発性が高すぎ、酸化防止剤が揮発したりブリードしたりして、有効な効果が得られなくなる。また、金型汚染を引き起こす場合もある。ホスファイト系酸化防止剤の具体例としては、旭電化工業(株)製のアデカスタブPEP−2(mp=110℃)、アデカスタブPEP−24G(mp=165℃)、アデカスタブPEP−36(mp=287℃)、アデカスタブHP−10(mp=148℃)、およびアデカスタブ2112(mp=183℃)があげられる。
【0026】
チオエーテル系酸化防止剤は、融点が35℃以上のものが好ましく、より好ましくは40℃以上のものである。ブロー成形時にはパリソンやシートが高温の状態で樹脂組成物が大気にさらされるため、融点が35℃未満では揮発性が高すぎ、酸化防止剤が揮発したりブリードしたりして、有効な効果が得られなくなる。また、金型汚染を引き起こす場合もある。チオエーテル系酸化防止剤の具体例としては、住友化学(株)製のスミライザーTRL−R(mp=37℃)、スミライザーTPM(mp=48℃)、スミライザーTPS(mp=63℃)、スミライザーTPD(mp=46℃)、およびスミライザーMB(mp=285℃)があげられる。
【0027】
さらに、前記のようなフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤を併用すれば、相乗的効果が発揮され、少ない添加量でも効果が得られる。
【0028】
本発明のスチレン系樹脂組成物には、さらに必要に応じて、顔料、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを1種または2種以上混合してもよい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの1種または2種以上と組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ブロー成形品の製造工程は、前記のようなブロー成形用スチレン系樹脂組成物を得る工程と、この樹脂組成物をブロー成形する工程とを含んでいる。前記ブロー成形用スチレン系樹脂組成物の製造法の一例としては、たとえば、パウダー、フレークまたはペレット状のスチレン系樹脂(A)と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物およびオレフィン、さらに必要に応じてエチレン系不飽和化合物を共重合させてなるオレフィン系共重合体(B)、アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、タルク粉末(D)、およびポリエチレンワックス(E)とをヘンシェルミキサーで混合し、単軸または多軸の押出機で溶融押出ししてペレット化して製造される。また、(C)成分をより均一に混合させる目的で水溶液や懸濁液で混合することもできる。
【0031】
つづくブロー成形法としては、通常のブロー成形のほか、シートパリソン法、コールドパリソン法、ボトルパック法、インジェクションブロー成形法、延伸ブロー成形法など各種の方法があるが、いずれの方法も採用できる。このブロー成形工程では、ブローアップ性、表面性などの点から、得られた樹脂組成物を200℃以上のパリソンまたはシートでブロー成形することが好ましい。さらに、より良い効果を得るためには、パリソンおよびシートを膨らませる際に、空気に代えて、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの不活性ガスを用いてもよい。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、とくにスチレン系樹脂組成物はブロー成形加工性、耐衝撃性のバランスに優れており、ブロー成形用樹脂組成物として好適に使用することができる。得られたブロー成形品は表面性に優れており、とくにヘコの点で成形品表面の光沢が60度反射率で5%以下となるものが好ましい。5%をこえるとヘコ数が多くなる傾向が見られる。また、本発明のスチレン系樹脂組成物は前記のようにブロー成形にとくに好適であるが、押出成形においてもブロー成形の場合と同様、優れた成形品を提供することができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0034】
なお、本実施例および比較例における評価方法を以下にまとめて示す。
【0035】
(還元粘度)
得られたペレットをメチルエチルケトンに23℃で12時間溶解させたのち、遠心分離し、可溶分をメタノールで析出させた。析出物を真空乾燥機で乾燥させ、サンプルを得た。得られたサンプルをN,N−ジメチルホルムアミド0.3%溶液とし、ウベ・ローデ粘度計で30℃で測定した。
【0036】
(熱変形温度:HDT)
ASTM D−648に準拠して4.6kg/cm2荷重で測定した。
【0037】
(曲げ強度および曲げ弾性率)
ASTM D−790に準拠して23℃で測定した。
【0038】
(ブロー成形評価)
得られたペレット状の樹脂組成物をDA−50型ブロー成形機(プラコー(株)製)でブロー成形し、成形体を得た。成形条件は、パリソン温度が約240℃、射出速度(指数)が150、スクリュー回転数が60rpm、ブロー圧が6kg/cm2G(エア)、冷却時間が100秒、金型温度が60℃であった。
得られたブロー成形体について、以下の評価を行った。
【0039】
・表面外観
60(W)×400(L)×30(H)(mm)、平均肉厚3.5mmの箱型状ブロー成形を用い、成形品表面に40×80(mm)の長方形を描き、長方形内のヘコ(大きさは、0.02〜0.2mm)を目視で数え、長方形5点のヘコ数の平均値を求めた。以下の基準により評価した。
○:平均ヘコ数が1個以下である。
×:平均ヘコ数が1個以上である。
【0040】
・表面光沢
60(W)×400(L)×30(H)(mm)、平均肉厚3.5mmの箱型状ブロー成形体を得て、その成形体表面の60度反射率を測定した。
【0041】
・成形加工性
外径70mm、長さ400mm、平均肉厚3.5mmの円筒状ブロー成形体のブロー成形において、ブロー成形機を成形温度で3時間停止(滞留)させたあと、成形を再開し、得られた成形体表面を目視で観察し、以下の基準により評価した。
○:成形再開後10ショットの成形で、焼けおよび異物などの不良がほとんど観察されず、表面が均一である。
×:成形再開後30ショットの成形で、焼けおよび異物などの不良が観察されるか、または表面が不均一(凸凹や艶むら)である。
【0042】
・落錘強度
外径70mm、長さ400mm、平均肉厚3.2mmの円筒状ブロー成形体を用い、−30℃での落錘強度(錘の重量×半数破壊高さ(kg・m))を測定した。
【0043】
実施例1〜10および比較例1〜6
なお、以下に示す「部」はいずれも「重量部」を意味する。
【0044】
(A)スチレン系樹脂の製造
I)スチレン系樹脂1:
i)共重合体A
撹拌機付き重合容器で、α−メチルスチレン65部、アクリロニトリル30部、スチレン5部、t−ドデシルメルカプタン0.25部を通常の乳化重合法により重合し、共重合体(I)のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。
【0045】
ii)グラフト共重合体B
撹拌機付き重合容器で、ポリブタジエンラテックス(重量平均粒子径0.3μm、ゲル分率90%)70部(固形分)にアクリロニトリル10部、スチレン20部を通常の乳化重合法で重合し、グラフト共重合体(I)のラテックスを得た。重合転化率は98%、グラフト率は45%であった。
【0046】
前記共重合体Aとグラフト共重合体Bを7:3(重量比、固形分)でラテックスのまま混合した。得られた混合物を塩化カルシウムで塩析し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の樹脂組成物(1)を得た。
【0047】
得られた樹脂組成物(1)の還元粘度は0.70dl/g、HDT(ブロー成形体を切り出してテストピースを作成し測定した)は118℃、曲げ強度(ブロー成形体を切り出してテストピースを作成し測定した)は710kg/cm2、曲げ弾性率は22500kg/cm2であった。
【0048】
II)スチレン系樹脂2:
前記スチレン系の共重合体Aの単量体混合物をフェニルマレイミド20部、アクリロニトリル20部およびスチレン60部に変更した以外はスチレン系樹脂1と同様にしてパウダー状の樹脂組成物(2)を得た。共重合体Aの重合転化率は97%であった。
【0049】
得られた樹脂組成物(2)の還元粘度は0.68dl/g、HDTは127℃、曲げ強度は735kg/cm2、曲げ弾性率は24000kg/cm2であった。
【0050】
III)スチレン系樹脂3:
前記スチレン系樹脂の共重合体Aの単量体混合物をアクリロニトリル29部、スチレン71部に変更した以外はスチレン系樹脂1と同様にしてパウダー状の樹脂組成物(3)を得た。共重合体Aの重合転化率は99%であった。
【0051】
得られた樹脂組成物(3)の還元粘度は0.72dl/g、HDTは102℃、曲げ強度は720kg/cm2、曲げ弾性率は22500kg/cm2であった。
【0052】
IV)スチレン系樹脂4:
前記スチレン系樹脂のグラフト共重合体Bのポリブタジエンラテックスを重量平均粒子径0.25μm、ゲル分率85%のポリブチルアクリレートラテックスに変更した以外はスチレン系樹脂1と同様にして、パウダー状の樹脂組成物(4)を得た。グラフト共重合体Bの重合転化率は98%、グラフト率は42%であった。
【0053】
得られた樹脂組成物(4)の還元粘度は0.71dl/g、HDTは117℃、曲げ強度は715kg/cm2、曲げ弾性率は22500kg/cm2であった。
【0054】
V)スチレン系樹脂5:
前記スチレン系樹脂1の共重合体Aとグラフト共重合体Bとの配合比率を35部:65部に変更した以外は、スチレン系樹脂1と同様にして、パウダー状の樹脂組成物(5)を得た。
【0055】
得られた樹脂組成物(5)の還元粘度は0.69dl/g、HDTは95℃、曲げ強度は315kg/cm2、曲げ弾性率は10500kg/cm2であった。
【0056】
(B)オレフィン系共重合体
下記のものを使用した。
a:エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体:
ボンドファーストE(住友化学工業(株)製)
b:エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体:
ボンドファースト7B(住友化学工業(株)製)
【0057】
(C)アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩など
下記のものを使用した。
a:水酸化マグネシウム(平均粒径:0.8μm):
キスマ5(協和化学工業(株)製)
b:水酸化カルシウム(平均粒径:1.5μm):
スーパーミクロスター(丸尾カルシウム(株)製)
c:酸化マグネシウム(平均粒径:0.6μm):
ミクロマグ3−30(協和化学工業(株)製)
d:炭酸ナトリウム(平均粒径:0.9μm):
試薬一級(和光純薬(株)製)
e:水酸化カルシウム(平均粒径:72μm):
工業用消石灰(丸尾カルシウム(株)製)
前記平均粒径の測定には、遠心沈降粒度分布測定装置:SA−CP2−20型((株)島津製作所製)を用いた。
【0058】
(D)タルク粉末
下記のものを使用した。
a:ミクロエースL−1(平均粒径:1.8μm、日本タルク(株)製)
b:ミクロエースK−1(平均粒径:3.2μm、日本タルク(株)製)
c:シムゴン(平均粒径:6.0μm、日本タルク(株)製)
【0059】
(E)ポリエチレンワックス
下記のものを使用した。
a:ネオワックスACL(平均分子量700、安原油脂工業(株)製)
b:三井ハイワックス200P
(平均分子量2000、三井石油化学工業(株)製)
c:三井ハイワックス400P
(平均分子量4000、三井石油化学工業(株)製)
【0060】
(F)滑剤
滑剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド(日本油脂(株)製)を使用した。
【0061】
(G)酸化防止剤
下記のものを使用した。
a:アデカスタブAO−30(mp=186℃、旭電化工業(株)製)
b:アデカスタブPEP−36(mp=237℃、旭電化工業(株)製)
c:スミライザーTPS(mp=63℃、住友化学(株)製)
以上の(A)〜(G)成分を表1に示す割合で、ヘンシェルミキサーで混合し、ベント式単軸押出機(HV−40−28、田端機械工業(株)製)で270℃の設定温度で押し出し、実施例1〜10および比較例1〜6のスチレン系樹脂組成物を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明のスチレン系樹脂組成物のブロー成形品は、表面性に優れ、さらに耐衝撃性にも優れている。
Claims (7)
- (A)スチレン系樹脂100重量部に対し、(B)α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物、オレフィンおよび必要に応じて酢酸ビニルを共重合させてなるオレフィン系共重合体0.1〜20重量部、(C)アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物0.01〜10重量部、(D)タルク粉末0.01〜5重量部、および(E)ポリエチレンワックス0.01〜5重量部を配合してなるスチレン系樹脂組成物。
- 前記(B)オレフィン系共重合体が、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル化合物、オレフィンおよび酢酸ビニルを共重合させてなる請求項1記載のスチレン系樹脂組成物。
- (A)スチレン系樹脂がABS系樹脂である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物。
- (C)アルカリ金属の水酸化物および炭酸塩ならびにアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩および酸化物の重量平均粒径が4μm以下である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物。
- (D)タルク粉末の重量平均粒径が5μm以下である請求項1または2記載のスチレン系樹脂組成物。
- ブロー成形品の表面光沢が60度反射率で5%以下となる請求項1、2、3、4または5記載のスチレン系樹脂組成物。
- 請求項1、2、3、4、5または6記載のスチレン系樹脂組成物をブロー成形してなるブロー成形品。
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