JP4349825B2 - 光走査装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル複写機やレーザプリンタ等の画像形成装置に用いられる光走査装置およびその画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光走査装置においては、光ビームを走査する偏向器としてポリゴンミラーやガルバノミラーが用いられるが、より高解像度な画像と高速プリントを達成するにはこの回転をさらに高速にしなければならず、軸受の耐久性や風損による発熱、騒音が課題となり、高速走査に限界がある。
これに対し、近年シリコンマイクロマシニングを利用した光偏向器の研究がすすめられており、特許第2924200号(特許文献1)や、特許第3011144号(特許文献2)に開示されるように、Si基板で振動ミラーとそれを軸支するねじり梁とを一体形成する方式が提案されている。
【0003】
上述した特許文献1及び2の振動ミラーとねじり梁とを一体形成する方式によれば、共振を利用して往復振動させるので高速動作が可能であるにもかかわらず、騒音が低いという利点がある。さらに振動ミラーを回転する駆動力も小さくて済むので消費電力も低く抑えられる。
一方、特開平5−257075号公報(特許文献3)には、共振周波数から外れた周波数帯域で振動ミラーの振幅を設定し、ダイナミックレンジの広い振幅制御を行う方法が提案されている。
【0004】
上述した特許文献1から3のように振動ミラーを利用することで、従来のポリゴンミラーを用いる方法に比べ小型で消費電力が少ない光走査装置が提供できるが、振れ角が小さく、反射面の大きさにも限界がある。
このため、本出願人により先に出願されている特開2001−228428号公報(特許文献4)では、光路長の短い複数の光走査装置を並列し、画像を主走査に分割して各々の記録幅を小さくして繋ぎ合わせる方式を提案している。
【0005】
【特許文献1】
特許第2924200号
【特許文献2】
特許第3011144号
【特許文献3】
特開平5−257075号公報
【特許文献4】
特開2001−228428号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献4の方式によれば、光路長が短いことにより走査位置ずれが生じ難く、従来、光ビームの主走査、副走査位置のずれを検出して補正しないと色ずれや色変わりが抑制できなかったタンデム方式、つまり、複数の画像形成ステーションを転写体の移動方向に沿って配列し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を順次重ね合わせてカラー画像を形成する方式の画像形成装置においても、特別な補正機構を持たずに色ずれが抑えられるという利点もある。
反面、複数の光走査装置を有するため、各々の走査周波数が合っていないと画像幅の差を生じ書出し位置を合わせても終端側がずれてしまう問題があった。
【0007】
隣接する走査線の継ぎ目位置が合っていないと、境界部において画像同士が重なったり、隙間が開いたりして継ぎ目が目立ちやすくなり、また、上述したようなタンデム方式のカラー画像形成装置においては、転写体の送りにつれて各色の走査線の位置がずれてくるため、色ずれや色変わりとなって画像品質を劣化させる要因となってしまう。
【0008】
また、一般に、振動ミラーは固有の共振振動数によって振幅させるのが最も振れ角がとれ、エネルギー効率も高いとされるが、共振周波数は振動ミラーの加工誤差や材料のばね定数によってばらつきが大きく、複数の振動ミラーを共通の走査周波数で駆動するためには、特開2002−40355号公報に開示されるようにトリミングによって振動ミラーの質量を調整したり、特開平9−197334号公報に開示されるようにヒータを備えてばね定数を調整する等によって、共振周波数自体を制御する必要があり、製造面でも厄介であり、振動ミラーの制御も複雑となるという欠点があった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、振動ミラー固有の共振振動数にばらつきがあっても継ぎ目が目立ちにくく、また色ずれや色変わりのない高品位な画像形成が行え、かつ、組立に要する時間を短縮できることで、製造に関わるコストやエネルギーを削減し得る光走査装置を提供することを目的とする。
また、他に目的とすることは、上記光走査装置を備えて好適に画像形成を行うことができる画像形成装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
請求項1記載の発明は、光ビームを発する光源手段と、該光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、上記振動ミラーに電圧パルスを印可して、上記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、上記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、該同一方向の走査時において、上記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、上記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、上記光源手段は、上記同期検知期間、上記画像記録期間、上記終端検知期間に光ビームを発光する光走査装置において、上記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、上記光ビーム検出手段により、上記同期検知期間と上記終端検知期間までの時間を測定することで、上記画像記録期間における振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、該走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、上記した振動ミラー駆動手段が、振動ミラーに固有の共振周波数近傍で共振周波数から外れた周波数帯域に駆動周波数を設定することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、光ビームを発する光源手段と、該光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、上記振動ミラーに電圧パルスを印可して、上記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、上記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、該同一方向の走査時において、上記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、上記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、上記光源手段は、上記同期検知期間、上記画像記録期間、上記終端検知期間に光ビームを発光し、上記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、上記光ビーム検出手段により、上記同期検知期間と上記終端検知期間までの時間を測定することで、上記画像記録期間における上記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、上記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように上記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えた光走査手段を複数備え、主走査に各々の走査領域を繋ぎ合わせて画像記録を行う光走査装置において、複数の光走査手段における振動ミラーを、共通の駆動周波数で往復振動させ、各光走査手段における走査速度の基準値を共通に設定してなることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、光ビームを発する光源手段と、該光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、上記振動ミラーに電圧パルスを印可して、上記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、上記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、該同一方向の走査時において、上記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、上記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、上記光源手段は、上記同期検知期間、上記画像記録期間、上記終端検知期間に光ビームを発光し、上記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、上記光ビーム検出手段により、上記同期検知期間と上記終端検知期間までの時間を測定することで、上記画像記録期間における上記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、上記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように上記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えた光走査手段を複数備え、各々の走査領域を重ね合わせて画像記録を行う光走査装置において、複数の光走査手段における振動ミラーを、共通の駆動周波数で往復振動させ、各光走査手段における走査速度の基準値を共通に設定してなることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、上記した駆動周波数を、複数の振動ミラーに固有のいずれの共振周波数よりも高い側に外れた周波数帯域、または低い側に外れた周波数帯域に設定することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、上記した駆動周波数の位相を可変する位相可変手段を備え、複数の光走査手段間における画像記録のタイミングを調整することを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、上記した光ビーム検出手段が、被走査面に配備した少なくとも2つの光検出部を有し、該少なくとも2つの光検出部間を光ビームが通過する時間差を検出することを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、上記した光検出部が、振動ミラーの振幅中心に対称に配備してなることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、上記したゲイン可変手段が、少なくとも画像記録中にはゲインを一定に保持することを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、請求項1から9の何れか1項に記載の光走査装置と、該光走査装置からの光ビームを用いて画像形成を行う画像形成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る光走査装置および画像形成装置を図面を用いて詳細に説明する。
まず、本発明に係る光走査装置の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態における光走査装置に用いる振動ミラーモジュールの詳細について示している。
振動ミラー基板は、2枚のSi基板206、207を酸化膜等の絶縁膜を介して接合して構成される。第1のSi基板206は厚さ60μmのSi基板からなり、エッチングにより可動ミラー202および同一直線上で軸支するねじり梁208を、その周囲を貫通し固定枠210から分離して形成する。
可動ミラー202は、ねじり梁208に対して対称に形成され両端の縁部および対向する固定枠210の内辺には数μmのギャップを有して互い違いに噛み合うよう櫛歯状の凹凸を形成している。可動ミラー202の表面には、Au等の金属被膜が蒸着され反射面となし、図2に示すように各基板を絶縁層を介して接合した状態で島状に分離することで基板そのものを個別に電極として形成しており、可動ミラー両端の凹凸部を第1、第2の可動電極(説明では便宜上分けているが同電位)、対向する固定枠の凹凸部を第1、第2の固定電極203、204(説明では便宜上分けているが同電位)となす。
【0022】
また、第2の基板207は140μmのSi基板からなり、エッチングにより中央部を貫通し、上記固定枠210に形成した凹凸部と重なり合う内辺には外郭が一致するように櫛歯状に凹凸を形成し同様に第3、第4の固定電極211、212となし、可動ミラーの揺動に沿って第1、第2の可動電極が噛み合うように通過する。
【0023】
本実施形態では、第1、第2の固定電極203、204には同位相の電圧パルスを印加し、第3の固定電極211には第1、第2の固定電極に印加する電圧パルスよりも進んだ位相の電圧パルス、第4の固定電極212には第1、第2固定電極に印加する電圧パルスよりも遅れた位相の電圧パルスが印加される。
【0024】
図3は、可動ミラーの振れ角に対応して各電極間に発生する静電トルクの様子を示す。また、図4は、電極廻りにおける断面を示す。図中、左回り方向の静電トルクを正としている。
可動ミラー202は初期状態では水平であるが、第3の固定電極211に電圧を印加すると対向する可動電極との間で負の方向での静電力を生じ、ねじり梁208をねじって回転され、ねじり梁の戻り力と釣り合う振れ角まで傾く。上記電圧が解除されるとねじり梁の戻り力で可動ミラー202は水平に戻るが、水平に戻る直前に第1、第2の固定電極203、204に電圧を印加することによって正の方向での静電力を生じ、引き続き、第4の固定電極212に電圧を印加することによってさらに正の方向での静電トルクを増すといった電極の切り換えを繰り返し行うことで、可動ミラーをその両端の可動電極が対向する第1、第2の固定電極を抜ける振れ角、本実施形態では約2°、にて往復振動する。
【0025】
ここで、可動ミラー202の慣性モーメント、ねじり梁208の幅と長さを、走査する所望の駆動周波数に合わせ、ねじり梁208を回転軸とした1次共振モードの帯域にかかるよう設計することによって励振され、電極間の静電引力ではなく、ねじり梁自体のねじり振動によって揺動し始め、振幅が著しく拡大されて揺動基板の可動電極が対向する第3、第4の固定電極を抜ける振れ角まで拡大する。
さらに、第3、第4の固定電極を抜けた振れ角で、水平に戻す方向、第3の固定電極では揺動基板に正の方向での静電力を瞬時に発生することによって、揺動をより勢い付けることができる。
本実施形態では、このように固定電極を2段に設け、振幅のタイミングにあわせパルス状に各固定電極に電圧を印加することで、静電トルクの働く振れ角範囲を拡大でき共振周波数を外れた駆動周波数においても大きな振れ角が維持できる。
【0026】
一方、図5には、可動ミラーの振幅に対して各固定電極への印加パルスのタイミングを示すが、振幅に対して最適なタイミングで電圧パルスが印加され、効率よく静電トルクが働くように振幅と印加パルスとの位相を設定するのが望ましい。
本実施形態では、第3、第4の固定電極の厚さ、いいかえれば第2の基板の厚さtを、可動ミラーの振れ角θ0(=5°)、幅を2L(=4mm)、第1の基板の厚さt0(=60μm)とするとき、
t0<t<L・ sinθ0
なる関係となるように設定し、θb=arcsin(t0/L)とすると、
第1、第2の固定電極には、0<|α1|<|θb|
第3、第4の固定電極には、|θb|<|α2|<|θ0|
なる可動ミラーの振れ角の範囲に電圧パルスを印加している。
【0027】
図6には可動ミラーの駆動周波数に対する振れ角の特性を示すが、駆動周波数を共振周波数に一致させれば、最も振れ角が大きくとれるが、共振周波数付近においては急峻に振れ角が変化する特性を有する。
従って、初期的には可動ミラーの駆動制御部において固定電極に印加する駆動周波数を共振振動数に合うよう設定することができるが、温度変化等で共振周波数が変動した際には振れ角が激減してしまうことで経時的な安定性に乏しいという欠点がある。また、後述する実施例のように複数の可動ミラーを有する場合には、各々に固有の共振振動数がばらつくため、共通の駆動周波数で駆動できないという問題がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、駆動周波数を可動ミラーとねじり梁からなる振動部固有の共振周波数近傍で、比較的振れ角変化の少ない、共振周波数から高めに外れた周波数帯域に設定しており、共振周波数2kHzに対し、駆動周波数は2.5kHzで、振れ角は±5°である。
この際、振動ミラーの加工誤差による共振振動数のばらつき、本実施形態では300Hz、温度による共振周波数の変動、本実施形態では3Hz、があっても駆動周波数がいずれの共振周波数にもかからないような周波数帯域、共振周波数2kHzであれば2.303Hz以上、または1.697Hz以下に設定することが望ましい。
【0029】
いま、可動ミラーの寸法を、縦2a、横2b、厚さd、ねじり梁の長さをL、幅cとすると、Siの密度ρ、材料定数Gを用いて、
慣性モーメントI=(4abρd/3)・a^ 2
バネ定数K=(G/2L)・{cd(c^ 2+d^ 2)/12}
となり、共振振動数fは、
f=(1/2π)・(K/I)^ 1/2=(1/2π)・{Gcd(c^ 2+d^ 2)/24LI}^ 1/2
【0030】
ここで、梁の長さLと振れ角θは比例関係にあるため、
θ=A/If^ 2 (Aは定数)
で表され、振れ角θは慣性モーメントIに反比例し、共振振動数fを高めるには慣性モーメントを低減しないと振れ角θが小さくなってしまう。
そこで、本実施形態では可動ミラー反射面の裏側219の基板厚dを格子状に残し、それ以外をd/10以下の厚さまでエッチングにより肉抜きすることで、慣性モーメントを約1/5に低減している。
これらの慣性モーメントに利くパラメータ、ねじり梁の寸法誤差等が共振周波数のばらつきを発生させる要因となる。
【0031】
一方、空気の誘電率ε、電極長さH、印加電圧V、電極間距離δとすると、
電極間の静電力F=εHV^ 2/2δ
となり、
振れ角θ=B・F/I (Bは定数)
とも表され、電極長さHが長いほど振れ角θが大きくなり、櫛歯状とすることで櫛歯数nに対して2n倍の駆動トルクを得ている。
このように外周長をできるだけ長くして電極長をかせぐことで、低電圧でより大きい静電トルクが得られるように配慮している。
【0032】
ところで、可動ミラーの速度υ、面積Eに対して、空気の密度ηとすると、
空気の粘性抵抗P=C・ηυ^ 2・E^ 3 (Cは定数)
が可動ミラーの回転に対向して働く。従って、可動ミラーをカバーで密封し減圧状態に保持することが望ましい。
本実施形態では、第1、第2の基板206、207が接合されてなる振動ミラー基板を、中央部に凹状に可動ミラーの揺動空間を形成した基体212上に、反射面を上側に向け、基体の外縁に形成された一対のV溝を結ぶ直線上にねじり梁を合わせて、第1の基板下面を基準にして装着し、また、第2の基板207上面にキャップ状に成形された透明樹脂製のカバー205を接合して可動ミラー202の揺動空間が密封されるようにしており、揺動空間には非蒸発型ゲッタを同梱し、外部からの加熱で活性化することで1torr以下となるようにしている。
【0033】
光ビームは、カバーに形成されたスリット窓213を通じて入出射される。
リード端子216は、基体212を貫通して挿入され、上側に突出した端部と、第1、第2の基板の各電極から封止された内外を導通するようパターンニングされたパッド部とがワイヤーボンディング等で結線されて電気配線がなされる。なお、第1の基板は、第2の基板に開口217を形成することで露出した表面からパターンを引き出しており、いずれのパッド部も第2の基板上に設けられている。
【0034】
カバー205の内側には、可動ミラー202と対向して対向ミラーが、ねじり梁と直交する方向に一体的に形成される。2枚の対向ミラー215はスリット窓213を挟んで屋根状に144.7°の角度をなすよう基板面より各々9°、および26.3°傾けた傾斜面に、金属被膜を蒸着して反射面217と218とを対で配備した構成となす。
【0035】
カバー205の底面は可動ミラー面と平行に形成され、第2の基板212の枠部上面に当接して接合されるが、この際、第2の基板212には対向ミラーを位置決めするための指標214が両サイドにエッチングによって描かれ、これに対向ミラーのエッジを合わせるように基板上でアライメントしており、主走査方向に対向ミラーの方向を正確に合わせることができる。
【0036】
図7は、光走査装置の副走査断面を示す。半導体レーザ101から射出した光ビームは後述するようにカップリングレンズ110、シリンダミラー136を介して、可動ミラー401に対しねじり梁を含む副走査断面内で法線に対して副走査方向に約20°傾けてスリット窓404より光ビームが入射され、反射した光ビームは第1の反射面402に入射され可動ミラーに戻され、さらに反射した光ビームはスリット窓404を超えて第2の反射面403に入射され、可動ミラーとの間で3往復しながら反射位置を副走査方向に移動させ、合計5回の可動ミラーでの反射により再度、スリット窓から射出される。
本実施形態ではこのように複数回反射を繰り返すことで、可動ミラーの振れ角が小さくても大きな走査角が得られるようにし、光路長を短縮している。
【0037】
ここで、可動ミラーでの総反射回数N、振れ角αとすると、走査角θは2Nαで表せる。本実施形態では、N=5、α=5°であるから最大走査角は50°となり、その内35°を画像記録領域としている。
共振を利用することで印加電圧は微小で済み発熱も少ないが、上式から明らかなように記録速度、つまり共振周波数、が速くなるに従ってねじり梁のばね定数Kを高める必要があり、振れ角がとれなくなってしまう。そこで、上述したように対向ミラーを設けることで走査角を拡大し、記録速度によらず必要十分な走査角が得られるようにしている。
【0038】
また、屋根状に対向して反射面を構成し、可動ミラーへの副走査方向での入射角度が繰り返し反射毎に正負、言いかえれば、反射に伴う進行方向が右向き、左向き、に振り分けるようにすることで、斜入射に伴う被走査面での走査線の曲がりを抑え、直線性を維持するとともに、光軸と直交する面内での光束の回転が射出時にはもとの姿勢に戻るようにして結像性能の劣化がおきないよう配慮している。
【0039】
図8は本実施形態における光走査装置の分解斜視図であり、図9は光学素子の配置を示す。
光源である半導体レーザ101は、フレーム部材102に立設された壁に配備された段付きの貫通穴103に反対側からステム外周を基準に圧入され、段差部に鍔面を突き当てて光軸方向を位置決めする。U字状の凹部105にはUV接着剤を介してカップリングレンズ110の光軸が半導体レーザ101からの射出軸と合うように、また、射出光束が平行光束となるように発光点との光軸方向の位置決めを行い、凹部とカップリングレンズとの隙間のUV接着剤を硬化させて固定する。
なお、カップリングレンズの調整は後述する振動ミラーモジュール、シリンダミラーを取付けた状態でも行うことができ、可動ミラーの面精度やシリンダミラーの焦線位置ずれを無効化できるので、それらの精度を緩和できる。
本実施形態の場合、3つの光源部を有するが、全て同一構成である。
【0040】
カップリングレンズより射出した光ビームは、一対の取付斜面109に接合配備され副走査方向に負の曲率を有するシリンダミラー136に入射され、副走査方向において可動ミラー面で集束する集束光束として振動ミラーモジュール130のスリット窓から入射される。
振動ミラーモジュール130は、ねじり梁の方向が光軸方向に合うように、フレーム底面側に設けられた段付きの角穴104の裏側より基体212の外縁を基準に位置決めされ、段差部に鍔面を突き当てて可動ミラー面の位置を合わせ、本実施形態の場合、均等間隔に3つの振動ミラーモジュールが単一のフレーム部材102により位置決めされる。
各振動ミラーモジュールはプリント基板112に、基体底面から突出したリード端子を各々スルーホールに挿入して半田付けし、フレーム部材102の下側開口をふさぐように基板上面を当接して固定すると同時に、回路接続がなされる。
【0041】
プリント基板112には半導体レーザの駆動回路、可動ミラーの駆動回路を構成する電子部品、および同期検知センサ113が実装されており、外部回路との配線が一括してなされる。一端をプリント基板に結線されたケーブル115は半導体レーザのリード端子と接続される。
フレーム部材102は、ある程度剛性が確保できるガラス繊維強化樹脂やアルミダイキャスト等からなり、両端部には画像形成装置本体の構造体に取付けるためのフランジ部131、133が形成され、一方131には基準穴を備えその内径に固定ネジ132の軸部をかん合させ、もう一方133には長穴を備え固定ネジ132を貫通して各々バネ座金134を介して感光体に対向させて固定する。この際、基準穴を回転軸としたガタ分で被走査面(感光体)において各振動ミラーモジュールのいずれかで走査された走査線が被走査面の移動方向yと直交する方向xに平行となるよう調節される。
なお、隣接する光走査手段の各走査線は、後述する調節により平行に揃うように配置されているのでいずれかの走査線のみを調整すればよい。
【0042】
フレーム部材102の上面は角穴104の裏側に設けられた各振動ミラーモジュールのミラー法線方向の突き当て面と平行な面となし、走査レンズを収納するハウジング106の底面より突出した2本の突起135をフレーム部材の係合穴に挿入して同面上での位置決めを行い、4隅をネジ止めして配備される。本実施形態では、ネジ137はフレーム部材の貫通穴を介してプリント基板112に螺合され、フレーム部材を挟むように3身一体で結合され、この後に上記半田付けがなされる。
ハウジング106には結像手段を構成する第1の走査レンズ116、第2の走査レンズ117が主走査方向に配列され、各々の走査領域がわずかに重なるように位置決めされて一体的に保持される。
【0043】
第1の走査レンズ116は副走査方向基準面の中央に突出され主走査方向の位置決めを行う突起120、および両端を係合して光軸方向の位置決めを行う平押面119を入射面側、出射面側各々に備え、ハウジングに一体形成された溝122に突起120を係合し、一対の切欠121の各々に各端の平押面119を挿入し波板バネ143で入射面側に押し付け同面内での姿勢を保持することで、光軸と直交する同一面に走査レンズ同士の相対的な配置を合わせ、副走査方向基準面をハウジングから突出した一対の突起142の先端に突き当てることで、光軸と直交する面内での位置決めがなされて副走査方向の設置高さが決定され、カバー138と一体形成された板バネ141で押圧支持される。
【0044】
一方、第2の走査レンズ117は同様に副走査方向基準面の中央に突出され主走査方向の位置決めを行う突起123、両端に光軸方向の位置決めを行う平押面144を備え、ハウジングに一体形成された溝122に突起123を係合し、切欠121に平押面144を挿入し波板バネ143で出射面側に押し付け姿勢を保持するとともに、副走査方向基準面をハウジングから突出した突起145および副走査方向に繰り出し自在な調節ネジ146の先端に突き当てて設置高さを位置決めし、カバー138と一体形成された板バネ141で押圧支持される。147はカバー138を固定するネジである。
【0045】
図10は第2の走査レンズ117の平面および正面からみた取付け状態を示すが、突起145、調節ネジ146は主走査方向の両端に配備され、副走査方向における各焦線、言いかえれば被走査面における結像位置の軌跡、の傾きを調節ネジ146の高さを調節することで、被走査面における各走査線が平行に揃うように調整できる。
この際、主走査方向の一端を基準として回転することで中心軸の高さが副走査方向にずれる。また、各振動ミラーへの入射位置ずれによって走査線の位置が副走査方向にずれるが、これらに伴う走査線同士の継ぎ目におけるレジストずれまでこの段階で合わせる必要はなく後述する書出しのタイミング補正でキャンセルできる。
【0046】
同期検知センサ113(ピンフォトダイオード)は隣接する振動ミラーモジュールで共用する中間位置と両端位置に配置され、各光走査モジュールの走査開始側と走査終端側とでビームが検出できるように計4箇所に実装される。第2の走査レンズ117の射出面側には各レンズの走査領域間にV字状の高輝アルミ薄板127を貼り付けるミラー受部128がハウジングに形成され、高輝アルミ薄板127によって反射した光ビームが走査領域間に形成された開口部129、およびフレーム部材の矩形穴を通って各々の同期検知センサへ導かれるよう隣接する光走査手段の走査開始側と走査終端側に対応した反射面が向かい合って配置されている。
【0047】
カバー138には光ビームが通過する開口139が形成され、ハウジング106上面を密閉するようネジ止めされて上述したように板バネ141により走査レンズを各当接部位に確実に突き当たるように押圧する。
なお、本実施形態では、3つの光走査装置が配列された構成例について説明したが、配列数はいくつであっても同様である。
【0048】
図11は、4つの光走査装置500によって各々に対応した感光体ドラム504に1色ずつ画像形成され、転写ベルト501の回転につれて色重ねがなされるタンデム方式のカラーレーザプリンタ(画像形成装置)に適用した例で、本実施形態では光走査装置を光ビームの射出方向が下向きとなるよう配備される。
転写ベルト501は駆動ローラと2本の従動ローラとで支持され、移動方向に沿って均等間隔で各感光体ドラム504が配列される。感光体ドラムの周囲にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックも各色に対応したトナーを補給する現像ローラ502およびトナーホッパ部503、そして、転写された後の残トナーをブレードで掻き取り備蓄するクリーニング部508が一体的に配備される。
【0049】
各色画像は、転写ベルト501端に形成されたレジストマークを検出するセンサ505の信号をトリガとして副走査方向の書出しタイミングをずらして各光走査装置500によって潜像が形成され、現像部にてトナーをのせて転写ベルト501上で順次画像を重ねていく。
用紙(記録紙)は、給紙トレイ507から給紙コロ506により供給され、4色目の画像形成にタイミングを合わせてレジストローラ510により送り出されて、転写部511にて転写ベルト501から4色同時に転写され、トナー像を載せたまま搬送ベルト515にて定着器に送られる。
転写されたトナー像は定着ローラ512により定着され、排紙トレイ514に排出される。
【0050】
各光走査装置は上述したように光走査手段間の走査線が平行となるよう調整されているので、図12に示すように、上記したフレーム部材に設けられたフランジ部での傾き調整により、用紙上における送り方向と直交する方向のいずれかのライン(主走査ライン)傾きが各色で平行になるように基準となるブラックのラインに揃えて調節することで、各領域に対応した走査線同士が平行となり、書出しのタイミング補正によって色ずれが生じないようにすることができる。
【0051】
この傾き調整は光走査装置の装着時(製造時)に行い固定してもよいが、転写ベルト501上に形成するトナー像を読み取る検出器505をベルト両端の2箇所に配備し、各々にて基準色画像(通常、ブラックの画像)に対するレジストずれを検出し、両端の差より主走査ラインの傾き補正量を検出することで、検出結果に基づいて経時的に各光走査装置の傾きを調整することができる。
図12の付図はその傾き調整を実現するための構成を示すものであり、フランジ部に調整方向yに対し直交して長穴632を形成し、歯車634の回転軸0から偏心した位置に固定ネジ633でバネ座金637を介して固定する。歯車634をパルスモータ635に連結した送りネジ636で回転すると固定ネジ633が移動し、光走査装置全体を回転できる。
【0052】
本実施形態では、この傾き調整を実現するための構成が、基準となるステーション640を除き他の3つのステーション641、642、643に配備され、主走査方向における一方に回転軸を揃えて各々の相対的な傾きを調整する。このステーション640、641、642、643は、図11における4つの光走査装置500に対応するものである。
トナー像を読み取る検出器505は、検出光を投射するLED光源630とベルトからの反射光を受光するフォトセンサ631とからなり、送り方向に対して傾斜させて記録したラインの検出パターンを読み取る。
【0053】
各光走査装置500は上述したように複数の光走査手段の走査線をつなぎ合わせて1ラインを形成する。1ラインの総ドット数Lを3分割し画像始端から各々1〜L1、L1+1〜L2、L2+1〜Lドットを割り当てて印字するが、本実施形態では各走査領域が感光体上で数mm重なるようにオーバーラップ領域を設け、割り当てる画素数L1、L2を固定せず各色で異なるようにすることで、同一ラインを構成する各色の走査線の継ぎ目が重ならないようにして走査領域の境界をより目立ち難くしている。
【0054】
画像データは、上述したように主走査方向に3分割され、各光走査手段毎にビットマップメモリ511に保存され、各振動ミラーモジュール毎にラスター展開がなされラインデータとしてバッファ512に保存される。保存されたラインデータは各同期検知信号をトリガとして読み出され個別に画像記録が行われるが、後述するように書出しタイミングを各々設定することで書出し始端のレジストが合わせられる。
なお、本実施形態では、各振動ミラーの共振ピークは異なっても、印加電圧のゲインを可変することによって所定の帯域において振れ角を一致させ共通の駆動周波数で走査するようにしている。
環境温度の変化でバネ定数が変化し共振帯域が一様にシフトするが、それに対応して駆動周波数を選択し直す場合にも、共通の駆動周波数を与え、走査周波数を各振動ミラーモジュールで共通とすることで、各領域の終端まで各ラインのレジストを一致させることができる。
【0055】
図13は、半導体レーザ、可動ミラーの駆動制御などを実現する本実施形態における各機能部の構成を示すブロック図である。
駆動パルス生成部601は、基準クロックをプログラマブル分周器で分周し、上述したように可動ミラーの振幅に合わせたタイミングで電圧パルスが印加されるようパルス列を生成し、PLL回路によって各振動ミラーモジュール間で所定の位相遅れδを持たせて各可動ミラーの駆動部602に与えられ電極の各々に電圧が印加される。
ここで、振動ミラー間の相対的な位相遅れδを、1走査ラインピッチpを用いて、
δ=(1/fd)・{(Δy/p)−n} (ここで、nは (Δy/p)−n<1 を満足する自然数)
となるように与えれば、継ぎ目における位置ずれは1走査ラインピッチの整数倍となり、振動ミラーの1周期おきの書出しタイミング補正、つまりnライン周期分ずらして書き出すことにより副走査方向のレジストずれΔyを無効化することができ、継ぎ目の位置ずれのない高品位な画像が得られる。
【0056】
図14に、図13に示したセンサ604、605の詳細を示すが、主走査に垂直に配置したフォトダイオード801と非垂直なフォトダイオード802を有し、フォトダイオード801のエッジを光ビームが通過した際に同期検知信号、または終端検知信号を発生し、フォトダイオード801からフォトダイオード802に至る時間差Δtを計測して、上記レジストずれの主要因である副走査方向の走査位置ずれΔyを検出することもできる。
なお、Δyはセンサ部802の傾斜角γ、光ビームの走査速度Vを用いて
Δy=(V/ tanγ)・Δt
で表され、Δtが一定であれば走査位置ずれが生じていないことになる。
本実施形態では、この時間差を走査位置ずれ演算部610で監視することで走査位置ずれを検出し、Δt基準値に合うよう振動ミラー間の位相を常に可変して補正を行う。
【0057】
主走査方向においては、後述するように、各画像領域における走査速度のずれを、
1)各振動ミラーへ印可する電圧パルスのゲイン調整により振れ角(振幅)を所定値に合わせる。
また、隣接する画像領域の継ぎ目位置ずれを、
2)可動ミラーの駆動周波数に対応して画素クロックをシフトすることで画像幅の倍率を可変し、走査終端と、隣接する光走査装置の走査開始端との継ぎ目を合わせる。
により補正する。
【0058】
振動ミラーは、図15に示すように走査角−θ0を起点としてθ0に達するまでの往期間の内、−θs〜θsの期間(0<θs<θ0)、同一方向の走査時のみ画像記録を行い、走査角+θ0から−θ0の復期間には画像記録を行わない。言い換えれば、駆動周波数fdの1周期毎に画像記録を行なう。
図中902は半導体レーザの発光のタイミングを示し、905は同期検知領域、906は画像形成領域、907は終端検知領域である。
903は同期検知センサ604、904は終端検知センサ605の信号であり、各々908は走査開始側に隣接する光走査装置の終端検知信号、909は走査終端側に隣接する光走査装置の同期検知信号である。
なお、同期検知センサ604、終端検知センサ605は、画像記録領域外で、画像中央に対して対称な像高に配備される。
【0059】
振動ミラーには、基本的に、画像記録およびその準備期間以外は駆動電圧が印加されない。
電源投入時、および待機状態から起動する際にはプログラマブル分周器で連続的に分周比を変えることで駆動周波数fdを高周波側から可変して励振し、振幅検出部610からの出力、本実施形態では同期検知センサ604、走査角−θ0となる近傍に配置された終端検知センサ605とでビームを検出し、この同期検知信号と終端検知信号との時間差Tを振幅演算部609で計測することで、可動ミラーの振れ角(振幅θ0)を検出する。
【0060】
ここで、センサで検出される光ビームの走査角をθd、画像中央からの走査時間をt、可動ミラーの駆動周波数をfdとすると、
θd/θ0= sin2π・fd・t (t=T/2)
で与えられる。
この時間差Tがあらかじめ定められた基準値T0に達するまで印可する電圧パルスのゲインを可変することによって振れ角を補正する。この補正は、各環境下で定期的、例えばジョブ間で行われる。
すなわち、画像記録中にこの補正を行うと画像の主走査端がゆらいでしまうため、記録中は同一値を保持するようにしている。
【0061】
また、本実施形態では複数の振動ミラーを有するが、共通の駆動周波数を選択し、かつゲインの基準値を揃えることで、各振動ミラー間の振れ角が一致するようにしている。
上記補正は振動ミラーモジュールの各々で行われ、本実施形態では3つの光走査手段から構成されるので、全ての補正が終了した後に印字動作を可能としている。
【0062】
次に半導体レーザの駆動制御について説明する。
上述したように、可動ミラーは共振振動されるため、sin波状に走査角θが変化する。一方、被走査面である感光体ドラム面では均一間隔で主走査ドットを印字する必要があり、上記した走査レンズの結像特性は単位走査角あたりの走査距離dH/dθが sin−1θ/θ0に比例するように、つまり、画像中央で遅く周辺に行くに従って加速度的に速くなるように光線の向きを補正しなければならず、走査レンズ中央部から周辺部にかけて結像点を遠ざけるようにパワー配分を行う必要があるが、それに伴ってビームスポット径も太ってしまうため、均一なビームスポットを得る上で最大振幅θ0に対して有効走査領域θsを広げるには限界がある。
そのため、走査効率をθs/θ0<0.5としなければならない。
【0063】
そこで、本実施形態では、図16に示すように、振幅による走査速度の変化に対抗して各画素に対応する位相が記録開始から記録終端にかけて進んだ状態から段階的に遅れるようにすると同時に、各画素のパルス幅が記録開始から画像中央に至る領域では長い状態から段階的に短くなるように、画像中央から記録終端に至る領域では長くなるような画素クロックfmをLD駆動部606に与え、電気的な補正を加えることで、θs/θ0=0.7まで向上させている。
【0064】
以下に、画素クロックfmの可変方法について説明する。
クロックパルス生成部607は、可変データに基づいて基準クロックf0をプログラマブル分周器で分周した分周クロックをカウントしてkクロック分の長さのパルスを有するPLL基準信号faが形成され、PLL回路において可変データに基づいて基準クロックf0との位相を選択して画素クロックfkが発生される。これを数十画素毎に繰り返し行なうことで主走査に沿って任意な位置にドットが印字できる。
【0065】
基準クロックf0は位相同期部608において、基準クロックf0の1周期を1/n毎に遅延したクロックの中から同期検知センサ604より発生される同期検知信号と位相が合ったクロックを選択し、新たに基準クロックf0とする位相同期を各走査毎に行うが、本実施形態では、この際に位相が異なったクロックを選択できるようにしており、クロック可変を開始するタイミングが、可動ミラーの水平な状態(θ=0)において画像記録の中央位置と確実に一致するように補正する。
これは、可変データのタイミングが振幅と合わなくなり画像上、主走査方向のドット間隔が一方で縮み、もう一方で延びている歪んだ画像になってしまうためである。
また、基準クロックf0の分周比を可変することで、主走査方向における画像幅(倍率)を合わせることができる。
上述したように振動ミラーの振れ角はあらかじめ設定されるが、その条件で走査終端側を延ばす、または、縮めることで走査終端側に隣接する光走査装置の走査開始端に繋がるように合わせる。
【0066】
以上のように、本実施形態としての光走査装置によれば、光源手段と、光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、上記振動ミラーに電圧パルスを印可して、上記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、上記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、該同一方向の走査時において、上記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、上記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、上記光源手段は、上記同期検知期間、上記画像記録期間、上記終端検知期間に光ビームを発光する光走査装置において、上記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、上記光ビーム検出手段により、上記同期検知期間と上記終端検知期間までの時間を測定することで、上記画像記録期間における振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、上記検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように上記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えることにより、振動ミラー固有の共振振動数を追従するような複雑な制御を必要とせず、共振振動数によって個別に駆動周波数を設定することなしに振れ角を一定に保つことができるので、画像品質を確保する上で最適な駆動周波数に設定することができ、機種間でばらつきのない安定した画像形成を行うことができる。
【0067】
上記した振動ミラー駆動手段は、上記振動ミラーに固有の共振周波数近傍で共振周波数から外れた周波数帯域に駆動周波数を設定することにより、共振振動数が変動した際の振れ角の変化量が比較的安定した周波数帯域、言いかえれば周波数に対する振れ角の変化が小さい周波数帯域に駆動周波数を設定するので、調整の分解能がラフで済むうえ、常にフィードバックをかけなければいけないような厄介な制御を必要とせず、画像品質を安定的に保つことができる。
【0068】
また、光源手段と光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、上記振動ミラーに電圧パルスを印可して、上記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、上記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、該同一方向の走査時において、上記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、上記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、上記光源手段は、上記同期検知期間、上記画像記録期間、上記終端検知期間に光ビームを発光し、上記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、上記光ビーム検出手段により、上記同期検知期間と上記終端検知期間までの時間を測定することで、上記画像記録期間における上記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、上記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように上記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えた光走査手段を複数備え、主走査に各々の走査領域を繋ぎ合わせて画像記録を行う光走査装置において、複数の光走査手段における振動ミラーを、共通の駆動周波数で往復振動させ、各光走査手段における走査速度の基準値を共通に設定してなることにより、振動ミラー固有の共振振動数が個々にばらついていても、各光走査手段の走査速度を揃えることができるので、各々の走査領域、画像幅を合わせることができ、高品位な画像形成が行えるうえ、個々の共振振動数を揃えるための厄介な調整、例えばトリミングやばね定数の温度制御等を必要とせず、生産効率も向上させることができる。
【0069】
また、光源手段と光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、上記振動ミラーに電圧パルスを印可して、上記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、上記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、該同一方向の走査時において、上記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、上記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、上記光源手段は、上記同期検知期間、上記画像記録期間、上記終端検知期間に光ビームを発光し、上記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、上記光ビーム検出手段により、上記同期検知期間と上記終端検知期間までの時間を測定することで、上記画像記録期間における上記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、上記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように上記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えた光走査手段を複数備え、各々の走査領域を重ね合わせて画像記録を行う光走査装置において、複数の光走査手段における振動ミラーを、共通の駆動周波数で往復振動させ、各光走査手段における走査速度の基準値を共通に設定してなることにより、振動ミラー固有の共振振動数が個々にばらついていても、各光走査手段の走査速度を揃えることができるので、各々の走査領域、画像幅を合わせることができ、高品位な画像形成が行えるうえ、個々の共振振動数を揃えるための厄介な調整、例えばトリミングやばね定数の温度制御等を必要とせず、生産効率も向上させることができる。
【0070】
上記駆動周波数を、上記複数の振動ミラーに固有のいずれの共振周波数よりも高い周波数帯域、または低い周波数帯域に設定することにより、個々の共振振動数がばらついていても周波数に対する振れ角の変化が小さい周波数帯域に共通の駆動周波数を設定でき、温度変化等で共振周波数が変化した際にも各々の走査速度が変化する方向や変化幅を揃えることができるので、調整の分解能がラフで済むうえ、常にフィードバックをかけなければいけないような厄介な制御を必要とせず、画像品質を安定的に保つことができる。
【0071】
上記駆動周波数の位相を可変する位相可変手段を備え、上記複数の光走査手段間における画像記録のタイミングを調整することにより、1走査ラインピッチ以下の精度で副走査方向の書出し位置を合わせることができるので、主走査に走査線を繋ぎ合わせる際にも継ぎ目が目立ちにくく、また、走査領域を重ね合わせてカラー画像を形成する際にも色ずれや色変わりのない高品位な画像形成を行うことができる。
【0072】
上記光ビーム検出手段は、被走査面に配備した少なくとも2つの光検出部を有し、光検出部間を光ビームが通過する時間差を検出することにより、振動ミラーの振れ角の変化に加え、結像レンズの倍率変化や波長変化等を含めた走査時間の変化として検出でき、画像幅を確実に補正することができるので、経時的にも高品位な画像品質を維持することができる。
【0073】
上記光検出部は、上記振動ミラーの振幅中心に対称に配備してなることにより、振動ミラーの振幅変化を走査時間の変化として正確に検出することができ、振れ角の変化に伴う画像幅を確実に補正することができるので、経時的にも高品位な画像品質を維持することができる。
【0074】
上記ゲイン可変手段は、少なくとも画像記録中にはゲインを一定に保持することにより、画像記録中の補正に伴う主走査方向画像端の揺らぎを防止でき、直線性を保持できるので、高品位な画像形成が行える。
【0075】
このように、振動ミラー固有の共振振動数によらず、所望の駆動周波数に設定できるようにすることで、機種間でばらつきのない安定した画像品質を得ることができる。
【0076】
また、振動ミラー固有の共振振動数にばらつきがあっても特別な調整機構を持たずに共通の駆動周波数で画像記録が行えるようにすることで、生産効率を向上することができる。
【0077】
また、簡単な方法で的確に画像品質に影響を与える補正量を検出し、振動ミラーの振れ角を可変とすることで、経時的にも安定した画像品質を得ることができる。
【0078】
なお、上述した各実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することが可能である。
例えば、本発明に係る画像形成装置として、中間転写ベルトを用いるものについて説明したが、本発明に係る光走査装置を用いるものであればこのものに限定されず、例えば、搬送ベルトにより記録紙を搬送してその記録紙に対して各色の感光体ドラムが順に画像を形成する構成であってもよい。
【0079】
また、以上に、本発明に係る光走査装置を画像形成装置に用いた場合の実施形態について説明したが、本発明に係る光走査装置はこの画像形成装置に用いられるものに限定されず、例えば光走査型のバーコード読み取り装置や3次元形状計測装置等にも同様に適用可能である。
【0080】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光走査装置によれば、振動ミラー固有の共振振動数にばらつきがあっても継ぎ目が目立ちにくく、また色ずれや色変わりのない高品位な画像形成が行える。かつ、組立に要する時間を短縮できることで、製造に関わるコストやエネルギーを削減することができる。
【0081】
また、本発明の画像形成装置によれば、上記光走査装置を備えることで、振動ミラー固有の共振振動数にばらつきがあっても継ぎ目が目立ちにくく、また色ずれや色変わりのない高品位な画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態としての光走査装置における一部切欠した状態を示す分解斜視図である。
【図2】該光走査装置における第1、第2の基板を示す平面図である。
【図3】可動ミラーの振れ角に対応して各電極間に発生する静電トルクの様子を示す図である。
【図4】可動ミラーの動作と、電極付近とを示す断面図である。
【図5】可動ミラーの振幅に対して、各固定電極へ印加する電圧パルスのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】可動ミラーの駆動周波数に対する振れ角の特性を示す図である。
【図7】本発明の実施形態としての光走査装置の副走査方向における縦断面図である。
【図8】該光走査装置の分解斜視図である。
【図9】該光走査装置における光学素子の配置を示す斜視図である。
【図10】第2の走査レンズ117の平面および正面からみた取付け状態を示す図である。
【図11】本発明の実施形態としての画像形成装置の構成の概要を示す縦断面図である。
【図12】該画像形成装置における光走査装置と、その傾き調整を実現する構成との概要を示す斜視図である。
【図13】半導体レーザ、可動ミラーの駆動制御などを実現する本実施形態における各機能部の構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示したセンサ604、605におけるフォトダイオード801、802の構成を概略的に示す図である。
【図15】振動ミラーの動作と、半導体レーザの発光のタイミングと、同期検知センサ604および終端検知センサ605からの信号とを示す図である。
【図16】各画素に対応する位相とパルス幅とを示す図である。
【符号の説明】
101 半導体レーザ(光源手段)
202 可動ミラー(振動ミラー)
203 第1の固定電極
204 第2の固定電極
206 第1のSi基板
207 第2のSi基板
500(640,641,642,643) 光走査装置
501 転写ベルト
504 感光体ドラム
505 トナー像を読み取る検出器
604 同期検知センサ
605 終端検知センサ
Claims (10)
- 光ビームを発する光源手段と、前記光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、前記振動ミラーに電圧パルスを印可して、前記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、
前記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、
該同一方向の走査時において、前記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、前記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、
前記光源手段は、前記同期検知期間、前記画像記録期間、前記終端検知期間に光ビームを発光する光走査装置において、
前記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、
前記光ビーム検出手段により、前記同期検知期間と前記終端検知期間までの時間を測定することで、前記画像記録期間における前記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、
前記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように前記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えたことを特徴とする光走査装置。 - 前記振動ミラー駆動手段は、前記振動ミラーに固有の共振周波数近傍で共振周波数から外れた周波数帯域に前記駆動周波数を設定することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
- 光ビームを発する光源手段と、光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、前記振動ミラーに電圧パルスを印可して、前記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、
前記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、
該同一方向の走査時において、前記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、前記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、
前記光源手段は、前記同期検知期間、前記画像記録期間、前記終端検知期間に光ビームを発光し、
前記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、
前記光ビーム検出手段により、前記同期検知期間と前記終端検知期間までの時間を測定することで、前記画像記録期間における前記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、
前記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように前記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えた光走査手段を複数備え、主走査に各々の走査領域を繋ぎ合わせて画像記録を行う光走査装置において、
前記複数の光走査手段における振動ミラーを、共通の駆動周波数で往復振動させ、
前記各光走査手段における走査速度の基準値を共通に設定してなることを特徴とする光走査装置。 - 光ビームを発する光源手段と、光源手段からの光ビームを走査する振動ミラーと、前記振動ミラーに電圧パルスを印可して、前記振動ミラーを所定の駆動周波数で往復振動させる振動ミラー駆動手段とを備え、
前記振動ミラーの往復期間である一周期のうち、同一方向の走査時の所定期間のみ画像記録を行い、
該同一方向の走査時において、前記画像記録を行う画像記録期間の走査開始側を同期検知期間、前記画像記録期間の走査終了側を終端検知期間とし、
前記光源手段は、前記同期検知期間、前記画像記録期間、前記終端検知期間に光ビームを発光し、
前記光ビームを検出する光ビーム検出手段と、
前記光ビーム検出手段により、前記同期検知期間と前記終端検知期間までの時間を測定することで、前記画像記録期間における前記振動ミラーにより偏向された光ビームの走査速度を検出する走査速度検出手段と、
前記走査速度検出手段により検出された走査速度を基準値と比較し、誤差を補正するように前記電圧パルスのゲインを調整するゲイン可変手段とを備えた光走査手段を複数備え、各々の走査領域を重ね合わせて画像記録を行う光走査装置において、
前記複数の光走査手段における振動ミラーを、共通の駆動周波数で往復振動させ、
前記各光走査手段における走査速度の基準値を共通に設定してなることを特徴とする光走査装置。 - 前記駆動周波数を、前記複数の振動ミラーに固有のいずれの共振周波数よりも高い側に外れた周波数帯域、または低い側に外れた周波数帯域に設定することを特徴とする請求項3または4記載の光走査装置。
- 前記駆動周波数の位相を可変する位相可変手段を備え、前記複数の光走査手段間における画像記録のタイミングを調整することを特徴とする請求項3または4記載の光走査装置。
- 前記光ビーム検出手段は、被走査面に配備した少なくとも2つの光検出部を有し、該少なくとも2つの光検出部間を光ビームが通過する時間差を検出することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光走査装置。
- 前記光検出部は、前記振動ミラーの振幅中心に対称に配備してなることを特徴とする請求項7記載の光走査装置。
- 前記ゲイン可変手段は、少なくとも画像記録中にはゲインを一定に保持することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光走査装置。
- 請求項1から9の何れか1項に記載の光走査装置と、
該光走査装置からの光ビームを用いて画像形成を行う画像形成手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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