以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出装置の維持装置を含む本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置を前方側から見た斜視説明図である。
この画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着した用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備え、さらに、装置本体1の前面4の一端部側には、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなったカートリッジ装填部6を有し、このカートリッジ装填部6の上面に操作キーや表示器などの操作部7を配置している。カートリッジ装填部6には、液体補充手段としての液体保管用タンクであるメインタンク(以下、「インクカートリッジ」という。)10が交換可能に装着され、また、開閉可能な前カバー8を有している。
次に、この画像形成装置の機構部について図2ないし図4を参照して説明する。なお、図2は同機構部の全体構成を説明する概略構成図、図3は同機構部の要部平面説明図、図3は同機構部の要部模式的斜視説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21B(図3参照)に横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ23を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図3で矢示方向(キャリッジ走査方向:主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、記録液滴(インク滴)を吐出するための液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなる複数の記録ヘッド34を複数のノズルを主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
ここで、記録ヘッド34は、例えば、イエロー(Y)の液滴を吐出する記録ヘッド34y、マゼンタ(M)の液滴を吐出する記録ヘッド34m、シアン(C)の液滴を吐出する記録ヘッド34c、ブラック(Bk)の液滴を吐出する記録ヘッド34bとで構成している。なお、「記録ヘッド34」というときは色を区別しないものとする。
ヘッド構成は、これらの例に限るものではなく、1又は複数の色の液滴を吐出する1又は複数のノズル列を有する記録ヘッドを1又は複数用いて構成することもできる。
記録ヘッド34を構成する液滴吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
この記録ヘッド34にはドライバICを搭載し、図3に示すように、図示しない制御部との間でハーネス(FPCケーブル)22を介して接続されている。
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク35y、35m、35c、35k(色を区別しない場合は「サブタンク35」という。)を搭載している。
このサブタンク35y、35m、35c、35kには、図3及び図4に示すように、4本のチューブ36y、36m、36c、36k(各色を区別しない場合は「チューブ36」という。)で構成される記録液供給チューブ37を介して前述した各色のインクカートリッジ10(各色を区別する場合には、「インクカートリッジ10y、10m、10c、10k」という。)から記録液を供給するようにしている。なお、個々のチューブ36も記録液を供給する記録液供給チューブである。
ここで、インクカートリッジ10は、図3にも示すように、カートリッジ装填部6に収納され、このカートリッジ装填部6にはインクカートリッジ10内の記録液を送液するための供給ポンプユニット23が設けられている。
また、インクカートリッジ装填部6からサブタンク35に至るまでの記録液供給チューブ37は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに本体側ホルダ25にて固定保持されている。さらに、キャリッジ33上でも固定リブ26にて固定されている。
一方、給紙トレイ3の用紙積載部(底板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側で搬送するための搬送部として、用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51と、給紙部からガイド45を介して送られる用紙42を搬送ベルト51との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ52と、略鉛直上方に送られる用紙42を略90°方向転換させて搬送ベルト51上に倣わせるための搬送ガイド53と、押さえ部材54で搬送ベルト51側に付勢された先端加圧コロ55とを備えている。また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
ここで、搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ57とテンションローラ58との間に掛け渡されて、図3のベルト搬送方向に周回するように構成している。帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド54による印写領域に対応してガイド部材61を配置している。このガイド部材61は、上面が搬送ベルト51を支持する2つのローラ(搬送ローラ57とテンションローラ58)の接線よりも記録ヘッド34側に突出している。これにより、搬送ベルト51は印写領域ではガイド部材61の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪71と、排紙ローラ72及び排紙コロ73とを備え、排紙ローラ72の下方に排紙トレイ3を備えている。ここで、排紙ローラ72と排紙コロ73との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
また、装置本体1の背面部には両面給紙ユニット81が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット81は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ52と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面給紙ユニット81の上面には手差し給紙部82を設けている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための本発明に係る維持装置を含む信頼性維持回復機構(以下「サブシステム」という。)91を配置している。
このサブシステム91には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ92a〜92d(区別しないときは「キャップ92」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード93と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け94及びこの空吐出受け94に一体形成され、ワイパーブレード93に付着した記録液を除去するための清掃部材であるワイパークリーナ95と、ワイパーブレード93のクリーニング時にワイパーブレード93をワイパークリーナ95側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ96などを備えている。
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け98を配置し、この空吐出受け98には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口99などを備えている
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙22が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙22はガイド25で案内され、搬送ベルト31とカウンタローラ32との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド33で案内されて先端加圧コロ35で搬送ベルト31に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33はサブシステム91側に移動されて、キャップ92で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ92で記録ヘッド34をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
そこで、この画像形成装置における本発明に係る維持装置を含むサブシステム91の構成の概要について図5ないし図7を参照して説明する。なお、図5は同システムの要部平面説明図、図6は同システムの模式的概略構成図、図7は図5の右側面説明図である。
このサブシステムのフレーム(維持装置フレーム)111には、キャップ保持機構である2つのキャップホルダ112A、112Bと、清浄化手段としての弾性体を含むワイピング部材であるワイパーブレード93と、キャリッジロック115とがそれぞれ昇降可能(上下動可能)に保持されている。また、ワイパーブレード93とキャップホルダ112Aとの間には空吐出受け94が配置され、ワイパーブレード93のクリーニングを行なうために、フレーム111の外側からワイパーブレード93を空吐出受け94の清掃部材であるワイパークリーナ95側に押し付けるための清掃部材であるクリーナコロ96を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ118が揺動可能に保持されている。
キャップホルダ112A、112B(区別しないときは「キャップホルダ112」という。)には、それぞれ、2つの記録ヘッド34のノズル面をそれぞれキャッピングする2つのキャップ92aと92b、キャップ92cと92dを保持している。
ここで、印字領域に最も近い側のキャップホルダ112Aに保持したキャップ92aには可撓性チューブ119を介して吸引手段であるチュービングポンプ(吸引ポンプ)120を接続し、その他のキャップ92b、92c、92dはチュービングポンプ120を接続していない。すなわち、キャップ92aのみを吸引(回復)及び保湿用キャップ(以下単に「吸引用キャップ」という。)とし、その他のキャップ92b、92c、92dはいずれも単なる保湿用キャップとしている。したがって、記録ヘッド34の回復動作を行うときには、回復動作を行う記録ヘッド34を吸引用キャップ92aによってキャッピング可能な位置に選択的に移動させる。
また、これらのキャップホルダ112A、112Bの下方にはフレーム111に回転自在に支持したカム軸121を配置し、このカム軸121には、キャップホルダ112A、112Bを昇降させるためのキャップカム122A、122Bと、ワイパーブレード93を昇降させるためのワイパーカム124、キャリッジロック115をキャリッジロックアーム117を介して昇降させるためのキャリッジロックカム125と、空吐出受け94内で空吐出される液滴がかかる空吐出着弾部材である回転体としてのコロ126と、ワイパークリーナ118を揺動させるためのクリーナカム128をそれぞれ設けている。
ここで、キャップ92はキャップカム122A、122Bにより昇降させられる。ワイパーブレード93はワイパーカム124により昇降させられ、下降時にワイパークリーナ118が進出して、このワイパークリーナ118のクリーナコロ96と空吐出受け94のワイパークリーナ95とに挟まれながら下降することで、ワイパーブレード93に付着したインクが空吐出受け94内に掻き落とされる。
キャリッジロック115は図示しない圧縮バネによって上方(ロック方向)に付勢されて、キャリッジロックカム125で駆動されるキャリッジロックアーム117を介して昇降させられる。
そして、チュービングポンプ120及びカム軸121を回転駆動するために、モータ131の回転をモータ軸131aに設けたモータギヤ132に、チュービングポンプ120のポンプ軸120aに設けたポンプギヤ133を噛み合わせ、更にこのポンプギヤ133と一体の中間ギヤ134に中間ギヤ135を介して一方向クラッチ137付きの中間ギヤ136を噛み合わせ、この中間ギヤ136と同軸の中間ギヤ138に中間ギヤ139を介してカム軸121に固定したカムギヤ140を噛み合わせている。なお、クラッチ137付きの中間ギヤ136、138の回転軸である中間軸141はフレーム111にて回転可能に保持している。
また、カム軸121にはホームポジションを検出するためのホームポジションセンサ用カム142を設け、このサブシステム91に設けた図示しないホームポジションセンサにてキャップ92が最下端に来たときにホームポジションレバー(不図示)を作動させ、センサが開状態になってモータ131(ポンプ120以外)のホームポジションを検知する。なお、電源オン時には、キャップ92(キャップホルダ112)の位置に関係なく上下(昇降)し、移動開始までは位置検出を行わず、キャップ92のホーム位置(上昇途中)を検知した後に、定められた量を移動して最下端へ移動する。その後、キャリッジが左右に移動して位置検知後キャップ位置に戻り、記録ヘッド34がキャッピングされる。
次に、キャップ92の保持機構及び昇降機構(上下動機構)の詳細について図8ないし図10を参照して説明する。なお、図8はキャップ保持昇降機構部の側面説明図、図9は同じく正面説明図、図10は2つのキャップカムの位置関係を説明する説明図である。
キャップ保持機構であるキャップホルダ112Aは、キャップ92a、キャップ92b(これらを併せて「キャップ92A」という。)を昇降可能に保持するホルダ151と、ホルダ151の底面とキャップ92Aの底部との間に介装されてキャップ92Aを上方に付勢するスプリング152と、ホルダ151を前後方向(記録ヘッド34のノズルの並び方向)に移動可能に保持するスライダ153とを有している。
キャップ92Aは両端部に設けたガイドピン150aをホルダ151の図示しないガイド溝に上下動可能に、底面に設けたガイド軸150bをホルダ151に上下動可能に挿通して、ホルダ151に対して上下動可能に装着している。キャップ92Aとキャップホルダ151との間に介装したスプリング152、152はキャップ92a、92bを上方向(キャッピング時にノズル面側に押圧する方向)に付勢している。
スライダ153は、前後端に設けたガイドピン154、155をフレーム111に形成したガイド溝156に摺動可能に嵌め合わせることで、スライダ153及びホルダ151及びキャップ92A全体が上下動できる構成としている。
そして、スライダ153の下面に設けたカムピン157を図10に示すようにキャップカム122Aのカム溝122aに嵌め合わせて、モータ131の回転が伝達されるカム軸121の回転に同動するキャップカム122Aの回転によってスライダ153、ホルダ151及びキャップ92Aが上下動するようにしている。
さらに、吸引用キャップ92aにはスライダ153及びホルダ151を挿通して、キャップ92aの短手方向に対してキャップ中央位置の下方からチューブ119を這い回して接続している。
なお、キャップ92c、92d(これらを併せて「キャップ92B」という。)をほじするキャップホルダ112B及びこれを上下動させる構成も上記と同様であるので説明を省略する。ただし、キャップ92c、92dにはチューブ119は接続されない。
このように、1つの駆動源であるモータ131を駆動することによって1つの軸であるカム軸121が回転し、このカム軸121の回転によってカム軸121に固定したカム122A、122Bが回転して、キャップ92A及びキャップ92Bが上下動する構成としている。
ここで、キャップ92Aを上下動させるためのカム122Aとキャップ92Bを上下動させるためのカム122Bとは、図10に示すように、角度θaだけずらしてカム軸121に取り付けている。したがって、カム軸121が図10で矢示A方向に回転するときにキャップホルダ112A,112Bが上動する場合、キャップ92Aを上下動させるためのカム122Aの方が先に上死点に達し、これに角度θaを回転するに要する時間だけ遅れたタイミングでキャップ92Bを上下動させるためのカム122Bの方が上死点に達することになる。
この動作について図11を参照して説明すると、モータ131を駆動してカム軸121を回転させたとき、時点t0でキャップ92Aが上昇を開始し、これに遅れてキャップ92Bが上昇を開始して、時点t2でキャップ92Aが上死点に達して記録ヘッド34のノズル面に密着した後、これに所定時間遅れた時点t2でキャップ92Bも上死点に達して記録ヘッド34のノズル面に密着し、時点t3まではキャップ92A及びキャップ92Bがともに上死点にあって記録ヘッド34のノズル面をキャッピングしている状態に維持され、その後、キャップ92Aから先に下降を開始する。
したがって、記録ヘッド34を保湿のためにキャッピングするため、キャップ92a〜92dを上昇させるとき、キャップ92A(92a、92b)とキャップ92B(92c、92d)とが同時に上死点に達して記録ヘッド34に密着した状態になることがなく、スプリング152の反力によってモータ131に対して大きな負荷がかかることを防止できる。
すなわち、キャップをヘッドに密着させる際に、独立して上下動する複数のキャップ(この例では、キャップ92a、92bとキャップ92c、92d)が同じ軌道で上死点に達して記録ヘッド34に密着するようにした場合、キャップを押圧しているバネ(スプリング152)の反力が同時に掛かるため、モータ131の負荷が急激に変化し、トルク不足になる可能性がある。
そこで、吸引用、あるいは、保湿用何れか2個以上の複数のキャップを使用し、一軸で異なるキャップを独立して上下動させ、軸の回転を1つの駆動源で行なう場合、キャップをヘッドに密着しようとするときに、何れかのキャップが少し早く上死点に達し、且つ他のキャップが遅れて上死点に達するようにすることで、駆動源に対する負荷が急減に変化することが防止される。
これによって、小型でトルクの小さいモータであっても駆動源として使用することができるようになり、維持装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
なお、複数の記録ヘッドのノズル面をキャッピングした状態にするためには、複数のキャップがともに上死点にある状態、すなわち上死点を共有する範囲を持たせることが必要である。
また、この実施形態では、図8及び図9にも示すように、吸引用キャップであるキャップ92aに接続するチューブ119は、上述したように、キャップ92aの短手方向に対しキャップ中央位置下方より這い回してキャップ92aの底面に接続している。
これによって、吸引用キャップ92aの短手方向にキャップ92aが傾き難くなる。すなわち、上述したように、吸引用となるキャップ92aには吸引ポンプ(チュービングポンプ)120と接続するためのチューブ119を接続しなければならない。他方、吸引用キャップ92aは、記録ヘッド34の調整位置変動に対応するため、キャップ92aを保持するホルダ151とスライダ153に取り付けられている。更に、キャップ92aは下方よりスプリング152、152で押圧し、記録ヘッド34との密着性を得られるようにしている。そのためキャップ92aは、ホルダ151、スライダ153に対し若干のガタ付きが生じることになる。
この場合、チューブ119を斜め下よりキャップ92aの底部に取り付けると、このガタ付き分だけキャップ92aが揺動して、記録ヘッド34のノズル面に対して傾きが生じてノズル面との密閉性が損なわれてしまうことになる。そこで、キャップ92aの短手方向の中央位置に直下からチューブ119を接続することによって、キャップ92aの傾きが防止され、記録ヘッド34との高い密着性を確保することができる。
次に、ワイパーブレード93の昇降機構(上下動機構)について図12及び図13を参照して説明する。なお、図12は同昇降機構部分の側面説明図、図13は同じく正面概略断面説明図である。
ワイパーブレード93は、ワイパーホルダ171に取り付けている。このワイパーホルダ171の両端部にはガイドピン172a、172bを設けて、このガイドピン172a、172bをガイド部材173(これはフレーム111自体でも良い。)、173に形成したガイド溝174に嵌め合わせて、ガイド部材173に沿って上下動可能に配置している。なお、ガイドピン172a、172bとガイド溝174の関係は逆にすることもでき、要するに、ワイパーホルダ171が両端部をガイド部材に案内されて上下動する構成であれば良い。
そして、ガイド部材173の上端部にはワイパーホルダ171の両端部のガイドピン172aの上動終端を規制する規制部材であるストッパ175を設けている。なお、ストッパ175はガイド部材173と一体形成することもできる。これにより、ワイパーブレード93(ワイパーホルダ171)の上昇位置が規制されることになる。
一方、ワイパーホルダ171の脚部171a、171a間には可撓性を有する部材(以下「可撓性部材」という、)176を取り付け、この可撓性部材176にワイパーカム124のカム溝に移動自在に嵌合するカムピン177を設けた舌片178を形成している。なお、可撓性部材176は樹脂製のモールド部材で形成している。
したがって、カム軸121が回転することによってワイパーカム124が回転し、これによって、ワイパーホルダ171とともにワイパーブレード93が上下動する。
ここで、ワイパーホルダ171が上昇するとき、ガイドピン172aがストッパ175に当接することによって、それ以上のワイパーホルダ171の上昇が規制されることになる。この場合、ワイパーカム124の上死点になったときにワイパーホルダ171のガイドピン172aがストッパ175を越える位置になる構成とする。
このとき、ワイパーホルダ171とワイパーカム124とは可撓性部材176を介して連結しているので、図14に仮想線で示すようにこの可撓性部材176が撓むことによって、ワイパーホルダ171の上昇が規制されていることによる変位が吸収され、カム124は回転することができる。つまり、ワイパーホルダ171はワイパーカム124との間に設けた可撓性部材176の復元力によってストッパ173に押し付けられた状態になり、ワイパーホルダ171の傾きが防止される。
これによって、ワイパーホルダ171は傾くことなく上昇位置で保持されることになり、ワイパーブレード93も傾くことなく記録ヘッド34のノズル面に当接することができ、記録ヘッド34のノズル面を確実に安定してワイピングすることができるようになる。なお、ワイパーブレード93によるノズル面のワイピングはキャリッジ33を移動させて記録ヘッド34をワイパーブレード93に対して相対移動させることによって行なう。
すなわち、両端をガイド溝(或いはレール)174に沿うように上下するワイパーホルダ171にワイパーブレード93を取り付けて上下動させる場合、ワイパーホルダ171を上下させるカム124がワイパーホルダ171の中央付近に位置する(図12の位置)と、ワイパーホルダ171がヤジロベイの様にカム124を支点にして回転し、上昇位置に達したとき両端で差が発生する(傾いてしまう)。
そこで、上昇位置に達する時点でワイパーホルダ171の上昇をストッパ175で規制することによって上死点での傾きを無くするが、この場合、単純にワイパーホルダ171の上昇を規制すると、カム124とワイパーホルダ171が干渉して、カム124が回転できなくなる。これに対し、ワイパーホルダ171とカム124間に可撓性を有する部材176を介することによって、カム124が回転し、ワイパーホルダ171が規制された上死点まで上昇し、次の工程で下降することができる(カム124が更に回転できる)ようにしている。
なお、可撓性を有する部材126は、弾性を有する部材を含み、金属製の板バネなどを用いることもできるが、前述したように樹脂製の部材とすることにより、カム124に対する反力が大きくなる(大きすぎるとカム124が回転できなくなる)ことなく、しかも、ワイパーホルダ171を上昇規制位置で押圧することができるので、好ましい。
次に、ワイパーブレード93を清掃(清浄化)するワイパークリーナ機構について図15ないし図17をも参照して説明する。なお、図15は同機構を示す概略正面説明図、図16は同機構の示す概略側面説明図、図17は同機構のクリーナ手段の概略分解斜視説明図である。
ワイパークリーナ機構180は、空吐出受け94と一体に形成した清掃部材であるワイパークリーナ95と、ワイパークリーナ95側にワイパーブレード93を押し付ける清掃部材であるクリーナコロ96を含むクリーナ手段であるワイパークリーナ118とで構成している。
ワイパークリーナ118は、ワイパーブレード93に当接してワイピングによってワイパーブレード93に付着した記録液を清掃するためのクリーナコロ96を、クリーナホルダ182の上端部に回転自在に装着している。このクリーナコロ96は金属などの剛体で形成している。クリーナコロ96を剛体で形成することによって真直度(真っ直ぐな度合い)が得られ、ワイパーブレード93を均等に押圧することができるようになる。
このクリーナホルダ182の下側両端部に形成した腕部182a、182aには支軸184を設けて、この支軸184をフレーム111(又はフレーム111に固定した支持部材でもよい。)に揺動自在に装着し、一方の腕部182aとフレーム111などの固定部との間には引っ張りスプリング185を介装することにより、クリーナホルダ182を図15に示すワイパーブレード93に当接しない退避位置側に揺動付勢している。
そして、このクリーナホルダ182の下端中央部182bの外面側に支軸186を設け、この支軸186にリンク部材188を回転可能に装着し、一方の腕部182aとリンク部材188との間に介装したスプリング189によって、リンク部材188を下端中央部182bの受け部182cに押し付けている。
リンク部材188は支軸186に装着するアーム部材191と、このアーム部材191に一体的に設けられ、下端部がクリーナカム128の周面に当接する部材であるカムレバー192で構成している。したがって、クリーナカム128によってカムレバー192が押し上げられるとき、クリーナホルダ182が揺動できないときにはリンク部材188がスプリング189の付勢力に抗して揺動することによって過負荷を吸収することができる。つまり、リンク部材188とスプリング189によってクリーナコロ96のワイパーブレード93に対する押し付け力を調整する押圧調整機構を構成している。
一方、空吐出受け94のワイパーブレード93側上端部には、クリーナコロ96と共同してワイパーブレード93を挟むための傾斜した清掃部材であるワイパークリーナ95を一体形成している。
このように構成したので、モータ131を駆動してカム軸121を回転させることによって、前述したようにワイパーブレード93を上昇させ(図15の位置)、その後記録ヘッド34を相対移動させてノズル面をワイピングする。
そして、カム軸121の更なる回転によって、図18に示すように、クリーナカム128がリンク部材188を矢示B方向に押し上げ、このリンク部材128に連結されているクリーナホルダ182が支軸184を中心として矢示C方向に進出揺動して、クリーナコロ96がワイパーブレード93を空吐出受け94側のワイパークリーナ95に押し付ける。
この状態で、ワイパーブレード93がワイパーカム124の回転によって矢示D方向に下降することにより、ワイパーブレード93にワイピングによって付着した記録液が空吐出受け94のワイパークリーナ95側に掻き落とされる。
このように、クリーナコロ96でワイパーブレード93を空吐出受け94のワイパークリーナ95に押し付けながらワイパーブレード93を下降させてワイパーブレード93をクリーニングする(清浄化する)ことによって、次回のヘッドクリーニング時に清浄な状態でワイピングを行なうことができ、ワイピング性が向上する。
この場合、清掃部材の1つを回転自在なワイパーコロ96とすることによって、ワイパーブレード93を下降してクリーニングするときのモータ131の負荷を軽減することができる。すなわち、クリーナ部材(清掃部材)として、例えばスクレーパの様なクリーナ先端形状の部材を用いると、ワイパーブレード93に食い込みワイパーブレード93を下降させるときの駆動源に対する負荷が大きくなるが、ワイパーコロ96のように回転するクリーナ部材を用いることで、負荷の増大を抑えることができる。
また、清掃部材であるワイパーコロ96を回転させることによって、清掃部材の先端(コロの部分)の上面に記録液が堆積し難くなり、清掃部材の汚れを低減することができる。
さらに、ワイパークリーナ118の駆動源としてキャップ92等を上下動させるための駆動源(モータ131)と共通化する、つまり、モータ131で回転されるカム軸121及びクリーナカム128を介してクリーナ部材であるワイパーコロ96を揺動させることによって、構成の簡略化、低コスト化を図れる。
さらにまた、清掃部材でもあるクリーナコロ96を保持するクリーナホルダ182とクリーナカム128との間に、リンク部材188及びスプリング189から構成した押圧調整機構を設けることによって、クリーナコロ96によるワイパーブレード93の押し圧が過度にならないように調整することができ、ワイパーブレード93が下降しない、あるいは、過負荷によってモータ131が脱調するなどの不具合を防止できる。
次に、空吐出受け部について図19及び図20を参照して説明する。なお、図19は空吐出受け部の正面断面説明図、図20は同じく側面説明図である。
空吐出受け部200は、空吐出受け94と、空吐出受け94の下側に位置し、カム軸121に設けた空吐出着弾部材であるコロ203と、ワイパークリーナ95の内面に付着した記録液を掻き寄せるための掻き落し機構204を構成する掻き落とし部材204A、204Bと、回転体であるコロ203に付着した記録液を掻き落とすための掻き落とし部材205とを備え、この空吐出受け94の下方には吸収体207を含む廃液タンク206が配置される。
ここで、空吐出受け94のワイパークリーナ95内面に付着した記録液を掻き寄せるための掻き落とし機構204は、掻き落とし部材204A、204Bの下端部をホルダ201の下端部に設けた支軸210で揺動可能に支持し、これらの掻き落とし部材204A、204Bは連結部材211で互いに遊びを持って連結している。
そして、カム軸121に設けた空吐出着弾部材である回転体としてのコロ203の側面に、コロ203の回転によって掻き落とし部材204A、204Bに当接可能なピン部材212、212を設けている。
掻き落とし部材204A、204Bは、先端部204aをワイパークリーナ95の傾斜表面に倣うように傾斜させている。また、掻き落とし部材204A、204Bの空吐出受け94の内壁面と対向する側には揺動時の接触面積を小さくするための凸部204bを設けている。
このように構成したので、前述したようにワイパーブレード93のクリーニングを行なったときにワイパークリーナ95にワイパーブレード93から除去された記録液が付着する。
ここで、カム軸121が回転することによって、図20でコロ203が矢示E方向に回転すると、コロ203のピン部材212が掻き落とし部材204A、204Bに当接するので、掻き落とし部材204A、204Bが図20で矢示F、G方向に往復移動する(実線示の位置と破線図示の位置の間)ことになる。この掻き落とし部材204A、204Bの往復移動によって、ワイパークリーナ95に付着した記録液が掻き落とし部材204A、204Bの先端部204aで1箇所或いは数箇所に掻き寄せられ(集められ)、記録液の塊りが大きくなって、記録液は空吐出受け94の内壁面に沿って自重で流れ、下方の廃液タンク206に落下する。
すなわち、ワイパーブレード93に付着した記録液をワイパークリーナ95に押しつけて取り除くワイパークリーニング機構を採用した場合、単に押し付けてワイパーブレード93を移動しただけでは、ワイパークリーナ95先端に記録液が残ってしまうことになる。特に、使用する記録液の粘度が高いと、ワイパークリーナ95先端部に記録液が残り、次回のクリーニング時にワイパーブレード93に付着している記録液を取り除くことができなくなることがある。
そこで、粘度の高い記録液を使用した場合でも、ワイパークリーナ95に付着した記録液を1カ所あるいは数カ所に集める(寄せる)ことで、ワイパークリーナ95に接している面に対する記録液の滴体積が大きくなるため、ワイパークリーナ95との接触面から落下(流れ)し易くなり、次回のワイパーブレード93のクリーニングを清浄な状態で行なうことができるようになり、ワイパーブレード93のクリーニング性が向上する。
本発明者らの実験によると、記録液の25℃における粘度が5mPa・s以上になると、クリーナ先端で記録液が留まることが多くなり、次回のクリーニング時にブレードから記録液を除去する性能が低下することが確認された。そこで、上述した掻き落とし部材204A、204Bを備えたところ、効果的に記録液が下方に流れることを確認できた。
しかも、この掻き落とし機構204においては、掻き落とし部材204A,204Bをカム軸121に設けた空吐出着弾部材であるコロ203の回転によって行なっているので、構成が簡単になる。
また、この空吐出受け94においては、内部にカム軸121で回転される空吐出着弾部材であるコロ203を配置しているので、空吐出された液滴のミストの速度を和らげられ、或いはコロ203に付着回収されることになる。これにより、記録液ミストの飛散が防止される。
そして、このコロ203に付着した記録液を掻き落とす掻き落とし部材205を設けているので、コロ203に付着した記録液は掻き落とし部材205で掻き落とされて、自重で下方の廃液タンク206に落下する。このように、コロ203に付着する記録液を掻き落とす部材をコロ203の下側で、廃液受け部(廃液タンク)の上方に配置することによって、簡単な構成で低コストにコロに付着した記録液を除去して廃液処理することができる。
以上のサブシステム91の全体的な動作について図21を参照して説明する。
このサブシステム91においては、モータ131が正転することによってモータギヤ132、中間ギヤ133、ポンプギヤ134、中間ギヤ135、136までが回転し、チュービングポンプ120の軸120aが回転することでチュービングポンプ120が作動して、吸引用キャップ92a内を吸引する(この動作を「キャップ内吸引」という。)。その他のギヤ138以降は一方向クラッチ137によって回転が遮断されるので回転(作動)しない。
モータ131が逆転することによって、一方向クラッチ137が連結されるので、モータ131の回転が、モータギヤ132、中間ギヤ133、ポンプギヤ134、中間ギヤ135、136、138、139を経てカムギヤ140に伝達され、カム軸121が回転する。このとき、チュービングポンプ120はポンプ軸120aの逆転では回転しない構造となっている。
そこで、回復動作を行う記録ヘッド34をキャップ92aの位置にした状態にし、図21に示すように、時点t1で、同図(a)に示すようにモータ131を逆転してカム軸121を回転させてキャップ94aを上昇させて記録ヘッド34のノズル面をキャッピングし、同図(b)に示すようにモータ131を正転してチュービングポンプ120を作動させて記録ヘッド34のノズルから吸引するノズル吸引工程を行う。
この工程に引き続いて、時点t2で、同図(a)に示すように、モータ131を逆転させることでカム軸121を回転させ、これにより、キャップ92aを記録ヘッド34のノズル面から離間させる工程を行う。
この工程に引き続いて、時点t3で、同図(c)に示すようにワイパーブレード93がワイピング位置(ノズル面と接触する位置)に上昇し(清浄化第1工程)、この状態で同図(d)に示すようにキャリッジ33を移動させることにより、記録ヘッド34のノズル面をワイパーブレード93で拭きとって清浄化し(清浄化第2工程)た後、ワイパーブレード93を下降させてノズル面から離間させる(清浄化第3工程)工程を行う。
この工程に引き続いて、時点t4で、同図(b)に示すようにチュービングポンプ120を作動させてキャップ92a内の記録液を吸引するキャップ内吸引工程を行う。
さらに、時点t5で再度キャップ92aを上昇させて記録ヘッド34のノズル面に接触させるスタンピング工程を行った後、キャップ92aをノズル面から離間させて、時点t6でワイパーブレード93を上昇させて、キャリッジ33を相対移動させることによってノズル面をワイピングする工程を行ない、その後、ワイパーブレード93を下降させる。
つまり、ノズル吸引を行う場合には、キャップ92aをノズル面から離間させてキャップ内吸引を行った後、再度キャップ92aをノズル面に接触させることで、キャップ92のノズル面との接触部(ニップ部92n(図8、図9参照))に残存している記録液をノズル面に転写(スタンピング)するようにしている。
実験によると、使用する記録液であるインクの25℃における粘度が5mPa・s未満であれば、吸引用キャップ92aでノズル面をキャッピングしてノズル吸引を行い、吸引用キャップ92aをノズル面から離間したときに、吸引用キャップ92aのニップ部に残存している記録液の量は極めて少なく、再度保湿のために吸引用キャップ92aでノズル面をキャッピングしても、画像品質に影響を与える結果となるような記録液の飛び散りなどは認められない。
これに対して、使用する記録液であるインクの25℃における粘度が5mPa・s以上になると、特に粘度が高くなるほど(25℃における粘度が7mPa・s以上)、吸引用キャップ92aでキャッピングしてノズル吸引を行った後ノズル面から離間させたとき、高粘度であるために吸引用キャップ92a内に自重で流れ込まずにニップ部92nに残存する記録液の量が増え、再度保湿のために吸引用キャップ92aでノズル面をキャッピングしたときに、その残存記録液が飛び散るという現象が確認された。
そこで、ノズル吸引を行った場合には吸引用キャップ92aを再度記録ヘッド34のノズル面に接触させて、吸引用キャップ92aのニップ部に残存している記録液をノズル面に転写(スタンピング)することによって、吸引用キャップ92aのニップ部92nでの記録液の残存量を減少させ、あるいは残存記録液をなくすることができ、これによって、再キャッピング時の記録液の飛び散りを防止できて、画像品質を向上できる。
以上のように、この画像形成装置におけるサブシステム91においては、記録ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップの上下動、キャップ内吸引を行うための吸引手段の駆動、ワイパーブレードの上下動、ワイパークリーナ機構のクリーナ手段の揺動、ワイパークリーナを清掃するための掻き落とし手段を構成する掻き落とし部材の揺動、空吐出受けに設けた回転体の回転を、1つの駆動源であるモータで回転される回転軸であるカム軸の回転によって行なうようにしているので、維持装置の構成が簡単になる。
次に、サブシステム91におけるキャップの強制解除について図22を参照して説明する。
サブシステム91は、記録ヘッド34を保湿のためにキャップ92a〜92dでキャッピングするが、修理などでサブシステム91を外す必要がある場合がある。このとき、電源が入らない、あるいは、電気的な障害によって駆動源であるモータ131が回転しないなどの正常な動作を行なうことができない事態が考えられる。
このようになると、記録ヘッド34とキャップ92a〜92dが密着しているために、キャップ92a〜92dを外せなかったり、外せてもノズル面を傷つけたりすることがある。
そこで、このサブシステム91では、図22に示すように、キャップ92a〜92d等を上下動させるためのカム軸121に駆動力を伝達するためのクラッチ137を設けている中間軸141の一端部をフレーム111表面に露出させ、外側から回転操作部材を嵌め合わせることができる溝301(このほか、凹部又は突起部でもよい。)を形成している、
これによって、修理等によって、サブシステム91を取り外す必要が生じ、電源が入らないなどの事情でカム軸121が回転しない場合でも、中間軸141に設けた溝301にドライバ等の回転操作部材を嵌め合わせて手動で回転させることによって、カム軸121を回転させることができるので、記録ヘッド34とキャップ92の密着状態を強制的に解除することができる。
この場合、回転方向のミスによりサブシステム91(ユニット)が破損するなどのおそれを防止するために、回転方向を示す目印302をフレーム111の表面で中間軸141の周囲に設けている。さらに、カム軸121の一端部もフレーム111の表面に露出させて、このカム軸121の一端面に目印303を、フレーム111の表面でカム軸121の周囲に目印303を設けて、カム軸121の位置関係を示す、つまり、カム軸121の回転量を示すようにしている。
これによって、いずれの方向に、どこまで回転させれば良いかが分かるようになり、慣れない修理者であっても容易に正しく回転させて、記録ヘッド34とキャップ92との密着状態を解除して、サブシステム91を取り外すことができるようになる。
次に、吸引ポンプであるチュービングポンプ120について図23ないし図25を参照して説明する。なお、図23は同チュービングポンプ120の吸引作動時の状態を示す説明図、図24は同チュービングポンプ120の吸引非作動時の状態を示す説明図、図25は図23の状態で内部構成を説明する正面説明図である。
チュービングポンプ120は、可撓性を有するチューブ119を円弧状に規制するポンプケース401に回転自在に挿通した回転軸(ポンプ軸)401に、ケース401内で回転するポンプホイル402及び2つのローラ403、403をガイドするガイド板405を設けている。
2つのローラ403は、支軸406がポンプホイル402に形成したガイド溝407に嵌め合わされ、ポンプホイル402の回転方向に応じてガイド溝407に沿って移動する。
ここで、ポンプホイル402が図23の矢示H方向に回転するときには、2つのローラ203はガイド溝407の外周方向に移動して可撓性チューブ119を順次押し潰しながら回転する。これにより、吸引チューブ119内に負圧が発生してキャップ92aから矢示I方向に吸引が行われて、記録液を矢示J方向に排出する。
これに対し、ポンプホイル402が図24の矢示K方向に回転するときには、2つのローラ203はガイド溝407の内周方向に移動して可撓性チューブ119に少しだけ接するレリース状態に保たれ、吸引、排出は行われない。
ここで、このチュービングポンプ120においては、可撓性チューブ119を押し潰すときの2つのローラ403、403の位置関係(角度θbに相当する)が180°未満になるようにガイド溝407を形成している。つまり、チューブ119の巻き付き角θbが180°未満、具体的には176〜178°になるようにしている。
このように構成することで、吸引ポンプ120を駆動する駆動源に対するメカ的負荷が軽減され、このサブシステム91のように1つの駆動源(モータ131)で、チュービングポンプ120、キャップ92、ワイパーブレード93などを駆動する機構を構成した場合に、駆動源にかかる負荷を低減できて、よりトルクの小さいモータを使用することができるようになる。なお、チューブ119の巻き付き角θbを176〜178°になるようにすることで、ポンプ性能を低下することなく駆動源に対する負荷を軽減できる。
次に、上述した本発明を適用した画像形成装置において使用した高粘度の記録液であるインクについて説明する。なお、インクのポリマーエマルジョンは後述する製造例に従い作製したものである。
また、インクに使用する湿潤剤としては、グリセリン、1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびトリメチロールエタンから選ばれた少なくとも1種類以上を使用する。
また、炭素数8以上で11以下のポリオールまたはグリコールエーテル、アニオンまたはノニオン系界面活性剤を添加してある。
その例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、 2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、下記(I)ないし(VII)の構造の物質を挙げることができる。
(R1:炭素数6〜14の分岐してもよいアルキル基、m:3〜12、
M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
(R2:炭素数5〜16の分岐したアルキル基、
M:アルカリ金属イオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム、アルカノールアミン)
(Rは分岐しても良い6〜14の炭素鎖、k:5〜20)
(Rは分岐しても良い炭素数6から14の炭素鎖、n:5〜20)
(Rは炭素数6から14の炭素鎖、m,n:m、n≦20)
(Rは炭素数6から14の炭素鎖、m,n:m、n≦20)
これらの添加により、インクの表面張力が35mN/cm以下まで下がる。表面張力を35dyne/cm以下とすることによって、印写画像において特に紙への浸透速度を上げることができる。また、25℃におけるインク粘度を5mPa・sec以上にすることで、画像濃度を上げることができる。
そこで、インクの製造例について説明する。
〔インク製造例〕
下記方法でインクを作製した。
(参考例1)フタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調整
特開2001−139849号公報に開示されている調整例3を追試して青色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は93nmであった。
(参考例2)ジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調整
上記参考例1のフタロシアニン顔料をピグメントレッド122に変更したほかは参考例1と同様にして赤紫色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は127nmであった。
(参考例3)モノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子分散体の調整
参考例1のフタロシアニン顔料をピグメントイエロー74に変更したほかは参考例1と同様にして黄色のポリマー微粒子分散体を得た。ポリマー微粒子のマイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は76nmであった。
(参考例4)ジアゾ化合物処理したカーボンブラック分散液1
表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック100gと、p−アミノ−N−安息香酸34gとを水750gに混合分散し、これに硝酸16gを滴下して70℃で撹拌した。5分後、50gの水に11gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間撹拌した。得られたスラリーを10倍に希釈し遠心処理し粗大粒子を除き、pHをジエタノールアミンにて調整しpH8−9とし、限外濾過膜にて脱塩濃縮し顔料濃度15%のカーボンブラック分散液とした。このものをポリプロピレンの0.5μmフィルターにてカーボンブラック分散液1とした。マイクロトラックUPAで測定した平均粒子径(D50%)は99nmであった。
以下にインクの実施例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、各成分の量(%)は重量基準である。
〔シアンインク〕
下記処方のインク組成物を作成し、pHが9になるように水酸化リチウム10%水溶液にて調整した。その後、平均孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過を行いインク組成物を得た。
参考例1のフタロシアニン顔料含有ポリマー微粒子 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 25.0wt%
グリセロール 8.5wt%
CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH
の活性剤 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 1.8wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.1wt%
消泡剤 0.05wt%
イオン交換水 残量
〔マゼンタインク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
参考例2のジメチルキナクリドン顔料含有ポリマー微粒子 0.5wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 22.0wt%
グリセロール 7.0wt%
ポリオキシアルキレン誘導体ディスパノール TOC 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.05wt%
消泡剤 0.1wt%
イオン交換水 残量
〔イエローインク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化リチウムで9にしてインク組成物を調製した。
参考例3のモノアゾ黄色顔料含有ポリマー微粒子 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 23.5wt%
グリセロール 7.5wt%
ポリオキシアルキレン誘導体ディスパノール TOC 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.05wt%
消泡剤 KM72F 0.1wt%
イオン交換水 残量
〔黒インク〕
下記組成物を用いる以外はシアンインクと同様にし、pHを水酸化ナトリウムで9にしてインク組成物を調製した。
参考例4のジアゾ化合物処理したカーボンブラック分散液1 10.0wt%(固形分として)
1,3−ブタンジオール 22.5wt%
グリセロール 7.5wt%
N−メチル−2−ピロリドン 2.0wt%
CH3(CH2)12O(CH2CH2O)3CH2COOH 2.0wt%
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0wt%
プロキセルLV(防腐剤) 0.2wt%
消泡剤 0.1wt%
イオン交換水 残量
これらのインク物性は、表1のとおりであった。
上述したように高粘度の記録液(インク)を用いて記録ヘッド34から液滴を吐出させた後、キャップ92aでキャッピングしてノズル吸引を行った後、キャップ内吸引を行い、再度キャップ92aを記録ヘッドの34のノズル面に接触させるスタンピングを行なったところ、キャップ92aのニップ部に残存する記録液量が少なくなって、保湿のためにキャップ92aでノズル面をキャップしたときの記録液の飛び散りも殆ど確認されなかった。
また、ワイパーブレード93によるワイピングを行ない、ワイパークリーナでクリーニングを行うことでワイパーブレード93に付着した残存記録液も除去されることが確認された。さらに、空吐出受け94内に掻き落とされる記録液もスムーズに廃液タンクに流れ落ち、次のワイピング工程でもワイパーブレード93に付着した記録液を除去できることが確認された。
なお、本発明に係る画像形成装置は、インクジェットプリンタ以外にも、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などにも適用することができる。さらに、インク以外の液体(記録液)、例えばレジスト、医療分野におけるDNA試料を吐出させる画像形成装置にも適用することができる。