JP4343560B2 - 濾過材及びこれを用いたフィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化性液体又は熱水の濾過のために使用する濾過材、及びこれを用いたフィルタに関する。特に、次亜塩素酸塩溶液の濾過のために使用できる濾過材及びフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
ビールの製造工程は大きく分けて、麦芽、ホップ、水、コーンスターチなどの原料を用いて、ビールを作るのに必要な麦芽糖を多く含んだ麦汁を作る仕込み工程、前記麦汁に酵母を加えて発酵させ、若ビールを作る発酵工程、前記若ビールをタンクに移し、低温で貯蔵することによってビールを熟成させる貯酒工程、前記熟成させたビールから酵母などを取り除いて生ビールとする濾過工程、及び前記生ビールをビン、缶或は樽などに充填するパッケージ工程、からなる。
【0003】
このビールの製造工程における濾過工程は、前記の通り酵母などを取り除く工程であるが、若ビールを貯酒しているタンクからパッケージングに至るまでの配管中が雑菌等によって汚染されていると、酵母などを取り除くことはできても、生ビールが雑菌等によって汚染される可能性があるため、通常、熱水あるいは熱次亜塩素酸ナトリウム水(温度:約90℃)によって、前記配管中の殺菌が行われている。この熱水あるいは熱次亜塩素酸ナトリウム水は循環させて何度も前記配管中の殺菌を行うが、繰り返し殺菌を行うことによって、熱水あるいは熱次亜塩素酸ナトリウム水自体が汚染され、逆に熱水あるいは熱次亜塩素酸ナトリウム水によって配管内を汚染することが懸念されるため、熱水あるいは熱次亜塩素酸ナトリウム水を濾過し、清浄化した後に、再度配管中の殺菌を行っている。
【0004】
このような熱水あるいは熱次亜塩素酸ナトリウム水を濾過するためのフィルタとして、ポリプロピレン製メルトブロー不織布を多孔筒の周囲に巻回した不織布巻込積層型カートリッジフィルター(特許文献1)が使用されていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平01−297113号公報(特許請求の範囲など)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このカートリッジフィルターは濾過性能の優れるものであったが、熱次亜塩素酸ナトリウム水によって酸化されやすいため、濾過性能を維持できる時間が短いため、頻繁にカートリッジフィルターを交換する必要があった。そのため、ビールを生産する上で、ビールの生産性を高めることができない要因の1つとなっていた。
【0007】
また、前記カートリッジフィルターを熱水を濾過するために使用した場合も同様に、熱水によって劣化しやすく、濾過性能を維持できる時間が短いため、頻繁にカートリッジフィルターを交換する必要があった。
【0008】
本発明は前述の熱次亜塩素酸ナトリウム水のように酸化性の強い液体、又は熱水であっても、濾過性能を長期間にわたって維持することができ、例えば、ビールの生産性を高めることのできる濾過材、及びフィルタを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかる発明は、「次亜塩素酸塩溶液の濾過のために使用する濾過材であり、酸化防止剤として、下記一般式で表されるフェノール系化合物のみ、又は下記一般式で表されるフェノール系化合物とリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤のみを含むプロピレンホモポリマーからなる繊維を含有する繊維シートからなる濾過材」である。
本発明の濾過材は次亜塩素酸塩溶液であっても濾過性能を長期間にわたって維持することができる。そのため、ビールの製造工程における、タンクからパッケージングに至るまでの配管中の殺菌に使用する、熱次亜塩素酸ナトリウム水の濾過のために使用しても、長期間使用することができるため、ビールの生産性を高めることができる。
【0010】
【化2】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、R’は炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは2、3又は4を表す。)」である。このような特定の一般式をもつフェノール系化合物を含む繊維は、熱次亜塩素酸ナトリウム水のような酸化性の液体によっても酸化されにくく、また熱水によっても劣化されにくいため、濾過性能を長期間にわたって維持できる濾過材を形成できることを見出したものである。
【0011】
本発明の請求項2にかかる発明は、「前記フェノール系化合物が1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンであることを特徴とする、請求項1記載の濾過材」である。フェノール系化合物が前記化合物であると、特に酸化又は劣化しにくく、濾過性能を長期間にわたって維持できる濾過材である。
【0012】
本発明の請求項3にかかる発明は、「前記フェノール系化合物の含有量が300ppm以上であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の濾過材」である。フェノール系化合物の含有量が300ppm以上であると、特に酸化又は劣化しにくく、濾過性能を長期間にわたって維持できる濾過材である。
【0014】
本発明の請求項4にかかる発明は、「前記繊維シートがメルトブロー不織布であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の濾過材」である。メルトブロー不織布を構成する繊維は繊維径が小さいため、平均孔径の小さい濾過材であることができ、濾過性能の優れる濾過材であることができる。
【0016】
本発明の請求項5にかかる発明は、「次亜塩素酸塩溶液の温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の濾過材」である。本発明の濾過材は温度が80℃以上の次亜塩素酸塩溶液によっても酸化又は劣化しにくく、濾過性能を長期間にわたって維持できるものである。
【0017】
本発明の請求項6にかかる発明は、「請求項1〜請求項5のいずれかに記載の濾過材を用いたフィルタ」である。そのため、酸化又は劣化しにくく、濾過性能を長期間にわたって維持できるフィルタである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、下記一般式で表されるフェノール系化合物を含む繊維は酸化性液体又は熱水に晒されても酸化又は劣化しにくいことを見出し、この繊維を含有する繊維シートからなる濾過材は、濾過性能を長期間にわたって維持できることを見出したものである。
【0019】
【化3】
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、R’は炭素数1〜8のアルキル基を表す。nは2、3又は4を表す。)
【0020】
前記一般式において、Rは炭素数1〜8のアルキル基からなる。前記Rの立体障害が大きい程、より酸化又は劣化しにくいと考えられるため、Rは炭素数3〜8であるのが好ましく、枝分かれしたアルキル基であるのがより好ましい。より具体的には、Rはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、tert−アミル基などを挙げることができ、前記理由により、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、tert−アミル基が好ましく、tert−ブチル基又はtert−アミル基がより好ましい。なお、前記一般式における2つのRは同じアルキル基である必要はなく、異なるアルキル基であっても良い。
【0021】
前記一般式において、R’は炭素数1〜8のアルキル基からなる。より具体的には、R’はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などを挙げることができる。なお、前記一般式における2〜4個のR’は同じアルキル基である必要はなく、異なるアルキル基であっても良い。
【0022】
前記一般式において、nは2、3又は4である。特にnが3であると、フェノール系化合物が対称的な構造をもち、より酸化又は劣化しにくいと考えられるため、nは3であるのが好ましい。
【0023】
本発明において使用できる、より具体的なフェノール系化合物としては、例えば、R’が同じ(A群)1,2,4−トリメチル−3,5,6−トリ(3−メチル−5−イソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,2,5−トリエチル−3,4,6−トリ(3,5−ジ−イソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,2,4−トリプロピル−3,5,6−トリ(3−エチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,2,4−トリオクチル−2,3,5−トリ(3−ヘキシル−5−tert−アミル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;R’の異なる(B群)1,2−ジメチル−5−エチル−3,4,6−トリ(3−アミル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1−メチル−2,4−ジブチル−3,5,6−トリ(3,5−ジ−tert−ヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;nが3で対称構造を有する(C群)1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,3,5−トリエチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−アミル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,3,5−トリブチル−2,4,6−トリ(3−イソプロピル−5−tert−アミル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,3,5−トリプロピル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−オクチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、などを挙げることができ、前述の理由から(C群)のフェノール系化合物が好ましく、特に、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが好適である。
【0024】
本発明で使用するフェノール系化合物は繊維紡糸時又は使用時の熱によって、揮発、溶出或いは分解を生じにくい熱安定性の優れるものであるため、フェノール系化合物の含有量の多い繊維を紡糸することができ、また、含有量の多い状態を維持できるものである。
【0025】
このようなフェノール系化合物の繊維中における含有量は、300ppm以上であるのが好ましい。フェノール系化合物の含有量が300ppm未満であると、含有しているにもかかわらず、酸化性液体又は熱水によって酸化されやすい傾向があるためで、500ppm以上であるのがより好ましく、1000ppm以上であるのが更に好ましい。他方、フェノール系化合物の含有量が5000ppmを超えると、繊維に通常添加する他の添加剤と反応して黄変してしまう可能性があるため、5000ppm以下であるのが好ましく、4800ppm以下であるのがより好ましい。
【0026】
本発明の濾過材を構成できる繊維は、上述のようなフェノール系化合物を含んでいるが、上述のようなフェノール系化合物に加えて、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、熱安定剤など、通常、繊維に含まれている安定剤を含んでいることができる。特に、リン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を含んでいるのが好ましい。このリン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤は特に限定されるものではなく、市販のリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を使用することができる。
【0027】
より具体的には、リン系酸化防止剤として、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)フォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリス(モノ及び/或いはジノニルフェニル)フォスファイトなどを挙げることができ、その繊維中における含有量は100〜4000ppmであるのが好ましく、500〜4000ppmであるのがより好ましい。
【0028】
また、イオウ系酸化防止剤として、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネートなどを挙げることができ、その繊維中における含有量は100〜4000ppmであるのが好ましく、500〜4000ppmであるのがより好ましい。
【0029】
このようなリン系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤の両方を含んでいることができ、両方を含んでいる場合であっても、それぞれの酸化防止剤の含有量が100〜4000ppmであるのが好ましく、500〜4000ppmであるのがより好ましい。
【0030】
本発明の濾過材を構成する繊維はどのような樹脂から構成されていても良いが、物理的及び化学的に安定なポリオレフィン系樹脂から構成されているのが好ましい。より具体的には、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのモノマーからなる単独ポリマー、又はこれらモノマー2種類以上の共重合ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、エチレンホモポリマー、プロピレンホモポリマー、4−メチル−1−ペンテンホモポリマーは耐薬品性に優れ、汎用性にも優れているため、好適に使用できる。
【0031】
また、本発明の濾過材を構成する繊維の平均繊維径は特に限定するものではないが、濾過性能に優れるように0.1〜50μmであるのが好ましく、0.1〜45μmであるのがより好ましく、0.1〜40μmであるのが更に好ましい。また、濾過材構成繊維の繊維長は、1〜110mm程度の短繊維であっても、110mmを超える長繊維であっても良い。
【0032】
本発明の濾過材は前述のような繊維を含有する繊維シートからなるが、繊維シートの形態としては、例えば、不織布、織物、編物、ネット、或はこれらの複合体を挙げることができ、濾過性能の優れる不織布を含んでいるのが好ましい。この不織布の中でも、メルトブロー不織布は繊維径が小さく(平均繊維径:0.1〜20μm程度)、濾過性能に特に優れているため特に好適である。
【0033】
本発明の濾過材は前述のようなフェノール系化合物を含む繊維を含有する繊維シートからなるが、前述のようなフェノール系化合物を含む繊維の含有量が多ければ多い程、酸化性液体又は熱水によって酸化又は劣化しにくい濾過材であるため、フェノール系化合物を含む繊維は濾過材中、50mass%以上含有しているのが好ましく、80mass%以上含有しているのがより好ましく、100mass%がフェノール系化合物を含む繊維からなるのが最も好ましい。
【0034】
本発明の濾過材の目付(1m2あたりの質量)は用途、グレード等によって異なるため、特に限定するものではないが、5〜300g/m2であるのが好ましく、20〜250g/m2であるのがより好ましい。また、濾過材の厚さ(1.96kPa荷重時)は目付、用途、グレード等によって異なるため、特に限定するものではないが、0.01〜8mmであるのが好ましく、0.03〜6mmであるのがより好ましい。更に、見掛密度(=目付/厚さ)も特に限定するものではないが、0.01〜1g/cm3であるのが好ましい。
【0035】
本発明の濾過材の中で特に好適なメルトブロー不織布の場合の目付は、20〜150g/m2であるのが好ましく、30〜100g/m2であるのがより好ましい。また、メルトブロー不織布からなる濾過材の厚さ(1.96kPa荷重時)は0.06〜1.5mmであるのが好ましく、0.1〜1.3mmであるのがより好ましい。更に、メルトブロー不織布からなる濾過材の見掛密度は0.05〜0.6g/cm3であるのが好ましい。
【0036】
本発明の濾過材は上述の通り、酸化性液体によって酸化されにくいものであるため、酸化性液体の濾過のために好適に使用することができる。例えば、オゾン含有水、過酸化水素水、次亜塩素酸塩溶液などの濾過のために好適に使用できる。
【0037】
なお、酸化性液体は温度が高くなればなるほど酸化力は強くなり、濾過材は酸化を受けやすくなるが、本発明の濾過材は温度の高い(80℃以上、更には90℃以上)酸化性液体によっても酸化劣化が生じにくいものである。そのため、ビールの製造工程における、タンクからパッケージングに至るまでの配管中の殺菌に使用する、熱次亜塩素酸ナトリウム水の濾過のために使用しても、長期間使用することができ、ビールの生産性を高めることのできるものである。また、温度が80℃以上の熱水によっても劣化しにくいものであるため、熱水の濾過のために好適に使用することができる。
【0038】
本発明のフィルタは上述の濾過材を用いたものであり、従来と同様の形態であることができる。例えば、(1)シート状の濾過材を枠材に固定した平板状フィルタ、(2)袋状に加工した濾過材を枠材に固定した袋状フィルタ、(3)シート状の濾過材をジグザグ状に襞折り加工し、その状態を枠材で固定した襞折フィルタ、(4)多孔筒の周囲にシート状の濾過材を巻回したデプス型カートリッジフィルタ、(5)多孔筒の周囲に襞折加工した濾過材を巻回したプリーツ型カートリッジフィルタ、などを挙げることができる。
【0039】
本発明のフィルタは前述の濾過材を使用したもので、酸化性液体又は熱水によって酸化又は劣化しにくいものであるため、酸化性液体又は熱水の濾過のために好適に使用することができる。特に、ビールの製造工程における、タンクからパッケージングに至るまでの配管中の殺菌に使用する、熱次亜塩素酸ナトリウム水の濾過のためのフィルタとして好適に使用できる。
【0040】
本発明の濾過材は、例えば、次のようにして製造できる。
【0041】
まず、前述のようなフェノール系化合物と繊維を構成する樹脂(好ましくはポリオレフィン系樹脂)を用意する。好ましくは、前述のようなリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を用意する。或いは、前述のようなフェノール系化合物を含有する樹脂(好ましくは前述のようなリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤も含有する)を用意する。
【0042】
次いで、これら材料を混練した後に紡糸して、又はフェノール系化合物を含有する樹脂を紡糸して、フェノール系化合物を含有する繊維を形成する。なお、繊維中におけるフェノール系化合物の含有量が300ppm以上となるように、フェノール系化合物の添加量、又は含有量を適宜調節するのが好ましい。
【0043】
次いで、前記フェノール系化合物含有繊維を用いて、常法により繊維シートを形成する。例えば、繊維シートが織物又は編物からなる場合には、前記フェノール系化合物含有繊維を使用して糸を形成した後、織ったり、編むことによって製造する。また、繊維シートが不織布からなる場合には、前記フェノール系化合物含有繊維を使用し、乾式法や湿式法により繊維ウエブを形成した後に、繊維ウエブを結合して不織布を製造する。なお、繊維シートが好適なメルトブロー不織布からなる場合には、常法にしたがって、フェノール系化合物と繊維構成樹脂とを含む樹脂組成物をノズルから押し出した後に、押し出した樹脂組成物からなる繊維に対して熱風を吹き付け、直径を細くするとともにネットなどの捕集体へ搬送し、捕集体で前記直径の細い繊維を捕集し、必要であれば繊維同士の結合工程(例えば、融着、圧着など)を実施して、メルトブロー不織布を製造することができる。
【0044】
本発明のフィルタは上述のようにして製造した濾過材を使用し、シート状のまま、或は、袋状又はジグザグ状に加工した後、常法により枠材に固定したり、多孔筒の周囲に巻き付けることにより、(1)シート状の濾過材を枠材に固定した平板状フィルタ、(2)袋状に加工した濾過材を枠材に固定した袋状フィルタ、(3)シート状の濾過材をジグザグ状に襞折り加工し、その状態を枠材で固定した襞折フィルタ、(4)多孔筒の周囲にシート状の濾過材を巻回したデプス型カートリッジフィルタ、(5)多孔筒の周囲に襞折加工した濾過材を巻回したプリーツ型カートリッジフィルタ、などを製造することができる。
【0045】
なお、本発明のフィルタを製造する場合には、フィルタを構成する濾過材以外の部材(例えば、枠材、多孔筒)として、耐酸化性又は耐熱水性の優れる部材を用いるのが好ましく、樹脂から前記材料を構成する場合には、樹脂中に、繊維に含まれているフェノール系化合物と同様のフェノール系化合物を含んでいるのが好ましい。
【0046】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
フェノール系化合物(1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)を含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用意した。この樹脂組成物はフェノール系化合物を3000ppm含有していた。
【0048】
次いで、直径が0.3mmのオリフィスが0.8mmのピッチで配置されたノズルピースを温度270℃に加熱し、1つのオリフィスあたり0.33g/min.の割合で前記樹脂組成物を吐出し、この吐出した樹脂組成物に対して、温度270℃、かつ質量比で樹脂吐出量の200倍量の空気を吹き付けて形成したメルトブロー繊維をコンベア上に集積させて(ノズルピースとコンベアとの距離:49cm)、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。
【0049】
(実施例2)
実施例1の樹脂組成物に替えて、フェノール系化合物(1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)と、リン系酸化防止剤(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト)とを含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。なお、前記樹脂組成物はフェノール系化合物、リン系酸化防止剤ともに3000ppm含有していた。
【0050】
(実施例3)
実施例1の樹脂組成物に替えて、フェノール系化合物(1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)と、リン系酸化防止剤(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト)と、イオウ系酸化防止剤(ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート)とを含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。なお、前記樹脂組成物はフェノール系化合物、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤のいずれも3000ppm含有していた。
【0051】
(比較例1)
実施例1の樹脂組成物に替えて、フェノール系酸化防止剤ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。なお、前記樹脂組成物はフェノール系酸化防止剤を3000ppm含有していた。
【0052】
(比較例2)
実施例1の樹脂組成物に替えて、フェノール系酸化防止剤((カルシウムジエチルビス(((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート)50mass%とポリエチレンワックス50mass%の混合物)を含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。なお、前記樹脂組成物はフェノール系酸化防止剤を3000ppm含有していた。
【0053】
(比較例3)
実施例1の樹脂組成物に替えて、フェノール系酸化防止剤(1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン)を含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。なお、前記樹脂組成物はフェノール系酸化防止剤を3000ppm含有していた。
【0054】
(比較例4)
実施例1の樹脂組成物に替えて、ヒンダードアミン系光安定剤(ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))を含むプロピレンホモポリマーからなる樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして、目付が80g/m2で、厚さが1.1mmで、見掛密度が0.07g/cm3のメルトブロー不織布(メルトブロー繊維の平均繊維径:5.2μm)を製造し、これを濾過材とした。なお、前記樹脂組成物はヒンダードアミン系光安定剤を3000ppm含有していた。
【0055】
(耐酸化性の評価方法)
実施例1〜3及び比較例1〜4の各濾過材の耐酸化性を、以下のようにして調べた。
【0056】
耐圧ステンレス容器(容量:300mL)中に、残留塩素濃度が400mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液200mLを投入した。他方、各濾過材の濡れ性を高め、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が各濾過材の内部へ浸透し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液と各濾過材構成繊維との接触性を高めるために、各濾過材をノニオン系界面活性剤水溶液(濃度:0.2%)に浸漬させた。その後、界面活性剤を含む各濾過材(濾過材のみ(界面活性剤を含まず)の質量:0.5g)を前記耐圧ステンレス容器に投入した後に密封し、温度100℃で20時間、各濾過材を次亜塩素酸ナトリウム水溶液と接触させた。この操作を7回繰り返し行った。なお、操作を繰り返す際には、耐圧ステンレス容器中の次亜塩素酸ナトリウム溶液と新たに調製した次亜塩素酸ナトリウム溶液とを交換した。
【0057】
その後、各濾過材の電子顕微鏡写真を撮影し観察するとともに、赤外吸収スペクトル分析により耐酸化性を評価した。なお、電子顕微鏡写真の観察での判定は、繊維形態を維持しており劣化していない場合を○、亀裂などが生じ、繊維形態を維持できていない場合を×、と評価した。また、赤外吸収スペクトル分析での判定は、酸化劣化によって形成されるカルボニル基に起因するピークが出現していない場合を○、カルボニル基に起因するピークが出現している場合を×、と評価した。これらの結果は表1に示す通りであった。この表1の結果から明らかなように、本発明の特定のフェノール系化合物を含む繊維を含有する繊維シートからなる濾過材は、高温の酸化性液体によっても酸化劣化されない、耐酸化性の優れるものであることが判明した。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
本発明の濾過材は酸化性の液体又は熱水によっても酸化又は劣化しにくく、濾過性能を長期間にわたって維持できるものである。
【0060】
本発明のフィルタは酸化性の液体又は熱水によっても酸化又は劣化しにくく、濾過性能を長期間にわたって維持できるものである。
Claims (6)
- 前記フェノール系化合物が1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンであることを特徴とする、請求項1記載の濾過材。
- 前記フェノール系化合物の含有量が300ppm以上であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の濾過材。
- 前記繊維シートがメルトブロー不織布であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の濾過材。
- 次亜塩素酸塩溶液の温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の濾過材。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の濾過材を用いたフィルタ。
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