JP2019042736A - 多孔性中空糸膜及びその製造方法、並びにろ過方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(a)室温で溶解できる適当な溶剤のないポリエチレン等のポリマーでも製膜が可能になる。
(b)高温で溶解したのち冷却固化させて製膜するので、特に熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、製膜時に結晶化が促進され高強度膜が得られやすい。
(1)
熱可塑性樹脂と、少なくとも第1の有機液体および第2の有機液体を含み且つ該熱可塑性樹脂に対して非溶剤である混合液体と、添加剤とを混合する工程を含み、
前記第1の有機液体が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種であり、
前記第2の有機液体が、前記第1の有機液体と異なり、かつセバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種である
多孔性中空糸膜の製造方法。
(2)
前記熱可塑性樹脂と、前記混合液体と、前記添加剤との混練物を吐出する工程を、さらに含み、
前記混合する工程において、前記熱可塑性樹脂と、前記混合液体と、前記添加剤とを混合して溶融混練することにより、前記混練物を作成する
ことを特徴とする(1)に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
(3)
前記第1の有機液体が、沸点において1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を均一に溶解しない非溶剤である
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
(4)
前記第2の有機液体が、沸点以下において1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を均一に溶解する溶剤である
ことを特徴とする(1)から(3)のいずれか1つに記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
(5)
前記混合液体が、該混合液体の沸点において1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を溶解しない
ことを特徴とする(1)から(4)のいずれか1つに記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
(6)
前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデンである
ことを特徴とする(1)から(5)のいずれか1つに記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
(7)
前記添加剤が、シリカ、塩化リチウム、および酸化チタンから選ばれる少なくとも1つである
ことを特徴とする(1)から(6)のいずれか1つに記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
(8)
熱可塑性樹脂と、少なくとも第1の有機液体および第2の有機液体を含且つ該熱可塑性樹脂に対して非溶剤である混合液体と、添加剤とを含んでなり、
前記第1の有機液体が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種であり、
前記第2の有機液体が、前記第1の有機液体と異なり、かつセバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする多孔性中空糸膜。
(9)
前記多孔性中空糸膜は、引張破断伸度が60%以上である
ことを特徴とする(8)に記載の多孔性中空糸膜。
(10)
前記多孔性中空糸膜は、4%NaOH水溶液に10日間浸漬させた後の引張破断伸度が初期値に対して60%以上である
ことを特徴とする(8)または(9)に記載の多孔性中空糸膜。
(11)
(8)から(10)のいずれか1項に記載の多孔性中空糸膜を使用してろ過を行うろ過方法。
上記本発明の多孔性中空糸膜を、以下、一実施形態として説明する。
図1は一実施形態に係る多孔性中空糸膜の外表面を模式的に示したものである。図1に示す多孔性中空糸膜10の外表面を含む内部構造は、球晶構造ではなく、3次元網目構造である。3次元網目構造を取ることにより、引張破断伸度が高くなり、また膜の洗浄剤として多用されるアルカリ(水酸化ナトリウム水溶液など)等に対する耐性が強くなる。
次に、本実施形態に係る多孔性中空糸膜10が有する物性について説明する。
多孔性中空糸膜10の引張破断伸度の初期値は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上、とくに好ましくは120%以上である。引張破断伸度は、後述の実施例における測定方法により測定することができる。
空孔率[%]=100×{(湿潤膜重量[g])−(乾燥膜重量[g])}/(膜体積[cm3])
多孔性中空糸膜10による処理対象液は、例えば、懸濁水と工程プロセス液である。多孔性中空糸膜10は、懸濁水をろ過する工程を備える浄水方法に好適に使用される。
次に、多孔性中空糸膜10の製造方法について説明する。多孔性中空糸膜10の製造方法は、(a)溶融混練物を準備する工程と、(b)溶融混練物を多重構造の紡糸ノズルに供給し、紡糸ノズルから溶融混練物を押し出すことによって中空糸膜を得る工程と、(c)有機液体を中空糸膜から抽出する工程と、(d)添加剤を中空糸膜から抽出する工程とを備える。
本実施形態のろ過方法は、本実施形態の多孔性中空糸膜10を用いて、上記処理対象液のろ過を行うものである。本実施形態の多孔性中空糸膜10を用いることによって、高効率にろ過を行うことができる。
中空糸膜をカミソリで薄くスライスし、100倍拡大鏡にて、外径と内径を測定した。一つのサンプルについて、30mm間隔で60箇所の測定を行った。
HITACHI製電子顕微鏡SU8000シリーズを使用し、加速電圧3kVで膜の表面及び断面の電子顕微鏡(SEM)画像を5000倍で撮影した。断面の電子顕微鏡サンプルは、エタノール中で凍結した膜サンプルを輪切りに割断して得た。次に画像解析ソフトWinroof6.1.3を使って、SEM画像の「ノイズ除去」を数値「6」によって行い、更に単一しきい値による二値化により、「しきい値:105」によって二値化を行った。こうして得た二値化画像における孔の占有面積を求めることにより、膜表面の開口率を求めた。
エタノール浸漬した後、数回純水浸漬を繰り返した約10cm長の湿潤中空糸膜の一端を封止し、他端の中空部内に注射針を挿入し、25℃の環境下にて注射針から0.1MPaの圧力で25℃の純水を中空部内に注入し、外表面から透過してくる純水量を測定し、下記式により純水フラックスを決定し、透水性を評価した。
純水フラックス[L/m2/h]=60×(透過水量[L])/{π×(膜外径[m])×(膜有効長[m])×(測定時間[min])}
引張り破断時の荷重と変位を以下の条件で測定した。
JIS K7161の方法に従い、サンプルには中空糸膜をそのまま用いた。
測定機器:インストロン型引張試験機(島津製作所製AGS-5D)
チャック間距離:5cm
引張り速度:20cm/分
得られた結果から引張破断伸度は、JIS K7161に従って算出した。
懸濁水ろ過時の透水性能保持率は、目詰まり(ファウリング)による透水性能劣化の程度を判断するための1指標である。測定のために、エタノール浸漬した後、数回純水浸漬を繰り返した湿潤中空糸膜を、膜有効長11cmにて外圧方式によりろ過を行った。まず初めに純水を、膜外表面積1m2当たり1日当たり10m3透過するろ過圧力にてろ過を行って透過水を2分間採取し、初期純水透水量とした。次いで、天然の懸濁水である河川表流水(富士川表流水:濁度2.2、TOC濃度0.8ppm)を、初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、懸濁水ろ過時透水量とした。懸濁水ろ過時の透水性能保持率を、下記式で定義した。操作は全て25℃、膜面線速0.5m/秒で行った。
懸濁水ろ過時の透水性能保持率[%]=100×(懸濁水ろ過時透水量[g])/(初期純水透水量[g])
なお、式中の各パラメーターは下記式で算出される。
ろ過圧力={(入圧)+(出圧)}/2
膜外表面積[m2]=π×(糸外径[m])×(膜有効長[m])
膜面線速[m/s]=4×(循環水量[m3/s])/{π×(チューブ径[m])2−π×(膜外径[m])2}
100%エタノールによりぬらした後に純水に置換することにより湿潤した多孔性中空糸膜を10cmにカットし、20本を500mlの4%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、10日間40℃に保持した。水酸化ナトリウムに浸漬前後の膜の引張破断伸度をn20で測定し、その平均値を算出した。伸度保持率を100×(浸漬後の伸度)/(浸漬前の伸度)で定義し、耐薬品性を評価した。
溶融混練物を2重管構造の紡糸ノズルを用いて押し出し、実施例1の多孔性中空糸膜を得た。熱可塑性樹脂としてPVDF樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Solef 6010)40質量%、添加剤として微粉シリカ(日本アエロジル社製 R972)23質量%、第1の有機液体としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(東京化成工業社製 DOA,沸点335℃)32質量%、および第2の有機液体としてアセチルクエン酸トリブチル(東京化成工業社製 ATBC,沸点343℃)5質量%を用いて溶融混練物を調製した。溶融混練物の温度は、200℃〜250程度であった。
第2の有機液体としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC,沸点343℃)5質量%の代わりにセバシン酸ジブチル(東京化成工業社製 DBS,沸点345℃)5質量%を用いて溶融混練物を調製した以外は、実施例1と同様に多孔性中空糸膜を作製した。
第1の有機液体としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA,沸点335℃)32質量%の代わりにアジピン酸ジイソノニル(東京化成工業社製 DINA,沸点250℃以上)32質量%を用いて溶融混練物を調製した以外は、実施例1と同様に多孔性中空糸膜を作製した。
第1の有機液体を混合せずに溶融混練物を調製したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の中空糸膜を得た。表1に、得られた比較例1の多孔性中空糸膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。比較例1の多孔性中空糸膜の膜構造は、図2に示すような球晶構造を示した。
一方、非溶剤を含まない比較例1は、細孔構造が球晶構造であり、開孔性、耐薬品性、および機械的強度に劣ることがわかる。
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂と、少なくとも第1の有機液体および第2の有機液体を含み且つ該熱可塑性樹脂に対して非溶剤である混合液体と、添加剤とを混合する工程を含み、
前記第1の有機液体が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種であり、
前記第2の有機液体が、前記第1の有機液体と異なり、かつセバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂と、前記混合液体と、前記添加剤との混練物を吐出する工程を、さらに含み、
前記混合する工程において、前記熱可塑性樹脂と、前記混合液体と、前記添加剤とを混合して溶融混練することにより、前記混練物を作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記第1の有機液体が、沸点において1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を均一に溶解しない非溶剤である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記第2の有機液体が、沸点以下において1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を均一に溶解する溶剤である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記混合液体が、該混合液体の沸点において1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を溶解しない
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂が、ポリフッ化ビニリデンである
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記添加剤が、シリカ、塩化リチウム、および酸化チタンから選ばれる少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の多孔性中空糸膜の製造方法。 - 熱可塑性樹脂と、少なくとも第1の有機液体および第2の有機液体を含み且つ該熱可塑性樹脂に対して非溶剤である混合液体と、添加剤とを含んでなり、
前記第1の有機液体が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種であり、
前記第2の有機液体が、前記第1の有機液体と異なり、かつセバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種である
ことを特徴とする多孔性中空糸膜。 - 前記多孔性中空糸膜は、引張破断伸度が60%以上である
ことを特徴とする請求項8に記載の多孔性中空糸膜。 - 前記多孔性中空糸膜は、4%NaOH水溶液に10日間浸漬させた後の引張破断伸度が初期値に対して60%以上である
ことを特徴とする請求項8または9に記載の多孔性中空糸膜。 - 請求項8から10のいずれか1項に記載の多孔性中空糸膜を使用してろ過を行うろ過方法。
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