JP6920833B2 - 多孔性中空糸膜及びその製造方法 - Google Patents

多孔性中空糸膜及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、多孔性中空糸膜及びその製造方法に関する。
上水処理および下水処理などのように、被処理液体の除濁操作に中空糸膜を用いた膜ろ過法が普及しつつある。膜ろ過に用いられる中空糸膜の製造方法として熱誘起相分離法が知られている。
熱誘起相分離法では熱可塑性樹脂と有機液体を用いる。有機液体として、熱可塑性樹脂を室温では溶解しないが、高温では溶解する溶剤、すなわち潜在的溶剤(貧溶剤)を用いる熱誘起相分離法は、熱可塑性樹脂と有機液体を高温で混練し、熱可塑性樹脂を有機液体に溶解させた後、室温まで冷却することで相分離を誘発させ、更に有機液体を除去して多孔体を製造する方法である。この方法は以下の利点を持つ。
(a)室温で溶解できる適当な溶剤のないポリエチレン等のポリマーでも製膜が可能になる。
(b)高温で溶解したのち冷却固化させて製膜するので、特に熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、製膜時に結晶化が促進され高強度膜が得られやすい。
上記の利点から、熱誘起相分離法は多孔性膜の製造方法として多用されている。しかしながら、ある種の結晶性樹脂では、膜構造が球晶になりやすく、強度は高いものの伸度が低くもろいため、実用上の耐久性に問題がある。
従来、クエン酸エステルの中から選択される熱可塑性樹脂の貧溶剤を用いて製膜する技術が開示されている(特許文献1参照)。
特開2011−168741号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法で製造した膜も、やはり球晶構造であるいう課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、3次元網目構造を有し、耐薬品性、および機械的強度に優れた多孔性中空糸膜及びその製造方法を提供する。
公知の技術では、多孔性中空糸膜を作製する場合、熱誘起相分離のため、熱可塑性樹脂を含む原材料に貧溶剤を用いるが、本発明者は、鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂にエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を用い、溶液に非溶剤を少なくとも1種混合させることで、耐薬品性、および機械的強度に優れた3次元網目構造の膜を作製することができることを見出し、本発明に至った。
本発明は以下の発明を提供する。
本発明の多孔性中空糸膜(以下、便宜的に第1の多孔性中空糸膜と記載する)は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜であって、
多孔性中空糸膜が、第1の溶剤を含み、
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であり、
多孔性中空糸膜が3次元網目構造を有するものである。
本発明の第1の多孔性中空糸膜は、第1の溶剤と異なる第2の溶剤をさらに含み、
第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の多孔性中空糸膜(以下、便宜的に第2の多孔性中空糸膜と記載する)は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜であって、
多孔性中空糸膜は、第1の溶剤および第2の溶剤を含み、
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であり、
第2の溶剤は、第1の溶剤と異なり、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の第2の多孔性中空糸膜において、第1の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることが好ましい。
本発明の第2の多孔性中空糸膜において、第2の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する溶剤であることが好ましい。
ここで、「第2の溶剤に均一に溶解する」とは、目視で溶液が二層に分かれず、溶液が透明になることを意味する。
第2の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることが、さらに好ましい。
本発明の多孔性中空糸膜(以下、便宜的に第3の多孔性中空糸膜と記載する)は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜であって、
多孔性中空糸膜は、第1の溶剤を含み、
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤である。
本発明の第3の多孔性中空糸膜は、第1の溶剤と異なる第2の溶剤を含んでもよく、
第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることが好ましい。
本発明の多孔性中空糸膜は無機物を含んでもよい。
無機物は、シリカ、塩化リチウム、および酸化チタンから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の多孔性中空糸膜の製造方法は、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜の製造方法であって、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を、少なくとも第1の溶剤と第2の溶剤とを含む溶媒に溶解する工程と、
溶解したエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む溶液を相分離する工程と、を有し、
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であり、
第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する溶剤である。
本発明の多孔中空糸膜の製造方法において、第2の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることが好ましい。
相分離する工程は、液−液相分離であることが好ましい。
本発明によれば、膜構造が3次元網目構造を形成し、開孔性がよく、耐薬品性、および機械的強度が高い多孔性中空糸膜が提供される。
本発明の多孔性中空糸膜の一実施形態の外表面を示す模式図である。 比較例の多孔性中空糸膜の外表面を示す模式図である。
本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<多孔性中空糸膜>
以下、本発明の多孔性中空糸膜について説明する。
図1は、本発明に係る多孔性中空糸膜の外表面を模式的に示したものである。
本発明の多孔性中空糸膜は、熱可塑性樹脂として、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含んでなるものである。図1に示す多孔性中空糸膜10の外表面は、球晶構造ではなく、3次元網目構造である。3次元網目構造を取ることにより、引張破断伸度が高くなり、また膜の洗浄剤として多用されるアルカリ(水酸化ナトリウム水溶液など)等に対する耐性が強くなる。
なお、多孔性中空糸膜10はエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体以外の成分(不純物等)を5質量%程度まで含み得る。例えば、多孔性中空糸膜には製造時に用いる溶剤が含まれ、後述するように、多孔性中空糸膜10には、製造時に溶剤として用いた少なくとも非溶剤(第1の溶剤)を含み、さらに溶剤もしくは貧溶剤(第2の溶剤)を含んでいてもよい。これらの溶剤は、熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)により検出することが可能である。
例えば、本発明の多孔性中空糸膜(第1の多孔性中空糸膜)は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜であって、多孔性中空糸膜は非溶剤として第1の溶剤を含み、第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であり、多孔性中空糸膜が3次元網目構造を有すものである。
炭素数6以上30以下の脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
また、エポキシ化植物油としては、エポキシ大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
また、第1の多孔性中空糸膜は、第1の溶剤と異なる第2の溶剤をさらに含んでもよい。第2の溶剤としては、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の多孔性中空糸膜(第2の多孔性中空糸膜)は、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜であって、
多孔性中空糸膜は、第1の溶剤および第2の溶剤を含み、
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であり、
第2の溶剤は、第1の溶剤と異なり、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種である。
第1の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることが好ましい。
第2の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する溶剤であることが好ましい。
第2の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることが、さらに好ましい。
本発明における非溶剤、溶剤、および貧溶剤の判定方法については、後述する多孔性中空糸膜の製造方法において説明する。
本発明の多孔性中空糸膜(第3の多孔性中空糸膜)は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜であって、
多孔性中空糸膜は、第1の溶剤を含み、
第1の溶剤が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤である。
またさらに、第3の多孔性中空糸膜は、第1の溶剤と異なる第2の溶剤を含んでもよい。第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることが好ましい。
(多孔性中空糸膜の物性)
次に、本発明多孔性中空糸膜が有する物性について説明する。
多孔性中空糸膜の引張破断伸度の初期値は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上、特に好ましくは120%以上である。引張破断伸度は後述の実施例における測定方法により測定することができる。
アルカリ耐性は、アルカリ浸漬前後の破断伸度によって測定することができ、4%NaOH水溶液に10日間浸漬させた後の引張破断伸度が初期値に対して60%以上保持していることが好ましい。より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。
実用上の観点から、多孔性中空糸膜10の圧縮強度は0.2MPa以上であり、好ましくは0.3〜1.0MPaであり、更に好ましくは0.4〜1.0MPaである。
多孔性中空糸膜10の表面の開口率(表面開口率)は、20〜60%であり、好ましくは25〜50%であり、更に好ましくは25〜45%である。処理対象液と接触する側の表面の開口率が20%以上である膜をろ過に用いることにより、目詰まりによる透水性能劣化も膜表面擦過による透水性能劣化もともに小さくし、ろ過安定性を高めることができる。しかし、開口率が高くても孔径が大きすぎては、求める分離性能を発揮できないおそれがある。そのため、外表面における細孔径は、1,000nm以下であり、好ましくは10〜800nmであり、より好ましくは100〜700nmである。この細孔径が1,000nm以下であれば処理対象液に含まれる阻止したい成分を阻止でき、10nm以上であれば十分に高い透水性能を確保できる。
多孔性中空糸膜10の厚さは、好ましくは80〜1,000μmであり、より好ましくは100〜300μmである。厚さが80μm以上であると強度が高く、他方、1,000μm以下であると膜抵抗による圧損が小さくなる。
多孔性中空糸膜10の空孔率は、好ましくは50〜80%であり、より好ましくは55〜65%である。この空孔率が50%以上であると透水性能が高く、他方、80%以下であると機械的強度が高い。
多孔性中空糸膜10の形状としては、円環状の単層膜をあげることができるが、分離層と分離層を支持する支持層とで違う孔径を持つ多層膜であってもよい。また、外表面および内表面は、突起を持つなど異形断面構造でもよい。
(処理対象液)
多孔性中空糸膜10による処理対象液は懸濁水と工程プロセス液である。多孔性中空糸膜10は、懸濁水をろ過する工程を備える浄水方法に好適に使用される。
懸濁水とは、天然水、生活排水、及びこれらの処理水などである。天然水としては、河川水、湖沼水、地下水、および海水が例として挙げられる。これら天然水に対し沈降処理、砂ろ過処理、凝集沈殿砂ろ過処理、オゾン処理、および活性炭処理などの処理を施した天然水の処理水も、処理対象の懸濁水に含まれる。生活排水の例は下水である。下水に対してスクリーンろ過や沈降処理を施した下水1次処理水や、生物処理を施した下水2次処理水、更には凝集沈殿砂ろ過、活性炭処理、およびオゾン処理などの処理を施した3次処理(高度処理)水も、処理対象の懸濁水に含まれる。これらの懸濁水にはμmオーダー以下の微細な有機物、無機物及び有機無機混合物から成る濁質(腐植コロイド、有機質コロイド、粘土、および細菌など)が含まれる。
懸濁水(上述の天然水、生活排水、及びこれらの処理水など)の水質は、一般に、代表的な水質指標である濁度及び有機物濃度の単独又は組み合わせにより表現できる。濁度(瞬時の濁度ではなく平均濁度)で水質を区分すると、大きくは、濁度1未満の低濁水、濁度1以上10未満の中濁水、濁度10以上50未満の高濁水、濁度50以上の超高濁水などに区分できる。また、有機物濃度(全有機炭素濃度(Total Organic Carbon(TOC)):mg/L)(これも瞬時の値ではなく平均値)で水質を区分すると、大きくは、1未満の低TOC水、1以上4未満の中TOC水、4以上8未満の高TOC水、8以上の超高TOC水などに区分できる。基本的には、濁度又はTOCの高い水ほどろ過膜を目詰まりさせやすいため、濁度又はTOCの高い水ほど多孔性中空糸膜10を使用する効果が大きくなる。
工程プロセス液とは、食品、医薬品、および半導体製造などで有価物と非有価物とを分離するときの被分離液のことを指す。食品製造では、例えば、日本酒およびワインなどの酒類と酵母とを分離する場合などに、多孔性中空糸膜10が使用される。医薬品の製造では、例えば、タンパク質の精製する際の除菌などに、多孔性中空糸膜10が使用される。半導体製造では、例えば、研磨廃水から研磨剤と水との分離などに、多孔性中空糸膜10が使用される。
<多孔性中空糸膜10の製造方法>
次に、多孔性中空糸膜10の製造方法について説明する。多孔性中空糸膜の製造方法は、(a)溶融混練物を準備する工程と、(b)溶融混練物を多重構造の紡糸ノズルに供給し、紡糸ノズルから溶融混練物を押し出すことによって中空糸膜を得る工程と、(c)可塑剤を中空糸膜から抽出する工程とを備える。溶融混練物が添加剤を含む場合には、多孔性中空糸膜10の製造方法は、工程(c)の後に、(d)添加剤を中空糸膜から抽出する工程を備える。
溶融混練物の熱可塑性樹脂の濃度は好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜45質量%であり、更に好ましくは30〜45質量%である。この値が20質量%以上であると機械的強度が高く、他方、60質量%以下であると透水性能が良好である。溶融混練物は添加剤を含んでもよい。
溶融混練物は、熱可塑性樹脂及び溶剤の二成分からなるものであってもよく、熱可塑性樹脂、添加剤及び溶剤の三成分からなるものであってもよい。溶剤は、後述するように、少なくとも非溶剤を含む。
工程(c)で使用する抽出剤には、塩化メチレンや各種アルコールなど熱可塑性樹脂は溶けないが可塑剤と親和性が高い液体を使用することが好ましい。
なお、添加剤を含まない溶融混練物を使用する場合、工程(c)を経て得られる中空糸膜を多孔性中空糸膜10として使用してもよい。添加剤を含む溶融混練物を使用して多孔性中空糸膜10を製造する場合、本発明に係る製造方法は工程(c)後に、中空糸膜から(d)添加剤を抽出除去して多孔性中空糸膜10を得る工程を更に備えることが好ましい。工程(d)における抽出剤には、湯あるいは、酸やアルカリなど使用した添加剤を溶解できるが熱可塑性樹脂は溶解しない液体を使用することが好ましい。
添加剤に無機物を使用してもよい。無機物は無機微粉が好ましい。溶融混練物に含まれる無機微粉の一次粒径は好ましくは50nm以下であり、より好ましくは5nm以上30nm未満である。無機微粉の具体例としては、シリカ、微粉シリカ、酸化チタン、塩化リチウム、塩化カルシウム、有機クレイ等が挙げられ、これらのうち、コストの観点から微粉シリカが好ましい。上述の「無機微粉の一次粒径」は電子顕微鏡写真の解析から求めた値を意味する。すなわち、まず無機微粉の一群をASTM D3849の方法によって前処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡写真に写された3000〜5000個の粒子直径を測定し、これらの値を算術平均することで無機微粉の一次粒径を算出する。
多孔性中空糸膜内の無機微粉は、蛍光X線等により存在する元素を同定することで、その無機微粉の材料を判断することができる。
添加剤に有機物を使用する場合には、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどの親水性高分子を使用すると中空糸膜に親水性を付与することができる。また、グリセリン、エチレングリコールなど粘度の高い添加剤を使用すると溶融混練物の粘度をコントロールすることができる。
次に、多孔性中空糸膜の製造方法における(a)溶融混練物を準備する工程の詳細、すなわち、本発明の製造方法について説明する。
本発明の多孔性中空糸膜の製造方法は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜の製造方法であって、
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を、少なくとも第1の溶剤と第2の溶剤とを含む溶媒に溶解する工程と、
溶解したエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む溶液を相分離する工程と、を有し、
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であり、
第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する溶剤である。
第2の溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であってもよい。
本発明の多孔性中空糸膜の製造方法は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体の非溶剤を原材料に用いるものである。このように膜の原材料に非溶剤を用いると、3次元網目構造を持つ多孔性中空糸膜が得られる。その作用機序は必ずしも明らかではないが、非溶剤を混合させて、より溶解性を低くした溶剤を用いた方がポリマーの結晶化が適度に阻害され、3次元網目構造になりやすいと考えられる。例えば、非溶剤、貧溶剤、および溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる。より好ましくは、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種である。
エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を常温で溶解させることができるものを溶剤、常温では溶解できないが高温にして溶解させることができる溶剤をそのエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体の貧溶剤、高温にしても溶解させることができない溶剤を非溶剤と呼ぶが、本発明においては、貧溶剤および非溶剤は次のようにして判定することができる。
非溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第1の溶剤に均一に溶解しないものである。
また、溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解する溶剤である。
また、貧溶剤は、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃ではエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が第2の溶剤に均一に溶解するものである。
溶剤、貧溶剤、および非溶剤のいずであるかの判定は、具体的には、試験管に2g程度のエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と8g程度の溶剤を入れ、試験管用ブロックヒーターにて10℃刻み程度でその溶剤の沸点まで加温し、スパチュラなどで試験管内を混合し、上記のような温度範囲における溶解性を判断する。
なお、上記エステルの具体例とその沸点は以下の通りである。アセチルクエン酸トリブチルの沸点は343℃であり、セバシン酸ジブチルは345℃であり、アジピン酸ジブチルは305℃であり、アジピン酸ジイソブチルは293℃であり、アジピン酸ビス2−エチルヘキシルは335℃であり、アジピン酸ジイソノニルは250℃以上であり、アジピン酸ジエチルは251℃であり、クエン酸トリエチルは294℃であり、トリフェニル亜リン酸は360℃である。
例えば、溶剤にアジピン酸ジエチルを用いると、200℃程度でエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体は均一に混ざり合い溶解する。一方、溶剤にアジピン酸ビス2−エチルヘキシルを用いると溶解しない。
本発明の多孔性中空糸膜を用いて上記処理対象液のろ過を行ことによって、高効率にろ過を行うことができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
溶融混練物を2重管構造の紡糸ノズルを用いて押し出し、実施例1の多孔性中空糸膜を得た。熱可塑性樹脂としてエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂(旭硝子社製、TL−081)40質量%、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%、溶剤としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA,沸点335℃)32.9質量%およびアジピン酸ジイソブチル(DIBA,沸点293℃)4.1質量%を用いて溶融混練物を調製した。
押し出した中空糸状成型物は、120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔性中空糸膜を作製した。5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。得られた2層中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させて溶剤を抽出除去した。続いて、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換した。続いて、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去した。なお、多孔性中空糸膜は、膜構造は、図1に示すような3次元網目構造を示した。
[実施例2]
溶剤としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA,沸点335℃)32.9質量%の代わりにアジピン酸ジイソノニル(DINA,沸点250℃以上)32.9質量%を用いて溶融混練物を調製した以外は、実施例1と同様に多孔性中空糸膜を作製した。
多孔性中空糸膜は、膜構造は、図1に示すような3次元網目構造を示した。
[実施例3]
溶剤としてアジピン酸ジイソブチル(DIBA,沸点293℃)4.1質量%の代わりにアジピン酸ジエチル(DEA,沸点251℃)4.1質量%を用いて溶融混練物を調製した以外は、実施例1と同様に多孔性中空糸膜を作製した。
多孔性中空糸膜は、膜構造は、図1に示すような3次元網目構造を示した。
[比較例1]
溶剤をDIBAのみとし、微粉シリカを除いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の多孔性中空糸膜を得た。膜構造は、図2に示すような球晶構造を示した。
実施例および比較例における各物性値は以下の方法で各々求めた。
(1)膜の外径、内径
中空糸膜をカミソリで薄くスライスし、100倍拡大鏡にて、外径と内径を測定した。一つのサンプルについて、30mm間隔で60箇所の測定を行った。この時に標準偏差と平均値を算出し、(標準偏差)/(平均値)を変動係数とした。
(2)表面開口率、細孔径、細孔構造観察
HITACHI製電子顕微鏡SU8000シリーズを使用し、加速電圧3kVで膜の表面及び断面の電子顕微鏡(SEM)画像を5000倍で撮影した。断面の電子顕微鏡サンプルは、エタノール中で凍結した膜サンプルを輪切りに割断して得た。次に画像解析ソフトWinroof6.1.3を使って、SEM画像の「ノイズ除去」を数値「6」によって行い、更に単一しきい値による二値化により、「しきい値:105」によって二値化を行った。こうして得た二値化画像における孔の占有面積を求めることにより、膜表面の開口率を求めた。
孔径は、表面に存在した各孔に対し、孔径の小さい方から順に各孔の孔面積を足していき、その和が、各孔の孔面積の総和の50%に達する孔の孔径で決定した。
膜構造は、5000倍で撮影した膜表面および断面の様子を観察して、球晶がなくポリマー幹が3次元的にネットワーク構造を発現しているものを3次元網目構造と判定した。
(3)透水性
エタノール浸漬した後、数回純水浸漬を繰り返した約10cm長の湿潤中空糸膜の一端を封止し、他端の中空部内に注射針を挿入し、25℃の環境下にて注射針から0.1MPaの圧力で25℃の純水を中空部内に注入し、外表面から透過してくる純水量を測定し、下記式により純水フラックスを決定し、透水性を評価した。
純水フラックス[L/m/h]=60×(透過水量[L])/{π×(膜外径[m])×(膜有効長[m])×(測定時間[min])}
なお、ここで膜有効長とは、注射針が挿入されている部分を除いた、正味の膜長を指す。
(4)引張破断伸度(%)
引張り破断時の荷重と変位を以下の条件で測定した。
JIS K7161の方法に従い、サンプルには中空糸膜をそのまま用いた。
測定機器:インストロン型引張試験機(島津製作所製AGS-5D)
チャック間距離:5cm
引張り速度:20cm/分
得られた結果から引張破断伸度は、JIS K7161に従って算出した。
(5)懸濁水ろ過時の透水性能保持率
目詰まり(ファウリング)による透水性能劣化の程度を判断するための1指標である。エタノール浸漬した後、数回純水浸漬を繰り返した湿潤中空糸膜を、膜有効長11cmにて外圧方式によりろ過を行った。まず初めに純水を、膜外表面積1m当たり1日当たり10m透過するろ過圧力にてろ過を行って透過水を2分間採取し、初期純水透水量とした。次いで、天然の懸濁水である河川表流水(富士川表流水:濁度2.2、TOC濃度0.8ppm)を、初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、懸濁水ろ過時透水量とした。懸濁水ろ過時の透水性能保持率を、下記式で定義した。操作は全て25℃、膜面線速0.5m/秒で行った。
懸濁水ろ過時の透水性能保持率[%]=100×(懸濁水ろ過時透水量[g])/(初期純水透水量[g])
なお、式中の各パラメーターは下記式で算出される。
ろ過圧力={(入圧)+(出圧)}/2
膜外表面積[m]=π×(糸外径[m])×(膜有効長[m])
膜面線速[m/s]=4×(循環水量[m/s])/{π×(チューブ径[m])−π×(膜外径[m])
本測定においては懸濁水のろ過圧力を各膜同一ではなく、初期純水透水性能(懸濁水ろ過開始時点での透水性能でもある)が膜外表面積1m当たり1日当たり10m透過するろ過圧力に設定した。これは、実際の上水処理や下水処理においては、膜は定量ろ過運転(一定時間内に一定のろ過水量が得られるようろ過圧力を調整してろ過運転する方式)で使用されるのが通常であるため、本測定においても中空糸膜1本を用いた測定という範囲内で、定量ろ過運転の条件に極力近い条件での透水性能劣化の比較ができるようにしたためである。
(6)NaOH浸漬後伸度保持率
湿潤した多孔性中空糸膜を10cmにカットし、20本を500mlの4%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、10日間40℃に保持した。水酸化ナトリウム水溶液に浸漬前後の膜の引張破断伸度をn20で測定し、その平均値を算出した。伸度保持率を100×(浸漬後の伸度)/(浸漬前の伸度)で定義し、耐薬品性を評価した。
表1に、得られた実施例および比較例の多孔性中空糸膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。
Figure 0006920833
表1に示すように、実施例1〜3は、熱誘起相分離よる製膜において非溶剤を製膜原液に混合させることで、開孔性がよく、耐薬品性、および機械的強度が高い多孔性中空糸膜が提供されることがわかる。
一方、非溶剤を含まない比較例1は、細孔構造が球晶構造であり、開孔性、耐薬品性、および機械的強度に劣ることがわかる。
本発明によれば、多孔性中空糸膜が非溶剤を含んで製膜されるので、開孔性がよく、耐薬品性、機械的強度が高いエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜が提供される。
10 多孔性中空糸膜

Claims (3)

  1. エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む多孔性中空糸膜の製造方法であって、
    前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を、少なくとも第1の溶剤と第2の溶剤とを含む溶媒に溶解する工程と、
    溶解したエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を含む溶液を相分離する工程と、を有し、
    前記第1の溶剤が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と前記第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、該第1の混合液の温度を前記第1の溶剤の沸点まで上げても、前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が前記第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であり、
    前記第2の溶剤が、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種であって、前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と前記第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、該第2の混合液の温度が25℃より高く前記第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度で前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が前記第2の溶剤に均一に溶解する溶剤である多孔性中空糸膜の製造方法。
  2. 前記第2の溶剤が、前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体と前記第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、該第2の混合液の温度が25℃では前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が前記第2の溶剤に均一に溶解せず、前記第2の混合液の温度が100℃より高く前記第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度で前記エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体が前記第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤である請求項記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
  3. 前記相分離する工程は、液−液相分離である請求項または記載の多孔性中空糸膜の製造方法。
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