JP6839766B2 - 多孔質膜を用いたろ過方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質膜を用いたろ過方法に関する。
懸濁水である河川水、湖沼水、地下水等の天然水源から飲料水や工業用水を得るための上水処理や、下水等の生活排水を処理して再生水を製造、放流可能な清澄水にするための下水処理には、懸濁物を除去するための固液分離操作(除濁操作)が必須である。必要な除濁操作の主なものは、上水処理に関しては懸濁水である天然水源水由来の濁質物(粘土、コロイド、細菌等)の除去であり、下水処理に関しては下水中の懸濁物や、活性汚泥等により生物処理(2次処理)した処理水中の懸濁物(汚泥等)の除去である。
従来、これらの除濁操作は、主に、沈殿法や、砂ろ過法、凝集沈殿砂ろ過法により行われてきたが、近年は膜ろ過法が普及しつつある。膜ろ過法の利点は、(1)得られる水質の除濁レベルが高くかつ安定している(得られる水の安全性が高い)、(2)ろ過装置の設置スペースが小さくてすむ、(3)自動運転が容易、等である。例えば上水処理では、凝集沈殿砂ろ過法の代替として、又は凝集沈殿砂ろ過の後段に設置して凝集沈殿砂ろ過された処理水の水質をさらに向上するための手段等に膜ろ過法が用いられている。下水処理に関しても、下水2次処理水からの汚泥の分離等に膜ろ過法の検討が進んでいる。これら膜ろ過による除濁操作には、主として中空糸状の限外ろ過膜や精密ろ過膜(孔径数nmから数百nmの範囲)が用いられる。膜ろ過法による除濁は、上述のように従来の沈殿法や砂ろ過法にはない利点が多くあるために、従来法の代替技術や補完技術として上水処理や下水処理への普及が進んでおり、膜の中でも樹脂を使用した有機膜が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−168741号公報
しかしながら、同じ樹脂素材でろ過膜を作製しても、製膜方法が異なると膜を構成する素材のミクロ構造に差異が現れる。通常、ろ過運転には必ず洗浄工程が伴うが、同じ膜材質の膜を使っても、洗浄薬剤による膜へのダメージが異なる場合があった。
本発明は、上記事情に鑑み、薬剤を使用した洗浄工程を含むろ過方法であって、耐薬品性能が優れたろ過方法を提供することを目的とする。
ろ過運転を継続すると必ず膜は目詰まりを起こし、薬剤を使った洗浄工程を伴い膜の強度劣化を誘発する。本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意努力した結果、膜の細孔の連通性の良い膜を使うことで膜の劣化を最小限に抑えることができることを見出し、上記課題を解決するに至った。
本発明では、内表面から外表面へ細孔の連通性が良好な膜を選定して、ろ過運転を行うことにより、高効率で膜ろ過操作を遂行できることを見出した。
本発明の第1のろ過方法は、樹脂から形成される多孔質膜に被ろ過液を通過させてろ過するろ過工程と、ろ過工程の後、多孔質膜の膜内部を洗浄する洗浄工程とを有するろ過方法であって、膜内部の断面における全ての視野において、各視野に含まれる1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合が、各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して70%以上である多孔質膜を用い、洗浄工程が、1%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を多孔質膜に通過させる工程を含む。
本発明の第2のろ過方法は、樹脂から形成される多孔質膜に被ろ過液を通過させてろ過するろ過工程と、ろ過工程の後、多孔質膜の膜内部を洗浄する洗浄工程とを有するろ過方法であって、膜内部の断面における全ての視野において、各視野に含まれる10μm以上の面積を有する樹脂部の面積割合が、各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して15%以下である多孔質膜を用い、洗浄工程が、1%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を多孔質膜に通過させる工程を含む。
本発明の第3のろ過方法は、樹脂から形成される多孔質膜に被ろ過液を通過させてろ過するろ過工程と、ろ過工程の後、多孔質膜の膜内部を洗浄する洗浄工程とを有するろ過方法であって、膜内部の断面における全ての視野において、各視野に含まれる1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合が、各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、全ての視野において、各視野に含まれる10μm以上の面積を有する樹脂部の面積割合が、各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して15%以下である多孔質膜を用い、洗浄工程が、1%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を多孔質膜に通過させる工程を含む。
また、上記本発明のろ過方法において、洗浄工程において使用する水酸化ナトリウムの水溶液の濃度は、2%以上とすることができる。
また、上記本発明のろ過方法において、洗浄工程において使用する水酸化ナトリウムの水溶液の濃度は、4%以上とすることができる。
また、上記本発明のろ過方法において、洗浄工程前における多孔質膜の伸度E0と、洗浄工程後における多孔質膜の伸度E1との関係は、E1/E0×100≧80%であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、ろ過工程開始時の多孔質膜のフラックスL0と、洗浄工程後の多孔質膜のフラックスL1との関係は、105%≧L1/L0×100≧95%であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、洗浄工程前における多孔質膜の伸度E0と、洗浄工程をX(Xは100以下の自然数)回繰り返した後における多孔質膜の伸度EXとの関係は、EX/E0×100≧70%であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、多孔質膜の外表面の平均孔径は、100nm以下であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、多孔質膜は、中空糸膜であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、多孔質膜は、熱可塑性樹脂から形成されることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、熱可塑性樹脂は、フッ素樹脂であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、フッ素樹脂は、フッ化ビニリデン、クロロトリ
フルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、エチレン、及びヘキサフルオロプロピレンからなる群から選ばれるポリマー又は該ポリマーの混合物であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、ろ過工程開始時の多孔質膜のフラックスL0と、洗浄工程をX(Xは100以下の自然数)回繰り返した後における多孔質膜のフラックスLXとの関係は、110%≧LX/L0×100≧90%であることが好ましい。
また、上記本発明のろ過方法において、前記洗浄工程の後に、前記多孔質膜の膜内部に残存する洗剤を排出するリンス工程をさらに含み、
前記洗浄工程は、前記多孔質膜の初期フラックスL0に対し、フラックスが50%以下となった際に、4%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を含む薬液を前記多孔質膜に通過させる工程であり、
前記リンス工程は、膜面積1mあたり10L以下のリンス水を使用する工程であり、
前記リンス工程後、ろ過工程を再開した際の、ろ過水のpHが9以下であり、
前記ろ過工程、前記洗浄工程、前記リンス工程を、20回繰り返した後のフラックスL20が、前記多孔質膜の初期フラックスL0に対し、以下の式:
105%≧L‘20/L0×100≧80%
で表される関係を有することが好ましい。
本発明の第1から第3のろ過方法によれば、断面ミクロ構造の細孔の連通性が良いろ過膜を使用することができ、これにより耐薬品性能を向上させることができ、かつ、ろ過効率を向上させることができる。
本発明のろ過方法の一実施形態で用いられる多孔性中空糸膜の断面図の一例を示す図である。 実施例1の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 実施例2の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 実施例3の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。 比較例2の多孔性中空糸膜の断面における樹脂部の面積分布の測定結果を示すヒストグラムである。
本発明のろ過方法の一実施形態について詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<ろ過方法>
本実施形態のろ過方法は、樹脂から形成される多孔性中空糸膜(本発明の多孔質膜に相当する)に被ろ過液を通過させてろ過するろ過工程と、そのろ過工程の後、多孔性中空糸膜の膜内部を洗浄する洗浄工程とを有する。
そして、本実施形態のろ過方法においては、膜内部の断面における全ての視野において、その各視野に含まれる1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合が、上記各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して70%以上である多孔性中空糸膜を用いる。ここで、多孔性中空糸膜の膜内部とは、多数の孔が形成される肉厚部のことを意味する。
尚、本実施形態においては、多孔質膜として、中空糸状の多孔性中空糸膜を用いるようにしたが、これに限定されるものではなく、平膜または管状膜などを用いるようにしてもよい。但し、多孔性中空糸膜を用いることがより好ましく、多孔性中空糸膜を用いることによって、モジュール単位体積当たりの膜面積を大きくすることができる。
本実施形態のろ過方法において用いられる多孔性中空糸膜の材料および製造方法については、後で詳述する。
本実施形態のろ過方法におけるろ過工程としては、多孔性中空糸膜の中空部に被ろ過液を流入し、多孔性中空糸膜の肉厚部を通過して多孔性中空糸膜の外表面から滲み出した液体をろ液として取り出す、いわゆる内圧式のろ過方法を用いるようにしてもよいし、多孔性中空糸膜の外表面から被ろ過液を流入し、多孔性中空糸膜の内表面から滲み出したろ液を、中空部を介して取り出す、いわゆる外圧式のろ過方法を用いるようにしてもよく、特定のろ過工程に限定されない。
本明細書中において、「膜内部」とは、多数の細孔が形成されている膜厚(肉厚)部を指す。
また、本実施形態のろ過方法における洗浄工程は、1重量%以上の水酸化ナトリウムを含む水溶液を多孔性中空糸膜に通過させる工程を含む。洗浄工程としては、例えば、ろ過方向とは逆方向に、すなわち、ろ液側から被ろ液側に上記水溶液を流入して噴出させることによって多孔性中空糸膜のろ過面の付着物を除去する逆圧水洗浄やエアによって多孔性中空糸膜を揺らして多孔性中空糸膜に付着した濁質を落とすエアスクラビングなどを用いることができる。尚、洗浄工程において使用する水酸化ナトリウムの水溶液の濃度は、2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは4重量%以上である。このような濃度の水酸化ナトリウムの水溶液を用いることによって、高い洗浄効果を得ることができる。
本実施形態のろ過方法のろ過工程における被ろ過液としては、特に制限はなく、海水と懸濁水と工程プロセス液とがある。上述した本実施形態の多孔性中空糸膜は、懸濁水をろ過する工程を含む浄水方法に好適に使用される。
懸濁水とは、天然水、生活排水、及びこれらの処理水などである。天然水としては、河川水、湖沼水、地下水、および海水が例として挙げられる。これら天然水に対し沈降処理、砂ろ過処理、凝集沈殿砂ろ過処理、オゾン処理、および活性炭処理などの処理を施した天然水の処理水も、処理対象の懸濁水に含まれる。生活排水の例は下水である。下水に対してスクリーンろ過や沈降処理を施した下水1次処理水や、生物処理を施した下水2次処理水、更には凝集沈殿砂ろ過、活性炭処理、およびオゾン処理などの処理を施した3次処理(高度処理)水も、処理対象の懸濁水に含まれる。これらの懸濁水にはμmオーダー以下の微細な有機物、無機物及び有機無機混合物から成る濁質(腐植コロイド、有機質コロイド、粘土、および細菌など)、細菌・藻類由来の高分子物質が含まれていてもよい。
懸濁水(上述の天然水、生活排水、及びこれらの処理水など)の水質は、一般に、代表的な水質指標である濁度及び有機物濃度の単独又は組み合わせにより表現できる。濁度(瞬時の濁度ではなく平均濁度)で水質を区分すると、大きくは、濁度1未満の低濁水、濁度1以上10未満の中濁水、濁度10以上50未満の高濁水、濁度50以上の超高濁水などに区分できる。また、有機物濃度(全有機炭素濃度(Total Organic Carbon(TOC)):mg/L)(これも瞬時の値ではなく平均値)で水質を区分すると、大きくは、1未満の低TOC水、1以上4未満の中TOC水、4以上8未満の高TOC水、8以上の超高TOC水などに区分できる。基本的には、濁度又はTOCの高い水ほどろ過膜を目詰まりさせやすいため、濁度又はTOCの高い水ほど多孔性中空糸膜を使用する効果が大きくなる。
工程プロセス液とは、食品、医薬品、および半導体製造などで有価物と非有価物とを分離するときの被分離液のことを指す。食品製造では、例えば、日本酒、ワインなどの酒類と酵母とを分離する場合などに、本実施形態の多孔性中空糸膜が使用される。医薬品の製造では、例えば、タンパク質の精製する際の除菌などに、本実施形態の多孔性中空糸膜が使用される。半導体製造では、例えば、研磨廃水から研磨剤と水との分離などに、本実施形態の多孔性中空糸膜が使用される。
<多孔性中空糸膜>
本実施形態のろ過方法に用いる多孔性中空糸膜は、多孔性中空糸膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、その内側表面を含む視野、多孔性中空糸膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、その樹脂部の総面積に対して70%以上であるもの;同各領域において、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、樹脂部の総面積に対して15%以下であるもの;同各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、樹脂部の総面積に対して70
%以上であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であるもの;のいずれかである。好ましくは、同各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、樹脂部の総面積に対して70%以上であり、1μm超10μm未満の面積を有する樹脂部の面積の合計が、樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の
合計が、樹脂部の総面積に対して15%以下であるものである。
図1は、本実施形態のろ過方法において用いられる多孔性中空糸膜の断面における1つの視野の電子顕微鏡写真を二値化処理した画像である。図1に示す断面図は、多孔性中空糸膜の長さ方向に直交する方向の断面における1つの視野の断面図であり、かつ多孔性中空糸膜の上述した4視野のうち内表面に最も近い視野を撮影して得たSEM画像を二値化処理した画像である。
尚、前記各領域内では、多孔性中空糸膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面と、該内側表面に平行する断面との間では、樹脂部の存在分布の差異、すなわち、孔の連通性の異方性は事実上無視することができる。
本明細書中、「樹脂部」とは、多孔質膜において多数の孔を形成する、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分である。図1に黒色で示す部分が樹脂部であり、白色の部分が孔である。
多孔性中空糸膜内部には、膜の内側から外側まで屈曲しながら連通している連通孔が形成されており、多孔性中空糸膜の内側表面に直交する膜厚方向における膜断面のSEM画像における、その内側表面を含む視野、その膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域において、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であれば、孔の連通性が高い(すなわち、膜内部の連通孔の存在割合が高い)ものとなり、被処理液のフラックス(透水量、透水性)、洗浄後の透水量保持率が高く、引張破断伸度で指標される薬液洗浄後の膜へのダメージも軽減される。しかしながら、樹脂部の総面積に対する1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計の割合が高すぎると、多孔質膜において多数の孔を形成する、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分が細すぎるものとなるため、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して70%以上であることを維持しつつ、1μm超の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上30%以下で存在するものが好ましく、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下で存在するものがより好ましく、1μm超10μm未満の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ、10μm以上の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上15%以下で存在するものがさらに好ましい。1μm超の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上30%以下で存在すれば、樹脂から構成される3次元網目構造の樹状骨格部分が細すぎないため、多孔質膜の強度、引張破断伸度を適切に維持することができる。
図2A〜図2Dは、図1に示すような多孔性中空糸膜の各視野の断面図を画像解析し、樹脂部の面積分布を測定した結果を示すヒストグラムである。図2Aは、後述する実施例1の測定結果を示しており、図2Bは、実施例2の測定結果を示しており、図2Cは、実施例3の測定結果を示しており、そして図2Dは、比較例2の測定結果を示している。
図1に示す多孔性中空糸膜の断面図においては、樹脂部が粒状に表れている。図2A〜図2Dは、この粒状の樹脂部のそれぞれの面積を計測し、その粒状の樹脂部の面積毎について、断面図内の全樹脂部の総面積に対する面積割合をヒストグラムとして示したものである。尚、図2A〜図2Dにおける丸1〜丸4は、多孔性中空糸膜の内表面から外表面に向かって等間隔で順次撮影された上述した4視野のそれぞれの番号を示している。具体的には、例えば、実施例1の丸1は、実施例1の多孔性中空糸膜の最も内表面側の視野を撮影した断面図のヒストグラムであることを意味し、実施例1の丸4は、実施例1の多孔性中空糸膜の最も外表面側の視野を撮影した断面図のヒストグラムであることを意味する。
尚、多孔性中空糸膜の各視野の断面図における樹脂部の面積分布の測定方法については、後で説明する。
多孔性中空糸膜の表面の開口率(表面開口率)は、25〜60%であり、好ましくは25〜50%であり、更に好ましくは25〜45%である。処理対象液と接触する側の表面の開口率が25%以上である膜をろ過に用いることにより、目詰まりによる透水性能劣化も膜表面擦過による透水性能劣化もともに小さくし、ろ過安定性を高めることができる。しかしながら、開口率が高くても孔径が大きすぎては、求める分離性能を発揮できないおそれがある。そのため、外表面における細孔の平均孔径は、10nm〜700nmであることが好ましく、20nm〜600nmであることがより好ましい。平均孔径が30nm〜400nmであれば、分離性能は十分であり、孔の連通性も確保できる。表面開口率および平均孔径の測定方法については、それぞれ後述する。
多孔性中空糸膜の厚さは、好ましくは80〜1,000μmであり、より好ましくは100〜300μmである。厚さが80μm以上であることにより、強度が高くなり、他方、1000μm以下であることにより、膜抵抗による圧損が小さくなる。
多孔性中空糸膜10の空孔率は、好ましくは50〜80%であり、より好ましくは55〜65%である。この空孔率が50%以上であることにより、透水性能が高く、他方、80%以下であることにより、機械的強度を高くすることができる。
多孔性中空糸膜の形状としては、円環状の単層膜をあげることができるが、分離層と分離層を支持する支持層とで違う孔径を持つ多層膜であってもよい。また、外表面および内表面は、突起を持つなど異形断面構造でもよい。
また、本実施形態のろ過方法に用いられる多孔性中空糸膜は、球晶構造ではなく、3次元網目構造であることが好ましい。3次元網目構造を取ることにより、多孔性中空糸膜の内表面から外表面に亘って形成される細孔の連通性をより良好にすることができる。
<多孔性中空糸膜の素材(材質)>
多孔性中空糸膜を構成する樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂であり、フッ素樹脂がより好ましい。フッ素樹脂としては、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重
合体(ETFE)、エチレン−モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ヘキサフルオロプロピレン樹脂、及びこれら樹脂の混合物からなる群から選ばれるものが挙げられる。
熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、又はオレフィンとハロゲン化オレフィンとの共重合体、又はハロゲン化ポリオレフィン、又はそれらの混合物が挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(ヘキサフルオロプロピレンのドメインを含んでもよい)、またはこれらの混合物を挙げることができる。これらの素材は熱可塑性ゆえに取り扱い性に優れ、且つ強靱であるため、膜素材として優れる。これらの中でもフッ化ビニリデン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、ヘキサフルオロプロピレン樹脂又はこれらの混合物、エチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンのホモポリマー及びコポリマー、あるいは、上記ホモポリマー又はコポリマーの混合物は、機械的強度、化学的強度(耐薬品性)に優れ、且つ、成形性が良好であるために好ましい。より具体的には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合物、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合物、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。
尚、多孔性中空糸膜は熱可塑性樹脂以外の成分(不純物等)を5質量%程度まで含み得る。例えば、多孔性中空糸膜には製造時に用いる溶剤が含まれ、後述するように、多孔性中空糸膜には、製造時に溶剤として用いた第1の溶剤(以下、非溶剤ともいう)、あるいは第2の溶剤(以下、良溶剤若しくは貧溶剤ともいう)又はその両方が含まれる。
これらの溶剤は、熱分解GC−MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)により検出することが可能である。
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
また、第2の溶剤は、第1の溶剤と異なり、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選択される少なくとも1種である。炭素数6以上30以下の脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が挙げられる。また、エポキシ化植物油としては、エポキシ大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
また、第1の溶剤は、熱可塑性樹脂と第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、熱可塑性樹脂が第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることが好ましい。
また、第2の溶剤は、熱可塑性樹脂と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度で熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解する溶剤であることが好ましい。
また、第2の溶剤は、熱可塑性樹脂と第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃では熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度では熱可塑性樹脂が第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることがより好ましい。
また、本実施形態のろ過方法においては、熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデンを用いた多孔性中空糸膜であって、少なくとも第1の溶剤(非溶剤)を含む多孔性中空糸膜を用いることができる。
第1の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であって、ポリフッ化ビニリデンと第1の溶剤との比率が20:80の第1の混合液において、第1の混合液の温度を第1の溶剤の沸点まで上げても、ポリフッ化ビニリデンが第1の溶剤に均一に溶解しない非溶剤であることができる。
また、上記多孔性中空糸膜は、第1の溶剤とは異なる第2の溶剤を含んでもよい。
第2の溶剤は、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、及びエポキシ化植物油からなる群から選択される少なくとも1種であって、ポリフッ化ビニリデンと第2の溶剤との比率が20:80の第2の混合液において、第2の混合液の温度が25℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度でポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解する溶剤であることが好ましい。
第2の溶剤は、第2の混合液の温度が25℃ではポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解せず、第2の混合液の温度が100℃より高く第2の溶剤の沸点以下のいずれかの温度ではポリフッ化ビニリデンが第2の溶剤に均一に溶解する貧溶剤であることがより好ましい。貧溶媒としては、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)が好ましい。
<多孔性中空糸膜の物性>
引張破断伸度の初期値は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上、とくに好ましくは120%以上である。引張破断伸度は後述の実施例における測定方法により測定することができる。
アルカリ耐性は、アルカリ浸漬前後の引張破断伸度の保持率(NaOH浸漬後伸度保持率)によって測定することができ、4重量%NaOH水溶液に10日間浸漬させた後の引張破断伸度(洗浄工程後の多孔性中空糸膜の引張破断伸度E1に相当する)が初期値(洗浄工程前における多孔性中空糸膜の引張破断伸度E0に相当する)に対して80%以上保持していることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、上記初期値E0と、逆圧水洗浄工程などの洗浄工程をX(Xは100以下の自然数)回繰り返した後における多孔性中空糸膜の引張破断伸度EXとの関係は、EX/E0×100≧70%であることが好ましく、より好ましくはEX/E0≧75%、さらに好ましくはEX/E0≧80%である。
実用上の観点から、多孔性中空糸膜の圧縮強度は0.2MPa以上であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0MPa、更に好ましくは0.4〜1.0MPaである。
<多孔性中空糸膜の透水性能>
多孔性中空糸膜としては、ろ過工程開始時の多孔性中空糸膜のフラックスL0と、洗浄工程後の多孔性中空糸膜のフラックスL1との関係は、105%≧L1/L0×100≧95%であることが好ましい。
さらに、ろ過工程開始時の多孔性中空糸膜のフラックスL0と、洗浄工程をX(Xは100以下の自然数)回繰り返した後における多孔性中空糸膜のフラックスLXとの関係は、110%≧LX/L0≧90%であることが好ましい。
さらに、実施形態のろ過方法においては、前記洗浄工程の後に、前記多孔質膜の膜内部に残存する洗剤を排出するリンス工程をさらに含み、
前記洗浄工程は、前記多孔質膜の初期フラックスL0に対し、フラックスが50%以下となった際に、4%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を含む薬液を前記多孔質膜に通過させる工程であり、
前記リンス工程は、膜面積1mあたり10Lのリンス水を使用する工程であり、
前記リンス工程後、ろ過工程を再開した際の、ろ過水のpHが9以下であり、
前記ろ過工程、前記洗浄工程、前記リンス工程を、20回繰り返した後のフラックスL20が、前記多孔質膜の初期フラックスL0に対し、以下の式:
105%≧L20/L0×100≧80%
で表される関係を有することが好ましい。
<多孔性中空糸膜の製造方法>
次に、多孔性中空糸膜の製造方法について説明する。但し、本実施形態のろ過方法に用いられる多孔性中空糸膜の製造方法は、以下の製造方法に限定されないものではない。
本実施形態のろ過方法に用いられる多孔性中空糸膜の製造方法は、(a)溶融混練物を準備する工程と、(b)溶融混練物を多重構造の紡糸ノズルに供給し、紡糸ノズルから溶融混練物を押し出すことによって中空糸膜を得る工程と、(c)可塑剤を中空糸膜から抽出する工程とを備える。溶融混練物が添加剤を含む場合には、多孔性中空糸膜10の製造方法は、工程(c)の後に、(d)添加剤を中空糸膜から抽出する工程を備える。
溶融混練物の熱可塑性樹脂の濃度は好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜45質量%であり、更に好ましくは30〜45質量%である。この値が20質量%以上であることにより、機械的強度を高くすることができ、他方、60質量%以下であることにより、透水性能を高くすることができる。溶融混練物は添加剤を含んでもよい。
溶融混練物は、熱可塑性樹脂及び溶剤の二成分からなるものであってもよく、熱可塑性樹脂、添加剤及び溶剤の三成分からなるものであってもよい。溶剤は、後述するように、少なくとも非溶剤を含む。
工程(c)で使用する抽出剤には、塩化メチレンや各種アルコールなど熱可塑性樹脂は溶けないが可塑剤と親和性が高い液体を使用することが好ましい。
なお、添加剤を含まない溶融混練物を使用する場合、工程(c)を経て得られる中空糸膜を多孔性中空糸膜として使用してもよい。添加剤を含む溶融混練物を使用して多孔性中空糸膜を製造する場合、本実施形態に係る製造方法は工程(c)後に、中空糸膜から(d)添加剤を抽出除去して多孔性中空糸膜を得る工程を更に備えることが好ましい。工程(d)における抽出剤には、湯、酸やアルカリなど使用した添加剤を溶解できるが熱可塑性樹脂は溶解しない液体を使用することが好ましい。
添加剤に無機物を使用してもよい。無機物は無機微粉が好ましい。溶融混練物に含まれる無機微粉の一次粒径は好ましくは50nm以下であり、より好ましくは5nm以上30nm未満である。無機微粉の具体例としては、シリカ(微粉シリカを含む)、酸化チタン、塩化リチウム、塩化カルシウム、有機クレイ等が挙げられ、これらのうち、コストの観点から微粉シリカが好ましい。上述の「無機微粉の一次粒径」は電子顕微鏡写真の解析から求めた値を意味する。すなわち、まず、無機微粉の一群をASTM D3849の方法によって前処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡写真に写された3000〜5000個の粒子直径を測定し、これらの値を算術平均することで無機微粉の一次粒径を算出する。
多孔性中空糸膜内の無機微粉は、蛍光X線等により存在する元素を同定することで存在する材料を判断することができる。
添加剤に有機物を使用する場合には、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどの親水性高分子を使用すると中空糸膜に親水性を付与することができる。また、グリセリン、エチレングリコールなど粘度の高い添加剤を使用すると溶融混練物の粘度をコントロールすることができる。
次に、本実施形態の多孔性中空糸膜の製造方法における(a)溶融混練物を準備する工程の詳細について説明する。
本実施形態の多孔性中空糸膜の製造方法では、熱可塑性樹脂の非溶剤を良溶剤又は貧溶剤に混合させる。混合後の混合溶媒は使用する熱可塑性樹脂の非溶媒となる。このように膜の原材料に非溶剤を用いると、3次元網目構造を持つ多孔性中空糸膜が得られる。その作用機序は必ずしも明らかではないが、非溶剤を混合させて、より溶解性を低くした溶剤を用いた方がポリマーの結晶化が適度に阻害され、3次元網目構造になりやすいと考えられる。例えば、非溶剤、貧溶剤又は良溶剤は、フタル酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、エポキシ化植物油等の各種エステル等から選ばれることができる。
熱可塑性樹脂を常温で溶解させることができる溶剤を良溶剤、常温では溶解できないが高温にして溶解させることができる溶剤を、その熱可塑性樹脂の貧溶剤、高温にしても溶解させることができない溶剤を非溶剤と呼ぶが、良溶剤、貧溶剤、非溶剤は次のようにして判定することができる。
すなわち、試験管に2g程度の熱可塑性樹脂と8g程度の溶剤を入れ、試験管用ブロックヒーターにて10℃刻み程度でその溶剤の沸点まで加温し、スパチュラなどで試験管内を混合し、熱可塑性樹脂が溶解するものが良溶剤又は貧溶剤、溶解しないものが非溶剤である。100℃以下の比較的低温で溶解するものが良溶剤、100℃以上沸点以下の高温にしないと溶解しないものを貧溶剤と定義する。
例えば、熱可塑性樹脂にポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、溶剤にアセチルクエン酸トリブチルやセバシン酸ジブチル、アジピン酸ジブチルを用いると、200℃程度でPVDFはこれらの溶剤に均一に混ざり合い溶解する。他方、溶剤にアジピン酸ビス2エチルヘキシルやアジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ビス2エチルヘキシルを用いると温度を250℃まで上げても、PVDFはこれらの溶剤には溶解しない。また、熱可塑性樹脂にエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を用い、溶剤にアジピン酸ジエチルを用いると、200℃程度でETFEは均一に混ざり合い溶解する。他方、溶剤にアジピン酸ビス2エチルヘキシルを用いると溶解しない。さらに熱可塑性樹脂にエチレン−モノクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)を用い、溶剤にクエン酸トリエチルを用いると200℃程度で均一に溶解し、トリフェニル亜リン酸を用いると溶解しない。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。実施例、比較例における各物性値は以下の方法で各々求めた。
(1)膜の外径、内径
多孔性中空糸膜を、カミソリを用いて薄くスライスし、100倍拡大鏡にて、外径と内径を測定した。一つのサンプルについて、30mm間隔で60箇所の測定を行った。そして、その平均値を膜の外形及び内径とした。
(2)電子顕微鏡撮影
多孔性中空糸膜をその長さ方向に直交する方向に円環状に裁断し、10%リンタングステン酸+四酸化オスミウム染色を実施し、エポキシ樹脂に包埋した。次いでトリミング後、試料断面にBIB加工を施して平滑断面を作製し、導電処理を施して検鏡試料を作製した。作製した検鏡試料を、HITACHI製電子顕微鏡SU8000シリーズを使用し、加速電圧1kVで膜の断面の電子顕微鏡(SEM)画像を5,000〜10,000倍で膜厚(肉厚部)断面を内表面から外表面に等間隔で4カ所撮影した。具体的には、膜厚(肉厚部)断面の内側表面を含む視野、該膜の外側表面を含む視野、及びこれらの視野の間を等間隔で撮影した2視野の合計4視野の各領域(図2A〜図2Dにおける丸1〜丸4)内で所定の視野で撮影した。平均孔径に応じて倍率を変えて測定することができ、具体的には、平均孔径が0.1μm以上の場合には、5000倍、平均孔径が0.05μm以上0.1μm未満の場合には、10,000倍、平均孔径が0.05μm未満の場合には、30,000倍とした。尚、視野のサイズは、2560×1920ピクセルとした。
画像処理には、ImageJを用い、撮影したSEM画像に対してThreshold処理(Image−Adjust−Treshold:大津法(Otsuを選択))を施すことより、孔の部分と樹脂部とで二値化した。
表面開口率:二値化画像の樹脂部と孔部との割合を算出することにより表面開口率を測定した。
樹脂部の面積分布:ImageJの「Analyze Particle」コマンド(Analyz Particle:Size0.10−Infinity)を使用し、断面のSEM画像に含まれる二値化された粒状の樹脂部の大きさをそれぞれ計測した。SEM画像に含まれる全樹脂部の総面積をΣSとし、1μm以下の樹脂部の面積をΣS(<1μm)とした場合に、ΣS(<1μm)/ΣSを算出することによって、1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合を算出した。
尚、二値化処理を施す際のノイズ除去については、0.1μm未満の面積の樹脂部をノイズとして除去し、0.1μm以上の面積の樹脂部を分析対象とした。また、ノイズ除去は、メディアンフィルタ処理(Process−Filters−Median:Radius:3.0pixels)を施すことによって行った。
SEM画像の端で切れている粒状の樹脂部についても計測対象とした。「Incude Holes」(穴をうめる)の処理は行わなかった。「雪だるま」型を「扁平」型などに形状を補正する処理は行わなかった。
平均孔径(細孔径):ImageJの「Plugins−Bone J−Thickness」コマンドを使用して測定した。なお、空間サイズは空隙に入る最大の円サイズとして定義した。
(3)透水性
多孔性中空糸膜をエタノール浸漬した後、純水浸漬を数回繰り返した約10cm長の湿潤中空糸膜の一端を封止し、他端の中空部内に注射針を挿入し、25℃の環境下にて注射針から0.1MPaの圧力で25℃の純水を中空部内に注入し、外表面から透過してくる純水量を測定し、下記式:
純水フラックス[L/m/h]=60×(透過水量[L])/{π×(膜外径[m])×(膜有効長[m])×(測定時間[min])}
により純水フラックスを決定し、透水性を評価した。
尚、ここで膜有効長とは、注射針が挿入されている部分を除いた、正味の膜長を指す。
(4)懸濁水ろ過時の透水性能保持率
懸濁水ろ過時の透水性能保持率は、目詰まり(ファウリング)による透水性能劣化の程度を判断するための1指標である。エタノール浸漬した後、純水浸漬を数回繰り返した湿潤中空糸膜を、膜有効長11cmにて外圧方式によりろ過を行った。まず、純水を、膜外表面積1m当たり1日当たり10m透過するろ過圧力にてろ過を行って透過水を2分間採取し、初期純水透水量とした。次いで、懸濁水(東京湾川崎港から採取した天然の海水:濁度2.2、TOC濃度2.4ppm)を、初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、懸濁水ろ過時透水量とした。懸濁水ろ過時の透水性能保持率を、下記式:
懸濁水ろ過時の透水性能保持率[%]=100×(懸濁水ろ過時透水量[g])/(初期純水透水量[g])
で定義した。尚、操作は全て、25℃、膜面線速0.5m/秒で行い、式中の各パラメーターは下記式で算出されるものであった。
ろ過圧力={(入圧)+(出圧)}/2
膜外表面積[m]=π×(糸外径[m])×(膜有効長[m])
膜面線速[m/s]=4×(循環水量[m/s])/{π×(チューブ径[m])−π×(膜外径[m])
本測定においては懸濁水のろ過圧力を各膜同一ではなく、初期純水透水性能(懸濁水ろ過開始時点での透水性能でもある)が膜外表面積1m当たり1日当たり10m透過するろ過圧力に設定した。すなわち、例えば、Fluxを1m/d=417 LMHに設定すると、実施例1の膜では圧力は10 kPa程度となり、初期圧をそれに統一して懸濁水をろ過し、経時的にFluxが低下する様子を観察した。したがって、実施例2と3の膜を用いた場合の初期圧は、実施例1の膜を用いた場合の初期圧と若干異なる。これは、実際の上水処理や下水処理においては、膜は定量ろ過運転(一定時間内に一定のろ過水量が得られるようろ過圧力を調整してろ過運転する方式)で使用されるのが通常であるため、本測定においても中空糸膜1本を用いた測定という範囲内で、定量ろ過運転の条件に極力近い条件での透水性能劣化の比較ができるようにしたためである。
(5)引張破断伸度(%)
引張り破断時の荷重と変位を以下の条件で測定した。
JIS K7161の方法に従い、サンプルには多孔性中空糸膜をそのまま用いた。
測定機器:インストロン型引張試験機(島津製作所製AGS-5D)
チャック間距離:5cm
引張り速度:20cm/分
得られた結果から引張破断伸度は、JIS K7161に従って算出した。
(6)アルカリ耐性試験
前記(4)で行った懸濁水のろ過工程後、多孔性中空糸膜を10cmにカットし、20本を500mlの4%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、10日間40℃に保持した。水酸化ナトリウムに浸漬前後の膜の引張破断伸度をn20で測定し、その平均値を算出した。NaOH浸漬後伸度保持率を、以下の式:
NaOH浸漬後伸度保持率=(浸漬後の引張破断伸度)/(浸漬前の引張破断伸度)×100
で定義し、アルカリ耐性を評価した。尚、浸漬前の引張破断伸度は、洗浄工程前における引張破断伸度に相当し、浸漬後の引張破断伸度は、洗浄工程後の引張破断伸度に相当する。
また、上述した懸濁水のろ過工程後、上述した4%水酸化ナトリウム水溶液への浸漬による洗浄工程を10回繰り返した。そして、引張破断伸度の初期値(浸漬前の引張破断伸度)をE0とし、洗浄工程を10回繰り返した後の多孔性中空糸膜の引張破断強度の値をEXとし、EX/E0×100を「10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率」として算出してアルカリ耐性を評価した。
また、上述した懸濁水のろ過工程後に、中空糸膜を4%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、10日間40℃に保持した。水酸化ナトリウムに浸漬後、上述した初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、洗浄工程後透水量とした。初期純粋透水量をLO(フラックスL0)とし、洗浄工程後透水量をL1(フラックスL1)とし、L1/L0×100をNaOH浸漬後透水量保持率として算出した。
また、上述した懸濁水のろ過工程後、上述した4%水酸化ナトリウム水溶液への中空糸膜の浸漬による洗浄工程を10回繰り返した。そして、上述した初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、繰り返し洗浄工程後透水量とした。初期純粋透水量をLO(フラックスL0)とし、繰り返し洗浄工程後透水量をLX(フラックスLX、X=10)とし、LX/L0×100を「10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率」として算出した。
また、上述した懸濁水のろ過工程後(初期フラックスL0に対し、フラックスが50%以下となった後)、上述した4%水酸化ナトリウム水溶液への中空糸膜の浸漬し通過させる洗浄工程、膜面積1mあたり10Lのリンス水を使用したリンス工程の後、再度ろ過した際のpHを測定し、9以下となっているかを確認した。
また、上述のろ過工程後、洗浄工程、膜面積1mあたり10Lのリンス水を使用したリンス工程の後、再度ろ過するサイクルを20回繰り返した後のフラックスをL‘20とし、L‘20/L0×100を「20サイクル繰り返し後の透水量保持率」として算出した。
サイクルを20回繰り返した後の伸度E‘20についても測定し、引張破断伸度の初期値(浸漬前の引張破断伸度)E0との比、E‘20/E0×100を「20サイクル繰り返し後の伸度保持率」として算出した。
[実施例1]
2重管構造の紡糸ノズルを用いて、実施例1の多孔性中空糸膜を得た。溶融混練物として、熱可塑性樹脂としてPVDF樹脂(クレハ社製、KF−W#1000)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA)32.9質量%、貧溶剤としてアセチルクエン酸トリブチル(ATBC, 沸点343℃)4.1質量%の溶融混練物を調製した。溶融混連物の温度は、240℃程度であった。
押し出した中空糸状成型物は、120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔性中空糸膜を作製した。5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。得られた2層中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル及びアセチルクエン酸トリブチルを抽出除去した。続いて、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換した。続いて、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去した。
表1に、得られた実施例1の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、3次元網目構造を示した。また、透水性が高く、連通性の高い膜であることが分かった。また、耐薬品性能であるNaOH浸漬後伸度保持率は80%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率も高かった。さらに、NaOH浸漬後透水量保持率は99%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は95%であり、透水量を維持でき、かつ中空糸膜のアルカリ劣化による大孔径化も見られなかった。
また、ろ過、洗浄、リンス(10L/m2のリンス水)後のpHを測定し、毎回pH9以下であることを確認した。
[実施例2]
2重管構造の紡糸ノズルを用いて、実施例2の多孔性中空糸膜を得た。熱可塑性樹脂としてETFE樹脂(旭硝子社製、TL−081)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA)32.9質量%、貧溶剤としてアジピン酸ジイソブチル(DIBA)4.1質量%の溶融混練物を調製した。
押し出した中空糸状成型物は、120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔性中空糸膜を作製した。5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。得られた2層中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させて溶剤を抽出除去した。続いて、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換した。続いて、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去した。
表1に、得られた実施例2の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、3次元網目構造を示した。また、透水性が高く、連通性の高い膜であることが分かった。また、耐薬品性能であるNaOH浸漬後伸度保持率は、98%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率も高かった。さらに、NaOH浸漬後透水量保持率は100%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は96%であり、透水量を維持でき、かつ、中空糸膜のアルカリ劣化による大孔径化も見られなかった。
また、ろ過、洗浄、リンス(10L/m2のリンス水)後のpHを測定し、毎回pH9以下であることを確認した。
[実施例3]
2重管構造の紡糸ノズルを用いて、実施例3の多孔性中空糸膜を得た。溶融混練物として、熱可塑性樹脂としてECTFE樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Halar901)40質量%と、微粉シリカ(一次粒径:16nm)23質量%と、非溶剤としてトリフェニル亜リン酸(TPP)32.9質量%、貧溶剤としてアジピン酸ビス2−エチルヘキシル(DOA)4.1質量%の溶融混練物を調製した。
押し出した中空糸状成型物は、120mmの空走距離を通した後、30℃の水中で固化させ、熱誘起相分離法により多孔性中空糸膜を作製した。5m/分の速度で引き取り、かせに巻き取った。得られた2層中空糸状押出し物をイソプロピルアルコール中に浸漬させて溶剤を抽出除去した。続いて、水中に30分間浸漬し、中空糸膜を水置換した。続いて、20質量%NaOH水溶液中に70℃にて1時間浸漬し、更に水洗を繰り返して微粉シリカを抽出除去した。
表1に、得られた実施例3の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、3次元網目構造を示した。膜構造は、3次元網目構造を示した。また、透水性が高く、連通性の高い膜であることが分かった。また、耐薬品性能であるNaOH浸漬後伸度保持率は、97%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の伸度保持率も高かった。さらに、NaOH浸漬後透水量保持率は98%であり、10サイクル繰り返し洗浄後の透水量保持率は95%であり、透水量を維持でき、かつ中空糸膜のアルカリ劣化による大孔径化も見られなかった。
また、ろ過、洗浄、リンス(10L/m2のリンス水)後のpHを測定し、毎回pH9以下であることを確認した。
[比較例1]
溶剤をATBCのみとしたこと以外は、実施例1と同様にして製膜し、比較例1の中空糸膜を得た。表2に、得られた比較例1の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、球晶構造を示した。また、透水性が低く、連通性の低い膜であることが分かった。また、耐薬品性能であるNaOH浸漬後伸度保持率は、30%であり、低い値であった。
また、ろ過、洗浄、リンス(10L/m2のリンス水)後のpHを測定したが、pH9にはならず、追加のリンス水を用いたリンス工程によりpH9以下となった。
[比較例2]
シリカを0%とし、溶剤をγ-ブチロラクトンのみとしたこと以外は、実施例1と同様にして製膜し、比較例2の中空糸膜を得た。表2に、得られた比較例2の多孔質膜の配合組成及び製造条件並びに各種性能を示す。膜構造は、球晶構造を示した。また、透水性が低く、連通性の低い膜であることが分かった。また、耐薬品性能であるNaOH浸漬後伸度保持率は、30%であり、低い値であった。
また、ろ過、洗浄、リンス(10L/m2のリンス水)後のpHを測定したが、pH9にはならず、追加のリンス水を用いたリンス工程によりpH9以下となった。
以上のように、膜構造の違いによって耐薬品性能に差異が現れることが分かった。連通性が良好な膜の方が、耐薬品性能に優れ、かつ、ろ過性能が高いことが分かった。
本発明によれば、細孔の連通性が良好な多孔質膜をろ過運転に提供され、耐薬品性能に
優れ、かつ、高効率なろ過操作が提供される。

Claims (9)

  1. 樹脂から形成される多孔質膜に被ろ過液を通過させてろ過するろ過工程と、前記ろ過工程の後、前記多孔質膜の膜内部を洗浄する洗浄工程とを有するろ過方法であって、
    前記膜内部の断面における全ての視野において、前記各視野に含まれる0.1μm 以上1μm以下の面積を有する樹脂部の面積割合が、前記各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して70%以上であり、かつ、1μm 超10μm 未満の面積を有する樹脂部の面積の合計が、該樹脂部の総面積に対して2%以上30%以下であり、かつ、前記各視野に含まれる10μm以上の面積を有する樹脂部の面積割合が、前記各視野に含まれる全樹脂部の総面積に対して15%以下であり、かつ、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、エチレン、及びヘキサフルオロプロピレンからなる群から選ばれるポリマー又は該ポリマーの混合物であるフッ素樹脂から構成される多孔質膜を用い、かつ、
    前記洗浄工程が、1%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を前記多孔質膜に通過させる工程を含むろ過方法。
  2. 前記洗浄工程において使用する水酸化ナトリウムの水溶液の濃度が、2%以上である請求項に記載のろ過方法。
  3. 前記洗浄工程において使用する水酸化ナトリウムの水溶液の濃度が、4%以上である請求項1又は2に記載のろ過方法。
  4. 前記洗浄工程前における前記多孔質膜の伸度E0と、前記洗浄工程後における前記多孔質膜の伸度E1との関係が、E1/E0×100≧80%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のろ過方法。
  5. 前記ろ過工程開始時の前記多孔質膜のフラックスL0と、前記洗浄工程後の前記多孔質膜のフラックスL1との関係が、105%≧L1/L0×100≧95%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のろ過方法。
  6. 前記洗浄工程前における前記多孔質膜の伸度E0と、前記洗浄工程をX(Xは100以下の自然数)回繰り返した後における前記多孔質膜の伸度EXとの関係が、EX/E0×100≧70%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のろ過方法。
  7. 前記多孔質膜が、中空糸膜である、請求項1〜のいずれか1項に記載のろ過方法。
  8. 前記ろ過工程開始時の前記多孔質膜のフラックスL0と、前記洗浄工程をX(Xは100以下の自然数)回繰り返した後における前記多孔質膜のフラックスLXとの関係が、110%≧LX/L0×100≧90%である、請求項1〜のいずれか1項に記載のろ過方法。
  9. 前記洗浄工程の後に、前記多孔質膜の膜内部に残存する洗剤を排出するリンス工程をさらに含み、
    前記洗浄工程は、前記多孔質膜の初期フラックスL0に対し、フラックスが50%以下となった際に、4%以上の水酸化ナトリウムの水溶液を含む薬液を前記多孔質膜に通過させる工程であり、
    前記リンス工程は、膜面積1mあたり10L以下のリンス水を使用する工程であり、
    前記リンス工程後、ろ過工程を再開した際の、ろ過水のpHが9以下であり、
    前記ろ過工程、前記洗浄工程、前記リンス工程を、20回繰り返した後のフラックスL20が、前記多孔質膜の初期フラックスL0に対し、以下の式:
    105%≧L‘20/L0×100≧80%
    で表される関係を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のろ過方法。
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