JP5033384B2 - 不織布及びそれを用いたエアフィルタ用濾材 - Google Patents

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Description

本発明は一般ビルの空調、工場空調設備、電算室や病院の空調設備などに使用される中・高性能フィルタ、マスク、ワイピング材、または保温材などの用途に好適な不織布に関し、更には極細繊維が用いられており、更には抗菌性や防カビ性を有した不織布として好適な不織布及びそれを用いたエアフィルタ用濾材に関する。
従来から、一般ビルの空調、工場空調設備、電算室や病院の空調設備などに使用される中・高性能フィルタ、マスク、ワイピング材、または保温材などに使用される極細繊維を用いた不織布は数多く知られている。また、抗菌性や防カビ性が付与された不織布も数多く知られている。しかし、極細繊維を用いた不織布に抗菌性や防カビ性を付与した不織布となると、技術的課題が多くなりその課題を解決した技術は限られてくる。このような不織布としては、例えば特許文献1に、エレクトレット化メルトブロー不織布にアミジン基またはグアニジン基のいずれか1種を含む抗菌剤と、カテキンとが付着されているフィルタが記載されている。具体的には、有機物の抗菌剤がメルトブロー不織布を構成する繊維に練りこまれており、またカテキン溶液がメルトブロー不織布に噴霧されて付着している。しかし、特許文献1によると有機物の抗菌剤を用いるため抗菌剤が環境条件、温度、湿度により変質したり、結露水などによって溶出したりするので、抗菌性能が不安定であるという問題があった。
このような技術に対して、有機物の抗菌剤を用いずに無機物の抗菌剤を用いて安定した抗菌効果を得るという技術としては、例えば特許文献2がある。特許文献2には、体積抵抗率1013Ω・cm以上の合成有機重合体よりなり、この合成有機重合体中に、熱安定剤を0.01〜2%の範囲で含有し、かつ金属イオンを含有する無機物を抗菌剤として0.1〜4%で含有するとともに、その表面電荷密度が1×10-10 クーロン/cm2 以上である抗菌性エレクトレット材料が記載されている。具体的には、Agイオンを担持したゼオライトを0.8%含有したメルトブロー不織布が示されている。しかし、ゼオライトは無機物ではあるが天然性であるので、その粒子径が広く分布していたり、不規則な形状をしているため、このようなゼオライトをメルトブロー不織布に用いた場合、メルトブロー時にノズルの詰りが頻繁に生じたり、ショットが多くなり品質が低下するという問題があった。またゼオライトの粒子が凝集して粒子径が大きくなり、メルトブロー時にノズルの詰りが頻繁に生じたり、ショットが多くなり品質が低下するという問題があった。
また、特許文献2には、メルトブロー不織布よりも構成繊維の繊維径が大きいスパンボンド不織布に、Agイオン担持の水溶性ガラスを含有したスパンボンド不織布が示されている。しかし、構成繊維の原料樹脂に水溶性ガラスが液状で混入されると繊維自体の性質が変化して繊維紡糸時に流動性が悪化したり、水溶性のガラスであるため有機物の抗菌剤と同様に、環境条件、温度、湿度により変質したり、更には結露水などによって溶出したり、抗菌性が不安定になるという問題があった。
特開平9−141021号公報 特開平5−190389号公報
本発明は、上記問題を解決して、極細繊維が使用されており且つ抗菌性や防カビ性が付与された不織布であり、環境条件、温度、湿度により変質したり、結露水などによって溶出したり、不安定であるという問題がなく、繊維紡糸時にノズルの詰りが頻繁に生じたり、ショットが多くなり品質が低下するという問題もない不織布を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、メルトブロー法により製造され表面がポリオレフィン樹脂成分からなる平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維を含む不織布であって、前記極細繊維の前記ポリオレフィン樹脂成分中に抗菌剤を含んだガラス粒子が含まれており、前記ガラス粒子は変成アルミノシリケート骨格を有し、この特殊構造により銀イオンを担持しており、前記ガラス粒子の平均粒子径は3μm以下であり、且つ前記極細繊維の平均繊維径よりも小さい不織布を用いてなることを特徴とするエアフィルタ用濾材である。この不織布によって、極細繊維が使用されており且つ抗菌性や防カビ性が付与された不織布であり、環境条件、温度、湿度により変質したり、結露水などによって溶出したり、不安定であるという問題がなく、繊維紡糸時にノズルの詰りが頻繁に生じたり、ショットが多くなり品質が低下するという問題もない不織布を用いてなるエアフィルタ用濾材を提供することが可能となる。
請求項2に係る発明では、メルトブロー法により製造され表面がポリオレフィン樹脂成分からなる平均繊維径が1.5〜3μmの極細繊維を含む不織布であって、前記極細繊維の前記ポリオレフィン樹脂成分中に抗菌剤を含んだ前記ガラス粒子が含まれており、前記ガラス粒子の平均粒子径は1μm以下である不織布を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材であり、請求項1に記載のエアフィルタ用濾材による上述の効果をより顕著に得ることができる。
請求項3に係る発明では、前記極細繊維を構成する樹脂成分がMFR100(g/10分)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアフィルタ用濾材であり、このような構成により、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布を用いてなるエアフィルタ用濾材が得られるという利点がある。
請求項4に係る発明では、前記極細繊維を構成する樹脂成分がメタロセン触媒を用いて製造された樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、このような構成により、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布を用いてなるエアフィルタ用濾材が得られるという利点がある。
請求項5に係る発明では、前記極細繊維を構成する樹脂成分が過酸化物からなる減成剤を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、このような構成により、極細繊維を構成する樹脂成分の流動性が高まり、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布を用いてなるエアフィルタ用濾材が得られるという利点がある。
請求項6に係る発明では、前記極細繊維を構成する樹脂成分がヒンダードアミン系化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、このような構成により、極細繊維を構成する樹脂成分の熱安定性が高まり、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布を用いてなるエアフィルタ用濾材が得られるという利点がある。また、エレクトレット加工により帯電効果が高まるという利点がある。
請求項7に係る発明では、エレクトレット加工されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のエアフィルタ用濾材であり、このエアフィルタ用濾材を中・高性能フィルタとして用いると粉塵の除去効率が特に優れるという利点がある。
本発明によって、極細繊維が使用されており且つ抗菌性や防カビ性が付与された不織布であり、環境条件、温度、湿度により変質したり、結露水などによって溶出したり、不安定であるという問題がなく、繊維紡糸時にノズルの詰りが頻繁に生じたり、ショットが多くなり品質が低下するという問題もない不織布を提供することが可能となった。
以下、本発明に係る不織布の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
本発明の不織布は、メルトブロー法により製造された平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維を含んでいる。メルトブロー法により極細繊維を製造する条件は特に限定するものではないが、例えば、次のような条件で製造することができる。例えば、ノズル孔径0.1〜0.5mmで、ピッチ0.3〜1.2mmで配置されたノズルダイを温度180〜370℃に加熱し、1つのノズル孔あたり0.02〜1.5g/分の割合で繊維を吐出する。この吐出した繊維に対して、温度180〜400℃、かつ質量比で繊維吐出量の5〜2,000倍量の空気を作用させて、極細繊維を製造することができる。
このようにして製造される極細繊維は平均繊維径が0.1〜10μmである。この極細繊維の平均繊維径が0.1μm未満であると、例えばエアフィルタとして用いた場合、圧力損失が高くなる傾向があり、長期間使用できるエアフィルタを製造することが困難になる。他方、平均繊維径が10μmを超えると、微細な塵埃を捕集することが困難になるという問題がある。前記極細繊維は平均繊維径が0.25〜5μmの極細繊維であることが好ましい。また、後述するガラス粒子を混入することを考慮すると、平均繊維径1〜5μmの極細繊維であることがより好ましく、平均繊維径1.5〜3μmの極細繊維であることが更に好ましい。平均繊維径が1μm未満であると紡糸時にノズルが詰まったり、ショットを生じ易くなる恐れがある。
なお、本発明における平均繊維径とは、繊維(例えば、極細繊維)200点における繊維径の平均値をいう。この繊維径は、例えば、不織布を厚さ方向に裁断した裁断面における電子顕微鏡写真から容易に計測することができる。なお、繊維の断面形状が非円形である場合には、その繊維断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維径とみなす。
このメルトブロー法により製造される極細繊維を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン系やポリエチレン系などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂など1種類以上からなることができる。これらの中でも、極細繊維を製造しやすく、しかもエレクトレット化しやすいポリオレフィン系樹脂を極細繊維表面に含んでいるのが好ましく、ポリプロピレン系樹脂を極細繊維表面に含んでいるのがより好ましい。
また、前記極細繊維を構成する樹脂成分は、MFR100(g/10分)以上であることが好ましく、MFR500(g/10分)以上であることがより好ましく、MFR1000(g/10分)以上であることが更に好ましい。MFR100(g/10分)以上であることにより、紡糸時にガラス粒子を含む樹脂の流動性を高めることができるので、紡糸時の極細繊維の劣化を防ぎ、糸切れによるショットの発生を少なくすることができる。つまり、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布が得られるという利点がある。このような、MFR100(g/10分)以上の樹脂は、極細繊維を構成する樹脂中に後述するメタロセン触媒を用いて製造された樹脂を含むことによって得られるか、または後述する減成剤を含むことによって得られる。
また、前記極細繊維を構成する樹脂成分が、ポリオレフィン系の樹脂である場合は、樹脂成分中に、メタロセン触媒を用いて製造された樹脂を含むことが好ましく、メタロセン触媒を用いて製造された樹脂を含むことにより繊維径が揃い易くなり、繊維径を小さくしても糸切れによりショットが発生しにくいという利点がある。つまり、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布が得られるという利点がある。
前記メタロセン触媒としては、一般式CpMRによって表わされる化合物を用いることが好ましく、当該Cpは置換され得るシクロペンタジエニル環、又は置換され得るそれらの誘導体であり、Mは第4、5、又は6族の遷移金属(例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)等)、Rは1−20の炭素原子を有するヒドロカルビル又はヒドロカルボキシ基であり、Xはハロゲン又は水素であり、m=1−3、n=0−3、q=0−3及びm+n+qの合計は遷移金属の酸化状態に等しい。
また、前記極細繊維を構成する樹脂成分に減成剤を含むことが好ましく、特に樹脂成分がポリオレフィン系の樹脂である場合は、樹脂成分中に減成剤を含むことが好ましく、減成剤を含むことにより、紡糸時にガラス粒子を含む樹脂の流動性を高めることができるので、紡糸時の極細繊維の劣化を防ぎ、糸切れによるショットの発生を少なくすることができる。つまり、より安定した極細繊維を紡糸することが可能であり、ショットのより少ない不織布が得られるという利点がある。
前記減成剤としては、例えば遊離基発生化合物などが好ましく、この遊離基発生化合物としては、2,5−ジメチル−2,5−tブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−tブチルオキシヘキセン−3などのジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、およびケトン−パーオキサイド類などを挙げることができる。このうち、特に過酸化物が好ましい。前記減成剤の割合は極細繊維を構成する樹脂成分全体に対して、0.01〜1質量%が好ましく、0.03〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%が更に好ましい。減成剤の割合が0.01質量%未満であるとその効果が十分に発揮されず、減成剤の割合が1質量%を超えると、極細繊維の強度が低下する恐れがある。
また、前記極細繊維を構成する樹脂成分が、熱安定剤を含むことが好ましく、このような熱安定剤としては、特に限定されるものではないが、ヒンダードアミン系、含窒素ヒンダードフェノール系、金属塩ヒンダードフェノール系、フェノール系、硫黄系、燐系のなどの化合物があり、これらの内から選択される1種または2種以上の熱安定剤を用いることが好ましい。熱安定剤を含むことにより、極細繊維の紡糸時の熱安定性を高めるとともにエレクトレット加工の際の安定剤としても作用して、エレクトレット効果を高めるという利点がある。これらの熱安定剤の中でもヒンダードアミン系化合物が特に好ましい。また、ヒンダードアミン系化合物が前述の減成剤としても作用する化合物を使用することも好ましい。前記熱安定剤の割合は極細繊維を構成する樹脂成分全体に対して、0.01〜0.5質量%が好ましく、0.03〜0.3質量%がより好ましく、0.05〜0.2質量%が更に好ましい。熱安定剤の割合が0.01質量%未満であるとその効果が十分に発揮されず、熱安定剤の割合が0.5質量%を超えると、極細繊維の強度が低下する恐れがある。
前記ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ポリ[{(6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などがある。
本発明の不織布は、その極細繊維の樹脂成分中に、抗菌剤を含んだ平均粒子径3μm以下のガラス粒子が含まれている。ガラス粒子とは、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラスなどを粒子化したものであり、特にリン酸塩ガラスが好ましい。また、その形状も球形が好ましく、粒子径が揃ったものが好ましい。
前記ガラス粒子の粒子径は、平均粒子径3μm以下であることを必要とし、平均粒子径2μm以下であることが好ましく、平均粒子径1.5μm以下であることがより好ましく、平均粒子径1μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径が3μmを超えると、極細繊維の紡糸時に、糸切れが多く発生し、ショットが多くなり目的とする不織布が得られなくなる。
本発明では、前記ガラス粒子に抗菌剤が含まれている。このような抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛、ビスマス、クロム、またはタリウムなどの金属イオンがあり、このうち特に銀イオンが抗菌作用が優れ、安全性にも優れるため好ましい。ガラス粒子に抗菌剤が含まれている割合は、ガラス粒子の質量に対して0.1〜10%が好ましく、0.5〜5%がより好ましく、0.8〜1.5%が更に好ましい。0.1%未満であると、抗菌効果が十分に得られなくなる恐れがあり、10%を超えるとガラス粒子に十分担持されなかったり、担持量に対して抗菌効果の効率が悪くなりコストアップとなる恐れがある。
前記ガラス粒子の具体例としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社によってIRGAGUARDの商品名で製造されるガラスビーズがある。このガラスビーズは、変成アルミノシリケート骨格を有し、この特殊構造により銀イオンを担持した粒子状の形態をしており、この特殊構造により銀イオンをゆっくりと溶出する効果を有しており、また変色も防ぐ効果を有している。このガラスビーズの一例を挙げると、超音波による透過率で評価すると、平均粒子径が0.8μmであり、1.7μm以下の粒子径の粒子の積算値が90%であり、粒子径の分布が非常に狭くなっているため、極細繊維の紡糸時の糸切れによるショットの発生を極めて少なくすることができるという利点がある。このようなガラスビーズとしては、好ましくは平均粒子径が2.5μm以下、より好ましくは0.1〜2μmのものが利用できる。
また、本発明では、極細繊維の樹脂成分中に、抗菌剤を含んだガラス粒子が含まれているが、含まれる割合としては、極細繊維の質量に対して0.01〜30%が好ましく、0.1〜10%がより好ましく、0.5〜5%が更に好ましい。0.01%未満であると、抗菌効果が十分に得られなくなる恐れがあり、30%を超えると極細繊維に対してガラス粒子が多くなり過ぎて、極細繊維の紡糸時に糸切れによるショットの発生が多くなったり、極細繊維中の含有量に対して抗菌効果の効率が悪くなりコストアップとなる恐れがある。
本発明は、メルトブロー法により製造された平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維を含む不織布であり、この極細繊維のみで構成された不織布であることが可能である。また、この極細繊維のみで構成された繊維層と極細繊維以外の他の繊維から構成された繊維層とが積層されてなる不織布であることも可能である。また、この極細繊維とこの極細繊維以外の他の繊維とが混合された不織布であることも可能である。この例として、例えば極細繊維と短繊維からなる熱融着性繊維とが混合された不織布を挙げることができる。この不織布は、例えば、メルトブロー法により形成された加熱気流中の紡糸された繊維流に、開繊機などにより開繊された短繊維からなる熱融着性繊維を供給して両者を混合し、捕集体上に捕集して繊維ウェブを形成し、次いでドライヤーなどを用いてこの繊維ウェブを加熱処理し、構成繊維を熱融着して得ることができる。
本発明の不織布はエレクトレット加工されていることも可能である。エレクトレット加工した後に、この不織布を中・高性能フィルタまたはマスクとして用いると粉塵の除去効率が非常に優れるという利点がある。エレクトレット加工の方法としては、例えばコロナ放電によってエレクトレット加工する方法や、水などの極性液体を噴霧してエレクトレット加工する方法や、水などの極性液体を介して超音波振動を作用させることによってエレクトレット化させる方法がある。コロナ放電によるエレクトレット加工の場合は不織布の表面に表面電荷を有するものとなり、上述の極性液体を用いたエレクトレット加工の場合は不織布の表面には表面電荷が生じないという相違がある。なお、本発明の不織布は無機質のガラス粒子に抗菌剤を含んでいるので、粒子が極性液体に溶け出すことがなく、つまり耐水性又は耐液性がある。したがって、コロナ放電によるエレクトレット加工のみならず極性液体を用いたエレクトレット加工が可能であるという有利な特性を有しているのである。
本発明の不織布が前記極細繊維のみで構成された不織布である場合、不織布の面密度は5〜200g/m2であるのが好ましい。面密度が5g/m2未満であると、繊維の密度が低くなり過ぎて不織布の形態を維持することが困難になる恐れがあり、他方、200g/m2を超えると、繊維の密度が高くなり過ぎて、例えばフィルターなどとして使用すると粗大な塵埃によりすぐに目詰まりを生じ、長期間使用できなくなる恐れがある。前記不織布の面密度は、10〜150g/m2であるのがより好ましく、15〜100g/m2であるのが更に好ましい。
また、本発明の不織布が前記極細繊維のみで構成された不織布である場合、不織布の厚さは0.06〜2.5mmであるのが好ましい。極細繊維層の厚さが0.06mm未満であると不織布の形態を維持することが困難になる恐れがあり、他方、2.5mmを超えると、繊維の密度が高くなり過ぎて、例えばフィルターなどとして使用すると粗大な塵埃によりすぐに目詰まりを生じ、長期間使用できなくなる恐れがある。前記不織布の厚さは、0.12〜1.7mmであるのがより好ましく、0.2〜1.2mmであるのが更に好ましい。なお、この厚さは単位面積1cm2あたり1g荷重時の値をいう。
本発明の不織布は、極細繊維の樹脂成分中に抗菌剤を含んだガラス粒子が含まれているので、抗菌性や防カビ性を有している。この抗菌性は、JIS L1902「繊維製品の抗菌性試験方法」に規定される定量試験において、静菌活性値が2.2以上であることが望ましい。静菌活性値が2.2以上であることにより、繊維評価技術協議会が認定するSEKマーク取得の要件を満たすことができる。
本発明の不織布は、一般ビルの空調、工場空調設備、電算室や病院の空調設備などに使用される中・高性能フィルタとして、そのフィルタを構成するエアフィルタ用濾材の用途に好適に使用される。また、マスク、ワイピング材、または保温材などの用途に好適に使用される。これらの用途の中でも、エアフィルタ用濾材として特に好適に使用される。
本発明のエアフィルタ用濾材は、前述の本発明の不織布を用いることにより構成されている。以下に、本発明のエアフィルタ用濾材について説明する。
本発明の不織布を用いたエアフィルタ用濾材は、中高性能用のフィルタとして好適であり、不織布を構成する繊維の平均繊維径および面密度などを変えることによって、目的とする濾過性能を得ることができる。この濾過性能は、エレクトレット加工が施されていない場合、JIS B−9908形式1に規定される試験方法において、或いはPAO(ポリアルファオレフィン)粒子を用いた試験方法において、計数法により評価すると、0.3〜0.5μmの粒子に対する粒子捕集効率を30〜99.99%とすることが可能である。また、本発明の不織布にエレクトレット加工が施されている場合は、98〜99.999%とすることが可能である。
また、本発明の不織布を用いたエアフィルタ用濾材の圧力損失は、試験条件が風速0.10m/秒の時に、500Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、60Pa以下が更に好ましい。
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
(エアフィルタ用濾材の濾過性能試験方法−計数法)
JIS B9908形式1に規定される試験方法において、風速0.1m/秒にて大気塵を供給して、0.3〜0.5μmの粒子に対する粒子捕集効率(%)を求めた。
なお、粒子捕集効率が99.9%以上のHEPAグレードの濾材に対しては、粒径0.3μmのPAO(ポリアルファオレフィン)粒子を用い、面風速5.3(cm/秒)の条件で粒子捕集効率(%)を求めた。
(抗菌性試験方法−定量法)
JIS L1902「繊維製品の抗菌性試験方法」に規定される定量試験(菌液吸収法)において、混釈平板培養法により生菌数を測定して、静菌活性値を求める。なお、試験菌株は黄色ぶどう球菌Staphyiococcus ATCC 6538Pを用いた。また、無加工試料として標準白布(綿)を用い、界面活性剤(Tween80)0.05%を添加した試験菌液を使用した。
(極細繊維の樹脂原料Aの調整)
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社によってIRGAGUARDの商品名で製造されるガラスビーズAを準備した。このガラスビーズAは、変成アルミノシリケート骨格を有し、この特殊構造により銀イオンを担持した粒子状の形状をしていた。次いで、このガラスビーズAをポリプロピレン樹脂に20質量%となるように混入したマスターバッチを製造した。
次いで、メタロセン触媒を用いて製造されたMFRが1500(g/10分)のポリプロピレン樹脂を準備して、このポリプロピレン樹脂と、前記マスターバッチとヒンダードアミン(登録商標:CHIMASSORB 944FD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)とを混合して、極細繊維の樹脂原料Aとした。この樹脂原料A中のガラスビーズAの割合は1質量%であり、ヒンダードアミンの割合は4質量%であった。
(極細繊維の樹脂原料Bの調整)
チグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたMFRが50(g/10分)のポリプロピレン樹脂を準備し、さらにヒンダードアミン系減成剤(登録商標:イルガテックCR76、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を含むポリプロピレン樹脂を準備して、これらのポリプロピレン樹脂と、前記マスターバッチとを混合して、極細繊維の樹脂原料Bとした。この樹脂原料B中のガラスビーズAの割合は1質量%であり、ヒンダードアミン系減成剤の割合は0.08質量%であった。
(極細繊維の樹脂原料Cの調整)
メタロセン触媒を用いて製造されたMFRが1500(g/10分)のポリプロピレン樹脂を準備して、このポリプロピレン樹脂とヒンダードアミン(登録商標:CHIMASSORB 944FD、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)とを混合して、極細繊維の樹脂原料Cとした。この樹脂原料C中にはガラスビーズが含まれておらず、ヒンダードアミンの割合は4質量%であった。
(実施例1)
ノズル孔径0.3mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度250℃に加熱し、1つのノズル孔あたり0.03g/分の割合で、樹脂原料Aを溶融させた状態で、ポリプロピレン繊維を吐出した。この吐出したポリプロピレン繊維に対して、温度250℃、ノズル幅1mあたり4.3Nm3/分の加熱気流を作用させて、重力の働く方向と同じ方向に繊維径1〜2μm(平均繊維径1.5μm)の極細繊維の流れを形成した。次いで、この極細繊維をメッシュ状コンベアにより捕集して不織布を形成した。なお、コンベアの捕集面とは反対側から空気を吸引除去し、不織布の乱れを防いだ。なお、この工程中、ノズルの詰まりや、糸切れの発生などのトラブルはなく、またショットも極めて少なく、安定した極細繊維を形成することができた。
得られた不織布は、面密度が24.4g/m2、厚さが0.31mmであった。この不織布を電子顕微鏡で観察すると、繊維の所々に球形の粒子が含有されておりその部分が膨らんでいる様子が見られた。また、この不織布の風速0.10m/秒における圧力損失を、JIS B 9908に規定する圧力損失測定機(形式1)により測定したところ、42Paであった。また、濾過性能試験により計数法の捕集効率が43%であることが確かめられた。また、抗菌性試験により、静菌数を求めると600未満であり、静菌活性値は4.0以上であり、優れた抗菌性が認められた。
(実施例2)
実施例1で得られた不織布を、水を溜めた浴槽へ供給し、供給した不織布を浴槽の水中に浸漬した状態で、超音波振動発生装置(パワーユニット、変換機、ブースター、及びホーンから構成)により、2kWの出力設定値おいて振動数20kHzの超音波振動を作り出し、この超音波振動を水を介して不織布へ伝える、エレクトレット化処理を行った。なお、このエレクトレット化処理によって不織布は融着させなかった。次いで、このエレクトレット化させた不織布を乾燥装置へ供給し、温度40℃以下で乾燥し実施例2の不織布を得た。
得られた不織布は、面密度が24.4g/m2、厚さが0.31mmであった。また、この不織布の風速0.10m/秒における圧力損失を、JIS B 9908に規定する圧力損失測定機(形式1)により測定したところ、42Paであった。また、濾過性能試験により計数法の捕集効率が99.97%であることが確かめられた。
(実施例3)
実施例1と同様にして、ノズル孔径0.2mm、ピッチ0.8mmで配置されたメルトブロー用のノズルダイを温度290℃に加熱し、1つのノズル孔あたり0.03g/分の割合で、樹脂原料Bを溶融させた状態で、ポリプロピレン繊維を吐出した。この吐出したポリプロピレン繊維に対して、温度290℃、ノズル幅1mあたり5.0Nm3/分の加熱気流を作用させて、重力の働く方向と同じ方向に繊維径1〜2μm(平均繊維径1.5μm)の極細繊維の流れを形成した。次いで、この極細繊維をメッシュ状コンベアにより捕集して不織布を形成した。なお、コンベアの捕集面とは反対側から空気を吸引除去し、不織布の乱れを防いだ。なお、この工程中、ノズルの詰まりや、糸切れの発生などのトラブルはなく、またショットも極めて少なく、安定した極細繊維を形成することができた。
得られた不織布は、面密度が24.6g/m2、厚さが0.31mmであった。この不織布を電子顕微鏡で観察すると、繊維の所々に球形の粒子が含有されておりその部分が膨らんでいる様子が見られた。また、この不織布の風速0.10m/秒における圧力損失を、JIS B 9908に規定する圧力損失測定機(形式1)により測定したところ、44Paであった。また、濾過性能試験により計数法の捕集効率が45%であることが確かめられた。また、抗菌性試験により、静菌数を求めると600未満であり、静菌活性値は4.0以上であり、優れた抗菌性が認められた。
(比較例1)
実施例1で、樹脂原料Aの替わりに樹脂原料Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、不織布を形成した。得られた不織布は、面密度が24.8g/m2、厚さが0.32mmであった。また、この不織布の風速0.10m/秒における圧力損失を、JIS B 9908に規定する圧力損失測定機(形式1)により測定したところ、42Paであった。また、濾過性能試験により計数法の捕集効率が43%であることが確かめられた。また、抗菌性試験により、静菌数を求めると2.2×10を超える値であり、静菌活性値は2.0未満であり、抗菌性は認められなかった。

Claims (7)

  1. メルトブロー法により製造され表面がポリオレフィン樹脂成分からなる平均繊維径が0.1〜10μmの極細繊維を含む不織布であって、前記極細繊維の前記ポリオレフィン樹脂成分中に抗菌剤を含んだガラス粒子が含まれており、前記ガラス粒子は変成アルミノシリケート骨格を有し、この特殊構造により銀イオンを担持しており、前記ガラス粒子の平均粒子径は3μm以下であり、且つ前記極細繊維の平均繊維径よりも小さい不織布を用いてなることを特徴とするエアフィルタ用濾材
  2. メルトブロー法により製造され表面がポリオレフィン樹脂成分からなる平均繊維径が1.5〜3μmの極細繊維を含む不織布であって、前記極細繊維の前記ポリオレフィン樹脂成分中に抗菌剤を含んだ前記ガラス粒子が含まれており、前記ガラス粒子の平均粒子径は1μm以下である不織布を用いてなることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材
  3. 前記極細繊維を構成する樹脂成分がMFR100(g/10分)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のエアフィルタ用濾材
  4. 前記極細繊維を構成する樹脂成分がメタロセン触媒を用いて製造された樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアフィルタ用濾材
  5. 前記極細繊維を構成する樹脂成分が過酸化物からなる減成剤を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエアフィルタ用濾材
  6. 前記極細繊維を構成する樹脂成分がヒンダードアミン系化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアフィルタ用濾材
  7. エレクトレット加工されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のエアフィルタ用濾材
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