JP4338379B2 - 船 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、船における底部の形状に関するものであり、全ての種類の船に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
造船業において長年培われた経験や、あるいは魚の形状に関する長年の研究によって、船の形状としてはスピンドル形状であり、かつ比較的幅が狭い形状であることが好ましいことが良く知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
オー・クルチ(O.Kurti)著、「船形モデルの構築」(Construction of ship models)、サイドクトポーネ(Судостроение)社(ロシア)、1987年刊行、p.58、図51
喫水下における左右の底面(以下、「セミボトム」という。)の間、あるいは側面のフレームに沿って、曲線状の形状を有するキールが装備されており、当該左右に位置するセミボトム部分に挟まれた部分の形状は、狭くあるいは鋭角的な形状から、広く直角に近い形状へと変化してきている。(例えば非特許文献2参照。)。
【0004】
【非特許文献2】
オー・クルチ(O.Kurti)著、「船形モデルの構築」(Construction of ship models)、サイドクトポーネ(Судостроение)社(ロシア)、1987年刊行、p.58、図52
上述したような形状にもかかわらず、耐航性にかかわる主立った要求項目、すなわち安定性、浮力、あるいは推進性能を最大限高いレベルで満足させることができる最適な船形は、未だ確定されているとは言えない。したがって、かかる船形のみによって満足できない諸性能を改善するために、船に関する多数の付属装置が発明されてきた。
【0005】
典型的なこれらの付属装置として、例えば、船の側面に装備される回転体(特許文献1参照)や、キールの隣に装備される安定板(特許文献2参照)、あるいは安定板とそれらを固定する機構とで構成されている船の安定装置(特許文献3参照)等が考えられている。
【0006】
【特許文献1】
独国特許発明第2462047号明細書
【0007】
【特許文献2】
独国特許出願公開第19738215号明細書
【0008】
【特許文献3】
露国特許発明2059518号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような付属装置は、耐航性を改善することが目的であると言われているが、船の設計段階あるいは開発段階において、その作業をより複雑にしており、現実には当該付属装置を装備しただけという、多くは単なるうわべだけの効果に終始しているものと考えられている。
【0010】
本発明は、特別な付属装置に頼ることなく、本質的な船底形状の改善によって、船の安定性、浮揚性、あるいは推進性能(耐航性)を改善することを可能とするする船を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にかかる船は、船底の中央の縦軸に沿ってキールが装着され、セミボトムがキールの左右に対称形成されている船底形状を有する船であって、キールが装着された左右のセミボトムとキールとの間の角度が120度に等しくなるように形成されており、左右のおのおののセミボトムが、両側の船側部分と同一の一つの平面上に存在していることを特徴とする。
【0012】
かかる構成により、船体に加わる外力が、横断面において120度ずつ均等に、すなわち、キールと2つのセミボトムへと均等に振り分けられることから、特に横傾斜を生じる回転モーメント(ローリングモーメント)に対して効果的に復元モーメントを発生させることができ、船の安定性を高めることが可能となる。
【0013】
また、本発明にかかる船は、キールの高さが左右いずれかのセミボトムの幅以下であることが好ましく、キールの高さが左右いずれかに位置するセミボトムの幅と同一であることがより好ましい。キール高さが左右に位置するセミボトムの幅と同一である場合には、船体に加わる外力が3方向に均等に振り分けられるからである。また、キールの高さの方が小さく、すなわちセミボトムの幅が大きくなる場合には、喫水線も上昇することから、水線面積が増大し、安定性を維持しながら、より可能積載重量を増やすことが可能となる。
また、左右のセミボトムは、船底の中央の縦軸上で互いに交わるように延びており、左右のセミボトムと両側の船側部分とで形成される断面形状がV字状であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態にかかる船底形状について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる船の正面図を、図2は本発明の実施の形態にかかる船の船首部分における斜視図を、それぞれ示している。
【0015】
図1及び図2においては、船底部分が水面下環境2に没している船1の状態を示している。船1は、キール3及び船側部分5と同一の表面上において左右に形成されているセミボトム4を有している。本実施の形態においては、喫水線6よりもキール3側、すなわち水面下にある部分をセミボトム4、喫水線6よりも上側を船側部分5と、便宜上呼ぶことにする。なお、喫水線6は静水時における喫水を用いるものとする。
【0016】
また、図3には本実施の形態にかかる船の横断面図の一例を示す。図3において、左半分が船の前半分における横断面を、右半分が船の後半部における横断面の形状を示している。dは喫水を表しており、各形状を示す線図上の数字は、船の長手方向におけるパーティション番号を示している。パーティション番号は、船の水線長(喫水線上における全長:Length of perpendiculars)を10とし、0が船首を、5が中央横断面を、10が船尾を、それぞれ示すものとする。
【0017】
bは、セミボトム4の幅を示しており、図3における中央の垂線から喫水線までの線図の長さを意味する。すなわち、一般に、船体におけるセミボトム4の幅bは中央横断面(パーティション番号=5)において最大となる。
【0018】
まず安定性の確保の観点から説明する。本実施の形態にかかる船の船底形状では、水に関わる自然災害や天災地変等による予見できない状況下においても、安定性を確保することができる。まず、かかる効果はキール3と2つセミボトム4の角度が互いに120度に等しいという構造に起因する。かかる構造により、船の全長に渡って、左右対称な船形(キール3と2つのセミボトム4)が船の底部に形成される。このような構造を適用することにより、自然災害や天災地変が生じた状況下において、船に加えられる外力が、3つの方向へ(キール3と2つのセミボトム4の方向)均一に配分される。かかる構造と類似の構造は、自然界における魚や鳥の骨格構造において見受けられる。
【0019】
この効果が最大限発揮されるのは、キール3の高さhがセミボトム4の幅bと等しい場合である。このとき、セミボトム4とキール3は、どちらかの方向へ突然傾いた場合において、復元力の発生要素として、船を守る方向に機能する。すなわち、傾斜モーメント(ローリングモーメント)を軽減する方向に復元モーメントが生じることによって、船の安定性維持に貢献することが可能となる。
【0020】
キール3の高さhが小さい場合には、浅い水深のおかげで、すなわち通常の航海時というよりも、むしろ浅い水深の浅瀬や湾内に入ることができることから、船は安定性の減少という問題に遭遇しない。なぜなら、自然災害や天災地変の際には浅い推進の場所へ退避することが多く、かかる浅い水深の場所においては、自然災害や天災地変による影響は比較的小さいからである。
【0021】
この船底形状をタンカーのような重量物運搬船に適用した場合であっても、h=bという割合を適用することは容易であり、すなわちキール3の高さhをセミボトム4の幅bと等しくすることができる。このように、セミボトム4はいわば船の土台のような働きをする。
【0022】
以上のような効果を生ずるべく、船の側面部分5は、上述したセミボトム4と同じ表面上に位置しており、キール高さhはセミボトム4の幅b以下とすることが好ましい(h≦b)。
【0023】
予期されない外力によって傾斜モーメントが生じる場合には、キール3と船の側面部分5と同一表面上にあるセミボトム4で構成され、2つのセミボトム4間の角度が120度の角度で形成されている船1の水面下部分が、水面下環境2に影響を与え、傾斜モーメントの動作に対抗して反対方向の復元モーメントを生じるように機能する。このようにして、外力によって生じた傾斜モーメントを減ずる方向に復元モーメントを発生させるよう機能することができ、安定性を確保することができる。
【0024】
次に、浮力の観点から説明する。一般に良く知られているように、各々の船は、事故が起きないように航海を監視している適当な権威者によって確かめられている、いわゆる荷重喫水線(load waterline)を有している。そして、許可されるべき積載トン数は、水線面積によって決定される。
【0025】
また、船側部分5は、おのおののセミボトム4と同じ平面上にあり、かつセミボトム4間の角度が120度に等しいことから、船側部分5間の角度もまた120度に等しい。このため、外力の分散機能についても、上述した場合と同様となる。すなわち、船側部分5を通じて、セミボトム4とキール3おける同じ部分において、外力が分配されることになる。船側部分5がさらに形成されると、喫水線は上方へと上昇する。このことは、水線面積が増加することを意味することから、危険を増すことなしに、安全性を維持しながらより多くの荷物を船が積み込むことができることを意味する。
【0026】
船側部分5と同一の表面上にあるセミボトム4間の角度と喫水及び重量物運搬可能容量との関係について、図4を参照しながら説明する。図4は本発明の実施の形態にかかる船におけるキールが装着されたセミボトム4及び船側部分5を示す概略正面図を示している。
【0027】
図4において、セミボトム4間の角度がα’の場合には、セミボトム4に挟まれた部分が鋭角形状となっている。この場合、水線面積は比較的小さくなり、それに伴って浮力も比較的小さくなってしまうことから、重量物運搬可能容量も小さくなる。
【0028】
逆に、船側部分5と同一の表面上にあるセミボトム4間の角度がα’’のように増加するにつれて、水線面積は大きくなっていくことから浮力も増加し、重量物運搬可能容量も増加することになる。したがって、船側部分5がセミボトム4と同一の表面上にあるように形成されたデザインによって、セミボトム4間の角度を変えることによって、重量物運搬可能容量の増減が可能となる。
【0029】
しかし、セミボトム4間の角度を増加させることによって重量物運搬可能容量を増加させることはできるが、増加させるだけでは、船1は技術的な安全要求を満たすことができなくなってしまう。すなわち、安定性等を維持することが困難になってしまう。
【0030】
したがって、本実施の形態にかかる発明においては、図5に示すように、キール3と2つセミボトム4間の角度がそれぞれ120度で形成されており、キールの高さhと2つのセミボトム4の幅bの関係が所定の範囲内(h≦b)であり、両側の船側部分がセミボトム4と同一表面上に存在している。この場合、重量物を多く積載することによって船が没水すると、喫水がdからd’へと上昇し、それに伴って水線面積が増加することから、上昇した喫水d’が安全と判断されている荷重喫水の範囲内であれば、船の安全性を損なうことなく、最大浮力とそれに対応した重量物運搬可能容量を求めることが可能となる。
【0031】
また、推進性能(耐航性)の観点から説明すると、特別な装置を装着しないようにすることで、安定性を向上し船側部分に装備されるこれらの装置を用いているときに生じる船の横滑りに対する摩擦抵抗力の増加を生じることがない。
【0032】
すなわち、船1は、進行している間であっても、水面下環境2による抵抗力を克服している。この抵抗力は、以下の2つの構成要素による合力である。
【0033】
a)水に対する船の水面下部分の摩擦抵抗力
b)いわゆる波浪抵抗力
水面下環境2に対する船1の水線下部分における摩擦抵抗力に対して影響を与える構成要素としては、摩擦領域の表面積が考えられる。
【0034】
本実施の形態にかかる船における船底形状においては、安定性を増すことを意図した船側部分5に位置する特別な装置を装備する必要がない。したがって、これらの装置により生じる船の横滑りに対する摩擦抵抗力の増加を回避することができる。
【0035】
また、キール3の高さhがセミボトム4の幅bに近づくにつれて、排水効果率δは減少する。ここで排水効果率δとは、船の水面下の容積と、船1の長さ、幅、喫水と一致する平行六面体の容積との比率である。一般に、排水効果率δの減少により波浪抵抗力を減少することができる。
【0036】
このように、船の水面下部分における本実施の形態にかかる船の船底形状によれば、排水効果率δを減少させることができ、波浪抵抗力を減少させることができる。
【0037】
以上のように本実施の形態によれば、船の進行中に生じている水面下部分における摩擦抵抗力及び波浪抵抗力の双方を減少させることができ、結果として船の推進性能を向上させることも可能となる。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明にかかる船底形状を有する船によれば、キールを含んだセミボトムが120度に等しい角度で形成され、船側部分がセミボトムと同一表面に存在し、キール高さがセミボトムの幅以下であることによって、船の主要な耐航性能要素である安定性、復元性、推進性能を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態にかかる船の正面図
【図2】 本発明の実施の形態にかかる船の船首部分における斜視図
【図3】 本発明の実施の形態にかかる船の横断面の例示図
【図4】 本発明の実施の形態にかかる船におけるセミボトム間の角度と重量物運搬可能容量との関係の説明図
【図5】 本発明の実施の形態にかかる船におけるキールが装着されたセミボトム及び船側部分を示す横断面図
【符号の説明】
1 船
2 水面下環境
3 キール
4 セミボトム
5 側面部分
6 喫水線
b セミボトムの幅
d、d’ 喫水
h キールの高さ
α、α’、α’’ セミボトムの角度
δ 排水効果率

Claims (3)

  1. 船底の中央の縦軸に沿ってキールが装着され、セミボトムが前記キールの左右に対照に形成されている船底形状を有する船であって、
    前記キールが装着された左右の前記セミボトムと前記キールとの間の角度がそれぞれ120度に等しくなるように形成されており、
    左右のおのおのの前記セミボトムが、両側の船側部分と同一の一つの平面上に存在していることを特徴とする船。
  2. 前記キールの高さが前記セミボトムの幅以下である請求項1に記載の船。
  3. 前記左右のセミボトムは、前記船底の中央の縦軸上で互いに交わるように延びており、前記左右のセミボトムと前記両側の船側部分とで形成される断面形状がV字形状である請求項1に記載の船。
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