JP4336783B2 - アルカリ電池用亜鉛合金粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ電池の放電持続時間を改善し且つガス発生量の少ないアルカリ電池用亜鉛合金粉末およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルカリ乾電池等電池の負極材料としては、亜鉛または亜鉛合金が用いられている。亜鉛は水素過電圧が高いことや価格が比較的低廉であることから好んで負極材として用いられてきたが、亜鉛を使用することのみでは、電池使用時における水素ガスの多量発生を十分に抑制することは困難であって、それに伴う電解液漏れなどの問題を生じていた。
【0003】
このような問題を解決する目的で、ガス発生抑制に有効な手段として亜鉛をアマルガム化して用いる方法が近年広く行われてきている。しかしながら、この方法では廃乾電池を処分する際に水銀による公害の問題が伴うため、無水銀で所望の効果が得られる亜鉛合金の開発が求められてきた。このような問題に対処する技術としては、例えば特開昭63−304571号「電池用亜鉛合金およびその製造法」などの発明があり、無水銀化への成果が上げられている。
【0004】
また、近年、アルカリ乾電池が使用される機器の変化に伴い、大電流を取り出す用途が拡大している。そのため、アルカリ乾電池についても、大電流すなわち重負荷での放電性能の向上が求められている。この重負荷での放電性能の向上を図るため、亜鉛合金粉末の粒径を小さくする方法が開示されている。しかし、この方法では重負荷での放電性能の改善が認められるものの、ガス発生速度の増加により、乾電池の保存時の耐漏液性が劣化するため、実用化されるまでには至っていない。
【0005】
亜鉛合金粉末は、通常、アトマイズ法にて製造されるが、このアトマイズ法によって得られる粉末は球状粒子もしくは紡錘状、涙滴状などの不規則形状粒子である。そして、アルカリ乾電池用の負極材として使用される粒子形状は、球状粒子以外の紡錘状および涙滴状などの不規則形状粒子が好んで用いられる。これは、不規則形状のアトマイズ粉末はゲル状負極材に加工した際に粒子間の接触面積を高める作用を有し、接触面積が高くなるほどアルカリ電池の内部抵抗が低下することにより放電性能が向上するからである。
【0006】
また、アトマイズ粉末の粒子形状を示す指標として嵩密度が挙げられる。嵩密度が大きい場合は球状ないし球状に近い粒子が多く、逆に小さい場合は不規則形状ないし不規則形状に近い粒子が多い。この嵩密度と電池の内部抵抗の関係を図2に示す。この図2から分るように、不規則形状粒子が多く嵩密度が小さい粉末の方が、内部抵抗は小さくなり、放電性能にすぐれていることがわかる。すなわち、放電性能を向上させるためには粒子間の接触面積を高めることが重要であり、負極材用としては球状以外の紡錘状および涙滴状などの不規則形状の粒子が用いられることになる。なお、参考として、図中上部域に嵩密度の高低に伴うアトマイズ粉末の球状化ないし不規則形状化の方向を示してある(図3においても同様である)。
【0007】
アトマイズ粉末は雰囲気中の酸素濃度を制御することにより、微小融滴に分散された際の融滴の表面張力を変え、形状をコントロールすることができる。雰囲気中の酸素濃度が低い程球状粒子が得られ易く、この酸素濃度が高い程、不規則形状粒子が得られ易くなる傾向にある。すなわち、雰囲気中の酸素濃度を制御することによって、不規則形状の亜鉛粒子を多く得るようにして嵩密度を低く抑えることにより、電池負極材の内部抵抗を小さくすることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アトマイズ粉末について、その嵩密度と部分放電後ガス発生速度との関係を調査した結果では、図3に示したように、不規則形状粒子が多く嵩密度が小さいアトマイズ粉末程放電時すなわち電池使用時の水素ガス発生速度が大きく、水素ガス発生量が増加するという問題があり、雰囲気中の酸素濃度の制御のみによる粒子形状コントロール手段もまた電池用亜鉛合金粉末の製造方法としては不十分であるという状況にある。
【0009】
本発明者等が、このアトマイズ粉末の水素ガス発生速度の増大の原因について調査した結果では、雰囲気中の酸素濃度を高めてアトマイズ粉末の嵩密度を小さくした場合、亜鉛粒子の酸化が進むため、アトマイズ粉末の含有酸素量と嵩密度との関係を示した図4のように、不規則形状粒子が多く嵩密度が小さい程アトマイズ粉末中の含有酸素量が増加することがわかった。また、アトマイズ粉末の含有酸素量と部分放電後ガス発生速度との関係を示した図5に見られるように、アトマイズ粉末の含有酸素量が多い程水素ガス発生量が多くなることがわかった。なお、図4と図5では、参考として、図中の上部域にアトマイズ粉末の含有酸素量に伴う球状化と不規則形状化の方向を示してある。
【0010】
前記のように、亜鉛粒子に酸化物が残存した場合、電解液中で酸化物と亜鉛間で局部電池を形成し、これがガスの発生を促進しているものと推測できる。すなわち、アトマイズ雰囲気の酸素濃度を高めて不規則形状粒子の割合を高めたアトマイズ粉末では、放電性能が向上する反面、亜鉛粒子の残存酸化物により水素ガス発生量が増加するという問題があるのであって、単に亜鉛粒子の形状制御手段のみによって電池性能の向上と電池使用時における水素ガス発生の抑制を両立させることは困難な状況にある。
【0011】
以上の状況に鑑み、本発明は、アトマイズ法における雰囲気酸素濃度の制御以外の亜鉛粒子の形状制御手段によって製造されるアトマイズ粉末であって、放電が順調に行われ、放電持続時間が改善される等放電性能の向上が図れると共に、電池使用時における水素ガス発生量の抑制をも可能とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末およびその効率的な製造方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者等は鋭意研究したところ、不活性ガスの噴射により亜鉛合金溶湯を微小融滴に分散させると共に、この分散した微小融滴を凝固する前に金属板等の衝突板に衝突させることにより、形成される扁平状亜鉛粒子によりアトマイズ粉末の嵩密度を広範囲に亘って制御することが可能であり、酸素含有量が少なく且つ扁平状の亜鉛粒子を多く含んで嵩密度を低く抑えたアトマイズ粉末が得られること、および、該アトマイズ粉末を使用することにより水素ガス発生量を抑えると共に、放電性能にも優れるアルカリ電池が得られることを見出し本発明に達した。
【0013】
すなわち、本発明は、第1に、ビスマス、インジウム、アルミニウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を 0.0001〜0.5重量%含み、残部が亜鉛および不可避的不純物からなり、嵩密度が 1.8〜3.0g/cm3であり、且つ、含有酸素量が100ppm以下の粉末であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末であり、第2に、ビスマス、インジウム、アルミニウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を0.0001〜0.5重量% 含み、残部が亜鉛および不可避的不純物からなり、扁平状の亜鉛合金粒子数が全亜鉛合金粒子数の2割以上を占める粉末であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末であり、第3に、前記粉末における前記扁平状の亜鉛合金粒子は厚さが50μm以下のものであることを特徴とする前記第2または第3のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末であり、第4に、前記粉末は嵩密度が1.8〜3.0g/cm3であり、且つ、含有酸素量が100ppm以下であることを特徴とする前記第2または第3のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末である。
また、本発明は、第5に、亜鉛にビスマス、インジウム、アルミニウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を 0.0001〜0.5重量%になるように配合して溶融した亜鉛合金溶湯を流下させ、低酸素濃度の噴射ガスを噴射して亜鉛合金溶湯流を粉砕させると共に、分散した微小融滴を衝突板に衝突させて凝固させたアトマイズ粉末を得ることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法であり、第6に、前記噴射ガスの酸素濃度および噴射装置内雰囲気の酸素濃度を、それぞれ 0.1%以下とすることを特徴とする前記第5に記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法であり、第7に、前記噴射ガスの流速を100〜1500m/secとすることを特徴とする前記第5または第6のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法であり、第8に、前記噴射ガスは、圧力が100〜500kPaで、流量が0.1〜1.5Nm3/minであり、噴射ノズルを介して100〜1500m/secの流速で噴射されることを特徴とする前記第5〜第7のうちのいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法であり、第9に、前記亜鉛合金溶湯流と前記衝突板との間隔を10〜70cmとすることを特徴とする前記第5〜第8のうちのいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法であり、第10に、前記亜鉛合金溶湯の温度を450〜600℃とすることを特徴とする前記第5〜第9のうちのいずれかであることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の亜鉛合金粉末は多量の扁平状粒子を含むアトマイズ粉末であり、亜鉛と所定量の特定合金元素とを混合溶融して合金溶湯化し、その溶湯流をセラミックス製のノズルを介して細流状に流下させ、この溶湯流に対して高圧の噴射ガスを噴射させ、微小融滴に粉砕し分散させると共にこの微小融滴を固化する前に衝突板に衝突させ、扁平状に加工すると同時に凝固させることで得られる扁平状粒子を含むアトマイズ粉末である。この場合、分散用噴射ガスの流速、溶湯流と衝突板間の距離および合金溶湯温度を制御することにより、アトマイズ粉末における扁平状の粒子と球状の粒子の割合をコントロールでき、嵩密度を広範囲に亘って任意に制御することができる。
分散した微小融滴を衝突させる衝突板としては、亜鉛合金溶湯の熱に耐え得る材質のものであればよく、通常はアルミニウム等金属板が用いられる。
【0015】
アトマイズに際し、高圧の噴射ガスを噴射すると溶湯流は粉砕され分散されるが、分散した微小融滴は、その粒度に応じて凝固時間が異なり、粒度が小さくなるほどその表面積が大きくなるため放熱し易くなり、凝固時間が短くなる。したがって、分散後の微小融滴の一部は衝突板に衝突する前に凝固するため扁平状にはならず、得られたアトマイズ粉末には球状粒子または通常のアトマイズで得られる涙滴状粒子等不規則形状のまま凝固した粒子が存在する。この球状粒子または涙滴状粒子等不規則形状粒子と衝突板によって形成される扁平状粒子の比率の違いにより、亜鉛合金粉末の嵩密度をコントロールでき、扁平状粒子の割合を増加させることにより嵩密度を小さくすることができる。したがってまた、アトマイズに際し、分散用の噴射ガス流速を大きくすることにより、衝突板に衝突する微小融滴の割合を増加させ、扁平状粒子の割合が大きくさせることにより、アトマイズ粉末の嵩密度を小さくすることができる。
【0016】
噴射ガスの圧力は100〜500kPaで、噴射ガスのガス流量は0.1〜1.5Nm3/min、望ましくは0.8Nm3/minとする。また、噴射ノズルの形状は任意であるが、前記ガス流量のガスを導入した時、ガス流速が100〜1500m/secとなるような口径のものを選定することが望ましい。ガス流速が100m/secを下回ると厚さが50μm以下の扁平状粒子が得られ難く、 1500m/secを上回ると粒径が小さくなり過ぎる。このガス流速は噴射ガス流量をノズル噴き出し面積で割って求めることができる。さらに、溶湯流の位置(分散用噴射ガスによる粉砕点)と衝突板との距離を変えることにより、凝固前に衝突する粒子の割合を変化させることができ、この溶湯流と衝突板との距離は、10〜70cm望ましくは、25cmとすることにより、凝固前に衝突する粒子の割合を増加させて扁平状粒子の割合を高め、亜鉛合金粉末の嵩密度を小さくすることができる。この距離が70cmを上回ると扁平状粒子の割合が少な過ぎ、10cmを下回ると衝突板への分散粒子の付着が著しくなる。またさらに、溶湯温度を高くした場合においても、凝固時間が長くなり、凝固前に衝突する微小融滴の割合が大きくなるので、扁平状粒子の割合を高め、亜鉛合金粉末の嵩密度を小さくすることが可能となる。反面において温度が高くなると含有酸素量が増加する傾向があり、溶湯温度は 450〜600℃、好ましくは約500℃とする。
【0017】
この扁平状粒子の厚さは、50μm以下であることが望ましく、扁平状粒子の厚さを50μm以下とすることにより、負極材のゲル中での粒子間の接触点を多くし、電池の内部抵抗を小さくすることができる。すなわち、放電性能を向上させることができる。また、この扁平状粒子数の割合は全粒子数の2割以上が望ましい。扁平状粒子数の全粒子数に対する割合が2割を下回ると粒子間の接触点が少なくて内部抵抗に問題が生ずる。扁平状粒子数の割合と嵩密度とはほぼ直線的な関係にあるが、偏平状粒子数の割合が0で嵩密度は 4.0〜4.2g/cm3程度であり、偏平状粒子数の割合が7割5分では嵩密度は 1.9〜2.2g/cm3程度に相当する。
なお、扁平状粒子の厚さは、サンプルの一部を抜き取り、顕微鏡写真を撮影して測定することができる。また、扁平状粒子の割合についても、同様に、顕微鏡写真によりカウントすることで判定できる。
【0018】
さらに、扁平状粒子を製造する際に噴射ガスおよび装置内雰囲気の酸素濃度はそれぞれ0.1%以下好ましくは50ppm程度以下となるようにすることが望ましい。扁平状粒子の製造において、噴射ガスおよび装置内雰囲気の酸素濃度を 0.1%以下とすることにより、アトマイズ粉末中の含有酸素量を低減させることができ、放電時のガス発生を抑制させることができる。この酸素濃度が 0.1%を超えると、得られるアトマイズ粉末中の酸素量が多くなり、電池に使用した場合に、実用に耐え得る程度まで放電時の水素ガス発生速度を抑制することができなくなる。
なお、装置内雰囲気の酸素量は、噴射ガスの酸素量により制御することもできる。
【0019】
電池における水素ガスの発生は、電解液中において亜鉛粒子表面に局部電池が形成されるのが原因であることが知られており、この局部電池の形成は鉄等の不可避的不純物や亜鉛酸化物と亜鉛の電位差により生じるとされている。これら不純物等の悪影響を抑制するために、亜鉛にアルミニウム、ビスマス、インジウムおよびマグネシウムの内の1種以上の金属を 0.0001〜0.5重量%含むように添加して合金化させる方法が用いられ、水素ガス発生の抑制に成果を上げている。しかし、これまでの方法では、放電性能を維持させるため、アトマイズ雰囲気中に酸素を含有させて形状制御を行っているので、亜鉛酸化物の生成によるガス発生については抑制できなかったものである。
【0020】
本発明においては、前記のように、アトマイズ法において金属板等衝突板を用いて融滴を扁平状の亜鉛粒子形状に加工することを可能としたので、形状制御のためのアトマイズ雰囲気の酸素は特に必要とせず、不活性ガスを用いてアトマイズを行うことが可能となり、噴射ガスと共に装置内雰囲気中の酸素量を減少させ、製造される亜鉛粒子における酸化物の生成を抑制することができ、これにより酸化物の生成に起因する局部電池の形成を抑制し、水素ガスの発生量を低下させることができたものである。
【0021】
また、亜鉛粒子を扁平状としたアトマイズ粉末を電池に負極材として組み込んでゲル状とした場合、前記のように、粒子間の接触点が増してゲルの内部抵抗を小さくすることができると共に、球状粒子の場合よりも表面積を大きくでき、したがって、反応面積が大となるため、放電反応時における亜鉛の溶解反応を順調に進行させることができ、放電持続時間が改善される等放電性能を向上させるものである。
以下に本発明の詳細に関して実施例により説明する。
【0022】
【実施例】
[実施例1]
アルミニウム5ppm,ビスマス100ppmおよびインジウム500ppmで残部が亜鉛になるように配合して溶解した 450℃の亜鉛合金溶湯をセラミックス製のノズルを介して細流状に流下させ、噴射ノズルから常温の窒素ガスを噴射して溶湯流を粉砕し分散させると共に分散した融滴をアルミニウム衝突板へ衝突させ、扁平状粒子を含むアトマイズ粉末を得た。この時、アルミニウム衝突板は溶湯流粉砕位置から25cm離間した位置に設置した。また、噴射に用いた窒素ガスの圧力は300kPaで、ガス流量は 0.8Nm3/minであった。噴射ノズルは噴き出し面積が30.0mm2のものを用いたので、ガス流速は444m/secである。また、装置内雰囲気の酸素濃度は50ppmであった。
【0023】
得られたアトマイズ粉末を、篩を用いて 75〜425μmに整粒し、含有酸素量と嵩比重を測定した。整粒後のアトマイズ粉末のSEM写真(×50)を図6に示した。また、このアトマイズ粉末中の扁平状粒子を拡大したSEM写真(×200) を図7に示した。図6に示すアトマイズ粉末のSEM写真から求めた全粒子数に対する扁平状粒子数の割合は約5割であった。このアトマイズ粉末に40%水酸化カリウム水溶液とゲル化材としてのポリアクリル酸を混合し、ゲル状の負極材を調製した。
この負極材をJISに規定するLR6型のアルカリ電池に組み込み、 2Ω,0.9V で電池容量の25%放電させた後(部分放電後に相当)、水素ガス発生速度と電池の放電持続時間を測定し、また、放電時の放電曲線を観察し、放電性能を評価した。
前記のアトマイズ条件を表1に、得られたアトマイズ粉末の性状と放電性能等の評価結果を表2に示した。
【0024】
[実施例2]
実施例1と同様配合の亜鉛合金を溶解し、 500℃の温度で流下させ、同じ噴き出し面積の噴射ノズルにより窒素ガスを0.8Nm3/minの流量で噴射させ、分散した微小融滴をアルミニウム衝突板に衝突させて扁平状粒子を含むアトマイズ粉末を得た。得られたアトマイズ粉末について、実施例1と同様に篩分・整粒して性状を調査した。整粒後のアトマイズ粉末のSEM写真(×50)を図8に示した。また、この図8のSEM写真から求めた全粒子数に対する偏平状粒子数の割合は、約7割5分であった。次いで、負極材ゲルを調製し、電池に組み込んで実施例1と同様の性能評価を行った。また、装置内雰囲気の酸素濃度は50ppmであった。
アトマイズ条件を表1に、得られたアトマイズ粉末の性状と放電性能の評価結果を表2に併記した。
【0025】
[実施例3]
実施例1と同様配合の亜鉛合金を溶解し、 500℃の温度で流下させ、同じ噴き出し面積の噴射ノズルにより窒素ガスを噴射ガスとして0.6Nm3/minの流量で噴射させると共に、分散した微小融滴をアルミニウム衝突板に衝突させて扁平状粒子を含むアトマイズ粉末を得た。このアトマイズ粉末について、実施例1と同様に篩分・整粒して性状を調査したが、整粒後のアトマイズ粉末における全粒子数に対する扁平状粒子数の割合は約5割であった。次いで、負極材ゲルを調製し、電池に組み込んで実施例1と同様の性能評価を行った。なお、前記噴射ガスの流速は333m/secである。また、装置内雰囲気の酸素濃度は50ppmであった。
アトマイズ条件を表1に、得られたアトマイズ粉末の性状と放電性能の評価結果を表2に併記した。
【0026】
[比較例1〜8]
比較例1〜8として、実施例1と同様配合の亜鉛合金を溶解し、500℃または600℃の温度で流下させ、窒素ガスと酸素ガスにより酸素濃度を0〜5%の範囲内で変えた混合ガス(比較例8においては酸素 0%)による分散用噴射ガスを、それぞれ、 0.25Nm3/minの流量で噴射し、分散した微小融滴を金属板への衝突をさせることなく凝固させてアトマイズ粉末を得た。得られたアトマイズ粉末を75〜 450 μmに整粒し、性状を調査した。なお、雰囲気酸素濃度を1%とした比較例4の整粒後のアトマイズ粉末についてSEM写真(×50)を図9に示したが、粉末は、球状、紡錘状、涙滴状等不規則形状粒子からなっていることがわかる。次いで、整粒後の各アトマイズ粉末を、実施例1と同様な方法で負極材ゲルを調製して電池に組み込み、実施例1と同様な放電性能の評価を行った。なお、噴射ノズルには噴き出し面積が35.3mm2のものを用いたので、ガス流速は 118m/secである。装置内雰囲気の酸素濃度は前記噴射ガスの酸素濃度にほぼ等しかった。
アトマイズ条件を表1に、得られたアトマイズ粉末の性状と放電性能の評価結果を表2に併記した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
本実施例と比較例における、アトマイズ粉末における含有酸素量と嵩密度の関係を図1に示した。この図1と、表1および表2において見られるように、衝突板を使用しない従来のアトマイズ法によって行われた比較例においては、酸素を含まない場合(比較例8)は形状制御が行われないので嵩密度が高く、酸素を導入した場合は、形状制御が行われ、嵩密度が抑えられるが、合金粒子の含有酸素が高く、電池使用時を示す部分放電後のガス発生速度が大きくなり、放電持続時間も短くなっていることを示した。なお、比較例8の放電曲線では電圧乱調を示したが、これは亜鉛粒子間の接触が不足して電池の内部抵抗が変化したことにより惹き起されたものとみられる。
これに対し、本発明の実施例においては衝突板の利用による合金粒子の形状制御を行うことにより、アトマイズ粉末の含有酸素量を増加させずに嵩密度を小さく抑えることができた。すなわち、含有酸素量を低減することにより電池使用時のガス発生速度を大幅に且つ安定的に抑制すると共に、粒子形状を変化させることにより放電性能を維持および向上させることが可能であることを示した。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、アトマイズにおいて、亜鉛粒子の形状制御のための酸素含有ガスの利用が不要となり、含有酸素が少ないアトマイズ粉末が得られ、電池使用時の水素ガス発生量が低減され、同時に放電性能の向上したアルカリ電池用亜鉛合金粉末の提供が可能になるという効果が得られる。また、アトマイズにおいて衝突板を利用することにより、アトマイズと同時的に亜鉛粒子の扁平化加工を行い、扁平状粒子を含み嵩密度が小さく含有酸素量も低いアトマイズ粉末が効率的に得られる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例と比較例におけるアトマイズ粉末の含有酸素量と嵩密度の関係を示す図である。
【図2】アトマイズ粉末における嵩密度と電池内部抵抗との関係を示す図である。
【図3】アトマイズ粉末における嵩密度と部分放電後ガス発生速度との関係を示す図である。
【図4】アトマイズ粉末における含有酸素量と嵩密度との関係を示す図である。
【図5】アトマイズ粉末における含有酸素量と部分放電後ガス発生速度との関係を示す図である。
【図6】実施例1における整粒後のアトマイズ粉末を示すSEM写真である。
【図7】図6のアトマイズ粉末における扁平状粒子を拡大して示すSEM写真である。
【図8】実施例2における整粒後のアトマイズ粉末を示すSEM写真である。
【図9】比較例4における整粒後のアトマイズ粉末を示すSEM写真である。
Claims (9)
- ビスマス、インジウム、アルミニウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を0.0001〜0.5重量%含み残部が亜鉛および不可避的不純物からなり、嵩密度が1.8〜3.0g/cm3であり、且つ、含有酸素量が100ppm以下の粉末であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末。
- 前記粉末において扁平状の亜鉛合金粒子数が全亜鉛合金粒子数の2割以上を占める請求項1記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末。
- 前記扁平状の亜鉛合金粒子は厚さが50μm以下のものであることを特徴とする請求項2記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末。
- 亜鉛にビスマス、インジウム、アルミニウムおよびマグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を0.0001〜0.5重量%になるように配合して溶解した亜鉛合金溶湯を流下させ、低酸素濃度の噴射ガスを噴射して亜鉛合金溶湯流を粉砕させると共に分散した微小融滴を衝突板に衝突させて凝固させたアトマイズ粉末を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 前記噴射ガスの酸素濃度および噴射装置内雰囲気の酸素濃度を、それぞれ、0.1%以下とすることを特徴とする請求項4に記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 前記噴射ガスの流速を100〜1500m/secとすることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 前記噴射ガスは、圧力が100〜500kPaで、流量を0.1〜1.5Nm3/minであり、噴射ノズルを介して100〜1500m/secの流速で噴射されることを特徴とする請求項4〜6のうちのいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 前記亜鉛合金流と前記衝突板との間隔を10〜70cmとすることを特徴とする請求項4〜7のうちのいずれか記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 前記亜鉛合金溶湯の温度を450〜600℃とすることを特徴とする請求項4〜8のうちのいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
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