JP3434961B6 - アルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、アルカリ電池の負極剤(負極活物質)となる亜鉛合金粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルカリ乾電池用電池の負極剤としては亜鉛または亜鉛合金粉末が用いられている。亜鉛は水素過電圧が高いことや価格が比較的低廉であることから好んで負極剤として用いられている。
【0003】
この亜鉛合金粉末は電解液およびゲル化剤と混合しゲル状亜鉛負極剤とした後、単3型や単4型等のセルに注入しアルカリ乾電池として組み込むが、流動性の劣る亜鉛合金粉末を使用した場合、計量性が劣ったり、特にボタン電池等の小型のセルにゲル状亜鉛負極剤を注入する場合に注入ノズルが閉塞したりする問題があった。
【0004】
亜鉛粉の流動性は粒子の形状に影響され、球状に近いものほど流動性が良いことが知られている。しかし、亜鉛溶湯に高圧ガスを噴射して粉化させるいわゆるアトマイズ法において製造される亜鉛粉の粒子の形状は、アトマイズの際に生成する粒子表面の酸化皮膜が液滴の粘性を大きくするため、球状とはならずに紡錘状もしくは涙状のものとなり易い。そのため、こうした粒子形状の亜鉛扮を使用したゲル状亜鉛負極剤は、粒子同士が絡み合って摩擦が大きく流動性が劣るという欠点を有していた。
【0005】
そこで、流動性の良い亜鉛粉を得るために粒子を球状化させる方法が種々提案されている。ところで、亜鉛粉の粒子形状は雰囲気および噴射ガス中の酸素濃度に影響され、酸素濃度が低いほど球状に近くなることが知られており、真球状の亜鉛粒子を得るために雰囲気中の酸素を8%以下とすることで、流動性の高い亜鉛粉を得る方法が提案されている(特公昭60−9081、9082)。
【0006】
しかし、この方法では流動性は改善されるが、不活性ガスを使用することと酸素濃度をコントロールするため高価な設備が必要となり、製造された亜鉛粉も高価なものとならざるを得ない。また、この粒子を使用してゲル化させた場合ゲル状亜鉛負極剤の流動性の向上は図れるものの、粒子同士の接触点が減少することおよび粒子の表面積が小さくなるため反応性が乏しくなり、電池に組み込んだ場合、放電利用率が低下するという問題があった。
【0007】
そこでこの球状の亜鉛粉と紡錘状もしくは涙状等異形の粒子を混合しゲル状亜鉛負極剤を形成するという方法が提案されている(特開平7−254406)。
【0008】
しかし、この方法ではゲル状亜鉛負極剤の流動性は改善されるが、2種類の亜鉛粉を均一混合するための工程が増えることによるコストアップと混合中に混合機からの汚染の危険性という問題が発生することが十分に考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、亜鉛粉末を乾電池の負極剤として組み込む際には流動性の良否が重要であり、上記のアトマイズ用の噴射ガス中の酸素濃度を低くして球状に近い亜鉛粉を得る方法も、また球状の亜鉛粉に紡錘状もしくは涙状などの亜鉛粉を混合して負極剤を形成する方法も一長一短があり、それぞれ放電利用率の低下やコストアップといった課題を抱えるものであった。
【0010】
したがって本発明の目的は、圧縮空気だけをガス源としてアトマイズすることにより、低廉で流動性が良く、ゲル状亜鉛負極剤充墳の際、注入ノズルの詰まりが防止されるアルカリ電池用亜鉛合金粉末およびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、雰囲気および噴射ガス中の酸素濃度だけでなく、アトマイズ時の溶湯温度が亜鉛粉末の流動性に影響し、溶湯温度を制御することで亜鉛粉末の流動性が改善されることを見いだし本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は第1に、精製した溶融亜鉛を添加金属で合金化した溶湯を直径1〜5mmの穴を有するセラミック製ノズルを用いて下方に細流下させ、この細流に高圧ガスを噴射して粉化させることによってそのままアルカリ電池の負極活物質として用いるアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法において、上記合金化した溶湯の温度が460℃以上であり、かつ上記高圧ガスが圧縮空気であり、前記添加金属による合金成分がAl 0.001〜0.01重量%、Bi 0.001〜0.05重量%およびIn 0.01〜0.1重量%であり、該粉末の80〜150メッシュに分級したもののアスペクト比が2.0〜4.0の範囲であることを特徴とするアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法;第2に、精製した溶融亜鉛を添加金属で合金化した溶湯を直径1〜5mmの穴を有するセラミック製ノズルを用いて下方に細流下させ、この細流に高圧ガスを噴射して粉化させることによってそのままアルカリ電池の負極活物質として用いるアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法において、上記合金化した溶湯の温度が460℃以上であり、かつ上記高圧ガスが圧縮空気であり、前記添加金属による合金成分がAl 0.001〜0.01重量%、Bi 0.001〜0.05重量%およびIn 0.01〜0.1重量%であり、該粉末の流動性がJISZ2502の金属粉の流動度測定方法で測定した場合、流動度として40〜75秒/50gであり、かつ該粉末の80〜150メッシュに分級したもののアスペクト比が2.0〜4.0の範囲であることを特徴とするアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法;第3に、前記アスペクト比のメジアン値が2.0〜3.0の範囲である、第1または2に記載のアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法を提供するものである。
【0013】
【作用】
本発明では通常使用される工業用精製亜鉛を原料とし、この亜鉛を溶解し、Al、In、Biの合金成分を添加して亜鉛合金とする。
【0014】
Alは亜鉛に合金化することにより、合金粉末粒子の表面を平滑にし、反応性に関係する表面積を減少させ、ガス発生を抑制する効果があり、Inは合金粉末表面の水素過電圧を高めて電池として保存中の腐食によるガス発生を抑制する作用があり、Biも同様に放電前のガス発生を抑制するが放電後のガス発生を増大する傾向があり、これらの添加元素は、Al0.001〜0.1重量%、Bi0.001〜0.05重量%、In0.01〜0.1重量%の成分範囲で含有するのが好ましく、これらの範囲を逸脱したり、単独で含有されてもその効果は得られない。
【0015】
本発明では所定量の特定元素を混合溶融して合金化した後、圧縮空気だけをガス源として用いてアトマイズすることにより、流動性が向上した亜鉛合金粉末を得ることができ、これをそのままアルカリ電池の負極活物質として用いることができる。
【0016】
亜鉛合金粉末の流動性はJISZ2502の金属粉の流動度測定方法で測定した場合、その流動度はなるべく小さい方が良いが、40〜75秒/50gであることが好ましい。これは75秒/50gを超えると、亜鉛合金粉を電解液とゲル化剤とによりゲル状の負極剤を形成して乾電池のセルに組み込む場合、ゲル注入ノズルの閉塞が著しくなるためであり、40秒/50g未満では球状に近い粒子の割合が多くなり過ぎるため、前述の理由で放電利用率が低下してしまうからである。
【0017】
アルカリ電池用に使用される亜鉛合金粉は通常35〜200メッシュ程度の粒度のものが使用されるが、その粒子形状は粒度によって異なっており、大きい粒度のものは円盤状に近く、小さい粒度のものは細長くなる。そのため、粒子形状を比較する場合には広い粒度のままで形状測定すると、測定値のばらつきが大きくなり正確な形状の測定ができなくなるため、測定する際は粒度を揃えた方が好ましい。そこで、粒子形状の代表値として比較的大きな割合を占める80〜150メッシュの粒度のアスペクト比を測定した。ここで、アスペクト比とは粒子を顕微鏡で観察し、その長軸と短軸の長さを求め長軸/短軸の比を算出した値である。
【0018】
流動性を向上するためには前述の通りアスペクト比が小さいものほど良いが、アスペクト比の値としては2.0〜4.0の範囲であることが好ましい。アスペク卜比が2.0未満となると球状に近すぎるため表面積が小さくなり、電池に組み込んで放電させた場合、反応面積が小さくなること、接触点が減少すること等から放電利用率が低下するためである。また、アスペクト比が4.0より大きくなると粒子同士が絡み易くなるため摩擦力が大となり流動性が著しく劣るためである。
【0019】
溶湯温度を460℃以上にするとアトマイズ法によって得た亜鉛合金粉の流勤性が良くなる理由は以下のように考えられる。すなわち、亜鉛合金粉末の流動性は粒子の形状に起因し、この粒子形状はアトマイズ時に生じる微細な液滴の粘性に左右されるが、この粘性は酸素濃度だけでなく、溶融亜鉛合金自体の粘性が大きく左右する。
【0020】
一般的に金属の溶融物は温度が高い程、その粘性は小さくなることが知られており、亜鉛の溶融物も粘性は温度が高くなるほど小さくなる。ここで、溶湯の温度が低く粘性が大きい場合に圧縮空気を噴射してアトマイズすると微細な液滴とならず、その粒子ば細長い形状のものとなり易い。しかし、溶湯自体の温度が高く粘性の小さい場合に圧縮空気を噴射してアトマイズすると、圧縮空気の溶湯に対する粉砕能力が高くなるため、粒子の形状は細長い形状とはならずに球状に近い粒子が生成する。
【0021】
また、圧縮空気をガス源として使用した場合は、不活性ガスを用いた場合に比較して粒子表面に酸化皮膜が生成し易くなり、これが粒子表面の表面張力を高くして粒子が球状になろうとする作用を妨害するが、溶湯温度を高くすることで液滴自体の粘性が小さくなるため酸化皮膜の生成により粘性が高くなる傾向に打ち勝って比較的球状に近い亜鉛粉が生成されるものと考えられる。
【0022】
本発明において溶湯温度を460℃以上としたのは460℃朱満では溶湯の粘性が高く、流動性向上のために十分な効果が得られないからである。また溶湯の温度は650℃以下とするのが好ましい。なぜなら650℃を超えると流動性の向上には効果的であるが、アトマイズされた亜鉛粉表面の酸化皮膜が厚くなり、この酸化皮膜が電池に組み込み放電させた場合に内部抵抗が大きくなり、電池の放電特性が劣るためである。また650℃を超える温度では溶融亜鉛の酸化および揮散が著しくなり、実操業には向かないからである。したがって、これらの作用によりアトマイズ時の溶湯温度を460〜650℃にコントロールすることで粒子形状が球状に近くなり生成する亜鉛粉の流動性が向上するものと考えられる。
【0023】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
【実施例】
純度99.995%以上の溶融した金属亜鉛に各添加元素を表1に示す含有量となるように添加し溶解した。
【0025】
次にこの溶融物の温度を同じく表1に示す所定の温度に制御し圧縮空気だけをガス源として噴霧し、アトマイズ法により粉体化して亜鉛合金粉末を作成した。
【0026】
この亜鉛合金粉末を35〜200メッシュに分級したものについて、流動性を評価するためにJISZ2502の方法で流動度(秒/50g)を測った(表1)。
【0027】
また、亜鉛合金粉末粒子の形状については形状が粒度によって異なるため、亜鉛合金粉末をさらに80〜150メッシュに分級したものについてその粒子を顕微鏡で観察し、その長軸と短軸の長さを測定し、長軸/短軸の比をアスペクト比として算出した。このアスペクト比の算出にあたっては粒子を100個以上測定し、その平均値としてメジアン値を用いた。
【0028】
【比較例】
実施例と同様に各添加元素を表1に示す含有量となるように添加して調製した溶湯の温度を440℃に制御した以外は実施例の要領に従って亜鉛合金粉末を作成し、測定結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
表1の結果からわかるように、460℃以上で640℃までの溶湯をアトマイズして得られた本発明による亜鉛合金粉末の流動度は47〜66秒/50gの範囲であるのに対し、溶湯温度を440℃でアトマイズしたものはアスペクト比が4.0を超え、流動性が悪くその流動度は86〜100秒/50gである。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、雰囲気中の酸素濃度を制御したり、不活性ガスをガス源として使用することなく圧縮空気だけを噴射する簡便な方法で流動性の良い亜鉛合金粉末が得られるので、これをアルカリ電池用の負極活物質として用いれば小型乾電池の組み込み工程でのノズルの閉塞が解消され、電池組み込み工程における作業性を大幅に向上できる。
【産業上の利用分野】
本発明は、アルカリ電池の負極剤(負極活物質)となる亜鉛合金粉末およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルカリ乾電池用電池の負極剤としては亜鉛または亜鉛合金粉末が用いられている。亜鉛は水素過電圧が高いことや価格が比較的低廉であることから好んで負極剤として用いられている。
【0003】
この亜鉛合金粉末は電解液およびゲル化剤と混合しゲル状亜鉛負極剤とした後、単3型や単4型等のセルに注入しアルカリ乾電池として組み込むが、流動性の劣る亜鉛合金粉末を使用した場合、計量性が劣ったり、特にボタン電池等の小型のセルにゲル状亜鉛負極剤を注入する場合に注入ノズルが閉塞したりする問題があった。
【0004】
亜鉛粉の流動性は粒子の形状に影響され、球状に近いものほど流動性が良いことが知られている。しかし、亜鉛溶湯に高圧ガスを噴射して粉化させるいわゆるアトマイズ法において製造される亜鉛粉の粒子の形状は、アトマイズの際に生成する粒子表面の酸化皮膜が液滴の粘性を大きくするため、球状とはならずに紡錘状もしくは涙状のものとなり易い。そのため、こうした粒子形状の亜鉛扮を使用したゲル状亜鉛負極剤は、粒子同士が絡み合って摩擦が大きく流動性が劣るという欠点を有していた。
【0005】
そこで、流動性の良い亜鉛粉を得るために粒子を球状化させる方法が種々提案されている。ところで、亜鉛粉の粒子形状は雰囲気および噴射ガス中の酸素濃度に影響され、酸素濃度が低いほど球状に近くなることが知られており、真球状の亜鉛粒子を得るために雰囲気中の酸素を8%以下とすることで、流動性の高い亜鉛粉を得る方法が提案されている(特公昭60−9081、9082)。
【0006】
しかし、この方法では流動性は改善されるが、不活性ガスを使用することと酸素濃度をコントロールするため高価な設備が必要となり、製造された亜鉛粉も高価なものとならざるを得ない。また、この粒子を使用してゲル化させた場合ゲル状亜鉛負極剤の流動性の向上は図れるものの、粒子同士の接触点が減少することおよび粒子の表面積が小さくなるため反応性が乏しくなり、電池に組み込んだ場合、放電利用率が低下するという問題があった。
【0007】
そこでこの球状の亜鉛粉と紡錘状もしくは涙状等異形の粒子を混合しゲル状亜鉛負極剤を形成するという方法が提案されている(特開平7−254406)。
【0008】
しかし、この方法ではゲル状亜鉛負極剤の流動性は改善されるが、2種類の亜鉛粉を均一混合するための工程が増えることによるコストアップと混合中に混合機からの汚染の危険性という問題が発生することが十分に考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、亜鉛粉末を乾電池の負極剤として組み込む際には流動性の良否が重要であり、上記のアトマイズ用の噴射ガス中の酸素濃度を低くして球状に近い亜鉛粉を得る方法も、また球状の亜鉛粉に紡錘状もしくは涙状などの亜鉛粉を混合して負極剤を形成する方法も一長一短があり、それぞれ放電利用率の低下やコストアップといった課題を抱えるものであった。
【0010】
したがって本発明の目的は、圧縮空気だけをガス源としてアトマイズすることにより、低廉で流動性が良く、ゲル状亜鉛負極剤充墳の際、注入ノズルの詰まりが防止されるアルカリ電池用亜鉛合金粉末およびその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、雰囲気および噴射ガス中の酸素濃度だけでなく、アトマイズ時の溶湯温度が亜鉛粉末の流動性に影響し、溶湯温度を制御することで亜鉛粉末の流動性が改善されることを見いだし本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は第1に、精製した溶融亜鉛を添加金属で合金化した溶湯を直径1〜5mmの穴を有するセラミック製ノズルを用いて下方に細流下させ、この細流に高圧ガスを噴射して粉化させることによってそのままアルカリ電池の負極活物質として用いるアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法において、上記合金化した溶湯の温度が460℃以上であり、かつ上記高圧ガスが圧縮空気であり、前記添加金属による合金成分がAl 0.001〜0.01重量%、Bi 0.001〜0.05重量%およびIn 0.01〜0.1重量%であり、該粉末の80〜150メッシュに分級したもののアスペクト比が2.0〜4.0の範囲であることを特徴とするアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法;第2に、精製した溶融亜鉛を添加金属で合金化した溶湯を直径1〜5mmの穴を有するセラミック製ノズルを用いて下方に細流下させ、この細流に高圧ガスを噴射して粉化させることによってそのままアルカリ電池の負極活物質として用いるアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法において、上記合金化した溶湯の温度が460℃以上であり、かつ上記高圧ガスが圧縮空気であり、前記添加金属による合金成分がAl 0.001〜0.01重量%、Bi 0.001〜0.05重量%およびIn 0.01〜0.1重量%であり、該粉末の流動性がJISZ2502の金属粉の流動度測定方法で測定した場合、流動度として40〜75秒/50gであり、かつ該粉末の80〜150メッシュに分級したもののアスペクト比が2.0〜4.0の範囲であることを特徴とするアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法;第3に、前記アスペクト比のメジアン値が2.0〜3.0の範囲である、第1または2に記載のアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法を提供するものである。
【0013】
【作用】
本発明では通常使用される工業用精製亜鉛を原料とし、この亜鉛を溶解し、Al、In、Biの合金成分を添加して亜鉛合金とする。
【0014】
Alは亜鉛に合金化することにより、合金粉末粒子の表面を平滑にし、反応性に関係する表面積を減少させ、ガス発生を抑制する効果があり、Inは合金粉末表面の水素過電圧を高めて電池として保存中の腐食によるガス発生を抑制する作用があり、Biも同様に放電前のガス発生を抑制するが放電後のガス発生を増大する傾向があり、これらの添加元素は、Al0.001〜0.1重量%、Bi0.001〜0.05重量%、In0.01〜0.1重量%の成分範囲で含有するのが好ましく、これらの範囲を逸脱したり、単独で含有されてもその効果は得られない。
【0015】
本発明では所定量の特定元素を混合溶融して合金化した後、圧縮空気だけをガス源として用いてアトマイズすることにより、流動性が向上した亜鉛合金粉末を得ることができ、これをそのままアルカリ電池の負極活物質として用いることができる。
【0016】
亜鉛合金粉末の流動性はJISZ2502の金属粉の流動度測定方法で測定した場合、その流動度はなるべく小さい方が良いが、40〜75秒/50gであることが好ましい。これは75秒/50gを超えると、亜鉛合金粉を電解液とゲル化剤とによりゲル状の負極剤を形成して乾電池のセルに組み込む場合、ゲル注入ノズルの閉塞が著しくなるためであり、40秒/50g未満では球状に近い粒子の割合が多くなり過ぎるため、前述の理由で放電利用率が低下してしまうからである。
【0017】
アルカリ電池用に使用される亜鉛合金粉は通常35〜200メッシュ程度の粒度のものが使用されるが、その粒子形状は粒度によって異なっており、大きい粒度のものは円盤状に近く、小さい粒度のものは細長くなる。そのため、粒子形状を比較する場合には広い粒度のままで形状測定すると、測定値のばらつきが大きくなり正確な形状の測定ができなくなるため、測定する際は粒度を揃えた方が好ましい。そこで、粒子形状の代表値として比較的大きな割合を占める80〜150メッシュの粒度のアスペクト比を測定した。ここで、アスペクト比とは粒子を顕微鏡で観察し、その長軸と短軸の長さを求め長軸/短軸の比を算出した値である。
【0018】
流動性を向上するためには前述の通りアスペクト比が小さいものほど良いが、アスペクト比の値としては2.0〜4.0の範囲であることが好ましい。アスペク卜比が2.0未満となると球状に近すぎるため表面積が小さくなり、電池に組み込んで放電させた場合、反応面積が小さくなること、接触点が減少すること等から放電利用率が低下するためである。また、アスペクト比が4.0より大きくなると粒子同士が絡み易くなるため摩擦力が大となり流動性が著しく劣るためである。
【0019】
溶湯温度を460℃以上にするとアトマイズ法によって得た亜鉛合金粉の流勤性が良くなる理由は以下のように考えられる。すなわち、亜鉛合金粉末の流動性は粒子の形状に起因し、この粒子形状はアトマイズ時に生じる微細な液滴の粘性に左右されるが、この粘性は酸素濃度だけでなく、溶融亜鉛合金自体の粘性が大きく左右する。
【0020】
一般的に金属の溶融物は温度が高い程、その粘性は小さくなることが知られており、亜鉛の溶融物も粘性は温度が高くなるほど小さくなる。ここで、溶湯の温度が低く粘性が大きい場合に圧縮空気を噴射してアトマイズすると微細な液滴とならず、その粒子ば細長い形状のものとなり易い。しかし、溶湯自体の温度が高く粘性の小さい場合に圧縮空気を噴射してアトマイズすると、圧縮空気の溶湯に対する粉砕能力が高くなるため、粒子の形状は細長い形状とはならずに球状に近い粒子が生成する。
【0021】
また、圧縮空気をガス源として使用した場合は、不活性ガスを用いた場合に比較して粒子表面に酸化皮膜が生成し易くなり、これが粒子表面の表面張力を高くして粒子が球状になろうとする作用を妨害するが、溶湯温度を高くすることで液滴自体の粘性が小さくなるため酸化皮膜の生成により粘性が高くなる傾向に打ち勝って比較的球状に近い亜鉛粉が生成されるものと考えられる。
【0022】
本発明において溶湯温度を460℃以上としたのは460℃朱満では溶湯の粘性が高く、流動性向上のために十分な効果が得られないからである。また溶湯の温度は650℃以下とするのが好ましい。なぜなら650℃を超えると流動性の向上には効果的であるが、アトマイズされた亜鉛粉表面の酸化皮膜が厚くなり、この酸化皮膜が電池に組み込み放電させた場合に内部抵抗が大きくなり、電池の放電特性が劣るためである。また650℃を超える温度では溶融亜鉛の酸化および揮散が著しくなり、実操業には向かないからである。したがって、これらの作用によりアトマイズ時の溶湯温度を460〜650℃にコントロールすることで粒子形状が球状に近くなり生成する亜鉛粉の流動性が向上するものと考えられる。
【0023】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
【実施例】
純度99.995%以上の溶融した金属亜鉛に各添加元素を表1に示す含有量となるように添加し溶解した。
【0025】
次にこの溶融物の温度を同じく表1に示す所定の温度に制御し圧縮空気だけをガス源として噴霧し、アトマイズ法により粉体化して亜鉛合金粉末を作成した。
【0026】
この亜鉛合金粉末を35〜200メッシュに分級したものについて、流動性を評価するためにJISZ2502の方法で流動度(秒/50g)を測った(表1)。
【0027】
また、亜鉛合金粉末粒子の形状については形状が粒度によって異なるため、亜鉛合金粉末をさらに80〜150メッシュに分級したものについてその粒子を顕微鏡で観察し、その長軸と短軸の長さを測定し、長軸/短軸の比をアスペクト比として算出した。このアスペクト比の算出にあたっては粒子を100個以上測定し、その平均値としてメジアン値を用いた。
【0028】
【比較例】
実施例と同様に各添加元素を表1に示す含有量となるように添加して調製した溶湯の温度を440℃に制御した以外は実施例の要領に従って亜鉛合金粉末を作成し、測定結果を表1に示した。
【0029】
【表1】
表1の結果からわかるように、460℃以上で640℃までの溶湯をアトマイズして得られた本発明による亜鉛合金粉末の流動度は47〜66秒/50gの範囲であるのに対し、溶湯温度を440℃でアトマイズしたものはアスペクト比が4.0を超え、流動性が悪くその流動度は86〜100秒/50gである。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、雰囲気中の酸素濃度を制御したり、不活性ガスをガス源として使用することなく圧縮空気だけを噴射する簡便な方法で流動性の良い亜鉛合金粉末が得られるので、これをアルカリ電池用の負極活物質として用いれば小型乾電池の組み込み工程でのノズルの閉塞が解消され、電池組み込み工程における作業性を大幅に向上できる。
Claims (3)
- 精製した溶融亜鉛を添加金属で合金化した溶湯を直径1〜5mmの穴を有するセラミック製ノズルを用いて下方に細流下させ、この細流に高圧ガスを噴射して粉化させることによってそのままアルカリ電池の 負極活物質として用いるアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法において、上記合金化した溶湯の温度が460℃以上であり、かつ上記高圧ガスが圧縮空気であり、前記添加金属による合金成分がAl 0.001〜0.01重量%、Bi 0.001〜0.05重量%およびIn 0.01〜0.1重量%であり、該粉末の80〜150メッシュに分級したもののアスペクト比が2.0〜4.0の範囲であることを特徴とするアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 精製した溶融亜鉛を添加金属で合金化した溶湯を直径1〜5mmの穴を有するセラミック製ノズルを用いて下方に細流下させ、この細流に高圧ガスを噴射して粉化させることによってそのままアルカリ電池の 負極活物質として用いるアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法において、上記合金化した溶湯の温度が460℃以上であり、かつ上記高圧ガスが圧縮空気であり、前記添加金属による合金成分がAl 0.001〜0.01重量%、Bi 0.001〜0.05重量%およびIn 0.01〜0.1重量%であり、該粉末の流動性がJISZ2502の金属粉の流動度測定方法で測定した場合、流動度として40〜75秒/50gであり、かつ該粉末の80〜150メッシュに分級したもののアスペクト比が2.0〜4.0の範囲であることを特徴とするアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法。
- 前記アスペクト比のメジアン値が2.0〜3.0の範囲である、請求項1または2に記載のアルカリ電池負極活物質用亜鉛合金粉末の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1996067259A JP3434961B6 (ja) | 1996-02-28 | アルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP1996067259A JP3434961B6 (ja) | 1996-02-28 | アルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
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JPH09235636A JPH09235636A (ja) | 1997-09-09 |
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