JP3944537B2 - アルカリ電池用亜鉛合金粉末 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアルカリ電池用亜鉛合金粉末に関し、詳しくは亜鉛合金粉末の酸素濃度を所定の値とし特定の元素を含有させることにより、水素ガスの発生を抑制し、耐蝕性を向上させたアルカリ電池用亜鉛合金粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、アルカリ電池用負極剤に用いられる亜鉛合金粉末は、最適亜鉛合金組成の選択、亜鉛粒子の表面処理、アルカリ電解液への腐食抑制剤(インヒビター)添加等により水素ガス発生を抑制するなど主に化学的な方法により行われているのが現状であり、例えばビスマス、インジウム、アルミニウム等の合金元素を添加した亜鉛合金粉末などがある。しかしながら、このような合金成分の組み合わせであっても、耐蝕性向上のための最適組成とは言えず次のような欠点のあることがわかった。
【0003】
(1)ビスマスについては放電前後のガス発生に影響し添加量を増すと放電前のガス発生量を抑制するが、放電後のガス発生量が増大する傾向となる。逆に放電後のガス発生量を減少させるためにビスマス添加量を減らすと、放電前のガス発生量が増す。
【0004】
(2)これらのガス発生を防止するため電解液に余計なインヒビターを添加する必要がある。
【0005】
現在亜鉛合金粉末は、4N以上(純度99.995%以上)の高純度電気亜鉛を用い、アトマイズ法で製造する方法が最も広く用いられている。この方法では例えばアトマイズには高圧不活性ガス、もしくは高圧空気等の噴霧ガスを用いるのが普通であり通常室温に近い温度で使用される。この噴霧時に亜鉛合金溶体は冷却されて粉末となるが、空気などの酸素を含有するガスを使用した場合、粉末表面の一部が酸化され酸化亜鉛の被膜が生成することは良く知られている。
【0006】
また極く微量ではあるが、粉末が冷却されて凝固する間に溶体中に巻き込まれる、あるいは合金内部に吸蔵され亜鉛合金粉末粒子内部に存在する噴霧ガスもあるものと推定される。粉末を室温に放置した場合でも環境状況で変わるものの、徐々にではあるが表面は酸化され酸化被膜層を形成するものと推定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来の亜鉛合金粉末は、耐蝕性向上のための元素を添加することで亜鉛合金粉末の自己放電によるガス発生量をある程度抑制させることができたが、ビスマスの添加量を増大すると放電前のガス発生については減少させることができるが逆に放電後のガス発生量が増加するという問題を生じた。
【0009】
したがって本発明の目的は、その合金組成を改良して、従来技術のものに比し水素ガス発生量を抑制したアルカリ電池用亜鉛合金粉末を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の元素を添加することによって特性が改善され、放電前後のガス発生、特に放電後のガス発生が大幅に抑制されることを見いだし本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は、酸素濃度が . 01〜0 . 07重量%であってさらに、ビスマスを0.01重量%以下、インジウムを0.07重量%以下、アルミニウムを0.01重量%以下、マグネシウムを . 001〜0 . 010重量%の各金属元素を含み、残部が亜鉛および不可避不純物からなることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末である。
【0012】
【作用】
上記のように構成することにより以下のような作用がある。
【0013】
ここで各添加元素の効果としては以下のように推定されている。ビスマスは亜鉛の水素過電圧を高めてガス発生を抑制する効果を有している。インジウムは亜鉛合金粉末表面の水素過電圧を高めて、電池として保存中の腐食によるガス発生を抑制する作用があり、アルミニウムは亜鉛に合金化することにより、亜鉛合金粉末粒子の表面を平滑化する効果があって、これによって反応性に関係する表面積を減少させることとなり、ガス発生抑制効果を発揮せしめる効果がある。マグネシウムもアルミニウムと同様な効果がある。しかし、各成分元素の含有量が上記範囲を逸脱した場合には、水素ガスの発生を抑制する効果が得られなかったり、実用的な放電性能が維持できないという問題が生じる。またこれらの成分のいずれかが欠けても本発明の効果は得られない。
【0014】
また本発明の亜鉛合金粉末は酸素濃度が0.01〜0.07重量%であることが必要である。ここでいう酸素濃度とは亜鉛合金粉末を黒鉛ルツボ中で黒鉛パウダーとともに燃焼させ、得たCOガスをCO2に転換し赤外線吸収法によりCO2を求めて酸素に換算するものでLECO社製のTC−436型を用いて求めたものである。
【0015】
ここで亜鉛合金粉末の酸素濃度が0.2重量%を越えると放電前のガス発生量は低下するが、放電後のガス発生量が増加したり作動電圧の低下等、放電特性が悪くなる問題が生じる。この原因はこの範囲を越えて表面酸素濃度が高くなると、内部抵抗が急に増大するためと考えられる。
【0016】
以下実施例および比較例をもって本発明を具体的に説明する。なお、以下の「%」はすべて重量%を意味する。
【0017】
【実施例1〜7】
図1は亜鉛合金粉末について、放電前のガス発生速度を求めるため実施例および比較例に用いたガス発生測定装置の側断面図、図2は、同じく用いられた放電後のガス発生速度を求めるためのガス発生測定装置の側断面図であって、これらをも参照して以下説明する。
【0018】
純度99.995%以上の溶融した金属亜鉛にインジウム0.05%、アルミニウムを0.003%加えて調製したベースメタルに各添加元素(ビスマスとマグネシウム)を所定範囲の含有量となるように溶解する。次にこの溶融物を前もって設定した噴霧条件により高圧ガスを用いて噴射し、粉体にして亜鉛合金粉末を得た。
【0019】
このようにして作製した亜鉛合金粉末をふるい分けして、酸素濃度が0.2重量%以下の産物を得て電池用亜鉛合金粉末とした。得られた亜鉛合金粉末について放電前後のガス発生速度、酸素濃度を求めた。
【0020】
ここで放電前のガス発生速度のついては図1に示した測定法により行った。すなわち放電前にについては、亜鉛合金粉末1を所定量投入し、酸化亜鉛を飽和させた40%KOH溶液2を添加後、流動パラフィン6を満たしてシリコーンゴム栓7で封じた試験管8を60℃の恒温槽10中に保持し、ガス発生速度をピペット9の目盛りで読んで求め現行品のガス発生量を100としその比率で示した(表1)。
【0021】
ここで放電後のガス発生速度については図2に示した測定法により行った。すなわち、亜鉛合金粉末をゲル化後、LR6型電池(セル)3に組み込み、20℃10Ωで48時間放電後、45℃の恒温槽10において、キャップ4つきの集電棒5をはずし、流動パラフィン6を満たしシリコーンゴム栓7で封じた試験管8中でのガス発生速度をピペット9の目盛りで読んで求め現行品の放電前後のガス発生量を100としその比率で示した。その結果を酸素濃度ともに表1に示した。なおガス発生の評価については良いものを〇印、悪いものを×印、中間のものを△印とした。
【0022】
【比較例1〜11】
実施例と同様にインジウム0.05%、アルミニウム0.003%を添加したベースメタルを調整後、添加元素が所定範囲外の含有量となるように溶解して、実施例の要領に従い亜鉛合金粉末を得、ふるい分けしてから酸素濃度が所定範囲外の電池用合金粉末を用意した。
【0023】
これらのサンプルについて、実施例と同様に酸素含有濃度、放電前後のガス発生速度を求め、その結果を表1に示した。
【0024】
【表1】
Figure 0003944537
表1に示されるように、実施例1〜7ではアルミニウム、インジウム、ビスマス、マグネシウムの添加成分および酸素濃度を変化させたものである。特定の成分範囲であって酸素濃度が所望の範囲に入ったものは目的とするガス発生速度の評価は良い。比較例1〜11ではアルミニウム、インジウム、ビスマス、マグネシウムの添加成分の組み合わせ、かつ酸素濃度を変化させたものである。これらの比較例では水素ガス発生を抑制する効果が認められない。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明のごとく特定の添加元素を加え、酸素濃度が特定の範囲の亜鉛粉末は、アルカリ電池の負極活物質に用いることにより、放電前の水素ガス発生は現行品と同等であり、特に放電後の水素ガス発生を大幅に抑制する。
【図面の簡単な説明】
【図1】放電前のガス発生速度を求めるため実施例および比較例に用いたガス発生測定装置の側断面図である。
【図2】放電後のガス発生速度を求めるため実施例および比較例に用いたガス発生測定装置の側断面図である。
【符号の説明】
1 亜鉛合金粉末
2 酸化亜鉛を飽和させた40%KOH溶液
3 LR6セル
4 キャップ
5 集電棒
6 流動パラフィン
7 シリコーンゴム栓
8 試験管
9 ピペット
10 恒温槽

Claims (1)

  1. 酸素濃度が . 01〜0 . 07重量%であってさらに、ビスマスを0.01重量%以下、インジウムを0.07重量%以下、アルミニウムを0.01重量%以下、マグネシウムを . 001〜0 . 010重量%の各金属元素を含み、残部が亜鉛および不可避不純物からなることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末。
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