JP3545985B2 - 亜鉛合金粉及びこれを用いたアルカリ電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ電池用亜鉛合金粉として、負極活物質に用いられるもので、耐食性に優れ放電性能を向上させたアルカリ電池用亜鉛合金粉および、この亜鉛合金粉を用いたアルカリ電池に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、アルカリ電池用亜鉛合金粉は、亜鉛合金溶湯をアトマイズ法(エアーアトマイズ)により製造している。こうして得られた亜鉛合金粉をアルカリ電池の負極として電池に充填するが、亜鉛合金粉の微粒粉の比率が高いものを負極材として使用することで放電性能は向上するが、水素ガスの発生量が増え、電池からの電解液漏れ等の問題が想定され実用化には至っていない。
【0003】
また、アルカリ電池の負極活物質である微量金属添加亜鉛合金粉は、熱処理を行うことで水素ガスの発生が抑制されることは、例えば特願平3−359973号(特開平5−182660)、特願平8−151407号(特開平10−3908)などに記載されているが、内部抵抗が高くなり、放電特性が低下するという問題がある。
【0004】
本発明は、耐食性に優れ、電池放電特性特にハイレート放電性能を向上させることのできる、アルカリ電池の負極活物質に用いるのに好適なアルカリ電池用亜鉛合金粉および、この亜鉛合金粉を用いたアルカリ電池を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明者等は、熱処理を施した微量金属添加亜鉛合金粉の水素ガス発生量及び電池特性を粒度別に調べた結果、微粒粉側が水素ガス発生の抑制効果が大きく、内部抵抗の上昇率が低いことが確認できた。この為、種々検討した結果、内部抵抗が低く、放電性能に優れた微粒粉のみ熱処理を行い、未処理の通常粒度品(20〜150meshまたは、35〜150meshまたは、20〜200meshまたは、35〜200mesh)と混合することで、微粒粉の比率を高くしても水素ガス発生量が現行品と同等もしくは低減でき、内部抵抗も抑制され放電性能が向上することが確認され、本発明に至った。
【0006】
即ち、[請求項1]の発明は、微量添加金属Al,Bi,Ca,In,Mg,Pb,Snの内少なくとも1種以上を0.005〜0.05重量%含むアルカリ電池用亜鉛合金粉であって、不活性ガス雰囲気中で熱処理した、150meshのふるい目を通過する150mesh以下の「亜鉛微粒粉」を5〜50重量%と、20meshのふるい目は通過するが150meshのふるい目は通過しない20〜150meshの粒度範囲の「未処理亜鉛合金粉」を50〜95重量%と、を混合してなることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉であることを特徴とする。
【0007】
[請求項2]の発明は、請求項1において、「亜鉛微粒粉」は、150meshのふるい目は通過するが300meshのふるい目は通過しない150〜300meshの粒度範囲に粒度調整したものであることを特徴とする。
【0008】
[請求項3]の発明は、微量添加金属Al,Bi,Ca,In,Mg,Pb,Snの内少なくとも1種以上を0.005〜0.05重量%含むアルカリ電池用亜鉛合金粉であって、不活性ガス雰囲気中で熱処理した、200meshのふるい目を通過する200mesh以下の「亜鉛微粒粉」を5〜50重量%と、20meshのふるい目は通過するが200meshのふるい目は通過しない20〜200meshの粒度範囲の「未処理亜鉛合金粉」を50〜95重量%と、を混合してなるアルカリ電池用亜鉛合金粉であることを特徴とする。
【0009】
[請求項4]の発明は、請求項3において、「亜鉛微粒粉」は、200meshのふるい目は通過するが300meshのふるい目は通過しない200〜300meshの粒度範囲に粒度調整したものであることを特徴とする。
【0010】
[請求項5]の発明は、請求項1乃至請求項4の亜鉛合金粉を負極活物質に用いてなるアルカリ電池であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、微量添加金属Al,Bi,Ca,In,Mg,Pb,Snの内少なくとも1種以上を0.005〜0.05重量%含むアルカリ電池用亜鉛合金粉であって、不活性ガス雰囲気中で熱処理した微粒粉を5〜50重量%と、20〜150meshまたは、35〜150meshまたは、20〜200meshまたは、35〜200meshの粒度範囲の未処理亜鉛合金粉50〜95重量%とを混合してなるアルカリ電池用亜鉛合金粉である。
【0012】
ここで、未処理亜鉛合金粉とは熱処理していない亜鉛合金粉を言う。また、微量添加金属Al,Bi,Ca,In,Mg,Pb,Snの内少なくとも1種以上が0.005重量%以下では、添加金属の効果が充分でなく、0.05重量%以上では、放電容量の低下につながる。また、不活性ガス雰囲気中で熱処理した微粒粉が5重量%以下では、放電性能の向上が充分でなく、50重量%以上だと、水素ガス発生の抑制が充分でない。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の効果を示す好適な実施例を表1に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、表1の数値に基づき、図1〜6を作成した。図1は亜鉛合金粉の放電前ガス発生速度を粒度別にグラフ化したものである。合金組成はBiを0.015重量%、Inを0.05重量%添加したものと、Biを0.025重量%、Inを0.025重量%、Ca0.013重量%添加したものの2試料を用い、熱処理を行った場合と、行わなかった場合との比較を行った。熱処理は、アルゴンガス雰囲気中に300℃で2時間静置保持して、自然冷却することにより行った。
【0014】
また、亜鉛合金粉の放電前ガス発生速度の測定は、電解液として濃度40重量%の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和させたものを5ml用い、これに亜鉛合金粉を10g浸漬し、45℃で3日間のガス発生速度(μl/g・day)を測定することによって行った。図1から、熱処理を施すことで、各粒度共、水素ガスの発生が抑制されているが、特に微粒粉側で熱処理の効果が大きいことが分かる。
【0015】
図2は、アルカリ電池の内部抵抗を、負極に用いた亜鉛合金粉の粒度別に測定したものである。合金組成はBiを0.015重量%、Inを0.05重量%添加したものと、Biを0.025重量%、Inを0.025重量%、Ca0.013重量%添加したものの2試料を用い、熱処理を行った場合と、行わなかった場合との比較を行った。熱処理は、アルゴンガス雰囲気中に300℃で2時間静置保持して、自然冷却することにより行った。
【0016】
また、アルカリ電池は図7に示すようにJIS規格LR6形式とし、20℃の温度で7日間保存した後、電池テスターにて内部抵抗の測定を行った。図2から、熱処理を施すことで、各粒度共、内部抵抗が上がる傾向があるが、微粒粉側で内部抵抗の上昇率が低いことが分かる。
【0017】
図3は、アルカリ電池の放電持続時間を、負極に用いた亜鉛合金粉の粒度別に測定したものである。合金組成はBiを0.015重量%、Inを0.05重量%添加したものと、Biを0.025重量%、Inを0.025重量%、Ca0.013重量%添加したものの2試料を用い、熱処理を行った場合と、行わなかった場合との比較を行った。なお、放電持続時間は、Biを0.015重量%、Inを0.05重量%添加した、20〜200meshの熱処理を行なっていない亜鉛合金粉を用いた場合の放電持続時間を100とした相対値で示した。熱処理は、アルゴンガス雰囲気中に300℃で2時間静置保持して、自然冷却することにより行った。
【0018】
また、JIS規格LR6形式としたアルカリ電池を20℃の温度で7日間保存した後、図2での内部抵抗測定終了後、放電抵抗1Ωで連続放電を行い、終止電圧0.9Vに至るまでの放電持続時間の測定を行った。図3から、熱処理を施すことで、各粒度共、放電持続時間が短くなる傾向があるが、粗粒粉側に比べ微粒粉側で熱処理の影響が少ないことが分かる。
【0019】
上記の図1〜図3までの結果により、粗粒子側はもともと水素ガス発生のレベルが低く、逆に熱処理することにより、放電性能が低下することにもなる為、亜鉛合金粉全体に熱処理を施すことは適切でないことが分かる。
【0020】
図4は亜鉛合金混合粉の放電前ガス発生速度を混合比率別に測定したものである。合金組成はBiを0.015重量%、Inを0.05重量%添加したものを用い、粒度範囲は200mesh以下、150mesh以下、200〜300mesh、150〜300meshの4種類の微粒粉を熱処理した。次に、150mesh以下及び150〜300meshの熱処理亜鉛合金粉は、20〜150meshの未処理亜鉛合金粉に混合し、200mesh以下及び200〜300meshの熱処理亜鉛合金粉は、20〜200meshの未処理亜鉛合金粉に混合して、混合比率別に亜鉛合金粉の放電前ガス発生速度を測定した。熱処理は、アルゴンガス雰囲気中に300℃で2時間静置保持して、自然冷却することにより行った。
【0021】
また、亜鉛合金混合粉の放電前ガス発生速度の測定は、電解液として濃度40重量%の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を飽和させたものを5ml用い、これに亜鉛合金粉を10g浸漬し、45℃で3日間のガス発生速度(μl/g・day)を測定することによって行った。図4から、混合比率が50重量%を超えると、ガス発生量が大きくなることが分かる。また、20〜200mesh粉の亜鉛合金粉に200mesh以下の微粒粉を混合したものを全て熱処理した従来方法においても、同様の傾向が見られた。
【0022】
図5はアルカリ電池の内部抵抗を、負極に用いた亜鉛合金混合粉の混合比率別に測定したものである。合金組成はBiを0.015重量%、Inを0.05重量%添加したものを用い、粒度範囲は200mesh以下、150mesh以下、200〜300mesh、150〜300meshの4種類の微粒粉を熱処理した。次に、150mesh以下及び150〜300meshの熱処理亜鉛合金粉は、20〜150meshの未処理亜鉛合金粉に混合し、200mesh以下及び200〜300meshの熱処理亜鉛合金粉は、20〜200meshの未処理亜鉛合金粉に混合して、混合比率別に亜鉛合金粉の内部抵抗を測定した。熱処理は、アルゴンガス雰囲気中に300℃で2時間静置保持して、自然冷却することにより行った。
【0023】
アルカリ電池はJIS規格LR6形式とし、20℃の温度で7日間保存した後、電池テスターにて内部抵抗の測定を行った。図5から、混合比率が高くなると、内部抵抗が下がる傾向にあることが分かる。また、20〜200mesh粉の亜鉛合金粉に200mesh以下の微粒粉を混合したものを全て熱処理した従来方法と比較して、いずれの混合比率においても、内部抵抗が低くなる傾向がある。特に30〜50%の混合比率で、内部抵抗が著しく低いことが分かる。
【0024】
図6はアルカリ電池の放電持続時間を、負極に用いた亜鉛合金混合粉の混合比率別に測定したものである。合金組成はBiを0.015重量%、Inを0.05重量%添加したものを用い、粒度範囲は200mesh以下、150mesh以下、200〜300mesh、150〜300meshの4種類の微粒粉を熱処理しした。次に、150mesh以下及び150〜300meshの熱処理亜鉛合金粉は、20〜150meshの未処理亜鉛合金粉に混合し、200mesh以下及び200〜300meshの熱処理亜鉛合金粉は、20〜200meshの未処理亜鉛合金粉に混合して、混合比率別に亜鉛合金粉の放電持続時間を測定した。熱処理は、アルゴンガス雰囲気中に300℃で2時間静置保持して、自然冷却することにより行った。
【0025】
アルカリ電池はJIS規格LR6形式とし、20℃の温度で7日間保存した後、放電抵抗1Ωで連続放電を行い、終止電圧0.9Vに至るまでの放電持続時間の測定を行った。図6から、混合比率が高くなると、放電時間が延びる傾向にあることが分かる。また、20〜200mesh粉の亜鉛合金粉に200mesh以下の微粒粉を混合したものを全て熱処理した従来方法と比較して、いずれの混合比率においても、放電時間が延びる傾向がある。特に30〜50%の混合比率で、放電時間が著しく延びていることが分かる。
【0026】
上記の図4〜図6までの結果により、微粒粉のみ熱処理を施した場合、50%の混合比率までは、微粒粉を混合しない製品と同等のレベルにまで放電前のガス発生が抑制され、かつ放電時間は、全ての粒度に熱処理を施した場合に比較して伸びていることが分かる。特に熱処理を施した微粒粉を30〜50%混合した場合、著しい効果が得られる。
【0027】
また、亜鉛合金粉の合金組成をBiを0.05重量%、Inを0.05重量%、Mgを0.01重量%、Snを0.01重量%添加して、上記と同様の試験を行ったので、その結果を表1の実施例16と比較例17〜19に示した。また、亜鉛合金粉の合金組成をBiを0.05重量%、Inを0.05重量%、Alを0.05重量%添加して、上記と同様の試験を行ったので、その結果を表1の実施例12〜15と比較例12〜16に示した。これらの場合も図1から図6に示したのと同様の傾向が見られた。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
耐食性に優れ、電池放電特性特にハイレート放電性能を向上させることがで
きる、アルカリ電池の負極活物質に用いるのに好適なアルカリ電池用亜鉛合金粉および、この亜鉛合金粉を用いたアルカリ電池を提供できる。また、ガスアトマイズ法において発生する微粒粉を無駄にすること無く負極材料として用いることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】亜鉛合金粉粒度別の放電前ガス発生速度を示すグラフである。
【図2】亜鉛合金粉粒度別の内部抵抗を示すグラフである。
【図3】亜鉛合金粉粒度別の放電持続時間を示すグラフである。
【図4】熱処理微粒粉の混合比率による放電前ガス発生速度を示すグラフである。
【図5】熱処理微粒粉の混合比率による内部抵抗を示すグラフである。
【図6】熱処理微粒粉の混合比率による放電持続時間を示すグラフである。
【図7】本発明で用いたアルカリ電池を例示する断面図
【符号の説明】
1…正極缶、2…正極、3…セパレーター、4…負極、5…負極集電子、6…封口キャップ、7…ガスケット、8…負極端子。
Claims (5)
- 微量添加金属Al,Bi,Ca,In,Mg,Pb,Snの内少なくとも1種以上を0.005〜0.05重量%含むアルカリ電池用亜鉛合金粉であって、
不活性ガス雰囲気中で熱処理した、150meshのふるい目を通過する150mesh以下の亜鉛微粒粉を5〜50重量%と、
20meshのふるい目は通過するが150meshのふるい目は通過しない20〜150meshの粒度範囲の未処理亜鉛合金粉を50〜95重量%と、を混合してなることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉。 - 請求項1において、亜鉛微粒粉は、150meshのふるい目は通過するが300meshのふるい目は通過しない150〜300meshの粒度範囲に粒度調整したものであることを特徴とする亜鉛合金粉。
- 微量添加金属Al,Bi,Ca,In,Mg,Pb,Snの内少なくとも1種以上を0.005〜0.05重量%含むアルカリ電池用亜鉛合金粉であって、
不活性ガス雰囲気中で熱処理した、200meshのふるい目を通過する200mesh以下の亜鉛微粒粉を5〜50重量%と、
20meshのふるい目は通過するが200meshのふるい目は通過しない20〜200meshの粒度範囲の未処理亜鉛合金粉を50〜95重量%と、を混合してなることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉。 - 請求項3において、亜鉛微粒粉は、200meshのふるい目は通過するが300meshのふるい目は通過しない200〜300meshの粒度範囲に粒度調整したものであることを特徴とする亜鉛合金粉。
- 請求項1乃至請求項4の亜鉛合金粉を負極活物質に用いてなることを特徴とするアルカリ電池。
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