JP4304317B2 - アルカリ電池用亜鉛合金粉末及びその製造方法並びにそれを用いたアルカリ電池 - Google Patents

アルカリ電池用亜鉛合金粉末及びその製造方法並びにそれを用いたアルカリ電池 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粉末粒子の結晶粒子サイズを微細化することにより、重負荷パルス放電性能の改善とガス発生抑制が両立したアルカリ電池用亜鉛合金粉末及びその製造方法並びにそれを用いたアルカリ電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルカリマンガン電池はマンガン電池が一般に使用されるものに比較して、主に高電流タイプの機器に使用されてきた。最近では、デジタルカメラ、PDA関連などの比較的重負荷を連続的に使用する用途、あるいは高電流をパルスで使用する用途が増加しており、このような放電レートで十分放電特性を発揮できる電池の要求が高まっている。
例えば1.2A程度の重負荷放電では亜鉛の利用率が30%程度であり、電池としての性能向上のため亜鉛の利用率の向上が望まれている。
その対策として従来は、単純に亜鉛粉の表面積を増加して電解液との反応面積を増加させる目的で粒径の細かい亜鉛粉を使用することが行われてきた。
【0003】
特許文献1では、−200メッシュの亜鉛微粉あるいは、−325メッシュのダストなどの微細粉を負極活物質に含ませることにより、表面積を増加させ、連続負荷、高電流パルス試験などの放電性能が向上するとしている。
特許文献2、特許文献3、特許文献4ではそれぞれ−75μm程度の亜鉛微粉を使用することにより、高率放電特性の向上、利用率の向上及び低温時の放電特性が向上するとしている。
しかし、表面積が増えて反応面積が増加した結果、重負荷放電特性は向上するが、ガスの発生が増大するといった問題が生じていた。ガスの増加は電池の液漏れ、破裂の原因となり電池の重要特性のひとつである安全性を損なってしまう。
【0004】
【特許文献1】
特表2001−512284号公報
【特許文献2】
特開昭53−120143号公報
【特許文献3】
特開昭57−182972号公報
【特許文献4】
特開昭59−228363号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は従来技術に代わる新たな構成を採用することによってガス発生を抑制して重負荷パルス放電性能を向上させた亜鉛粉末及びその製造方法並びにそれを用いた電池を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意研究の結果、亜鉛合金粉末の結晶粒子を微細化することにより、ガス発生を抑制しつつ重負荷パルス放電性能を向上できることを見出したものである。
【0007】
すなわち、本発明は第1に、200メッシュのフルイ目の開きサイズ(すなわち、74μm)より小径(−200メッシュという。)、200メッシュのフルイ目の開きサイズより大径でかつ150メッシュのフルイ目の開きサイズ(すなわち、104μm)より小径(+200〜−150メッシュという。)、150メッシュのフルイ目の開きサイズより大径でかつ100メッシュのフルイ目の開きサイズ(すなわち、147μm)より小径(+150〜−100メッシュという。)及び100メッシュのフルイ目の開きサイズより大径でかつ50メッシュのフルイ目の開きサイズ(すなわち、295μm)より小径(+100〜−50メッシュという。)の各粒度における粉末粒子断面における縦、横の長さがいずれも0.1mmの正方形(0.1mm平方という。)中の平均の結晶粒子数Nが、それぞれ200メッシュ、150メッシュ、100メッシュ及び50メッシュのフルイ目の開きサイズ(各メッシュのサイズという。)xμmに関して、N>−20.5Ln(x)+126.9であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末;第2に、−200メッシュ、+200〜−150メッシュ、+150〜−100メッシュ及び+100〜−50メッシュの各粒度における粉末粒子断面の0.1mm平方中の平均の結晶粒子数Nが、それぞれ200メッシュ、150メッシュ、100メッシュ及び50メッシュのサイズxμmに関して、N≧−36.2Ln(x)+218.6であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末;第3に、前記粉末が実質的に20メッシュのフルイ目の開きサイズ(すなわち、833μm)より小径(−20メッシュという。)の粒子からなる、第1または第2に記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末;第4に、実質的に−20メッシュの粒子からなり、−200メッシュ、+200〜−150メッシュ、+150〜−100メッシュ及び+100〜−50メッシュの各粒度における粉末粒子断面の0.1mm平方中の平均の結晶粒子数Nが、それぞれ40個以上、30個以上、20個以上及び5個以上であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末;第5に、前記亜鉛合金がBi 0.001〜0.1重量%及びIn 0.01〜0.1重量%からなる群から選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al及びGaからなる群から選ばれる1種以上の金属を0.0001〜0.1重量%とを含有し、残部が不可避不純物と亜鉛からなる亜鉛合金である、第1〜4のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末;第6に、前記亜鉛合金の溶体がアトマイズされて生じた分散溶体粒子に液体を吹きつけることによって急冷し前記結晶粒子を微細化することを特徴とする、第1〜5のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法;第7に、前記液体が室温において液相または気相の物質である、第6記載の製造方法;第8に、第1〜5のいずれかに記載の亜鉛合金粉末が負極活物質として含有されていることを特徴とするアルカリ電池を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における電池特性への効果としては以下のように推測される。粒子内の結晶粒界が放電反応の起点となり、反応開始点が増加することによって放電性能が改善されることが考えられる。結晶粒界を増加させるためには、金属の凝固時に急冷する方法が一般的に知られている。発明者等はこれを金属粉製造に応用した。すなわち、分散媒体によって分散された溶体粒子が凝固時に吹きつけられた液体または気体によって急冷処理されることにより結晶粒界が増加する。
亜鉛合金粉末の製法としては電解法あるいは蒸留法などで作製した亜鉛地金を溶融し、電池を作製した場合の使用に耐えうるような耐食性を得るため、Bi 0.001〜0.1重量%及びIn 0.01〜0.1重量%からなる群から選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al及びGaからなる群から選ばれる1種以上の金属を0.0001〜0.1重量%とを添加する。
【0009】
本発明に係る亜鉛合金の組成は特に限定されるものではないが、上記の見地からAl、Bi及びInを含有する亜鉛合金が好ましく、Alを0.0001〜0.1重量%、Biを0.001〜0.1重量%及びInを0.01〜0.1重量%含有し残部が不可避不純物と亜鉛からなる亜鉛合金がさらに好ましい。
【0010】
この亜鉛合金溶体を細い溶湯流として、ガスまたは回転ディスクなどのアトマイズによりせん断力を与えて分散して粉状とする。ガスの場合の分散媒はエアー及び窒素、アルゴンなどの不活性ガスを使用することができる。粉末の粒度分布は放電性能、ガス発生のバランスを考慮して実質的に−20メッシュの粒子からなる粉末が好ましい。
結晶粒を効率良く微細化するためには亜鉛粉末の分散、凝固時に急冷が必要である。この亜鉛合金溶湯流を分散する際に冷却媒体を吹き付けることによって急冷することができる。冷却媒体としては直接冷風を吹き付ける方法、液体状物質を吹き付けて蒸発時の潜熱を利用する方法が考えられるが、分散溶体粒子に液体を吹き付けて蒸発の潜熱を利用する場合の方が結晶粒の微細化のための冷却効果がはるかに大きい。また、用いられる液体としては蒸留水などの純水でよいが、室温で気相であって液化できかつ凝固点の低い液体、例えば液体窒素などがより好ましい。
【0011】
結晶粒の大きさの定量的な評価としては単位面積あたりの結晶粒数を測定する方法が一般的に知られている。また、粉末粒子の凝固速度はその粒径に依存する。すなわち、粉末粒子の粒径が小さいほど結晶粒の粒径は小さくなる。従って粉末粒子の粒径毎に結晶粒の大きさを規定する必要があるので、篩い分けを行い粉末粒子の粒径毎に結晶粒の大きさを測定した。具体的には亜鉛合金の粉末粒子の断面を研磨し、例えば酸、アルカリなどで腐食すると腐食度差により結晶粒が観察され、液体吹きつけにより冷却処理していないこと以外は全て同じ条件の亜鉛合金粉末に比較すると本発明に係る亜鉛合金粉末の結晶粒が微細になっていることが観察できる。亜鉛合金粉末粒子の断面全体の結晶粒数をカウントし、単位面積あたりの平均の個数を算出する。これらは市販のパソコンソフトで容易に処理できる。
【0012】
上記のように、液体吹きつけにより冷却処理をした亜鉛合金粉末と液体吹きつけの冷却処理をしないこと以外は全て同じ条件の亜鉛合金粉末の両者について、−200メッシュ、+200〜−150メッシュ、+150〜−100メッシュ及び+100〜−50メッシュの各粒度で粉末粒子10個ずつ0.1mm平方中の結晶粒子数を測定した。各粒度毎の10個の粉末粒子の平均の結晶粒子数Nと、それぞれ200メッシュ、150メッシュ、100メッシュ及び50メッシュのサイズxμmとの関係を近似式で表すと、液体吹きつけの冷却処理をしないこと以外は全て本発明と同じ条件の亜鉛合金粉末については図3に示す次式(A)が求められた。すなわち、
N=−20.5Ln(x)+126.9 (A)
であり、本発明に係る亜鉛合金粉末においては次式を充足することが好ましい。すなわち、
N>−20.5Ln(x)+126.9
である。また、液体吹きつけにより冷却処理をした本発明に係る亜鉛合金粉末について上記と同様に統計的に処理して近似式で表すと、図3に示す次式(B)が求められた。すなわち、
N=−36.2Ln(x)+218.6 (B)
であり、本発明に係る亜鉛合金粉末においては次式を充足することがより好ましい。すなわち、
N≧−36.2Ln(x)+218.6
である。
【0013】
また、便法として、放電特性を向上させるための結晶粒子の微細化については、実質的に−20メッシュの粒子からなり、−200メッシュ、+200〜−150メッシュ、+150〜−100メッシュ及び+100〜−50メッシュの各粒度における粉末粒子断面の0.1mm平方中の平均の結晶粒子数Nが、それぞれ40個以上、30個以上、20個以上及び5個以上であることが好ましく、さらに好ましくはそれぞれ50個以上、40個以上、30個以上及び15個以上であり、パルス放電特性向上効果が奏される。
負極活物質はこれらの亜鉛合金粉末、ゲル化剤、電解液で構成される。ゲル化剤としてはポリアクリル酸などの公知の材料を用いることができる。また、アルカリ電解液は酸化亜鉛を溶解したものを用い、セパレーターを介して、正極に二酸化マンガンなどを用いて電池を構成する。
【0014】
【実施例】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0015】
〔実施例1〕 Al:0.003重量%、Bi:0.015重量%、In:0.05重量%、残部が実質的に亜鉛からなる亜鉛合金の溶体を純水(蒸留水)を吹き付けながら空気でアトマイズして粉末化した。純水の添加量は結露しない量とする。この亜鉛合金粉末を篩い分けして−20メッシュの粉末を得た。この粉末を5gとり、40%KOH水溶液に3重量%の酸化亜鉛を溶解した液に浸し、図1に示す装置を用いて60℃で3日間保持して発生したガス量から、ガス発生速度(μl/g・day)を求めた。
【0016】
結晶粒の評価としては、−200メッシュ、+200〜−150メッシュ、+150〜−100メッシュ及び+100〜−50メッシュの各粒度範囲の亜鉛合金粉末を各々樹脂埋めして研磨し、亜鉛合金粉末粒子の断面を塩酸50%の水溶液で20秒間腐食して結晶粒を金属顕微鏡で観察し、亜鉛粉末粒子断面0.1mm平方中の平均の結晶粒の個数Nを測定した。測定は各粒度で粉末粒子10個ずつ行い、その平均値を示した。その結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0004304317
【0018】
この亜鉛合金粉末、ポリアクリル酸1重量%、酸化亜鉛を3重量%溶解させた40%KOH水溶液を混合してゲル状負極活物質とした。正極を二酸化マンガンとして図2に示すLR6型試作電池を作製した。この試作電池の重負荷パルス放電性能を1.2A3秒間放電、7秒間休止で測定した。この電池を1.6 Vからスタートさせて1.0 V、0.9 Vまでの持続時間を測定した。なお、上記組成、粒度分布が同一であって純水吹きつけで冷却処理していない亜鉛合金粉末(比較例1)の持続時間を100%として相対値%で表した。その測定結果を表1に示す。
【0019】
〔実施例2〕 亜鉛合金組成をAl:0.0005重量%、Bi:0.03重量%、In:0.05重量%とした以外は実施例1と同様にして試作評価した結果を表1に示す。
【0020】
〔実施例3〕 組成をAl:0.0005重量%、Bi:0.03重量%、In:0.05重量%とし、冷却媒体として液体窒素を液体の状態で亜鉛粉の分散時に吹き付けたこと以外は実施例1と同様に試作評価した結果を表1に示す。
【0021】
〔比較例1〕 組成をAl:0.003重量%、Bi:0.015重量%、In:0.05重量%とし、噴霧時に液体の冷却媒を吹き付けない以外は実施例1と同様に試作評価した結果を表1に示す。
【0022】
〔比較例2〕 組成をAl:0.0005重量%、Bi:0.03重量%、In:0.05重量%とし、噴霧直後に粉末粒子を液体窒素に浸した。それ以外は実施例1と同様に試作評価した結果を表1に示す。
【0023】
〔比較例3〕 組成をAl:0.003重量%、Bi:0.015重量%、In:0.05重量%とし、液体吹きつけの冷却処理をしないで作製した亜鉛合金粉を200℃で2時間熱処理したこと以外は実施例1と同様に試作評価した結果を表1に示す。
【0024】
これらの結果から本発明に係る亜鉛合金粉末は、ガス発生量を抑制し、かつ、液体吹きつけの冷却処理をしない以外は同様の比較例に係る亜鉛合金粉末よりもパルス放電性能を向上させていることが明らかである。
【0025】
【発明の効果】
本発明に係るアルカリ電池用亜鉛合金粉末は、亜鉛合金粉の結晶粒子を微細化することにより、重負荷パルス放電性能の改善とガス発生抑制が両立されたものであり、さらに、その製造にあたっては液体を吹き付ける部分を追加することにより亜鉛合金溶体をアトマイズして粉末を作製する従来の粉末製造装置を実質的にそのまま使用でき低コストで効率的に製造できるという製造上の効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガス発生測定装置の縦断面図。
【図2】試作電池の縦断面図。
【図3】粉末粒子の粒径と結晶粒子数との関係図。
【符号の説明】
1 亜鉛合金粉末
2 電解液
3 流動パラフィン
4 シリコン栓
5 メスピペット
6 正極缶
7 正極活物質
8 セパレータ
9 負極活物質
10 負極集電棒
11 ゴムパッキン
12 キャップ

Claims (5)

  1. 実質的に−20メッシュの粒子からなり、−200メッシュ、+200〜−150メッシュ、+150〜−100メッシュ及び+100〜−50メッシュの各粒度における粉末粒子を各々樹脂埋めして研磨し塩酸50%水溶液で20秒間腐食して得られた断面について各粒度で該粉末粒子10個ずつ測定した各粒度の該粉末粒子断面の0.1mm平方中の平均の結晶粒子数Nが、それぞれ40個以上、30個以上、20個以上及び5個以上であることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉末。
  2. 前記亜鉛合金がBi0.001〜0.1重量%及びIn0.01〜0.1重量%からなる群から選ばれる1種以上と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al及びGaからなる群から選ばれる1種以上の金属を0.0001〜0.1重量%とを含有し、残部が不可避不純物と亜鉛からなる亜鉛合金である、請求項1記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末。
  3. 前記亜鉛合金の溶体がアトマイズされて生じた分散溶体粒子に液体を吹きつけることによって急冷し前記結晶粒子を微細化することを特徴とする、請求項1または2に記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉末の製造方法。
  4. 前記液体が室温において液相または気相の物質である、請求項3記載の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の亜鉛合金粉末が負極活物質として含有されていることを特徴とするアルカリ電池。
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