JP4335598B2 - 抗酸化素材、抗酸化素材の製造方法及び飲食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、セサミノール配糖体を含む発酵原料を微生物発酵処理することにより得られる抗酸化素材、抗酸化素材の製造方法及びその抗酸化素材を含有する飲食品に関するものである。より詳しくは、ゴマ種子、ゴマ製品又はゴマ製品製造時の副産物に高含有される前記発酵原料を微生物発酵処理することにより、該発酵原料よりも高い抗酸化作用を発揮するように加工された抗酸化素材及び飲食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ゴマ油は他のサラダ油に比べて、開封後長期間放置しておいても酸化的劣化が起きにくく、貯蔵安定性に優れていることが知られており、その現象を引き起こす成分としてゴマリグナン類が研究されてきた(非特許文献1参照)。ゴマ種子にはセサミンとセサモリンとがそれぞれ0.3〜0.5%程度含有されており、セサモリンは胃における生体内代謝によりセサモール、セサモリノールに、またゴマ油精製過程においてセサミノールに変換される。これらのゴマリグナン類は、インビボ(in vivo)で高い抗酸化活性を有しており、例えばラットの肝臓及び腎臓において脂質の過酸化を有意に抑制したり、老年病マーカーとしてのDNA酸化障害で生じる8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の生成を抑制する働きがある。
【0003】
ゴマ種子中に高含有されているセサミンは、微生物の高度不飽和脂肪酸生合成に対する阻害作用を始め、生体内での肝機能の増強作用、アセトアルデヒドの毒性の軽減、コレステロール低下作用、乳がん細胞の増殖抑制作用、免疫機能改善等多くの健康増進機能を有している。一方、前記セサミノールは、ゴマ種子中の水溶性区分にセサミノール配糖体の形態で大量に存在しているが、アグリコンとしてのセサミノールの形態ではほとんど存在していない。このセサミノールは、ゴマ油の精製過程で生じる脱色、脱臭スカムと呼ばれる廃棄物中に大量に含まれており、LDL脂質過酸化を強力に抑制する働きがある。また、前記セサミノール配糖体は、食品として摂取した後、腸内細菌によりセサミノール配糖体の糖鎖が切断されてアグリコンとしてのセサミノールになり、高い抗酸化作用が発揮される。
【0004】
一方、この種のリグナン化合物の製造方法としては、セサミン又はエピセサミンからなる出発リグナン化合物を超臨界水と反応させることにより、分子内に2つまたはそれ以上の水酸基を有するリグナン化合物を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】
大澤 俊彦、第3編第6章 ゴマの持つ新しい機能性、「老化予防食品の開発」、株式会社 シーエムシー出版、1999年10月、p.191−199。
【特許文献1】
特開2001−139579号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ゴマ種子中に含まれるセサミン、セサモリン及びセサミノール配糖体は、いずれもそれ自体では抗酸化能をほとんど有していない。即ち、これらのゴマリグナン類は、加工過程又は摂取後の生体内での代謝によって、非意図的にカテコール体やセサミノール等に変換又は代謝されて抗酸化能を発揮するようになっている。このため、これらのゴマリグナン類を含有させた抗酸化素材は、その加工過程における諸条件の相違により、抗酸化能を有さないセサミン、セサモリン及びセサミノール配糖体と、高い抗酸化能を有するカテコール体及びセサミノールとの含有比が大きく左右されやすい。その結果、この種の抗酸化素材では、ゴマリグナン類により発揮され得る抗酸化活性が十分に引き出されていないうえ、摂取したヒトの生理状態や代謝能の個人差等により抗酸化活性が大きく左右されるという欠点があった。一方、前記従来のリグナン化合物の製造方法では、著しく大掛かりな装置を用いて出発リグナン化合物と超臨界水とを反応させる必要があった。
【0007】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、高い抗酸化作用を発揮することができる抗酸化素材、抗酸化素材の製造方法及び飲食品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の抗酸化素材は、セサミノール配糖体を含む発酵原料にアスペルギルス・サイトイ又はアスペルギルス・シロウサミを接種して微生物発酵処理することにより得られることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載の発明の抗酸化素材は、請求項1に記載の発明において、セサミノールカテコール体が含有されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載の発明の抗酸化素材は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、セサミノールカテコール体が前記発酵原料よりも高含有されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の発明の抗酸化素材は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記発酵原料をゴマ種子、焙煎ゴマ、焙煎ゴマ油、未焙煎ゴマサラダ油、ゴマ搾り粕又はゴマ脱臭スカムとすることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の発明の飲食品は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗酸化素材を含有するものである。
請求項6に記載の発明の抗酸化素材の製造方法は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗酸化素材を製造する製造方法であって、セサミノール配糖体を含む発酵原料にアスペルギルス・サイトイ又はアスペルギルス・シロウサミを接種して微生物発酵処理することを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
実施形態の抗酸化素材は、セサミン、セサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種を含む発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種して微生物発酵処理することにより得られるものであり、高い抗酸化作用を有する有効成分を高含有している。また、この抗酸化素材としては、前記微生物発酵処理を行った後、さらに前記有効成分を抽出、精製又は単離したものであってもよい。この抗酸化素材は、前記有効成分が有する高い抗酸化活性により、前記発酵原料よりも高い抗酸化作用を発揮する。
【0014】
最も主要な有効成分としては、天然型セサミンジカテコール体(セサミン−2,6−ジカテコール)、エピ型セサミンジカテコール体(エピセサミン−2,6−ジカテコール)、天然型セサミノールカテコール体(セサミノール−6−カテコール)、エピ型セサミノールカテコール体(2−エピセサミノール−6−カテコール)等が挙げられる(図1を参照)。また、天然型セサミンカテコール体(セサミン−2−カテコール)、エピ型セサミンカテコール体(エピセサミン−2−カテコール)、セサミノール、その他前記微生物発酵処理により微生物変換された未知成分等も、抗酸化活性は若干低い(但し、発酵原料よりは高い抗酸化活性を有する)が有効成分となり得る。
【0015】
発酵原料としては、セサミン、セサミノール又はセサミノール配糖体が含有されているものが使用される。このような発酵原料としては、セサミンやセサミノール配糖体等が高含有されているうえ入手容易かつ安価であることから、ゴマ種子、焙煎ゴマ、焙煎ゴマ油、未焙煎ゴマサラダ油、ゴマ搾り粕又はゴマ脱臭スカムが好適に用いられ、廃棄物の有効利用ができることからゴマ絞り粕又はゴマ脱臭スカムが特に好適に用いられる。さらに、前記ゴマ脱臭スカムには、アグリコンとしてのセサミノールが高含有されていることから、前記有効成分をより迅速かつ容易に得ることができて便利である。また、前記発酵原料としては、ゴマ種子、焙煎ゴマ、焙煎ゴマ油、未焙煎ゴマサラダ油、ゴマ搾り粕又はゴマ脱臭スカム中のゴマリグナン類を抽出したゴマリグナン類抽出物を用いてもよい。
【0016】
セサミン(sesamin)は、互いに光学異性体の関係にある天然型又はエピ型セサミンが存在し、いずれも抗酸化作用をほとんど有しない有機化合物である。なお、図3に天然型セサミンの構造を示す。これらセサミンは、2つのメチレンジオキシ基を有しており、前記微生物発酵処理による微生物変換によって、一方のメチレンジオキシ基が開裂してセサミンカテコール体となり、さらに他方のメチレンジオキシ基が開裂してセサミンジカテコール体となる。なお、図1(a)に天然型セサミンが微生物変換されたときの構造の変化を示す。セサミンカテコール体(天然型及びエピ型)は高い抗酸化活性を有しており、セサミンジカテコール体はセサミンカテコール体よりも顕著に高い抗酸化活性を有している。これらのカテコール体において、天然型とエピ型との抗酸化活性の高低は不明である。
【0017】
セサミノール(sesaminol)は、互いに光学異性体の関係にある天然型又はエピ型セサミノールが存在し、いずれも高い抗酸化活性を有する有機化合物である。これらセサミノールは、2つのメチレンジオキシ基を有しているが、前記微生物発酵処理による微生物変換によって、フェノール性水酸基を有しない側の一方のメチレンジオキシ基のみが開裂してセサミノールカテコール体となる。なお、図1(b)に天然型セサミノールが微生物変換されたときの構造の変化を示す。セサミノールカテコール体(天然型及びエピ型)は、セサミノールよりも顕著に高い抗酸化活性を有している。また、天然型セサミノールカテコール体の方がエピ型よりも抗酸化活性は高い。
【0018】
セサミノール配糖体(sesaminol-triglucoside)は、前記セサミノールと糖とがグリコシド結合にて結合した配糖体であり、抗酸化作用をほとんど有しない有機化合物である。このセサミノール配糖体は、β−グルコシダーゼ処理等のアグリコン化処理によりアグリコンとしてのセサミノールを生成(遊離)させる。また、前記微生物発酵処理によってもセサミノールが生成される。
【0019】
アスペルギルス(Aspergillus)属微生物(発酵菌)としては、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)等の黒麹菌、又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーイエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)等の黄麹菌が挙げられる。これらの発酵菌のうち微生物変換効率が良好であることから、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ニガー又はアスペルギルス・アワモリが好適に用いられ、Aspergillus saitoi(IAM2210)、Aspergillus niger (ATCC38857)、Aspergillus shirousami(RIB2503)が特に好適に用いられる。
【0020】
微生物発酵処理は、前記発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種し、該微生物を所定の発酵条件下で所定の発酵期間培養することにより行われる。この微生物発酵処理は、主として前記微生物の栄養菌糸が生産する酵素によりセサミンやセサミノールのメチレンジオキシ基の開裂反応を行う。また、同栄養菌糸が生産するβ−グリコシダーゼ(β−グルコシダーゼ)によりセサミノール配糖体をアグリコン化してセサミノールを遊離させる反応も行う。
【0021】
前記微生物を発酵原料に接種する方法としては、該微生物の胞子を発酵原料に直接振りかけて付着させることができる。また、予め前記微生物を含む培地を好気的条件で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備培養処理後の培地を発酵原料全体に行き渡るように振りかけて付着させたり、前記予備培養後の培地中に発酵原料を浸漬させることによって接種することも可能である。これらの接種方法のうち、微生物発酵処理が比較的均一に進むことから、予備培養処理後の培地を発酵原料に振りかけて付着させるのが最も好ましい。
【0022】
前記予備培養処理は、微生物発酵処理に用いられる微生物を予め十分に増殖させるとともに活性化させることによって、微生物発酵処理を迅速かつ円滑に進行させるために行われる。この予備培養処理は、20〜40℃の好気的条件下で最低5日以上行われ、好ましくは前記微生物の菌糸体が培地表面を3分の1程度覆う状態となるまで行われる。前記培地としては、ポテトデキストロース含有培地やツァペック培地等の糸状菌用培地又はオカラ等の有機物を含有する種々の液体培地が好適に使用される。さらに、この予備培養処理では、前記微生物の生育を良好にするために、培養開始時点における培地のpHを3〜7に調整するのが好ましい。また、前記振盪培養する際の振盪速度としては、好ましくは50rpm以上、より好ましくは50〜200rpmである。この振盪速度が50rpm未満の場合には、前記微生物を含有した培地全体が好気的でないため菌糸の増殖が十分にできない。また、振盪速度が200rpmを越える場合には、培地の揺れが激しく前記微生物の菌体形成が抑制されるおそれがある。
【0023】
上記予備培養処理により活性化された微生物を発酵原料に接種する場合の微生物発酵処理条件としては、微生物発酵処理を好気的条件で行うことが容易であることから、例えば有底筒状に形成された培養皿等の底部が広く深さが浅い培養容器が好適に用いられる。さらに、この培養容器の底面に万遍なく発酵原料を広げるように載置するとよい。また、発酵温度としては、前記微生物の生育に好適な条件として、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜30℃で行われる。加えて、前記微生物の生育に好適な条件として、暗所で微生物発酵処理を行うのが好ましい。
【0024】
有効成分を多量に得るための発酵期間としては、好ましくは3日から1ヶ月、より好ましくは1〜3週間、さらに好ましくは10〜20日間、特に好ましくは12〜18日間である。この発酵期間が3日未満の場合には、前記微生物による微生物発酵がほとんど進行していないことから十分な量の有効成分が生成されていない。逆に1ヶ月を越える場合には、生成された有効成分の分解が進むおそれがあるうえ不経済である。
【0025】
実施形態の第1のリグナン化合物の製造方法は、セサミンからなる発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種して微生物発酵処理することにより、リグナン化合物としてのセサミン−2−カテコール(セサミンカテコール体)を製造するものである。実施形態の第2のリグナン化合物の製造方法は、セサミン又はセサミン−2−カテコールからなる発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種して微生物発酵処理することにより、リグナン化合物としてのセサミン−2,6−ジカテコール(セサミンジカテコール体)を製造するものである。図2に示すように、これらセサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体は、いずれも光学異性体の関係にある天然型とエピ型とが存在する。なお、前記発酵原料としては、例えばゴマリグナン類抽出物等のセサミンが含有されているものからセサミンを精製した精製物を使用するのが好ましい。なお、前記アスペルギルス属微生物及び微生物発酵処理は、上記抗酸化素材の場合と同様である。
【0026】
実施形態の飲食品としての健康食品は、前記抗酸化素材(有効成分)、又は前記第1若しくは第2のリグナン化合物の製造方法により製造されたリグナン化合物を含有するものであり、主として飲料品、食料品又は製剤(錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、等)の形態で経口摂取するように構成されている。この健康食品は、前記抗酸化素材を果汁、牛乳やヨーグルト等の乳製品、ゴマ製品、乳糖やデキストリン等の賦形剤等の健康食品用素材に添加することにより製造される。この健康食品は、前記リグナン化合物の高い抗酸化活性により、経口摂取した時に生体内での過剰な活性酸素など酸化ストレスを低減して、低密度コレステロール(LDL)の抗酸化作用や、肝機能の増強作用、アセトアルデヒドの毒性の軽減、乳がん細胞の増殖抑制作用、免疫機能改善等の健康増進効果を発揮する。
【0027】
健康食品としての飲料品中に含まれる有効成分の濃度は、好ましくは0.0001〜50重量%、より好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。前記有効成分の濃度が0.0001重量%未満の場合には健康増進効果を効果的に発揮させることができず、逆に50重量%を越える場合には不経済である。健康食品としての食料品又は製剤に含まれる有効成分の含有量は、好ましくは0.001〜80重量%、より好ましくは0.01〜70重量%、さらに好ましくは0.1〜50重量%である。前記有効成分の含有量が0.0001重量%未満の場合には健康増進効果を効果的に発揮させることができず、逆に50重量%を越える場合には不経済である。
【0028】
また、前記有効成分の摂取量としては、成人1日当たり好ましくは0.01〜1000mg、より好ましくは0.1〜700mg、より一層好ましくは1〜500mgであるとよい。この有効成分の1日当たりの摂取量が0.01mg未満の場合には健康増進効果を効果的に発揮させることができず、逆に1000mgを越える場合には不経済である。さらに、この健康食品は、1日数回(2〜3回又はそれ以上)に分けて服用するのが好ましく、特に激しい運動の前後、日光による紫外線照射の前後、ストレス時、喫煙の前後等の酸化ストレスに晒されやすい状態のときに摂取するとよい。また、小人の場合は、主に体重に依存して摂取量が調整されるが、前記成人の摂取量の半量が目安となる。
【0029】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の抗酸化素材は、セサミン、セサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種を含む発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種して微生物発酵処理することにより得られるものである。この抗酸化素材には、前記発酵原料を微生物変換することにより生成された高い抗酸化活性を有する有効成分が含有されていることから、発酵原料よりも高い抗酸化作用を発揮することができる。特に、微生物変換がより一層進行することによって生成したセサミンジカテコール体又はセサミノールカテコール体が有効成分として含有されている場合には、発酵原料よりも著しく高い抗酸化活性を発揮する。さらに、前記有効成分は、ゴマ種子、ゴマ製品及びゴマ製品製造時の副産物中にほとんど存在していないことから大量生産が著しく困難であったが、本実施形態の微生物発酵処理を行うことにより、極めて容易かつ安価に大量生産が可能となり、入手容易なものとなった。
【0030】
・ 実施形態のセサミンカテコール体の製造方法はアスペルギルス属微生物を用いてセサミンを微生物発酵処理するものであり、セサミンジカテコール体の製造方法はアスペルギルス属微生物を用いてセサミン又はセサミンカテコール体を微生物発酵処理するものである。なお、これらのリグナン化合物の製造方法としては、入手容易であることから発酵原料としてセサミンを用い、抗酸化作用が顕著に高いうえ微生物発酵処理の最終生成物であって発酵条件の調整をあまり必要としないことからセサミンジカテコール体を製造するのが最も好ましい。これらのリグナン化合物の製造方法は、発酵技術を用いていることから、前記従来の超臨界水と反応させることによって製造されるリグナン化合物と比較して、大掛かりな装置や巨大なエネルギーを必要とせず、経済的かつ環境に対する負荷が少ない。さらに、前記超臨界水を活用した製造方法と比較すると、著しく効率的に前記リグナン化合物を製造することができる。加えて、このリグナン化合物の製造方法では、食品加工分野で古来より用いられてきた麹菌(アスペルギルス属微生物)を利用していることから、経口摂取における問題も少ないうえ、実際の製造コスト面からも極めて効率がよい。
【0031】
・ 実施形態の飲食品(健康食品)は、前記抗酸化素材又はリグナン化合物が含有されていることから、生体内に摂取することによって、活性酸素の消去等により高い健康増進効果を発揮することができる。さらに、前記抗酸化素材及びリグナン化合物は、生体内に摂取される以前に予め微生物変換させることによって抗酸化活性を高めておいたものであることから、生体内で極めて迅速かつ効率的に抗酸化作用を発揮させることができる。このため、この健康食品では、生体吸収性の向上や新たな生理機能の付加も期待できることから、トータルとして生体内での健康増進機能をより一層増進させることが可能になる。
【0032】
前記セサミンは、経口摂取したときにそのほとんどがセサミンの形態のまま門脈を介して生体内に吸収され肝臓に移行し、肝臓内でセサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体に変換されて代謝される。これらの代謝物質は、セサミンには存在しない抗酸化活性を有しており、セサミンが生体内に及ぼす有為な健康増進機能の活性本体である可能性が極めて高い。一方、セサミノール配糖体を経口摂取したときには、腸内細菌の作用によって始めてセサミノールに変換されて高い抗酸化活性を発揮するようになっている。従って、これらセサミン及びセサミノール配糖体は、通常の経口摂取では抗酸化活性を発揮するまでに著しく長い時間がかかることから即効性に劣るものであるが、本実施形態の抗酸化素材及びリグナン化合物は、経口摂取した直後に所望とする抗酸化作用を発揮することができることから極めて有用である。さらには、肝臓や腸内細菌の活動が弱っている場合でも、目的とする抗酸化作用を発揮させることができて有用である。
【0033】
さらに、この健康食品では、食品加工分野で古来より用いられてきた麹菌(アスペルギルス属微生物)を利用して微生物発酵処理することにより製造された抗酸化素材又はリグナン化合物が用いられていることから、経口摂取における問題も少ないうえ、実際の製造コスト面からも極めて効率がよい。加えて、発酵原料としてゴマ種子、焙煎ゴマ、焙煎ゴマ油、未焙煎ゴマサラダ油、ゴマ搾り粕、ゴマ脱臭スカム等のゴマ種子、ゴマ製品又はゴマ製品製造時の副産物を用いることにより、極めて安価に高品質の健康食品を提供することが可能となる。
【0034】
【実施例】
以下、前記実施形態を具体化した実施例について説明する。
<実施例1:セサミノール配糖体の微生物発酵処理>
(微生物発酵処理による抗酸化能の上昇確認)
発酵菌としては、Aspergillus awamorii(RIB2804)、Aspergillus niger(ATCC38857)、Aspergillus shirousami(RIB2503)、Aspergillus saitoi(IAM2210)の4種類の菌株を用いた。これらの菌株は、予めポテトデキストロースブロス培地にて予備培養を行い菌糸体を増殖させておいた上で、同培地を5倍希釈した液体培地に菌糸体を移し、これに終濃度0.1%となるようにセサミノール配糖体(ゴマ粕より単離精製して調製)を添加して微生物発酵処理を実施した。上記の予備培養及び微生物発酵処理はいずれも、30℃恒温条件で振盪速度100rpmの好気的な条件下で培養を実施した。培養は1ヶ月間実施するとともに、経時的に液体培地を少量サンプリングして濾過したサンプリング液についてDPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazy)によるラジカル捕捉活性の測定を行った。即ち、DPPHエタノール溶液(20mg/100ml)2000μl、Tris-HClバッファー1000μl及びサンプリン液100μlを混合し、HPLCを用い定法に従ってラジカル捕捉活性の測定を行った。結果を図4に示す。図4より、全ての発酵菌が抗酸化能を上昇させ得ることが確認された。特に、RIB2503及びIAM2210では、微生物発酵処理開始10日目ごろからラジカル捕捉活性の急激な上昇がみられ、抗酸化能の上昇が迅速かつ高かったことが確認された。
【0035】
(抗酸化物質の精製)
0.5%セサミノール配糖体を添加した培地をRIB2503又はIAM2210により上記と同様の条件で8日間微生物発酵処理することにより発酵物を得た。得られた発酵物の濾過液について、下記HPLC条件1のHPLCグラジエント法(MeOHはメタノールを表す)にて、分取用カラム(YMC社製)が装着された島津製作所製のLC−8Aを用いてA〜Dの4つの区分(fraction)に分画した。
【0036】
HPLC条件1
カラム :ODS-A R-353-151A(50φ×250mm)
波長 :λ=280nm
流速 : 100ml/min
溶媒 :水(0.1%TFA)、メタノール(0.1%TFA)
溶出条件: 0-30min(0-100% MeOHのグラジエント溶出)、
30-35min( 100% MeOH)、35-40min(100-0% MeOH)
次に、分画後の各区分についてDPPHラジカル捕捉活性の測定を実施した。即ち、DPPHエタノール溶液(20mg/100ml)2500μl、Tris-HClバッファー1000μl及びサンプリング液100μlを混合し、上記と同様にHPLCを用いてラジカル捕捉活性の測定を行った。各区分のラジカル捕捉活性(%)を表1に示す。また、前記RIB2503を用いた発酵物を以下HPLC条件2の条件で分析した結果を図5に示す。
【0037】
HPLC条件2
装置 :島津製作所製LC−10AD
カラム :LUNA C18(2)(2.0φ×250mm : phemomenex 00G-4252-80)
波長 :UV検出器 λ=280nm
PDA検出器 λ=190〜370nm
流速 :100ml/min
溶媒 :水(0.1%TFA)、メタノール(0.1%TFA)
溶出条件: 0-30min(20-100% MeOHのグラジエント溶出)
【0038】
【表1】
表1より、BとCの区分、特にCの区分において強いラジカル捕捉活性が認められた。次に、前記クロマトグラムのピークを細かく分離し、B区分については11個(B1〜B11)、C区分については7個(C1〜C7)に分画したもののそれぞれについて、DPPHラジカル捕捉活性を測定した。結果を表2に示す。なお、前記B1〜B11及びC1〜C7のピークのうちの幾つか(Frc-B5,Frc-B9,Frc-C3,Frc-C4,Frc-C7)を図5に示されるクロマトグラムに記入した。
【0039】
【表2】
(抗酸化物質の同定)
セサミノール配糖体及びセサミノール(本発明者らが単離精製して調製)を上記HPLC条件2に準じてHPLC分析した結果、C2に含まれるピークはセサミノール配糖体、C5に含まれるピークはセサミノールであることが確認された。また、強いラジカル捕捉活性が認められたC3、C4の区分についてはFAB−MS分析、NMR分析を実施した結果、C3はセサミノールのA環のメチレンジオキシ基が開裂した天然型セサミノールカテコール体であり、C4はC3の光学異性体でエピ型セサミノールカテコール体であることが判明した。また、表2の結果を参照すると、これらセサミノールカテコール体は、セサミノールよりも顕著に高い抗酸化活性を有していることと、エピ型よりも天然型セサミノールカテコール体の方が抗酸化活性が高いこととが明らかになった。
【0040】
(抗酸化物質の変換率の確認)
上記RIB2503又はIAM2210を用いて微生物発酵処理した各発酵物について、抗酸化物質の変換率を求めた。即ち、まず、上記微生物発酵処理によって生成されたセサミノールカテコール体の量をクロマトグラム(RIB2503については図5)より求めた後、該セサミノールカテコール体の量を、出発原料として用いたセサミノール配糖体の量で除算することによって変換率を求めた。その結果、RIB2503を用いた微生物発酵処理における変換率は7.6%(天然型は4.6%、エピ型は3.0%)、IAM2210を用いた微生物発酵処理における変換率は7.14%(天然型は4.35%、エピ型は2.80%)であったことが示された。また、前記出発原料としてのセサミノール配糖体に含まれる天然型とエピ型との割合は1:1であることから、この微生物発酵処理では天然型への変換効率に優れていることも示された。
【0041】
<実施例2:セサミンの微生物発酵処理>
(微生物発酵処理による抗酸化能の上昇確認)
発酵菌として、Aspergillus awamori(RIB2804)、Aspergillus shirousamii(RIB2503)、Aspergillus niger(ATCC38857)、Aspergillus niger(ATCC10254)、Aspergillus niger(ATCC9642)、Aspergillus saitoi(IAM2210)の6種類の菌株を用いた。これらの菌株は、予めポテトデキストロースブロス培地にて予備培養を行い菌糸体を増殖させておいた上で、同培地を5倍希釈した液体培地に菌糸体を移し、これに終濃度0.1%となるようにセサミン(本発明者らが単離精製して調製)を添加して微生物発酵処理を実施した。上記の予備培養及び微生物発酵処理はいずれも、26℃恒温条件で振盪速度100rpmの好気的な条件下で培養を実施した。培養は1ヶ月間実施するとともに、経時的に液体培地を少量サンプリングして濾過したサンプリング液のDPPHラジカル捕捉活性の測定を実施例1と同様に行った。結果を図6に示す。
【0042】
図6より、全ての発酵菌が抗酸化能を上昇させ得ることが確認された。特に、RIB2503及びATCC38857では、微生物発酵処理開始後6日目を最高に3週間後まで持続的な高い抗酸化活性が確認された。また、IAM2210については微生物発酵処理開始後4日目に高い抗酸化活性を示し、その後は低下した。従って、発酵菌としては、RIB2503、ATCC38857、IAM2210が好ましく、RIB2503、ATCC38857が特に好ましいことが明らかとなった。また、発酵期間は、IAM2210の場合3〜5日、RIB2503及びATCC38857の場合4日から1ヶ月程度が好ましいことも明らかとなった。
【0043】
(抗酸化物質の精製)
前記微生物発酵処理したセサミン添加液体培地を定期的にサンプリング(0日,2日,4日,7日,9日,11日,14日,18日,22日)して濾過した。これらのサンプリング液を酢酸エチルで抽出し濃縮した後にメタノールに溶解し、下記に示されるHPLC条件3のHPLCグラジエント法で分析を実施した。
【0044】
HPLC条件3
カラム :ODS-HG-5(4.6φ×250mm)
流速 :0.8ml/min
溶媒 :水(0.1%TFA)、メタノール(0.1%TFA)
溶出条件: 0-30min(0-100% MeOHのグラジエント溶出)、
30-35min( 100% MeOH)、35-40min(100-0% MeOH)
その結果、上記6種類の発酵菌全てにおいて、微生物発酵処理の進行に伴ってセサミンの2本(天然型及びエピ型と考えられる)のピークが消失するとともに、ピークB(26〜27分で溶出されるピーク)が出現した。さらに、同処理のさらなる進行に伴ってピークA1及びA2(19分及び21分で溶出されるピーク)が出現するとともに、ピークBの減衰が認められた。最も高い抗酸化活性を示したRIB2503のクロマトグラムを図7に示す。
【0045】
次に、最も抗酸化活性が高かったRIB2503による微生物発酵処理後14日目のサンプリング液について、上記HPLC条件3のHPLCグラジエント法で溶出時間2分毎に分取を行い、溶出区分毎にDPPHラジカル捕捉活性の測定を行った。結果を図8に示す。図8より、ピークA1及びA2を含む区分(fraction10)に最も高い抗酸化活性があることが確認された。また、ピークBを含む区分(fractin13,14)にもfraction10よりは弱いが抗酸化活性が確認された。
【0046】
(ピークA1,A2の同定)
強いラジカル捕捉活性が認められた前記図8のfraction10について構造決定を行った。即ち、上記HPLC条件3にてUV280nmの吸光度を指標として、ピークA1及びA2をそれぞれ個別に分取し単離、精製した。これらの分取サンプルを用いて、下記LC−MS条件1にて分子量を測定した。結果を図9に示す。
【0047】
LC−MS条件1
カラム :ODS-HG-5(4.6φ×250mm)
流速 :0.8ml/min
溶媒 :A;水(0.1%TFA)、B:メタノール(0.1%TFA)
条件 : 0-10min(0-100% MeOHのグラジエント溶出)、
10-20min( 100% MeOH)、20-23min(100-0% MeOH)
プローブ:ESP(Possitive Mode)
その結果、ピークA1,A2の分子量はともに330.34であることが確認された。これはセサミンの分子量354.34よりも分子量が24小さいことから、構造的にセサミンの両端にある2つのメチレンジオキシ基がそれぞれ2つの水酸基に開裂したジカテコール体ではないかと予想された。
【0048】
一般的にフェノール性水酸基を持つことは抗酸化活性に大きく寄与することが知られているため、ピークA1,A2がフェノール性水酸基を有しているかどうか検討した。本実験ではジアゾメタンによる水酸基の完全メチル化反応を行い、反応後に上記HPLC条件2により分析したところ、ピークA1,A2が完全に消失し、さらにこの反応サンプルで上記LC−MS分析1を行ったところ、セサミンの分子量よりも32大きい分子量を有するピークが検出された(図10参照)。以上の結果から、この反応物質は、構造的に2つのメチレンジオキシ基が開裂し4つのメトキシ基が付加されたものであると予想された。
【0049】
次に、前記ピークA1及びA2の分取サンプルを用いて1H−NMRによる分析を行った。なお、この1H−NMR分析において、A1及びA2のシグナルが溶媒と重なったため、溶媒を重クロロホルム、重メタノール、重アセトン、重ジメチルスルフォキシドとして各溶媒のシグナルを比較した。結果を図11及び図12に示す。本分析では、まず、セサミンの標準品及び6−エピセサミンの文献値とを比較検討することで構造解析を実施した。1H−NMRの結果、ピークA1及びA2には、それぞれセサミン及び6−エピセサミンに見られるテトラヒドロフルフラン環由来のシグナルが見られた。これらのシグナルのケミカルシフト、結合定数がほぼ同じであったことから、A1,A2のテトラフルフラン環は代謝過程で保持されていることが示唆された。しかしながら、セサミン、6−エピセサミンに見られるメチレンジオキシ基由来のシグナルが消失し新たなシグナルが7.91ppm(溶媒:重アセトン)に観察され、このシグナルはプロトン交換可能な重メタノールでは観察されなかったことから水酸基によるものと考えられた。
【0050】
以上の1H−NMR、LC−MS、ジアゾメタンによるメチル化の結果より、ピークA1及びA2は、それぞれセサミン及び6−エピセサミンのテトラヒドロフルフラン環を持ち、2つのメチレンジオキシ基が開裂し、2つのベンゼン環に2つずつ水酸基が付加したカテコール構造を持つものであるとの結論を得た。さらにA1及びA2をさらに単離、精製し、溶媒にDMSOを用いて1H−NMRによる立体構造の分析を実施したところ、ピークA1、A2とも同じシグナルが見られたが、その強度の違いによりA1は天然体のセサミンジカテコール、A2はエピ体のセサミンジカテコールであることが示された。
【0051】
(ピークBの同定)
上記ピークA1,A2と同様にピークBについても物質の同定を実施した。図7のクロマトグラムより、ピークBについては、変換過程におけるピークA1,A2との相関関係及びLC−MSにより得られた分子量より、セサミンからセサミンジカテコール体へと変換される際の中間変換物であると予想された。前記相関関係としては、HPLC分析における溶出時間及び微生物発酵処理での生成のタイミングがセサミンとピークA1,A2との間にあることが挙げられる。前記生成のタイミングとしては、ピークBがセサミンの減少に伴って増加し、ピークA1,A2の増加に伴って減少するという絶妙なタイミングが挙げられる。さらに、ピークA1,A2,Bの紫外線吸収スペクトルがいずれもセサミンと酷似していること、溶出時間がセサミンとセサミンジカテコール体との間にあることなどから、ピークBはセサミンの2つのメチレンジオキシ基のうち一方のみが開裂しカテコール体になったものではないかと予想した。
【0052】
(同定された抗酸化物質の再確認)
ピークA1,A2がセサミンジカテコール体であり、ピークBがセサミンカテコール体であることを確認するために以下の実験を実施した。肝代謝系の肝臓ミクロソームにおいてセサミンがセサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体に変換されるという報告を受けて、肝臓分画であるS9ミックス(和光純薬社製)を用いてセサミンをin vitroで代謝させることにより、セサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体を生成させた。前記肝臓分画で代謝された代謝物からセサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体をそれぞれ精製し、該精製サンプルを上記HPLC条件3により分析した。結果を図13に示す。その結果、図13のクロマトグラムと図7のクロマトグラムとを比較すると、前記代謝物から精製したセサミンカテコール体とピークBとの溶出時間が一致し、同代謝物から精製したセサミンジカテコール体とピークA1,A2との溶出時間が一致したことから、上記同定結果が裏付けられた。
【0053】
(微生物発酵処理の至適条件の検証)
RIB2503を用いてセサミンを微生物発酵処理したときのセサミンジカテコール体(ピークA1,A2)及びセサミンカテコール体(ピークB)について、培養温度や発酵期間で生成量がどのように変化しているか検討した。ピークA1,A2の生成量の結果を図14(a)に、ピークBの生成量の結果を図14(b)に示す。その結果、培養温度については、ピークA1,A2,Bとも23℃よりも26℃の方が早くピークが現れることが確認された。
【0054】
一方、発酵期間については、図14(b)より、ピークBは、培養温度26℃のときには4〜11日間、特に5〜8日間で多く生成されており、培養温度23℃のときには16〜18日前後で多く生成されていたことが分かる。図14(a)より、ピークA1,A2は、培養温度26℃のときには1.5〜3週間、特に2週間前後で多く生成されていたことが分かる。また、図7のクロマトグラムより、微生物発酵処理開始後のセサミンの急激な減少に伴って、ピークBの生成が徐々に認められ、1週間目頃に最高値に達することが明かとなった。また、このころからピークA1,A2も生成が認められ、それらピークA1,A2の増加に伴ってピークBが減少する傾向が認められた。そして、微生物発酵処理開始から2週間目頃にピークA1,A2は最高値に達し、そのころピークBは低いレベルまで減少していることが判った。従って、最も高い抗酸化活性を有するセサミンジカテコール体を生成させるための発酵期間としては、微生物発酵処理開始から好ましくは1週間以上、より好ましくは2週間以上、特に2〜3週間であるとよいことが分かる。
【0055】
(抗酸化物質の変換率の確認)
上記RIB2503を用いて微生物発酵処理した発酵物について、抗酸化物質の変換率を求めた。即ち、まず、上記微生物発酵処理によって生成されたセサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体の量を図7のクロマトグラムより求めた後、それらの量を、出発原料として用いたセサミンの量で除算することによって変換率を求めた。その結果、セサミンカテコール体への変換率は天然型及びエピ型合わせて2.5%、セサミンジカテコール体への変換率は天然型及びエピ型合わせて20.0%であったことが示された。なお、この微生物発酵処理による変換率は、特許文献1に記載の方法による変換率に対して数倍以上上回っていることも確認された。
【0056】
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 実施形態の抗酸化素材(有効成分)又はリグナン化合物を、例えば、化粧品、医薬部外品若しくは医薬品、又は香料、色素、油脂等の酸化劣化を防止するための劣化防止剤中に含有させてもよい。
【0057】
本発明を応用した技術として、微生物発酵処理の代わりに、アスペルギルス属微生物が産生する酵素を用いた酵素処理により上記有効成分を生成させてもよい。このように構成した場合でも高い抗酸化作用を発揮することができる。
【0058】
本発明を応用した技術として、セサモリン、セサモール又はセサモリノールを用いて微生物発酵処理してもよい。このように構成した場合でも、高い抗酸化作用を発揮することができる。
【0059】
本発明を応用した技術として、セサミンカテコール体又はセサミンジカテコール体をジアゾメタンによる完全メチル化反応を行うことにより生成されたリグナン化合物を医薬品又は医薬部外品中に含有させてもよい。また、セサミノールカテコール体をジアゾメタンによる完全メチル化反応を行うことにより生成された化合物を医薬品又は医薬部外品中に含有させてもよい。
【0060】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記発酵原料よりも高い抗酸化作用を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗酸化素材。
【0061】
・ 前記微生物発酵処理に先立って、アスペルギルス属微生物を含む培地を好気的条件下で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備培養処理後の培地を前記発酵原料に付着させて微生物発酵処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗酸化素材。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1から請求項4に記載の発明の抗酸化素材によれば、高い抗酸化作用を発揮することができる。請求項5に記載の発明の飲食品によれば、高い抗酸化作用を発揮することができる。請求項6に記載の発明の抗酸化素材の製造方法によれば、高い抗酸化作用を発揮する抗酸化素材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)はセサミンが微生物変換されたときの構造の変化を示す図、(b)はセサミノールが微生物変換されたときの構造の変化を示す図。
【図2】 セサミンカテコール体及びセサミンジカテコール体の構造を示す
【図3】 セサミンの構造を示す化学式。
【図4】 実施例1の微生物発酵処理による抗酸化能の確認結果を示す。
【図5】 実施例1の抗酸化物質の精製を行った際のクロマトグラム。
【図6】 実施例2の微生物発酵処理による抗酸化能の確認結果を示す。
【図7】 実施例2の抗酸化物質の精製を行った際のクロマトグラム。
【図8】 実施例2の抗酸化物質の精製を行った際のクロマトグラム。
【図9】 実施例2のピークA1,A2のLC−MS分析結果を示す。
【図10】 実施例2のメチル化したA1,A2のLC−MS結果を示す。
【図11】 実施例2のピークA1,A2の1H−NMRの分析結果を示す
【図12】 実施例2のA1,A2,セサミンの1H−NMRデータを示す
【図13】 実施例2の抗酸化物質の再確認の結果を示すクロマトグラム。
【図14】 (a)及び(b)はいずれも、実施例2の微生物発酵処理における至適温度条件の検証結果を示すグラフ。
Claims (6)
- セサミノール配糖体を含む発酵原料にアスペルギルス・サイトイ又はアスペルギルス・シロウサミを接種して微生物発酵処理することにより得られることを特徴とする抗酸化素材。
- セサミノールカテコール体が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化素材。
- セサミノールカテコール体が前記発酵原料よりも高含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の抗酸化素材。
- 前記発酵原料をゴマ種子、焙煎ゴマ、焙煎ゴマ油、未焙煎ゴマサラダ油、ゴマ搾り粕又はゴマ脱臭スカムとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抗酸化素材。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗酸化素材を含有する飲食品。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抗酸化素材を製造する製造方法であって、セサミノール配糖体を含む発酵原料にアスペルギルス・サイトイ又はアスペルギルス・シロウサミを接種して微生物発酵処理することを特徴とする抗酸化素材の製造方法。
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