JP4601922B2 - リグナン化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、セサミノールカテコール体からなる新規リグナン化合物の製造方法に関するものである。より詳しくは、セサミノールの分子内に存在するメチレンジオキシフェニル基がカテコール基に変換された構造を有し、高い抗酸化作用を発揮するリグナン化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のリグナン化合物としては、例えば特許文献1に開示されている各種リグナン化合物が知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−139579号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、新規なリグナン化合物を発見し、かつ該リグナン化合物が高い抗酸化作用を有することを見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、高い抗酸化作用を発揮することができる新規なリグナン化合物の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のリグナン化合物の製造方法は、下記化5又は化6に示される構造を有するリグナン化合物の製造方法であって、セサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種を含む発酵原料をアスペルギルス・サイトイ及びアスペルギルス・シロウサミから選ばれる少なくとも一種のアスペルギルス属微生物を用いて微生物発酵処理した後、単離することを特徴とする
【0006】
【化5】
Figure 0004601922
【0007】
【化6】
Figure 0004601922
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
実施形態のリグナン化合物は、下記化又は化10に示される構造を有する有機化合物(セサミノールカテコール体)である。
【0010】
【化9】
Figure 0004601922
【0011】
【化10】
Figure 0004601922
前記化に示されるリグナン化合物は、天然型セサミノールカテコール体(セサミノール−6−カテコール)である。前記化10に示されるリグナン化合物は、エピ型セサミノールカテコール体(2−エピセサミノール−6−カテコール)である。これらセサミノールカテコール体は、互いに光学異性体の関係にあり、いずれも高い抗酸化作用を有している。また、天然型セサミノールカテコール体の方がエピ型よりも抗酸化作用は高い。
【0012】
これらセサミノールカテコール体は、いずれもアスペルギルス属微生物を用いてセサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種を含む発酵原料、好ましくはセサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種の発酵原料を微生物発酵処理することにより得られる。これらセサミノールカテコール体は、前記セサミノール配糖体よりも顕著に高い抗酸化作用を有しているうえ、前記セサミノールよりも高い抗酸化作用を有している。
【0013】
セサミノール(sesaminol)は、互いに光学異性体の関係にある天然型又はエピ型セサミノールが存在し、いずれも高い抗酸化活性を有する有機化合物である。これらセサミノールは、2つのメチレンジオキシ基を有しているが、前記微生物発酵処理による微生物変換によって、フェノール性水酸基を有しない側の一方のメチレンジオキシ基のみが開裂してセサミノールカテコール体となる。下記化11に天然型セサミノールの分子構造を示す。
【0014】
【化11】
Figure 0004601922
セサミノール配糖体(sesaminol-triglucoside)は、前記セサミノールと糖とがグリコシド結合にて結合した配糖体であり、抗酸化作用をほとんど有しない有機化合物である。このセサミノール配糖体は、β−グリコシダーゼ処理等のアグリコン化処理によりアグリコンとしてのセサミノールを生成(遊離)させる。また、前記微生物発酵処理によってもセサミノールが生成される。
【0015】
前記アスペルギルス(Aspergillus)属微生物(発酵菌)としては、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)等の黒麹菌、又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーイエ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)等の黄麹菌が挙げられる。これらの発酵菌のうち微生物変換効率が良好であることから、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・ニガー又はアスペルギルス・アワモリが好適に用いられ、Aspergillus saitoi(IAM2210)、Aspergillus niger (ATCC38857)、Aspergillus shirousami(RIB2503)が特に好適に用いられる。
【0016】
前記発酵原料としては、ゴマ種子、ゴマ製品又はゴマ製品製造時の副産物が用いられ、好ましくはそれらからゴマリグナン類を抽出したゴマリグナン類抽出物が用いられ、さらに好ましくは該ゴマリグナン類抽出物よりセサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種を精製した精製物が用いられる。前記ゴマ種子、ゴマ製品又はゴマ製品製造時の副産物としては、セサミノールを高含有する焙煎ゴマ種子、ゴマ油、ゴマ脱臭スカム、ゴマサラダ油等、或いはセサミノール配糖体を高含有するゴマ種子、ゴマ絞り粕、ゴマ油粕等が挙げられる。
【0017】
微生物発酵処理は、前記発酵原料にアスペルギルス属微生物を接種し、該微生物を所定の発酵条件下で所定の発酵期間培養することにより行われる。この微生物発酵処理は、主として前記微生物の栄養菌糸が生産する酵素によりセサミノール分子内のメチレンジオキシフェニル基をカテコール基に変換する反応を行う。また、同栄養菌糸が生産するβ−グリコシダーゼ(β−グルコシダーゼ)によりセサミノール配糖体をアグリコン化してセサミノールを遊離させる反応も行う。
【0018】
前記微生物を発酵原料に接種する方法としては、該微生物の胞子を発酵原料に直接振りかけることができる。また、予め前記微生物を含む培地を好気的条件で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備培養処理後の培地を発酵原料に振りかけたり、前記予備培養後の培地中に発酵原料を添加して接種することも可能である。これらの接種方法のうち、微生物発酵処理が比較的均一に進むことから、予備培養処理後の培地を発酵原料に振りかけるのが最も好ましい。
【0019】
前記予備培養処理は、微生物発酵処理に用いられる微生物を予め十分に増殖させるとともに活性化させることによって、微生物発酵処理を迅速かつ円滑に進行させるために行われる。この予備培養処理は、20〜40℃の好気的条件下で最低5日以上行われ、好ましくは前記微生物の菌糸体が培地表面を3分の1程度覆う状態となるまで行われる。前記培地としては、ポテトデキストロース含有培地やツァペック培地等の糸状菌用培地又はオカラ等の有機物を含有する種々の液体培地が好適に使用される。さらに、この予備培養処理では、前記微生物の生育を良好にするために、培養開始時点における培地のpHを3〜7に調整するのが好ましい。また、前記振盪培養する際の振盪速度としては、好ましくは50rpm以上、より好ましくは50〜200rpmである。この振盪速度が50rpm未満の場合には、前記微生物を含有した培地全体が好気的でないため菌糸の増殖が十分にできない。また、振盪速度が200rpmを越える場合には、培地の揺れが激しく前記微生物の菌体形成が抑制されるおそれがある。
【0020】
微生物発酵処理条件としては、好気的条件で行うとよい。また、暗所で行うのが好ましい。また、発酵温度としては、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜30℃である。前記リグナン化合物を多量に得るための発酵期間としては、好ましくは3日から1ヶ月、より好ましくは1〜3週間、さらに好ましくは10〜20日間、特に好ましくは12〜18日間である。この発酵期間が3日未満の場合には、前記微生物による微生物発酵がほとんど進行していないことから十分な量のリグナン化合物が生成されていない。逆に1ヶ月を越える場合には、生成されたリグナン化合物の分解が進むおそれがあるうえ不経済である。
【0021】
実施形態の飲食品としての健康食品は、前記リグナン化合物を含有するものであり、主として飲料品、食料品又は製剤(錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、等)の形態で経口摂取するように構成されている。この健康食品は、前記リグナン化合物を果汁、牛乳やヨーグルト等の乳製品、ゴマ製品、乳糖やデキストリン等の賦形剤等の健康食品用素材に添加することにより製造される。この健康食品は、前記リグナン化合物の高い抗酸化活性により、経口摂取した時に生体内での過剰な活性酸素など酸化ストレスを低減して、低密度コレステロール(LDL)の抗酸化作用や、肝機能の増強作用、アセトアルデヒドの毒性の軽減、乳がん細胞の増殖抑制作用、免疫機能改善等の健康増進効果を発揮する。
【0022】
健康食品としての飲料品中に含まれるリグナン化合物の濃度は、好ましくは0.0001〜50重量%、より好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。前記リグナン化合物の濃度が0.0001重量%未満の場合には健康増進効果を効果的に発揮させることができず、逆に50重量%を越える場合には不経済である。健康食品としての食料品又は製剤に含まれるリグナン化合物の含有量は、好ましくは0.001〜80重量%、より好ましくは0.01〜70重量%、さらに好ましくは0.1〜50重量%である。前記リグナン化合物の含有量が0.0001重量%未満の場合には健康増進効果を効果的に発揮させることができず、逆に50重量%を越える場合には不経済である。
【0023】
また、前記リグナン化合物の摂取量としては、成人1日当たり好ましくは0.01〜1000mg、より好ましくは0.1〜700mg、より一層好ましくは1〜500mgであるとよい。このリグナン化合物の1日当たりの摂取量が0.01mg未満の場合には健康増進効果を効果的に発揮させることができず、逆に1000mgを越える場合には不経済である。さらに、この健康食品は、1日数回(2〜3回又はそれ以上)に分けて服用するのが好ましく、特に激しい運動の前後、日光による紫外線照射の前後、ストレス時、喫煙の前後等の酸化ストレスに晒されやすい状態のときに摂取するとよい。また、小人の場合は、主に体重に依存して摂取量が調整されるが、前記成人の摂取量の半量が目安となる。
【0024】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態のリグナン化合物は、上記化5又は化6に示される構造を有する新規物質である。これらリグナン化合物はいずれも、高い抗酸化作用を有するカテコール基を備えていることから低密度コレステロール(LDL)の抗酸化作用や、肝機能の増強作用、アセトアルデヒドの毒性の軽減、乳がん細胞の増殖抑制作用、免疫機能改善等の健康増進効果を発揮する健康食品に利用することができる。
【0025】
・ 実施形態のリグナン化合物は、セサミノール又はセサミノール配糖体にアスペルギルス属微生物を接種して微生物発酵処理することにより製造される。このリグナン化合物は、セサミノールやセサミノール配糖体が高含有されているゴマ種子、ゴマ製品及びゴマ製品製造時の副産物中には存在していないことから、本実施形態の微生物発酵処理を行うことにより、極めて容易かつ安価に大量生産が可能となり入手容易なものとなった。さらに、このリグナン化合物の製造方法では、食品加工分野で古来より用いられてきた麹菌(アスペルギルス属微生物)を利用して製造されていることから、経口摂取における問題も少ないうえ、実際の製造コスト面からも極めて効率がよい。
【0026】
・ 実施形態の飲食品(健康食品)は、前記リグナン化合物が含有されていることから、生体内に摂取することによって、活性酸素の消去等により高い健康増進効果を発揮することができる。さらに、前記リグナン化合物は、生体内に摂取される以前に予め微生物変換させることによって抗酸化活性を高めておいたものであることから、生体内で極めて迅速かつ効率的に抗酸化作用を発揮させることができる。このため、この健康食品では、生体吸収性の向上や新たな生理機能の付加も期待できることから、トータルとして生体内での健康増進機能をより一層増進させることが可能になる。
【0027】
【実施例】
以下、前記実施形態を具体化した実施例について説明する。
<実施例1:セサミノール配糖体の微生物発酵処理>
(微生物発酵処理による抗酸化能の上昇確認)
発酵菌としては、Aspergillus awamorii(RIB2804)、Aspergillus niger(ATCC38857)、Aspergillus shirousami(RIB2503)、Aspergillus saitoi(IAM2210)の4種類の菌株を用いた。これらの菌株は、予めポテトデキストロースブロス培地にて予備培養を行い菌糸体を増殖させておいた上で、同培地を5倍希釈した液体培地に菌糸体を移し、これに終濃度0.1%となるようにセサミノール配糖体(ゴマ粕より単離精製して調製)を添加して微生物発酵処理を実施した。上記の予備培養及び微生物発酵処理はいずれも、30℃恒温条件で振盪速度100rpmの好気的な条件下で培養を実施した。培養は1ヶ月間実施するとともに、経時的に液体培地を少量サンプリングして濾過したサンプリング液についてDPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazy)によるラジカル捕捉活性の測定を行った。即ち、DPPHエタノール溶液(20mg/100ml)2000μl、Tris-HClバッファー1000μl及びサンプリン液100μlを混合し、HPLCを用い定法に従ってラジカル捕捉活性の測定を行った。結果を図1に示す。図1より、全ての発酵菌が抗酸化能を上昇させ得ることが確認された。特に、RIB2503及びIAM2210では、微生物発酵処理開始10日目ごろからラジカル捕捉活性の急激な上昇がみられ、抗酸化能の上昇が迅速かつ高かったことが確認された。
【0028】
(抗酸化物質の精製)
0.5%セサミノール配糖体を添加した培地をRIB2503又はIAM2210により上記と同様の条件で8日間微生物発酵処理することにより発酵物を得た。得られた発酵物の濾過液について、下記HPLC条件1のHPLCグラジエント法(MeOHはメタノールを表す)にて、分取用カラム(YMC社製)が装着された島津製作所製のLC−8Aを用いてA〜Dの4つの区分(fraction)に分画した。
【0029】
Figure 0004601922
次に、分画後の各区分についてDPPHラジカル捕捉活性の測定を実施した。
即ち、DPPHエタノール溶液(20mg/100ml)2500μl、Tris-HClバッファー1000μl及びサンプリング液100μlを混合し、上記と同様にHPLCを用いてラジカル捕捉活性の測定を行った。各区分のラジカル捕捉活性(%)を表1に示す。また、前記RIB2503を用いた発酵物を以下HPLC条件2の条件で分析した結果を図2に示す。
【0030】
Figure 0004601922
【0031】
【表1】
Figure 0004601922
表1より、BとCの区分、特にCの区分において強いラジカル捕捉活性が認められた。次に、前記クロマトグラムのピークを細かく分離し、B区分については11個(B1〜B11)、C区分については7個(C1〜C7)に分画したもののそれぞれについて、DPPHラジカル捕捉活性を測定した。結果を表2に示す。なお、前記B1〜B11及びC1〜C7のピークのうちの幾つか(Frc-B5,Frc-B9,Frc-C3,Frc-C4,Frc-C7)を図2に示されるクロマトグラムに記入した。
【0032】
【表2】
Figure 0004601922
(抗酸化物質の同定)
セサミノール配糖体及びセサミノール(本発明者らが単離精製して調製)を上記HPLC条件2に準じてHPLC分析した結果、C2に含まれるピークはセサミノール配糖体、C5に含まれるピークはセサミノールであることが確認された。次に、強いラジカル捕捉活性が認められたC3及びC4の各区分について構造決定を行った。即ち、上記HPLC条件2にてUV280nmの吸光度を指標として、ピークC3及びC4をそれぞれ個別に分取し単離、精製した。これらの分取サンプルを用いて、下記LC−MS条件1にて分子量を測定した。ピークC3についてのLC−MSの結果を図3に示す。なお、CH3CNはアセトニトリルを示す。
【0033】
Figure 0004601922
その結果、ピークC3の測定分子量(M+H+)は359であることが確認された。このピークC3の抗酸化物質の分子量358はセサミノールの分子量370よりも12小さいことから、構造的にセサミンの両端にある2つのメチレンジオキシ基のうちいずれかがそれぞれ水酸基に開裂したカテコール体ではないかと予想された。また、C4についても同様の結果が得られた。
【0034】
次に、前記ピークC3、C4のそれぞれの分取サンプルを用いて各種NMR(1H,13C,HMBC,HMQC)による分析を行った。本分析では、まず、セサミノールの標準品及び立体異性体の文献値と比較検討することにより構造の特徴を推定した。1H−NMRの結果、変換物C3,C4にセサミノールに見られるテトラヒドロフルフラン環由来のシグナルが見られた。測定溶媒の影響よりこれらのシグナルのケミカルシフトは微妙に異なったが、出現パターンや結合定数はほぼ同じであったことからC3,C4のテトラフルフラン環は代謝過程で保持されていることが示唆された。しかしながら、セサミノール及びその異性体に見られるメチレンジオキシ基由来シグナル強度が半減し、新たな水酸基シグナルが8.78ppm(溶媒:重DMSO)に観察され、このシグナルはプロトン交換可能なD2O処理では観察されなかったことから水酸基によるものと考えられた。
【0035】
また、二次元NMR解析により、各1H及び13Cシグナルを図4及び図5に示す様に帰属できた。C3は、1)1,5位の1Hシグナルが2.87ppmに同一な値を示したこと、2)4,8位の1Hシグナルの出現パターン、結合定数がセサミノールと酷似していたことから、立体構造は天然型のセサミノールと同一であることが強く示唆された。一方、C4は1)1,5位の1Hシグナルが3.37ppm、2.75ppmと異なった値を示したこと、2)1位の1Hシグナルが3.37ppmと大きく低磁場シフトしていること、3)天然型では2位ベンゼン環と立体的に近傍に存在する8位の1Hシグナルがそれぞれ3.07ppm、3.64ppmと大きく高磁場シフトしていることなどから、セサミノール立体異性体の文献値との対応性と併せて、エピ体の2−エピセサミノールと同一の立体構造であると推察された。
【0036】
以上から、抗酸化物質C3、C4はセサミノール及び2−エピセサミノールのテトラヒドロフルフラン環を持ち、2’位水酸基を有するベンゼン環のメチレンジオキシ基は変化せず、反対側のベンゼン環に存在するメチレンジオキシ基が開裂したカテコール構造を持つものであるとの結論を得た。即ち、C3はセサミノールのA環のメチレンジオキシ基が開裂した天然体のセサミノール−6−カテコールであり、C4はエピ体の2−エピセサミノール−6−カテコールであることが示された。また、表2の結果を参照すると、これらセサミノールカテコール体は、セサミノールよりも顕著に高い抗酸化活性を有していることと、エピ型よりも天然型セサミノールカテコール体の方が抗酸化活性が高いこととが明らかになった。
【0037】
(抗酸化物質の変換率の確認)
上記RIB2503又はIAM2210を用いて微生物発酵処理した各発酵物について、抗酸化物質の変換率を求めた。即ち、まず、上記微生物発酵処理によって生成されたセサミノールカテコール体の量をクロマトグラム(RIB2503については図2)より求めた後、該セサミノールカテコール体の量を、出発原料として用いたセサミノール配糖体の量で除算することによって変換率を求めた。その結果、RIB2503を用いた微生物発酵処理における変換率は7.6%(天然型は4.6%、エピ型は3.0%)、IAM2210を用いた微生物発酵処理における変換率は7.14%(天然型は4.35%、エピ型は2.80%)であったことが示された。また、前記出発原料としてのセサミノール配糖体に含まれる天然型とエピ型との割合は1:1であることから、この微生物発酵処理では天然型への変換効率に優れていることも示された。
【0038】
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である
【0039】
発明を応用した技術として、セサミノールカテコール体をジアゾメタンによる完全メチル化反応を行うことにより生成されたリグナン化合物を医薬品又は医薬部外品中に含有させてもよい。
【0040】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する
【0041】
・ 前記微生物発酵処理に先立って、アスペルギルス属微生物を含む培地を好気的条件下で振盪培養する予備培養処理を行った後、その予備培養処理後の培地を前記発酵原料に付着させて微生物発酵処理を行うようにしたことを特徴とする前記リグナン化合物の製造方法
【0043】
前記リグナン化合物を含有する化粧品。前記リグナン化合物を含有する医薬部外品。前記リグナン化合物を含有する医薬品。これらのように構成した場合、高い抗酸化作用を様々な用途に利用することができる。前記リグナン化合物を含有する劣化防止剤。このように構成した場合、香料、色素、油脂等の酸化劣化を容易に防止することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明のリグナン化合物の製造方法によれば、高い抗酸化作用を発揮するリグナン化合物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の微生物発酵処理による抗酸化能の確認結果を示すグラフ
【図2】 実施例の抗酸化物質の精製を行った際のクロマトグラム。
【図3】 実施例のピークC3のLC−MS分析結果を示す。
【図4】 実施例のピークC3、C4の構造と1H−NMRの結果とを示す
【図5】 実施例のピークC3、C4の13C−NMRの分析結果を示す。

Claims (1)

  1. 下記化1又は化2に示される構造を有するリグナン化合物の製造方法であって、
    セサミノール及びセサミノール配糖体から選ばれる少なくとも1種を含む発酵原料をアスペルギルス・サイトイ及びアスペルギルス・シロウサミから選ばれる少なくとも一種のアスペルギルス属微生物を用いて微生物発酵処理した後、単離することを特徴とするリグナン化合物の製造方法。
    Figure 0004601922
    Figure 0004601922
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