JP2006061115A - 発酵法によるセサミノールの製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 セサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナンまたは前記リグナンを含む基質材料を、バチルス属細菌およびエンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションする。
【選択図】 なし
Description
セサミノールはゴマ種子中にごく少量見出され、その配糖体は無味、無臭、無色であり、非常に高い熱安定性を有し食品用の天然抗酸化剤としてセサミンと共に非常に重要な物質であると考えられている(Fukuda,Y., M.Nagata, T.Osawa and M. Namiki, J. Amer. Oil Chem. Soc., 63, 1027 (1986), Fukuda,Y., T.Osawa, M.Namiki and T.Ozaki, Agric. Boil. Chem. 49, 301 (1985)))。Fukudaら(1986)は、セサミノールはゴマ油精製においてブリーチング工程の際に酸触媒によってセサモリンから生成されることを報告している。セサミンはまたこのブリーチング工程においてエピセサミンに異性化する。しかしながら、セサモリンを用いたin vivoの研究により、セサモリンは消化管における吸収の際にセサモールおよびセサモリノールに転換されることが明らかになった(Kang,M.H., Y.Kawai, M.Naito and T.Osawa, J. Nutr. 129, 1885 (1999))。セサミノールの自然界における存在は限られているため、セサミノールトリグルコシド(図3)のセサミノールへの加水分解は抗酸化剤製造において非常に有用であると考えられてきた。
一方、配糖体(グルコシド)の加水分解にはβ-グルコシダーゼが有用であると考えられているが、アグリコンにグルコース分子が結合している場合、そのアグリコンに近いグルコース分子を切断するためには特異的なグルコシダーゼが必要であることが知られており、セサミノール配糖体(例えばセサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシド)、特にセサミノールトリグルコシドから効率的にアグリコン、すなわちセサミノールを生成させる方法は報告されていない。
特に、本発明の目的は、セサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナンを含む基質材料が、ゴマ種子、ゴマ種子の一部若しくは全部破砕物、ゴマ油またはゴマ油滓(SOC;sesame oil cake)である、セサミノールを製造する方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、ゴマ種子、ゴマ種子の一部若しくは全部破砕物、ゴマ油またはゴマ油滓(SOC)中の抗酸化性リグナン、特にセサミン、セサミノールの(合計)総含量を増加させることである。
また、本発明は、上述したセサミノールの製造法、および、上述した基質材料中の抗酸化性リグナンの総含量を増加させる方法において、基質材料をバチルス属細菌および/またはエンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションをするに先立ち、前記細菌をセサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナン存在下で前培養することを更に含む。また、本発明は前培養がゴマ油滓(SOC)および/またはゴマ種子粉砕物を含む培地中で行われる、セサミノールの製造法、および、基質材料中の抗酸化性リグナンの総含量を増加させる方法でもある。
例えば、基質材料が高度に乾燥している場合、水、バッファーを含む適切な溶媒、又は培地、を適当量添加し、液体状態、半固体状態、流動体状態、半流動体状態を含む、酵素が作用し得る環境を用意することができる。本発明において、使用するバチルス属細菌および/またはエンテロコッカス属細菌の増殖に適した培地、温度、pHを使用する場合は「インキュベーション」は実質的に細菌の「培養」と同義となる。
基質材料としてゴマ油滓(SOC)を用いる場合も、上述した基質材料としてゴマ種子を用いた場合と同様にしてセサミノールを得ることができる。
また、必要に応じて、適宜サンプルを採取し、エタノール、80%エタノールおよびクロロホルムを含む適切な溶媒により振盪抽出してHPLCなどによりセサミノールの生成状況をモニターすることもできる。このような分析を行うことにより、当業者は基質材料に対する初期菌体量、培養時間、培養温度等をより適切に調整することができるであろう。
一方、本発明者らは、精製セサミノールTGをバチルス・サブチリスおよびエンテロコッカス・ファエシウムと共存させてインキュベーションすると、セサミノールTGは24時間以内にセサミノールDGに転換され、48時間後にはセサミノールMGがかなり出現しており、72時間後には、セサミノールTGは、90%以上、好ましくは95%以上、実質的にほぼ100%セサミノールに転換されることを示すデータも得ている。従って、本発明の方法において、インキュベーションは少なくとも24時間、好ましくは少なくとも48時間、特に好ましくは72時間以上行うことが好ましい。セサミノールおよびセサミンはバチルス・サブチリスおよびエンテロコッカス・ファエシウムのいずれによっても少なくとも120時間まではほとんど分解または代謝されないことが実験的に示されている。従って、72時間より長く、少なくとも120時間まではインキュベーションしてもよい。
インキュベーション終了後、培地を含む培養物または醗酵物は目的に応じてそのまま使用してもよく、ろ過、クロマトグラフィー等により、セサミノール、セサミン等のリグナン型抗酸化物質を抽出および精製することもできる。精製後の純度はHPLC、薄層クロマトグラフィー、質量分光分析等によって決定することができる。これらのゴマ由来リグナン型抗酸化物質の精製方法も当業者には知られたものである(Fukudaら、1986、既出、Miyaharaら、2001、既出、Ohtsukiら、2003、既出、等)。また、必要に応じて、FTC法、またはTBA法によって得られた物質の抗酸化作用を確認することもできる。
精製セサミノールTGからのセサミノール生成を調べた。このHPLC分析の結果を図6に示す。これは。これは以下実験における、インキュベーション時間0に相当する。
Bacillus subtilisを20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、1.0mlの前培養物を1mgの精製セサミノールTGと共に37℃にて72時間インキュベーションした。72時間後にサンプルを採取し凍結乾燥した。この凍結乾燥サンプルを4mlの80%エタノールで27℃にて振盪抽出した。抽出後サンプルをアドバンテックNo.2フィルターでろ過し、日立HPLCシステムにより分析した。HPLCシステムは以下の通り:
カラム:Wakosil II 5C18HG
流速:0.8ml/分
溶媒A:(v/v)アセトニトリル 10%, TFA 0.1%
溶媒B:(v/v)アセトニトリル 80%, TFA 0.1%
勾配:直線勾配, 0〜100% B、40分間
検出:280 nm
結果を図7に示す。セサミノールに相当するピークは観察されなかった。
Bacillus subtilisを20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、1.0mlの前培養物を1mgの精製セサミノールTGと共に37℃にて72時間インキュベーションした。72時間後にサンプルを採取し凍結乾燥した。この凍結乾燥サンプルを4mlの80%エタノールで27℃にて振盪抽出した。抽出後サンプルをアドバンテックNo.2フィルターでろ過し、1)と同様に日立HPLCシステムにより分析した。
その結果を図8に示す。セサミノールに相当するピークが観察された。
Bacillus subtilisおよびEnterococcus faeciumをそれぞれ20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、両方の前培養物各0.5mlを1mgの精製セサミノールTGと共に37℃にて72時間インキュベーションした。24時間ごとにサンプルを採取し凍結乾燥した。この凍結乾燥サンプルを4mlの80%エタノールで27℃にて振盪抽出した。抽出後サンプルをアドバンテックNo.2フィルターでろ過し、1)と同様に日立HPLCシステムにより分析した。
その結果を図9A〜9Cに示す。24時間後にセサミノールに相当するピークが観察され、72時間後にはかなりの量のセサミノールが観察された。
市販の白ゴマ種子(和田萬、大阪、より購入;以下の実験において使用したゴマ種子は全て和田萬より購入した)粉砕物についてのHPLC分析の結果を図10に示した。これは以下実験における、インキュベーション時間0に相当する。
1)Bacillus subtilis による醗酵
3gの細かく粉砕した市販の白ゴマ種子を3mlの水と混合し、121℃、20分間オートクレーブした。Bacillus subtilisを20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、1.5mlの前培養物をオートクレーブしたゴマ種子と共に37℃にて72時間インキュベーションした。72時間後にサンプルを採取し凍結乾燥した。
1gの凍結乾燥品を10mlのクロロホルムで27℃にて振盪抽出した。抽出後サンプルをアドバンテックNo.2フィルターでろ過し、ろ液を4mlに調製し(evaporation ?)、実施例1と同様に日立HPLCシステムで分析した。
分析の結果を図11に示す。セサミノールに相当するピークはほとんど観察されなかった。標準サンプルと比較して生成されたセサミノールを定量したところ、72時間のインキュベーションにより1gのゴマ種子から0.04mgのセサミノールが得られた(クロロホルム抽出による)。
3gの細かく粉砕した市販の白ゴマ種子を3mlの水と混合し、121℃、20分間オートクレーブした。Bacillus subtilisを20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、1.5mlの前培養物をオートクレーブしたゴマ種子と共に37℃にて72時間インキュベーションした。72時間後にサンプルを採取し、凍結乾燥した。
1gの凍結乾燥品を1)と同様にしてHPLC分析を行った。その結果を図12に示す。セサミノールに相当する小さなピークが観察された。標準サンプルと比較して生成されたセサミノールを定量したところ、72時間のインキュベーションにより1gのゴマ種子から0.16mgのセサミノールが得られた(クロロホルム抽出による)。
3gの細かく粉砕した市販の白ゴマ種子を3mlの水と混合し、121℃、20分間オートクレーブした。Bacillus subtilisおよびEnterococcus faeciumをそれぞれ20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、両方の培養物各0.75mlを、オートクレーブしたゴマ種子と共に37℃にて72時間インキュベーションした。24時間毎にサンプルを採取し、凍結乾燥した。
1gの凍結乾燥品を1)と同様にしてHPLC分析を行った。その結果を図13A〜Cに示す。24時間後にセサミノールに相当するピークが観察され、72時間後にはかなりの量のセサミノールが観察された。標準サンプルと比較して生成されたセサミノールを定量したところ、72時間のインキュベーションにより1gのゴマ種子から0.4mgのセサミノールが得られた(クロロホルム抽出による)。
市販のSOC(竹本油脂、愛知県、より購入;ゴマ油粕、肥料登録番号=愛知県1075、N:P:K=7:2.4:1.0、油分11.9%、水分含量4.1%);以下の実験に使用したSOCも全て同じ)のHPLC分析結果を図14に示す。これは以下の実験におけるインキュベーション時間0に相当する。
1)1)Bacillus subtilis による醗酵
3gの市販のSOCを3mlの水と混合し、121℃、20分間オートクレーブした。Bacillus subtilisを20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、1.5mlの前培養物をオートクレーブしたゴマ種子と共に37℃にて72時間インキュベーションした。72時間後にサンプルを採取し凍結乾燥した。
1gの凍結乾燥品を実施例1と同様に処理してHPLC分析にかけた。その結果を図15に示す。セサミノールに相当するピークはほとんど観察されなかった。標準サンプルと比較して生成されたセサミノールを定量したところ、72時間のインキュベーションにより1gのSOCから0.04mgのセサミノールが得られた(クロロホルム抽出による)。
3gの市販のSOCを3mlの水と混合し、121℃、20分間オートクレーブした。Enterococcus faeciumを20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、1.5mlの前培養物をオートクレーブしたゴマ種子と共に37℃にて72時間インキュベーションした。72時間後にサンプルを採取し凍結乾燥した。
1gの凍結乾燥品を実施例2と同様に処理してHPLC分析にかけた。その結果を図16に示す。セサミノールに相当する小さなピークが観察された。標準サンプルと比較して生成されたセサミノールを定量したところ、72時間のインキュベーションにより1gのSOCから0.14mgのセサミノールが得られた(クロロホルム抽出による)。
3gの市販のSOCを3mlの水と混合し、121℃、20分間オートクレーブした。Bacillus subtilisおよびEnterococcus faeciumをそれぞれ20% SOCを蒸留水中に含む培地で37℃にて、72時間前培養し、それぞれの培養物各0.75mlをオートクレーブしたゴマ種子と共に37℃にて72時間インキュベーションした。24時間毎にサンプルを採取し、凍結乾燥した。
1gの凍結乾燥品を1)と同様にしてHPLC分析を行った。その結果を図17A〜Cに示す。24時間後にセサミノールに相当するピークが観察され、72時間後にはかなりの量のセサミノールが観察された。標準サンプルと比較して生成されたセサミノールを定量したところ、72時間のインキュベーションにより1gのSOCから0.36mgのセサミノールが得られた(クロロホルム抽出による)。
Claims (13)
- セサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナンまたは前記リグナンを含む基質材料を、バチルス属細菌およびエンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションすることを含む、セサミノールの製造法。
- セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナンまたは前記リグナンを含む基質材料を、エンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションすることを含む、セサミノールの製造法。
- バチルス属細菌がバチルス・サブチリスである、請求項1記載のセサミノールの製造法。
- エンテロコッカス属細菌が、エンテロコッカス・ファエシウムである、請求項1〜3のいずれか1項記載のセサミノールの製造法。
- バチルス属細菌および/またはエンテロコッカス属細菌が、リグナンまたは前記リグナンを含む基質材料とのインキュベーションに先立って、セサミノールTG、セサミノールDGおよびセサミノールMGからなる群より選ばれる少なくとも一つのリグナンを含む培地中で前培養される、請求項1〜4のいずれか1項記載のセサミノールの製造法。
- バチルス属細菌および/またはエンテロコッカス属細菌が、リグナンまたは前記リグナンを含む基質材料とのインキュベーションに先立って、5〜70質量%のゴマ油滓(SOC)および/またはゴマ種子粉砕物を含む培地中で前培養される、請求項5記載のセサミノールの製造法。
- セサミノールトリグルコシド、セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナンを含む基質材料を、バチルス属細菌およびエンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションすることを含む、前記基質材料中の抗酸化性リグナンの総含量を増加させる方法。
- セサミノールジグルコシド、セサミノールモノグルコシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのリグナンを含む基質材料を、エンテロコッカス属細菌の共存下でインキュベーションすることを含む、前記基質材料中の抗酸化性リグナンの総含量を増加させる方法。
- 基質材料がゴマ種子、ゴマ種子の一部若しくは全部破砕物、ゴマ油およびゴマ油滓(SOC)からなる群より選ばれる、請求項7または8記載の方法。
- バチルス属細菌がバチルス・サブチリスである、請求項7または9項記載の方法。
- エンテロコッカス属細菌が、エンテロコッカス・ファエシウムである、請求項7〜10のいずれか1項記載の方法。
- バチルス属細菌および/またはエンテロコッカス属細菌が、リグナンまたは前記リグナンを含む基質材料とのインキュベーションに先立って、セサミノールTG、セサミノールDGおよびセサミノールMGからなる群より選ばれる少なくとも一つのリグナンを含む培地中で前培養される、請求項7〜11のいずれか1項記載の方法。
- バチルス属細菌および/またはエンテロコッカス属細菌が、リグナンまたは前記リグナンを含む基質材料とのインキュベーションに先立って、5〜70質量%のゴマ油滓(SOC)および/またはゴマ種子粉砕物を含む培地中で前培養される、請求項12記載の方法。
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JP2008167712A (ja) * | 2007-01-15 | 2008-07-24 | Kiyomoto Iron & Machinery Works Co Ltd | セサミノール配糖体のグルコシド結合分解酵素および前記酵素を産生する微生物 |
CN102532211A (zh) * | 2011-12-21 | 2012-07-04 | 浙江大学 | 一种木脂素三糖苷化合物及其制备方法和应用 |
WO2023058737A1 (ja) | 2021-10-08 | 2023-04-13 | 学校法人神戸学院 | 腸炎抑制用組成物 |
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