JP4332256B2 - 負摩擦帯電性トナー及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法,静電記録法,静電印刷法,トナージェット方式記録法などを利用した記録方法に用いられる負摩擦帯電性トナー及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報に記載されている如く多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱,圧力,加熱加圧或いは溶剤蒸気により定着し、トナー画像を得るものである。
【0003】
上述のトナーを現像する工程では、トナーに現像される静電荷像の極性及び現像方法(正規現像または反転現像)に応じて正または負の電荷を有する必要がある。
【0004】
トナーに電荷を付与するためには、トナーの成分である樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、この方法ではトナーの帯電が安定しないので初期画像濃度が低く、カブリ濃度が高くなりやすい。そこで、トナーに所望の摩擦帯電能を付与するために帯電制御剤を添加することが行われている。
【0005】
トナーに負の電荷を付与する負帯電制御剤は、例えばモノアゾ染料の金属錯塩、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、芳香族ジオールの如き金属錯塩または錯体、酸成分を含む高分子化合物等が知られている。トナーに正の電荷を付与する正帯電制御剤として、ニグロシン染料、アジン染料、トリフェニルメタン系染顔料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム塩を側鎖に有するポリマー等が知られている。
【0006】
しかしながら、これらの帯電制御剤のほとんどは、有色でありカラートナーには使えないものが多い。そして、カラートナーに適用可能な無色、白色あるいは淡色のものは、性能的に改良すべき点がある。それらはハイライト部の均一性が得られにくかったり、耐久試験での画像濃度の変動が大きい等の改良すべき点を有する。
【0007】
従来、芳香族カルボン酸の金属錯体または金属錯塩は、特開昭53−127726号公報、特開昭57−111541号公報、特開昭57−124357号公報、特開昭57−104940号公報、特開昭61−69073号公報、特開昭61−73963号公報、特開昭61−267058号公報、特開昭62−105156号公報、特開昭62−145255号公報、特開昭62−163061号公報、特開昭63−208865号公報、特開平3−276166号公報、特開平4−84141号公報、特開平8−160668号公報に提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの公報に提案されているのは摩擦帯電付与という観点からはいずれも優れたものであるが、簡略な構造の現像器で環境変動、経時変化、使用状況に関わらず安定した画像濃度が得られるものは少なく、高速機において長期間耐久しても安定した画像濃度が得られるものも少ない。更にはトナーを構成する原材料(結着樹脂、着色剤等)によっては弊害が発生し、使用するうえで制約を受ける場合もある。
【0009】
また、上述の最終工程であるトナー像を紙の如きシートに定着する工程に関して種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的な方法は熱ローラー又は耐熱フィルムを介した固定発熱ヒータによる圧着加熱方式である。
【0010】
加熱ローラーによる圧着加熱方式は、トナーに対し離型性を有する熱ローラーの表面と被定着シートのトナー像面を加圧下で接触しながら被定着シートを通過せしめることによりトナー像の定着を行なうものである。この方法は熱ローラーの表面と被定着シート上のトナー像とが加圧下で接触するため、トナー像を被定着シート上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行うことができる。
【0011】
加熱ローラー表面と軟化・溶融状態にあるトナー像とが加圧下で接触する為に、トナー像の一部が定着ローラー表面に付着し転移し、次の被定着シートにこれが再転移し、被定着シートを汚す、オフセット現象が生じる。このオフセット現象は定着速度や定着温度の影響を大きく受ける。一般に定着速度が遅い場合は、加熱ローラーの表面温度は比較的低く設定され、定着速度が速い場合は、加熱ローラーの表面温度は比較的高く設定される。これは、トナーを定着させる為に加熱ローラーからトナーに与える熱量を、定着速度によらずほぼ一定にするためである。
【0012】
被定着シート上のトナーは、何層かのトナー層を形成している為、特に定着速度が速く、加熱ローラーの表面温度が高い系においては、加熱ローラーに接触するトナー層と、被定着シートに接触している最下層のトナー層との温度差が、大となる為に、加熱ローラーの表面温度が高い場合には、最上層のトナーがオフセット現象を起こしやすく、加熱ローラーの表面温度が低い場合は、最下層のトナーは十分に溶けない為に、被定着シートにトナーが定着せず低温オフセットという現象が起きやすい。
【0013】
この問題を解決する方法として、定着速度が速い場合には、定着時の圧力を上げ、被定着シートへトナーをアンカーリングさせる方法が、通常行われている。この方法だと、加熱ローラー温度をある程度下げることができ、最上トナー層の高温オフセット現象を防ぐことは可能となる。しかし、トナーにかかるせん断力が非常に大となる為に、被定着シートが定着ローラーに巻きつき、巻きつきオフセットが発生したり、定着ローラーから被定着シートを分離するための分離爪の分離あとが定着画像に出現しやすい。さらには、圧力が高いがゆえに、定着時にライン画像が押しつぶされたり、トナーが飛びちったりして定着画像の画質劣化を生じ易い。
【0014】
近年、廃棄されるOA用紙の減量化あるいは省資源化は社会的要請であり、古紙を再利用した再生紙をコピーあるいはプリンター用紙として使用する機会が増えてきた。再生紙では白色度を向上するためにタルク、炭酸カルシウム等を主原料とする填料を多く添加して製造され、その添加量は紙の灰分として非再生紙の約5%に対して再生紙では10〜20%に及ぶ。この様な再生紙を長期間使用した複写機、プリンターでは再生紙から分離した填料が定着ローラー、加圧ローラー等の定着部材に付着・蓄積して離型性を低下させ、定着画像面あるいは転写紙の裏面にトナーが付着しやすく画像欠陥となる場合があり、改善を求められている。
【0015】
また、トナー用樹脂としてはポリエステル樹脂及びスチレン系樹脂などのビニル系共重合体が主に使用されている。ポリエステル樹脂は低温定着性に優れた性能を有しているが、その反面高温でのオフセット現象を発生しやすいという問題点を有すると言われ、この問題点を補うためにポリエステル樹脂の分子量を上げて粘弾性特性を改良する試みが行なわれてきたが、この場合には低温定着性を損なうという問題点があり、また、トナー製造時の粉砕性についても悪化させてしまいトナーの微粒子化にも適さない結着樹脂となってしまう。
【0016】
またスチレン系樹脂などのビニル系共重合体は、トナー製造時の粉砕性に優れ、高分子量化が容易なため耐高温オフセット性には優れているが、低温定着性を向上させるために低分子量化したり、ガラス転移温度を下げたりと耐ブロッキング性や現像性が悪化してしまうという問題点があった。
【0017】
これら2種類の樹脂の長所を有効に生かし、欠点を補うためにこれらの樹脂を混合して使用する方法もいくつか検討されている。
【0018】
例えば、特開昭54−114245号公報では、ポリエステル樹脂とビニル系共重合体を混合した樹脂を含有するトナーが開示されている。しかしながら、ポリエステル樹脂とビニル系共重合体とは化学的な構造が大きく異なるために相溶性が悪く、低温定着性、耐高温オフセット性、耐ブロッキング性をすべて満足するものとするのは難しい。
【0019】
また、トナー製造時に添加される種々の添加剤、特にワックスの均一分散が困難でありトナーの定着性能ばかりでなく、現像性にも問題が生じやすく、特に近年、微粒子化が進んでいるトナーにおいてはこの問題が顕著となる。
【0020】
また、特開昭56−116043号公報、特開昭58−159546号公報では、ポリエステル樹脂の存在下で単量体を重合して得られる重合体を含有することを特徴とするトナーが開示されている。
【0021】
特開昭58−102246号公報、特開平1−156759号公報では、不飽和ポリエステル存在下でビニル系共重合体を重合して得られる重合体を含有することを特徴とするトナーが開示されている。
【0022】
特開平6−214421号公報では、アルミニウム錯体を帯電促進添加剤として含有するトナーを用いた画像形成方法が開示されている。
【0023】
特開平8−196199号公報では、特定の分子量範囲にピークを有し、特定のTHF不溶分を有するトナーが開示されている。
【0024】
特開平10−10785号公報では、荷電制御剤として金属錯体型モノアゾ化合物及び芳香族ヒドロキシカルボン酸金属錯体を含有するトナーが開示されている。
【0025】
特開平10−90939号公報では、結着樹脂が実質的にTHF不溶分を含有せず、特定の分子量範囲にピークを有し、特定の酸価を有するトナーが開示されている。
【0026】
特開平9−146292号公報では、特定の動摩擦係数を有するポリアルキレン微粒子を含むトナーにおいて、OHPシート上に定着されたベタ画像表面の接触角が特定の範囲にあるトナーが開示されている。
【0027】
特開平9−244294号公報では、特定の動摩擦係数を有するポリアルキレン微粒子を含むトナーにおいて、トナーの接触角とトナーの誘電正接が特定の関係を満足するトナーが開示されている。
【0028】
これらのトナーでは定着性はある程度改善されるものの、トナーが定着器の加熱部材である加熱ローラーまたは耐熱フィルムにオフセットする現象を防止するには不十分である。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の如き問題点を解決した負摩擦帯電性トナー及び画像形成方法を提供するものである。
【0030】
すなわち、本発明の目的は、熱ロール定着器を使用する中〜高速機、あるいは、耐熱フィルムを介した固定発熱ヒーターによる圧着加熱定着方式を使用する中〜低速機であっても良好な低温定着性を示し、かつ低温から高温までオフセットによる加熱部材の汚染を生じることのない負摩擦帯電性トナー及び画像形成方法を提供するものである。
【0031】
本発明の目的は、着色剤(特に磁性体)の含有量が増大した小粒径化したトナーの結着樹脂に使用した場合においても良好なハーフトーン部の定着性を示す低温定着性に優れた負摩擦帯電性トナー及び画像形成方法を提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は、結着樹脂、着色剤及び有機金属化合物を少なくとも含有する負摩擦帯電性トナーにおいて、
(a)該有機金属化合物がジルコニウムと、芳香族ヒドロキシカルボン酸とが配位又は/及び結合している後述の式(4)、(7)、(40)、(41)で示される構造を有している有機ジルコニウム化合物から選択される有機金属化合物であり、
(b)該結着樹脂がポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとをエステル結合することにより生成されたハイブリッド樹脂成分を含有し、
(c)該結着樹脂の酸価が2乃至50mgKOH/gであり、
(d)該トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における分子量分布において、分子量3,000乃至20,000の領域にメインピークを有し、分子量50万以上の成分を3乃至25%含有している
ことを特徴とする負摩擦帯電性トナーに関する。
【0033】
さらに本発明は、潜像担持体に担持されている静電潜像を負摩擦帯電性トナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程;該潜像担持体上に形成されたトナー画像を中間転写体を介して、又は、介さずに記録材に転写する転写工程;及び該記録材に転写されたトナー画像を該記録材に加熱定着する定着工程を有する画像形成方法において、
該負摩擦帯電性トナーは、結着樹脂、着色剤及び有機金属化合物を少なくとも含有しており、
(a)該有機金属化合物がジルコニウムと、芳香族ヒドロキシカルボン酸とが配位又は/及び結合している後述の式(4)、(7)、(40)、(41)で示される構造を有している有機ジルコニウム化合物から選択される有機金属化合物であり、
(b)該結着樹脂がポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとをエステル結合することにより生成されたハイブリッド樹脂成分を含有し、
(c)該結着樹脂の酸価が2乃至50mgKOH/gであり、
(d)該トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における分子量分布において、分子量3,000乃至20,000の領域にメインピークを有し、分子量50万以上の成分を3乃至25%含有していることを特徴とする画像形成方法に関する。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明者らの検討によれば、定着器の加熱方式によらずオフセットによる定着部材の汚染を発生させないためには、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性を改良するだけでは不十分であり、定着部材に対するトナーの離型性を向上させることが重要であることが判った。
【0035】
従来は、トナーのオフセット現象を改良することとトナーの定着性を改良することは同一視されてきたが、結着樹脂、トナーに含有されるワックス等の改良による定着性向上に付随する形でのオフセット改良では限界があり、不十分である。
【0036】
また、定着部材、クリーニング部材の離型性が向上してもトナーの離型性が不十分である場合には、これらの部材の使用初期の段階では充分なオフセット防止効果が期待できても長期間使用した場合には各部材の経年劣化を生じ、最終的にはオフセットが発生する場合がある。
【0037】
従来、トナーの結着樹脂がクロロホルムやTHF等の有機溶媒に対する不溶分を有することは、トナーの耐ホットオフセット性改良の観点で提案されるが、この様なトナーであっても経年劣化した定着部材、クリーニング部材に対しては充分なオフセット防止効果を発揮しない場合がある。また、トナーは離型性を付与する目的でワックスを含有させる場合があるが、経年劣化した定着部材、クリーニング部材に対しては充分なオフセット防止効果を維持するためには多量のワックスを含有させる必要がある。この場合にはトナーの現像性すなわち、耐久による画像濃度の低下、カブリ濃度の上昇等の問題が生じる場合がある。更にはトナー粒子に含有されるワックスの分散状態を制御するのが困難であり、トナーが遊離したワックスを多量に含有することになる。結果的に、感光体上のトナーのクリーニングが充分にできずに残存し、画像欠陥となる場合がある。
【0038】
結着樹脂としてポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂成分を含有するトナーにおいて、経年劣化した定着部材及びクリーニング部材に対しても充分なオフセット防止効果を維持するには、トナーの離型性の向上とトナーの現像性を両立する必要がある。
【0039】
本発明者らは、ジルコニウムと、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合している有機ジルコニウム化合物(例えば、有機ジルコニウム錯体、有機ジルコニウム錯塩、有機ジルコニウム塩)を負荷電制御剤として含有させ、さらにトナーの結着樹脂としてポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂成分を用いてトナーの結着樹脂の酸価と分子量分布を特定の範囲に調整することにより、トナーの帯電の立ち上がりの良さを保持しつつ、高温高湿環境下においても高い帯電量を得ることができ、低温低湿環境下においても帯電過剰となることがなく、さらに耐久により(経年)劣化した定着部材及びクリーニング部材に対しても充分なオフセット防止効果を維持することができ、トナーの離型性とトナーの現像性とを両立できるトナーを得ることができることを見出した。
【0040】
本発明においては、トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における分子量分布において、分子量3,000乃至20,000の領域、好ましくは4,000乃至15,000の領域、より好ましくは5,000乃至12,000の領域にメインピークを有し、分子量50万以上の成分を3乃至25%、好ましくは5乃至22%、より好ましくは7乃至20%含有していることが良い。
【0041】
トナーのTHF可溶分のGPCにおける分子量分布において、分子量3,000未満の領域にメインピークが存在する場合には、高湿環境下での現像性が低下し易くなり、特にこの高湿環境下での放置後の画像濃度が下がり易くなる。分子量3,000乃至20,000の領域にメインピークがなく、分子量20,000よりも高分子量領域にメインピークが存在する場合には、低温定着性が低下する。
【0042】
トナーのTHF可溶分のGPCにおける分子量分布において、分子量50万以上の成分の含有量が3%未満の場合には、多数枚耐久によって転写紙中の填料が定着部材表面に付着するのに伴って、トナーの堆積が生じ易くなり、トナー画像汚れが発生し易くなる。分子量50万以上の成分の含有量が25%より多い場合には、低温定着性が低下する。
【0043】
本発明のトナーは、トナー中に含有される結着樹脂が5乃至70重量%のテトラヒドロフラン(THF)不溶分を含有することが好ましく、より好ましくは10乃至60重量%、更に好ましくは15乃至50重量%含有することが良い。トナー中に含有されている結着樹脂のTHF不溶分の含有量が5重量%未満となる場合及び70重量%超となる場合には、いずれも、有機ジルコニウム化合物を含有するトナーにおいては、トナーに含有されるワックスの分散を最適な状態に保持することが困難であり、耐久により定着部材へのトナー付着が顕在化する場合がある。
【0044】
結着樹脂として、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットを有しているハイブリッド樹脂組成物に含むトナーにおいて、耐久により(経年)劣化した定着部材及びクリーニング部材に対しても充分なオフセット防止効果を維持するには、トナーの水に対する接触角で規定されるトナーの離型性を向上する必要がある。
【0045】
本発明者らの検討によれば、水に対する接触角が高いトナーは、結着樹脂が特定の酸価を有し、特定の有機金属化合物を架橋剤として含有し、特定のピーク分子量及び構造を有するワックスを含有して達成される。
【0046】
本発明のトナーにおいて、トナーの水に対する接触角は95乃至130度であることが好ましく、より好ましくは100乃至127度、更に好ましくは105乃至125度であることが良い。トナーの水に対する接触角が95度未満となる場合には、耐久により劣化した定着部材及びクリーニング部材に対する充分なオフセット防止効果を維持することが困難であり、トナーの水に対する接触角が130度超となる場合には、トナーの現像性、感光体上に残存したトナーのクリーニング性に問題が生じる場合がある。
【0047】
本発明のトナーに結着樹脂として含有される「ハイブリッド樹脂成分」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合された樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成されるものであり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)を形成するものである。
【0048】
従って、本発明において、ハイブリッド樹脂成分のビニル重合体ユニットとポリエステルユニットとは、
【0049】
【化19】
を介して結合するものである。
【0050】
このハイブリッド樹脂成分のポリエステルユニットは、ワックスの分散を制御する効果を有するアルコール成分及び/またはカルボン酸を含有するものである。
【0051】
また、ハイブリッド樹脂はポリエステルのモノマーであるアルコールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応により生成する。上記ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体ユニットを構成する(メタ)アクリル酸エステルの10乃至60モル%がポリエステルユニットとエステル化反応していることが好ましく、より好ましくは15乃至50モル%、更に好ましくは20乃至45モル%がエステル化反応していることが良い。ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体ユニットを構成する(メタ)アクリル酸エステルの10モル%未満しかポリエステルユニットとエステル化反応していない場合には、ワックスの分散状態を制御することが困難であり、60モル%超となる場合には相対的に分子量の大きな成分が増大する結果トナーの低温定着性が悪化する場合がある。
【0052】
ハイブリッド樹脂成分を構成するポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットの組成は、重量比で30:70乃至90:10であることが好ましく、より好ましくは40:60乃至80:20、更に好ましくは50:50乃至70:30であることが良い。ハイブリッド樹脂成分を形成するポリエステルユニットの組成比が30重量%未満となる場合、または90重量%超となる場合には、いずれもハイブリッド樹脂成分と有機ジルコニウム化合物との相互作用を最適化することが困難であり、さらにワックスの分散状態を制御することが困難となる場合がある。
【0053】
本発明のトナーにおいては、詳細は不明であるが、有機ジルコニウム化合物とハイブリッド樹脂成分とが一種のアイオノマー形成あるいは錯形成と推定される架橋体の生成を伴う反応をしてワックスの固定分散を助長する。ワックスの分散状態を制御するためにトナー化する前の結着樹脂は5乃至60mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、より好ましくは10乃至50mgKOH/g、更に好ましくは15乃至40mgKOH/gの酸価を有することが良い。トナー化する前の結着樹脂の酸価が5mgKOH/g未満となる場合には、錯形成反応が不十分であり、60mgKOH/g超となる場合には過剰な錯形成反応が進行し、どちらの場合もワックスの分散状態を制御することが困難となる。
【0054】
本発明のトナーにおいて、トナー中に含有されている結着樹脂の酸価(Av・B)は2乃至50mgKOH/g、好ましくは5乃至45mgKOH/g、更に好ましくは10乃至40mgKOH/gであることが良い。トナー中に含有されている結着樹脂の酸価(Av・B)が2mgKOH/g未満となる場合及び50mgKOH/g超となる場合には、いずれも、有機ジルコニウム化合物を含有するトナーにおいては、耐久により画像濃度が低下する場合があり好ましくない。
【0055】
本発明のトナーにおいて、トナー中に含有されている結着樹脂は2乃至60重量%のクロロホルム不溶分を含有することが好ましく、より好ましくは5乃至55重量%、更に好ましくは10乃至45重量%含有することが良い。トナー中に含有されている結着樹脂のクロロホルム不溶分が2重量%未満となる場合及び60重量%超となる場合には、いずれも、有機ジルコニウム化合物と結着樹脂との錯形成反応が不適切であることを示唆するものであり好ましくない。
【0056】
本発明のトナー中に含有されている結着樹脂において、クロロホルム可溶分の酸価(Av・S)とクロロホルム不溶分の酸価(Av・G)との差(Av・G−Av・S)は10乃至150mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは差(Av・G−Av・S)が20乃至130mgKOH/g、更に好ましくは差(Av・G−Av・S)が30乃至100mgKOH/gであることが良い。差(Av・G−Av・S)が10mgKOH/g未満となる場合には有機ジルコニウム化合物との錯形成反応が不充分となる場合があり、差(Av・G−Av・S)が150mgKOH/g超となる場合には有機ジルコニウム化合物との錯形成反応が過剰となる場合があり、いずれの場合にしても荷電制御剤の分散状態を最適な状態に保持することが困難となり、トナーの帯電安定性が不安定となり易く耐久により画像濃度が低下する場合がある。
【0057】
また、本発明のトナーにおいて、クロロホルム可溶分の酸価は10乃至50mgKOH/gであることが良く、より好ましくは15乃至45mgKOH/g、更に好ましくは20乃至40mgKOH/gであることが良い。クロロホルム可溶分の酸価が10mgKOH/g未満となる場合には有機ジルコニウム化合物との錯形成反応が不充分となり、クロロホルム可溶分の酸価が50mgKOH/g超となる場合には、有機ジルコニウム化合物との錯形成反応が過剰となり易い。
【0058】
本発明のトナーは、後述する有機ジルコニウム化合物を結着樹脂100重量部に対して好ましくは0.1乃至10重量部、より好ましくは0.5乃至10重量部、さらに好ましくは1乃至8重量部、より更に好ましくは1.5乃至5重量部含有することが良い。含有量が0.1重量部未満となる場合には結着樹脂と有機ジルコニウム化合物との錯形成反応が不十分となり、10重量部超となる場合には錯形成反応が過剰となり、どちらの場合でもワックスの分散状態を制御することが困難となり易い。
【0059】
本発明のトナーは、トナー化する前の結着樹脂が含有しているTHF不溶分はトナーに耐ホットオフセット性を付与するだけではなく、トナー製造時の混練工程で結着樹脂の溶融粘度はワックスの分散を制御するためにも重要である。トナー化する前の結着樹脂は、THF不溶分を5乃至60重量%含有していることが好ましく、より好ましくは7乃至55重量%、更に好ましくは10乃至50重量%含有していることが良い。トナー化する前の結着樹脂のTHF不溶分の含有量が5重量%未満となる場合には、トナーの耐ホットオフセット性が悪化するばかりでなく、混練工程での溶融粘度が低くなりすぎてワックスの再凝集が生じ分散状態を制御するのが難しく、60重量%超となる場合には、低温オフセットが生じ易くなるばかりでなく、混練工程での溶融粘度が高い成分と低い成分が混在することになりワックスの分散粒度が広くなり分散状態を制御するのが難しい。
【0060】
本発明のトナーに含有されるワックスは、GPCで測定されるMpが500乃至5000及び比(Mw/Mn)が1.1乃至15であることが好ましく、より好ましくは700乃至4500及び比(Mw/Mn)が1.2乃至10、更に好ましくは800乃至4000及び比(Mw/Mn)が1.5乃至8であることが良い。Mpが500未満又は比(Mw/Mn)が1.1未満となる場合にはトナー粒子におけるワックスの分散粒径が小さくなりすぎ、Mpが5000超又は比(Mw/Mn)が15超となる場合には分散粒径が大きくなりすぎ、どちらの場合でもワックスの分散粒径を適度に制御することが難しい。
【0061】
本発明のトナーにおいて、異なる2種以上のワックスを含有していても良く、その場合には、トナー中に含有されているワックス全体のGPCで測定されるMpが500乃至5000及び比(Mw/Mn)が1.2乃至15であることが好ましく、より好ましくは700乃至4500及び比(Mw/Mn)が1.5乃至12であり、更に好ましくは800乃至4000及び比(Mw/Mn)が2乃至10であることが良い。Mpが500未満又は比(Mw/Mn)が1.2未満となる場合及びMpが5000超又は比(Mw/Mn)が15超となる場合には、いずれもトナー粒子内のワックスの分散粒径の粒度分布が広くなり、適度に制御することが難しい。
【0062】
本発明のトナーに含有されるワックスとしては、炭化水素系ワックス、ポリエチレン系ワックス及びポリプロピレン系ワックスが挙げられる。
【0063】
本発明のトナーに含有される好ましいワックスとしては、一酸化炭素・水素からなるアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素のワックスがよい。更に、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。
【0064】
本発明のトナーに含有されるワックスは、式(I)で表せる構造を有するものである。
【0065】
【化20】
(式中、Aは水酸基またはカルボキシル基を表し、aは20乃至60の整数を表し、好ましくは、Aが水酸基を表し、aが30乃至50の整数を表す。)
本発明のトナーに含有されるワックスが、酸変性ポリエチレンである場合には、1乃至20mgKOH/gの酸価を有し、且つポリエチレンをマレイン酸、マレイン酸ハーフエステル及び無水マレイン酸のうち少なくとも1種類以上の酸モノマーにより変性されているものが好ましく、より好ましくは2乃至15mgKOH/gの酸価を有するものである。
【0066】
本発明のトナーに含有されるワックスが、酸変性ポリプロピレンである場合には、1乃至20mgKOH/gの酸価を有し、且つポリエチレンをマレイン酸、マレイン酸ハーフエステル及び無水マレイン酸のうち少なくとも1種類の酸モノマーにより変性されているものが好ましく、より好ましくは2乃至15mgKOH/gを有するものである。
【0067】
本発明のトナーに2種のワックスが含有される場合には、少なくとも1種のワックスが上述したワックスを使用することが好ましい。
【0068】
本発明のトナーに2種のワックスが含有される場合の好ましいワックスの組合せを以下の表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
本発明のトナーに含有されるワックスは、ワックスを含有するトナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるDSC曲線において、温度70乃至140℃の領域に吸熱メインピークを有することが好ましく、より好ましくは温度75乃至135℃の領域に、更に好ましくは温度80乃至130℃の領域に吸熱メインピークを有することが好ましい。さらに、これらの温度領域に吸熱メインピークと同時に吸熱サブピークまたは吸熱ショルダーが存在していても良い。もし、上記温度領域以外に吸熱メインピークを有する場合には、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐ブロッキング性の全てを満足することが困難となる。
【0071】
上記のトナーのDSC曲線における吸熱メインピークは、トナー中に含有されているワックスに起因するものであることが良い。
【0072】
本発明のトナーは、ジルコニウムと、芳香族ジオール,芳香族ヒドロキシカルボン酸,芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸からなるグループから選択される芳香族化合物とが配位又は/及び結合している有機ジルコニウム化合物を負荷電制御剤として含有している。
【0073】
「有機ジルコニウム化合物」とは、芳香族ジオール、芳香族モノカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸又は/及び芳香族ヒドロキシカルボン酸とジルコニウム化合物とが反応した化合物(例えば、有機ジルコニウム錯化合物(錯体、錯塩)又は有機ジルコニウム塩)である。
【0074】
有機ジルコニウム化合物としては、
(i)金属元素としてジルコニウムを有し、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を配位しているジルコニウム錯体;
(ii)金属元素としてジルコニウムを有し、配位子として芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸を配位しているジルコニウム錯塩;又は
(iii)金属イオンとしてジルコニウムイオンを有し、酸イオンとして芳香族カルボン酸イオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸イオン又は芳香族ポリカルボン酸イオンを有しているカルボン酸ジルコニウム塩
が挙げられる。
【0075】
配位子として、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸を1〜4個キレート形成しているジルコニウム錯体あるいはジルコニウム錯塩が好ましい。また、これらジルコニウム錯体又は錯塩に、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族カルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸のカルボキシアニオンを1〜6個配位させても良い。
【0076】
有機ジルコニウム塩の場合は、芳香族カルボン酸イオン、芳香族ヒドロキシカルボン酸イオン、芳香族ポリカルボン酸イオンを1〜4個有しているものが好ましく、更には1〜3個有しているものが好ましい。またキレート形成数の異なる錯体,錯塩あるいは配位子の異なる錯体,錯塩の混合物であってもよい。また酸イオンの数の異なる塩の混合物であってもよい。
【0077】
また、有機ジルコニウム化合物は、有機ジルコニウム錯化合物と有機ジルコニウム塩との混合物であっても良い。
【0078】
さらに、上記ジルコニウム化合物を磁性体を含有する磁性トナーに使用したり、あるいは有機ジルコニウム化合物を有するトナーを一成分系現像方法に適用することにより、優れた現像性が得られることを見いだした。すなわち、少ない摩擦帯電機会で素速い帯電の立ち上がりと、高い帯電量を必要とする磁性トナーや一成分現像用トナーにとって、本発明で使用する有機ジルコニウム化合物はこれらの要件を満たす好適な負帯電制御剤となるのである。非磁性一成分現像方法に用いられる非磁性トナーにも最適である。
【0079】
有機ジルコニウム化合物は、酸価を有する結着樹脂と共に用いると、トナーの構成成分が保有する水分子の持つ極性を利用し、帯電が強調される効果の寄与を大きいものとすることができる。また、融点又は分子量の異なるワックスあるいは組成成分の異なるワックスを二種類以上と用いることで非常に分散性を良好にすることができ、耐久性や帯電均一性を向上させることができる。
【0080】
有機ジルコニウム化合物を使用したトナーは、低湿又は高湿環境での帯電量が十分になるだけでなく、長期の耐久での濃度低下も抑えられる。有機ジルコニウム化合物の使用は、特に種々の異種元素を有する磁性酸化鉄を含有する磁性トナーにとって最適になる。異種元素の酸化物、水酸化物、異種元素を取り込んだ酸化鉄、異種元素を混晶させた酸化鉄が、水分子を吸着し、水分子の極性を利用した帯電の向上及び安定化を効果的に行うことができる。また酸価を有する結着樹脂と共に用いると一層効果的に帯電の向上及び安定化を行うことができる。
【0081】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、ジルコニウムイオンが八配位をとりやすくカルボキシル基又は水酸基の酸素を配位又は結合し易い。官能基にカルボキシル基を有するポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有しているハイブリッド樹脂成分の如き酸価を有する結着樹脂を用いると、結着樹脂中へのなじみがよく分散性に優れ、トナー粒子中からの脱落を防ぎ、帯電均一化と帯電の耐久安定性が得られる。更には、有機ジルコニウム化合物はトナーの透明性への影響が小さく、鮮やかな色彩を表現するカラートナーを形成するのに好ましいものとなる。また、結着樹脂のカルボキシル基、水酸基のジルコニウムイオンヘの配位を介し、ポリマー鎖の架橋を施すことができるため、結着樹脂をゴム弾性の大きいものとすることができ、離型性に優れ、定着部材の汚れを効果的に防止できる。従って、THF不溶分を結着樹脂が有する程度に架橋しているのが良い。また、トナー製造時の溶融混練時に混練物にシェアをかけることができ、磁性体、顔料、染料の分散を向上させることができ、着色力の高い、色味の鮮明なトナーとすることができる。
【0082】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、摩擦帯電能力にすぐれ、高い帯電量が得られるので、高い帯電量を必要とする磁性トナーにとって好適な荷電制御剤となるのである。さらに、有機ジルコニウム化合物自体の良好な結着樹脂への分散性に加え、結着樹脂に酸価を有するものを用いると磁性体の分散性向上に働くので、耐久性、帯電均一性が得られるようになるのである。
【0083】
また、本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、トナーに用いる結着樹脂の表面張力に何らかの影響を及ぼし、複数種のワックスと用いると、非常に離型性に優れることが見いだされた。このことから耐オフセット性に優れ、定着部材汚れ防止に効果のあるトナーを形成することができる。また、酸価を有する結着樹脂と共に用いると特にこの効果は顕著である。
【0084】
また、本発明の有機ジルコニウム化合物は、放置によるトナーの現像性の低下が小さいことが特徴的である。例えば、高湿下で使用した後、休止してしばらく放置した後、再び使用し始めた際に、画像濃度の低下を少ないものとすることができる。
【0085】
さらに、本発明の有機ジルコニウム化合物は、帯電量不良トナー粒子の発生が少なく、飛散するトナー粒子が少ないことが特徴的である。例えば、磁性トナーにおいては凝集力の低下する低湿下では飛散が多くなり、コロナ帯電方式では、飛散トナーが帯電ワイヤーに付着し、放電異常を生じ、一次帯電においては静電像の帯電異常から筋状の画像異常が発生したり、転写帯電においては筋状の転写不良を発生しやすくなるが、本発明のトナーではこれらの現象を低減することができる。接触帯電方式においては、接触転写部で飛散トナーによる汚れが転写紙等に転移し、裏汚れを生じることがあるが、本発明のトナーはこれらの現象も低減できる。
【0086】
トナー粒子飛散現象は、非磁性トナーにおいては、静電気力のみでトナー担持体に拘束されているので高湿下の方が顕著となるが、この飛散現象も本発明のトナーは低減することができ、機内飛散等による画像汚れを減少させることができる。また、非磁性トナーは低湿下で帯電不良粒子の発生の影響で、ハーフトーンなどに濃度ムラが発生することがあるが、この現象も本発明のトナーは低減させることができる。
【0087】
本発明に使用される芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ポリカルボン酸のジルコニウム錯体あるいはジルコニウム錯塩又は有機ジルコニウム塩の如き有機ジルコニウム化合物を以下により具体的に説明する。
【0088】
一般式(l)又は(2)に好ましいジルコニウム錯体あるいは錯塩を示す。
【0089】
【化21】
一般式(1)において、Arは置換基としてアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族残基を表わし、X及びYは−O−、−CO−O−を表わし、X及びYは同じであっても異なっていてもよく、Lは中性配位子、水、アルコール、アンモニア、アルキルアミン又はピリジンを表わし、C1は1価のカチオン、水素、1価の金属イオン、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、C2は2価のカチオン又は2価の金属イオンを表し、nは2,3又は4を表わし、mは0,2又は4を表わす。各錯体または各錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類、芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。対イオンのC1及びC2が異なる錯塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、芳香族残基(Ar)としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環が好ましく、置換基としてはアルキル基、カルボキシル基又は水酸基が好ましく、Lとしては水が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムが好ましい。
【0090】
【化22】
一般式(2)において、Arは置換基としてアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族残基を表わし、X及びYは−O−、−CO−O−を表わし、X及びYは同じであっても異なっていてもよく、Lは中性配位子、水、アルコール、アンモニア、アルキルアミン又はピリジンを表わし、Aは、アニオン、ハロゲン、水酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、シアンイオン又はチオシアンイオンを表わし、Aは相互に異なるイオンを有していても良く、C1は1価のカチオン、水素、1価の金属イオン、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、C2は2価のカチオン又は2価の金属イオンを表し、nは1,2,3又は4を表わし、kは1,2,3,4,5又は6を表わし、mは0,1,2,3又は4を表わす。各錯体または各錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類、芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。対イオンのC1及びC2が異なる錯塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、芳香族残基(Ar)としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環が好ましく、置換基としてはアルキル基、カルボキシル基又は水酸基が好ましく、Lとしては水が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムが好ましく、Aとしては水酸イオン又はカルボン酸イオンが好ましい。Aが2価のアニオンの場合には、カウンターカチオンの係数kは2倍する。
【0091】
さらに、好ましいジルコニウム錯体又は錯塩を一般式(3),(4),(5),(6),(7)及び(8)に示す。
【0092】
【化23】
一般式(3),(4)及び(5)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香族環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rを1乃至8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、C1は1価のカチオン、水素、アルカリ金属、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、lは1〜8の整数を表わし、nは2,3又は4を表わし、mは0,2又は4を表わし、各錯体または錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類又は芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。また、対イオンのC1が異なる錯塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基Rとしてはアルキル基、アルケニル基、カルボキシル基又は水酸基が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又はアルキルアンモニウムが好ましい。
【0093】
特に好ましいのは、一般式(4)で表わされる錯化合物あるいはカウンターイオンを有さない、一般式(3),(4)又は(5)においてn=2の場合のジルコニウム中性錯体であり、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、良好な耐久性が得られる。
【0094】
【化24】
一般式(6)、(7)及び(8)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香族環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rを1乃至8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、Aは、アニオン、ハロゲン、水酸イオン、カルボン酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、シアンイオン又はチオシアンイオンを表わし、Aは相互に異なるイオンを有していても良く、C1は1価のカチオン、水素、1価の金属イオン、アンモニウム又はアルキルアンモニウムを表わし、nは1,2,3又は4を表わし、kは1,2,3,4,5又は6を表わし、mは0,1,2,3又は4を表わす。各錯体または各錯塩において配位子となる芳香族カルボン酸類、芳香族ジオール類は同じものであっても異なるものであってもよく、またn又は/及びmの数の異なる錯化合物の混合物であっても良い。カチオンC1又は/及びアニオンAが異なる2種以上の錯化合物の混合物であっても良い。Aが2価のアニオンの場合には、カウンターカチオンの係数kは2倍する。
【0095】
結着樹脂中への錯体又は錯塩の分散性の向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基Rとしては、アルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、水酸基が好ましく、C1としては水素、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウムが好ましく、Aとしては水酸イオン又はカルボン酸イオンが好ましい。
【0096】
特に好ましいのは、一般式(7)で表わされる錯化合物あるいは、カウンターイオンを有さない、一般式においてn=2の場合のジルコニウム中性錯体であり、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、良好な耐久性が得られる。
【0097】
本発明に用いられるジルコニウム錯体あるいは錯塩は、六配位または八配位の錯化合物で、八配位の中には、配位子が橋かけした複核錯化合物となり示性式上六配位となる錯化合物があり、また、水酸基などの配位子が橋かけし、次々と錯化合物を重合した複核錯化合物などもある。
【0098】
このような錯化合物の構造の代表的なものを、以下の一般化学式(9)〜(33)でその構造を例示する。以下の構造の中には配位子Lを持たないものも包含する。尚、一般化学式(30)〜(33)は、カウンターカチオンを省略する。
【0099】
【化25】
【0100】
【化26】
【0101】
【化27】
【0102】
【化28】
【0103】
【化29】
【0104】
【化30】
【0105】
また、芳香族環の水酸基又はカルボキシル基が異なるジルコニウムに配位した構造を有する錯化合物であってもよく、例えば部分構造として式(34)に示されるものである。
【0106】
【化31】
【0107】
具体的構造では式(35)で表わされる。
【0108】
【化32】
【0109】
ここで、pは1以上の整数を表わし、qは2以上の整数を表わし、式(35)ではアニオン配位子、中性配位子及び対カチオンは省略してある。
【0110】
本発明に使用される好ましい芳香族カルボン酸のジルコニウム塩を一般式(36)及び(37)に示す。
【0111】
【化33】
一般式(36)及び(37)において、Arは置換基としてアルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を有していてもよい芳香族残基を表わし、A1は1価のアニオン、ハロゲンイオン、水酸イオン、硝酸イオン又はカルボン酸イオンを表わし、A2は2価のアニオン、硫酸イオン、リン酸水素イオン又は炭酸イオンを表わし、nは1,2,3又は4を表わす。各金属塩においてアニオンA1,アニオンA2,酸イオンとなる芳香族カルボン酸類及び芳香族ヒドロキシカルボン酸は同じものであっても異なるものであってもよい。また、nの数が異なる塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への金属塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、芳香族残基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環又はフェナントレン環が好ましく、置換基としてはアルキル基、カルボキシル基、水酸基又はアシルオキシ基が好ましい。
【0112】
更に好ましい金属塩は一般式(38)及び(39)で表わせるジルコニウム塩である。
【0113】
【化34】
一般式(38)及び(39)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rを1乃至8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、A1は1価のアニオン、ハロゲンイオン、水酸イオン、硝酸イオン又はカルボン酸イオンを表わし、A2は2価のアニオン、硫酸イオン、リン酸水素イオン又は炭酸イオンを表し、1は1〜8の整数を表わし、nは1,2,3又は4を表わす。各金属塩においてアニオンA1,アニオンA2及び酸イオンとなる芳香族カルボン酸類は同じものであっても異なるものであってもよい。また、nの数が異なる塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への金属塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基としてはアルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、水酸基又はアシルオキシ基が好ましく、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、優れた耐久性が得られる。
【0114】
更に好ましい金属塩は一般式(40)及び(41)で表わせるジルコニウム塩である。
【0115】
【化35】
一般式(40)及び(41)において、Rは水素、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アミド基又はカルバモイル基を表わし、相互に連結して脂肪族環、芳香環あるいは複素環を形成しても良く、この場合この環に置換基Rを有していても良く、置換基Rは1から8個持っていてもよく、それぞれ同じであっても、異なっていてもよく、A1は1価のアニオン、ハロゲンイオン、水酸イオン、硝酸イオン又はカルボン酸イオンを表わし、A2は2価のアニオン、硫酸イオン、リン酸水素イオン又は炭酸イオンを表し、lは1〜7の整数を表わし、nは1,2,3又は4を表わす。各金属塩においてアニオンA1、アニオンA2及び酸イオンとなる芳香族カルボン酸類は同じものであっても異なるものであってもよい。また、nの数が異なる塩の混合物であっても良い。結着樹脂中への金属塩の分散性向上の観点あるいは帯電性向上の観点から、置換基としてはアルキル基、アルケニル基、カルボキシル基、水酸基又はアシルオキシ基が好ましく、優れた環境安定性が得られ、結着樹脂中への分散性にも優れ、優れた耐久性が得られる。
【0116】
本発明の有機ジルコニウム化合物は、塩化酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、有機酸ジルコニウムなどのジルコニウム化合物を水、アルコール、アルコール水溶液に溶解し、芳香族カルボン酸、芳香族ジオールおよびこれらのアルカリ金属塩を添加するか、あるいは芳香族カルボン酸、芳香族ジオールとアルカリ剤を添加することにより合成される。これらの有機ジルコニウム化合物は、アルコール水溶液などで再結晶し、アルコール洗浄で精製する。また、錯塩の場合は、生成物を鉱酸、アルカリ剤、アミン剤で処理することにより種々のカウンターイオンを持つ錯塩が得られる。本発明においては、ジルコニウム錯塩のカウンターイオンに水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなど複数種有しているものも含む。
【0117】
以下に、本発明に用いられる有機ジルコニウム化合物の具体例を挙げるが、ここでは、示性式を示す。水分子を2〜4個配位しているものも含まれるが、ここでは水分子の記載を省略する。また、カウンターイオンは複数種有するものも含むが、ここでは一番多いカウンターイオンのみを記載する。
【0118】
【化36】
【0119】
【化37】
【0120】
【化38】
【0121】
【化39】
【0122】
【化40】
【0123】
【化41】
【0124】
【化42】
【0125】
【化43】
【0126】
【化44】
【0127】
【化45】
【0128】
【化46】
【0129】
【化47】
【0130】
【化48】
【0131】
【化49】
【0132】
【化50】
【0133】
【化51】
【0134】
【化52】
【0135】
【化53】
【0136】
【化54】
【0137】
【化55】
【0138】
【化56】
【0139】
【化57】
【0140】
【化58】
【0141】
【化59】
【0142】
【化60】
【0143】
【化61】
【0144】
【化62】
【0145】
【化63】
【0146】
本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、トナー粒子中に内添させることに加えて、さらにトナー粒子に外添することもできる。トナー粒子に有機ジルコニウム化合物を外添する場合は、トナー粒子100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、特にメカノケミカル的にトナー粒子表面に固着させるのが好ましい。
【0147】
また本発明に使用する有機ジルコニウム化合物は、従来の技術で述べたような公知の電荷制御剤と組み合わせて使用することもできる。例えば、他の電荷制御剤として有機金属錯体、金属塩又はキレート化合物が挙げられる。具体的には、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体などがあげられる。そのほかには、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類などのカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体などもあげられる。またビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体が挙げられる。
【0148】
次に、本発明のトナーにおいて、結着樹脂として含有されるハイブリッド樹脂成分について説明する。
【0149】
ハイブリッド樹脂成分のポリエステルユニットは、好ましくは、式(a)乃至(d)で表わせる2価のカルボン酸、式(e)で表せる1価のカルボン酸または式(f)で表わせる1価のアルコールの少なくとも1種以上を含有するものである。
【0150】
【化64】
[式中、R1は炭素数14以上の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基を表わし、R3,R4,R5及びR6は水素原子、炭素数3以上の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基を表わし、同一の置換基であってもよいが、同時に水素原子になることはなく、R7及びR8は炭素数12以上の直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基を表わし、nは12乃至40の整数を表わす。]
【0151】
式(a)で表わせる化合物としては、例えば、下記化合物(a−1)〜(a−6)が挙げられる。
【0152】
【化65】
【0153】
式(b)で表わせる化合物としては、例えば、下記化合物(b−1)〜(b−4)が挙げられる。
【0154】
【化66】
【0155】
式(c)で表わせる化合物としては、例えば、下記化合物(c−1)〜(c−3)が挙げられる。
【0156】
【化67】
【0157】
式(d)で表わせる化合物としては、例えば、下記化合物(d−1)〜(d−2)が挙げられる。
【0158】
【化68】
【0159】
式(e)で表わせる化合物としては、例えば、下記化合物(e−1)〜(e−5)が挙げられる。
【0160】
【化69】
【0161】
式(f)で表わせる化合物としては、例えば、下記化合物(f−1)〜(f−5)が挙げられる。
【0162】
【化70】
【0163】
ハイブリッド樹脂成分のポリエステルユニットを生成するためのモノマーとしては以下のものが挙げられる。
【0164】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(g)式で表わされるビスフェノール誘導体及び下記(h)式で示されるジオール類が挙げられる。
【0165】
【化71】
【0166】
【化72】
【0167】
酸性分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0168】
ハイブリッド樹脂成分のビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
【0169】
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0170】
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0171】
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
【0172】
本発明のトナーにおいて、ハイブリッド樹脂成分のポリエステルユニットは、三価以上の多価カルボン酸またはその無水物、または、三価以上の多価アルコールで架橋された架橋構造を有しているものである。三価以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸及びこれらの酸無水物または低級アルキルエステル等が挙げられ、三価以上の多価アルコールとしては、例えば、1,2,3−プロパントリオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられるが、好ましくは1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及びその酸無水物である。
【0173】
本発明のトナーにおいて、ハイブリッド樹脂成分のビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;ポリエステル型ジアクリレート類として例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
【0174】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0175】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100重量部に対して、0.01〜10重量部(さらに好ましくは0.03〜5重量部)用いることができる。
【0176】
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0177】
本発明ではビニル系共重合体ユニット及び/又はポリエステルユニット中に、両樹脂ユニットと反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体ユニットと反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーのうちポリエステルユニットと反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
【0178】
ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーユニットが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方のポリマーユニットの重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
【0179】
本発明のビニル系重合体ユニットを製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(−2メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート,ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートがあげられる。
【0180】
第2の発明のトナーの結着樹脂は、上述したビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットとを有しているハイブリッド樹脂成分を少なくとも有していれば良いが、ハイブリッド樹脂成分に加えて、ビニル系重合体及びポリエステル樹脂を含有している樹脂組成物であることが、本発明のトナーに含有されている有機ジルコニウム化合物の分散を好適な状態に保持し、トナーの現像性と定着性を共に満足し、かつ定着部材へのトナー付着を防止することが可能となる点で好ましい。
【0181】
このようなハイブリッド樹脂成分、ビニル系重合体及びポリエステル樹脂を有する樹脂組成物を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)〜(6)に示す製造方法を挙げることができる。
【0182】
(1)ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂及びハイブリッド樹脂成分をそれぞれ製造後にブレンドする方法であり、ブレンドは有機溶剤(例えば、キシレン)に溶解・膨潤した後に有機溶剤を留去するものであり、好ましくは、このブレンド工程でワックスを添加して製造される。尚、ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行なって合成されるエステル化合物を用いることができる。
【0183】
(2)ビニル系重合体ユニット製造後に、これの存在下にポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。好ましくは、この工程でワックスを添加する。
【0184】
(3)ポリエステルユニット製造後に、これの存在下にビニル系重合体ユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法である。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。好ましくは、この工程でワックスを添加する。
【0185】
(4)ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニット製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂成分を製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。好ましくは、この工程でワックスを添加する。
【0186】
(5)ハイブリッド樹脂成分を製造後、ビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加して付加重合及び/又は縮重合反応を行うことによりビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットが製造される。この場合、ハイブリッド樹脂成分は上記(2)乃至(4)の製造方法により製造されるものを使用することもでき、必要に応じて公知の製造方法により製造されたものを使用することもできる。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。好ましくは、この工程でワックスを添加する。
【0187】
(6)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。好ましくは、この工程でワックスを添加する。
【0188】
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及び/またはポリエステルユニットは複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体ユニットを使用することができる。
【0189】
上記の(1)〜(6)の製造方法の中でも、特に(3)の製造方法が、ビニル系重合体ユニットの分子量制御が容易であり、ハイブリッド樹脂成分の生成を制御することができ、かつワックスを添加する場合にはその分散状態を制御できる点で好ましい。
【0190】
本発明のトナーは、着色剤として磁性体を含有する磁性トナーとして用いることができる。
【0191】
本発明に用いられる磁性体は、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄及びその混合物が好ましく用いられる。
【0192】
中でもリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、イオウ、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、亜鉛、カルシウム、バリウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ニッケル、ガリウム、インジウム、銀、パラジウム、金、白金、タングステン、モリブデン、ニオブ、オスミウム、ストロンチウム、イットリウム、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、ビスマスから選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する磁性酸化鉄であることが好ましい。特にリチウム、ベリリウム、ボロン、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛及びガリウムが好ましい。最も好ましくは、異種元素としてマグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン及びジルコニウムからなるグループから選択される元素を含む磁性酸化鉄である。これらの元素は酸化鉄結晶格子の中に取り込まれても良いし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていても良いし、表面に酸化物あるいは水酸化物として存在しても良い。また、酸化物として含有されているのが好ましい形態である。
【0193】
これらの元素は、磁性体生成時に各々の元素の塩を混在させpH調整により、粒子中に取り込むことが出来る。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより粒子表面に析出させることが出来る。
【0194】
これらの元素を有する磁性体は、結着樹脂に対し馴染みが良く、非常に分散性が良い。更にこの分散性のよさが、本発明で用いられる有機ジルコニウム化合物の分散性を向上することができ、有機ジルコニウム化合物の効果を十分に発揮することが出来る。磁性体が分散メディアとして働き、有機ジルコニウム化合物の分散を磁性体の分散性の良さが援助し、有機ジルコニウム化合物の分散性を向上させる。また、これらの磁性体は水分子を吸着し、有機ジルコニウム化合物が、水分子による帯電に強調を発揮しやすくする効果を持っている。この効果は酸価を有する結着樹脂と共に用いると一層効果的に発揮できる。
【0195】
またこれらの磁性体は、粒度分布が揃っていると、結着樹脂中への分散性がより向上することから、上記の有機ジルコニウム化合物の分散性の向上効果とあいまって、トナーの帯電性を安定化することが出来る。また近年はトナー粒径の小径化が進んできており、トナーの重量平均粒径が2.5乃至10μmの場合でも、帯電均一性が促進され、トナーの凝集性も軽減され、画像濃度の向上、カブリの改善等現像性が向上する。特にトナーの重量平均粒径が2.5乃至6.0μmの場合にはその効果は顕著であり、極めて高精細な画像が得られる。トナーの重量平均粒径は2.5μm以上であると十分な画像濃度が得られて好ましい。一方でトナーの小粒径化が進むとジルコニウム化合物の遊離も生じやすくなるが、本発明のトナーは帯電均一性に優れているので多少のジルコニウム化合物が存在してもスリーブ汚染の影響を受けにくくなる。したがって、磁性トナーは、重量平均粒径が好ましくは2.5乃至10μm(より好ましくは、2.5乃至6.0μm)が良い。非磁性トナーの場合でも、重量平均粒径は2.5〜10μmより好ましくは2.5乃至6.0μmが良い。
【0196】
上述した磁性酸化鉄の異種元素の含有率は、磁性酸化鉄の鉄元素を基準として0.05〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜7重量%であり、さらに好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.3〜4重量%であることが良い。異種元素含有量が0.05重量%より少ないと、これら元素の含有効果が得られなく、良好な分散性、帯電均一性が得られなくなり、10重量%より多くなると、電荷の放出が多くなり帯電不足を生じ、画像濃度が低くなったり、カブリが増加することがある。
【0197】
また、これら異種元素の含有分布において、磁性酸化鉄体の表面に近い方に多く存在しているものが好ましい。たとえば、磁性酸化鉄の鉄元素の溶解率が20%のときの異種元素の溶解率が、全異種元素の存在量の20%〜100%が好ましく、より好ましくは25%〜100%、さらに好ましくは30%〜100%であることが良い。表面存在量を多くすることにより分散効果や電気的拡散効果を、より向上させることができる。
【0198】
これらの磁性酸化鉄は個数平均粒径が0.05〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmであることが良い。磁性体はBET比表面積が好ましくは2〜40m2/g、より好ましくは、4〜20m2/gであることが良い。磁性酸化鉄は、形状には特に制限はなく、任意の形状のものが用いられる。磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは、70〜100Am2/kg)、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは、2〜20Am2/kg)、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは、2〜15kA/m)であるものが好ましく用いられる。これらの磁性体は結着樹脂100重量部に対し、20〜200重量部で用いられる。
【0199】
本発明のトナーに使用できる着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。例えば顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらの顔料は、定着画像の光学濃度を維持するために必要な量が用いられ、結着樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の含有量が良い。また、同様の目的で、更に染料が用いられる。例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料がある。これらの染料は、顔料の場合と同じ理由で結着樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の添加量が良い。
【0200】
本発明のトナーにおいては、シリカ、アルミナ、酸化チタンの如き無機酸化物や、カーボンブラック、フッ化カーボンの如き粒径の細かい粒子の無機微粉体をトナー粒子に外添することが好ましい。
【0201】
シリカ微粉体、アルミナ微粉体又は酸化チタン微粉体は、トナー粒子表面に分散させた時に細かい粒子となる方が流動性付与性が高くなるので好ましい。これら微粉体は、個数平均粒径が好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜50nmであることが良い。BET法で測定した窒素吸着による比表面積、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは60〜400m2/gである母体微粉体を表面処理したものが好適であり、表面処理された微粉体は、上記の比表面積が、好ましくは20m2/g以上(特に40〜300m2/g)の範囲のものが好ましい。
【0202】
これらの微粉体は、トナー粒子100重量部に対して、0.03〜5重量部外添した時に適切な表面被覆率になる。
【0203】
本発明に用いる無機微粉体の疎水化度としては、メタノールウエッタビリティーで30%以上の値を示すのが好ましく、更に好ましくは50%以上であることが良い。疎水化処理剤としては、含ケイ素表面処理剤であるシラン化合物とシリコーンオイルが好ましい。
【0204】
例えば、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ブチルトリメトキシシランの如きアルキルアルコキシシラン;ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルクロルシラン、ジメチルビニルクロルシランの如きシランカップリング剤を用いることができる。
【0205】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分現像剤として使用しても良い。キャリアの抵抗値は、キャリア表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して106〜1010Ω・cmにするのが良い。
【0206】
キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂或いは、これらの混合物を用いることができる。
【0207】
キャリアコアの磁性材料としては、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの合金を用いることができる。また、これらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。
【0208】
本発明で用いられる各種特性付与を目的とした添加剤としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
【0209】
(1)研磨剤:金属酸化物(チタン酸ストロンチウム,酸化セリウム,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化クロムなど)、窒化物(窒化ケイ素など)・炭化物(炭化ケイ素など)、金属塩(硫酸カルシウム,硫酸バリウム,炭酸カルシウム)など。
【0210】
(2)滑剤:フッ素系樹脂粉末(ポリフッ化ビニリデン,ポリテトラフルオロエチレンなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウムなど)など。
【0211】
(3)荷電制御性粒子:金属酸化物(酸化錫,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化ケイ素,酸化アルミニウムなど)、カーボンブラック、樹脂微粒子など。
【0212】
これら添加剤は、トナー粒子100重量部に対し、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部外添されていることが良い。これら添加剤は、単独で用いても、また、複数併用しても良い。
【0213】
磁性トナーの場合は、2種以上の無機酸化物あるいは金属酸化物の微粉体を用いることが現像の耐久安定性、放置後の現像安定性を得る上で好ましい。非磁性一成分現像方法の場合は、酸化チタン又はアルミナを用いることが流動性向上、画像均一性を得る為に好ましい。
【0214】
本発明のトナーを製造する方法としては、上述したような結着樹脂、着色剤及び有機ジルコニウム化合物を含むトナー構成材料をボールミルその他の混合機により十分混合した後、熱ロールニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、機械的に粉砕し、粉砕粉を分級することによってトナーを得る方法が好ましい。他には、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法トナー製造法;コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法;結着樹脂溶液中に構成材料を分散した後、噴霧乾燥することによりトナーを得る方法が挙げられる。さらに必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合し、本発明のトナーを製造することができる。
【0215】
次に本発明のトナーが好ましく用いられる画像形成方法について説明する。
【0216】
まず、本発明の画像形成方法に適用できる現像手段について説明する。
【0217】
図1において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を担持する像担持体、例えば電子写真感光体ドラム7は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ14は、ホッパー9から供給された一成分現像剤としてのトナー10を担持して、矢印A方法に回転することにより、現像スリーブ14と感光体ドラム7とが対向した現像部Dにトナー10を搬送する。現像スリーブ14内には、トナー10が磁性トナーである場合には、現像スリーブ14上に磁気的に吸引及び保持するために、磁石11が配置されている。トナー10は現像スリーブ14との摩擦により、感光体ドラム7上の静電荷像を現像可能な摩擦帯電電荷を得る。
【0218】
現像部Dに搬送されるトナー10の層厚を規制するために、磁性トナーである場合には強磁性金属からなる規制磁性ブレード8が、現像スリーブ14の表面から約200〜300μmのギャップ幅を持って現像スリーブ14に臨むように、ホッパー9から垂下されている。磁石11の磁極N1からの磁力線がブレード8に集中することにより、現像スリーブ14上にトナー10の薄層が形成される。ブレード8としては非磁性ブレードを使用することもできる。また、トナー10が非磁性トナーである場合には、ウレタンゴム、シリコーンゴム、チップブレードなどの弾性ブレードが用いられる。
【0219】
現像スリーブ14上に形成されるトナー10の薄層の厚みは、現像部Dにおける現像スリーブ14と感光体ドラム7との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。このようなトナー薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置(即ち非接触型現像装置)に、本発明の現像方法は特に有効である。しかし、現像部において、トナー層の厚みが現像スリーブ14と感光体ドラム7との間の最小間隙以上の厚みである現像装置(即ち接触型現像装置)にも、本発明の現像方法は適用することができる。
【0220】
以下、非接触型現像装置の例を説明する。
【0221】
上記現像スリーブ14には、これに担持された一成分現像剤であるトナー10を飛翔させるために、電源15により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(トナー10が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧が、現像スリーブ14に印加されることが好ましい。一方、現像画像の濃度を高め或は階調性を向上するために、現像スリーブ14に交番バイアス電圧を印加して、現像部Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合、上記画像部の電位と背景部の電位の間の値を有する直流電圧成分が重畳された交番バイアス電圧を現像スリーブ14に印加することが好ましい。
【0222】
また、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、いわゆる正規現像では、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用し、一方、静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、反転現像では、トナーは静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。高電位と低電位というのは、絶対値による表現である。いずれにしても、トナー10は現像スリーブ14との摩擦により静電潜像を現像するための極性に帯電する。
【0223】
図2の現像装置では、現像スリーブ14上のトナー10の層厚を規制する部材として、ウレタンゴム,シリコーンゴムの如きゴム弾性を有する材料、或はリン青銅,ステンレス鋼の如き金属弾性を有する材料で形成された弾性板17を使用し、この弾性板17を現像スリーブ14に圧接させていることが特徴である。このような現像装置では、現像スリーブ8上に更に薄いトナー層を形成することができる。図2の現像装置のその他の構成は、図1に示した現像装置と基本的に同じで、図2において図1に付した符号と同一の符号は同一の部材を示す。
【0224】
上記のようにして現像スリーブ14上にトナー層を形成する図2に示すような現像装置は、弾性板17によりトナーを現像スリーブ14上に擦りつけるため、トナーの摩擦帯電量も多くなり、画像濃度の向上が図られる。また、非磁性一成分トナーにおいては、このような現像装置が用いられる。
【0225】
本発明に用いられる現像剤担持体である現像スリーブは、円筒状基体と、該基体表面を被覆する被膜層(樹脂層)を有することも好ましい。その構成は図3に示したようなものである。該樹脂層1は、結着樹脂4、場合によっては導電性物質2、充填剤3、固体潤滑剤5等を含有し、円筒状基体6上に被覆されている。導電性物質2が含有されている場合、樹脂層1は導電性なのでトナーの過剰帯電が防止できる。また充填剤3が含有されている場合には、トナーによる該樹脂層1の摩耗を防ぎ、更に充填剤3の帯電付与性により、トナーの帯電も好適にコントロールできる。また、固体潤滑剤5が含有される場合には、トナーと現像スリーブとの離型性が向上され、その結果トナーの現像スリーブ上への融着が防止できる。
【0226】
本発明のスリーブにおいて、樹脂層に導電性物質を含有させる場合、該樹脂層の体積抵抗が106Ω・cm以下、好ましくは103Ω・cm以下であるものがよい。樹脂層の体積抵抗が106Ω・cmを超える場合には、トナーのチャージアップが発生しやすくなり、ブロッチの発生や現像特性の劣化を引き起こすことがある。
【0227】
また、該樹脂層の表面粗さは、JIS中心線平均粗さ(Ra)で0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.2μm未満ではスリーブ近傍のトナーの帯電量が高くなりすぎ、鏡映力によりトナーがスリーブ上に引きつけられ、新たなトナーがスリーブから帯電付与を受けられず、現像性が低下する。Raが3.5μmを超えると、スリーブ上のトナーコート量が増加しすぎてトナーが十分な帯電量を得られず、かつ不均一な帯電となり、画像濃度の低下や濃度ムラの原因となる。
【0228】
次に樹脂層1を構成する各材料について説明する。
【0229】
図3において導電性物質2としては、例えばアルミニウム、銅、ニッケル、銀の如き金属粉体;酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズの如き金属酸化物;カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイトの如き炭素同素体が挙げられる。このうちカーボンブラックは特に電気伝導性に優れ、高分子材料に充填して導電性を付与したり、添加量のコントロールで、ある程度任意の導電度を得ることができるために好適に用いられる。本発明に使用するカーボンブラックは、個数平均粒径が好ましくは0.001〜1.0μm、より好ましくは0.01μm〜0.8μmであるものが良い。カーボンブラックの個数平均粒径が1μmを超える場合には、樹脂層の体積抵抗を制御しづらくなり好ましくない。
【0230】
導電性物質の含有量としては、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜300重量部であり、より好ましくは1〜100重量部である。
【0231】
充填剤3としては、従来より公知のトナー用ネガ帯電性荷電制御剤、あるいはポジ帯電性荷電制御剤を添加しても良い。このほかの物質として、例えばアルミナ、アスベスト、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、シリカ、ケイ酸カルシウムの如き無機化合物;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、PMMA、メタクリレートのターポリマー(例えばポリスチレン/n−ブチルメタクリレート/シランターポリマー)、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリカプロラクトン;ポリカプロラクタム、ポリビニルピリジン、ポリアミドの如き含窒素化合物;ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシルトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロアルコキシエチレン、ヘキサフルオロプロピレン−ポリテトラフルオロエチレン共重合体、トリフルオロクロロエチレン−塩化ビニル共重合体といった高度にハロゲン化された重合体;ポリカーボネート、ポリエステルが挙げられる。このうちシリカ及びアルミナが、それ自身の硬さ及びトナーに対する帯電制御性を有するので好ましく用いられる。
【0232】
充填剤の含有量としては、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは1〜200重量部であることが良い。
【0233】
固体潤滑剤5としては、例えば二硫化モリブデン、窒化硼素、グラファイト、フッ化グラファイト、銀−セレン化ニオブ、塩化カルシウム−グラファイト、滑石が挙げられる。このうちグラファイトは潤滑性と共に導電性を有し、高すぎる電荷を有するトナーを減少させ、現像に好適な帯電量を持たせる働きがあることから好適に用いられる。
【0234】
固体潤滑剤の含有量としては、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜300重量部であり、より好ましくは1〜150重量部であることが良い。
【0235】
場合によっては、導電性物質2、充填剤3や固体潤滑剤5が分散される結着樹脂4としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂の如き樹脂が用いられる。特に熱硬化性もしくは光硬化性の樹脂が好ましい。
【0236】
また本発明におけるスリーブ表面の樹脂層中の導電性物質、或いは充填剤や固体潤滑剤を表面に好適に露出させるために、または、表面を平滑化処理して均一な凹凸表面を作るために、後述の磨き加工等の手段により表面を平滑化処理することにより、さらに好ましい性能を付与することが可能である。特に、ベタ黒やハーフトーン画像に発生する縦スジ現象や初期の画像濃度の立上がりに効果があり、特に高温高湿下での効果が大きい。フェルトや砥粒の付着した帯状研磨材での磨き加工を施すことで、スリーブの表面凹凸を均一に仕上げることができるので、スリーブ上のトナーコート量が均一化し、その結果スリーブとの摩擦帯電を受けたトナーのみが現像領域に搬送されるようになる。従って、上記効果が得られるものと考えられる。
【0237】
上記のように平滑化処理を施した後も、コート層表面はJIS B 0601におけるRaで0.2〜3.5μmの範囲の凹凸を保持していることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5μm程度であることが良い。理由は前記と同様である。
【0238】
円筒基体6としては、非磁性金属円筒管、樹脂円筒が好ましく用いられ、例えば、ステンレス円筒管、アルミニウム円筒管、銅合金円筒管等の非磁性の円筒管が用いられる。円筒管を作製する方法としては、引き抜き法や押し出し法があり、更に円筒管自体の寸法精度を上げる場合には、切削や研磨を施して所定の寸法精度とする。円筒管の真直度は30μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下が好ましく良好な画像が得られる。また必要に応じて適度な凹凸を表面に付与するためにサンドブラストや研磨により粗面を形成してもよい。ブラストに用いられる砥粒は定形粒子でも不定形粒子でも構わない。
【0239】
次に、本発明の現像方法を適用し得る画像形成方法を、図4に概略的に示す接触帯電手段及び接触転写手段を有する画像形成装置を参照しながら説明する。本発明の現像方法は、コロナ帯電方式及び/又はコロナ転写方式を使用する画像形成方法にも適用できる。
【0240】
光導電層801a及び導電性基層801bを有するドラム型の感光体801は、図面上時計の針の回転方向に所定の周速(プロセススピード)で回転される。導電性弾性層802a及び芯金802bを有している帯電ローラ802は、帯電バイアス電源803によりバイアスが印加されている。帯電ローラ802は、感光体801に押圧力により圧接されており、感光体801の回転に伴い従動回転する。
【0241】
帯電ローラ802にバイアスV2が印加されることで感光体801の表面が所定の極性・電位に帯電される。次いで画像露光804によって静電潜像が形成され、現像手段805によりトナー画像として順次可視化されていく。
【0242】
現像手段805を構成する現像スリーブには、現像バイアス印加手段813よりバイアスV1が印加される。現像により感光体801上に形成されたトナー画像は、転写バイアス電源807により転写バイアスV3が印加された転写材808を感光体801に押圧する当接転写手段としての転写ローラー806(導電性弾性層806a,芯金806b)により転写材808に静電転写され、転写材上のトナー画像は、加熱ローラ811a及び加圧ローラ811bを有する加熱加圧手段811により加熱加圧定着される。トナー画像転写後の感光体801面では転写残りトナーの如き付着汚染物質を、感光体801にカウンター方向に圧接した弾性クリーニングブレードを具備したクリーニング装置809で清浄面化され、更に除電露光装置810により除電されて、繰り返して作像される。
【0243】
一次帯電手段としては、以上のごとく接触帯電手段として帯電ローラー802を用いて説明したが、帯電ブレード、帯電ブラシの如き接触帯電手段でもよく、更に、非接触のコロナ帯電手段でもよい。接触帯電手段の方が帯電工程におけるオゾンの発生が少ない。転写手段としては、以上のごとく転写ローラー806を用いて説明したが転写ブレード又は転写ベルトの如き接触帯電手段でもよく、更に非接触のコロナ転写手段でもよい。当接転写手段の方が転写工程におけるオゾンの発生が少ない。
【0244】
また更に、本発明の画像形成方法に適用できる別の定着法について図5に示す定着手段を用いて説明する。図5は、トナー画像が形成されている記録材519を固定支持された加熱体511と、該加熱体に対向圧接し且つフィルム515を介して該記録材を該加熱体に密着させる加圧部材518とにより加熱定着する手段を示す。
【0245】
図5に示す定着装置において加熱体511は、従来の熱ロールに比べて熱容量が小さく、線状の加熱部を有するものであって、加熱部の最高温度は100〜300℃であることが好ましい。
【0246】
また、加熱体511と加圧部材としての加圧ローラー518との間に位置する定着フィルム515は、厚さ1〜100μmの耐熱性のシートであることが好ましく、これら耐熱性シートとしては耐熱性の高い、ポリエステル,PET(ポリエチレンテレフタレート),PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),ポリイミド,ポリアミドの如きポリマーシートの他、アルミニウムの如き金属シート及び、金属シートとポリマーシートから構成されたラミネートシートが用いられる。
【0247】
より好ましい定着フィルムの構成としては、これら耐熱性シートが離型層及び/又は低抵抗層を有していることである。
【0248】
511は、装置に固定支持された低熱容量線状加熱体であって、一例として厚み1.0mm,幅10mm,長手長240mmのアルミナ基板512に抵抗材料513を幅1.0mmに塗工したもので、長手方向両端より通電される。通電はDC100Vの周期20msecのパルス状波形で検温素子514によりコントロールされた所望の温度、エネルギー放出量に応じたパルスをそのパルス幅を変化させて与える。略パルス幅は0.5msec〜5msecとなる。この様にエネルギー及び温度を制御された加熱体511に当接して、図中矢印方向に定着フィルム515は移動する。
【0249】
この定着フィルムの一例として厚み20μmの耐熱フィルム(例えば、ポリイミド,ポリエーテルイミド,PES,PFAに少なくとも画像当接面側にPTFE,PAFの如き弗素樹脂)に導電剤を添加した離型層を10μmコートしたエンドレスフィルムである。一般的には総厚は100μm未満、より好ましく40μm未満が良い。フィルムの駆動は駆動ローラー516と従動ローラー517による駆動とテンションにより矢印方向に皺を生じることなく移動する。
【0250】
518は、シリコーンゴムの如き離型性の良いゴム弾性層を有する加圧ローラーで、総圧4〜20kgでフィルムを介して加熱体を加圧し、フィルムと圧接回転する。記録材519上の未定着トナー520は、入口ガイド521により定着部に導かれ、上述の加熱により定着画像を得るものである。
【0251】
なお、定着フィルム515は、エンドレスベルトで説明したが、シート送り出し軸及び巻き取り軸を使用し、定着フィルムは有端のフィルムであってもよい。
【0252】
本発明のトナーに係る物性の測定方法を以下に列挙する。
【0253】
(1)結着樹脂及びトナー中に含有されている結着樹脂のTHF不溶分の測定トナーサンプル0.5〜1.0gを秤量し(W1g)、円筒濾紙(例えば東洋濾紙社製No.86R)を入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて10時間抽出し、溶媒によって抽出された可溶成分溶液をエバポレートした後、100℃で数時間真空乾燥し、THF可溶樹脂成分量を秤量する(W2g)。トナー中の樹脂成分以外の重さを求める(W3g)。トナー中に含有されている結着樹脂のTHF不溶分は下記式から求められる。
【0254】
【数1】
【0255】
あるいは、抽出残分(W4g)を秤量し、THF不溶分を下記式から求めてもよい。
【0256】
【数2】
【0257】
トナー化する前の結着樹脂のTHF不溶分の測定は、サンプルとして結着樹脂を用いて上記と同様にして抽出を行い、抽出前のサンプルの重量(W5g)と抽出後の抽出残分の重量(W6g)から下記式から求められる。
【0258】
【数3】
(2)結着樹脂、トナー中に含有されている結着樹脂及びワックスの酸価の測定
JIS K0070に記載の測定方法に準拠して行う。
測定装置 :電位差自動滴定装置 AT−400(京都電子社製)
装置の校正:トルエン120mlとエタノール30mlの混合溶媒を使用する。
測定温度 :25℃
試料調製 :トナー1.0gをトルエン120mlに添加して室温(約25℃)で約10時間マグネチックスターラーで撹拌して溶解する。更にエタノール30mlを添加して試料溶液とする。
【0259】
測定操作:
1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、重合体成分の重さをW(g)とする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる)。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOHのファクターである。
【0260】
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
なお、クロロホルム不溶分の酸価は下記式により算出することができる。
【0261】
【数4】
【0262】
(3)結着樹脂及びトナーのTHF可溶分のGPCによる分子量分布の測定
本発明において、結着樹脂又はトナーのTHF可溶分のTHF(テトラハイドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定し、分子量1000以上を測定するものとする。
【0263】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムをしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合わせを挙げることができる。
【0264】
上記の方法で得られたGPCによる分子量分布から、分子量1000以上の分子量積分値に対する分子量50万以上の分子量積分値の割合を算出することによって、分子量50万以上の成分の含有量を求める。
【0265】
また、試料は以下の様にして作製する。
【0266】
試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)などが使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が、0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0267】
(4)トナー中に含有されている結着樹脂のクロロホルム不溶分の定量
トナー1gを精秤200mlのクロロホルムをいれたビーカーに添加する。室温でマグネチックスターラーを用いて約24時間撹拌・溶解する。デカンテーションにより上澄み液をミリポアフィルター(目開き0.15μm)を用いて磁性体等が混入しないように慎重に濾過する。クロロホルム不溶物(例えば、磁性体等)を2回約50mlのクロロホルムで洗浄・濾過する。得られた濾液を蒸発、乾固したのちに40℃で約24時間真空乾燥することにより結着樹脂のクロロホルム可溶分を定量する。トナーに含有される結着樹脂成分の総量と可溶分の差からクロロホルム不溶成分を定量する。
【0268】
(5)ワックスの融点測定
示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0269】
測定試料は2〜10mg、好ましくは5mgを精密に秤量する。
【0270】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0271】
この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの吸熱ピークが得られる。この吸熱メインピークの温度をもってワックスの融点とする。
【0272】
(6)トナーのDSC曲線の測定
上記ワックスの融点の測定と同様にして、トナーの昇温過程におけるDSC曲線を測定する。
【0273】
(7)結着樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0274】
測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0275】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。
【0276】
このときの吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を本発明におけるガラス転移温度Tgとする。
【0277】
(8)ワックスの分子量分布の測定
GPC測定装置:GPC−150C(ウォーターズ社)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度:135℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速:1.0ml/min
試料:0.15%の試料を0.4ml注入
【0278】
以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出される。
【0279】
(9)トナーの水に対する接触角の測定
測定装置:FACE接触角測定装置(協和界面化学社製)
測定温度:23〜25℃
測定湿度:相対湿度40〜60%
試料調製:約10gのトナーを200kgf/cm2の圧力で2分間圧縮成型して、直径25mm,厚さ約10mmの円盤状の試料を作製する。これを内径約27mmのガラス製サンプルビン(例えば、スナップカップNo.30)に入れ、100〜120℃に加熱されたホットプレート上でテフロン製のシートを介して5〜10分程度5〜10kgf/cm2の圧力をかける。トナーが軟化・溶融したならば、室温まで冷却してガラス製サンプルビンを破壊してトナーの溶融・成型物を取り出す。これを#280→#800→#1500の研磨紙を用いて順次研磨することにより直径25mm,厚さ5mmの円盤状試料とする。接触角の測定面は目視で傷がない様に仕上げる。尚、測定にはイオン交換水または市販の精製水を使用し、各試料について5回接触角を測定してその平均値をもってトナーの接触角とする。
【0280】
(10)トナーの粒度分布の測定
本発明のトナーの粒度分布の測定は、コールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いる。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。
【0281】
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
【0282】
(11)1H−NMR及び13C−NMR測定によるハイブリッド樹脂成分のポリエステルユニット及びビニル系重合体ユニットの組成比の定量
1H−NMR及び13C−NMRを用いて各モノマー組成存在比率をモル比率で求め、このモル比率での各モノマー組成存在比率から各モノマーの分子量を用い、エステル化に伴う脱水量は無視してポリエステル樹脂成分の含有量を重量%で算出する。
【0283】
(1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトルの測定)
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
データポイント:32768
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :10000回
測定温度 :60℃
試料 :測定試料50mgをφ5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒としてCDCl3を添加し、これを60℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
【0284】
(13C−NMR(核磁気共鳴)スペクトルの測定)
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
データポイント:32768
遅延時間:25sec.
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :16回
測定温度 :40℃
試料 :測定試料200mgをφ5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒としてCDCl3(TMS0.05%)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
【0285】
1H−NMR及び13C−NMR測定による酢酸エチルに不溶な成分中及び可溶な成分中のポリエステル樹脂の含有量の定量の一具体例を図8及び9乃至11を用いて下記に記載する。
【0286】
▲1▼ 1 H−NMR測定によるアルコール成分の存在比率の決定(図9及び10参照)
プロポキシ化ビスフェノールA(PO−BPA)及びエトキシ化ビスフェノールA(EO−BPA)の存在比率は、1H−NMRスペクトルにおける5.2ppm、5.3ppm及び5.4ppm付近のプロポキシ基の水素(各1H相当:図11参照)のシグナルと4.3ppm及び4.65ppm付近のエトキシ基の水素(各4H相当)のシグナルとの強度比から求める。
【0287】
▲2▼ 1 H−NMR測定による芳香族カルボン酸成分の存在比率の決定(図9及び10参照)
テレフタル酸及びトリメリット酸の存在比率は、1H−NMRスペクトルにおける8ppm付近のテレフタル酸の水素(4H相当)のシグナルと7.6ppm7.8ppm及び8.4ppm付近のトリメリット酸の水素(各1H相当)のシグナルとの強度比から求める。
【0288】
▲3▼ 1 HNMR測定によるスチレンの存在比率の決定(図9及び10参照)
スチレンの存在比率は、1H−NMRスペクトルにおける6.6ppm付近の水素(1H相当)のシグナルの強度比から求める。
【0289】
▲4▼ 13 C−NMR測定による脂肪族カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル及びPO−BPA、EO−BPAの(メタ)アクリル酸エステル化合物(ビニル系重合体とポリエステル樹脂との反応生成物)の存在比率の決定(図8参照)
脂肪族カルボン酸、(メタ)アクリル酸エステル及びビニル系重合体とポリエステル樹脂との反応生成物の存在比率は、13C−NMRスペクトルにおける173.5ppm及び174ppm付近の脂肪族カルボン酸のカルボキシル基の炭素(各1C相当)のシグナルと176ppm付近の(メタ)アクリル酸エステルのカルボキシル基の炭素(1C相当)のシグナルと169ppm付近の新たに検出されたピークの(メタ)アクリル酸エステルのカルボキシル基の炭素(1C相当)のシグナルと強度比から求める。
【0290】
▲5▼ 13 C−NMR測定による脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の存在比率の決定(図8参照)
脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の存在比率は、13C−NMRスペクトルにおける165ppm付近のテレフタル酸及びトリメリット酸のカルボキシル基の炭素(1C相当)のシグナルと上記▲4▼の脂肪族カルボン酸のカルボキシル基の炭素(各1C相当)のシグナルの強度比の比較から求める。
【0291】
▲6▼ 13 C−NMR測定によるスチレンの存在比率の決定(図8参照)
スチレンの存在比率は、13C−NMRスペクトルにおける125ppm付近のパラ位の炭素(1C相当)のシグナルの強度比から求める。
【0292】
▲7▼酢酸エチルに不溶な成分中及び可溶な成分中のポリエステル樹脂成分の含有量の決定
上記▲1▼乃至▲3▼の1H−NMRスペクトルから、PO−BPA、EO−BPA、テレフタル酸、トリメリット酸及びスチレンの各モノマー組成存在比率をモル比率で算出し、さらに上記▲4▼乃至▲6▼の13C−NMRスペクトルから、PO−BPA、EO−BPAの(メタ)アクリル酸エステル化合物(ビニル系重合体とポリエステル樹脂との反応生成物)、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸及びスチレンの各モノマー組成存在比率をモル比率で算出することにより、全構成モノマーの組成存在比率をモル比率で算出する。このモル比率での各モノマー組成存在比率から各モノマーの分子量を用い、エステル化に伴う脱水量は無視してポリエステル樹脂成分の含有量を重量%で算出する。
【0293】
(12)トナーに含有されるハイブリッド樹脂成分の13C−NMRによる定量測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:100.40MHz
パルス条件:5.0μs(45°)DEPT法による
データポイント:32768
遅延時間 :25sec.
積算回数 :50000回
測定温度 :30℃
試料 :室温でトナー10gを100mlの濃塩酸(約12M)に添加して約70時間撹拌して、トナーに含有される磁性体を溶解する。次に、濾液が弱酸性(約pH5)になるまで濾過・洗浄する。得られた樹脂組成物を60℃で約20時間真空乾燥して測定試料とする。この測定試料約1gをφ10mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)3mlを添加し、これを55℃の恒温槽内で溶解させて調整する。
【0294】
(13)磁性酸化鉄中の異種元素の含有量の測定
磁性酸化鉄中の元素量は、蛍光X線分析装置SYSTEM3080(理学電機工業(株)社製)を使用し、JIS K0119蛍光X線分析通則に従って、蛍光X線分析を行なうことにより測定することができる。
【0295】
(14)磁性酸化鉄中の異種元素の含有分布の測定
磁性酸化鉄中の異種元素の含有分布については、塩酸又はフッ酸溶解しながらの元素量をプラズマ発光分光(ICP)により測定定量し、各元素の全溶時の濃度に対する各溶解時の各元素濃度からその溶解率を求めることにより得られる。
【0296】
(15)磁性体の個数平均粒径の測定
磁性体の個数平均径は、透過電子顕微鏡により拡大倍率4万倍で拡大撮影した写真を用いて、ランダムに300個の磁性体を選びデジタイザーで測定することにより求めることができる。
【0297】
(16)磁性体の磁気特性の測定
磁性体の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定する。
【0298】
(17)外添剤微粉体のBET法で測定した窒素吸着による比表面積の測定
外添剤微粉体の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出する。
【0299】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0300】
本発明の樹脂組成物の製造:
(樹脂製造例1)
(1)ポリエステル樹脂の製造
・テレフタル酸 :6.0mol
・式(a−3)で表せるコハク酸誘導体 :4.0mol
・無水トリメリット酸 :3.0mol
・PO−BPA :7.2mol
・EO−BPA :3.0mol
上記ポリエステルモノマーをエステル化触媒とともにオートクレーブに仕込み、減圧装置,水分離装置,窒素ガス導入装置,温度測定装置及び撹拌装置を付し、窒素ガス雰囲気下で210℃まで加熱しながら縮重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0301】
(2)ハイブリッド樹脂成分の製造
上記ポリエステル樹脂80重量部をキシレン100重量部に溶解・膨潤した。次に、スチレン15重量部、2−エチルヘキシルアクリレート5重量部及びエステル化触媒としてジブチルスズオキサイド0.1重量部を添加してキシレンの還流温度まで加熱してポリエステル樹脂のカルボン酸とアクリル酸エステルとのエステル交換反応を開始した。更にラジカル重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド1重量部をキシレン30重量部に溶解したキシレン溶液を約1時間かけて滴下した。その温度で更に6時間保持してラジカル重合反応を終了し、減圧下210℃まで加熱して脱溶剤することによりポリエステル樹脂のカルボン酸とアクリル酸エステルとのエステル交換反応を完結してポリエステル樹脂、ビニル系重合体及びポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットがエステル結合することにより生成したハイブリッド樹脂成分を含有する樹脂組成物(1)を得た。
【0302】
得られた樹脂組成物(1)は、酸価が18.2mgKOH/gであり、Tgが59.8℃であり、GPCにおける分子量分布においてピーク分子量が7,200、重量平均分子量(Mw)が38,000であり、Mw/Mnが13.5であり、THF不溶分の含有量が15.1重量%であった。
【0303】
また、THF可溶分及び樹脂組成物(1)の13C−NMR測定を行ったところ、ハイブリッド樹脂成分は樹脂組成物(1)からは検出されたが、THF可溶分からは検出されなかったことからTHF不溶分として樹脂組成物中に存在していることを確認した。
【0304】
(樹脂製造例2〜14)
樹脂製造例1において、表2に示すワックスを樹脂組成物(1)のハイブリッド樹脂の製造工程で添加した以外は同様にして、ハイブリッド樹脂成分を含有する樹脂組成物(2)〜(14)を得た。
【0305】
(樹脂製造例15)
製造例1で使用したポリエステル樹脂を構成するモノマーを下記に示すものを使用し、表2に示したワックス(3)7重量部をハイブリッド樹脂の製造工程で添加した以外は同様にして、ハイブリッド樹脂成分を含有する樹脂組成物(15)を得た。
・テレフタル酸 :6.0mol
・式(a−3)で表せるコハク酸誘導体 :4.0mol
・無水トリメリット酸 :5.0mol
・PO−BPA :7.0mol
・EO−BPA :3.0mol
なお、得られた樹脂組成物(15)は、酸価が43.6mgKOH/gであり、Tgが58.9℃であり、GPCにおける分子量分布においてピーク分子量が3,600、重量平均分子量(Mw)が12,000であり、Mw/Mnが10.5であり、THF不溶分の含有量が5.4重量%含有であった。
【0306】
また、THF可溶分及び樹脂組成物(15)の13C−NMR測定を行ったところ、ハイブリッド樹脂成分は樹脂組成物(15)からは検出されたが、THF可溶分からは検出されなかったことからTHF不溶分として樹脂組成物中に存在していることを確認した。
【0307】
(樹脂製造例16〜19)
樹脂製造例1で使用したポリエステル樹脂を構成するモノマーを下記に示すものを使用し、表2に示したワックスをハイブリッド樹脂の製造工程で添加した以外は同様にして、ハイブリッド樹脂成分を含有する樹脂組成物(16)〜(19)を得た。
・テレフタル酸 :6.0mol
・式(a−3)で表せるコハク酸誘導体 :4.0mol
・無水トリメリット酸 :5.0mol
・PO−BPA :7.0mol
・EO−BPA :3.0mol
なお、得られた樹脂組成物(16)は、酸価が32.7mgKOH/gであり、Tgが59.3℃であり、GPCにおける分子量分布においてピーク分子量が6,200、重量平均分子量(Mw)が29,000であり、Mw/Mnは11.9でり、THF不溶分の含有量が13.7重量%含有であった。
【0308】
また、THF可溶分及び樹脂組成物(16)の13C−NMR測定を行ったところ、ハイブリッド樹脂成分は樹脂組成物(16)からは検出されたが、THF可溶分からは検出されなかったことからTHF不溶分として樹脂組成物中に存在していることを確認した。
【0309】
(比較樹脂製造例1)
(a)ポリエステル樹脂の製造
・テレフタル酸 :8.0mol
・無水トリメリット酸 :3.0mol
・PO−BPA :5.0mol
・EO−BPA :5.0mol
上記ポリエステルモノマーをエステル化触媒とともにオートクレーブに仕込、減圧装置,水分離装置,窒素ガス導入装置,温度測定装置及び撹拌装置を付し、窒素ガス雰囲気下で210℃まで加熱しながら縮重合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
【0310】
(b)ビニル系重合体及びポリエステル樹脂との混合物の製造
・スチレン :15重量部
・2−エチルヘキシルアクリレート : 5重量部
上記ビニルモノマーをキシレン100重量部に添加して窒素雰囲気下、キシレンの還流温度まで加熱した。次にキシレン50重量部にt−ブチルパーオキサイド1重量部を溶解したキシレン溶液を約1時間かけて滴下し、更に8時間加熱してラジカル重合反応を終了した。次に、このビニル系重合体が溶解しているキシレン溶液に上記ポリエステル樹脂を80重量部を添加して溶解混合した。減圧下、キシレンを留去することによりポリエステル樹脂とビニル系重合体の混合物を得た。これを比較用樹脂組成物(1)とする。
【0311】
なお、得られた比較用樹脂組成物(1)は、酸価が52.7mgKOH/gであり、Tgが59.9℃であり、GPCにおける分子量分布においてピーク分子量が6,200、重量平均分子量(Mw)が28,000であり、Mw/Mnが6.3であり、THF不溶分の含有量が1重量%以下であった。
【0312】
また、比較用樹脂組成物(1)の13C−NMR測定を行ったところ、ハイブリッド樹脂成分は存在していないことを確認した。
【0313】
(比較樹脂製造例2〜3)
比較樹脂製造例1において、ポリエステル樹脂とビニル系重合体を混合する工程で、表2に示すワックスを添加した以外は同様にして比較用樹脂組成物(2)及び(3)を得た。
【0314】
(比較樹脂製造例4)
減圧装置,水分離装置,窒素ガス導入管,温度測定装置及び撹拌装置を装着したオートクレーブに、スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体(スチレン84重量部、2−エチルヘキシルアクリレート16重量部、数平均分子量8000、Mw/Mn=2.7)200重量部及び下記組成からなるポリエステルモノマー及びジブチルスズオキサイド2重量部を仕込み、窒素雰囲気下、減圧しながら常法に従って200℃まで加熱しながら縮重合反応を行うことにより、比較用樹脂組成物(4)を得た。
・テレフタル酸 :249重量部
・トリメリット酸 : 29重量部
・EO−BPA :195重量部
・PO−BPA :840重量部
なお、得られた比較用樹脂組成物(4)は、酸価が1.2mgKOH/gであり、Tgが60.1℃であり、GPCにおける分子量分布においてピーク分子量が20,800、重量平均分子量が45,000であり、Mw/Mnが6.3であり、THF不溶分の含有量が1重量%以下であった。
【0315】
また、比較用樹脂組成物(4)の13C−NMR測定を行ったところ、ハイブリッド樹脂成分は存在していないことを確認した。
【0316】
(比較樹脂製造例5〜6)
表2に示すワックスをポリエステルの縮重合反応の工程で添加した以外は同様にして比較用樹脂組成物(5)及び(6)を得た。
【0317】
上記の樹脂製造例11〜19及び比較樹脂製造例1〜6で得られた樹脂組成物1〜19及び比較用樹脂組成物1〜6の構成及び物性を表3及び表4に示す
【0318】
【表2】
【0319】
【表3】
【0320】
【表4】
【0321】
[実施例1]
・樹脂組成物(1) 100重量部
・有機ジルコニウム化合物(164) 1重量部
・鉄を含有する荷電制御剤 2重量部
・ワックス(3) 7重量部
・磁性酸化鉄 100重量部
(平均粒径0.18μm、保磁力10.7KA/m、残留磁化11.2Am2/kg、飽和磁化81.5Am2/kg)
上記混合物を、130℃に加熱された二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。粗粉砕物をジェットミルで微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級機で分級し、重量平均径7.3μmの磁性トナー(磁性トナー粒子)を得た。
【0322】
磁性トナー中の結着樹脂のTHF不溶分は、混在するワックス量を除いた樹脂組成物に換算して11重量%であった。磁性トナー中に含有されている磁性酸化鉄及びワックスを除いて換算した結着樹脂の酸価は17.4mgKOH/gであった。
【0323】
この磁性トナー中の結着樹脂に含有されるハイブリッド樹脂成分の存在は、図8及び表5に示すトナーの結着樹脂の13C−NMR測定により確認され、ビニル系重合体ユニットに含有される2−エチルヘキシルアクリレートの16mol%がポリエステルユニットとエステル交換反応してハイブリッド樹脂組成物を形成していることを確認した。また、磁性トナーの水に対する接触角は106度であった。
【0324】
【表5】
【0325】
この磁性トナー100重量部に対して、疎水性乾式シリカ(BET=200m2/g)1.0重量部をヘンシェルミキサーにて外添添加して外添磁性トナー1とした。この外添磁性トナーの物性を表6に示す。この外添磁性トナー1を用いて、キヤノン製デジタル複写機GP−215及びキヤノン製複写機NP−6650及びNP−6085の定着器からトナーのクリーニング部材を取り外す改造を加え、5万枚の画出し耐久テストを行って、画像濃度及び感光体上のトナーのクリーニング性の評価を行ったところ、表8に示したように良好な結果が得られた。
【0326】
またGP−215、NP−6650及びNP−6085の定着器を取り外して外部駆動装置及び定着器の温度制御装置をつけた。定着スピードはそれぞれの複写機と同じに設定して定着温度を変えて定着試験を行って、低温定着性、耐高温オフセット及び定着器の加熱部材(耐熱フィルム、加熱ローラー、加圧ローラー)のトナーの付着状態を評価したところ、表9に示したように良好な結果が得られた。
【0327】
[実施例2〜25]
表3及び4に示す樹脂組成物及びワックスを使用した以外は実施例1と同様にして外添磁性トナー(2)〜(25)を得た。実施例1と同様に分析及び評価した結果をそれぞれ表6乃至9に示す。
【0328】
[比較例1〜6]
表4に示す比較用樹脂組成物(1)〜(6)を用いた以外は実施例1と同様にして外添磁性トナー(29)〜(34)を製造した。分析及び評価を行った結果を表7乃至9に示す。
【0329】
(画像濃度の評価方法)
「画像濃度」は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、反射濃度の測定を行い、直径5mmの円形画像を測定した。
【0330】
(感光体上のトナークリーニング性の評価方法)
感光体の耐久後の「クリーニング性」は、次の基準で評価を行った。
A:感光体表面上に、フィルミングが全く無い
B:感光体表面上に、非通紙部に軽微なフィルミングが認められた
C:感光体表面上に、通紙領域部に軽微なフィルミングが認められたが、画像に影響なし
D:感光体表面上に、画像カブリとなるフィルミングが発生
E:感光体表面上に、画像斑点となるトナー融着が発生
(GP−215による低温定着性の評価方法)
150℃に設定した定着器に画像濃度1.3〜1.4のベタ黒画像を通紙して定着し、50g/cm2の荷重をかけダスパー(小津産業製)で摺擦したときの濃度低下率で判定する。
ランク5:摺擦による濃度低下率が5%未満
ランク4:摺擦による濃度低下率が10%未満
ランク3:摺擦による濃度低下率が15%未満
ランク2:摺擦による濃度低下率が20%未満
ランク1:摺擦による濃度低下率が20%以上
【0331】
(NP−6550による低温定着性の評価方法)
定着器の設定温度を180℃とした以外はGP−215による定着テストと同様の条件で行った。
ランク5:摺擦による濃度低下率が5%未満
ランク4:摺擦による濃度低下率が10%未満
ランク3:摺擦による濃度低下率が15%未満
ランク2:摺擦による濃度低下率が20%未満
ランク1:摺擦による濃度低下率が20%以上
【0332】
(ホットオフセットの評価方法)
ランク5:まったく発生せず
ランク4:軽微なオフセット発生するが、実用的には許容できる
ランク3:目視で容易に判別できるオフセット発生
ランク2:顕著なオフセット発生
ランク1:紙がローラーに巻き付く
【0333】
(定着器の加熱部材のトナー汚染の評価方法)
ランク5:まったくトナー汚染発見られず
ランク4:軽微な汚染有るが、実用的には許容できる
ランク3:目視で容易に判別できる汚染見られる
ランク2:顕著な汚染見られる
ランク1:紙の表面、裏面等に汚染トナーが付着する
【0334】
(トナーにおけるワックス分散性の評価方法)
トナーを偏光板を取り付けた光学顕微鏡を用いて低倍率(例えば、30〜100倍)で観察し、約500個のトナー粒子当りで、トナーから遊離しているワックスの粒子の存在を示す輝点の数を測定した。
ランク5:偏光板を通して輝点なし
ランク4:1〜10個の輝点(実用上問題ない程度)
ランク3:11〜20個の輝点(画像のカブリ濃度が高くなる程度)
ランク2:21〜30個の輝点(感光体ドラム上にワックスが固着する程度)
ランク1:31個以上の輝点(感光体ドラム上にワックス及びトナーが固着する程度)
【0335】
【表6】
【0336】
【表7】
【0337】
【表8】
【0338】
【表9】
【0339】
【発明の効果】
本発明は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性が十分なことに加え、定着部材に対する離型性の向上がなされているため、定着器の加熱方式によらず長期使用によってもオフセットが発生せず、高品質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法に使用し得る現像剤担持体が組み込まれる現像剤補給系現像装置の一例(規制部材に磁性ブレードを使用)を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成方法に使用し得る現像剤担持体が組み込まれる現像剤補給系現像装置の一例(規制部材に弾性ブレードを使用)を示す概略図である。
【図3】本発明の画像形成方法に使用し得る現像剤担持体の一部分の断面の概略図である。
【図4】本発明の画像形成方法が適用し得る画像形成方法の概略的説明図である。
【図5】本発明の画像形成方法に適用し得る定着装置の概略図である。
【図6】低架橋度ポリエステル樹脂組成物の13C−NMRスペクトルを示す。
【図7】スチレン・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体の13C−NMRスペクトルを示す。
【図8】本発明に係る結着樹脂(1)の13C−NMRスペクトルを示す。
【図9】本発明に係る結着樹脂(1)の酢酸エチル可溶成分の1H−NMRスペクトルを示す。
【図10】本発明に係る結着樹脂(1)の酢酸エチル不溶成分の1H−NMRスペクトルを示す。
【図11】PO−BPAのPO基の1H−NMRシグナルの帰属を示す説明図である。
Claims (21)
- 結着樹脂、着色剤及び有機金属化合物を少なくとも含有する負摩擦帯電性トナーにおいて、
(a)該有機金属化合物がジルコニウムと、芳香族ヒドロキシカルボン酸とが配位又は/及び結合している下記式(4)、(7)、(40)、(41)で示される構造を有している有機ジルコニウム化合物から選択される有機金属化合物であり、
(b)該結着樹脂がポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとをエステル結合することにより生成されたハイブリッド樹脂成分を含有し、
(c)該結着樹脂の酸価が2乃至50mgKOH/gであり、
(d)該トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における分子量分布において、分子量3,000乃至20,000の領域にメインピークを有し、分子量50万以上の成分を3乃至25%含有している
ことを特徴とする負摩擦帯電性トナー。 - 有機ジルコニウム化合物が結着樹脂100重量部に対して0.1乃至10重量部トナーに内添されていることを特徴とする請求項1に記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該結着樹脂の酸価が5乃至45mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該結着樹脂の酸価が10乃至40mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該結着樹脂のポリエステルユニットは、三価以上の多価カルボン酸またはその無水物、または、三価以上の多価アルコールで架橋された架橋構造を有している請求項1乃至4のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナー中に含有されている樹脂成分は、THF不溶分を該トナー中の全樹脂成分を基準として5乃至70重量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナー中に含有されている樹脂成分は、THF不溶分を該トナー中の全樹脂成分を基準として15乃至50重量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナーの水に対する接触角が95乃至130度であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナーの水に対する接触角が105乃至125度であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナーは、ワックスを含有しており、該ワックスが、GPCにおける分子量分布において分子量300乃至5000にメインピークを有し、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.1乃至15であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナーは、ワックスを含有しており、該ワックスが、GPCにおける分子量分布において分子量700乃至4000にメインピークを有し、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.5乃至8であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- ワックスが、示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時の吸熱ピーク温度で規定される融点が70乃至140℃であることを特徴とする請求項10又は11に記載の負摩擦帯電性トナー。
- ワックスが、示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時の吸熱ピーク温度で規定される融点が85乃至130℃であることを特徴とする請求項10又は11に記載の負摩擦帯電性トナー。
- ワックスが、炭化水素系ワックス、ポリエチレン系重合体またはポリプロピレン系重合体のいずれかであることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナーは、ワックスを2種含有しており、該トナー中に含有されているワックス全体のGPCにおける分子量分布において、分子量500乃至5000にメインピークを有し、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.2乃至15であることを特徴とする請求項1に記載の負摩擦帯電性トナー。
- 該トナーは、ワックスを2種含有しており、該トナー中に含有されているワックス全体のGPCにおける分子量分布において、分子量1000乃至4000にメインピークを有し、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が2乃至10であることを特徴とする請求項1に記載の負摩擦帯電性トナー。
- 少なくとも1種のワックスが炭化水素系ワックス、ポリエチレン系重合体またはポリプロピレン系重合体のいずれかであることを特徴とする請求項16又は17に記載の負摩擦帯電性トナー。
- 潜像担持体に担持されている静電潜像を負摩擦帯電性トナーにより現像してトナー画像を形成する現像工程;該潜像担持体上に形成されたトナー画像を中間転写体を介して、又は、介さずに記録材に転写する転写工程;及び該記録材に転写されたトナー画像を該記録材に加熱定着する定着工程を有する画像形成方法において、
該負摩擦帯電性トナーは、結着樹脂、着色剤及び有機金属化合物を少なくとも含有しており、
(a)該有機金属化合物がジルコニウムと、芳香族ヒドロキシカルボン酸とが配位又は/及び結合している下記式(4)、(7)、(40)、(41)で示される構造を有している有機ジルコニウム化合物から選択される有機金属化合物であり、
(b)該結着樹脂がポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとをエステル結合することにより生成されたハイブリッド樹脂成分を含有し、
(c)該結着樹脂の酸価が2乃至50mgKOH/gであり、
(d)該トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分がゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における分子量分布において、分子量3,000乃至20,000の領域にメインピークを有し、分子量50万以上の成分を3乃至25%含有していることを特徴とする画像形成方法。 - 該負摩擦帯電性トナーが、請求項2乃至19のいずれかに記載されたトナーであることを特徴とする請求項20に記載の画像形成方法。
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