以下、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明は、結着樹脂と着色剤を少なくとも有するトナーにおいて、該結着樹脂は、3種の樹脂Lと樹脂Mと樹脂Hを含有し、それぞれの樹脂が、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分とが化学的に結合したハイブリッド樹脂を含有している。このうち、樹脂Mの軟化点が95℃以上125℃以下である。そして、樹脂Mは着色剤と樹脂からなるマスターバッチ用の樹脂であり、樹脂Lと樹脂Mと樹脂Hに関して、軟化点(℃)をそれぞれTm(L)、Tm(M)、Tm(H)とし、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のサイズ排除クロマトグラフィーオンライン多角度光散乱(SEC−MALLS)測定における重量平均分子量をそれぞれMw(L)、Mw(M)、Mw(H)、慣性半径(nm)をそれぞれRw(L)、Rw(M)、Rw(H)としたとき、下記式(1)乃至(4)を満たすことを特徴とする。
Tm(L)<Tm(M)<Tm(H) ・・・(1)
Rw(M)/Mw(M)>Rw(L)/Mw(L) ・・・(2)
Rw(M)/Mw(M)>Rw(H)/Mw(H) ・・・(3)
1.0×10-4 ≦Rw(M)/Mw(M)≦1.0×10-2 ・・・(4)
3種の樹脂L、樹脂M、樹脂HのTHF可溶分のSEC−MALLS測定における慣性半径Rwと絶対分子量Mwの比、Rw/Mwの値の関係を制御している。その結果、軽圧定着システム、高速現像システムに対応した良好な定着性と現像性を両立することを見出し、本発明に至った。
慣性半径Rwは高分子鎖の広がりを示しており、慣性半径と絶対分子量の関係はその分子の分岐度や架橋密度と深い関連性がある。詳細は明らかでないが、本発明者らが検討を行ったところ、この慣性半径Rwと絶対分子量Mwの比が、着色剤マスターバッチ用の樹脂Mとしては、樹脂中への着色剤の分散性に大きく関与していることが分かってきた。この理由としては、樹脂Mが適度な架橋密度を有することは、適度な架橋点間距離を有するということを意味している。このような樹脂Mは、マスターバッチ製造時に着色剤が樹脂Mに広がりやすく、着色剤の分散性が高いものと考える。その結果、樹脂Mを用いて着色剤マスターバッチとした場合、トナー中における着色剤の分散性が良化し、高彩度な画像が得られるとともに、複数色のトナーを定着して画像形成を行う際の混色性や透明性等の色再現性が優れる。
本発明の樹脂Mは、THF可溶分のSEC−MALLS測定における慣性半径Rwと絶対分子量Mwが下記式
1.0×10-4 ≦Rw(M)/Mw(M)≦1.0×10-2 ・・・(4)
を満足することを特徴とする。より好ましくは、2.0×10-3 ≦Rw(M)/Mw(M)≦8.0×10-3 を満足するものである。樹脂MのRw(M)/Mw(M)が1.0×10-4未満では、架橋密度が高くなるため着色剤の分散が悪くなる場合がある。そのため軽圧定着システムにおいて定着したときに、画像濃度が低くなったり、画像の彩度が低くなる傾向がある。逆に樹脂MのRw(M)/Mw(M)が1.0×10-2超では、架橋密度が小さくなるためマスターバッチ製造時にシェアがかかりにくくなり、着色剤の偏析や分散が悪化する場合がある。そのため、高速現像システムにおいて着色剤がトナー中で凝集するため耐久による帯電の変化が大きくなったり、耐久後にカブリが悪化する傾向である。
また、3種の樹脂のRw/Mwの関係は、下記式
Rw(M)/Mw(M)>Rw(L)/Mw(L) ・・・(2)
Rw(M)/Mw(M)>Rw(H)/Mw(H) ・・・(3)
を満足することで、着色剤と樹脂Mから構成されるマスターバッチが樹脂Lと樹脂Hに均一に分散することが、本発明者の検討によって分かってきた。その結果、軽圧定着システムにおいても着色力が上がり、グロスの高い画像が得られた。さらに、樹脂Mと着色剤が一緒に分散するため、着色剤の露出を抑制する傾向にある。したがって、顔料特有の現像弊害も抑えることができるようになり、耐久を通して安定した現像性を保つことができる。
樹脂のRw/Mwの関係がRw(M)/Mw(M)<Rw(L)/Mw(L)の場合、着色剤は樹脂Mよりも樹脂Lの方へ広がりやすくなるため、着色剤が単独で樹脂L中に分散していく。樹脂LのRw(L)/Mw(L)は大きいため、トナー表面に出やすくなり保存性が悪化する傾向である。
樹脂Mと樹脂HのRw/Mwの関係がRw(M)/Mw(M)<Rw(H)/Mw(H)の場合、樹脂Mよりも樹脂Hの方へ広がりやすい傾向であるが、樹脂Hはゲルの割合が多いためゲル以外のところで局在化しやすくなる。そのため、軽圧定着システムにおいてトナーが溶けきらないためグロスが低下したり、高速現像システムの長期耐久において帯電が変化しやすくなる傾向である。
本発明に用いることができる樹脂Lとしては、THF可溶分のSEC−MALLSにより測定される重量平均分子量Mw(L)は、5,000乃至50,000、より好ましくは10,000乃至40,000が良い。Mw(L)が5,000未満の場合には、トナーの保存性が悪化する傾向にある。一方、Mw(L)が50,000より大きい場合には、十分なトナーの低温定着性が悪化する傾向にある。
本発明に用いられる、着色剤をマスターバッチ化する際の樹脂Mとしては、THF可溶分のSEC−MALLSにより測定される重量平均分子量Mw(M)は、15,000乃至90,000、より好ましくは20,000乃至70,000が良い。Mw(M)が15,000未満の場合には、トナーの保存性が悪化する傾向にある。一方、Mw(L)が90,000より大きい場合には、着色剤の分散が十分でないためグロス、彩度が低下する傾向にある。
本発明に用いることができる樹脂Hとしては、THF可溶分のSEC−MALLSにより測定される重量平均分子量Mw(H)は、10,000乃至500,000、より好ましくは150,000乃至40,0000が良い。Mw(H)が10,000未満の場合には、トナーのホットオフセット性が悪化する傾向にある。一方、Mw(H)が500,000より大きい場合には、グロス、彩度が低下する傾向にある。
また、3種の樹脂L、樹脂M、樹脂Hの軟化点の関係が式(1)で、樹脂Mの軟化点は95℃以上125℃以下の範囲が軽圧定着システム及び高速現像システムには好ましく、より好ましくは100℃以上120℃以下の範囲であることが良い。
Tm(L)<Tm(M)<Tm(H) ・・・(1)
式(1)の関係で、樹脂Mの軟化点が95℃未満の場合、着色剤と一緒に分散し、樹脂Mがトナー表面に露出するため、低温定着には有利ではあるが保存性は悪化する傾向である。逆に、樹脂Mの軟化点が125℃より大きい場合、着色剤と一緒に分散し、樹脂Mがトナー表面に露出するため、低温定着が悪化する傾向である。
また、樹脂Lの軟化点としては、70℃以上110℃以下、樹脂Hに関しては110℃以上150℃以下を使用することが好ましい。このように樹脂Lと樹脂Hを併用することで、低温領域でのトナー中の結着樹脂の溶け出しが早くでき、高温領域でのトナー中の樹脂の溶け出しを遅くすることができる。
さらに、樹脂Lと樹脂Hの軟化点の関係が式(5)を満たすことで、より大きい定着温度領域を得ることができる。
Tm(H)−Tm(L)≧30 ・・・(5)
Tm(H)−Tm(L)<30の場合、軽圧定着システムにおいて、定着温度の範囲が小さくなってしまう。
さらに本発明のトナーにおいて樹脂Mの酸価は25mgKOH/g以上40mgKOH/g以下となることが、着色剤マスターバッチに使用する樹脂として好ましい。樹脂Mの酸価が25mgKOH/g未満となる場合、及び40mgKOH/gより大きくなるいずれの場合でも、着色剤の分散が必ずしも好適な状態になるわけではない。樹脂Mの酸価が25mgKOH/g未満となる場合、樹脂中に着色剤が分散しにくいため、軽圧定着システムにおいて画像濃度、及び画像の彩度が低くなる傾向がある。また逆に、樹脂Mの酸価が40mgKOH/gより大きくなる場合、分散は良いが着色剤が樹脂Mの表面にでやすくなるため、高速現像システムにおいて耐久による帯電の変化やカブリが悪化する傾向である。
また、3種の樹脂L、樹脂M、樹脂Hの酸価の関係は、式(6)、式(7)を満たすことが高温高湿下での保存性や耐久によるカブリを抑制することができるためより好ましい。
Av(L)<Av(M) ・・・(6)
Av(H)<Av(M) ・・・(7)
さらに樹脂Hは、THF不溶分が15質量%以上50質量%以下であることが、高温高湿下での保存性に効果がある。THF不溶分が15質量%未満の場合、高温高湿下に長期間放置すると保存性が悪化する傾向である。一方、THFの不溶分が50質量%より大きい場合、H体の不溶分がL体、M体になじみにくいため顔料分散が悪化する傾向である。
次に、本発明のトナーに用いることができる材料の構成について詳しく説明する。
<トナー材料構成>
本発明で使用できる3種の樹脂L、樹脂M、樹脂Hはポリエステルユニットとビニル系共重合体ユニットとを有しているハイブリッド樹脂である。
本発明のトナーに含有される樹脂において、「ハイブリッド樹脂」とは、ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合した樹脂を意味する。具体的には、ポリエステルユニットと(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマーを重合したビニル系重合体ユニットとがエステル交換反応によって形成する樹脂であり、好ましくはビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体(あるいはブロック共重合体)である。なお、本発明において「ポリエステルユニット」とはポリエステルに由来する部分を示し、「ビニル系重合体ユニット」とはビニル系重合体に由来する部分を示す。ポリエステルユニットを構成するポリエステル系モノマーとしては、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分であり、ビニル系重合体ユニットとは、ビニル基を有するモノマー成分である。
ポリエステルユニットを生成する場合は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸エステル等が原料モノマーとして使用できる。
具体的には、例えば二価アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
2価の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類またはその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物;炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類またはその無水物が挙げられる。
また、架橋部位を有するポリエステル樹脂を形成するための3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸及び、これらの無水物やエステル化合物等が挙げられる。
それらの中でも、特に、下記一般式(イ)で代表されるビスフェノール誘導体をジオール成分とし、二価以上のカルボン酸またはその酸無水物、またはその低級アルキルエステルとからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等)を酸成分として、これらを縮重合したポリエステル樹脂が、カラートナーとして、良好な帯電特性を有するので好ましい。
ビニル系重合体ユニットを生成するためのビニル系モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如き不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
さらに、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、ビニル系重合体ユニットは、ビニル基を二個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよい。
この場合に用いられる架橋剤には、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
ハイブリッド樹脂を製造する際には、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのいずれか一方または両方の中に、両樹脂ユニットの成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂ユニットを構成するモノマーのうちビニル系重合体ユニットの成分と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。ビニル系重合体ユニットを構成するモノマーのうちポリエステルユニットの成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットの反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットのそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行うことにより得る方法が好ましい。
本発明に使用できるビニル系重合体ユニットを製造する場合に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチル−プロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレートが挙げられる。
本発明のトナーに用いられるハイブリッド樹脂を調製するための製造方法としては、例えば、以下の(1)乃至(5)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ビニル系重合体とポリエステル樹脂を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行ってハイブリッド樹脂を合成する方法。
(2)ビニル系重合体を製造後に、この存在下にポリエステル樹脂成分を反応させ、ポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する方法。ハイブリッド樹脂成分はビニル系重合体ユニット(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)との反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるポリエステルとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステル樹脂を製造後に、この存在下にビニル系樹脂成分を反応させ、ポリエステル樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する方法。ハイブリッド樹脂成分はポリエステルユニット(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマーとの反応、及び前記ユニット及びモノマーと必要に応じて添加されるビニル系重合体ユニットとの反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(4)ビニル系重合体及びポリエステル樹脂を製造後に、これらの重合体ユニット存在下にビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸)のいずれか一方または両方を添加し、添加したモノマーに応じた条件の重合反応を行うことにより、ハイブリッド樹脂成分を製造する方法。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(多価アルコール、多価カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系重合体ユニット、ポリエステルユニット及びハイブリッド樹脂成分を製造する方法。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系重合体ユニット及びポリエステルユニットには、分子量や架橋度の異なる複数種の重合体ユニットを使用することができる。なお、本発明におけるビニル系重合体またはビニル系重合体ユニットとは、ビニル系単重合体若しくはビニル系共重合体またはビニル系単重合体ユニット若しくはビニル系共重合体ユニットを意味するものである。
樹脂Lに含有させることができるハイブリッド樹脂としては、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとの組成比が、60/40乃至95/5であることが好ましい。樹脂Mに含有させることができるハイブリッド樹脂としては、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとの組成比が、50/50乃至95/5であることが好ましい。樹脂Hに含有させることができるハイブリッド樹脂としては、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとの組成比が、50/50乃至90/10であることが好ましい。
また、本発明のトナーに使用できる樹脂Mと、樹脂L+樹脂Hの配合比としては、2/98乃至20/80であることが好ましい。また、樹脂Lと樹脂Hの配合比としては、40/60乃至90/10であることが好ましい。これは、樹脂L+樹脂Hの配合比が多いほど、さらに低軟化樹脂Lの配合比が大きい方が、低温領域と高温領域での機能分担がしやすくなり、定着ラチチュードを確保しやすい。
また、本発明のトナーは、オイル塗布機構を有さないオイルレス定着器に使用する場合、定着性を向上させるという観点から、離型剤としてのワックスを含有していることが好ましい。
本発明に用いることができるワックスの一例としては、次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の脂肪酸類とステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等のアルコール類のエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
本発明において特に好ましく用いることができるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックス及び脂肪酸とアルコールのエステルであるエステル化物が挙げられる。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合あるいは低圧下でチーグラー触媒またはメタロセン触媒で重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、あるいはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素ワックスがよい。さらにプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものが、より好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの[例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物];ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンなどのアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。特にアルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスがその分子量分布からも好ましいものである。また、パラフィンワックスも好ましく用いられる。
また、本発明に用いることができるワックスは、示差走査熱量分析(DSC)における吸熱曲線において、温度30乃至200℃の範囲における最大吸熱ピークのピーク温度が50乃至110℃の範囲にあることが好ましい。最大吸熱ピークが50℃未満の場合、トナーの保存性が悪化し、逆に最大吸熱ピークが110℃を超える場合、定着性が悪化する傾向にある。
また、本発明に用いることができるワックスは、ワックス分散剤として、マスターバッチ化されていることが好ましい。
ワックス分散剤としては、(i)ポリエステル樹脂、(ii)ワックス、(iii)スチレン系モノマーと、N含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを用いて合成された共重合体とポリオレフィンとを少なくとも有する共重合体が特に好ましく用いられる。
本発明に用いることができるポリエステルユニットを有する結着樹脂と炭化水素系ワックスとの相溶性は、元来より乏しいため、そのままの状態で添加してトナー化した際には、トナー中にワックスが偏析して存在し、遊離ワックス等も発生する。このため、高速現像時におけるトナーの劣化や現像部材汚染が発生しやすくなる。そこで、(iii)スチレン系モノマーと、N含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを用いて合成された共重合体とポリオレフィンとをグラフトさせた共重合体中に、(ii)ワックスを予め微分散させた樹脂組成物をワックス分散剤とし、該ワックス分散剤を(i)ポリエステル樹脂中にマスターバッチとして溶融混合させたものを「ワックス分散剤マスターバッチ」として、トナー製造時に添加して用いることが好ましい。
スチレン系モノマーと、N含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを用いて合成される共重合体に用いることのできるモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体が挙げられる。
N含有ビニル系モノマーとしては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアミノ基含有α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーとしては、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルが挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンが挙げられる。
アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類が挙げられる。
メタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類が挙げられる。
その中でも特に、スチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレートの三元共重合体が好ましい。
スチレン系モノマーと、N含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを用いて合成された共重合体のGPCによる分子量分布においては、重量平均分子量(Mw)が5000乃至100000、数平均分子量(Mn)が1500乃至15000である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2乃至40であることが良い。
上記共重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)が5000未満の場合、または数平均分子量(Mn)が1500未満の場合、または重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が2未満の場合、トナーの保存性が著しく損なわれる。上記共重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)が100000を超える場合、または数平均分子量(Mn)が15000を超える場合、または重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が40を超える場合、ワックス分散剤中に微分散されたワックスが定着溶融時に迅速に溶融トナー表面に移行できず、本発明のトナーの効果である良好な分離性が得られない。
また、スチレン系モノマーと、N含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アクリル酸エステルモノマー及びメタアクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを用いて合成された共重合体は、該トナー中にトナーの質量を基準として0.1乃至20質量%含有されていることが好ましい。
上記共重合体におけるトナーの質量を基準とした含有率が20質量%を超える場合、本発明のトナーの低温定着性が損なわれる場合がある。また、含有率が0.1質量%未満の場合、ワックスの分散効果が小さくなる場合がある。
スチレン系モノマーと、N含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アクリル酸エステルモノマー及びメタアクリル酸エステルモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーとを用いて合成された共重合体とのグラフト重合に用いられる該ポリオレフィンは、DSCによって測定される昇温時の吸熱曲線において、最大吸熱ピークが90乃至130℃にあることが良い。
ポリオレフィンの最大吸熱ピークの極大値が90℃未満、もしくは130℃を超える場合、いずれも上記共重合体とのグラフト共重合体における枝別れ構造が損なわれるためにワックスの微分散が行われず、トナー化した際におけるワックスの偏析が生じ、現像不良が発生しやすい。
本発明においてワックス分散剤中に含有される該ポリオレフィンのGPCによる分子量分布における重量平均分子量(Mw)は500乃至30000、数平均分子量(Mn)は500乃至3000であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.0乃至20であり、密度は0.90乃至0.95の低密度であることが好ましい。
該ポリオレフィンのGPCによる重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、または数平均分子量(Mn)が3000を越える場合、または重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が上記範囲外であると、ワックス分散剤中に微分散されたワックスが定着時にトナー表面に有効的に染み出してこないため、分離性向上の効果は得られにくい。また、該ポリオレフィンの密度が0.95を超える(低密度ではない)場合、上記共重合体とのグラフト共重合体における有効な枝別れ構造が損なわれるため、トナー化した際におけるワックスの偏析が生じ、現像不良が発生しやすい。
また、該ポリオレフィンは、該トナー中にトナーの質量を基準として0.1乃至2.0質量%含有されていることが好ましい。
該ポリオレフィンにおけるトナーの質量を基準とした含有率が2.0質量%を超える場合、これも上述の結果と同じく、上記共重合体における有効な枝別れ構造が損なわれるためにワックスの微分散が行われず、トナー化した際におけるワックスの偏析が生じ、現像不良が発生する。また、含有率が0.1質量%未満の場合、ワックスの分散効果が小さくなる場合がある。
本発明のトナーに用いる着色剤としては、公知の染料及び/または顔料が使用される。
マゼンタトナー用着色顔料しては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペルリン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
マゼンタトナー用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの塩基性染料が挙げられる。
シアントナー用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45または下記式(ロ)で示される構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74,83、93、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、180、181、185、191、C.I.バットイエロー1、3、20などである。また、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162などの染料も使用することができる。
本発明に用いることができる黒色着色剤としてカーボンブラック、酸化鉄粒子、上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが使用できる。
トナー中における着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して好ましくは0.1乃至20.0質量部、より好ましくは1.0乃至16.0質量部が、色再現性、現像性の点で好ましい。
また、本発明のトナーにおいては、樹脂Mに予め着色剤を混合し、マスターバッチ化させたものを用いている。そして、この着色剤マスターバッチとその他の原材料(結着樹脂及びワックス等)を溶融混練させることにより、トナー中に着色剤を良好に分散させることができる。
また、本発明のトナーの着色剤をマスターバッチ化する際の製造条件としては、後述するトナーの溶融混練工程を用いることができる。更には、本発明におけるマスターバッチは、着色剤全量に対して、2乃至25質量%の水分を含有していてもよい。好ましくは3乃至20質量%、より好ましくは5乃至18質量%である。このような含水マスターバッチ(含水MB)とすることで、トナー中で着色剤が均一に且つ細かく分散することが可能となる。この理由は、明確ではないが以下のように推定される。
第一に、結着樹脂と含水MBを含有するトナー原料混合物を溶融混練して第2の混練物を得る工程(第2の溶融混練工程)において、含水MB中に多くの水分が含まれている為、着色剤粒子間にある水の存在が着色剤粒子の凝集を防ぐ。さらに一部存在する着色剤粒子の凝集体に浸透した水分が、第2の混練混練工程における熱により膨張してその凝集体を崩し、良好な分散にする。
第二に、第2の溶融混練時にトナー原料混合物に強いシェアがかかり含水MBが自己発熱することにより、また必要に応じて外部からの加熱をすることにより、第2の混練物は高温になるが、水が蒸発する際に気化熱として熱を奪う為、着色剤粒子同士の熱による強固な付着・凝集を防ぐことが出来る。
第三に、第2の溶融混練時に水蒸気が発生して第2の混練物が膨張して、混練機内の圧力を上昇させることにより強いシェアがかかり、より強い剪断力が発生し、第2の混練物に含まれる、着色剤粒子を含む全ての成分の分散に非常に効果的である。
本発明に使用できる含水MBの含水率が25質量%を超える場合、水分が多すぎるため、含水MBの付着力が強すぎて、ヘンシェルミキサー等の製造装置への融着や、流動性の低下によりトナー原料混合物中で大きな凝集物が発生することがあり好ましくない。また、含水率が2質量%未満の場合、先に述べた効果が期待できないことに加え、マスターバッチ中に残った微量の水分を取り除く、常圧または減圧下での加熱・乾燥工程において、分散していた着色剤粒子同士が強固な凝集を起こす。このため、その後のトナー製造の混練工程においても再び良好に着色剤を分散させることは困難であり好ましくない。
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるため、結着樹脂と混練時架橋させるために公知の荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、荷電制御剤の種類や他のトナー粒子構成材料の物性等によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1乃至10質量部含まれることが好ましく、0.1乃至5質量部含まれることがより好ましい。このような荷電制御剤としては、トナーを負帯電性に制御するものと、正帯電性に制御するもの、あるいは結着樹脂と混練時架橋するものとが知られており、トナーの種類や用途に応じて種々のものを一種または二種以上用いることができる。
負帯電性荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ダイカルボン酸金属化合物、スルホン酸またはカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が利用できる。正帯電性荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が利用できる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。
特に、本発明のトナーに用いることができる荷電制御剤としては、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して維持でき、結着樹脂と混練時架橋させることのできる芳香族カルボン酸金属化合物が好ましい。
本発明のトナーは、粉砕・分級後、または表面改質後、無機微粒子をヘンシェルミキサーの如き混合機で混合させることにより、トナーの流動性を調整して用いることが好ましい。
本発明のトナーに使用できる無機微粉体としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、それらのシラン化合物、及び有機ケイ素化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ等がある。その中でも、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末等が特に好ましく用いられる。
湿式製法シリカとしては、特にアルコキシシランを水が存在する有機溶媒中において、触媒により加水分解、縮合反応させて得られるシリカゾル懸濁液から、溶媒除去、乾燥して、粒子化する、ゾルゲル法により製造されるシリカ粒子がある。ゾルゲル法により製造されるシリカ粒子は、得られる粒子の粒度分布がシャープであり、且つ球状の粒子が得られるとともに、反応時間を変えることにより所望の粒度分布を有する粒子が得られるので好ましい。
また、乾式製法シリカとしては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカまたはヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウムまたは塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
また、酸化チタン微粉体であれば、硫酸法、塩素法、揮発性チタン化合物例えばチタンアルコキシド、チタンハライド、チタンアセチルアセトネートの低温酸化(熱分解,加水分解)により得られる酸化チタン微粒子が用いられる。結晶系としてはアナターゼ型、ルチル型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いることができる。
そしてアルミナ微粉体であれば、バイヤー法、改良バイヤー法、エチレンクロルヒドリン法、水中火花放電法、有機アルミニウム加水分解法、アルミニウムミョウバン熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩熱分解法、塩化アルミニウムの火焔分解法により得られるアルミナ微粉体が用いられる。結晶系としてはα,β,γ,δ,ξ,η,θ,κ,χ,ρ型、これらの混晶型、アモルファスのいずれのものも用いられ、α,δ,γ,θ,混晶型,アモルファスのものが好ましく用いられる。
上記無機微粉体の疎水化方法としては、無機微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的、または物理的に処理することによって付与される。
好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位のSiにそれぞれ水酸基を一つずつ有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
本発明の目的を達成するために、前述した湿式法シリカや乾式法シリカを、またはアミノ基を有するカップリング剤或いは、シリコーンオイルで処理したシリカを必要に応じて、流動化剤の無機微粒子として用いてもかまわない。また、その添加量は、トナー100質量部に対して流動化剤0.01乃至8.00質量部、好ましくは0.1乃至4.0質量部使用するのが良い。
次に、本発明のトナーを製造する手順について説明する。
<トナー製造方法>
本発明のトナーは、樹脂L、樹脂H、着色剤マスターバッチ、及び任意の材料を溶融混練し、これを冷却して粉砕し、必要に応じて粉砕物の球形化処理や分級処理を行い、これに必要に応じて前記流動化剤を混ぜることによって製造することが好ましい。
まず、着色剤マスターバッチの作製方法としては、樹脂と顔料を混合し、加圧ニーダ,バンバリミキサ,2本ロール混練機,3本ロール混練機などの機械式混練機で一定時間以上混練するのが一般的であり、場合によっては金属石鹸などの分散性向上剤を添加することもある。また、顔料製造直後のウェットケーキと樹脂を混合し、熱混練しながら水分を蒸発させるフラッシング法も採用されている。
原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも樹脂L、樹脂H、着色剤マスターバッチを所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、Q型ミキサー、ナウターミキサー等がある。
更に、上記の配合で混合したトナー原料を溶融混練して、結着樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。また、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、池貝製作所製PCM型2軸押出機、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
本発明のトナーを溶融混練する際の混練温度としては、90℃以上150℃以下が好ましい。ここで、混練温度とは、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物の押出機から押出される際の温度を意味する。混練温度が90℃未満の場合は、トナー中の原料の分散不良が生じやすく、混練温度が150℃を超える場合は、トナー中の原料、特に樹脂が柔らかくなりすぎて溶融混練時のシェアがかかりにくくなるため分散が悪化する傾向である。
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、公知の風力式粉砕機や機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。更に、得られた微粉砕品を表面改質工程で表面改質、すなわち、球形化処理を行い、表面改質粒子を得てもよい。その後、必要に応じて表面改質粒子を慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)等の分級機或いは、風力式篩のハイボルター(新東京機械社製)等の篩分機を用いて分級する。これにより、重量平均粒子径3乃至11μmのトナーを得る。尚、分級工程で分級されて発生したトナー粗粉は、再度粉砕工程に戻して粉砕する。また表面改質工程で発生した微粉は、トナー原料の配合工程に戻して再利用することがトナー生産性上好ましい。
更に、本発明のトナーの製造方法においては、上記のようにして得られたトナーに、流動性を付与するための無機微粒子を外添剤として外添することが好ましい。トナーに外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Q型ミキサー等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合することが好ましい。この際、外添機内部で発熱を生じ、凝集物を生成し易くなるので、外添機の容器部周囲を水で冷却する等の手段で温度調整をする方が好ましい。
また本発明は、該トナーは、画像処理解像度512×512画素(1画素あたり0.37μm×0.37μm)のフロー式粒子像測定装置によって計測された円形度を、0.200以上1.000以下の円形度範囲に800分割し解析された平均円形度が、0.945以上0.990以下であることが好ましい。
トナーの平均円形度がこの範囲にあることで、上述した良好な定着性と現像性向上を促進することができる。トナーの平均円形度が0.945未満の場合は、トナーの摩擦帯電が不均一となり易いため現像性が不十分となってしまいやすく、転写効率も不十分となってしまいやすい。トナーの平均円形度が0.990を超える場合は、トナーの摩擦帯電が均一となって現像性や転写効率は良好となるが、トナーの流動性が高くなりすぎてしまい転写時の飛び散り等が発生し画像不良の原因となってしまう場合がある。
以下に本発明のトナーとして好適な平均円形度を得るために、製造方法として用いることができる、好ましい粉砕工程、表面改質工程について説明する。
本発明のトナーに好ましく用いられる粉砕工程は、機械式粉砕機が好ましく用いられる。図1は、本発明に使用する機械式粉砕機を組込んだトナー粒子の粉砕装置システムの一例である。
図1に示す機械式粉砕機301では、ケーシング313、ケーシング313内にあって冷却水を通水できるジャケット316、ケーシング313内にあって中心回転軸312に取り付けられた回転体からなる高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314、回転子314の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられている固定子310、更に、被処理原料を導入するための原料投入口311、処理後の粉体を排出するための原料排出口302とから構成されている。回転子314と固定子310との間隔部分が粉砕ゾーンである。
以上のように構成してなる機械式粉砕機では、図1に示した定量供給機315から機械式粉砕機の原料投入口311へ所定量の粉体原料が投入されると、粒子は、粉砕処理室内に導入される。該粉砕処理室内で高速回転する表面に多数の溝が設けられている回転子314と、表面に多数の溝が設けられている固定子310との間の発生する衝撃と、この背後に生じる多数の超高速渦流、並びにこれによって発生する高周波の圧力振動によって瞬間的に粉砕される。その後、原料排出口302を通り、排出される。トナー粒子を搬送しているエアー(空気)は粉砕処理室を経由し、原料排出口302、パイプ219、補集サイクロン229、バグフィルター222、及び吸引ブロワー224を通って装置システムの系外に排出される。この様にして、粉体原料の粉砕が行われるため、微粉及び粗粉を増やすことなく所望の粉砕処理を容易に行うことができるので好ましい。また、これら機械式粉砕機は粉砕工程で用いられるが、表面改質工程に用いても良い。
このような機械式粉砕機としては、例えば、川崎重工業(株)製粉砕機クリプトロン、ターボ工業(株)製ターボミル、ホソカワミクロン(株)製イノマイザ、日清エンジニアリング(株)製スーパーローター等を挙げることができる。
また、本発明においては、分級及び表面改質処理を同時に行うことができる、図2に示した表面改質装置が好ましく用いられる。
図2に示す回分式表面改質装置は、円筒形状の本体ケーシング30;本体ケーシングの上部に開閉可能なよう設置された天板43;微粉排出ケーシングと微粉排出管とを有する微粉排出部44;冷却水或いは不凍液を通水できる冷却ジャケット31を有している。さらに、表面改質手段としての、本体ケーシング30内にあって中心回転軸に取り付けられた、上面に角型のディスク33を複数個有し、所定方向に高速に回転する円盤状の回転体である分散ローター32;分散ローター32の周囲に一定間隔を保持して固定配置された、分散ローター32に対向する表面に多数の溝が設けられているライナー34;微粉砕物中の所定粒径以下の微粉及び超微粉を連続的に除去するための分級ローター35を有している。また、本体ケーシング30内に冷風を導入するための冷風導入口46;微粉砕物(原料)を導入するために本体ケーシング30の側面に形成された原料投入口37及び原料供給口39を有する投入管;表面改質処理後のトナー粒子を本体ケーシング30外に排出するための製品排出口40及び製品抜取口42を有する製品排出管;表面改質時間を自在に調整できるように、原料投入口37と原料供給口39との間に設置された開閉可能な原料供給弁38;及び製品排出口40と製品抜取口42との間に設置された製品排出弁41を有している。
ライナー34の表面は、溝を有していることが、トナー粒子の表面改質を効率的におこなう上で好ましい。角型のディスク33の個数は回転バランスを考慮して、偶数個が好ましい。分級ローター35は、分散ローター32の回転方向と同方向に回転するのが、分級の効率を高め、トナー粒子の表面改質の効率を高める上で好ましい。微粉排出管は、分級ローター35により除去された微粉及び超微粉を装置外に排出するための微粉排出口45を有している。
該表面改質装置は、天板43に対して垂直な軸を有する案内手段としての円筒状のガイドリング36を本体ケーシング30内に有している。該ガイドリング36は、その上端が天板から所定距離離間して設けられており、分級ローター36の少なくとも一部を覆うようにガイドリングは、支持体により本体ケーシング30に固定されている。ガイドリング36の下端は、分散ローター32の角形ディスク33から所定距離離間して設けられる。
該表面改質装置内において、分級ローター35と分散ローター32との間の空間が、ガイドリング36の外側の第一の空間47と、ガイドリング36の内側の第二の空間48とにガイドリング36によって二分される。第一の空間47は微粉砕物及び表面改質処理された粒子を分級ローター35へ導くための空間であり、第二の空間は微粉砕物及び表面改質処理された粒子を分散ローターへ導くための空間である。分散ローター32上に複数個設置された角型のディスク33と、ライナー34との間隙部分が表面改質ゾーン49であり、該分級ローター35及び該分級ローター35の周辺部分が分級ゾーン50である。
原料ホッパー380に導入された微粉砕物は、定量供給機315を経由して、投入管の原料投入口37から原料供給弁38を通って原料供給口39より装置内に供給される。表面改質装置には、冷風発生手段319で発生させた冷風を冷風導入口46から本体ケーシング内に供給し、さらに、冷水発生手段320からの冷水を冷水ジャケット31に供給し、本体ケーシング内の温度を所定温度に調整する。供給された微粉砕物は、ブロアー364による吸引風量、分散ローター32の回転及び分級ローター35の回転により形成される旋回流により、円筒状のガイドリング36の外側の第一の空間47を旋回しながら分級ローター35近傍の分級ゾーン50に到達して分級処理が行われる。本体ケーシング30内に形成される旋回流の向きは、分散ローター32及び分級ローター35の回転方向と同じである。
分級ローター35によって除去されるべき微粉及び超微粉は、ブロワー364の吸引力より分級ローター35のスリットより吸引され微粉排出管の微粉排出口45及びサイクロン入口359を経由してサイクロン369及びバグ362に捕集される。微粉及び超微粉を除去された微粉砕物は第二の空間48を経由して分散ローター32近傍の表面改質ゾーン49に至り、分散ローター32に具備される角型ディスク33(ハンマー)と本体ケーシング30に具備されたライナー34によって粒子の表面改質処理が行われる。表面改質が行われた粒子はガイドリング36に沿って旋回しながら再び分級ローター35近傍に到達し、分級ローター35の分級により表面改質された粒子からの微粉及び超微粉の除去がおこなわれる。所定の時間処理を行った後、排出弁41を開き、表面改質装置から所定粒径以下の微粉及び超微粉が除かれた表面改質されたトナー粒子を取り出す。
所定の重量平均径に調整され、所定の粒度分布に調整され、さらに所定の円形度に表面改質されたトナー粒子は、トナー粒子の輸送手段321により外添剤の外添工程に移送される。
本発明に用いることができる表面改質装置は、鉛直方向下側より分散ローター32、微粉砕物(原料)の投入部39、分級ローター35及び微粉排出部を有している。従って、通常、分級ローター35の駆動部分(モーター等)は分級ローター35の更に上方に設けられ、分散ローター32の駆動部分は分散ローター32の更に下方に設ける。本発明で用いる表面改質装置は、例えば特開2001―259451号公報に記載されている分級ローター35のみを有するTSP分級機(ホソカワミクロン社製)の様に、微粉砕物(原料)を分級ローター35の鉛直上方向より供給することは困難である。
本発明において、分級ローター35の最も径の大きい箇所の先端周速は30乃至120m/secであることが好ましい。分級ローターの先端周速は50乃至115m/secであることがより好ましく、70乃至110m/secであることが更に好ましい。30m/secより遅い場合は、分級収率が低下しやすく、トナー粒子中に超微粉が増加する傾向にあり好ましくない。120m/secより速い場合は、装置の振動の増加の問題が生じやすい。
更に、分散ローター32の最も径の大きい箇所の先端周速は20乃至150m/secであることが好ましい。分散ローター32の先端周速は40乃至140m/secであることがより好ましく、50乃至130m/secであることが更に好ましい。20m/secより遅い場合は、十分な円形度を有する表面改質粒子を得ることが困難であり好ましくない。150m/secより速い場合は、装置内部の昇温による装置内部での粒子の固着が生じやすく、トナー粒子の分級収率の低下が生じやすく好ましくない。分級ローター35及び分散ローター32の先端周速を上記範囲とすることにより、トナー粒子の分級収率を向上させ、効率良く粒子の表面改質をおこなうことができる。
次に、本発明のトナーが適応可能な画像形成方法について詳しく説明する。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法を用いた画像形成装置の一例を図3に示す。図3において、静電潜像担持体である電子写真感光体1は図中矢印方向に回転する。感光体1は帯電手段である帯電装置2により帯電され、帯電した感光体1表面には、静電潜像形成手段である露光装置3によりレーザー光Lを投射し、静電潜像を形成する。その後、現像手段である現像装置4により静電潜像はトナー像として可視像化され、転写手段である転写装置5により転写材Pに転写され、転写材Pは、定着手段である定着装置6により加熱定着され、画像として出力される。この転写手段において、転写されずに感光体表面に残った転写残トナーは、図4に示したようなクリーニング手段であるクリーニング装置7で回収したり、図5に示したような均し手段である補助ブラシ帯電装置8でバイアスを印加しながら転写残トナーに静電的な極性を与え、前述の帯電手段、静電潜像形成手段を経て、再度現像に供されるかもしくは現像装置に回収されてもよい。
ここで、本発明に使用できる画像形成方法の各工程に関して、更に詳しく説明する。
<帯電工程>
帯電工程は、感光体の表面に電荷を付与して電子写真感光体を帯電させる手段であれば特に限定されない。帯電手段には、コロナ帯電手段のように、電子写真感光体に対して非接触で電子写真感光体を帯電させる装置や、導電性のローラやブレードを電子写真感光体に接触させて電子写真感光体を帯電させる装置が使用可能である。
<静電潜像形成工程>
静電潜像形成工程は、露光手段として公知の露光装置が使用できる。例えば、光源は半導体レーザまたは発光ダイオードが用いられ、ポリゴンミラー、レンズ、ミラーから成る走査光学系ユニットを用いることができる。
静電潜像を形成できる領域には、主走査方向の領域と副走査方向の領域がある。感光体上における主走査方向の領域は、感光体の回転軸に平行な方向におけるレーザビーム照射開始可能位置からレーザビーム照射終了位置までの領域である。また、感光体表面上における副走査方向の領域は、画像データ1ページ分における最初の主走査ラインの照射可能位置から最終の主走査ラインの照射可能位置までの領域である。この領域に、光源である半導体レーザからレーザビームを回転するポリゴンミラーに照射する。そして、周期的に偏向して反射されるレーザビームを走査レンズによって集束させて、副走査方向に回転する感光体上を副走査方向と直交する主走査方向に反復走査することで、感光体上に静電潜像の露光を行う。
このように、静電潜像工程で感光体上に形成された静電潜像は、現像工程で現像剤によってトナー像として可視像化されることになる。
<現像工程>
現像工程は、主としてキャリアが不要な一成分系接触現像方法とトナーとキャリアを有する二成分系現像方法に分けられるが、いずれも使用可能である。本発明においては、縁無しコピーのニーズである高画質の観点から、二成分系現像方法を例にとって説明していく。
二成分系現像方法としては、磁石を内包した現像剤担持体(現像スリーブ)上に非磁性トナーと磁性キャリアを有する二成分系現像剤の磁気ブラシを形成し、該磁気ブラシを現像剤層厚規制部材により所定の層厚にコートする。その後、感光体に対向する現像領域へと搬送し、該現像領域においては、感光体と現像スリーブの間に所定の現像バイアスを印加しながら、該磁気ブラシを感光体表面に近接/または接触させることによって、上記静電潜像をトナー像として顕像化する方法である。
このような二成分系現像剤に使用できる磁性キャリアとしては、鉄粉キャリア、フェライトキャリア、あるいは磁性微粒子をバインダー樹脂中に分散した磁性微粒子分散型樹脂キャリア等が挙げられる。鉄粉キャリアにおいては、キャリア自身の比抵抗が低いために、静電潜像の電荷がキャリアを通してリークしてしまい、静電潜像を乱すことから画像欠陥を生じてしまう場合がある。また、フェライトキャリアにおいては、キャリア自身の比抵抗は比較的高いものの、大きな飽和磁化を有しているために磁気ブラシが剛直となりやすく、トナー画像に磁気ブラシのはき目ムラを生じてしまう場合がある。そのため、磁性キャリアとしては真比重が2.5g/cm3以上5.2g/cm3以下の低比重なキャリアが好ましい。例えば、磁性微粒子をバインダー樹脂中に分散した磁性微粒子分散型樹脂キャリアが好適に用いられる。磁性微粒子分散型樹脂キャリアは、フェライトキャリアよりも比抵抗が比較的に高く、且つ飽和磁化も小さく、真比重も小さくなることから、静電潜像の電荷リークを防止するとともに、磁気ブラシも剛直になることがない。それ故、画像欠陥やはき目ムラのない良好なトナー画像を形成することができるという点で好ましい。
また、磁性微粒子分散型樹脂キャリア表面には樹脂被覆層を有してもよい。樹脂被覆層を構成する材料としては、少なくとも結着樹脂を有していればよいが、抵抗調整剤としての導電性微粒子や凹凸を形成するための微粒子、トナーへの帯電付与性を有する帯電制御材等の添加剤を含有してもよい。更には、キャリア表面と樹脂被覆層との密着性を高めるために、カップリング剤等で処理されていてもよい。
<転写工程>
転写工程は、コロナ転写手段のように、感光体に対して非接触で感光体表面のトナー像を転写材に転写させる方法や、ローラや無端状ベルトの転写部材を感光体に接触させて感光体表面のトナー像を転写材に転写させる方法があり、いずれも使用可能である。
<クリーニング工程>
本発明の画像形成方法においては、図4に示したように、転写後で帯電工程の前に感光体上の転写残トナーをクリーニングするクリーニング工程7を更に含んでもよい。クリーニング工程7においては、ブレードクリーニング、ファーブラシクリーニング、ローラクリーニング等の公知の方法があるが、いずれも使用可能である。
<均し工程>
本発明の画像形成方法においては、図5に示したように、転写後で帯電工程の前に感光体上の転写残トナーを均し、現像時の転写残トナーの回収率を向上させるために、転写残トナーの帯電極性の均一化を目的として、バイアス印加手段を有する均し工程8を更に含んでもよい。
均し工程8においては、トナーが負帯電性の場合は、転写残トナーを負帯電させるバイアスを印加させることにより、帯電工程での帯電部材への転写残トナーの付着が軽減できるため好ましい。これにより、現像時における転写残トナーの回収率が向上する。また、均し部材としては、ブラシ状のものが好ましく用いられる。更にこのような均し部材は、複数個設けることにより、帯電部材のへの転写残トナーの付着の軽減や、現像時における転写残トナーの回収率が高まるため好ましい。
<定着工程>
定着工程は、従来の一対のローラからなるハードローラ系の定着装置や、図6に示したようなに示した近年の画像形成装置の高速化や省エネ化に対応した軽圧定着システムを用いたベルト定着装置など、いずれの定着装置も使用可能である。本発明においては、画像形成装置の高速化や省エネ化、記録材の多様化の観点から、ベルト定着を例にとって説明していく。
ベルト定着等の軽圧定着システムは、熱容量が小さいことから、定着設定温度(温調温度)への到達時間を短縮でき、クイックスタートに優れる。また、従来のハードローラ系のような肉厚の金属部品や複数のヒータ類を使用しないことから、定着器自体を小型化・軽量化できるという利点を有する。
またベルト定着は、ニップを形成する少なくとも一方の部材が無端状ベルトであることから、幅広の定着ニップ幅(ワイドニップ)を容易に形成できるので、記録材の加熱時間を多くすることができ、高速定着に有利であるといえる。また高グロス、高彩度といった面でも有利であるといえる。これに対し、従来のハードローラ系は、ニップを幅広く形成するためには、弾性層を厚くする必要があるため、熱容量が大きくなり省エネの観点から不利であるといえる。そのため、弾性層を厚くすること無く、ワイドニップを容易に形成できるベルト定着は、熱容量も小さく、高速化及び省エネ化を両立できる定着方式として、本発明において好ましく用いられる。
一方で、上記したベルト定着においては、ワイドニップを形成できる反面、連続複写による定着温度低下が生じやすく、ニップ部における定着温度分布も不均一となりやすい。また、ニップ部における定着圧分布も付近一となりやすい。ベルト定着において加圧力を大きくすると、ベルトを駆動する回転体に対してベルトがスリップしたり、ベルトを張架しているローラの左右にベルトが寄り移動したりするため、加圧力を小さくしなければならない。このように、ベルトにおける「加圧力」に関しては、ハードローラ系に比べて軽圧となってしまう傾向がある。
しかし、本発明のトナーを用いることで、このような近年の高速化、省エネ化に優れた軽圧定着システムの上記した懸念点は解決されるものである。
<フルカラー画像形成装置>
本発明の画像形成方法を用いたフルカラー画像形成装置の一例を図7に示す。図中のPK、PY、PC、PMの並びや回転方向を示す矢印は何らこれに限定されるものではない。図7において、静電潜像担持体である電子写真感光体1K、1Y、1C、1Mは図中矢印方向に回転する。各感光体は帯電手段である帯電装置2K、2Y、2C、2Mにより帯電され、帯電した各感光体表面には、静電潜像形成手段である露光装置3K、3Y、3C、3Mによりレーザー光Lを投射し、静電潜像を形成する。その後、現像手段である現像装置10K、10Y、10C、10Mにより静電潜像はトナー像として可視像化され、転写手段である転写装置19K、19Y、19C、19Mにより転写材Pに転写され、転写材Pは、定着手段である定着装置12により加熱定着され、画像として出力される。ここで、17K、17Y、17C、17Mは現像剤担持体であり、13は転写ベルト、14及び15は転写ベルトの駆動部材を示す。
以下に、本発明に関わる測定方法について詳細に述べる。
<樹脂のSEC−MALLS測定>
本発明の磁性トナーの慣性半径Rwと絶対分子量Mwは次の条件で測定される。
トナー0.03gをテトラヒドロフラン(THF)10mlに分散し溶解後、135℃24時間振とうし、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いている。
〔分析条件〕
分離カラム:Shodex (TSK GMHHR−H HT20) ×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:THF
移動相流速:1.0ml/min
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器1 :多角度光散乱検出器 Wyatt DAWN EOS
検出器2 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
〔測定理論〕
(LS)=(dn/dc)2×C×Mw×KLS
(LS);検出器の測定電圧値 (v)
(dn/dc);試料1gあたりの屈折率の増分(ml/g)
C ;濃度(g/ml)
KLS ;測定電圧と散乱強度(還元レイリー比)の係数(装置定数)
(dm/dc)はポリスチレンの文献値から0.068ml/gとした。
SEC−MALLSでは、SECカラムの分子篩により分子サイズで分離され、Mw(重量平均分子量)とC(濃度)が刻々変化し溶出されてくるため別途濃度検出器をMALLSと組み合わせ測定する必要がある。その信号強度を濃度Cに換算し、分子量Mwを求める。本発明では、濃度検出器として示差屈折率検出器(RI)を使用し、RI検出器の信号強度(RI)を濃度Cに換算し用いる。
(RI)=(dn/dc)×C×KRI
KRI;測定電圧と屈折率の係数 (RI定数 ポリスチレン標準にて校正)
分子サイズ(慣性半径)RwはDebye Plotにより算出した。
<各材料のGPCによる分子量分布測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。本願では、測定にHLC−8120GPC(東ソー社製)を用いた。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05乃至0.6質量%に調整した結着樹脂のTHF試料溶液を約50乃至200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、103乃至2×106の分子量領域を的確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組み合わせや、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組み合わせを挙げることができる。
<結着樹脂のフローテスタによる流出開始温度Tfb及び軟化点(1/2法温度T1/2)測定>
JIS K 7210に基づき、高架式フローテスタにより測定を行う。具体的な測定方法を以下に示す。
高架式フローテスタ(島津製作所製)を用いて、樹脂約1.1gを加圧成形器によりペレット化した試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより20kgf(196N)の荷重を与え、直径1mm,長さ1mmのノズルを押し出すようにする。これにより、プランジャー降下量(流れ値)−温度曲線を描き、試料の流出開始点をTfb(℃)とし、そのS字曲線の高さ(全流出量)をhとするとき、h/2に対応する温度(樹脂の半分が流出した温度)を樹脂のT1/2(℃)(軟化点Tm(℃))とする。
<ソックスレー抽出による結着樹脂のTHF不溶分測定>
樹脂1.0gを秤量(W1g)し、円筒ろ紙(例えばNo.86Rサイズ28×100mm、東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてTHF200mlを用いて、16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約4分乃至5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を秤量する(W2g)。
樹脂のTHF不溶分は、下記式より求められる。
THF不溶分=W2/W1×100(%)
<結着樹脂の酸価の測定>
本発明において、結着樹脂の酸価(JIS酸価)は、以下の方法により求める。
尚、樹脂の酸価は、原材料のTHF可溶分の酸価を意味する。
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
1)試料は予め樹脂のTHF不溶分を除去して使用する。試料の粉砕品0.5乃至2.0gを精秤し、可溶分の質量をW(g)とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いて自動滴定が利用できる。)
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。また、同時に試料を用いないブランク試験を行い、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。FはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
<結着樹脂のTgの測定>
結着樹脂のTgは、示差走査熱量分析測定装置(DSC測定装置)、DSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定することができる。
温度曲線:昇温I (20℃乃至200℃、昇温速度10℃/min)
降温I (200℃乃至20℃、降温速度10℃/min)
昇温II(20℃乃至200℃、昇温速度10℃/min)
測定方法としては、5乃至20mg、好ましくは10mgの測定試料を精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。結着樹脂のTgは、昇温IIの過程で、ベースラインからの変位領域の中点となる温度を結着樹脂のTgとする。
<トナーの粒度分布測定>
測定装置としては、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いる。電解液は、約1%NaCl水溶液を用いる。電解液には、1級塩化ナトリウムを用いて調製された電解液や、例えば、ISOTON(登録商標)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定方法としては、前記電解水溶液100乃至150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン塩酸)を、0.1乃至5mlを加え、さらに測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1乃至3分間分散処理し、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、前記測定装置により、試料の体積及び個数を各チャンネルごとに測定して、試料の体積分布と個数分布とを算出する。得られたこれらの分布から、試料の重量平均粒径(D4)を求める。チャンネルとしては、2.00乃至2.52μm;2.52乃至3.17μm;3.17乃至4.00μm;4.00乃至5.04μm;5.04乃至6.35μm;6.35乃至8.00μm;8.00乃至10.08μm;10.08乃至12.70μm;12.70乃至16.00μm;16.00乃至20.20μm;20.20乃至25.40μm;25.40乃至32.00μm;32乃至40.30μmの13チャンネルを用いる。
<トナーの平均円形度測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定される。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円形当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
C=2×√(π×S)/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.2乃至1.0の範囲を800分割し、測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行う。また、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」の校正作業時の測定・解析条件を、次表に示した。
本発明における具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1乃至5ml加えた後、測定試料20mgを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm以上200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDukeScientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm以上200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
以下、具体的製造例及び実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<樹脂L−1の製造例>
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物: 30.0mol%
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物: 22.0mol%
テレフタル酸: 25.0mol%
アジピン酸: 4.0mol%
フマル酸: 15.0mol%
アクリル酸: 4.0mol%
上記ポリエステルモノマーを4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて170℃で攪拌する。そこに、ビニル系重合モノマー(スチレン:93.0mol%と2エチルヘキシルアクリレート:5.0mol%)と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)2.0mol%を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、170℃で5時間反応した後、240℃に昇温してジブチル錫オキシド(DBO)を0.3質量%添加し、5時間縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して樹脂L−1を得た。なお、表2に樹脂L−1のポリエステル部、スチレンアクリル部、樹脂の重合法による製造時の条件を示した。樹脂L−1の物性を表3に示す。
<樹脂L−2乃至L−5の製造例>
表2に記載のモノマー用い、記載の製造条件で樹脂L−1の製造例と同様に、樹脂L−2乃至L−5を得た。これらの諸物性については表3に示した通りである。
<樹脂M−1の製造例>
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物: 23.0mol%
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物: 33.0mol%
テレフタル酸: 38.0mol%
無水トリメリット酸: 4.0mol%
イソフタル酸: 2.0mol%
上記ポリエステルモノマーを4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて170℃で攪拌する。そこに、ビニル系重合モノマー(スチレン:95.0mol%と2エチルヘキシルアクリレート:4.0mol%)と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.0mol%を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、170℃で6時間反応した後、230℃に昇温してジブチル錫オキシド(DBO)を0.2質量%添加し、6時間縮重合反応を行った。さらに240℃に温度を上昇させ、無水トリメリット酸0.5mol%を添加し、さらに1.5時間縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して樹脂M−1を得た。なお、表4に樹脂M−1のポリエステル部、スチレンアクリル部、樹脂の重合法による製造時の条件を示した。樹脂M−1の物性を表5に示す。
上記のような製法にするのは、本発明の特徴である分岐型低分子ポリマーを得る上で最良の形態であるためである。
まずビニル系重合体モノマーや不飽和ポリエステル樹脂を付加重合反応させるのは、Rw(M)/Mw(M)をコントロールする上で必要な低分子量の主鎖を得るためである。この主鎖の分子量をコントロールすることで所望のRw(M)/Mw(M)が得られやすくなる。
次にポリエステルユニットの原料モノマーを2段階に分け、縮重合反応させる。第一ステップでは主鎖のポリマーに側鎖のモノマーを重合させ、分岐度の低い分岐ポリマーを作製する。第二ステップではより高温で縮重合反応を行うことで、さらに分岐度を上げた均一な分岐ポリマーを作製する。このように2段階に分け縮重合を行うことでより均一でかつ分岐度を上げた低分子ポリマーが得られるのである。
<樹脂M−2乃至M−15の製造例>
表4に記載のモノマー用い、記載の製造条件で樹脂M−1の製造例と同様に、樹脂M−2乃至M−15を得た。これらの諸物性については表5に示した通りである。
<樹脂H−1の製造例>
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物: 47.0mol%
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物: 15.0mol%
テレフタル酸: 25.0mol%
無水トリメリット酸: 10.0mol%
イソフタル酸: 3.0mol%
上記ポリエステルモノマーを4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて170℃で攪拌する。そこに、ビニル系重合モノマー(スチレン:95.0mol%と2エチルヘキシルアクリレート:4.0mol%)と重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO)1.0mol%を混合したものを滴下ロートから4時間かけて滴下した。その後、170℃で5時間反応した後、250℃に昇温してジブチル錫オキシド(DBO)を0.4質量%添加し、9時間縮重合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して樹脂H−1を得た。なお、表6に樹脂H−1のポリエステル部、スチレンアクリル部、樹脂の重合法による製造時の条件を示した。樹脂H−1の物性を表7に示す。
<樹脂H−2乃至H−12の製造例>
表6に記載のモノマー用い、記載の製造条件で樹脂H−1の製造例と同様に、樹脂H−2乃至H−12を得た。これらの諸物性については表7に示した通りである。
<着色剤マスターバッチの製造例1>
下記に示す材料及び製法を用いてマスターバッチ(P−1)を作製した。
樹脂(M−1) 70.0質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 50.0質量部
上記の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、温度130℃に設定した二軸式押出機(PCM−30型、池貝製作所製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、マスターバッチ(P−1)を得た。
<マスターバッチP−2乃至P−15の製造例>
表8に記載の樹脂と顔料を用い、着色剤マスターバッチの製造例1と同様の条件で、樹脂H−2乃至H−12を得た。
<トナーT−1の製造例>
下記に示す材料及び製法を用いてトナー(T−1)を作製した。
樹脂L−1 60.0質量部
樹脂H−1 40.0質量部
着色剤マスターバッチP−1 20.0質量部
ノルマルパラフィンワックス(融点78℃) 4.0質量部
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.7質量部
上記の材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、温度130℃に設定した二軸式押出機(PCM−30型、池貝製作所製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー粗砕物を得た。得られたトナー粗砕物を、図1に示したような機械式粉砕機を用いて微粉砕した。粉砕条件としては、回転子の回転数を120s-1として粉砕処理した。
次に、得られた微粉砕物を図2に示したような表面改質処理装置を用い、分級ローター回転数120s-1で微粒子を除去しながら、分散ローター回転数100s-1(回転周速を130m/sec)で50秒間表面処理を行ってトナー分級品を得た。
そして得られたトナー分級品100質量部に、BET比表面積90m2/gのアナターゼ型の酸化チタンを0.5質量部、BET比表面積180m2/gの疎水性シリカ1.5質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で回転数30s-1、8分間混合して、トナー(T−1)を得た。得られたトナー(T−1)の処方と物性を表9に示す。
<トナーT−2乃至T−25の製造例>
表9に記載のトナー処方で、トナー(T−1)の製造例と同様の条件で、トナー(T−2)乃至(T−25)を得た。また、トナーの物性も表9に示す。
<トナーT−26の製造例>
下記に示す材料及び製法を用いてトナー(T−26)を作製した。
樹脂L−2 50.0質量部
樹脂M−10 14.0質量部
樹脂H−9 50.0質量部
C.I.ピグメントブルー15:3 6.0質量部
ノルマルパラフィンワックス(融点78℃) 4.0質量部
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.9質量部
上記の材料をトナー(T−1)の製造例と同様の条件で、トナー(T−26)を得た。得られたトナー(T−26)の処方と物性を表9に示す。
<トナーT−27の製造例>
下記に示す材料及び製法を用いてトナー(T−27)を作製した。
樹脂M−10 75.0質量部
樹脂H−9 25.0質量部
着色剤マスターバッチP−10 20.0質量部
ノルマルパラフィンワックス(融点78℃) 4.0質量部
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.9質量部
上記の材料をトナー(T−1)の製造例と同様の条件で、トナー(T−27)を得た。得られたトナー(T−27)の処方と物性を表9に示す。
<コートキャリアの製造例>
下記に示す材料を用いて磁性微粒子分散型コアを作製した。
・フェノール 10.0質量部
・ホルムアルデヒド溶液(37質量%水溶液) 4.0質量部
・マグネタイト粒子(個数平均粒径D1=0.28μm、磁化の強さ75Am2/kg、
比抵抗5.5×105Ω・cm) 86.0質量部
上記材料と、28質量%アンモニア水5.0質量部、水10.0質量部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で90℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5hPa以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性微粒子が分散された状態の磁性微粒子分散型コアを得た。
続いて、一方の末端にエチレン性不飽和基を有する重量平均分子量4,500のメチルメタクリレートマクロマー5.0質量部、メチルメタクリレート50.0質量部、シクロヘキシルメタクリレート50.0質量部を、還流冷却器、温度計、窒素吸い込み管及びすり合わせ方式撹拌装置を配した4ツ口フラスコに添加し、更にトルエン100.0質量部、メチルエチルケトン100.0質量部、アゾビスイソバレロニトリル2.5質量部を加え、窒素気流下80℃で10時間保ち、コート材用樹脂溶液(固形分35質量%)を得た。
得られたコート材用樹脂溶液30.0質量部に対して、シリコーン粒子(個数平均粒径0.2μm)1.5質量部、カーボンブラック(個数平均粒径30nm、DBP吸油量40ml/100g)1.5質量部を、トルエン70.0質量部をビーズミル(RMH−03型、アイメックス(株)製)にてビーズ径0.5mmのガラスビーズを用いて分散し、コート材を得た。
続いて、流動層コーティング装置(スパイラフロー、フロイント産業(株)製)を用いて、磁性微粒子分散型コア100質量部を85℃にて流動させながら、コート材6質量部をスプレーノズルにて吹き付け、その後、流動させながら溶媒を110℃で揮発、乾燥させて、コア表面へのコートを行った。このコートされた磁性微粒子分散型コアを目開き75μmの篩で分級して、平均粒径40μm、比抵抗5.0×108Ω・cm、真比重3.5g/cm3、磁化の強さ(σ1000)52.5Am2/kg、残留磁化5.1Am2/kg、のコートキャリアを得た。
<実施例1>
まず、現像剤の作製を行った。上記コートキャリア90質量部に対し、トナー(T−1)を10質量部加え、V型混合機により5分間混合し現像剤とした。
次に、定着性評価としては、図6に示すようなベルト定着器を用いた。定着条件としては、定着スピードを300mm/sec、定着ニップ幅30mm、定着ニップ圧0.15MPaとした。
現像性評価としては、キヤノン製フルカラー複写機IRC3220N改造機を用いた。改造としては、プロセススピードを300mm/sとし、70枚/分を出力し得る複写機とした。尚、定着性評価用の画像を出力するためにもIRC3220N改造機を用いた。
評価1(低温定着性の評価)
まず、図8に示すようなA4画像(印字比率:20%)と、記録材としては、105g/m2紙を用いた。記録材上のトナーの載り量は1.2mg/cm2となるように現像バイアスを調整しながら画像を出力した。得られた画像は、L/L(15℃/5%)環境下にて24時間調湿した。
続いて、L/L環境下にてトナーの低温定着性の評価を行った。調湿した画像を用いて、定着ベルトの温度を100乃至200℃の範囲で5℃ずつ上げながら通紙を行った。通紙した画像は、トナー画像部分をφ60mm×40mmの円柱状のローラ(真鍮製:798g)を5往復させることで十字に折り曲げ開いた後に、22mm×22mm×47mmの四角柱状のおもり(真鍮製:198g)の断面にシルボン紙(ダスパーK3−半切、小津産業(株)製)を巻き付け10回擦り、トナー像の剥離率が25%以下となる温度を、定着温度とした。剥離率の測定には、画像処理システム(Personal IAS)を用いた。
評価2(耐ホットオフセット性の評価)
まず、図9に示すようなA4画像(印字比率:15%)と、記録材としては、64g/m2紙を用いた。記録材上のトナーの載り量は0.2mg/cm2となるように現像バイアスを調整しながら画像を出力した。得られた画像は、N/L(23℃/10%)環境下にて24時間調湿した。
続いて、N/L環境下にてトナーの耐ホットオフセット性の評価を行った。調湿した画像を用いて、定着ベルトの温度を120乃至220℃の範囲で5℃ずつ上げながら通紙を行った。通紙した画像は、トナー画像部分以外の領域でカブリ濃度測定を行った。カブリ濃度測定には、反射濃度計(TC−6DS、東京電色(株)製)を用い、(反射濃度の最大値)−(反射濃度の最小値)が0.5以下となる温度を、耐ホットオフセット性が問題ない温度であると判断した。
評価3(反射濃度の評価)
図9に示すようなA4画像(印字比率:20%)と、記録材としては、80g/m2紙を用いた。記録材上のトナーの載り量は0.55mg/cm2となるように現像バイアスを調整しながら画像を出力した。得られた画像は、N/N環境下にて24時間調湿した。調湿した画像を用いて、定着ベルトの温度が160℃の際に通紙した画像を用いて反射濃度値測定を行った。得られた画像は、反射濃度計X−Rite500型により反射濃度測定を6点行い、以下の基準で評価した。
A:反射濃度値が、1.45以上
B:反射濃度値が、1.40以上1.45未満。
C:反射濃度値が、1.35以上1.40未満。
D:反射濃度値が、1.35未満(実用不可レベル)。
評価4(グロスの評価)
トナーのグロス評価には、反射濃度の評価において定着ベルトの温度が160℃の際に通紙した画像を用いてグロス値測定を行った。グロス値測定には、光沢度計(PG−1、日本電色工業(株)製)を用い、測定角度は60°にて行った。
A:グロス値が、20.0以上。
B:グロス値が、15.0以上20.0未満。
C:グロス値が、10.0以上15.0未満。
D:グロス値が、10.0未満(実用不可レベル)。
評価5(彩度の評価)
トナーの彩度評価には、反射濃度の測定に用いた画像を用いて色度測定を行った。色度測定には、色度計(Spectrolino、GRETAGMACBETH社製)を用い、観測光源はD50、観測視野は2°にて行った。
A:彩度C*が、65.0以上。
B:グロス値が、60.0以上65.0未満。
C:グロス値が、55.0以上60.0未満。
D:グロス値が、55.0未満(実用不可レベル)
評価6(トナーの保存性(40℃/95%)評価)
トナー5.0gをポリカップに秤量し、40℃/95%に設定した恒温槽に7日間放置し、目視により以下の基準で評価した。
A:放置前とほぼ同等の流動性である。
B:2mm以下の指で解れる程度の凝集物がある。
C:5mm以下の凝集物があるが、指で解れる。
D:5mmを超える凝集物があり、指でも解れない(実用不可レベル)。
評価7(トナーの保存性(50℃/8%)評価)
トナー5.0gをポリカップに秤量し、50℃/8%に設定した恒温槽に7日間放置し、目視により以下の基準で評価した。
A:放置前とほぼ同等の流動性である。
B:2mm以下の指で解れる程度の凝集物がある。
C:5mm以下の凝集物があるが、指で解れる。
D:5mmを超える凝集物があり、指でも解れない(実用不可レベル)。
評価8(カブリ評価)
まず、図10に示すようなA4画像(印字濃度:10%)と、記録材としては、80g/m2紙を用いた。H/H(30℃/80%)環境下におけて、50000枚画だしした時の、紙の非画像部の反射濃度を測定し、白紙の紙との反射濃度の差を測定した。測定は、反射濃度計(densitometer TC6MC:(有)東京電色技術センター)を用い、以下の基準で評価した。
A:非画像部と白紙の反射濃度の差が1.5%未満。
B:非画像部と白紙の反射濃度の差が1.5%以上2.0%未満。
C:非画像部と白紙の反射濃度の差が2.0%以上2.5%未満。
D:非画像部と白紙の反射濃度の差が2.5%以上(実用不可レベル)。
評価9(帯電安定性評価)
まず、図10に示すようなA4画像(印字濃度:10%)と、記録材としては、80g/m2紙を用いた。H/H(30℃/80%)環境下におけて、50000枚画だしした時の、初期からの現像剤の帯電量変化を評価した。評価は、空回転を2分間行なった後、画だしを開始し、初期の帯電量と50000枚画だし後の帯電量の変化率を%で表わし、以下の基準で評価を行なった。
A:帯電量の変化幅が、10%未満。
B:帯電量の変化幅が、10%以上20%未満。
C:帯電量の変化幅が、20%以上30%未満。
D:帯電量の変化幅が、30%以上(実用不可レベル)。
<実施例2乃至19>
実施例1おいて、トナー(T−1)の代わりに、表9に示したようなトナー(T−2)乃至(T−19)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行った。評価結果を表10に示す。
<比較例1乃至8>
実施例1おいて、トナー(T−1)の代わりに、表9に示したようなトナー(T−20)乃至(T−27)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各評価を行った。評価結果を表11に示す。