JP4331871B2 - Eps工法用の発泡樹脂成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、EPS工法用の発泡樹脂成形体に関するものであり、詳しくは、EPS工法による盛土や裏込め等の土木工事に適用される発泡樹脂成形体であって、冠水時の浮力を十分に抑制でき且つ内部に溜った水の排水能力により優れ、しかも、荷重変形が一層少なくなる様に改良されたEPS工法用の発泡樹脂成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EPS工法は、盛土や裏込め等の土木工事において、軽量な発泡スチロールブロックを盛土材料や裏込め材料として積み上げる工法であり、斯かる工法によれば、盛土荷重を大幅に低減でき、沈下や地滑りを防止できる。更に、一軸方向の圧縮力が大きく、明確な剪断領域が発生しないため、優れた耐荷重性を発揮でき、しかも、自立性に優れ且つ上載荷重が作用しても側方への変形が極めて小さいため、背面土圧を大幅に低減できる。また、人力で積み重ねることが出来るため、大型機械の使用が困難な場所でも容易に且つ迅速に施工できる。
【0003】
特開平11−229379号公報には、冠水の虞れがある軟弱地盤などに上記EPS工法を適用するための「盛土用発泡樹脂ブロック」(発泡樹脂成形体)が記載されている。図15は、同公報に開示された従来の発泡樹脂成形体の外観を示す下面側から見た斜視図であり、図16は、従来の発泡樹脂成形体における排水構造を示す上面図である。また、図17は、垂直荷重に対する従来の泡樹脂成形体の変形状態を示す縦断面図である。
【0004】
図15に示す様に、上記の発泡樹脂成形体(91)は、上面側が天板部(92)によって略封止された箱状体であり、格子状に配置された仕切壁(93)によって内部に多数の水溜室(95)が形成されている。また、各隣接する水溜室(95)は、仕切壁(93)に設けられたスリット(縦溝)(93s)により相互に連続し、外周側の各水溜室(95)は、外側壁(94)に設けられたスリット(縦溝)(94s)により外部に通じている。しかも、図16に示す様に、天板部(92)の表面には、多数の排水溝(96)が形成されると共に、各排水溝(96)には、水溜室(95)に貫通する小孔(97)が多数設けられている。
【0005】
発泡樹脂成形体(91)は、上面同士および下面同士を付き合わせた状態、すなわち、交互に転倒させた状態で多数積み上げて使用されるが、斯かる発泡樹脂成形体(91)においては、水位が上昇した場合、スリット(93s,94s)及び小孔(97)を介し、内部の水溜室(95)内に水を取り込むことにより、発泡樹脂成形体(91)に作用する浮力を各水溜室(95)の水の荷重によって抑制し、また、水位が下がった場合、スリット(93s,94s)及び小孔(97)を介し、各水溜室(95)の水を外部に排出する様になされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の発泡樹脂成形体(91)は、金型成形の容易性および各水溜室(95)の入隅部における強度向上の観点から、仕切壁(93)及び外側壁(94)の下端部(開放面側の縁部)が薄肉に形成されている。すなわち、1つの水溜室(95)の縦断面形状を見た場合、図17に示す様に、左右の仕切壁(93)は、下端部が薄肉で八字状に裾広がりになっている。従って、2つの発泡樹脂成形体(91)の下面同士を付き合わせた状態では、垂直荷重に対し、仕切壁(93)の下端部において膨らみ変形が著しく大きくなる(変形部分を矢印で示す)。また、土圧などの側方荷重による変形も大きい。
【0007】
また、従来の発泡樹脂成形体(91)は、スリット(93s)が仕切壁(93)の高さの1/2〜1/3の長さで且つ下端側から切り欠かれた構造を備えており、しかも、天板部(92)の小孔(97)が排水溝(96)の幅に倣って比較的小さく形成されている。従って、大雨などで短時間で冠水した場合、転倒状態の発泡樹脂成形体(図17の下方の発泡樹脂成形体)においては、注水速度が小さいため、各水溜室(95)に十分に水が溜るまでに時間を要し、その間、浮力に対向し得るだけの荷重がえられないと言う問題がある。逆に、水が早く退いた場合、排水速度が小さいため、水溜室(95)に溜った水によって大きな荷重負荷を生じる。
【0008】
上記の様な変形量の大きさならびに注水・排水機能は、相乗的に作用し、構築物の耐久性に影響する虞があるため、より一層改善された発泡樹脂成形体が望まれる。本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、EPS工法による盛土や裏込め等の土木工事に適用される発泡樹脂成形体であって、冠水時の浮力を十分に抑制でき且つ内部に溜った水の排水能力により優れ、しかも、垂直荷重および側方荷重による変形が一層少なくなる様に改良されたEPS工法用の発泡樹脂成形体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体は、下面が開放され且つ上面が天板部によって略封止された箱状体に形成され、格子状に仕切壁を配置することにより内部に多数の水溜室が区画形成されたEPS工法用の発泡樹脂成形体であって、前記多数の水溜室は、平面視して箱状体の中心を通り且つ直交する前記仕切壁の2列または箱状体の中心を通る前記仕切壁の1列により4つの群または2つの群に分割され、かつ、前記各水溜室は、水溜室を区画する前記仕切壁に設けられたスリット又は外側壁に設けられたスリットによって各群ごとに注排水可能に構成され、更に、前記天板部には、平面視して水溜室の略中央に位置する様に格子状に配列される溝が形成され、前記仕切壁または外側壁に沿った位置で且つ前記溝と重畳しない位置に開口部が一定のパターンで多数配置され、しかも、平面視して前記各水溜室の入隅部に相当する位置には、下面側の前記仕切壁または外側壁の一部位を前記水溜室の内側に膨出させた補強構造が備えられていることを特徴とする。
【0010】
すなわち、上記の発泡樹脂成形体において、外側壁のスリット及び仕切壁のスリットは、盛土などの表面から浸透した水を各群ごとに各水溜室に注水し、各水溜室の水を各群ごとに外部へ排出する様に機能する。そして、互いに下面を付き合わせる状態で発泡樹脂成形体を上下に積み重ねた場合、天板部に一定のパターンで配置された開口部は、各発泡樹脂成形体の間で重畳する状態に位置するため、冠水あるいは水位の低下に伴い、水位の変化に倣って各水溜室に速やかに水を注水し、水位の変化に倣って各水溜室の水を速やかに排水する。また、各水溜室の入隅部に相当する位置に備えられた補強構造は、付き合わせ部の強度を高め、変形部位を上下の仕切壁および外側壁に分散させる。更に、水溜室の各群ごとに注排水可能な構造、換言すれば、箱状体の中心を通り且つスリットが設けられていない仕切壁の2列または1列による補強構造は、特に側方荷重による全体の変形を一層低減する。
【0011】
また、本発明に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体は、下面が開放され且つ上面が天板部によって略封止された箱状体に形成され、格子状に仕切壁を配置することにより内部に多数の水溜室が区画形成されたEPS工法用の発泡樹脂成形体であって、前記多数の水溜室は、平面視して箱状体の中心を通り且つ直交する前記仕切壁の2列または箱状体の中心を通る前記仕切壁の1列により4つの群または2つの群に分割され、かつ、前記各水溜室は、水溜室を区画する前記仕切壁に設けられたスリット又は外側壁に設けられたスリットによって各群ごとに注排水可能に構成され、更に、前記天板部には、平面視して水溜室の略中央に位置する様に格子状に配列される溝が形成され、前記仕切壁または外側壁に沿った位置で且つ前記溝と重畳しない位置に開口部が一定のパターンで多数配置され、しかも、平面視して前記各水溜室の一辺の中央に相当する位置には、下面側の前記仕切壁または外側壁の一部位を前記水溜室の内側に膨出させた補強構造が備えられていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、上記の発泡樹脂成形体において、外側壁のスリット及び仕切壁のスリットは、盛土などの表面から浸透した水を各群ごとに各水溜室に注水し、各水溜室の水を各群ごとに外部へ排出する様に機能する。そして、互いに下面を付き合わせる状態で発泡樹脂成形体を上下に積み重ねた場合、天板部に一定のパターンで配置された開口部は、各発泡樹脂成形体の間で重畳する状態に位置するため、冠水あるいは水位の低下に伴い、水位の変化に倣って各水溜室に速やかに水を注水し、水位の変化に倣って各水溜室の水を速やかに排水する。また、各水溜室の一辺の中央に相当する位置に備えられた補強構造は、付き合わせ部の強度を高め、変形部位を上下の仕切壁および外側壁に分散させる。更に、水溜室の各群ごとに注排水可能な構造、換言すれば、箱状体の中心を通り且つスリットが設けられていない仕切壁の2列または1列による補強構造は、特に側方荷重による全体の変形を一層低減する。
【0013】
また、上記の各態様の発泡樹脂成形体においては、透水性樹脂から成り且つ方形枠状に形成されたスリーブが外周に装着されることにより、簡便にフィルター機能を付与でき、しかも、雨水などに伴って土が水溜室に流入するのを防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の態様に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体の外観を示す下面側から見た斜視図であり、図2は、上面側から見た斜視図である。図3は、図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の底面図であり、図4は、排水構造を示す上面図である。図5は、図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の補強構造を示す縦断面図である。更に、図6は、図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の使用態様を示す斜視図であり、図7は、荷重に対する変形状態を示す縦断面図である。更に、図8は、第1の態様において水溜室を2群の分割したパターンの発泡樹脂成形体の外観を示す下面側から見た斜視図である。図9は、図8のEPS工法用の発泡樹脂成形体の底面図であり、図10は、排水構造を示す上面図である。
【0015】
また、図11は、本発明の第2の態様に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体を示す底面図であり、図12は、図11のEPS工法用の発泡樹脂成形体の排水構造を示す上面図である。図13は、図11のEPS工法用の発泡樹脂成形体の補強構造を示す縦断面図である。そして、図14は、本発明に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体においてスリーブが装着される態様を示す斜視図である。以下、実施形態の説明においては、EPS工法用の発泡樹脂成形体を「成形体」と略記する。
【0016】
本発明の成形体は、EPS工法における盛土材料や裏込め材料として使用される軽量な発泡スチロールブロックである。周知の通り、EPS工法(Expanded Polystyrol Construction Method)は、軟弱地盤の盛土、道路盛土、地滑り地の盛土、拡幅の盛土、急傾斜地盛土、水路基礎、仮設道路、構造物の裏込め、直立壁の裏込め等の土木工事において、軽量な発泡スチロールブロック(発泡樹脂成形体)を盛土材料や裏込め材料として積み上げる発砲スチロール土木工法である。
【0017】
先ず、本発明の第1の態様に係る成形体について説明する。本発明の成形体は、図1〜図5に符号(1A)で示す様に、概略、下面が開放され且つ上面が天板部(2)によって略封止された箱状体に形成される。また、内部には、格子状に仕切壁(3)を配置することにより多数の水溜室(5)が区画形成され、しかも、幾つかの仕切壁(3)には、各隣接する水溜室(5)を相互に連続させるスリット(3s)が設けられ、外側壁(4)には、外周側の各水溜室(5)を外部に連続させるスリット(4s)が設けられる。
【0018】
上記の多数の水溜室(5)は、平面視して箱状体の中心を通り且つ直交する仕切壁(3)の2列、すなわち、図1、図3及び図4中の仮想線に沿った直交2方向に連続する仕切壁(3P)により、4つの群に分割される。そして、水溜室(5)の各群は、水溜室(5)を区画する仕切壁(3)に設けられたスリット(3s)又は外側壁(4)に設けられたスリット(4s)によって各群ごとに水溜室(5)に注排水可能に構成される。
【0019】
成形体(1A)の材料としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリ塩化ビニルなどの発泡樹脂が挙げられる。特に、成形性および加工性を高め、コストを低減する観点からは、発泡ポリスチレンが好ましい。成形体(1A)の単位体積当たりの質量は、0.03〜0.1t/m3程度、好ましくは、0.04〜0.05t/m3程度である。斯かる成形体(1A)は、天板部(2)、仕切壁(3)と共に一体に成形される。成形体(1A)は、施工性および作業効率の観点から、例えば、平面形状を正方形に形成され、その外形寸法を1000×1000×250(高さ)mm程度に設計される。
【0020】
成形体(1A)の上面は、後述する開口部(7)を備えた天板部(2)によって封止されており、そして、成形体(1A)の内部は、これを均等に分割する様に格子状に配置された仕切壁(3)によって例えば16の水溜室(5)に区画される。水溜室(5)は、冠水時に上記スリット(3s)及びスリット(4s)を通じて水が流入する部屋であり、斯かる水溜室(5)への注水構造により、成形体(1A)は、冠水した際の浮力による浮き上がりを規制できる。
【0021】
水溜室(5)の全容積(例えば16の水溜室(5)の総容積)は、仕切壁(3)及び外側壁(4)の所要の厚さならびに浮力に対する所要の注水量を確保する観点から、成形体(1A)の見かけ体積の50〜70%程度、好ましくは約60%とされる。通常、成形体(1A)が上記の様な外形寸法で成形される場合、仕切壁(3)及び外側壁(4)の厚さは、25〜40mm程度、好ましくは約35mmに設定される。
【0022】
16の水溜室(5)を4群に分割した成形体(1A)においては、4つの水溜室(5)が1群を構成し、水溜室の各群においては、成形体(1A)の各角部に位置する水溜室(5)を除く、内側3つの水溜室(5)が連続する様にスリット(3s)が仕切壁(3)に設けられる。仕切壁(3)のスリット(3s)は、成形体(1A)の開放面側、すなわち、下面側から天板部(2)の内表面まで切り欠かれたスリットであり、スリット(3s)は、各水溜室(5)の側壁に相当する仕切壁(3)の略中央部に設けられることにより、各群の3つの水溜室(5)を連続させている。スリット(3s)の開口幅は、10〜30mm程度であり、スリット(3s)の長さは、水溜室(5)間の水の移動を円滑にするため、仕切壁(3)の高さと略同等とされる。
【0023】
他方、外側壁(4)のスリット(4s)は、天板部(2)の縁部から成形体(1A)の下面側に向けて切り欠かれたスリットであり、スリット(4s)は、上記スリット(3s)と同様に、各水溜室(5)の側壁に相当する外側壁(4)の略中央部に設けられることにより、成形体(1A)の外周側に位置する水溜室(5)と外部を連続させている。スリット(4s)の開口幅は、10〜30mm程度であり、スリット(4s)の長さは、側方荷重対する強度の低下を防止するため、外側壁(4)の下端縁まで達しない長さ、好ましくは、外側壁(4)の高さの略1/2に相当する長さに設定される。
【0024】
上記の様に、成形体(1A)においては、水溜室(5)を4群に分割する仕切壁(3P)を除く他の仕切壁(3)ならびに外側壁(4)に各々スリット(3s)及びスリット(4s)を設けることにより、冠水した場合に各水溜室(5)に対して外部から速やかに注水し、また、水位が下がった場合に各水溜室(5)の水を速やかに外部へ排水する様になされている。しかも、水溜室(5)を群に分割する中央の仕切壁(3P)はスリットのない壁として構成され、かつ、外側壁(4)の下端部側は下端縁まで達しない長さのスリット(4s)により繋がった状態になされているため、側方荷重に対しても充分な強度を保持できる。
【0025】
また、天板部(2)が上面となる様に使用した際、天板部(2)の上面側に進入した水を速やかに排水するため、天板部(2)には、溝(6)が複数形成される。しかも、天板部(2)側の仕切壁(3)の基部における強度を保持するため、溝(6)は、仕切壁(3)とは異なるパターンの配列で形成される。具体的には、溝(6)は、平面視して水溜室(5)の略中央に位置する様に格子状に配列される。これらの溝(6)は、例えば、幅を10mm程度、深さを10mm程度とされる。
【0026】
更に、天板部(2)の溝(6)は、スリット(4s)の基部に連続しているのが好ましい。すなわち、外側壁(4)の各スリット(4s)は、上記の様に天板部(2)側から切り込まれたスリットであり、天板部(2)側のスリット(4s)の基部には、天板部表面の溝(6)が連続している。従って、成形体(1A)においては、天板部(2)の上面側に進入した水を一層効率的に排水できる。
【0027】
また、本発明の成形体(1A)は、通常、上下方向に積み重ねて使用されるが、冠水時の水溜室(5)に対する注水機能ならびに水位低下時の水溜室(5)からの排水機能を一層高めるため、天板部(2)には、開口部(7)が一定のパターンで多数配置される。しかも、これらの開口部(7)は、仕切壁(3)の基部の強度および天板部(2)の強度を保持するため、仕切壁(3)又は外側壁(4)に沿った位置で且つ溝(6)と重畳しない位置に配置される。具体的には、開口部(7)は、例えば、底辺の長さが7cm程度の直角2等辺三角形に形成され、そして、平面視して各水溜室(5)の四隅に設けられる。
【0028】
更に、本発明の成形体(1A)は、荷重変形を一層少なくするため、平面視して各水溜室(5)の入隅部に相当する位置、すなわち、仕切壁(3)同士の交わる入隅部、仕切壁(3)と外側壁(4)の交わる入隅部および外側壁(4)の入隅部には、下面側の仕切壁(3)又は外側壁(4)の一部位を水溜室(5)の内側に膨出させた補強構造(8A)が備えられる。補強構造(8A)は、下面側から平面視した場合、水溜室(5)の四隅を内側に張出した厚肉部として構成される。
【0029】
補強構造(8A)としての四隅の厚肉部は、分割金型によって成形体(1A)を成形する関係から、平面の投影面積を開口部(7)の面積よりも小さな面積に形成され、例えば、平面形状を斜辺の長さが約6.5cmの直角2等辺三角形に形成される。また、厚肉部の高さは、仕切壁(3)又は外側壁(4)の高さの1/3から天板部(2)の内表面に達するまでの範囲内で必要とされる耐圧強度に応じて設定される。例えば、厚肉部の高さは、成形体(1A)の下面から8cm程度とされる。上記の様な水溜室(5)の四隅の厚肉部は、成形体(1A)の下面の受圧面積を大きくし、仕切壁(3)及び外側壁(4)の下端部の強度を高めるため、垂直荷重、側方荷重に対する仕切壁(3)及び外側壁(4)の変形量を低減できる。
【0030】
また、上記と同様に荷重変形を一層少なくする観点から、各水溜室(5)の4つの壁面を構成する仕切壁(3)及び外側壁(4)は、天板部(2)側に向かうに従い厚肉に形成されるのが好ましい。すなわち、図5に示す様に、各水溜室(5)の内側に相当する仕切壁(3)及び外側壁(4)の各表面には、上記の補強構造(8A)の部位を除き、天板部(2)の内表面に向かうに従い漸次内側に迫り出した厚肉部(32)及び(42)が形成される。
【0031】
ところで、本発明の成形体(1A)は、前述の様に、積み重ねて使用されるが、その際、2つの成形体(1A)の開口面側(下面側)を付き合わせて1つのブロックを構成する。そこで、施工性を高め且つ積み重ねた際のずれを防止するため、補強構造(8A)を構成する厚肉部の下面には、2つの成形体(1A)の下面同士を付き合わせた場合に互いに嵌合する凹部(43)及び凸部(45)が形成される。
【0032】
凹部(43)及び凸部(45)は、嵌合可能な形状であれば適宜の形状でよいが、例えば、平面形状を斜辺の長さが5cm程度の2等辺三角形に形成される。そして、2つの成形体(1A)を付き合わせた場合に外周が完全に一致する様に、例えば、凹部(43)は、底面視して1つの対角線に沿った位置の補強構造(8A)の下面に配置され、凸部(45)は、他の対角線に沿った位置の補強構造(8A)の下面に配置される。
【0033】
本発明の成形体(1A)は、例えば、土に代わる盛土材料として使用する場合、図6に示す様に、2つの組合せによって1つのブロックを構成するが、上記凹部(43)及び凸部(45)が嵌合する状態に各成形体(1A)の下面を付き合わせることにより、互いにずれることなく、盛土材料としての方形のブロックを簡単に構成できる。そして、斯かるブロックを地形に応じて所要の数だけ水平および垂直方向に配列した後、全体を土で埋設し、更にその表面を砕石やアスファルト等で仕上げることにより盛土を構築する。
【0034】
構築された盛土においては、降雨などによって表面のアスファルト等に水が浸透するが、その際、盛土を構成する各成形体(1A)において、外側壁(4)のスリット(4s)は、盛土の表面から浸透した水を外周側の各水溜室(5)に導入し、仕切壁(3)のスリット(3s)は、外周側の各水溜室(5)に流入した水を各群ごとに更に内側の各水溜室(5)に導入する。また、天板部(2)の溝(6)は、2つのブロック(成形体(1A))間の天板部(2)同士が当接する部位に浸透した水を外側壁(4)のスリット(4s)に導く。
【0035】
更に、軟弱地盤などで盛土が下方から冠水した場合、上記の様な外側壁(4)のスリット(4s)及び仕切壁(3)のスリット(3s)の注水機能に加え、成形体(1A)の天板部(2)に一定のパターンで配置された開口部(7)は、各ブロック(成形体(1A))間で重畳する状態に位置するため、上方のブロック(成形体(1A))の水溜室(5)に対し、水位の上昇に従って下方のブロックの水溜室(5)から直接水を注入する。すなわち、本発明の成形体(1A)は、水位が上昇した場合でも、水位の変化に倣って各水溜室(5)に速やかに水を注水でき、浮力を抑制して浮き上がりを有効に防止できる。
【0036】
他方、盛土が冠水した状態において水位が下った場合、外側壁(4)のスリット(4s)及び仕切壁(3)のスリット(3s)は、注水の場合と逆の機能により、各群ごとに各水溜室(5)の水を外部へ排出する。また、天板部(2)の溝(6)は、2つのブロック間の天板部(2)同士が当接する部位に進入した水を外側壁(4)側に排出する。更に、天板部(2)に一定のパターンで配置された開口部(7)は、上方のブロック(成形体(1A))の水溜室(5)に溜った水を順次下方のブロック(成形体(1A))の水溜室(5)に排出する。従って、本発明の成形体(1A)は、水位が下った場合、水位の変化に倣って各水溜室(5)の水を速やかに排水でき、水による大きな荷重が掛かるのを防止できる。
【0037】
更に、本発明の成形体(1A)においては、天板部(2)の溝(6)が仕切壁(3)とは異なるパターンの配列で形成され、かつ、開口部(7)が溝(6)と重畳しない位置に形成されているため、仕切壁(3)の基部の強度ならびに天板部(2)自体の強度をより高めることが出来る。そして、各水溜室(5)の入隅部に相当する位置に備えられた補強構造(8A)としての厚肉部は、仕切壁(3)及び外側壁(4)の下端部、すなわち、2つの成形体(1A)を付き合わせた場合の付き合わせ部の強度を高めることが出来、仕切壁(3)及び外側壁(4)における変形量を一層小さくすることが出来る。
【0038】
具体的には、図7に示す様に、2つの成形体(1A)の付き合わせによって1組のブロックを構成した場合、上下の水溜室(5)は連続した空間として構成されるが、上下方向で見掛上一体化された仕切壁(3)は、例えば、垂直荷重に対し、矢印で示す部分が幾分変形する程度である。換言すれば、上下方向で一体化された状態の仕切壁(3)においては、垂直荷重による変形部位を2箇所、すなわち、上下の仕切壁(3)あるいは上下の外側壁(4)に分散できるため、全体の変形量を一層小さく出来る。その結果、本発明の成形体(1A)は、盛土表面に対する影響も一層低減できる。
【0039】
更に、本発明の成形体(1A)において、仕切壁(3)に形成された厚肉部(32)及び外側壁(4)に形成された厚肉部(42)は、仕切壁(3)及び外側壁(4)における荷重に対する強度を一層高め、変形をより小さくすることが出来る。特に、水溜室(5)の各群ごとに注排水可能な構造、換言すれば、箱状体の中心を通り且つスリットが設けられていない仕切壁(3P)の2列による補強構造により、特に側方荷重による全体の変形を一層低減できる。因に、図16に示す従来の成形体における変形量に比べ、本発明の成形体(1A)においては、仕切壁(3)及び外側壁(4)の変形量を約1/2に減少させること出来た。
【0040】
また、上記の第1の態様に係る成形体(1A)においては、図8〜図10に示す様に、多数の水溜室(5)を2群に分割したパターンを備えていてもよい。図8〜図10に示す成形体(1A)は、箱状体の中心を通る仕切壁(3)の1列、すなわち、図中の仮想線に沿った仕切壁(3P)により、例えば16の水溜室(5)が2つの群に分割される。16の水溜室(5)を2群に分割した成形体(1A)においては、8つの水溜室(5)が1群を構成し、水溜室の各群においては、成形体(1A)の角部に位置する水溜室(5)を除く、内側6つの水溜室(5)が連続する様に上記と同様のスリット(3s)が仕切壁(3)に設けられる。
【0041】
図8〜図10に示す上記の成形体(1A)においても、前述のパターンを備えた成形体(1A)と同様に、外側壁(4)のスリット(4s)、仕切壁(3)のスリット(3s)ならびに天板部(2)の開口部(7)の機能により、水位に変化に倣って各水溜室(5)に速やかに注水でき、また、各水溜室(5)の水を速やかに排水できる。
【0042】
そして、前述の成形体(1A)と同様に、各水溜室(5)の入隅部に相当する位置に備えられた補強構造(8A)は、付き合わせ部の強度を高め、変形部位を上下の仕切壁(3)及び外側壁(4)に分散させるため、全体の変形量を一層小さく出来る。しかも、水溜室(5)の各群ごとに注排水可能な構造、換言すれば、箱状体の中心を通り且つスリットが設けられていない仕切壁(3P)よる補強構造により、特に側方荷重による全体の変形を一層低減できる。
【0043】
次に、本発明の第2の態様に係る成形体について説明する。本発明の第2の態様に係る成形体は、図11〜図13に符号(1B)で示す様に、概略、下面が開放され且つ上面が天板部(2)によって略封止された箱状体に形成される。また、内部には、格子状に仕切壁(3)を配置することにより多数の水溜室(5)、例えば16の水溜室(5)が区画形成され、幾つかの仕切壁(3)には、各隣接する水溜室(5)を相互に連続させるスリット(3s)が設けられ、外側壁(4)には、外周側の各水溜室(5)を外部に連続させるスリット(4s)が設けられる。
【0044】
上記の多数の水溜室(5)は、平面視して箱状体の中心を通り且つ直交する仕切壁(3)の2列、すなわち、図11及び図12中の仮想線に沿った直交2方向に連続する仕切壁(3P)により、4つの群に分割される。あるいは、図示しないが、水溜室は、平面視して箱状体の中心を通る仕切壁の1列により、2つの群に分割される。そして、水溜室(5)の各群は、水溜室(5)を区画する仕切壁(3)に設けられたスリット(3s)又は外側壁(4)に設けられたスリット(4s)によって各群ごとに水溜室(5)に注排水可能に構成される。
【0045】
前述の態様と同様に、16の水溜室(5)を4群に分割した成形体(1B)においては、4つの水溜室(5)が1群を構成し、水溜室の各群においては、成形体(1B)の各角部に位置する水溜室(5)を除く、内側3つの水溜室(5)が連続する様にスリット(3s)が仕切壁(3)に設けられる。また、図示しないが、前述の態様と同様に、16の水溜室を2群に分割した成形体においては、8つの水溜室が1群を構成し、水溜室の各群においては、成形体の角部に位置する水溜室を除く、内側6つの水溜室が連続する様にスリットが仕切壁に設けられる。
【0046】
成形体(1B)においては、後述の溝(6)の配置関係および成形性の観点から、仕切壁(3)のスリット(3s)及び外側壁(4)のスリット(4s)は、それぞれ下面側から切り込まれたスリットである。すなわち、成形体(1B)における基本的な構成は、外側壁(4)のスリット(4s)の配置を除き、図1に示す前述の成形体(1A)と同様である。
【0047】
また、成形体(1B)においては、前述の成形体(1A)と同様に、天板部(2)には、溝(6)及び開口部(7)が設けられる。溝(6)は、仕切壁(3)の基部における強度を保持するため、仕切壁(3)とは異なるパターンの配列で形成される。具体的には、溝(6)は、平面視して水溜室(5)の対角線に位置する様に格子状に配列される。溝(6)の寸法仕様は、成形体(1A)におけるのと略同様である。
【0048】
開口部(7)は、仕切壁(3)の基部および天板部(2)における強度を保持し且つ開口面積を大きくするため、仕切壁(3)又は外側壁(4)に沿った位置で且つ溝(6)と重畳しない位置に排水用の一定のパターンで多数配置される。具体的には、開口部(7)は、例えば、上底の長さが3.5cm程度、下底の長さが7cm程度の台形に形成され、そして、平面視して各水溜室(5)の4辺の各中央に設けられる。
【0049】
本発明の成形体(1B)は、荷重変形を一層少なくするため、平面視して各水溜室(5)の一辺の中央に相当する位置には、下面側の仕切壁(3)又は外側壁(4)の一部位を水溜室(5)の内側に膨出させた補強構造(8B)が備えらる。補強構造(8B)は、下面側から平面視した場合、水溜室(5)の4辺の各中央を内側に張出した厚肉部として構成される。
【0050】
補強構造(8B)としての4辺の厚肉部は、前述の成形体(1A)におけるのと同様に、分割金型によって成形する関係から、平面の投影面積を開口部(7)の面積よりも小さな面積に形成され、例えば、平面形状を上底の長さが3cm程度、下底の長さが6.5cm程度の台形に形成される。厚肉部の高さは、成形体(1A)におけるのと略同様である。斯かる厚肉部は、成形体(1B)の下面の受圧面積を大きくし、仕切壁(3)及び外側壁(4)の下端部の強度を高めるため、垂直荷重、側方荷重に対する仕切壁(3)及び外側壁(4)の変形量を低減できる。なお、仕切壁(3)及び外側壁(4)の強度を低下させないため、スリット(3s)及び(4s)は、補強構造(8B)の略中央部に形成される。
【0051】
また、成形体(1B)においては、前述の成形体(1A)と同様に、荷重変形を一層少なくする観点から、各水溜室(5)の4つの壁面を構成する仕切壁(3)及び外側壁(4)は、天板部(2)側に向かうに従い厚肉に形成されるのが好ましい。すなわち、各水溜室(5)の内側に相当する仕切壁(3)及び外側壁(4)の各表面には、上記の補強構造(8B)の部位を除き、天板部(2)の内表面に向かうに従い漸次内側に迫り出した厚肉部(32)及び(42)が形成される。
【0052】
本発明の成形体(1B)は、前述の成形体(1A)と同様に、例えば盛土材料として使用される場合、2つの組合せによって1つのブロックを構成する。そして、構築された盛土に雨水などが浸透した場合、盛土を構成する各成形体において、外側壁(4)のスリット(4s)は、盛土の表面から浸透した水を成形体(1A)外周側の各水溜室(5)に導入し、仕切壁(3)のスリット(3s)は、外周側の各水溜室(5)に流入した水を各群ごとに更に内側の各水溜室(5)に導入する。
【0053】
更に、盛土が下方から冠水した場合、上記の様な外側壁(4)のスリット(4s)及び仕切壁(3)のスリット(3s)の注水機能に加え、天板部(2)に一定のパターンで配置された開口部(7)は、各ブロック間で重畳する状態に位置するため、上方のブロックの水溜室(5)に対し、水位の上昇に従って下方のブロックの水溜室(5)から直接水を注入する。従って、本発明の成形体(1B)は、水位が上昇した場合でも、水位の変化に倣って各水溜室(5)に速やかに水を注水でき、浮力を抑制して浮き上がりを有効に防止できる。
【0054】
他方、水位が下った場合、外側壁(4)のスリット(4s)及び仕切壁(3)のスリット(3s)は、注水の場合と逆の機能により、各群ごとに各水溜室(5)の水を外部へ排出する。また、天板部(2)の溝(6)は、2つのブロック間の天板部(2)同士が当接する部位に進入した水を外側壁(4)側に排出する。更に、天板部(2)に一定のパターンで配置された開口部(7)は、上方のブロックの水溜室(5)に溜った水を順次下方のブロックの水溜室(5)に排出する。従って、本発明の成形体(1B)は、水位が下った場合、水位の変化に倣って各水溜室(5)の水を速やかに排水でき、水による大きな荷重が掛かるのを防止できる。
【0055】
また、本発明の成形体(1B)においては、溝(6)が仕切壁(3)とは異なるパターンの配列で形成され、開口部(7)が溝(6)と重畳しない位置に形成されているため、仕切壁(3)の基部の強度ならびに天板部(2)自体の強度をより高めることが出来る。そして、各水溜室(5)の一辺の中央に相当する位置に備えられた補強構造(8B)としての厚肉部は、成形体(1A)におけるのと同様に、仕切壁(3)及び外側壁(4)の下端部、すなわち、2つの成形体を付き合わせた場合の付き合わせ部の強度を高めることが出来、変形部位を上下の仕切壁(3)あるいは上下の外側壁(4)に分散できるため、仕切壁(3)及び外側壁(4)における変形量を一層小さくすることが出来る。その結果、本発明の成形体(1B)は、盛土表面に対する影響も一層低減できる。
【0056】
更に、本発明の成形体(1B)において、仕切壁(3)に形成された厚肉部(32)及び外側壁(4)に形成された厚肉部(42)は、仕切壁(3)及び外側壁(4)における荷重に対する強度を一層高め、変形をより小さくすることが出来る。しかも、前述の態様と同様に、水溜室(5)の各群ごとに注排水可能な構造、換言すれば、箱状体の中心を通り且つスリットが設けられていない仕切壁(3P)の2列または1列による補強構造により、特に側方荷重による全体の変形を一層低減できる。
【0057】
また、上述した様な本発明の成形体(1A)ならびに成形体(1B)は、盛土などを構築する場合、スリット(4s)及び(3s)あるいは開口部(7)を通じ、水溜室(5)に土が流入して堆積する虞がある。そこで、本発明の成形体(1A,1B)においては、図14に示す様に、透水性樹脂から成り且つ予め方形枠体状に形成された濾材としてのスリーブ(10)が外周に装着されてもよい(図14には成形体(1A)を例示する)。
【0058】
スリーブ(10)は、泥水を濾過し得る限り、各種の多孔質材料によって形成できる。例えば、スリーブ(10)としては、不織布を枠体状に圧縮成形したもの、チップ状の樹脂成形片を金型内で蒸気加熱して枠体状に成形したもの、あるいは、粒子状の樹脂成形片を接着剤と共に金型に充填して硬化させたもの等が挙げられる。何れの材料で成形する場合も、スリーブ(10)の透水係数は、0.5〜5cm/s程度とされるのが好ましい。
【0059】
更に、本発明においては、上記スリーブ(10)をより簡便に適用するため、天板部(2)の4周囲には、スリーブ(10)を装着した際にスリーブ(10)の周縁に係合する鍔(2f)が設けられているのが好ましい。鍔(2f)の張出長さは、スリーブ(10)の略厚みと同等である。
【0060】
上記の様なスリーブ(10)を装着する態様の本発明の成形体(1A,1B)においては、盛土などを構築する際、スリーブ(10)に嵌め込むだけで簡便にフィルター機能が得られ、そして、雨水などに伴って土が水溜室(5)に流入するのを防止できる。従って、図14に示す態様の本発明の成形体(1A,1B)においては、施工性を損なうことなく、耐久性能を一層向上できる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の第1の態様に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体によれば、外側壁のスリット、仕切壁のスリット、天板部の溝および開口部を通じ、盛土などに浸透した水を水位の変化に倣ってより速やかに各水溜室に取り入れることが出来るため、冠水と同時に浮力を抑制でき、また、水位が下った場合には、外側壁のスリット、仕切壁のスリット、天板部の溝および開口部を通じ、各水溜室内の水を水位の変化に倣ってより速やかに排出できるため、水による荷重負荷をなくすことが出来る。しかも、各水溜室の入隅部に相当する位置に備えられた補強構造によって仕切壁および外側壁の下端部の強度を高めることが出来、更に、水溜室を4つ又は2つの群に分割して注排水する構造によって側方荷重による変形を一層低減できる。その結果、全体の変形量を一層小さくすることが出来、盛土表面に対する影響を一層低減できる。
【0062】
また、第2の態様に係る本発明に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体によれば、上記の発泡樹脂成形体と同様に、盛土などに浸透した水を水位の変化に倣ってより速やかに各水溜室に取り入れることが出来るため、冠水と同時に浮力を抑制でき、また、水位が下った場合には、各水溜室内の水を水位の変化に倣ってより速やかに排出できるため、水による荷重負荷をなくすことが出来る。しかも、各水溜室の一辺の中央に相当する位置に備えられた補強構造によって仕切壁および外側壁の下端部の強度を高めることが出来、更に、水溜室を4つ又は2つの群に分割して注排水する構造によって側方荷重による変形を一層低減できる。その結果、全体の変形量を一層小さくすることが出来、盛土表面に対する影響を一層低減できる。
【0063】
また、透水性樹脂から成るスリーブが装着される上記の各態様の発泡樹脂成形体によれば、盛土などを構築する際、スリーブに嵌め込むだけで簡便にフィルター機能が得られ、雨水などに伴って土が水溜室に流入するのを防止でき、その結果、施工性を損なうことなく、耐久性能を一層向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の態様に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体の外観を示す下面側から見た斜視図
【図2】図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の上面側から見た斜視図
【図3】図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の底面図
【図4】図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体における排水構造を示す上面図
【図5】図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体における補強構造を示す縦断面図
【図6】図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の使用態様を示す斜視図
【図7】図1のEPS工法用の発泡樹脂成形体の荷重に対する変形状態を示す縦断面図
【図8】第1の態様において水溜室を2群の分割したパターンの発泡樹脂成形体の外観を示す下面側から見た斜視図
【図9】図8のEPS工法用の発泡樹脂成形体の底面図
【図10】図8のEPS工法用の発泡樹脂成形体における排水構造を示す上面図
【図11】本発明の第2の態様に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体を示す底面図
【図12】図11のEPS工法用の発泡樹脂成形体における排水構造を示す上面図
【図13】図11のEPS工法用の発泡樹脂成形体における補強構造示す縦断面図
【図14】本発明に係るEPS工法用の発泡樹脂成形体においてスリーブが装着される態様を示す斜視図
【図15】従来の発泡樹脂成形体の外観を示す下面側から見た斜視図
【図16】従来の発泡樹脂成形体における排水構造を示す上面図
【図17】垂直荷重に対する従来の泡樹脂成形体の変形状態を示す縦断面図
【符号の説明】
1A:発泡樹脂成形体
1B:発泡樹脂成形体
2:天板部
2f:鍔
3:仕切壁
32:厚肉部
3s:スリット
3P:仕切壁(水溜室の群に分割する仕切壁)
4 :外側壁
42:厚肉部
43:凹部
45:凸部
4s:スリット
5:水溜室
6:溝
7:開口部
8A:補強構造
8B:補強構造
10:スリーブ
Claims (11)
- 下面が開放され且つ上面が天板部(2)によって略封止された箱状体に形成され、格子状に仕切壁(3)を配置することにより内部に多数の水溜室(5)が区画形成されたEPS工法用の発泡樹脂成形体(1A)であって、多数の水溜室(5)は、平面視して箱状体の中心を通り且つ直交する仕切壁(3)の2列または箱状体の中心を通る仕切壁(3)の1列により4つの群または2つの群に分割され、かつ、各水溜室(5)は、水溜室(5)を区画する仕切壁(3)に設けられたスリット(3s)又は外側壁(4)に設けられたスリット(4s)によって各群ごとに注排水可能に構成され、更に、天板部(2)には、平面視して水溜室(5)の略中央に位置する様に格子状に配列される溝(6)が形成され、仕切壁(3)又は外側壁(4)に沿った位置で且つ溝(6)と重畳しない位置に開口部(7)が一定のパターンで多数配置され、しかも、平面視して各水溜室(5)の入隅部に相当する位置には、下面側の仕切壁(3)又は外側壁(4)の一部位を水溜室(5)の内側に膨出させた補強構造(8A)が備えられていることを特徴とするEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 開口部(7)が、平面視して各水溜室(5)の四隅に設けられている請求項1に記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 各水溜室(5)の4つの壁面を構成する仕切壁(3)及び外側壁(4)の各表面には、天板部(2)の内表面に向かうに従い漸次内側に迫り出した厚肉部(32)及び(42)が形成されている請求項1又は2に記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 外側壁(4)の各スリット(4s)は、天板部(2)側から切り込まれたスリットであり、天板部(2)側のスリット(4s)の基部には、天板部表面の溝(6)が連続している請求項1〜3の何れかに記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 補強構造(8A)の下面には、2つの発泡樹脂成形体(1A)の下面同士を付き合わせた場合に互いに嵌合する凹部(43)及び凸部(45)が形成されている請求項1〜4の何れかに記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 下面が開放され且つ上面が天板部(2)によって略封止された箱状体に形成され、格子状に仕切壁(3)を配置することにより内部に多数の水溜室(5)が区画形成されたEPS工法用の発泡樹脂成形体(1B)であって、多数の水溜室(5)は、平面視して箱状体の中心を通り且つ直交する仕切壁(3)の2列または箱状体の中心を通る仕切壁(3)の1列により4つの群または2つの群に分割され、かつ、各水溜室(5)は、水溜室(5)を区画する仕切壁(3)に設けられたスリット(3s)又は外側壁(4)に設けられたスリット(4s)によって各群ごとに注排水可能に構成され、更に、天板部(2)には、平面視して水溜室(5)の略中央に位置する様に格子状に配列される溝(6)が形成され、仕切壁(3)又は外側壁(4)に沿った位置で且つ溝(6)と重畳しない位置に開口部(7)が一定のパターンで多数配置され、しかも、平面視して各水溜室(5)の一辺の中央に相当する位置には、下面側の仕切壁(3)又は外側壁(4)の一部位を水溜室(5)の内側に膨出させた補強構造(8B)が備えられていることを特徴とするEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 開口部(7)が、平面視して各水溜室(5)の一辺の中央に設けられている請求項6に記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 各水溜室(5)の4つの壁面を構成する仕切壁(3)及び外側壁(4)の各表面には、天板部(2)の内表面に向かうに従い漸次内側に迫り出した厚肉部(32)及び(42)が形成されている請求項6又は7に記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 仕切壁(3)のスリット(3s)及び外側壁(4)のスリット(4s)は、下面側から切り込まれたスリットであり、これらスリットは、補強構造(8B)の略中央部に形成されている請求項6〜8の何れかに記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- 透水性樹脂から成り且つ方形枠状に形成されたスリーブ(10)が外周に装着される請求項1〜9の何れかに記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
- スリーブ(10)を装着した際にスリーブ(10)の周縁に係合する鍔(2f)が天板部(2)の4周囲に設けられている請求項10に記載のEPS工法用の発泡樹脂成形体。
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