JP4330007B2 - 磁歪素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に、用いられる磁歪素子の製造方法に関する。
従来より、リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に磁歪素子が用いられている。
この磁歪素子は、リニアアクチュエータ、振動子等に用いる場合、付与する磁界を変化させることで、磁歪素子の寸法を変化させて駆動力を発生している。また、磁歪素子を圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いる場合は、外部から加わった圧力によって磁歪素子の寸法が変化し、これに伴って変化する透磁率を検出することで、センシングを行っている。
このような磁歪素子は、所定の組成の合金粉を磁場中成形することで成形体を形成した後、この成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結することで製造されている(例えば、特許文献1参照。)。
磁歪材料を焼成し、得られた焼結体(磁歪素子)を評価する場合、その評価パラメータは、主に焼結体密度と磁歪値である。特許文献1に開示された手法のように、焼成時の昇温過程で、水素ガスとArガスの混合雰囲気(還元性ガス)下で行うと、焼結が促進され、焼結体密度を向上させることができる。
特開2003−3203号公報(第4頁)
しかしながら、水素ガスとArガスの混合雰囲気である還元性ガス下で焼成を行うと、得られた焼結体において焼結体密度のばらつきが大きく、これによって図5に示すように、焼結体1にクラック2が生じるという問題があった。クラック2の生じた焼結体1は、当然のことながら製品として出荷することはできないため、その結果、磁歪素子の歩留まりが低下してしまう。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、焼結体密度のばらつきを抑制し、歩留まりを向上させることのできる磁歪素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記のような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた本発明者らは、焼成に際して用いる焼結用容器内において、焼結用容器内に並べた複数の焼結体のうち、外周部に位置した焼結体において、クラックが多く発生していることを見出した。そして、焼成時には、成形体を構成する合金粉を得る過程で合金粉に含まれる水素が成形体から放出されるが、その水素の放出度合いが焼結用容器内の成形体の位置に応じて異なることが、クラック発生の原因ではないか、と推察した。すなわち、複数並んだ成形体のうち、中央部側に位置する成形体は、その周囲を他の成形体に囲まれているのに対し、外周部に位置する成形体は、その周囲の一部において他の成形体に隣接していない。このため、周囲全周を他の成形体に囲まれた中央部側の成形体に比較し、外周部の成形体においては、雰囲気中の水素濃度が中央部側に比較してさほど上昇せず、これによって、成形体から水素がより多く放出されてしまう(放出されやすい)のではないか、と考えたのである。
このような推察をもとになされた本発明の磁歪素子の製造方法は、原料粉末を磁場中成形し、水素を含有した成形体を得る工程と、複数の成形体を容器内に並べて収容し、外周側に位置する成形体の近傍に、成形体よりも水素含有量の高い水素含有体を配置した状態で成形体を焼結する工程と、を含むことを特徴とする。
これにより、焼成時に水素含有体から放出される水素により、成形体の周囲の雰囲気における水素濃度を高く保ち、外周部に位置する成形体からの水素放出を抑制できる。したがって、容器内で複数が並べられた成形体のうち、外周部に位置する成形体と、中央部側に位置する成形体とで、焼成過程で放出される水素量の均等化を図ることができる。さらに、水素含有体を配置することで、水素放出が過度に抑制されてしまうような場合、成形体を焼結する工程では、成形体と水素含有体との間に、成形体および水素含有体より水素含有量が低く、かつ水素を吸蔵可能な水素吸蔵体を配置した状態で成形体を焼結しても良い。これにより、水素含有体から放出される水素の一部を水素吸蔵体で吸蔵することで、外周部に位置する成形体からの水素放出を調整できる。
また、成形体を焼結する工程では、容器内で外周側に位置する成形体を、該成形体からの水素の放出を抑制するためのシュラウドで覆った状態で焼結するようにしても良い。このようなシュラウドにより、成形体が覆われることで、成形体から放出された水素が広く放散してしまうのを防ぎ、成形体の周囲の雰囲気における水素濃度を高く保ち、外周部に位置する成形体からの水素の放出が抑制される。
この場合、成形体は、Tb、Dy、Feを含み、焼結により磁歪素子となるものとすることができる。このような方法は、水素を500ppm以上含有する成形体を焼結する場合に、クラックの発生を防止するために特に有効である。これに対応し、水素含有体の水素含有量は、成形体よりも高く、かつ4000ppm以上とするのが好ましい。
本発明によれば、焼結用容器の容器本体内の外周部に位置する成形体からの過度な水素放出を抑制することができ、焼結体密度の低下を防ぐことが可能となる。これにより、焼結用容器内で同時に焼成する複数の成形体間で、水素放出量の均等化を図ることができ、クラックの発生を抑制することが可能となる。その結果、磁歪素子の歩留まりを向上させ、品質の安定化を図ることが可能となる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
リニアアクチュエータ、振動子、圧力トルクセンサ、振動センサ、ジャイロセンサ等に用いられる磁歪素子は、式(1)RTy(ここで、Rは1種類以上の希土類金属、Tは1種類以上の遷移金属であり、yは1<y<4を表す。)で示す組成を有する焼結体によって構成される。
ここで、Rは、Yを含むランタノイド系列、アクチノイド系列の希土類金属から選択される1種以上を表している。これらの中で、Rとしては、特に、Nd、Pr、Sm、Tb、Dy、Hoの希土類金属が好ましく、Tb、Dyがより一層好ましく、これらを混合して用いることができる。Tは、1種以上の遷移金属を表している。これらの中で、Tとしては、特に、Fe、Co、Ni、Mn、Cr、Mo等の遷移金属が好ましく、Fe、Co、Niが一層好ましく、これらを混合して用いることができる。
式(1)RTyで表す合金で、yは、1<y<4を表す。RTyは、y=2で、RとTとが形成するRT2ラーベス型金属間化合物は、キュリー温度が高く、磁歪値が大きいため、磁歪素子に適する。ここで、yが小さくなると、主相にあたるRT2相が少なくなり、磁歪値が低下する。また、yが4以上では、RT3相が多くなり、磁歪値が低下する。このため、RT2がリッチな相を多くするために、yは、1<y<4の範囲が好ましい。
Rは、2種以上の希土類金属を用いてもよく、特に、TbとDyを用い、式(2)TbaDy(1-a)で表される組成とするのが好ましい。ここで、aが0.27以下では室温以下では十分な磁歪値を示さず、0.50を超えると室温付近では十分な磁歪値を示さない。このため、磁歪素子を、室温付近で用いるのであれば、aは、0.27<a≦0.50とするのが好ましい。
また、aが0.50以下では、この磁歪素子を用いてトルクセンサ等のセンサを構成した場合、雰囲気温度に応じてインダクタンスが変化し、特に低温領域においてインダクタンスが低下する。そこで、aを0.50<a≦1.00の範囲とすると、温度変化に伴うインダクタンスの変化が少ない、安定した温度特性が得られる。ここで、aは、a=1.00、つまりDyを含有しない場合を含むものとする。すなわち、aは、磁歪素子が使用されると想定できる環境に応じて適宜選択すれば良い。
Tは、特に、Feが好ましく、FeはTb、Dyと(Tb、Dy)Fe2金属間化合物を形成して、大きな磁歪値を有し磁歪特性の高い焼結体が得られる。このときに、Feの一部をCo、Niで置換するものであってもよいが、Coは磁気異方性を大きくするが透磁率を低くし、また、Niはキュリー温度を下げ、結果として常温・高磁場での磁歪値を低下させるために、Feは70wt%以上、一層好ましくは80wt%以上が良い。
上記のような磁歪素子の製造工程の流れの詳細は、以下の通りである。
本実施の形態において、磁歪素子は、特開2002−129274号公報に示すような、3種類の異なる組成の原料粉末を混合して作製する。また、原料粉末となる合金粉の一部に、水素吸蔵処理される原料を含んでいることが好ましい。合金粉に水素を吸蔵させることにより、歪みが生じ、その内部応力によって割れが生ずる。このために、混合される合金粉は、成形体を形成する時に圧力を受け、混合した状態の内部で粉砕されて細かくなり、焼結したときに緻密な高密度焼結体を得ることができる。さらに、Tb、Dyの希土類は酸化されやすいために、わずかな酸素があっても表面に融点の高い酸化膜を形成し、焼結の進行を抑制するが、水素を吸蔵することで、酸化されにくくなる。したがって、合金粉の一部に水素吸蔵処理を施して高密度焼結体を製造することができる。
ここで、水素を吸蔵する原料は、式(3)Dyb(1-b)で、bが0.37≦b≦1.00で表される組成であることが好ましい。TはFe単独でも、Feの一部をCo、Niで置換されたものでもよい。これにより、原料の合金粉の焼結体密度を高くすることができる。
まず、原料の一つとして、Tb、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、合金を製造する(以下、これを「原料A」と記す。)。ここでは、原料Aとして、例えばTb0.4Dy0.6Fe1.95の組成にする。この原料Aを、1170℃で20時間安定させてアニールする熱処理を行い、合金製造時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させてから、例えばブラウンミルで粉砕し、粗粉を得る。そしてこの粗粉をメッシュにて2mm以上のものを除去する。
また、原料の一つとして、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、合金を製造する(以下、これを「原料B」と記す。)。ここでは、原料Bとして、例えばDy2.0Feの組成にする。この原料Bを、水素雰囲気(水素濃度80%)中にて、150℃で1時間安定させる熱処理を行い、水素を例えば約18000ppm吸蔵させて粉砕し、粉砕粉を得る。そして得られた粉砕粉から、メッシュにて2mm以上のものを除去する。
さらに、原料の一つとして、Feを、水素ガス雰囲気中、300℃で1時間安定させる熱処理を行うことで、還元作用により酸素を例えば3000ppmから1500ppm程度に低減させてから、例えばアトマイザーで粉砕して用いる(以下、これを「原料C」と記す。)。
次いで、得られた原料A、B、Cを秤量した後、これをアトマイザーにより、Arガスの不活性雰囲気中で粉砕・混合処理して、組成を例えばTb0.6Dy0.4Fe1.88にした合金粉(原料粉末)を得る。
この後、得られた合金粉を型に入れ、所定強度、例えば12kOeの横磁場中で、8ton/cm2の圧力で成形し、成形体を得る。このとき、合金粉は、酸化防止のため、配管内に窒素ガスを充填した中を移動させる。また、合金粉の流動性向上のために、パーフルオロポリエーテルの蒸気等を供給することも有効である。
そして、得られた成形体を、炉中で所定の温度プロファイルで昇温し、焼結体を得る。
焼結は、成形した原料粉を炉中で昇温し、温度をほぼ一定に保持する安定温度にして行うのが好ましい。この安定温度は、1150〜1300℃の範囲が好ましい。安定温度が1150℃未満では、焼結が促進されないため主相の粒径が小さくなり磁歪値が低下し、安定温度が1300℃を超えると、RTyで表される合金の融点に近くなるために焼結体が溶融することがあるからである。また、昇温速度は、3〜20℃/minで行う。昇温速度が、3℃/min未満では生産性が低く、昇温速度が20℃/minを超えると原子の拡散が不十分となり、偏析や異相が生ずる。
ところで、Rは、酸素と極めて容易に反応し、安定な希土類酸化物を形成する。これらの酸化物は、低い磁性を有するが実用上の磁性材料になるような磁気特性を示さない。高温焼結ではわずかな酸素であっても、焼結体の磁気特性を大きく低下するため、焼結等の熱処理では、特に水素ガスを含む雰囲気が好ましい。又、酸化を防ぐ雰囲気としては、不活性ガスによる雰囲気があるが、不活性ガスだけでは完全に酸素を除去することが難しく、酸素と反応性の大きい希土類金属では酸化物を形成するため、この酸化を防止するために、水素ガスと不活性ガスの混合ガスの雰囲気が好ましい。
Arガスは不活性ガスでRを酸化することがないので水素ガスと混合して還元作用を有する雰囲気を得ることができる。このため、還元作用を有するために、X(vol%)は、少なくとも0<Xであることがよい。また、X(vol%)は、50≦Xでは還元作用が飽和するため、X<50であることがよい。したがって、焼結は、水素ガス雰囲気又は水素ガス:アルゴン(Ar)ガス=X:100−Xと表す式(4)におけるXが、0<X<50である水素ガス及び不活性ガスの混合雰囲気下で行うのが好ましい。特に、当初はArガスの雰囲気で昇温を開始し、昇温の途中で水素を導入し、水素ガスとArガスの混合雰囲気で焼成を行い、その後、Arガスの雰囲気とするのが好ましい。
このようにして得られる焼結体に対し時効処理を行った後、焼結体を所定サイズに分割することで、磁歪素子を得ることができる。
図1および図2は、上記したような磁歪素子の製造工程で用いる焼結用容器10の構成を説明するための図であり、図1は焼結用容器10の外観を示す斜視図、図2は焼結用容器10に成形体100を収めた状態での断面図である。
本実施の形態において、最終的に磁歪素子となる成形体100は、焼結用容器(容器)10に収められた状態で焼結される。
この図1に示すように、焼結用容器10は、Mo(モリブデン)製で、上方に開口した容器本体11と、容器本体11の開口を着脱自在に塞ぐ蓋体12を備えて構成されている。
図2に示すように、容器本体11内には、焼結時に成形体100を支持するセッター20が備えられている。
セッター20は、容器本体11の底面に沿って配置され、その上面に、複数の成形体100を並べて保持できるようになっている。
このようなセッター20は、成形体100と反応を生じにくい材料で形成するのが好ましい。さらに、成形体100と焼結反応を生じる温度(反応温度)が、焼結に伴なって成形体100が収縮する温度よりも低い材料で、セッター20を形成するのが好ましい。このような材料としては、例えばCaO、Dy23があり、特にDy23でセッター20を形成するのが好ましい。
容器本体11内には、セッター20において互いに対向する一対の外側部20a、20bに沿って、シュラウド30を設けることができる。
成形体100を焼成する過程で、成形体100に吸蔵された水素が放出される。シュラウド30は、この、成形体100から放出される水素が、焼結用容器10内に広く拡散するのを抑制することを目的として設けられている。このためシュラウド30は、セッター20の外側部20a、20bから上方に立ち上がる立ち上がり部30aと、立ち上がり部30aの上端部から略L字状に折り曲げられ、容器本体11の内方に向けて延びるオーバーハング部30bとから形成されている。シュラウド30は、例えば容器本体11等と同様、Moで形成するのが好ましい。
本実施の形態において、シュラウド30は、セッター20において互いに対向する2辺の外側部20a、20bに沿って配置するようにしたが、これに限るのではなく、セッター20の全周にシュラウド30を設けても良い。
このようなシュラウド30により、成形体100から放出された水素は、立ち上がり部30aとオーバーハング部30bとに囲まれた端部領域Sに多く留まる。これにより、この端部領域Sにおける雰囲気中の水素濃度が、シュラウド30を設けない場合よりも高まり、成形体100からの水素の放出が抑制される。その結果、セッター20上の複数の成形体100からの水素の放出量の均等化を図ることが期待できる。
ここで、図3に示すように、容器本体11内に、成形体100を複数段積み上げ、焼成を行うこともできる。この場合、メッシュ状の仕切り板40を容器本体11内に設け、仕切り板40上にセッター20およびシュラウド30をセットするようにする。
さて、焼成に際しては、図2(a)に示すように、容器本体11内において、セッター20の、シュラウド30が設けられていない2辺の外側部20c、20d(シュラウド30によって覆われていない部分)に沿って、成形体100よりも水素含有率(濃度)の高い水素発生体200をセットする。焼成過程で、この水素発生体200から水素を放出することで、端部領域Sにおける水素濃度を高め、成形体100からの水素の放出を抑制する。
このような水素発生体200としては、水素を吸蔵させた焼結体を用いるのが好ましい。このような焼結体であれば、繰り返し水素を吸蔵させることができ、繰り返し利用が可能だからである。
ここで、成形体100における水素含有率が例えば2000ppmであるとすると、水素発生体200の水素含有率は、3000〜20000ppm、例えば14000ppm程度とするのが好ましい。
また、水素発生体200から放出される水素により、端部領域Sに位置する成形体100からの水素放出が過度に抑制されてしまう場合、図4に示すように、水素発生体200と成形体100の間に、水素吸蔵体300を配置するようにしても良い。この水素吸蔵体300としては、水素の吸蔵が可能な焼結体を用いるのが好ましい。
上述したように、成形体100よりも水素含有率の高い水素発生体200をセットし、焼成過程で水素発生体200から放出される水素によって端部領域Sにおける水素濃度をさらに高め、成形体100からの水素の放出を抑制することができる。このようにして、端部領域Sにおける成形体100からの過度な水素放出を抑制し、焼結体密度の低下を防ぐことが可能となる。また、水素発生体200をセットした場合に、端部領域Sに位置する成形体100からの水素放出が過度に抑制されてしまうときには、水素発生体200と成形体100の間に水素吸蔵体300を配置し、水素発生体200から放出される水素を適度に吸蔵させることで、成形体100からの水素放出が過度に抑制されるのを防止できる。さらに、セッター20の外側部を覆うようにシュラウド30を設けることで、端部領域Sにおける成形体100からの過度な水素放出を抑制することもできる。
このようにすることで、焼結用容器10内で同時に焼成する複数の成形体100間で、水素放出量の均等化を図ることができ、クラックの発生を抑制することが可能となる。その結果、磁歪素子の歩留まりを向上させ、品質の安定化を図ることが可能となる。
さてここで、シュラウド30を設けることによる効果を確認したので、その結果を以下に示す。
まず、原料Aとして、Tb、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融して、Tb0.4Dy0.6Fe1.95の組成を有する合金を製造した。そして、この原料Aを、1170℃(安定時間20hr)でアニールする熱処理を行い、合金製造時の各金属元素の濃度分布を一様にし、また、析出した異相を消滅させてから、例えばブラウンミルで粉砕し、粗粉を得た。得られた粗粉を、目開き2mmの篩に通し、2mm以上の粒径の粗粉を除去した。
原料Bとして、Dy、Feを秤量して、Arガスの不活性雰囲気中で溶融し、Dy2.0Feの組成を有する合金を製造した。そしてこの合金に、水素雰囲気(濃度80%)中、150℃(安定時間1hr)で熱処理し、約18000ppmの水素を吸蔵させることで、合金を粉砕し、粉砕粉を得た。この粉砕粉を、目開き2mmの篩に通し、2mm以上の粒径の粗粉を除去した。
原料Cとして、Feの粉末を用い、このFe粉末に対し、水素ガス雰囲気中で酸素を除去する還元処理(300℃、安定時間1hr)を行った。
次いで、得られた原料A、B、Cを秤量した後、混合処理し、さらにArガス中でアトマイザーにより微粉砕し、組成をTb0.34Dy0.66Fe1.88にした合金粉を得た。
得られた合金粉を型に入れ、12kOeの磁場中で、5ton/cm2の成形圧で成形し、成形体を得た。このとき、合金粉を型に充填するに際しては、合金粉を、N2ガスを充填した配管内を通して移動させた。また、磁場は、圧力方向に対して垂直方向(いわゆる横磁場)に印加した。成形体の寸法は、直径3mm、長さ16mmの円柱状とした。
得られた成形体を、図3に示したような焼結用容器に収めて炉中で昇温し、1236℃の安定温度区間で焼成を行い、焼結体(磁歪素子)を得た。このとき、焼結用容器には、480個の成形体を3段積みにして収容した。また、炉内の雰囲気は、当初Arガスとし、昇温の途中で水素を導入して、35vol%水素ガスと65vol%Arガスの混合雰囲気とした後、1217℃に到達した時点で真空引きしてArガスに置換し、1236℃まで昇温させた。
ここで、焼成に際し、焼結用容器には、図3に示したようなシュラウドをセットし、セッター上に並べた成形体のうち、外側部の成形体の側方および上方を覆うようにした(条件1)。
また、比較のため、図3に示したようなシュラウドを用いず、焼結用容器内のセッター上に成形体を並べたのみでも、同様に焼成を行った(比較条件1)。
得られた焼結体について、焼結体密度、磁歪値、外観を評価した。焼結体密度は、アルキメデス法により計測し、その平均値、σ値、歩留まり(焼結体密度の基準値(理論密度の95%)以上であるものの割合)を求めた。また、磁歪値は、加圧式磁歪値測定装置により計測し、その平均値、σ値、歩留まりを求めた。外観は、クラックの有無を目視によりチェックし、クラックが発生していないものを良品とし、その歩留まりを求めた。
表1がその結果を示すものである。
Figure 0004330007
表1に示すように、シュラウドを用いた条件1では、シュラウドを用いなかった比較条件1に対し、焼結体密度が高く、しかも歩留まりが向上していた。しかし、焼結用容器内の最上層の外側部に位置する一部の焼結体において焼結体密度の低いものが依然として残ることが認められた。また、条件1では、磁歪値は、比較条件1と同等であり、外観のクラックの発生は認められなかった。これにより、シュラウドを用いることで、焼結体密度の向上・均等化が図れることが確認された。これは、シュラウドにより、成形体からの水素放出が抑制されることを示唆している。
次に、水素発生体を用いた場合の効果について確認したので、その結果を以下に示す。
上記実施例1と同様にして得た成形体を、実施例1と同様の条件で焼成し、焼結体を得た。このとき、焼結用容器には、図2に示したようなシュラウドをセットし、セッター上に並べた成形体のうち、外側部の成形体の側方および上方を覆うようにした。さらに、容器本体の内壁面に沿った位置において、図2に示したような位置に、水素発生体をセットした(条件2)。この水素発生体は、Tb0.34Dy0.66Fe1.87の組成を有した、10×10×8mmのサイズの焼結体に、水素を約14000ppm吸蔵させたものを用いた。また、容器本体内において、最上段には、水素発生体を30g、残る2段には、水素発生体を5gずつ配置した。
また、条件3として、図4に示すように、条件2に加え、水素発生体に対し、容器本体の内周側に隣接する位置に、水素吸蔵体として、Tb0.34Dy0.66Fe1.87の組成を有した、10×10×8mmのサイズの、水素を吸蔵していない焼結体を配置した。
このようにして得られた焼結体について、焼結体密度、磁歪値、外観を評価した。
表1に示すように、水素発生体を用いた条件2では、シュラウドのみを用いた前記実施例1の条件1に比較し、焼結体密度が平均値、σ値ともに向上し、歩留まりも100%となった。また、条件2では、磁歪値は、比較条件1と同等であった。しかし、条件2では、外観のクラックの発生が一部で認められた。
これに対し、水素発生体に加え、水素吸蔵体を用いた条件3では、焼結体密度、磁歪値とも、条件2と同等以上であり、しかも、外観のクラックの発生は認められなかった。
このように、焼成時に水素発生体から水素を放出することで、焼結体密度の均等化が図れることが確認された。また、条件2により、水素発生体からの水素放出が過度であると焼結体のクラックの発生につながることが示唆された。さらに、条件3により、水素発生体から放出された水素を水素吸蔵体で吸蔵することによって、焼結体密度の均等化、クラック発生の防止等が図れることが確認された。
さらに、上記の条件2と同様、図4に示したようなシュラウドをセットした焼結用容器に、図4に示したような位置に、水素を約6000ppm吸蔵させた水素発生体をセットした(条件4)。
このようにして得られた焼結体について、焼結体密度、磁歪値、外観を評価した。
表1に示すように、条件4では、14000ppmの水素を吸蔵させた水素発生体を用いた条件2に比較し、外観のクラックの発生が減少していた。
このように、水素発生体のみを用いた場合であっても、水素吸蔵量を適切に設定することで、焼結体密度の均等化を図りつつ、クラック発生を抑制できることが確認された。
本実施の形態における焼結用容器の外観を示す斜視図である。 焼結用容器の断面図であり、(a)は(b)の矢視断面図、(b)は正断面図である。 成形体を複数段積みとする場合の焼結用容器の構成を示す正断面図である。 水素発生体および水素吸蔵体を配置した例を示す平断面図である。 クラックが生じた磁歪素子の顕微鏡写真である。
符号の説明
10…焼結用容器(容器)、11…容器本体、12…蓋体、20…セッター、30…シュラウド、30a…立ち上がり部、30b…オーバーハング部、100…成形体、200…水素発生体、300…水素吸蔵体、S…端部領域

Claims (6)

  1. 原料粉末を磁場中成形し、水素を含有した成形体を得る工程と、
    複数の前記成形体を容器内に並べて収容し、外周側に位置する前記成形体の近傍に、前記成形体よりも水素含有量の高い水素含有体を配置した状態で前記成形体を焼結する工程と、
    を含むことを特徴とする磁歪素子の製造方法。
  2. 前記成形体を焼結する工程では、前記成形体と前記水素含有体との間に、前記成形体および前記水素含有体より水素含有量が低く、かつ水素を吸蔵可能な水素吸蔵体を配置した状態で前記成形体を焼結することを特徴とする請求項1に記載の磁歪素子の製造方法。
  3. 前記成形体を焼結する工程では、前記容器内で外周側に位置する前記成形体を、該成形体からの水素の放出を抑制するためのシュラウドで覆った状態で焼結することを特徴とする請求項1または2に記載の磁歪素子の製造方法。
  4. 前記成形体は、Tb、Dy、Feを含み、焼結により磁歪素子となるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁歪素子の製造方法。
  5. 前記成形体は、水素を500ppm以上含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁歪素子の製造方法。
  6. 前記水素含有体の水素含有量は、前記成形体よりも高く、かつ4000ppm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の磁歪素子の製造方法。
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