JP4581449B2 - 希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類焼結磁石の製造方法に関し、特に希土類合金粉末の成形体を焼結する工程を含む製造方法に関する。
希土類焼結磁石は、合金インゴットを粉砕して形成した合金粉末を磁界中でプレス成形した後、焼結工程および時効工程を経て作製される。希土類焼結磁石の中でも、ネオジム・鉄・ボロン系磁石(以下、「R−T−(M)−B系磁石」と称する。RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoとの混合物、Mは添加元素、Bはボロンである。)は、最も高い磁気エネルギー積を示し、価格も比較的安いため、各種電子機器へ積極的に採用されている。しかし、ネオジムなどの希土類元素は非常に酸化しやすいため、製造過程で酸化を抑えるような注意が必要である。
このような希土類元素の酸化は、焼結工程などの高温処理中に特に生じやすく、酸化が生じると、最終的に得られる磁石特性が大幅に低下してしまう。焼結工程時の酸化を避けるため、通常、磁石粉末の成形体は焼結用のケース内に格納された状態で焼結炉内に搬送される。また、焼結炉の内部は不活性ガスで満たされ、焼結処理は不活性ガス中に実行される。このような焼結方法は、例えば特許文献1に開示されている。
特開2000−315611号公報 特開平5−171217号公報 特開平6−145711号公報
従来の焼結方法では、焼結磁石の酸化をある程度抑制することはできるが、焼結用ケース内に配置した位置によって焼結磁石の特性が著しく劣化することがわかった。本発明者らは、その原因を調べたところ、一部の焼結磁石の表面が炭化していることがわかった。炭素(C)は、焼結炉内にカーボンヒータやカーボン製の断熱材が存在しているため、それらに由来している可能性がある。また、焼結ケースの底部には、搬送用ローラと接する部分にカーボン材料が用いられることがあるため、このようなカーボン材料が搬送中にローラ摩擦し、微量のカーボン粉を発生させている可能性もある。
微量のカーボン粉などが焼結炉内において高温に晒されると、雰囲気中に僅かに混入した水分や酸素と反応してCOやCO2に変化する。焼結ケースを完全な密閉状態にすることは困難であり、焼結ケースには僅かの隙間が存在している。この隙間を通して雰囲気ガスの出入りが生じるとき、上記のCOやCO2が焼結ケース内の隙間に近い位置に配置されたプレス成形体と接触し、磁石粉末中の希土類元素と化学的に反応(炭化)するものと推定される。
焼結炉内部からヒータや断熱材などのカーボン部材を完全に除去することは、他に好ましい代替材料が無いため、困難であり、経済的ではない。したがって、従来、炭化した一部の焼結磁石は完成品から排除し、良品だけを出荷する必要があり、歩留まりが低下してしまっていた。
一方、炭素のゲッタリング材料として、Tiが有効に機能することが知られている(特許文献2および特許文献3)。しかし、これらの技術は、Tiから形成した容器内に希土類磁石粉末の成形体を配置して焼結を行なうものであるため、複数回の焼結工程を行なうと、炭化によって容器自体が劣化したり、熱変形するため、継続的な使用を続けられないという問題がある。
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、簡便な方法によって焼結工程時における炭化を抑制し、性能の高い希土類焼結磁石を歩留まり良く製造する方法を提供することにある。
本発明による希土類焼結磁石の製造方法は、希土類磁石粉末の成形体を焼結ケースの内部に挿入する工程(A)と、前記焼結ケースを焼結炉に挿入する工程(B)と、前記焼結炉の内部で前記成形体を焼結する工程(C)とを含む希土類焼結磁石の製造方法であって、前記工程(C)において、炭素と結合する金属の箔が少なくとも1つ前記焼結ケースの内部に配置されている。
好ましい実施形態において、前記工程(A)は、前記希土類磁石粉末の成形体を焼結する工程に用いられた回数が3回以下である前記金属の箔を前記焼結ケースの内部に配置する工程を有する。
好ましい実施形態において、前記金属はTiを主成分として含有している。
好ましい実施形態において、前記金属の箔は、折り曲げ部または凸部を有している。
好ましい実施形態において、前記焼結ケースは、開口部を有するケース本体と、前記ケース本体の開口部を開閉するドア部材と、前記ケース本体の内部に固定されており、前記成形体を載せた焼結プレートを水平方向にスライドさせることができる支持手段とを備え、少なくとも前記ケース本体および前記ドア部材がモリブデンから形成されている。
好ましい実施形態において、前記ケース本体は、底板と、前記底板に連結された一対の側板と、前記底板に対向するように前記一対の側板に連結された天板とを有し、前記ドア部材は、前記一対の側板の端部に設けられた案内部材によって、前記底板に垂直な方向にスライドし得る。
好ましい実施形態において、前記成形体を前記焼結プレート上に載せる工程と、前記成形体を載せた状態の前記焼結プレートを前記焼結ケースの開口部を介して前記焼結ケースの内部に挿入する工程と、前記焼結ケースの開口部を前記ドア部材によって閉じる工程とを包含する。
炭素と結合する金属の箔が焼結ケース内に侵入してきた雰囲気ガス中の炭素をゲッタリングするため、炭化による希土類焼結磁石の歩留まり低下を抑制し、優れた磁石性能を有する希土類焼結磁石を安価に供給することが可能になる。
本発明では、焼結ケースを用いて希土類磁石粉末の成形体を焼結する工程において、希土類磁石中に含まれるNdなどの希土類元素よりも炭素と結合しやすく、かつ高温(焼結温度程度)でも揮発しにくい安定な炭化物を作る金属の箔をゲッタリング材として用いる。このような炭素のゲッタリングに特に適した金属はTiである。本発明の好ましい形態では、Tiの箔(例えば厚さ 0.1〜0.5mm、サイズ:50mm×50mm)をゲッタリング材として用いる。Tiの粉末ではなく、Tiの箔を用いることにより、取り扱いが容易になり、古くなったTi箔を新しいTi箔と交換することもしやすくなる。
本発明の製造方法に好適に用いられるTi箔の形状例を、図1〜図3に示す。図1(a)は、複数の凹部を表面に形成するようにプレス加工したTi箔40の上面図であり、図1(b)は、そのB−B線断面図である。図1(b)からわかるように、Ti箔40の裏面には複数の凸部41が存在する。このため、Ti箔40を焼結ケース内に配置したとき、これらの凸部41によってTi箔40が支持されるため、Ti箔40が雰囲気ガスと接触する表面積を広く確保できる。その結果、小型(重さ1.0〜1.5g)のTi箔40を用いても高いゲッタリング効果を得ることが可能になり、またTi箔40を作業者が指その他の治具でハンドリングすることが容易になる。
図2(a)は、他のTi箔42を示す平面図であり、図2(b)は、そのB−B線断面図である。このTi箔42は、断面が蛇行するように屈曲しており、それによって雰囲気ガスとの接触面積が確保されている。
図3(a)は、更に他のTi箔44を示す平面図であり、図3(b)は、そのB−B線断面図である。このTi箔44は、二つ折りに折り曲げられており、占有面積に比べて雰囲気ガスとの接触面積が拡大されている。折り曲げの回数は、更に多くても良い。
炭素のゲッタリングに用いられる金属箔の形状は、上記のものに限定されず、種々の形態をとることが許容される。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態に好適に用いられる焼結ケースの構成を説明する。なお、本発明に用いられる焼結ケースの構成は、以下に述べるものに限定されず、焼結工程中に雰囲気ガスがケース内部に侵入しえるものであれば、本発明の効果が発揮される。
図4は、このような焼結ケースを模式的に示した斜視図である。図5(a)は、焼結ケースの上面を示し、図5(b)は、その側面を示している。以下、図5(a)および(b)を参照しながら、本発明による焼結ケースを説明する。
図4および図5に示されている焼結ケースの本体フレーム1は、モリブデン製の薄い金属板(厚さ:1〜3mm程度)から構成されている。本体フレーム1は、対向する二つの側面部分が開口部となる箱状の容器(箱体)であり、底板2a、天板2bおよび一対の側板2cから構成されている。本体フレーム1の二つの開口部は、それぞれ、上下方向にスライドする2枚の側面板(ドア板)3aおよび3bで閉じられる。本体フレーム1の大きさの一例は、幅350mm×奥行き550mm×高さ550mmである。
本体フレーム1の側板2cには、図5(a)および(b)に示すように、薄いモリブデン製金属板の強度を高める部材としてモリブデン製補強チャネル4および4’が取り付けられており、本体フレーム1に歪みが生じることを防止している。
補強チャネル4’は、ドア板3aおよび3bの上下方向スライドを案内し、かつ、ドア板3aおよび3bを閉じたときの密閉度を高めるために、図5(a)に示すような逆コの字状部分を有している。これに応じてドア板3aおよび3bの側端部は直角に折り曲げられ、折り曲げられた部分が補強チャネル4’の逆コの字部分と側板2cとが作る空間内に収められるようになっている。
本体フレーム1の内部10には、水平方向に延びる複数本のモリブデン製ロッド(太さ:φ6〜φ14mm程度)6が設けられており、各ロッド6は対向する二つの側板2cによって支持されている。ロッド6は、プレス成形体80が載せられた状態のモリブデン製焼結プレート(厚さ:0.5〜3mm)7を本体フレーム1内で水平に支持するように配列されている。ロッド6の間隔は、例えば、水平方向に40〜80mm程度、垂直方向に30〜80mm程度に設定されている。なお、ロッド6の両端はナット(不図示)で補強チャネル4にねじどめされている。
本実施形態では、本体フレーム1のドア板3aを上方向に開放した状態で、プレス成形体を載せた焼結プレート7を側方の開口部から内部10へと挿入する。その際、焼結プレート7はロッド6上を水平方向にスライドするが、両者はともに自己潤滑性の高いモリブデンから形成されているため、発生する摩擦力も小さく、摩耗もほとんど生じない。このように側面に開放可能な開口部を設けたことによって、ロボット等の自動化装置を用いてプレス成形体を焼結ケース内に搭載することが容易になるとともに、時効処理の前に焼結ケースから焼結体を取り出す必要も無くなる。
本実施形態で用いる焼結プレート7は、前述のように、他の部材と同様にモリブデンから形成されており、その先端部70は、図5(b)に示すように、上方に僅かに(傾斜角:20〜40°程度)曲げられた形状を有している。これは、図5(b)の左方から焼結プレート7を右方向にスライドさせるとき、焼結プレート7の先端がロッド6に衝突することなく、スムーズに挿入できるようにするためである。
ドア板3aおよび3bの上端部30は、図5(b)に示すように屈曲しており、ドア板3aおよび3bを閉じたとき、天板2bとドア板3aおよび3bとの間でガスの流出入が生じにくくなっている。また、底板2aのドア板側端部20も直角に折り曲げられており、閉じた状態のドア板3aおよび3bと底板2aとの間に隙間が形成されにくくなっている。これらの構成は、ドア板3aおよび3bを閉じたときの焼結ケースの密閉度を高めるために採用している。
なお、本体フレーム1の底板部分には、焼結炉内での搬送をし易くするという目的のため、不図示のカーボン製またはカーボンコンポジット製トレイが取り付けられることが好ましい。この取り付けは、例えばトレイから突出するピンによって本体フレーム1をトレイ上に固定して行われ得る。このようなカーボンを含有する材料を用いると、後述する焼結炉内を搬送する過程で炭素ガスを発生しやすい。このため、焼結ケースの隙間から焼結ケースの内部に流入するガス中の炭素濃度が上昇しやすい。
[製造方法]
以下に、本発明による希土類焼結磁石の製造方法の実施形態として、ボイスコイルモータ(VCM)用焼結磁石を製造する場合を例として説明する。
まず、公知の方法を用いて形成した希土類磁石の粉末を用意する。本実施形態では、R−T−(M)−B系磁石を製造するために、まず、ストリップキャスト法を用いてR−T−(M)−B系合金の鋳片を作製する。ストリップキャスト法は、例えば米国特許第5,383,978号に開示されている。具体的には、Nd:30wt%、B:1.0wt%、Al:0.2wt%、Co:0.9wt%、残部Feおよび不可避不純物からなる組成の合金を高周波溶解によって溶融し、合金溶湯を形成する。この合金溶湯を1350℃に保持した後、単ロール法によって、合金溶湯を急冷し、厚さ0.3mmのフレーク状合金鋳塊を得る。このときの急冷条件は、例えば、ロール周速度約1m/秒、冷却速度500℃/秒、過冷度200℃である。
このフレーク状合金鋳塊を水素吸蔵法によって粗粉砕した後、ジェットミルを用いて窒素ガス雰囲気中で微粉砕すれば、平均粒径が2〜5μm(好ましくは約3.5μm)の合金粉末を得ることができる。
こうして得た合金粉末に対して、ロッキングミキサー内で潤滑剤を0.3wt%添加・混合し、潤滑剤で合金粉末粒子の表面を被覆する。潤滑剤としては、脂肪酸エステルを石油系溶剤で希釈したものを用いることが好ましい。本実施形態では、脂肪酸エステルとしてカプロン酸メチルを用い、石油系溶剤としてはイソパラフィンを好適に用いることができる。カプロン酸メチルとイソパラフィンの重量比は、例えば1:9とすればよい。
次に、プレス装置を用いて上記合金粉末を圧縮成形し、それによって所定形状のプレス成形体(サイズ:例えば80mm×40mm×10mm)を作製する。成形体の密度は、例えば4.3g/cm3程度に設定される。プレス装置によってプレス成形体を作製した後、そのプレス成形体を焼結プレート7に搭載する。このとき、ひとつの焼結プレート7上に複数個のプレス成形体を載せることができる。
次に、ドア板3aを上方向にスライドさせ、本体1の開口部を開放した状態にある焼結ケースの内部に、プレス成形体を搭載した焼結プレート7を何枚か挿入する。その後、焼結ケースの内部にTi箔をゲッタリング材として配置する。Ti箔としては、例えば図1に示す形状を有したものを用いる。Ti箔は、特にガスの流出入経路として予想される箇所の近傍、例えば焼結ケース本体フレーム1とドア板3aまたは3bとの間に形成される隙間の近くに配置することが好ましい。具体的には、外部から最もガスが流入しやすい部分、すなわち焼結ケースの最下層に挿入される焼結部プレート7の四隅にTi箔を配置することが好ましい。
このようなゲッタリング材としては、C(炭素)と結合することによって高温でも揮発しにくい安定な炭化物を形成する薄片状のものであれば、その材料はTiに限定されない。このような材料としては、Ti以外にもNdよりも炭素化合物生成エネルギーが小さく、炭素化合物を精製しやすいZr、Ta、Nbなどが存在するが、コストの点でTiが最も好ましい。なお、Ti箔は、焼結ケースに挿入する前の焼結プレート7上に配置しておいても良い。
必要な数の焼結プレート7を焼結ケース内に挿入した後、ドア板3aを閉じ、焼結ケースをほぼ密閉状態にする。このとき、焼結ケースの内部に不活性ガスを供給し、プレス成形体が大気成分と接触することをできる限り抑制することが好ましい。焼結ケースの密閉度は完全ではないため、時間の経過に伴って、焼結ケース内部に大気成分が進入するが、プレス成形体が直接に大気に接触している場合に比較してプレス成形体の酸化反応は充分に抑えられる。
上記のTi泊と多数のプレス成形体とを収納した焼結ケースを、例えば自動搬送装置に載せ、図6に示す構成の焼結炉装置50が設置されている場所まで搬送する。焼結炉装置50は、準備室51、脱バインダ室52、第1焼結室53、第2焼結室54、および冷却室55等を備えており、隣接する処理室は連結部57a〜57dを介して連結されている。連結部57a〜57dは、焼結ケースを大気に暴露することなく処理室間を移動できるように構成されている。焼結ケースは、このような焼結炉装置50内でカーボンコンポジット製トレイ(不図示)に載せられながらローラ56によって搬送され、各処理室内で停止しては、そこで必要な各処理を所定時間受けることになる。各処理はあらかじめ設定された複数のレシピから適宜選択されたレシピに従って実行される。量産性向上の観点から、各処理室で実行する処理は中央制御装置等によって統一的に制御されることが好ましい。各処理は、製造すべき希土類磁石の種類に応じて最適な公知プロセスを採用すればよい。以下、各処理工程を簡単に説明する。
まず、焼結炉装置50の入り口に設けられている準備室51内に少なくとも一つの焼結ケースを挿入し、準備室51を密閉した後、酸化防止のため、雰囲気圧力が2パスカル程度になるまで準備室51内を真空引きする。次に、焼結ケースを脱バインダ室52に搬送し、そこで脱バインダ処理(温度:250〜600度、圧力:2パスカル、時間:3〜6時間)を実行する。脱バインダ処理は、磁性粉末の表面を覆っている潤滑剤(バインダ)を焼結工程の前に揮発させるために行うものである。潤滑剤は、プレス成形時における磁性粉末の配向性を改善するため、プレス成形前に磁性粉末と混合されたものであり、磁性粉末の各粒子間に存在している。脱バインダ処理時にはプレス焼結体から各種のガスが発生するが、前述のゲッタリング剤は、このようなガスの吸収剤(トラップ)としても機能する。
脱バインダ処理が終了した後、焼結ケースは焼結室53または54に搬送され、そこで、1000〜1100℃の焼結処理を2〜5時間程度受ける。この後、焼結ケースは、冷却室55に搬送され、そこで焼結ケースの温度が室温程度に低下するまで冷却処理を受ける。
次に、焼結ケースは焼結炉装置から出され、そのドア板3aおよび3bが上方向にスライドされ、完全に取り除かれた後、焼結ケースは時効処理炉に挿入され、通常の時効処理工程が実行されることになる。ドア板3aおよび3bの開閉は人手で実行しても、機械的に実行しても良い。時効処理は、例えば、雰囲気ガスの圧力を2パスカル程度とし、400〜600℃の温度にて3〜7時間程度のあいだ行われる。本実施形態によれば、時効処理を行うに際して、焼結ケースからプレス成形体を取り出す必要がないため、従来法に比較して作業工数を低減することができる。
上記の各処理室内には同時に複数の焼結ケースが運び込まれ、そこで複数の焼結ケースが同様の処理を同時に受ける。各焼結ケース内には、例えば、200〜800個の多数のプレス成形体を搭載することが可能である。また、焼結室で焼結処理を実行している間に、既に焼結処理が終了した焼結ケースを冷却室で冷却処理する一方、やがて焼結処理を受ける焼結ケースを脱バインダ室で脱バインダ処理することができるため、各処理工程を効率的に進行されることができる。
一般に、焼結処理には比較的に長い時間が必要なため、図6に示すように複数の焼結室を配置し、多数の焼結ケースに対して焼結処理を施せるようにすることが好ましい。この場合、複数の焼結室で実行する各焼結処理の内容は、焼結室毎に異なっていても良い。
本実施形態によれば、炭化による磁石性能の劣化を簡単に抑制でき、希土類焼結磁石の歩留まりを安価に向上させることができるため、量産上極めて優れた効果が発揮される。特に、本実施形態では、Tiなどのゲッタリング用金属を、粉末ではなく、ハンドリングしやすい薄片形状で用いるため、取り替えが容易である。
本実施形態で使用するTi箔は、数回の焼結工程を経ると、表面が炭化され、ゲッタリング能力が低下する。このため、1〜3回程度の焼結工程を経たあと、新しいTi箔と交換することが好ましい。本発明では、粉末ではなく箔状の金属を用いるため、焼結ケースへの挿入/取り出し、交換が極めて容易である。
Ti箔を構成するTi金属は、純度の高いTiである必要はなく、Fe、Al、および/またはMnなどの他の元素が添加されたものであっても良い。ただし、充分なゲッタリング効果を発揮させるためには、Tiの重量比率が全体の65%以上であることが好ましい。Ti以外に炭素をゲッタリングするのに好ましい金属は、Nb、Ta、Zrなどである。
図7(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る方法で製造された焼結磁石(実施例)と、Ti箔を使用しない従来の方法で製造された焼結磁石(比較例)を示す写真である。
図7から明らかなように、実施形態に係る方法で製造された焼結磁石は、炭化せず、きれいな表面を示しており、歩留まりが高かった。これに対し、Ti箔を焼結ケース内に配置しなかった場合に得られた焼結磁石は、炭化によって一部が変形しており、磁石特性が大きく劣化していた。
このように本発明によれば、焼結炉や焼結ケースの改良を行なわなくとも、金属箔を用いるだけで、焼結工程の歩留まりを著しく向上させることが可能になる。
なお、本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、前述の組成を有する磁石に限定されず、R−T−(M)−B系磁石に広く好適に適用される。例えば、希土類元素Rとして、Y、La、Ca、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Luの少なくとも一種類の元素を含有する原料を用いることができる。充分な磁化を得るには、希土類元素Rのうちの50at%以上がPrまたはNdの何れかまたは両方によって占められることが好ましい。希土類元素Rが10at%以下では、α−Fe相の析出によって保磁力が低下する。また、希土類元素Rが20at%を超えると、目的とする正方晶Nd2Fe14B型化合物以外にRリッチの第2相が多く析出し、磁化が低下する。このため、希土類元素Rは全体の10〜20at%の範囲内にあることが好ましい。
Tは、FeおよびCoを含む遷移金属元素である。Tが67at%未満の場合、保磁力および磁化ともに低い第2相が析出するため磁気特性が劣化する。Tが85at%を超えると、α−Fe相の析出によって保磁力が低下し、角型性も低下する。このため、Tの含有量は67〜85at%の範囲内にあることが好ましい。なお、TはFeのみから構成されていても良いが、Coの添加によってキュリー温度が上昇し、耐熱性が向上する。Tの50at%以上はFeで占められることが好ましい。Feの割合が50at%を下回ると、Nd2Fe14B型化合物の飽和磁化そのものが減少するからである。
Bは、正方晶Nd2Fe14B型結晶構造を安定的に析出するために必須である。Bの添加量が4at%未満ではR217相が析出するため保磁力が低下し、減磁曲線の角型性が著しく損なわれる。またBの添加量が10at%を超えると、磁化の小さな第2相が析出してしまう。従って、Bの含有量は4〜10at%の範囲であることが好ましい。
粉末の磁気的な異方性をより高めるためには他の添加元素を付与してもよい。添加元素としては、Al、Ti、Cu、V、Cr、Ni、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wからなる群から選択された少なくとも1種類の元素が好適に使用され得る。このような添加元素は、全く添加されなくても良い。添加する場合は、添加量を10at%以下にすることが好ましい。添加量が10at%を超えると、強磁性ではなく第2相が析出して磁化が低下するからである。なお、磁気的に等方性の磁粉を得るには添加元素Mは不要だが、固有保磁力を高めるためにAl、Cu、Ga等を添加してもよい。
本発明によれば、炭化による磁石性能の劣化を簡単に抑制でき、希土類焼結磁石の歩留まりを安価に向上させることができるため、量産上極めて優れた効果が発揮される。
(a)は、本発明の好ましい実施形態に使用される金属箔の一例を示す上面図であり、(b)は、そのB−B線断面図である。 (a)は、本発明の好ましい実施形態に使用される金属箔の他の例を示す上面図であり、(b)は、そのB−B線断面図である。 (a)は、本発明の好ましい実施形態に使用される金属箔の更に他の例を示す上面図であり、(b)は、そのB−B線断面図である。 本発明による焼結ケースの一実施形態を模式的に示した斜視図である。 (a)は、本発明による焼結ケースの他の実施形態の上面図であり、(b)は、その側面図である。 本発明による希土類焼結磁石の製造方法に好適に使用され得る焼結炉装置の構成を模式的に示す図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る方法で製造された焼結磁石(実施例)と、Ti箔を使用しない従来の方法で製造された焼結磁石(比較例)を示す写真である。
符号の説明
1 本体フレーム
2a 底板、
2b 天板
2c 側板
3a 側面板(ドア板)
3b 側面板(ドア板)
4 モリブデン製の補強チャネル
4’ モリブデン製の補強チャネル
6 ロッド
7 焼結プレート
10 焼結ケース内部
20 底板2aのドア板側端部
30 ドア板3aおよび3bの上端部
40、42、44 Ti箔
70 焼結プレートの先端部

Claims (6)

  1. 希土類磁石粉末の成形体を焼結ケースの内部に挿入する工程(A)と、
    前記焼結ケースを焼結炉に挿入する工程(B)と、
    前記焼結炉の内部で前記成形体を焼結する工程(C)と、
    を含む希土類焼結磁石の製造方法であって、
    前記焼結ケースは、
    開口部を有するケース本体と、
    前記ケース本体の開口部を開閉するドア部材と、
    前記ケース本体の内部に固定されており、前記成形体を載せた焼結プレートを水平方向にスライドさせることができる支持手段と
    を備え、
    少なくとも前記ケース本体および前記ドア部材はモリブデンから形成されており、
    前記工程(C)において、炭素と結合する金属の箔が少なくとも1つ前記焼結ケースの内部に配置され、前記金属の箔は、折り曲げ部または凸部を有し、かつ取り替え可能である、希土類焼結磁石の製造方法。
  2. 前記工程(A)は、前記希土類磁石粉末の成形体を焼結する工程に用いられた回数が3回以下である前記金属の箔を前記焼結ケースの内部に配置する工程を有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属はTiを主成分として含有している請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記ケース本体は、底板と、前記底板に連結された一対の側板と、前記底板に対向するように前記一対の側板に連結された天板とを有し、
    前記ドア部材は、前記一対の側板の端部に設けられた案内部材によって、前記底板に垂直な方向にスライドし得ることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
  5. 前記成形体を前記焼結プレート上に載せる工程と、
    前記成形体を載せた状態の前記焼結プレートを前記焼結ケースの開口部を介して前記焼結ケースの内部に挿入する工程と、
    前記焼結ケースの開口部を前記ドア部材によって閉じる工程と
    を包含する請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記工程(C)において、前記金属の箔は、前記焼結ケースの最下層に挿入される焼結プレートの4隅に配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
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