JP2022037085A - R-Fe-B系焼結磁石 - Google Patents

R-Fe-B系焼結磁石 Download PDF

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哲也 久米
Tetsuya Kume
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Abstract

【解決手段】(R’,HR)2(Fe,(Co))14B(R’はYを含み、Dy,Tb及びHoを除く希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、Ndを必須とし、HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)で表されるHRリッチ相を含む主相と、25~35原子%の(R’,HR)、2~8原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、8原子%以下のCo及び残部のFeの組成を有する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相を、アモルファス相及び微結晶相の一方又は双方の形態で含む粒界相とを有し、HRリッチ相中のHRの含有量が主相の中心部におけるHRの含有量より高いR-Fe-B系焼結磁石。【効果】本発明のR-Fe-B系焼結磁石は、Dy,Tb及びHoの含有量が少なくても、高い保磁力を与える。【選択図】図1

Description

本発明は、高い保磁力を有するR-Fe-B系焼結磁石に関するものである。
Nd-Fe-B系焼結磁石(以下、Nd磁石という場合がある)は、省エネや高機能化に必要不可欠な機能性材料として、その応用範囲と生産量は年々拡大している。例えば、自動車用途では、高温環境下での使用が想定されることから、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用モータや電動パワーステアリング用モータなどに組み込まれるNd磁石には、高い残留磁束密度と同時に、高い保磁力が求められている。その一方、Nd磁石は、保磁力が、高温になると著しく低下し易く、その使用温度での保磁力を確保するため、予め室温での保磁力を十分に高めておく必要がある。
Nd磁石の保磁力を高める手法として、主相であるNd2Fe14B化合物のNdの一部をDy又はTbに置換することが有効であるが、これらの元素は、資源埋蔵量が少ないだけでなく、商業的に成立する生産地域が限定され、かつその安定供給には地政学的要素が影響するため、価格が不安定で変動が大きいといったリスクがある。このような背景から、高温使用に対応したR-Fe-B系磁石が大きな市場を獲得するためには、DyやTbの添加量を極力抑制した上で、保磁力を増大させる新しい方法又はR-Fe-B磁石組成の開発が必要である。このような点から、従来、種々の手法が提案されている。
例えば、特許第3997413号公報(特許文献1)には、原子百分率で12~17%のR(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも2種以上で、かつNd及びPrを必須とする)、0.1~3%のSi、5~5.9%のB、10%以下のCo及び残部Fe(但し、Feは3原子%以下の置換量でAl,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Hf,Ta,W,Pt,Au,Hg,Pb,Biから選ばれる1種以上の元素で置換されていてもよい)の組成を有し、R2(Fe,(Co),Si)14B金属間化合物を主相とする、少なくとも10kOe以上の保磁力を有するR-Fe-B系焼結磁石において、Bリッチ相を含まず、かつ原子百分率で25~35%のR、2~8%のSi、8%以下のCo、残部FeからなるR-Fe(Co)-Si粒界相を体積率で少なくとも磁石全体の1%以上有するR-Fe-B系焼結磁石が開示されている。この焼結磁石は、その製造の、焼結時又は焼結後の熱処理時における冷却工程において、少なくとも700~500℃までの間を0.1~5℃/分の速度に制御して冷却するか、又は冷却途中で少なくとも30分以上一定温度を保持して多段で冷却することによって、組織中にR-Fe(Co)-Si粒界相を形成させたものである。
特表2003-510467号公報(特許文献2)には、硼素分の少ないNd-Fe-B合金、この合金による焼結磁石及びその製造方法が開示されており、この合金から焼結磁石を製造する方法として、原材料を焼結後、300℃以下に冷却する際、800℃までの平均冷却速度をΔT1/Δt1<5K/分で冷却することが記載されている。
特許第5572673号公報(特許文献3)には、R2Fe14B主相と粒界相とを含むR-T-B磁石が記載されている。この粒界相の一部は、主相よりRを多く含むRリッチ相であり、他の粒界相は、主相よりも希土類元素濃度が低く、遷移金属元素濃度が高い遷移金属リッチ相である。そして、このR-T-B希土類焼結磁石は、焼結を800℃~1,200℃で行った後、400℃~800℃で熱処理を行うことで製造されることが記載されている。
特開2014-132628号公報(特許文献4)には、粒界相が、希土類元素の合計原子濃度が70原子%以上のRリッチ相と、希土類元素の合計原子濃度が25~35原子%であって強磁性である遷移金属リッチ相とを含み、粒界相中の遷移金属リッチ相の面積率が40%以上であるR-T-B系希土類焼結磁石が記載され、磁石合金の圧粉成形体を800℃~1,200℃で焼結する工程と、第1の熱処理工程を650℃~900℃で行った後、200℃以下まで冷却し、更に、第2の熱処理工程を450℃~600℃で行う複数の熱処理工程とにより製造することが記載されている。
特開2014-146788号公報(特許文献5)には、R2Fe14Bからなる主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを備えたR-T-B希土類焼結磁石として、R2Fe14B主相の磁化容易軸がc軸と平行であり、R2Fe14B主相の結晶粒子形状がc軸方向と直交する方向に伸長する楕円状であり、粒界相が、希土類元素の合計原子濃度が70原子%以上のRリッチ相と、希土類元素の合計原子濃度が25~35原子%である遷移金属リッチ相とを含むR-T-B系希土類焼結磁石が記載されている。また、その製造において、焼結を800℃~1,200℃で行うこと、焼結後、アルゴン雰囲気中で400℃~800℃にて熱処理を行うことが記載されている。
特開2014-209546号公報(特許文献6)には、R214B主相と、隣接する二つのR214B主相の結晶粒子間の二粒子粒界相とを含み、該二粒子粒界相の厚みは5nm以上500nm以下であり、かつ強磁性体とは異なる磁性を有する相からなる希土類磁石が開示されている。この希土類磁石は、二粒子粒界相としてT元素を含みつつも強磁性とはならない化合物から形成されており、そのためこの相は、遷移金属元素を含むものであって、Al、Ge、Si、Sn、GaなどのM元素を含んでいる。更に、希土類磁石にCuを加えることで、二粒子粒界相としてLa6Co11Ga3型結晶構造を有する結晶相を均一に幅広く形成できると共に、La6Co11Ga3型二粒子粒界相とR214B主相の結晶粒子との界面にR-Cu薄層を形成でき、これによって主相の界面を不動態化し、格子不整合に起因する歪みの発生を抑制し、逆磁区の発生核となるのを抑制できることが記載されている。そして、その製造において、500℃~900℃で焼結後熱処理を行い、冷却速度100℃/分以上、特に300℃/分以上で冷却することが記載されている。
国際公開第2014/157448号(特許文献7)及び国際公開第2014/157451号(特許文献8)には、Nd2Fe14B型化合物を主相とし、二つの主相間に囲まれ、厚みが5~30nmである二粒子粒界と、三つ以上の主相によって囲まれた粒界三重点とを有するR-T-B系焼結磁石が開示されている。
特許第3997413号公報 特表2003-510467号公報 特許第5572673号公報 特開2014-132628号公報 特開2014-146788号公報 特開2014-209546号公報 国際公開第2014/157448号 国際公開第2014/157451号
上述した事情から、Dy、Tb、Hoの含有量が少なくても、高い保磁力を発揮するR-Fe-B系焼結磁石が要望される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い保磁力を有する新規なR-Fe-B系焼結磁石を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、12~17原子%のR(RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とする)、0.1~3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、0.05~0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素)、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC、1.5原子%以下のO、0.5原子%以下のN、及び残部のFeの組成を有し、R2(Fe,(Co))14B金属間化合物を主相とするR-Fe-B系焼結磁石であって、主相と、主相の結晶粒間に形成され、25~35原子%の(R’,HR)、2~8原子%のM1、8原子%以下のCo、及び残部のFeの組成を有する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相(R’はYを含み、Dy,Tb及びHoを除く希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とし、HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)を、アモルファス相及び粒径10nm以下の微結晶相の一方又は双方の形態で含む粒界相とを有し、主相が、その表面部に、(R’,HR)2(Fe,(Co))14Bで表されるHRリッチ相を含み、HRリッチ相中のHRの含有量が、主相の中心部におけるHRの含有量より高いR-Fe-B系焼結磁石が、高い保磁力を有するR-Fe-B系焼結磁石であることを見出した。
そして、このようなR-Fe-B系焼結磁石が、所定の組成を有する合金微粉を調製する工程、合金微粉を磁場印加中で圧粉成形して成形体を得る工程、成形体を900~1,250℃の範囲の温度で焼結して焼結体を得る工程、焼結体を400℃以下の温度まで冷却する工程、HR(HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)を含有する金属、化合物又は金属間化合物を焼結体の表面に配置し、950℃を超えて1,100℃以下の範囲の温度で加熱して、HRを焼結体に粒界拡散させ、400℃以下まで冷却する高温熱処理工程、及び高温熱処理後に、400~600℃の範囲の温度で加熱して、300℃以下まで冷却する低温熱処理工程を含む方法により製造できることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記のR-Fe-B系焼結磁石を提供する。
[1] 12~17原子%のR(RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とする)、0.1~3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、0.05~0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素)、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC、1.5原子%以下のO、0.5原子%以下のN、及び残部のFeの組成を有するR-Fe-B系焼結磁石であり、R2(Fe,(Co))14B金属間化合物を主相とするR-Fe-B系焼結磁石であって、
上記主相と、該主相の結晶粒間に形成され、25~35原子%の(R’,HR)、2~8原子%のM1、8原子%以下のCo、及び残部のFeの組成を有する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相(R’はYを含み、Dy,Tb及びHoを除く希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とし、HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)を含む粒界相とを有し、
(R’,HR)-Fe(Co)-M1相におけるM1が、
0.5~50原子%がSi、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素、
1.0~80原子%がGa、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素、又は
0.5~50原子%がAl、残部がSi,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素
であり、
上記主相が、その表面部に、(R’,HR)2(Fe,(Co))14Bで表されるHRリッチ相を含み、上記HRリッチ相中のHRの含有量が、上記主相の中心部におけるHRの含有量より高く、
上記R-Fe-B系焼結磁石の表面から200μm内部の断面において評価されるHRリッチ相の面積が、主相全体の面積に対して2%以上であり、
上記Rが、Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素を含み、Ndと、Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素との比率(原子比)であるNd/(Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素)が、75/25以上85/15以下であることを特徴とするR-Fe-B系焼結磁石。
[2] 上記HRリッチ相が、上記主相の表面部に不均一に形成されていることを特徴とする[1]記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[3] 上記HRリッチ相中のNdの含有量が、上記主相の中心部におけるNdの含有量の0.8倍以下であることを特徴とする[1]又は[2]記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[4]磁石全体の組成に対するDy,Tb及びHoの合計の含有率が1原子%以下であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[5] 磁石の組織中、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が、体積率で1%以上20%以下存在することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[6] 上記(R’,HR)-Fe(Co)-M1相におけるM1が、
0.5~50原子%がSi、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素、又は
1.0~80原子%がGa、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素
であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[7] 残留磁束密度Brが、23℃で13.2kG以上であり、かつ保磁力Hcjが、23℃で26.2kOe以上であることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[8] 上記Rが、Prを含み、NdとPrとの比率(原子比)であるNd/Prが、77/23以上83/17以下であることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
[9] 上記M2がV,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
また、本発明は、下記のR-Fe-B系焼結磁石が関連する。
〔1〕 12~17原子%のR(RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とする)、0.1~3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、0.05~0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素)、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC、1.5原子%以下のO、0.5原子%以下のN、及び残部のFeの組成を有し、R2(Fe,(Co))14B金属間化合物を主相とするR-Fe-B系焼結磁石であって、
上記主相と、該主相の結晶粒間に形成され、25~35原子%の(R’,HR)、2~8原子%のM1、8原子%以下のCo、及び残部のFeの組成を有する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相(R’はYを含み、Dy,Tb及びHoを除く希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とし、HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)を、アモルファス相及び粒径10nm以下の微結晶相の一方又は双方の形態で含む粒界相とを有し、
上記主相が、その表面部に、(R’,HR)2(Fe,(Co))14Bで表されるHRリッチ相を含み、
上記HRリッチ相中のHRの含有量が、上記主相の中心部におけるHRの含有量より高いことを特徴とするR-Fe-B系焼結磁石。
〔2〕 上記HRリッチ相が、上記主相の表面部に不均一に形成されていることを特徴とする〔1〕記載のR-Fe-B系焼結磁石。
〔3〕 上記HRリッチ相中のNdの含有量が、上記主相の中心部におけるNdの含有量の0.8倍以下であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のR-Fe-B系焼結磁石。
〔4〕 R-Fe-B系焼結磁石の表面から200μm内部の断面において評価されるHRリッチ相の面積が、主相全体の面積に対して2%以上であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のR-Fe-B系焼結磁石。
〔5〕 12~17原子%のR(RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とする)、0.1~3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、0.05~0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素)、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC、1.5原子%以下のO、0.5原子%以下のN、及び残部のFeの組成を有する合金微粉を調製する工程、
該合金微粉を磁場印加中で圧粉成形して成形体を得る工程、
該成形体を900~1,250℃の範囲の温度で焼結して焼結体を得る工程、
該焼結体を400℃以下の温度まで冷却する工程、
HR(HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)を含有する金属、化合物又は金属間化合物を上記焼結体の表面に配置し、950℃を超えて1,100℃以下の範囲の温度で加熱して、HRを焼結体に粒界拡散させ、400℃以下まで冷却する高温熱処理工程、及び
上記高温熱処理後に、400~600℃の範囲の温度で加熱して、300℃以下まで冷却する低温熱処理工程
を含む製造方法により得られたことを特徴とするR-Fe-B系焼結磁石。
本発明のR-Fe-B系焼結磁石は、Dy,Tb及びHoの含有量が少なくても、高い保磁力を与える。
実施例2で作製した焼結磁石の拡散面から200μm内部の元素分布を、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて観察した画像であり、(A)はNdの分布、(B)はTbの分布を示す。 比較例2で作製した焼結磁石の拡散面から200μm内部の元素分布を、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて観察した画像であり、(A)はNdの分布、(B)はTbの分布を示す。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
まず、本発明の磁石組成について説明すると、本発明のR-Fe-B系焼結磁石は、12~17原子%のR、0.1~3原子%のM1、0.05~0.5原子%のM2、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC(炭素)、1.5原子%以下のO(酸素)、0.5原子%以下のN(窒素)、及び残部Feからなる組成を有し、不可避不純物を含んでいてもよい。
RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とする。Nd以外の希土類元素としては、Pr,La,Ce,Gd,Dy,Tb,Hoが好ましく、特にPr,Dy,Tb,Ho、とりわけPrが好ましい。Rの含有率は、12~17原子%であり、13原子%以上であることが好ましく、また、16原子%以下であることが好ましい。Rの含有率は、12原子%未満では、磁石の保磁力が極端に低下し、17原子%を超えると残留磁束密度Brが低下する。Rのうち、必須成分であるNdの比率は、Rの全体の60%原子以上、特に70原子%以上であることが好ましい。また、Nd以外の希土類元素として、Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素を含む場合、Ndと、Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素との比率(原子比)は、Nd/(Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素)が、75/25以上85/15以下が好ましい。特に、Nd以外の希土類元素としてPrを用いる場合、NdとPrとの混合物であるジジムを用いることができ、その場合、NdとPrとの比率Nd/Pr(原子比)を、例えば、77/23以上83/17以下とすることができる。
Dy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素の含有率は、Dy、Tb及びHoの合計として、R全体の20原子%以下であることが好ましく、より好ましくは10原子%以下、更に好ましくは5原子%以下、特に好ましくは3原子%以下であり、0.06原子%以上であることが好ましい。一方、磁石全体の組成に対するDy,Tb及びHoの合計の含有率は、3原子%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5原子%以下、更に好ましくは1原子%以下、特に好ましくは0.4原子%以下であり、0.01原子%以上であることが好ましい。粒界拡散によってDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素を拡散させる場合は、その拡散量は0.7原子%以下、特に0.4原子%以下が好ましく、0.05原子%以上であることがより好ましい。
1は、Si,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素で構成される。M1は後述する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の形成に必要な元素であり、M1を所定の含有率で添加することによって、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相を安定的に形成することができる。M1の含有率は、0.1~3原子%であり、0.5原子%以上であることが好ましく、また、2.5原子%以下であることが好ましい。M1の含有率は、0.1原子%未満では、粒界相における(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の存在比率が低すぎるために、保磁力が十分に向上せず、3原子%を超えると、磁石の角形性が悪化し、更に、残留磁束密度Brが低下するため好ましくない。
2は、Ti,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素で構成される。M2は、焼結時の異常粒成長を抑制することを目的とし、ホウ化物を安定して形成する元素として添加される。M2の含有率は、0.05~0.5原子%である。M2の添加により、製造時、比較的高温で焼結することが可能となり、角形性の改善と磁気特性の向上につながる。
B(ホウ素)の含有率は、(4.8+2×m)~(5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%)、以下同じ)であり、(4.9+2×m)原子%以上であることが好ましく、また、(5.7+2×m)原子%以下であることが好ましい。換言すれば、本発明の磁石の組成におけるM2元素の含有率は0.05~0.5原子%であるから、上記範囲内で特定されたM2元素の含有率によってBの含有率の範囲が異なることになるが、Bの含有率は、4.9~6.9原子%であり、5.0原子%以上であることが好ましく、また、6.7原子%以下であることが好ましい。Bの含有率の上限値は、重要な要素である。Bの含有率が(5.9+2×m)原子%を超えると、後述する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が粒界に形成されず、R1.1Fe44化合物相又は(R’,HR)1.1Fe44化合物相、いわゆるBリッチ相が形成される。このBリッチ相が磁石内に存在するときには、磁石の保磁力が十分に増大しない。一方、Bの含有率が(4.8+2×m)原子%未満では、主相の体積率が低下して、磁気特性が低下する。
Coは、含有していても、含有していなくてもよいが、キュリー温度及び耐食性の向上を目的として、FeをCoで置換することができ、Coを含有している場合、Coの含有率は、10原子%以下、特に5原子%以下であることが好ましい。Coの含有率が10原子%を超えると、保磁力の大幅な低下を招くおそれがある。Coの含有率は、FeとCoとの合計に対し、10原子%以下、特に5原子%以下であることがより好ましい。なお、本発明ではCoを含有している場合と、含有しない場合との双方が含まれることを意味する表記として、『Fe,(Co)』又は『Fe(Co)』を用いる。
炭素、酸素及び窒素の含有率は、より低い方が好ましく、含有していないことがより好ましいが、製造工程上、混入を完全に避けることができない。これらの元素の含有率は、C(炭素)の含有率は0.5原子%以下、特に0.4原子%以下、O(酸素)の含有率は1.5原子%以下、特に1.2原子%以下、N(窒素)の含有率は0.5原子%以下、特に0.3原子%以下まで許容し得る。Feの含有率は、磁石全体の組成に対して、残部であるが、好ましくは70原子%以上、特に75原子%以上で、85原子%以下、特に80原子%以下である。
これらの元素以外、不可避不純物として、H,F,Mg,P,S,Cl,Caなどの元素の含有を、上述した磁石の構成元素と、不可避不純物との合計に対し、不可避不純物の合計として0.1質量%以下まで許容するが、これらの不可避不純物の含有も少ないほうが好ましい。
本発明のR-Fe-B系焼結磁石の結晶粒の平均径は6μm以下、特に5.5μm以下、とりわけ5μm以下であることが好ましく、1.5μm以上、特に2μm以上であることがより好ましい。結晶粒の平均径の制御は、微粉砕時の合金微粉末の平均粒径を調整することで可能である。結晶粒の平均径の測定は、例えば次の手順で行うことができる。まず、焼結磁石の断面を鏡面になるまで研磨した後、例えばビレラ液(例えば、混合比がグリセリン:硝酸:塩酸=3:1:2の混合液)などのエッチング液に浸漬して粒界相を選択的にエッチングした断面を、レーザー顕微鏡にて観察する。次に、得られた観察像をもとに、画像解析にて個々の粒子の断面積を測定し、等価な円としての直径を算出する。そして、各粒度の占める面積分率のデータを基に、平均径を求める。なお、平均径は、例えば、異なる20個所の画像における合計約2,000個の粒子の平均とすればよい。
本発明のR-Fe-B系焼結磁石の残留磁束密度Brは、室温(約23℃)で11kG(1.1T)以上、特に11.5kG(1.15T)以上、とりわけ12kG(1.2T)以上であることが好ましい。一方、本発明のR-Fe-B系焼結磁石の保磁力Hcjは、室温(約23℃)で10kOe(796kA/m)以上、特に14kOe(1,114kA/m)以上、とりわけ16kOe(1,274kA/m)以上であることが好ましい。
本発明の磁石の組織には、主相(結晶粒)と、粒界相とが存在する。結晶粒を構成する主相には、R2(Fe,(Co))14B金属間化合物の相が含まれる。ここで、Coを含まない場合をR2Fe14B、Coを含む場合をR2(Fe,Co)14Bと表記することができる。
一方、主相に含まれるHRリッチ相には、(R’,HR)2(Fe,(Co))14B(R’はYを含み、Dy,Tb及びHoを除く希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とし(以下同じ)、HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素である(以下同じ))で表される相が含まれる。ここで、Coを含まない場合を(R’,HR)2Fe14B、Coを含む場合を(R’,HR)2(Fe,Co)14Bと表記することができる。HRリッチ相は、HRの含有量が、主相の中心部におけるHRの含有量より高い金属間化合物の相である。R’中のNd以外の希土類元素としては、Pr,La,Ce,Gdが好ましく、特にPrが好ましい。このHRリッチ相は、主相の表面部に形成されている。
HRリッチ相は、主相の表面部に不均一に形成されていることが好ましい。HRリッチ相は、主相の表面部全体に形成されていてもよく、例えば、主相のHRリッチ相以外の部分(即ち、内部)の全体を被覆するように形成されていてもよいが、その場合、HRリッチ相の厚さは均一ではなく、最厚部と最薄部とを有していることが好ましい。この場合、最薄部に対する最厚部の比が、1.5倍以上、特に2倍以上、とりわけ3倍以上であることが好ましい。
また、HRリッチ相は、主相の表面部の一部のみに形成されていてもよく、例えば、主相のHRリッチ相以外の部分の一部のみを被覆するように形成されていてもよい。この場合、HRリッチ相の最厚部の厚さは、主相の結晶粒の粒径の0.5%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上で、40%以下、特に30%以下、とりわけ25%以下であることが好ましい。
HRリッチ相の最薄部の厚さは、0.01μm以上、特に0.02μm以上であることが好ましく、また、HRリッチ相の最厚部の厚さは、2μm以下、特に1μm以下であることが好ましい。HRリッチ相の最薄部の厚さが0.01μm未満の場合、保磁力の増大効果が十分でない場合があり、また、HRリッチ相の最厚部の厚みが2μmを超えると、残留磁束密度Brが低下するおそれがある。
HRリッチ相において、HRはRの占有サイトを置換する。HRリッチ相中のNdの含有量は、主相の中心部におけるNdの含有量の0.8倍(80%)以下、特に0.75倍(75%)以下、とりわけ0.7倍(70%)以下であることが好ましい。この比率が、上記範囲を上回ると、HRによる保磁力の増大効果が十分でない場合がある。
また、HRリッチ相は、焼結磁石の表面(例えば、後述する粒界拡散処理における拡散面)から200μm内部の断面において評価されるHRリッチ相の面積が、主相全体の面積に対して2%以上、特に4%以上、とりわけ5%以上であることが好ましい。HRリッチ相の割合が上記範囲未満であると、保磁力の増大効果が十分でない場合がある。このHRリッチ相の割合は、40%以下、特に30%以下、とりわけ25%以下であることが好ましい。HRリッチ相の割合が上記範囲を超えると、残留磁束密度Brが低下するおそれがある。
更に、HRリッチ相中のHRの含有量は、主相の中心部におけるHRの含有量の1.5倍(150%)以上、特に2倍(200%)以上、とりわけ3倍(300%)以上であることが好ましい。この比率が上記範囲を下回ると、保磁力の増大効果が十分でない場合がある。
一方、HRリッチ相中のR’及びHRの合計に対するHRの含有率は、20原子%以上、特に25原子%以上、とりわけ30原子%以上であることが好ましい。この範囲は、更に好ましくは30原子%超、特に31原子%以上である。HRリッチ相中のHRの含有率が、上記範囲を下回ると保磁力の増大効果が十分でない場合がある。
更に、本発明の磁石の組織には、主相の結晶粒間に形成された粒界相が含まれる。粒界相には、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が含まれている。ここで、Coを含まない場合を(R’,HR)-Fe-M1、Coを含む場合を(R’,HR)-FeCo-M1と表記することができる。
粒界相には、(R’,HR)-M1相、好ましくはR’及びHRの合計が50原子%以上の(R’,HR)-M1相や、M2ホウ化物相などが含まれていてもよく、特に、粒界三重点には、M2ホウ化物相が存在していることが好ましい。更に、本発明の磁石の組織は、粒界相に、Rリッチ相又は(R’,HR)リッチ相が含まれていてもよく、また、R炭化物又は(R’,HR)炭化物、R酸化物又は(R’,HR)酸化物、R窒化物又は(R’,HR)窒化物や、Rハロゲン化物又は(R’,HR)ハロゲン化物、R酸ハロゲン化物又は(R’,HR)酸ハロゲン化物などの製造工程上で混入する不可避不純物の化合物の相が含まれていてもよいが、少なくとも粒界三重点、好ましくは二粒子間粒界及び粒界三重点の全体(粒界相全体)に、R2(Fe,(Co))17相又は(R’,HR)2(Fe,(Co))17相、R1.1(Fe,(Co))44相又は(R’,HR)1.1(Fe,(Co))44相が存在しないことが好ましい。
粒界相は、主相の結晶粒の外側に形成され、磁石の組織中、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が、体積率で1%以上存在することが好ましい。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が1体積%未満であると、十分に高い保磁力が得られないおそれがある。この(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の体積率は20%以下、特に10%以下であることが好ましい。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が20体積%を超える場合、残留磁束密度Brの大きな低下を伴うおそれがある。
(R’,HR)-Fe(Co)-M1相は、Coを含有しない場合はFeのみを、Coを含有する場合はFe及びCoを含有する化合物の相であり、空間群I4/mcmなる結晶構造をもつ金属間化合物の相であると考えられ、例えば、(R’,HR)6(Fe,(Co))13Si相、(R’,HR)6(Fe,(Co))13Ga相、(R’,HR)6(Fe,(Co))13Al相などの(R’,HR)6(Fe,(Co))13(M1)相などが挙げられる。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が、主相の結晶粒を取り囲んで分布することで、隣接する主相が磁気的に分断された結果、保磁力が向上する。
(R’,HR)-Fe(Co)-M1相は、R-Fe(Co)-M1で表される相において、Rの一部がHRである相ということができる。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相中のR’及びHRの合計に対するHRの含有率は、30原子%以下であることが好ましい。一般に、R-Fe(Co)-M1相は、La,Pr,Ndのような軽希土類と安定した化合物相を形成することができ、希土類元素の一部がDy,Tb及びHoのような重希土類元素(HR)で置換されると、HRの上記含有率が、30原子%までは安定相を形成する。これを超えると、例えば後述する低温熱処理工程において、例えば(R’,HR)1Fe3相のような強磁性相が生成し、保磁力及び角形性の低下を招くおそれがある。この範囲の下限は、特に限定されるものではないが、通常0.1原子%以上である。
なお、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相におけるM1は、
0.5~50原子%がSi、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素であること、
1.0~80原子%がGa、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素であること、又は
0.5~50原子%がAl、残部がSi,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素
であることが好ましい。
これらの元素は上述の金属間化合物((R’,HR)6(Fe,(Co))13Si相、(R’,HR)6(Fe,(Co))13Ga相、(R’,HR)6(Fe,(Co))13Al相などの(R’,HR)6(Fe,(Co))13(M1)相など)を安定的に形成し、かつM1サイトを相互に置換できる。M1サイトの元素を複合化しても磁気特性に顕著な差は認められないが、実用上、磁気特性のバラツキの低減による品質の安定化や、高価な元素添加量の低減による低コスト化が図られる。
本発明のR-Fe-B系焼結磁石においては、粒界相が、二粒子間粒界及び粒界三重点で、主相の結晶粒を個々に取り囲むように分布していることが好ましく、個々の結晶粒が、粒界相によって、近接する他の結晶粒と隔離されていること、例えば、個々の結晶粒に着目した場合、結晶粒をコアとすると、粒界相がシェルとして結晶粒を被覆しているような構造(いわゆるコア/シェル構造に類似した構造)を有していることがより好ましい。これにより、近接する主相の結晶粒が磁気的に分断され、保磁力がより向上する。主相の磁気的な分断を確実にするためには、近接する2つの結晶粒に挟まれた粒界相の最狭部の厚みが、10nm以上、特に20nm以上であることが好ましく、500nm以下、特に300nm以下であることが更に好ましい。粒界相の幅が10nmより狭いと、磁気分断による十分な保磁力向上効果が得られないおそれがある。また、近接する2つの結晶粒に挟まれた粒界相の最狭部の厚みの平均が50nm以上、特に60nm以上であることが好ましく、300nm以下、特に200nm以下であることが更に好ましい。
主相の結晶粒の表面の粒界相による被覆率は50%以上、特に60%以上、とりわけ70%以上であることが好ましく、結晶粒の表面の全体を被覆していてもよい。なお、粒界相の残部は、例えば、R’及びHRの合計が50原子%以上の(R’,HR)-M1相や、M2ホウ化物相などが挙げられる。
粒界相には、25~35原子%のR、2~8原子%のM1、8原子%以下(即ち、0原子%又は0原子%を超えて8原子%以下)のCo、及び残部のFeの組成を有している(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が含まれていることが好ましい。この組成は、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)などにより定量が可能である。このM1のサイトは、複数種の元素によって相互に置換することができる。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相は、アモルファス相及び粒径10nm以下、好ましくは10nm未満の微結晶相の一方又は双方の形態で存在することが好ましい。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の結晶化が進行すると、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が粒界三重点に凝集し、その結果、二粒子間粒界相の幅が狭くなったり、不連続になったりして磁石の保磁力が低下するおそれがある。また、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の結晶化の進行と共に、Rリッチ相又は(R’,HR)リッチ相が、主相の結晶粒と、粒界相との界面に生成する場合があるが、Rリッチ相又は(R’,HR)リッチ相の形成自体で保磁力が大きく向上することはない。
一方、(R’,HR)-M1相や、M2ホウ化物相が存在する場合、これらの相も、アモルファス相及び粒径10nm以下、好ましくは10nm未満の微結晶相の一方又は双方の形態で存在することが好ましい。
次に、本発明のR-Fe-B系焼結磁石を製造する方法について、以下に説明する。
R-Fe-B系焼結磁石の製造における各工程は、基本的には、通常の粉末冶金法と同様であり、所定の組成を有する合金微粉を調製する工程(この工程には、原料を溶解して原料合金を得る溶融工程と、原料合金を粉砕する粉砕工程とが含まれる)、合金微粉を磁場印加中で圧粉成形し成形体を得る工程、成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程、及び焼結後の冷却工程を含む。
溶融工程においては、所定の組成、例えば、12~17原子%のR(RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とし、好ましくはPrを含む)、0.1~3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、0.05~0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素)、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC、1.5原子%以下のO、0.5原子%以下のN、及び残部のFeの組成、通常は、C,O及びNを含まない組成に合わせて、原料の金属又は合金を秤量し、例えば、真空中又は不活性ガス雰囲気、好ましくはArガスなどの不活性ガス雰囲気で、例えば高周波溶融により原料を溶解し、冷却して、原料合金を製造する。この原料の金属又は合金の組成においては、Rに、Dy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素(HR)が含まれていても、含まれていなくてもよい。原料合金の鋳造は、平型やブックモールドに鋳込む通常の溶解鋳造法を用いても、ストリップキャスト法を用いてもよい。α-Feの初晶が鋳造合金中に残る場合、この合金を、例えば、真空中又はArガスなどの不活性ガス雰囲気中で700~1,200℃において1時間以上熱処理して、微細組織を均一化し、α-Fe相を消去することができる。
粉砕工程は、まず、原料合金を、ブラウンミルなどの機械粉砕、水素化粉砕などによる粗粉砕工程で、一旦、好ましくは平均粒径0.05mm以上で、3mm以下、特に1.5mm以下に粉砕する。この粗粉砕工程は、ストリップキャストにより作製された合金の場合は水素化粉砕が好ましい。粗粉砕した後は、更に、例えば高圧窒素などを用いたジェットミル粉砕などによる微粉砕工程により、好ましくは平均粒径0.2μm以上、特に0.5μm以上で、30μm以下、特に20μm以下、とりわけ10μm以下の合金微粉を製造する。なお、原料合金の粗粉砕又は微粉砕の一方又は双方の工程において、必要に応じて潤滑剤等の添加剤を添加してもよい。
合金微粉の製造には、二合金法を適用してもよい。この方法は、R2-T14-B1(Tは、通常Fe又はFe及びCoを表わす)に近い組成を有する母合金と、希土類(R)リッチな組成の焼結助剤合金とをそれぞれ製造し、粗粉砕し、次いで得られた母合金と焼結助剤の混合粉を上記の手法で粉砕するものである。なお、焼結助剤合金を得るために、上記の鋳造法やメルトスパン法を採用し得る。
成形工程においては、微粉砕された合金微粉を、磁界印加中、例えば5kOe(398kA/m)~20kOe(1,592kA/m)の磁界印加中で、合金粉末の磁化容易軸方向を配向させながら、圧縮成形機で圧粉成形する。成形は、合金微粉の酸化を抑制するため、真空中、窒素ガス雰囲気、Arガスなどの不活性ガス雰囲気などで行うことが好ましい。焼結工程においては、成形工程で得られた成形体を焼結する。焼結温度は、900℃以上、特に1,000℃以上、とりわけ1,050℃以上で、1,250℃以下、特に1,150℃以下、とりわけ1,100℃以下が好ましく、焼結時間は、通常0.5~5時間である。焼結後の焼結体は、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、更に好ましくは200℃以下の温度まで冷却される。この冷却速度は、特に制限されないが、上記範囲の上限に到達するまでは、1℃/分以上、特に5℃/分以上が好ましく、100℃/分以下、特に50℃/分以下がより好ましい。焼結後の焼結体は、必要に応じて時効処理(例えば、400~600℃で、0.5~50時間)を実施して、その後、通常、常温まで冷却される。
ここで、得られた焼結体(焼結磁石体)に対して熱処理工程を実施してもよい。この熱処理工程は、400℃以下の温度まで冷却された焼結体を700℃以上、特に800℃以上で、1,100℃以下、特に1,050℃以下の温度で加熱し、400℃以下まで再び冷却する高温熱処理工程、及び高温熱処理工程後に、400~600℃の範囲の温度で加熱して、300℃以下、好ましくは200℃以下まで冷却する低温熱処理工程の、2段の熱処理工程を実施することが好ましい。熱処理雰囲気は、真空中又はArガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
高温熱処理の昇温速度は、特に限定されないが、1℃/分以上、特に2℃/分以上で、20℃/分以下、特に10℃/分以下が好ましい。高温熱処理温度での保持時間は、1時間以上が好ましく、通常10時間以下、好ましくは5時間以下である。加熱後は、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、更に好ましくは200℃以下まで冷却する。この冷却速度は、特に制限されないが、上記範囲の上限に到達するまでは、1℃/分以上、特に5℃/分以上が好ましく、100℃/分以下、特に50℃/分以下がより好ましい。
高温熱処理に続く低温熱処理においては、冷却した焼結体を、400℃以上、好ましくは450℃以上で、600℃以下、好ましくは550℃以下の範囲の温度で加熱する。低温熱処理の昇温速度は、特に限定されないが、1℃/分以上、特に2℃/分以上で、20℃/分以下、特に10℃/分以下が好ましい。低温熱処理温度での昇温後の保持時間は、0.5時間以上、特に1時間以上で、50時間以下、特に20時間以下が好ましい。加熱後の冷却速度は、特に制限されないが、上記範囲の上限に到達するまでは、1℃/分以上、特に5℃/分以上が好ましく、100℃/分以下、特に80℃/分以下、とりわけ50℃/分以下がより好ましい。熱処理後の焼結体は、その後、通常、常温まで冷却される。
なお、高温熱処理及び低温熱処理における諸条件は、M1元素の種類及び含有率などの組成や、不純物、特に、製造時の雰囲気ガスに起因する不純物の濃度、焼結条件など、高温熱処理及び低温熱処理以外の製造工程に起因する変動に応じて、上述した範囲内で、適宜調整することができる。
本発明において、(R’,HR)2(Fe,(Co))14B相を含むHRリッチ相及び(R’,HR)-Fe(Co)-M1相を含む粒界相は、粒界拡散法によって形成することができる。この粒界拡散処理としては、焼結体を、必要に応じて、例えば、最終製品形状に近い所定の形状及びサイズの焼結体に、切断や表面研削などにより加工し、次いで、例えば、HR(HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)で表される元素(HR元素)を含む、金属、化合物又は金属間化合物を、例えば粉末や薄膜状で、焼結体の表面に配置し、焼結体を包囲した、金属、化合物又は金属間化合物からHR元素を焼結体表面から粒界相を介して焼結体内部に導入する処理を適用することができる。なお、主相のHRリッチ相以外の部分には、粒界拡散により、HRで表される元素が固溶してもよいが、特に、主相の中心部には、固溶していないことが好ましい。一方、主相には、いずれも、粒界拡散により、HRで表される元素以外の他の希土類元素は固溶しないことが好ましい。
焼結体表面からHR元素を、粒界相を介して焼結体内部に導入する粒界拡散法としては、
(1)HR元素を含有する、金属、化合物又は金属間化合物からなる粉末を焼結体表面に配置し、真空中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理する方法(例えばディップコーティング法)、
(2)HR元素を含有する、金属、化合物又は金属間化合物の薄膜を、高真空中で焼結体表面に形成し、真空中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理する方法(例えばスパッタ法)、
(3)HR元素を含有する金属、化合物又は金属間化合物を高真空中で加熱し、HR元素を含有する蒸気相を形成し、蒸気相を介して焼結体にHR元素を供給、拡散させる方法(例えば蒸気拡散法)
などが挙げられ、特に(1)又は(2)、とりわけ(1)の方法が好適である。
好適なHR元素を含有する、金属、化合物又は金属間化合物としては、例えばHR元素の単体金属又は合金、HR元素の酸化物、ハロゲン化物、酸ハロゲン化物、水酸化物、炭化物、炭酸塩、窒化物、水素化物、ホウ化物、及びそれらの混合物、HR元素とFe,Co,Niなどの遷移金属との金属間化合物(遷移金属の一部をSi,Al,Ti,V,Cr,Mn,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Sb,Hf,Ta,W,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素で置換することもできる)などが挙げられる。
HRリッチ相の厚みは、HR元素の添加量若しくはHR元素の焼結体内部への拡散量、又は粒界拡散処理における処理温度若しくは処理時間を調整することで制御することができる。
本発明において、(R’,HR)2(Fe,(Co))14B相を含むHRリッチ相及び(R’,HR)-Fe(Co)-M1相を含む粒界相を粒界拡散により形成するためには、焼結後又は粒界拡散処理前の熱処理後に冷却された焼結体の表面に、金属、化合物又は金属間化合物を、例えば粉末や薄膜状で配置し、まず、950℃超、特に960℃以上、とりわけ975℃以上で、1,100℃以下、特に1,050℃以下、とりわけ1,030℃以下の温度に加熱してHR元素を焼結体に粒界拡散させ、次いで、400℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下まで冷却する高温熱処理工程を実施する。熱処理雰囲気は、真空中又はArガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
この加熱温度が上記範囲を下回ると、保磁力の増大効果が十分でない場合があり、上記範囲を上回ると、粒成長による保磁力の低下が起こるおそれがある。また、この加熱温度は、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の包晶温度(分解温度)以上であることが有効である。(R’,HR)-Fe(Co)-M1相は、M1の種類によって、高温安定性が変化し、M1の種類によって、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相を形成する包晶温度が異なる。包晶温度は、例えば、M1がCuのときは640℃、M1がAlのときは750℃、M1がGaのときは850℃、M1がSiのときは890℃、M1がGeのときは960℃、M1がInのときは890℃である。この場合の昇温速度は、特に限定されないが、1℃/分以上、特に2℃/分以上で、20℃/分以下、10℃/分以下が好ましい。加熱時間は、0.5時間以上、特に1時間以上で、50時間以下、特に20時間以下が好ましい。
加熱後の冷却速度は、特に制限されないが、上記範囲の上限に到達するまでは、1℃/分以上、特に5℃/分以上が好ましく、100℃/分以下、特に50℃/分以下がより好ましい。冷却速度が上記範囲未満の場合、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が粒界三重点に偏析するため、磁気特性が悪化するおそれがある。一方、冷却速度が100℃/分を超える場合、冷却過程における(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の偏析を抑制することはできるが、特に、焼結磁石の角形性が悪化するおそれがある。
高温熱処理後は、400℃以上、特に430℃以上で、600℃以下、特に550℃以下の温度に加熱し、次いで、300℃以下、好ましくは、200℃以下の温度まで冷却する低温熱処理工程を実施する。熱処理雰囲気は、真空中又はArガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
この加熱温度は、粒界相に(R’,HR)-Fe(Co)-M1相を形成するため、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相の包晶温度未満とすることが有効である。この加熱温度が400℃未満では(R’,HR)-Fe(Co)-M1を形成する反応速度が非常に遅くなる場合がある。一方、この加熱温度が600℃を超えると(R’,HR)-Fe(Co)-M1を形成する反応速度が非常に速く、(R’,HR)-Fe(Co)-M1粒界相が粒界三重点に大きく偏析して、磁気特性が低下するおそれがある。
低温熱処理の昇温速度は、特に限定されないが、1℃/分以上、特に2℃/分以上で、20℃/分以下、特に10℃/分以下が好ましい。低温熱処理温度での昇温後の保持時間は、0.5時間以上、特に1時間以上で、50時間以下、特に20時間以下が好ましい。加熱後の冷却速度は、特に制限されないが、上記範囲の上限に到達するまでは、1℃/分以上、特に5℃/分以上が好ましく、100℃/分以下、特に80℃/分以下、とりわけ50℃/分以下がより好ましい。熱処理後の焼結体は、その後、通常、常温まで冷却される。
以下、参考例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[参考例1、2]
希土類金属(Nd又はジジム(NdとPrとの混合物))、電解鉄、Co、M1元素及びM2元素の金属又は合金、及びFe-B合金(フェロボロン)を使用して所定の組成となるように秤量し、Arガス雰囲気中、高周波誘導炉で溶解し、水冷銅ロール上で溶融合金をストリップキャストすることによって合金薄帯を製造した。得られた合金薄帯の厚さは約0.2~0.3mmであった。
次に、作製した合金薄帯に、常温で水素吸蔵処理を行った後、真空中600℃で加熱し、脱水素化を行って合金を粉末化した。得られた粗粉末に潤滑剤としてステアリン酸を0.07質量%加えて混合した。次に、粗粉末と潤滑剤との混合物を、窒素気流中のジェットミルで粉砕して平均粒径3μm程度の微粉末を作製した。
次に、作製した微粉末を、不活性ガス雰囲気中で成形装置の金型に充填し、15kOe(1.19MA/m)の磁界中で配向させながら、磁界に対して垂直方向に加圧成形した。次に、得られた圧粉成形体を真空中において1,050~1,100℃で3時間焼結し、200℃以下まで冷却した後、450~530℃で2時間の時効処理を行って、焼結体(焼結磁石体)を得た。得られた焼結体の組成を表1に、その磁気特性を表2に示す。なお、磁気特性は、得られた焼結体の中心部を6mm×6mm×2mmのサイズの直方体形状に切り出して評価した。
[実施例1~6、比較例1~3]
参考例1で得た焼結体を20mm×20mm×2.2mmのサイズの直方体形状に加工後、平均粒径0.5μmの酸化テルビウム粒子を質量分率50%でエタノールと混合したスラリー中に浸漬し、乾燥させ、焼結体表面に酸化テルビウムの塗膜を形成した。次に、塗膜が形成された焼結体を真空中で、表2に示される保持温度、保持時間で加熱した後、200℃まで表2に示される冷却速度で冷却する高温熱処理を実施し、次いで、表2に示される保持温度で2時間加熱した後、200℃まで表2に示される冷却速度で冷却する低温熱処理を実施して、焼結磁石を得た。得られた焼結磁石の組成を表1に、その磁気特性を表2に示す。なお、磁気特性は、得られた焼結磁石の中心部を6mm×6mm×2mmのサイズの直方体形状に切り出して評価した。
図1は、実施例2で作製した焼結磁石の拡散面から200μm内部の元素分布を、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて観察したNdの元素分布(A)及びTbの元素分布(B)の画像である。Tbが粒界相を介して拡散して、HRリッチ相が主相の表面部に不均一に生成している様子が見られる。このHRリッチ相は、(R’,HR)2(Fe,(Co))14B相であることが確認され、二粒子間粒界及び粒界三重点に存在し、特に、粒界三重点の部分に厚く存在していた。一方、粒界相には、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相及び(R’,HR)リッチ相が含まれていることが確認され、更に、(R’,HR)酸化物相が、主に粒界三重点に偏析していることが確認された。
一方、図2は、比較例2で作製した焼結磁石の拡散面から200μm内部の元素分布を、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)にて観察したNdの元素分布(A)及びTbの元素分布(B)の画像である。この場合もTbが粒界相を介して拡散して、HRリッチ相が主相の表面部に生成している様子が見られるが、HRリッチ相は、主相の表面部に均一に生成している。
Tbの元素分布の画像では、Tbの元素分布からはHRリッチ相と、(R’,HR)リッチ相及び(R’,HR)酸化物相との区別は鮮明ではないが、Ndの元素分布の画像に着目すると、Nd含有量は、主相の中心部に比べて、(R’,HR)リッチ相及び(R’,HR)酸化物相は高く、HRリッチ相は低くなっており、区別が可能である。実施例及び比較例のR-Fe-B系焼結磁石の断面において、主相の中心部におけるNdの含有量に比べてNd含有量が80%以下の部分をHRリッチ相とし、その部分面積の主相全体の面積に対する割合を評価した結果を表2に示す。比較例の焼結磁石に比べて、実施例の焼結磁石のHRリッチ相の割合が高く、このR-Fe-B系焼結磁石が、高い保磁力を有していることがわかった。
[実施例7~9、比較例4]
参考例2で得た焼結体を20mm×20mm×2.2mmのサイズの直方体形状に加工後、平均粒径0.5μmの酸化テルビウム粒子を質量分率50%でエタノールと混合したスラリー中に浸漬し、乾燥させ、焼結体表面に酸化テルビウムの塗膜を形成した。次に、塗膜が形成された焼結体を真空中で、表2に示される保持温度、保持時間で加熱した後、200℃まで表2に示される冷却速度で冷却する高温熱処理を実施し、次いで、表2に示される保持温度で2時間加熱した後、200℃まで表2に示される冷却速度で冷却する低温熱処理を実施して、焼結磁石を得た。得られた焼結磁石の組成を表1に、その磁気特性を表2に示す。なお、磁気特性は、得られた焼結磁石の中心部を6mm×6mm×2mmのサイズの直方体形状に切り出して評価した。また、上述した方法により評価したHRリッチ相の割合を表2に示す。比較例の焼結磁石に比べて、実施例の焼結磁石のHRリッチ相の割合が高く、このR-Fe-B系焼結磁石が、高い保磁力を有していることがわかった。
[実施例10、比較例5]
参考例1で得た焼結体を20mm×20mm×2.2mmのサイズの直方体形状に加工後、平均粒径0.5μmの酸化ジスプロシウム粒子を質量分率50%でエタノールと混合したスラリー中に浸漬し、乾燥させ、焼結体表面に酸化ジスプロシウムの塗膜を形成した。次に、塗膜が形成された焼結体を真空中で、表2に示される保持温度、保持時間で加熱した後、200℃まで表2に示される冷却速度で冷却する高温熱処理を実施し、次いで、表2に示される保持温度で2時間加熱した後、200℃まで表2に示される冷却速度で冷却する低温熱処理を実施して、焼結磁石を得た。得られた焼結磁石の組成を表1に、その磁気特性を表2に示す。なお、磁気特性は、得られた焼結磁石の中心部を6mm×6mm×2mmのサイズの直方体形状に切り出して評価した。また、上述した方法により評価したHRリッチ相の割合を表2に示す。比較例の焼結磁石に比べて、実施例の焼結磁石のHRリッチ相の割合が高く、このR-Fe-B系焼結磁石が、高い保磁力を有していることがわかった。
Figure 2022037085000002
Figure 2022037085000003

Claims (9)

  1. 12~17原子%のR(RはYを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とする)、0.1~3原子%のM1(M1はSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素)、0.05~0.5原子%のM2(M2はTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素)、(4.8+2×m~5.9+2×m)原子%(mはM2で表される元素の含有率(原子%))のB、10原子%以下のCo、0.5原子%以下のC、1.5原子%以下のO、0.5原子%以下のN、及び残部のFeの組成を有するR-Fe-B系焼結磁石であり、R2(Fe,(Co))14B金属間化合物を主相とするR-Fe-B系焼結磁石であって、
    上記主相と、該主相の結晶粒間に形成され、25~35原子%の(R’,HR)、2~8原子%のM1、8原子%以下のCo、及び残部のFeの組成を有する(R’,HR)-Fe(Co)-M1相(R’はYを含み、Dy,Tb及びHoを除く希土類元素から選ばれる1種又は2種以上の元素で、かつNdを必須とし、HRはDy,Tb及びHoから選ばれる1種以上の元素)を含む粒界相とを有し、
    (R’,HR)-Fe(Co)-M1相におけるM1が、
    0.5~50原子%がSi、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素、
    1.0~80原子%がGa、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素、又は
    0.5~50原子%がAl、残部がSi,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素
    であり、
    上記主相が、その表面部に、(R’,HR)2(Fe,(Co))14Bで表されるHRリッチ相を含み、上記HRリッチ相中のHRの含有量が、上記主相の中心部におけるHRの含有量より高く、
    上記R-Fe-B系焼結磁石の表面から200μm内部の断面において評価されるHRリッチ相の面積が、主相全体の面積に対して2%以上であり、
    上記Rが、Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素を含み、Ndと、Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素との比率(原子比)であるNd/(Pr,La,Ce及びGdから選ばれる1種以上の元素)が、75/25以上85/15以下であることを特徴とするR-Fe-B系焼結磁石。
  2. 上記HRリッチ相が、上記主相の表面部に不均一に形成されていることを特徴とする請求項1記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  3. 上記HRリッチ相中のNdの含有量が、上記主相の中心部におけるNdの含有量の0.8倍以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  4. 磁石全体の組成に対するDy,Tb及びHoの合計の含有率が1原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  5. 磁石の組織中、(R’,HR)-Fe(Co)-M1相が、体積率で1%以上20%以下存在することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  6. 上記(R’,HR)-Fe(Co)-M1相におけるM1が、
    0.5~50原子%がSi、残部がAl,Mn,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素、又は
    1.0~80原子%がGa、残部がSi,Al,Mn,Ni,Cu,Zn,Ge,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Pt,Au,Hg,Pb及びBiから選ばれる1種以上の元素
    であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  7. 残留磁束密度Brが、23℃で13.2kG以上であり、かつ保磁力Hcjが、23℃で26.2kOe以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  8. 上記Rが、Prを含み、NdとPrとの比率(原子比)であるNd/Prが、77/23以上83/17以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のR-Fe-B系焼結磁石。
  9. 上記M2がV,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれる1種以上の元素であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のR-Fe-B系焼結磁石。
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