JP6408284B2 - 永久磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Dy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて飛躍的に高い保磁力を有する高性能永久磁石の製造方法に関する。
従来、Dy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて飛躍的に高い保磁力を有する永久磁石の製造方法は、例えば特許文献1で知られている。このものでは、直方体状の焼結磁石と、Dy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を含有する板状の蒸発材料(バルク体)とを一定の空間に区画された処理室内に配置する。この場合、2枚の蒸発材料を、間隔を存して対向配置すると共に、当該蒸発材料相互の間の空間に、主面が夫々平行となるように焼結磁石の複数個を、間隔を存して夫々並置する。そして、処理室内を加熱して蒸発材料及び焼結磁石を700℃以上1000℃以下に加熱することにより、Dy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を焼結磁石の表面に供給しつつ、その内部に拡散させる(真空蒸気処理)。
ここで、上記従来例のものでは、焼結磁石の各々が保持部材としてのNb製の網に夫々載置されている。このような状態で真空蒸気処理を施すと、焼結磁石の種類(Nd、B、Feの組成比や、形状及び重量)によっては、網に焼結磁石が融着することが判明した。この場合、真空蒸気処理後に網から剥がした焼結磁石は、その表面状態が悪く、そのままでは商品価値がない。このため、表面を研磨する後工程等が必要になり、これでは、生産性が損なわれる。
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ね、真空蒸気処理時の焼結磁石の加熱温度に関係なく、特に、焼結磁石表面近傍の希土類濃度が高いときに網への焼結磁石の融着が起こり得ることを知見するのに至った。つまり、真空蒸気処理の際、焼結磁石を700℃以上に昇温させると、焼結磁石表面近傍の希土類リッチ相(Ndリッチ相)が液相になり、ここに蒸発したDyやTbの原子が付着して結晶粒界へと内部拡散していくが、希土類(Nd)濃度が高いと、これに応じて焼結磁石表面近傍にて液相となる割合が増加し、焼結磁石と網との接触箇所にて焼結磁石表面近傍が液相となると、これに焼結磁石の自重が加わることで、焼結磁石の融着が起こると考えた。
国際公開2007/102391号公報
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、焼結磁石の種類に関係なく、高性能磁石を生産性よく得ることができる永久磁石の製造方法を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明の永久磁石の製造方法は、処理室内に、Dy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を含有する板状の蒸発材料と、所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石の複数個とを間隔を存して対向配置し、減圧下で処理室内を加熱して焼結磁石を所定温度に加熱すると共に蒸発材料を蒸発させ、この蒸発したDy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を焼結磁石表面への供給量を調節して付着させ、この付着したDy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる場合に、前記焼結磁石の自重が作用しない姿勢で当該焼結磁石を保持することを特徴とする。
本発明によれば、各焼結磁石をその自重が作用しない姿勢で保持したため、真空蒸気処理の際に、焼結磁石の保持部材への融着が防止され、その結果、真空蒸気処理を施した後の永久磁石の表面状態に変化はなく、特段の後工程が不要になって生産性が損なわれることはない。なお、本発明において、「板状」の蒸発材料といった場合、蒸発材料が板状に一体に作製されているような場合だけでなく、例えば、板状の支持部材の片面に粒状の蒸発材料を敷き詰めて焼結磁石側から視たときに板状の輪郭をなすようにしたものも含み、ここにいう板状の支持部材は処理室の床面で構成することもできる。
本発明において、前記処理室を画成する処理箱内に前記蒸発材料と前記焼結磁石とが収納され、この処理箱を真空熱処理炉内に設置した後、真空熱処理炉の減圧下で処理箱が加熱される場合には、支持枠とこの支持枠に互いに平行に架設される線材とを備える保持部材を用い、互いに隣接する二本の線材間で各焼結磁石を挟持し、保持部材と蒸発材料とを上下方向で交互に積み重ねて処理箱内に収納すればよい。これによれば、処理箱の底面に蒸発材料を設置した後、その上方に間隔を存して焼結磁石の複数個を挟持した保持部材を設置し、更に、その上側に支持枠で支持されるように板状の蒸発材料を設置する。そして、処理箱の上端付近まで蒸発材料と保持部材とを階層状に交互に積み重ねていく。これにより、1個の処理箱内に収納できる焼結磁石の数を増加させ、生産性を高めることができる(積載量を増加できる)。この場合、同一平面に位置する焼結磁石の上下を蒸発材料で挟む所謂サンドイッチ構造としたため、処理箱内で全ての焼結磁石の近傍に蒸発材料が位置することになり、当該蒸発材料を蒸発させたときに、この蒸発させた金属原子が全ての焼結磁石表面に供給されて付着するようになる。その結果、DyやTb原子を焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて、磁化および保磁力を向上または回復させるという真空蒸気処理の効果が損なわれることはない。
本発明においては、処理箱内に前記蒸発材料と前記焼結磁石とを収納する作業性を考慮して、処理箱が、上部が開口した箱部とこの箱部の開口面に着脱自在に装着される蓋部とで構成されることが好ましい。
本発明の永久磁石の製造方法を実施し得る真空蒸気装置の模式断面図。 処理箱への蒸発材料と焼結磁石との積載を説明する斜視図。 保持部材への焼結磁石の取り付けを説明する平面図。 真空蒸気処理の手順を説明するグラフ。
以下、図面を参照して、蒸発材料RMを重希土類元素としてのDyを主成分として含有するものとし、Dyを蒸発させ、この蒸発したDy原子を所定形状に作製された焼結磁石Sの表面に付着させ、この焼結磁石Sの結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる一連の処理(真空蒸気処理)を同時に行って高性能永久磁石を製造する実施形態について説明する。以下において、「上」、「下」、「左」、「右」といった方向を示す用語は図1を基準とする。
出発材料たる焼結磁石Sは、例えば、次のように作製される。即ち、Fe、Nd、Bが所定の組成比となるように、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロンを配合して真空誘導炉を用いて溶解し、急冷法、例えばストリップキャスト法により0.05〜0.5mmの合金原料を先ず作製する。あるいは、遠心鋳造法で5〜10mm程度の厚さの合金原料を作製してもよく、配合の際に、Dy、Tb、Co、Cu、Nb、Zr、Al、Ga等を添加しても良い。希土類元素の合計含有量を28.5%より多くし、α鉄が生成しないインゴットとする。
次いで、作製した合金原料を、公知の水素粉砕工程により粗粉砕し、引き続き、ジェットミル微粉砕工程により窒素ガス雰囲気中で微粉砕し、平均粒径3〜10μmの合金原料粉末を得る。この合金原料粉末を、公知の圧縮成形機を用いて磁界中で、直方体や円柱などの所定形状に圧縮成形する。そして、圧縮成形機から取出した成形体を、図示省略した焼結炉内に収納し、減圧下でかつ所定温度(例えば、1050℃)で所定時間焼結(焼結工程)して焼結磁石Sを得る。焼結磁石Sとしては、酸素含有量が少ない程、Dy原子の結晶粒界及び/または結晶粒界相への拡散速度が速くなるため、焼結磁石S自体の酸素含有量が3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下であればよい。そして、このようにして得た焼結磁石Sに対し真空蒸気処理を施す。以下に、図1を参照してこの真空蒸気処理を施す真空蒸気処理装置を説明する。
真空蒸気処理装置1は、図1に示すように、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段2を介して所定圧力(例えば1×10−5Pa)まで減圧して保持できる真空熱処理炉3を有する。真空熱処理炉3内には、後述する処理箱の周囲を囲う断熱材41とその内側に配置した発熱体42とから構成される加熱手段4が設けられる。断熱材41は、例えばMo製であり、また、発熱体42はMo製のフィラメント(図示せず)を有する電気ヒータで構成され、図示省略した電源からフィラメントに通電し、抵抗加熱式で断熱材41により囲繞され処理箱が設置される空間5を加熱できる。この空間5には、例えばMo製のテーブル6が設けられ、少なくとも1個の処理箱7が載置できるようになっている。
図2及び図3も参照して、処理箱7は、上面を開口した直方体形状の箱部71と、開口した箱部71の上面に着脱自在な蓋部72とから構成されている。蓋部72の外周縁部には下方に屈曲させたフランジ72aがその全周に亘って形成され、箱部71の上面に蓋部72を装着すると、フランジ72aが箱部71の外壁に嵌合して(この場合、メタルシールなどの真空シールは設けていない)、熱処理炉3と隔絶された処理室70が画成される。そして、真空排気手段2を作動させて熱処理炉3を所定圧力(例えば、1×10−5Pa)まで減圧すると、処理室70が、熱処理炉3より高い圧力(例えば、5×10−4Pa)まで減圧される。これにより、付加的な真空排気手段を必要とすることなく、処理室70内を適宜所定圧力にすることができる。
処理箱7の箱部71には、複数個の焼結磁石S及び板状の蒸発材料RMが互いに接触しないように上下に積み重ねて収納される。蒸発材料RMとしては、主相の結晶磁気異方性を大きく向上させるDyの他、TbやHoを用いることができ、また、これらにNd、Pr、Al、Cu及びGa等の一層保磁力を高める金属を配合した合金(Dy、Tbの質量比が50%以上)を用いることができる。そして、上記各金属を所定の混合割合で配合した後、例えばアーク溶解炉で溶解した後、所定の厚さの板状に形成されている。焼結磁石Sの各々は、その自重が作用しない姿勢で保持部材8に夫々保持されている。なお、板状の蒸発材料としては、板状の支持部材の片面に、粒径が揃った粒状(例えば、球体)の蒸発材料を敷き詰めて焼結磁石側から視たときに板状の輪郭をなすようにしたものを用いることができ、例えば、粒状の蒸発材料を処理室の床面に敷き詰めて構成してもよい。
保持部材8は、左右方向に所定間隔を置いて設けられる2枚の支持枠81,81と、支持枠81間に互いに平行に架設される複数本の線材82a,82bとを備える。支持枠81,81は、蒸発したDy原子の通過を許容する例えばMo製のメッシュ部材で構成され、支持枠81,81の上面で板状の蒸発材料RMを支持できるようにしている。この場合、蒸発材料RMの上面または下面と、各焼結磁石Sの対向面との間の間隔は、0.1mm〜7mmの範囲で同等になるように設定されることが好ましい。これにより、蒸発したDy原子が理想的に供給され、磁化および保磁力が一層向上または回復し、かつ、減磁曲線の角型性が損なわれることのない高性能磁石が生産性良く得られる。他方、線材82は、例えばMo製でφ0.1〜10mmの範囲のものが用いられ、磁石の幅より小さい間隔で設置されている。そして、隣接する二本の線材82a,82b間で各焼結磁石Sを挟持するようにしている。なお、焼結磁石Sの重量等を考慮して、線材82a,82bと直交する方向に他の線材83を格子状に組み付けて強度を増すようにしてもよい。
処理箱7の箱部71への焼結磁石Sと板状の蒸発材料RMとの積載に際しては、先ず、線材82a,82bを弾性変形させながら、隣接する二本の線材82a,82b間に各焼結磁石Sを挟持させ、複数個の焼結磁石Sがセットされた保持部材8を用意する。そして、箱部71の底面に板状の蒸発材料RMを設置した後、その上側に、焼結磁石Sがセットされた保持部材8を載置し、さらに、支持枠81,81の上端で支持されるように他の板状の蒸発材料RMを設置する。このようにして、処理箱7の上端部まで蒸発材料RMと保持部材8とを階層状に交互に積み重ねていく。尚、最上階においては、蓋部72が近接して位置するため、蒸発材料RMを省略することもできる。
これにより、1個の処理箱7内に収納される焼結磁石Sの数を増加させて(積載量が増加する)、量産性を高めることができる。しかも、焼結磁石Sの上下を板状の蒸発材料RMで挟む所謂サンドイッチ構造としたため、処理室70内で全ての焼結磁石Sの近傍に蒸発材料RMが位置し、当該蒸発材料RMを蒸発させたときに、この蒸発させた金属(Dy)原子が各焼結磁石S表面に供給されて付着するようになる。その結果、DyやTb原子を焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて磁化および保磁力を向上または回復させるという真空蒸気処理の効果が損なわれることはない。それに加えて、板状の蒸発材料RMと焼結磁石Sがセットされた保持部材8とを重ねて行くだけで、焼結磁石Sの直上に積み重ねられる蒸発材料RMとの間に所定の空間が確保されて両者の相互の接触が防止でき、その上、その作業性もよい。
上記実施形態において、処理箱7や保持部材8は、Mo製の他、例えば、W、V、Nb、Taまたはこれらの合金(希土類添加型Mo合金、Ti添加型Mo合金などを含む)やCaO、Y、或いは希土類酸化物から製作するか、またはこれらの材料を他の断熱材の表面に内張膜として成膜したものから構成できる。これにより、蒸発材料RMと反応してその表面に反応生成物が形成されることが防止できる。また、上記実施形態では、一枚の板状の蒸発材料RMを各焼結磁石Sに対向配置する場合を例に説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、複数枚の蒸発材料を同一面内に並置して構成することができる。
真空処理炉1には、不活性ガス導入手段9が設けられている。断熱材41で囲繞された空間5に通じるガス導入管91を有し、ガス導入管91がマスフローコントローラ92を介し図外の不活性ガスのガス源に連通している。そして、真空蒸気処理の間において、He、Ar、Ne、Kr等の不活性ガスを一定量で導入するようにした。真空蒸気処理中に不活性ガスの導入量を変化させるようにしてもよい(当初に不活性ガスの導入量を多くし、その後に少なくしたり若しくは当初に不活性ガスの導入量を少なくし、その後に多くしたり、または、これらを繰り返す)。不活性ガスは、例えば、蒸発材料RMが蒸発を開始後や設定された加熱温度に達した後に導入され、設定された真空蒸気処理中、または、その前後の所定時間だけ導入すればよい。また、不活性ガスを導入したとき、熱処理炉3内の不活性ガスの分圧が調節できるように、真空排気手段2に通じる排気管に開閉度が調節自在なバルブ21を設けておくことが好ましい。
これにより、空間5に導入された不活性ガスが処理箱7内にも導入され、このとき、Dy原子の平均自由行程が短いことから、不活性ガスにより処理箱7内で蒸発したDy原子が拡散し、直接焼結磁石S表面に付着する金属原子の量が減少すると共に、複数の方向から焼結磁石S表面に供給されるようになる。その結果、Dy原子が結晶粒内に過剰に拡散し、最大エネルギー積及び残留磁束密度を低下させるといった不具合が生じない。
以下に、図4を参照して、昇温工程、蒸気処理工程及びアニール工程の各工程を経て行われる本実施形態の永久磁石の製造方法について具体的に説明する。先ず、上記の如く、処理箱7内に複数個の焼結磁石Sと板状の蒸発材料RMとを積載する。そして、箱部71の開口した上面に蓋部72を装着した後、真空熱処理炉3内で加熱手段4によって囲繞された空間5内でテーブル6上に処理箱7を設置し(図1参照)、昇温工程を開始する。
昇温工程においては、真空排気手段2を介して熱処理炉3を所定圧力(例えば、1×10−4Pa)に達するまで真空引きして減圧する。このとき、処理室70は、真空熱処理炉3より高い圧力に真空引きされる。真空熱処理炉3が所定圧力に達すると、加熱手段4を作動させて処理室70を加熱する。この状態では、真空チャンバ3及び処理室70内の圧力は略一定である。また、処理室70内の圧力を真空排気手段2の排気速度を一定に保持する等により0.1Pa以下、好ましくは10−2Pa以下、より好ましくは10−4Pa以下に保持する(図4中のA部参照)。この場合、例えば焼結磁石Sからの放出ガスにより圧力が高くなる場合もあるが、以下のように不活性ガスを導入するまでの時間のうち約7割が上記圧力範囲に含まれればよい。これにより、焼結磁石Sに酸素などの不純物が取り込まれ難くなって、磁化および保磁力が一層向上または回復できる。
処理室70内の温度が所定温度に達すると、蒸発材料RMが、処理室70と略同温まで加熱されて蒸発を開始し、処理室70内にDy蒸気雰囲気が形成される。このとき、蒸発温度になる前に1〜100kPaの不活性ガスを導入してDyの蒸発を抑制してもよい。そして、蒸発開始後、処理室70内の温度が所定温度に達すると、バルブ21の開度を調節して熱処理炉3内の不活性ガスの圧力を調節する。これにより、不活性ガスが処理箱7内にも導入され、当該不活性ガスにより処理室70内で蒸発した金属原子が拡散される。蒸発材料RMが蒸発を開始した場合、焼結磁石Sと蒸発材料RMとを相互に接触しないように配置されているため、溶けた蒸発材料RMが、表面Ndリッチ相が溶けた焼結磁石Sに直接付着することはない。そして、略一定な温度で所定時間保持する蒸気処理工程へと移行する。
蒸気処理工程では、処理箱7内で拡散されたDy蒸気雰囲気中のDy原子が、直接または衝突を繰返して複数の方向から、Dyと略同温まで加熱された各焼結磁石Sの表面略全体に向かって夫々供給されて付着し、この付着したDyが焼結磁石Sの結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散されて永久磁石Mが得られる。ここで、Dyの層(薄膜)が形成されるように、Dy蒸気雰囲気中のDy原子が焼結磁石Sの表面に供給されると、焼結磁石Sの表面で付着して堆積したDyが再結晶したとき、永久磁石の表面を著しく劣化させ(表面粗さが悪くなる)、また、処理中に略同温まで加熱されている焼結磁石Sの表面に付着して堆積したDyが溶解して焼結磁石Sの表面に近い領域における粒界内に過剰に拡散し、磁気特性を効果的に向上または回復させることができない。つまり、焼結磁石Sの表面にDyの薄膜が一度形成されると、薄膜に隣接した焼結磁石Sの表面の平均組成はDyリッチ組成となり、Dyリッチ組成になると、液相温度が下がり、焼結磁石S表面が溶けるようになる(即ち、主相が溶けて液相の量が増加する)。その結果、焼結磁石S表面付近が溶けて崩れ、凹凸が増加することとなる。その上、Dyが多量の液相と共に結晶粒内に過剰に侵入し、磁気特性を示す最大エネルギー積及び残留磁束密度がさらに低下する。
そこで、Dyの蒸発量をコントロールするため、加熱手段4を制御して処理室70内の温度を800℃〜1050℃、好ましくは850℃〜950℃の範囲に設定することとした(例えば、処理室内温度が900℃〜1000℃のとき、Dyの飽和蒸気圧は約1×10−2〜1×10−1Paとなる)。処理室70内の温度(ひいては、焼結磁石Sの加熱温度)が800℃より低いと、焼結磁石Sの表面に付着したDy原子の結晶粒界及び/または結晶粒界層への拡散速度が遅くなり、焼結磁石Sの表面に薄膜が形成される前に焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて均一に行き渡らせることができない。他方、1050℃を超えた温度では、Dyの蒸気圧が高くなって蒸気雰囲気中のDy原子が焼結磁石Sの表面に過剰に供給される虞がある。また、Dyが結晶粒内に拡散する虞があり、Dyが結晶粒内に拡散すると、結晶粒内の磁化を大きく下げるため、最大エネルギー積及び残留磁束密度がさらに低下することになる。
それに併せて、バルブ21の開閉度を変化させて、熱処理炉3内の導入した不活性ガスの分圧が1kPa〜30kPaの範囲となるようにした。1kPaより低いと、Dyの強い直進性の影響を受けて、Dy原子が局所的に焼結磁石Sに付着し、減磁曲線の角型性が損なわれる。更に、単位時間当たりのDy原子の供給量が多いため、焼結磁石SへのDy原子の拡散速度が律速して拡散できず、その表面付近でのDy濃度が局所的に増加し、効率よく保磁力が向上しない。他方、30kPaを超えると、不活性ガスによりDyの蒸発が抑制され、Dy原子が効率よく焼結磁石S表面に供給されず、処理時間が過剰に長くなる。これにより、蒸発材料RMの蒸発量をコントロールしつつ、不活性ガスの導入でDy原子を処理箱内で拡散させることで、焼結磁石SのへのDy原子の供給量を抑制しながらその表面全体にDy原子を付着させることと、焼結磁石Sを所定温度範囲で加熱することによって拡散速度が早くなることとが相俟って、焼結磁石Sの表面に付着したDy原子を、焼結磁石Sの表面で堆積してDy層(薄膜)を形成する前に焼結磁石Sの結晶粒界及び/または結晶粒界相に効率よく拡散させて均一に行き渡らせることができる。
その結果、永久磁石の表面が劣化することが防止され、また、焼結磁石の表面に近い領域の粒界内にDyが過剰に拡散することが抑制され、結晶粒界相にDyリッチ相(Dyを5〜80体積%の範囲で含む相)を有し、さらには結晶粒の表面付近にのみDyが拡散することで、磁化および保磁力が効果的に向上または回復する。しかも、処理室70を10−3Paまで真空引きし、昇温工程においても所定圧力に保持し、その後に不活性ガスを導入しつつ真空蒸気処理を施すことで、永久磁石の表面に酸素などの不純物が取り込まれ難くなり、上記真空蒸気処理により得られた永久磁石の酸素含有量は、当該真空蒸気処理前の焼結磁石Sと略同等であり、その上、仕上げ加工が不要な生産性に優れた高性能永久磁石Mとなる。
焼結磁石Sの表面へのDy原子の供給量を調節する時間を4〜100時間の範囲とする。4時間より短い時間では、焼結磁石Sの結晶粒界及び/または結晶粒界相に金属原子を効率よく拡散させることができず、減磁曲線の角型性が損なわれる。他方、100時間を超えると、焼結磁石Sの表面付近の結晶粒内に金属原子が入り込み、局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが生じ、前記同様に減磁曲線の角型性が損なわれる。最後に、上記のような処理が所定時間だけ実施されると、アニール工程へと移行する。アニール工程においては、加熱手段4の作動を停止させると共に、ガス導入手段による不活性ガスの導入を一旦停止する。引き続き、不活性ガスを再度導入し(100kPa)、蒸発材料RMの蒸発を停止させる。これにより、Dyの蒸発が止まり、その供給が止まる。なお、不活性ガスの導入を停止せず、その導入量のみを増加させて蒸発を停止させるようにしてもよい。そして、処理室70内の温度を例えば500℃まで一旦下げ、引き続き、加熱手段4を再度作動させ、処理室70内の温度を450℃〜650℃の範囲に設定し、一層保磁力を向上または回復させるために、熱処理を施してもよい。そして、略室温まで急冷し、処理箱7を熱処理炉3から取り出す。
以上説明したように、本実施形態によれば、保持部材8により各焼結磁石Sをその自重が作用しない姿勢で保持したため、真空蒸気処理の際に、焼結磁石Sの保持部材8への融着が防止され、その結果、真空蒸気処理を施した後の永久磁石の表面状態に変化はなく、特段の後工程が不要になって生産性が損なわれることはない。
次に、上述の本発明の効果を確認するために次の実験(発明実験)を行った。図1に示す真空蒸気処理装置1を用い、次の焼結磁石Sに真空蒸気処理を施して永久磁石を得た。焼結磁石Sとしては、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロン、電解コバルト、純銅を原料として、配合組成(重量%)が、25Nd−7Pr−1B−0.05Cu−0.05Ga−0.05Zr−Bal Feとなるようにして、真空誘導溶解を行い、ストリップキャスティング法で厚さ約0.3mmの薄片状インゴットを得た。次に、水素粉砕工程により一旦粗粉砕し、引き続き、例えばジェットミル微粉砕工程により微粉砕して、合金原料粉末を得た。この合金原料粉末を公知の構造を有する横磁場圧縮成形装置を用いて成形体を得て、次いで、真空焼結炉にて1050℃の温度下で2時間焼結させて焼結磁石Sを得た。そして、ワイヤカットにより焼結磁石をφ10mm×3mmの円柱状に加工した後、表面粗さが10μm以下となるように仕上げ加工し、希硝酸によって表面をエッチングした。このとき、焼結磁石Sの磁気特性の平均は、最大エネルギー積が38.9MGOe、残留磁束密度が12.6kG、保磁力が19.1kOeであった(BHカーブトレーサーにより測定)。
次に、図1に示す真空蒸気処理装置1を用い、上記のように作製した焼結磁石Sに対し(各10個)、真空蒸気処理を施した。真空蒸気処理の条件は、熱処理炉3内の圧力が10−4Paに達した後、加熱手段4を作動させ、処理室70内の温度を800℃、処理時間を72時間に設定して上記処理を行った。なお、比較実験として、従来技術の如く、保持部材8に代えて、Mo製のメッシュ部材上に焼結磁石Sの複数個を載置し、板状の蒸発材料と複数個の焼結磁石が所定間隔を置いて載置されるメッシュ部材とを上下に重ねて処理箱に設置し、真空蒸気処理の条件を同一にして永久磁石を得た。
以上によれば、比較実験では、永久磁石が部分的にメッシュ部材に局所的に融着していたが、発明実験では、線材81a,81bへの永久磁石の融着はみられなかった。そして、発明実験により得た永久磁石の磁気特性を測定したところ、磁気特性の平均は、最大エネルギー積が38.8MGOe、残留磁束密度が12.6kG、保磁力が22.3kOeであった。
次に、真空蒸気処理の条件において、処理室70内の温度を700℃、900℃に夫々設定して実験したところ、比較実験では、永久磁石のメッシュ部材への融着が発生している一方で、発明実験では、上記同様、線材82a,82bへの永久磁石の融着はみられなかった。これから、真空蒸気処理時の焼結磁石の加熱温度に関係なく、永久磁石のメッシュ部材への融着が発生することが確認された。なお、比較実験では、仕上げ加工後の希硝酸等によりエッチングを省略したりして真空蒸気処理前の焼結磁石の表面状態を変えても永久磁石の融着は避けられないことが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、保持部材8を支持枠81と線材82a,82bとで構成したものを例に説明したが、焼結磁石Sの各々をその自重が作用しない姿勢で保持できるものであれば、その形態は問わない。
また、上記実施の形態では、蒸発材料RMとしてDyを用いるものを例として説明したが、最適な拡散速度を早くできる焼結磁石Sの加熱温度範囲で蒸気圧が低いTb、Hoを用いることができる。例えば、Tbを用いる場合、処理室70を900℃〜1150℃の範囲で加熱すればよい。900℃より低い温度では、焼結磁石S表面にTb原子を供給できる蒸気圧に達しない。他方、1150℃を超えた温度では、Tbが結晶粒内に過剰に拡散してしまい、最大エネルギー積及び残留磁束密度を低下させる。
更に、上記実施の形態では、箱部71の上面に蓋部72を装着して処理箱7を構成するものについて説明したが、熱処理炉3と隔絶されかつ熱処理炉3を減圧するのに伴って処理室70が減圧されるものであれば、これに限定されるものではなく、例えば、箱部71に蒸発材料RMと焼結磁石Sを収納した後、その上面開口を例えばMo製の箔で覆うようにしてもよい。
1…真空蒸気処理装置、2… 真空排気手段、3… 真空熱処理炉、4… 加熱手段、7… 処理箱、70… 処理室、71… 箱部、72… 蓋部、8… 保持部材、81…支持枠、82a,82b…線材。

Claims (2)

  1. 処理室を画成する処理箱内に、Dy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を含有する板状の蒸発材料と、所定形状の鉄−ホウ素−希土類系の焼結磁石の複数個とを間隔を存して対向配置して収納し、この処理箱を真空熱処理炉内に設置した後、真空熱処理炉の減圧下で処理を加熱して焼結磁石を所定温度に加熱すると共に蒸発材料を蒸発させ、この蒸発したDy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を焼結磁石表面への供給量を調節して付着させ、この付着したDy、Tb及びHoの中から選択された少なくとも1種を焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させる永久磁石の製造方法において、
    支持枠とこの支持枠に互いに平行に架設される線材とを備える保持部材の互いに隣接する二本の線材間で各焼結磁石を挟持し、保持部材と蒸発材料とを上下に交互に積み重ねて処理箱内に収納することを特徴とする永久磁石の製造方法。
  2. 前記処理箱は、上部が開口した箱部とこの箱部の開口面に着脱自在に装着される蓋部とで構成されることを特徴とする請求項記載の永久磁石の製造方法。
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