JP2010245392A - ネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】 極めて高い保磁力を有する高性能なネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石を提供する。
【解決手段】 本発明のネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石は、ネオジウム、プラセオジウム、ジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも1つを含む希土類元素を有する合金原料を磁場配向させて液相焼結してなるものであり、焼結磁石表面に付着させたジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも一方を熱処理により焼結磁石の結晶粒界に拡散させることで、前記焼結磁石の結晶粒界のネオジウムの濃度が主相のものより低く、かつ、前記結晶粒界のジスプロシウムまたはテルビウムの濃度が主相のもの高い組成を備える。
【選択図】 図4

Description

本発明は、結晶粒界のみにDyやTbが拡散させてなる高性能なネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石に関する。
ネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石(所謂、ネオジム磁石)は、鉄と、安価であって資源的に豊富で安定供給が可能なNd、Bの元素の組み合わせからなることで安価に製造できると共に、高磁気特性(最大エネルギー積はフェライト系磁石の10倍程度)を有することから、電子機器など種々の製品に利用され、ハイブリッドカー用のモーターや発電機などにも採用され、使用量が増えている。
Nd−Fe−B系の磁石は主に粉末冶金法で生産されており、この方法では、先ず、Nd、Fe、Bを所定の組成比で配合し、溶解、鋳造して合金原料を作製し、例えば水素粉砕工程により一旦粗粉砕し、引き続き、例えばジェットミル微粉砕工程により微粉砕して、合金原料粉末を得る。次いで、得られた合金原料粉末を磁界中で配向(磁場配向)させ、磁場を印加した状態で圧縮成形して成形体を得る。そして、この成形体を所定の条件下で焼結させて焼結磁石が作製される(特許文献1参照)。
上記方法で作製した焼結磁石は、一般に、RFe14B相たる主相(結晶粒)よりも結晶粒界の方がR(ネオジウム、プラセオジウム、ジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも1つを含む希土類元素)の濃度が高い組成を有すること、つまり、結晶粒界に、主相のネオジウム濃度より高い濃度のNdリッチ相を有することが知られている(例えば、主相のネオジウム濃度が14at%、結晶粒界のネオジウム濃度が68at%)。
ところで、保磁力をさらに高めれば、磁石の厚みを薄くしても強い磁力を持ったものが得られることから、この種の焼結磁石利用製品自体の小型、軽量化や小電力化を図るためには、従来例のものより一層高い保磁力を有する高磁気特性の焼結磁石の開発が望まれている。
このような場合に、焼結磁石用の原料合金の成分組成を最適化して、磁束密度及び保磁力を向上させることが試みられているが、本発明者らの研究により、主相よりも結晶粒界の方がネオジウム濃度が高く、かつ、結晶粒界にジスプロシウムが濃化されている組成の場合には、保磁力を向上させることに限界があるとの知見を得た。
特開2004−6761号公報(例えば、従来技術の記載参照)
本発明は、以上の点に鑑み、極めて高い保磁力を有する高性能なネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、ネオジウム、プラセオジウム、ジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも1つを含む希土類元素を有する合金原料を磁場配向させて液相焼結してなるネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石であって、前記焼結磁石表面に付着させたジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも一方を熱処理により焼結磁石の結晶粒界に拡散させることで、前記焼結磁石の結晶粒界のネオジウムの濃度が主相のものより低く、かつ、前記結晶粒界のジスプロシウムまたはテルビウムの濃度が主相のもの高い組成を備えることを特徴とする。
本発明によれば、結晶粒界のネオジウムの濃度が主相より小さくなることで、相対的に結晶粒周りのジスプロシウム量が増加するという利点があり、また、結晶粒界のジスプロシウムまたはテルビウムの濃度が主相のもの高いこと、つまり、Ndより大きい4f電子の磁気異方性を有し、Ndと同じく負のスティーブンス因子を持つことで、主相の結晶磁気異方性を大きく向上させるジスプロシムまたはテルビウムが富化されたDyやTbのリッチ相を有することと相俟って極めて高い保磁力を有する高性能なネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石となる。
本発明においては、前記結晶粒界のジスプロシムまたはテルビウムが磁石表面からその中心に向かって含有濃度が薄くなる分布を持って存在し、その表面にDy及びTbの少なくとも一方が均一に存在し、かつ、酸素濃度が均一であるときに、特に高性能な焼結磁石となる。
本発明の焼結磁石を作製することに用いられる真空処理装置を概略的に示す断面図。 処理箱への焼結体と蒸発材料との積載を模式的に説明する斜視図。 真空蒸気処理の際の不活性ガスの導入と処理室内の加熱温度との関係を説明する図。 (a)は、従来品のSEM写真及びEPMA写真。(b)は、発明品のSEM写真及びEPMA写真。 (a)乃至(g)は、発明品の焼結磁石表面にNiメッキ層を形成した後の磁石表面付近のSEM写真及びEPMA写真。 磁石表面からその中央に向かうDyの分布を示すグラフ。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の永久磁石たるネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石Sを説明する。
Nd、Pr、Dy及びTbうち少なくとも1つを含む希土類元素Rを有する焼結磁石Sは次のように作製される。即ち、例えば、Fe、Nd、Bが所定の組成比となるように、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロンを配合して真空誘導炉を用いて溶解し、急冷法、例えばストリップキャスト法により0.05mm〜0.5mmの合金原料を先ず作製する。あるいは、遠心鋳造法で5〜10mm程度の厚さの合金原料を作製してもよく、配合の際に、Dy、Tb、Pr、Co、Cu、Nb、Zr、Al、Ga等を添加しても良い。希土類元素の合計含有量を28.5%より多くし、α鉄が生成しないインゴットとする。
次いで、作製した合金原料を、公知の水素粉砕工程により粗粉砕し、引き続き、ジェットミル微粉砕工程により窒素ガス雰囲気中で微粉砕し、平均粒径3〜10μmの合金原料粉末を得る。この合金原料粉末を、公知の圧縮成形機を用いて磁界中で所定形状に圧縮成形する。そして、圧縮成形機から取出した成形体を、図示省略した焼結炉内に収納し、真空中で所定温度(例えば、1050℃)で所定時間焼結(焼結工程)し、一次焼結体を得る。
次いで、作製した一次焼結体を、図示省略した真空熱処理炉内に収納し、真空雰囲気にて所定温度に加熱する。加熱温度は900℃以上で、焼結温度未満の温度に設定する。900℃より低い温度では、希土類元素の蒸発速度が遅く、また、焼結温度を超えると、異常粒成長が起こり、磁気特性が大きく低下する。また、炉内の圧力を10−3Pa以下の圧力に設定する。10−3Paより高い圧力では、希土類元素を効率よく蒸発させることができない。
これにより、一定温度下での蒸気圧の相違により(例えば、1000℃において、Ndの蒸気圧は10−3Pa、Feの蒸気圧は10−5Pa、Bの蒸気圧は10−13Pa)、一次焼結体の希土類リッチ相中の希土類元素のみが蒸発する。その結果、Ndリッチ相の割合が減少して、磁気特性を示す最大エネルギー積((BH)max)及び残留磁束密度(Br)が向上した二次焼結体S1が作製される。
ここで、高性能磁石を得るには、希土類元素Rの含有量を28.5wt%未満、または、希土類元素Rの平均濃度の減少量を0.5重量%以上となるまで加熱処理する。そして、このようにして得た二次焼結体S1に対し真空蒸気処理を施す。この真空蒸気処理を施す真空蒸気処理装置を図1を用いて以下に説明する。
図1を参照して、真空蒸気処理装置1は、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段2を介して所定圧力(例えば1×10−5Pa)まで減圧して保持できる真空チャンバ3を有する。真空チャンバ3内には、後述する処理箱の周囲を囲う断熱材41とその内側に配置した発熱体42とから構成される加熱手段4が設けられる。断熱材41は、例えばMo製であり、また、発熱体42としては、Mo製のフィラメント(図示せず)を有する電気ヒータであり、図示省略した電源からフィラメントに通電し、抵抗加熱式で断熱材41により囲繞され処理箱が設置される空間5を加熱できる。この空間5には、例えばMo製の載置テーブル6が設けられ、少なくとも1個の処理箱7が載置できるようになっている。
処理箱7は、上面を開口した直方体形状の箱部71と、開口した箱部71の上面に着脱自在な蓋部72とから構成されている。蓋部72の外周縁部には下方に屈曲させたフランジ72aがその全周に亘って形成され、箱部71の上面に蓋部72を装着すると、フランジ72aが箱部71の外壁に嵌合して(この場合、メタルシールなどの真空シールは設けていない)、真空チャンバ3と隔絶された処理室70が画成される。そして、真空排気手段2を作動させて真空チャンバ3を所定圧力(例えば、1×10−5Pa)まで減圧すると、処理室70が真空チャンバ3より一桁高い圧力(例えば、5×10−4Pa)まで減圧される。これにより、付加的な真空排気手段を必要とすることなく、処理室70内を適宜所定の真空圧に減圧できる。
図2に示すように、処理箱7の箱部71には、二次焼結体S1及び蒸発材料vが相互に接触しないようにスペーサー8を介在させて上下に積み重ねて両者が収納される。スペーサー8は、箱部71の横断面より小さい面積となるように複数本の線材81(例えばφ0.1〜10mm)を格子状に組付けて構成したものであり、その外周縁部が略直角に上方に屈曲されている。この屈曲した箇所の高さは、真空蒸気処理すべき二次焼結体S1の高さより高く設定されており、本実施の形態においては、この屈曲した外周縁部が、上側に設置される蒸発材料vとの間で空間を確保する支持片9を構成する。そして、このスペーサー8の水平部分に複数個の二次焼結体S1が等間隔で並べて載置される。
ここで、二次焼結体S1と蒸発材料vとの上下方向の間隔が0.3〜10mm、より好ましくは0.3〜2mmの範囲にの範囲になるように支持片9の高さを設定することが好ましい。これにより、Dy原子が理想的に供給され、磁化および保磁力が一層向上または回復し、かつ、減磁曲線の角型性が損なわれることのない高性能磁石が生産性良く得られる。なお、支持片9に加えてまたは変えて、例えばMo製の中実筒体からなる高さ調節用治具(図示せず)を蒸発材料vとスペーサー8の水平部分との間に立設し、上記間隔を調節する構成を採用してもよい。
また、蒸発材料vとしては、主相の結晶磁気異方性を大きく向上させるDy及びTbまたはこれらに、Nd、Pr、Al、Cu及びGa等の一層保磁力を高める金属を配合した合金(Dy、Tbの質量比が50%以上)が用いられ、上記各金属を所定の混合割合で配合した後、例えばアーク溶解炉で溶解した後、所定の厚さの板状に形成されている。この場合、蒸発材料vは支持片9の全周で支持されるような面積を有する。
そして、箱部71の底面に板状の蒸発材料vを設置した後、その上側に、二次焼結体S1を載置したスペーサー8を載置し、さらに、支持片9の上端で支持されるように他の板状の蒸発材料vを設置する。このようにして、処理箱7の上端部まで蒸発材料vと二次焼結体S1の複数個が並置されたスペーサー8とを階層状に交互に積み重ねていく。尚、最上階のスペーサー8の上方においては、蓋部72が近接して位置するため、蒸発材料vを省略することもできる。
これにより、1個の処理箱7内に収納される二次焼結体S1の数を増加させて(積載量が増加する)、量産性を高めることができる。また、本実施形態のように、スペーサー8(同一平面)に並置した二次焼結体S1の上下を板状の蒸発材料vで挟む所謂サンドイッチ構造としたため、処理室70内で全ての二次焼結体S1の近傍に蒸発材料vが位置し、当該蒸発材料vを蒸発させたときに、この蒸発させた金属原子が各二次焼結体S1表面に供給されて付着するようになる。
その結果、DyやTb原子を焼結磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて、磁化および保磁力を向上または回復させるという真空蒸気処理の効果が損なわれることはない。それに加えて、スペーサー8と板状の蒸発材料vとを重ねて行くだけで、二次焼結体S1の直上に積み重ねられる蒸発材料vとの間に所定の空間が確保されて両者の相互の接触が防止でき、処理箱7に蒸発材料vと二次焼結体S1とを収納していくための作業性がよい。
処理箱7やスペーサー8は、Mo製の他、例えば、W、V、Nb、Taまたはこれらの合金(希土類添加型Mo合金、Ti添加型Mo合金などを含む)やCaO、Y 、或いは希土類酸化物から製作するか、またはこれらの材料を他の断熱材の表面に内張膜として成膜したものから構成できる。これにより、DyやTbと反応してその表面に反応生成物が形成されることが防止できてよい。
また、上記のように、処理箱7内においてサンドイッチ構造で蒸発材料vと二次焼結体S1とを上下に積み重ねた状態で、蒸発材料vを蒸発させると、蒸発した金属原子の直進性の影響を強く受ける虞がある。つまり、二次焼結体S1のうち、蒸発材料vと対向した面に金属原子が局所的に付着し易くなり、また、二次焼結体S1のスペーサー8との当接面において線材81の影となる部分にDyやTbが供給され難くなる。このため、上記真空蒸気処理を施すと、得られた焼結磁石Sには局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在し、その結果、減磁曲線の角型性が損なわれる。
本実施形態では、真空チャンバ3に不活性ガス導入手段を設けた。不活性ガス導入手段は、断面材41で囲繞された空間5に通じるガス導入管10を有し、ガス導入管10が図示省略したマスフローコントローラを介して不活性ガスのガス源に連通している。そして、真空蒸気処理の間において、He、Ar、Ne、Kr等の不活性ガスを一定量で導入するようにした。真空蒸気処理中に不活性ガスの導入量を変化させるようにしてもよい(当初に不活性ガスの導入量を多くし、その後に少なくしたり若しくは当初に不活性ガスの導入量を少なくし、その後に多くしたり、または、これらを繰り返す)。不活性ガスは、例えば、蒸発材料vが蒸発を開始後や設定された加熱温度に達した後に導入され、設定された真空蒸気処理時間の間またはその前後の所定時間だけ導入すればよい。また、不活性ガスを導入したとき、真空チャンバ3内の不活性ガスの分圧が調節できるように、真空排気手段2に通じる排気管に開閉度が調節自在なバルブ11を設けておくことが好ましい。
これにより、空間5に導入された不活性ガスが処理箱7内にも導入され、このとき、DyやTbの金属原子の平均自由行程が短いことから、不活性ガスにより処理箱7内で蒸発した金属原子が拡散し、直接焼結体S1表面に付着する金属原子の量が減少すると共に、複数の方向から焼結体S1表面に供給されるようになる。このため、二次焼結体S1と蒸発材料vとの間の間隔が狭い場合(例えば5mm以下)でも、線材81の影となる部分まで蒸発したDyやTbが回り込んで付着する。その結果、DyやTbの金属原子が結晶粒内に過剰に拡散し、最大エネルギー積及び残留磁束密度を低下させることを防止できる。さらに、局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在することが抑制でき、減磁曲線の角型性が損なわれることを防止できる。
次に、図3を参照して、蒸発材料vとしてDyを用い、昇温工程、蒸気処理工程及びアニール工程の各工程を経て行われる本実施形態の二次焼結体S1への真空蒸気処理を説明する。
先ず、二次焼結体S1と板状の蒸発材料vとをスペーサー8を介して交互に積み重ねて箱部71に両者を先ず設置する(これにより、処理室70内で二次焼結体S1と蒸発材料vとが上下方向で0.3〜10mm、より好ましくは0.3〜2mmの範囲にだけ離間して配置される)。そして、箱部71の開口した上面に蓋部72を装着した後、真空チャンバ3内で加熱手段4によって囲繞された空間5内でテーブル6上に処理箱7を設置し(図2参照)、昇温工程が開始される。
昇温工程においては、真空排気手段2を介して真空チャンバ3を所定圧力(例えば、1×10−4Pa)に達するまで真空排気して減圧し、(処理室70は略半桁高い圧力まで真空排気される)、真空チャンバ3が所定圧力に達すると、加熱手段4を作動させて処理室70を加熱する。この状態では、真空チャンバ3及び処理室70内の圧力は略一定である。また、処理室70内の圧力を真空排気手段2の排気速度を一定に保持する等により0.1Pa以下、好ましくは10−2Pa以下、より好ましくは10−4Pa以下に保持する(図3中のA部参照)。この場合、例えば二次焼結体S1からの放出ガスにより圧力が高くなる場合もあるが、以下のように不活性ガスを導入するまでの時間のうち約7割が上記圧力範囲に含まれればよい。これにより、二次焼結体S1に酸素などの不純物が取り込まれ難くなって、磁化および保磁力が一層向上または回復できる。
処理室70内の温度が所定温度に達すると、処理室70のDyが、処理室70と略同温まで加熱されて蒸発を開始し、処理室70内にDy蒸気雰囲気が形成されるので、蒸発温度になる前に1〜100kPaの不活性ガスを導入してDyの蒸発を抑制する。
そして、Dyの蒸発開始後、処理室70内の温度が所定温度に達すると、バルブ11の開度を調節して、真空チャンバ3内の不活性ガスの圧力を調節する。このとき、不活性ガスが処理箱7内にも導入され、当該不活性ガスにより処理室70内で蒸発した金属原子が拡散される。
Dyが蒸発を開始した場合、二次焼結体S1とDyとを相互に接触しないように配置されているため、溶けたDyが、表面Ndリッチ相が溶けた二次焼結体S1に直接付着することはない。そして、略一定な温度で所定時間保持する蒸気処理工程へと移行する。
蒸気処理工程では、処理箱7内で拡散されたDy蒸気雰囲気中のDy原子が、直接または衝突を繰返して複数の方向から、Dyと略同温まで加熱された二次焼結体S1表面略全体に向かって供給されて付着し、この付着したDyが二次焼結体S1の結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散される。
ここで、Dy層(薄膜)が形成されるように、Dy蒸気雰囲気中のDy原子が二次焼結体S1の表面に供給されると、二次焼結体S1表面で付着して堆積したDyが再結晶したとき、磁石表面を著しく劣化させ(表面粗さが悪くなる)、また、処理中に略同温まで加熱されている二次焼結体S1表面に付着して堆積したDyが溶解して磁石表面に近い領域における粒界内に過剰に拡散し、磁気特性を効果的に向上または回復させることができない。
つまり、二次焼結体S1表面にDyの薄膜が一度形成されると、薄膜に隣接した磁石表面の平均組成はDyリッチ組成となり、Dyリッチ組成になると、液相温度が下がり、磁石表面が溶けるようになる(即ち、主相が溶けて液相の量が増加する)。その結果、磁石表面付近が溶けて崩れ、凹凸が増加することとなる。その上、Dyが多量の液相と共に結晶粒内に過剰に侵入し、磁気特性を示す最大エネルギー積及び残留磁束密度がさらに低下する。
本実施の形態では、蒸発材料vがDyであるとき、このDyの蒸発量をコントロールするため、加熱手段4を制御して処理室70内の温度を800℃〜1050℃、好ましくは850℃〜950℃の範囲に設定することとした(例えば、処理室内温度が900℃〜1000℃のとき、Dyの飽和蒸気圧は約1×10−2〜1×10−1Paとなる)。
処理室70内の温度(ひいては、二次焼結体S1の加熱温度)が800℃より低いと、磁石表面に付着したDy原子の結晶粒界及び/または結晶粒界層への拡散速度が遅くなり、磁石表面に薄膜が形成される前に結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させて均一に行き渡らせることができない。他方、1050℃を超えた温度では、Dyの蒸気圧が高くなって蒸気雰囲気中のDy原子が磁石表面に過剰に供給される虞がある。また、Dyが結晶粒内に拡散する虞があり、Dyが結晶粒内に拡散すると、結晶粒内の磁化を大きく下げるため、最大エネルギー積及び残留磁束密度がさらに低下することになる。
それに併せて、バルブ11の開閉度を変化させて、真空チャンバ3内の導入した不活性ガスの分圧が1kPa〜30kPaの範囲となるようにした。1kPaより低いと、Dyの強い直進性の影響を受けて、Dy原子が局所的に二次焼結体S1に付着し、減磁曲線の角型性が損なわれる。他方、30kPaを超えると、不活性ガスによりDyの蒸発が抑制され、Dy原子が効率よく磁石表面に供給されず、処理時間が過剰に長くなる。
これにより、Arなどの不活性ガスの分圧を調節してDyの蒸発量をコントロールし、当該不活性ガスの導入によって、蒸発したDy原子を処理箱内で拡散させることで、二次焼結体S1へのDy原子の供給量を抑制しながらその表面全体にDy原子を付着させることと、二次焼結体S1を所定温度範囲で加熱することによって拡散速度が早くなることとが相俟って、磁石表面に付着したDy原子を、磁石表面で堆積してDy層(薄膜)を形成する前に結晶粒界及び/または結晶粒界相に効率よく拡散させて均一に行き渡らせることができる。
その結果、磁石表面が劣化することが防止され、また、磁石表面に近い領域の粒界内にDyが過剰に拡散することが抑制され、結晶粒界相にDyリッチ相(Dyを5〜80%の範囲で含む相)を有し、さらには結晶粒の表面付近にのみDyが拡散することで、磁化および保磁力が効果的に向上または回復する。
また、処理室70を10−4Paまで真空引きし、昇温工程においても所定圧力に保持し、その後に不活性ガスを導入しつつ真空蒸気処理を施すことで、磁石表面に酸素などの不純物が取り込まれ難くなり、焼結磁石Sの酸素含有量は、当該真空蒸気処理前の二次焼結体S1と略同等であり、その上、仕上げ加工が不要な生産性に優れたものとなる。
それに加えて、当該処理箱7内で蒸発した金属原子が拡散されて存在し、二次焼結体S1が、細い線材81を格子状に組付けたスペーサー8に載置され、当該二次焼結体S1と蒸発材料vとの間の間隔が狭い場合でも、線材81の影となる部分まで蒸発したDyやTbが回り込んで付着する。その結果、局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが存在することが抑制でき、二次焼結体S1に上記真空蒸気処理を施しても減磁曲線の角型性が損なわれることを防止でき、高い量産性を達成できる。
磁石表面へのDy原子の供給量を調節する時間を4〜100時間の範囲とする。4時間より短い時間では、結晶粒界及び/または結晶粒界相に金属原子を効率よく拡散させることができず、減磁曲線の角型性が損なわれる。他方、100時間を超えると、磁石表面付近の結晶粒内に金属原子が入り込み、局所的に保磁力の高い部分と低い部分とが生じ、上記同様に減磁曲線の角型性が損なわれる。
最後に、上記ような処理が所定時間だけ実施されると、アニール工程へと移行する。アニール工程においては、加熱手段4の作動を停止させると共に、ガス導入手段による不活性ガスの導入を一旦停止する。引き続き、不活性ガスを再度導入し(100kPa)、蒸発材料vの蒸発を停止させる。これにより、Dyの蒸発が止まり、その供給が止まる。なお、不活性ガスの導入を停止せず、その導入量のみを増加させて蒸発を停止させるようにしてもよい。そして、処理室70内の温度を例えば500℃まで一旦下げる。引き続き、加熱手段4を再度作動させ、処理室70内の温度を450℃〜650℃の範囲に設定し、一層保磁力を向上または回復させるために、熱処理を施す。そして、略室温まで急冷し、処理箱7を真空チャンバ3から取り出す。
ここで、図4(a)は、市販品の磁石(従来品:分析結果組成30Nd−1B−1Co−0.05Cu−0.02Al−Bal.Fe)のSEM写真及びEPMA写真(Dy元素及びNd元素のカラーマッピング分析)である。図4(b)は、二次焼結体S1に対し上述の真空蒸気処理を施した後の本発明品の焼結磁石SのSEM写真及びEPMA写真(Nd元素、Dy元素、B元素、O元素、Fe元素及びCo元素のカラーマッピング分析)である。更に、図5には、Niメッキ処理をさらに施した後の本発明品のSEM写真及びEPMA写真(Nd元素、Dy元素、B元素、O元素、Fe元素及びCo元素のカラーマッピング分析)が示され、図6は、磁石表面からその中央に向かうDy分布のライン分析結果を示すグラフが示されている。
これによれば、従来品では、結晶粒界に主相のネオジウム濃度より高い濃度のNdリッチ相を有することが確認でき(図4(b)参照)、真空蒸気処理を施す前の二次焼結体S2が略同等の組成を有するものと推測される。それに対しては、発明品では、結晶粒界に、主相よりNd濃度が低いが、Ndが富化された相が存在し、また、Dy原子が磁石の結晶粒界及び/または結晶粒界相に磁石表面からその中心に向かって含有濃度が薄くなる分布を持って均一に拡散していることが確認された(図4(a)、図5(f)及び図6参照)。
このことは、主相(結晶粒)よりも結晶粒界の方が、格子欠陥が多く、拡散係数が大きいため、Dy原子を拡散させたときに、Dyが主に二次焼結体S2のNdリッチ層(結晶粒界)を介して拡散する。その結果、Ndリッチ層にDyが多く存在することで相対的にNdリッチ層のNd濃度が主相よりも低くなり、また、Dyを拡散させる際に、二次焼結体S1を加熱しているので、その間二次焼結体の結晶が粒成長し、結晶粒界相のNdを結晶粒内に取り込まれていると考えられ、このような組成を有することで、保磁力が飛躍的に向上するものと考えられる。
また、DyやTbを拡散させるのに当たり、公知の方法、つまり、スパッタ法等によりDy膜を一旦形成した後、熱処理を施してDyを結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散させた場合、磁石表面に必ずDyが富化された層が残るが、発明品では、磁石表面にDyが富化された層が存在せず(Dyの濃度が均一になる)、Dyからなる薄膜が形成される前にDyが結晶粒界及び/または結晶粒界相に拡散していることが判る(図5(f)及び図6参照)。
さらに、従来品では、Dyを成膜した後に、拡散のための熱処理を行うことで表面劣化層が形成されることから、この表面劣化層を機械加工で除去すると、磁石表面付近の酸素含有量が増加するが、発明品では、表面劣化層が存在せず(磁石表面が研磨面ではない)、磁石内で酸素が均一に存在していることが判る(酸素濃度が濃くなった部分が局所的に存在しない:図5(g)参照)。さらに、従来品では、磁石表面がDyで富化されていることから、磁石内のNdの分布に濃淡が見られるが、発明品では、磁石内に略均等にNdが分布していることが判る(図5(d)参照)。
以上の効果を確認するために、図1に示す真空蒸気処理装置1を用い、次の焼結体Sに真空蒸気処理を施して焼結磁石Sを得た。焼結体としては、工業用純鉄、金属ネオジウム、低炭素フェロボロンを用い、19Nd−0.96B−0.5Co−0.15Cu−0.1Al−0.15Zr−0.1Ga−Bal Fe、配合組成(重量%)となるようにして、真空誘導溶解を行い、ストリップキャスティング法で厚さ約0.3mmの薄片状インゴットを得た。次に、水素粉砕工程により一旦粗粉砕し、引き続き、例えばジェットミル微粉砕工程により微粉砕して、合金原料粉末を得た。
次に、公知の構造を有する横磁場圧縮成形装置を用いて、成形体を得て、次いで真空焼結炉にて1050℃の温度下で2時間焼結させて焼結磁石Sを得た。そして、ワイヤカットにより焼結磁石をφ10×t3mm(t:配向方向)に切り出した。
次に、図1に示す真空蒸気処理装置1を用い、上記焼結体に対し、真空蒸気処理を施した。この場合、蒸発材料vとして厚さ0.5mmで板状に形成したDy(99%)を用い、蒸発材料vと焼結体とをW製の処理箱7に収納することとした。そして、真空チャンバ3内の圧力が10−4Paに達した後、加熱手段4を作動させ、処理室70内の温度を950℃、不活性ガスたるArの分圧6000Pa、処理時間を12時間に設定して上記処理を行った。
その結果、得られた焼結磁石Sの磁気特性(BHカーブトレーサーにより)を測定したところ、最大エネルギー積が50.5MGOe、残留磁束密度が14.6kG、保磁力が19.7kOeという極めて高性能なものであることが確認された。
上記実施の形態では、二次焼結体S1を得た後に真空蒸気処理を施して本発明の焼結磁石Sを作製したが、同一の組成を備えたものが得られるのであれば、その方法は特に限定されるものではない。また、上記実施形態では、結晶粒界に拡散させるものとしてDyを用いるものを例として説明したが、Tbを用いることができる。更に、二次焼結体としては、酸素含有量が少ない程、DyやTbの結晶粒界及び/または結晶粒界相への拡散速度が早くなるため、焼結磁石S自体の酸素含有量が3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下であればよい。
1 真空蒸気処理装置
S 焼結磁石
S1 二次焼結体
v 蒸発材料

Claims (2)

  1. ネオジウム、プラセオジウム、ジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも1つを含む希土類元素を有する合金原料を磁場配向させて液相焼結してなるネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石であって、
    前記焼結磁石表面に付着させたジスプロシウム及びテルビウムのうち少なくとも一方を熱処理により焼結磁石の結晶粒界に拡散させることで、前記焼結磁石の結晶粒界のネオジウムの濃度が主相のものより低く、かつ、前記結晶粒界のジスプロシウムまたはテルビウムの濃度が主相のもの高い組成を備えることを特徴とするネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石。
  2. 前記結晶粒界のジスプロシウムまたはテルビウムが磁石表面からその中心に向かって含有濃度が薄くなる分布を持って存在し、その表面にDy及びTbの少なくとも一方が均一に存在し、かつ、酸素濃度が均一であることを特徴とする請求項1記載のネオジウム鉄ボロン系の焼結磁石。
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