JP4329963B2 - ボールペンチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールペンチップに関し、特に、ボールの直径とインク溝の幅との関係、及びボールハウスの底面部の面積とインク溝の開口部の総面積との関係につき、所定の条件を満たすように形成することにより、インクがボールに十分に供給されるようにしつつも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるようにしたボールペンチップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ボールとホルダーとを備え、ホルダーの先端側にボールを回転自在に保持するボールペンチップが提供されている。
前記ボールは、筆記面にインクを塗布するためのものである。
このボールは、例えば、超硬合金などの金属、又はセラミックなどを用いて形成されている。
【0003】
また、前記ホルダーは、ボールを保持するためのものである。
このホルダーは、例えば、ステンレス、洋白、又は真鍮などの金属製の線材を切削することによって形成されている。
また、このホルダーは、例えば、ステンレス製のパイプ材を用いて形成されることもある。
【0004】
そして、このホルダーは、ボールハウス、インク誘導孔、及びインク溝などを有している。
前記ボールハウスは、ボールを収納するための孔である。
このボールハウスは、ホルダーの先端側の端部近辺に設けられている。
また、このボールハウスは、ボールの直径よりも内径がわずかに大きい円筒状の側面部と、その後端側に位置し、ホルダーの後端側へ向けて内径を次第に小さくする円錐状の底面部とを有している。
【0005】
そして、このボールハウスは、ホルダーが線材から形成される場合には、線材の先端側から後端側へ向けて、線材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成される。
また、このボールハウスは、ホルダーがパイプ材を用いて形成される場合にも、パイプ材の先端側から後端側へ向けて、パイプ材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成することができる。
【0006】
また、前記インク誘導孔は、ボールハウスに収納されたボールにインクを供給するための孔である。
このインク誘導孔は、ホルダーの後端側の端部からボールハウスまで貫通している。
そして、このインク誘導孔は、ホルダーが線材から形成される場合には、例えば、線材の後端側から先端側へ向けて、線材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成される。
【0007】
また、ホルダーがパイプ材を用いて形成される場合には、パイプ材の内腔をそのままインク誘導孔とすることができる。
更に、前記インク溝は、ボールハウスに収納されたボールにインクが十分に供給されるようにするための溝である。
このインク溝は、インク誘導孔の内周面に、インク誘導孔の中心からみて放射状に設けられている。
【0008】
そして、このインク溝は、例えば、線材、又はパイプ材のボールハウス側から反ボールハウス側へ向けてブローチ加工を施すことによって形成される。
そして、ボールハウスにボールを収納した後に、ホルダーの先端側の端部にカシメ部を形成することにより、ボールハウスからボールの一部を突出させつつ、ホルダーの先端側にボールを回転自在に保持するボールペンチップが形成されるのである。
【0009】
ところで、ホルダーの先端側に保持されているボールは、筆記時には、その後端側をボールハウスの底面部に当接させて回転する。また、このボールは、筆記時には、インク誘導孔、及びインク溝からインクを供給される。
このため、ボールハウスの底面部の面積を大きくすれば、ボールハウスの底面部が磨耗しにくくなるので、長期にわたって書き味の良好さを維持することができるのである。
【0010】
また、インク誘導孔の内径やインク溝の幅を大きくすれば、インクがボールに十分に供給されることとなるので、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれたりしにくくなるのである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、インク誘導孔の内径やインク溝の幅を大きくすると、その分ボールハウスの底面部の面積が小さくなることとなる。
このため、インクがボールに十分に供給されるようにはなるものの、ボールハウスの底面部が磨耗し易くなるので、書き味が低下してしまったり、あるいは、長期にわたって書き味の良好さを維持することができなくなってしまったりするのである。
【0012】
一方、ボールハウスの底面部の面積を大きくすると、その分インク誘導孔の内径やインク溝の幅が小さくなることとなる。
このため、ボールハウスの底面部が磨耗しにくくはなるものの、ボールへのインクの供給量が低下することとなるので、描線が薄くなってしまったり、あるいは描線がかすれ易くなってしまったりするのである。
【0013】
即ち、インクがボールに十分に供給されるようにしつつも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるようにすることは、極めて困難なのである。
このような問題は、ホルダーがパイプ材を用いて形成され、しかも、ボールの直径が0.5mm未満のボールペン(いわゆる極細ボールペン)において顕著にみられる。
【0014】
これは、このようなボールペンでは、ボールハウスの底面部の面積や、インク誘導孔の内径や、インク溝の幅を十分に確保することが難しい上に、ボールの直径が比較的小さいために、筆記時におけるボールの回転数が比較的多くなることにより、ボールハウスの底面部がより一層磨耗し易くなるためである。
そこで、本発明は、インクがボールに十分に供給され、しかも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるボールペンチップを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ボール(20)の直径とインク溝(60)の幅との関係、及びボールハウス(40)の底面部(80)の面積とインク溝(60)の開口部(90)の総面積との関係につき、所定の条件を満たすように形成することにより、インクがボール(20)に十分に供給され、しかも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けることを見出し、以下に示す発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明は、直径が0.5mm未満のボール(20)と、このボール(20)を保持するためのホルダー(30)とを備え、前記ホルダー(30)は、その一方側の端部近辺に設けた、ボール(20)を収納するためのボールハウス(40)と、その反ボールハウス(40)側の端部からボールハウス(40)まで貫通する、ボール(20)にインクを供給するためのインク誘導孔(50)と、インク誘導孔(50)の少なくともボールハウス(40)側の内周面に、インク誘導孔(50)の中心からみて放射状に設けた、ボール(20)にインクを供給するための複数のインク溝(60)とを有し、前記ボールハウス(40)は、そのインク誘導孔(50)側に、インク誘導孔(50)側へ向けて内径を次第に小さくする円錐状の底面部(80)を有し、前記各インク溝(60)は、それぞれ、ボールハウス(40)の底面部(80)に開口部(90)を有すると共に、そのいずれの箇所においても等幅に形成されているボールペンチップ(10)であって、前記ボール(20)の直径をA、前記底面部(80)の面積をB、前記インク溝(60)の幅をC、前記各開口部(90)の総面積をDとしたときに、0.25≦C/A≦0.30(式1)、及び0.25≦D/(B+D)≦0.30(式2)を満たすことを特徴とする。
【0017】
ここで、「ボール(20)」とは、筆記面にインクを塗布するためのものをいう。
このボール(20)は、例えば、超硬合金、ステンレス、焼入鋼、又はセラミックなどを用いて形成することができる。
また、このボール(20)の直径は、0.5mm未満とされる。
【0018】
具体的には、このボール(20)の直径を、例えば、0.38mmとすることができる。
なお、このボール(20)の直径は、0.5mm未満であればよく、0.38mmに限定されるものではない。
また、「ホルダー(30)」とは、ボール(20)を保持するためのものをいう。
【0019】
このホルダー(30)は、例えば、ステンレス、洋白、真鍮、又は黄銅などの金属製の線材を切削することによって形成することができる。
また、このホルダー(30)は、例えば、ステンレス製のパイプ材を用いて形成することもできる。
また、「ボールハウス(40)」とは、ボール(20)を収納するための孔をいう。
【0020】
このボールハウス(40)は、ホルダー(30)の一方側の端部近辺に設けられる。
また、このボールハウス(40)は、ホルダー(30)が線材から形成される場合には、例えば、線材の一方側から他方側へ向けて、線材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成することができる。
【0021】
また、このボールハウス(40)は、ホルダー(30)がパイプ材を用いて形成される場合にも、例えば、パイプ材の一方側から他方側へ向けて、パイプ材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成することができる。
また、「インク誘導孔(50)」とは、ボールハウス(40)に収納されたボール(20)にインクを供給するための孔をいう。
【0022】
このインク誘導孔(50)は、ホルダー(30)の反ボールハウス(40)側の端部からボールハウス(40)まで貫通するように設けられる。
また、このインク誘導孔(50)は、ホルダー(30)が線材から形成される場合には、例えば、線材の反ボールハウス(40)側の端部からボールハウス(40)側へ向けて、線材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成することができる。
【0023】
また、ホルダー(30)がパイプ材を用いて形成される場合には、例えば、パイプ材の内腔をそのままインク誘導孔(50)とすることができる。
また、「インク溝(60)」とは、ボールハウス(40)に収納されたボール(20)にインクが十分に供給されるようにするための溝をいう。
このインク溝(60)は、インク誘導孔(50)の内周面に、インク誘導孔(50)の中心からみて放射状に設けられる。
【0024】
また、このインク溝(60)は、インク誘導孔(50)の少なくともボールハウス(40)側の内周面に設けられる。
従って、このインク溝(60)は、インク誘導孔(50)の内周面のうち、ボールハウス(40)側の端部近辺にのみ設けてもよく、また、インク誘導孔(50)の内周面のボールハウス(40)側の端部から反ボールハウス(40)側の端部まで貫通させるようにして設けてもよい。
【0025】
また、このインク溝(60)は、いずれの箇所においても等幅に形成される。
また、このインク溝(60)は、例えば、線材、又はパイプ材のボールハウス(40)側から反ボールハウス(40)側へ向けてブローチ加工を施すことによって形成することができる。
例えば、ホルダー(30)が線材から形成される場合には、インク誘導孔(50)は、ドリルで切削することによって形成されることが多い。また、この場合、インク誘導孔(50)は、反ボールハウス(40)側からボールハウス(40)側へ向けて内径を順次小さくするように、多段に形成されることが多い。そして、この場合、インク溝(60)は、インク誘導孔(50)の最小径部分の内周面に、そのボールハウス(40)側の端部から反ボールハウス(40)側の端部まで貫通させるようにして設けられることが多いのである。
【0026】
また、例えば、ホルダー(30)がパイプ材を用いて形成される場合には、このインク溝(60)は、インク誘導孔(50)の内周面のうち、ボールハウス(40)側の端部近辺にのみ設けられることが多い。即ち、この場合、インク溝(60)は、インク誘導孔(50)の反ボールハウス(40)側の端部まで貫通しないように形成されることが多いのである。
【0027】
なお、インク溝(60)の本数は、複数本であれば、2本であっても、3本であっても、あるいはそれ以上であってもよい。
また、前記ボールハウス(40)は、ボール(20)の直径よりも内径がわずかに大きい円筒状の側面部(70)と、そのインク誘導孔(50)側に位置し、インク誘導孔(50)側へ向けて内径を次第に小さくする円錐状の「底面部(80)」とを有している。
【0028】
また、前記各インク溝(60)は、それぞれ、ボールハウス(40)の底面部(80)に「開口部(90)」を有し、これにより、インク誘導孔(50)とボールハウス(40)とを連通させて、ボールハウス(40)に収納されたボール(20)にインクが十分に供給されるようにしているのである。
更に、このボールペンチップ(10)は、ボール(20)の直径をA、底面部(80)の面積をB、インク溝(60)の幅をC、各開口部(90)の総面積をDとしたときに、0.25≦C/A≦0.30(式1)、及び0.25≦D/(B+D)≦0.30(式2)を満たすように形成されている。
【0029】
即ち、インク溝(60)の幅は、ボール(20)の直径に対して25%以上30%以下となるように形成され、また、各開口部(90)の総面積は、(B+D)の面積に対して25%以上30%以下となるように形成されているのである。
また、(B+D)の面積は、「インク溝がないと仮定した場合における底面部の面積」ともいうことができるものである。
【0030】
そして、上記(式1)及び(式2)を満たすようにボールペンチップ(10)を形成することにより、インクがボール(20)に十分に供給されるようにしつつも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるようにすることができるのである。
なお、C/A<0.25では、即ち、インク溝(60)の幅がボール(20)の直径に対して25%未満では、ボール(20)へのインクの供給量が低下し、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれ易くなったりしてしまう。
【0031】
一方、C/A>0.30では、即ち、インク溝(60)の幅がボール(20)の直径に対して30%を超えるようでは、ボールハウス(40)の底面部(80)が磨耗し易くなり、書き味が低下したり、あるいは長期にわたって書き味の良好さを保ち続けることができなくなったりしてしまうのである。
また、D/(B+D)<0.25では、即ち、各開口部(90)の総面積が(B+D)の面積に対して25%未満では、ボール(20)へのインクの供給量が低下し、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれ易くなったりしてしまう。
【0032】
一方、D/(B+D)>0.30では、即ち、各開口部(90)の総面積が(B+D)の面積に対して30%を超えるようでは、ボールハウス(40)の底面部(80)が磨耗し易くなり、書き味が低下したり、あるいは長期にわたって書き味の良好さを保ち続けることができなくなったりしてしまうのである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るボールペンチップの実施の形態を、図示例と共に説明する。
図1及び図2は、ボールペンチップの要部断面図、図3は、ボールを取り除いた状態における図1のI−I線断面図、図4は、底面部の面積(B)、各開口部の総面積(D)、及び(B+D)の面積を示す概念図である。
【0034】
本実施の形態に係るボールペンチップ10は、直径が0.5mm未満のボール20と、このボール20を保持するためのホルダー30とを備えている。
前記ホルダー30は、その一方側の端部近辺に設けた、ボール20を収納するためのボールハウス40と、その反ボールハウス40側の端部からボールハウス40まで貫通する、ボール20にインクを供給するためのインク誘導孔50と、インク誘導孔50の少なくともボールハウス40側の内周面に、インク誘導孔50の中心からみて放射状に設けた、ボール20にインクを供給するための複数のインク溝60とを有している。
【0035】
また、前記ボールハウス40は、そのインク誘導孔50側に、インク誘導孔50側へ向けて内径を次第に小さくする円錐状の底面部80を有している。
更に、前記各インク溝60は、それぞれ、ボールハウス40の底面部80に開口部90を有していると共に、そのいずれの箇所においても等幅に形成されている。
そして、このボールペンチップ10は、ボール20の直径をA、底面部80の面積をB、インク溝60の幅をC、各開口部90の総面積をDとしたときに、0.25≦C/A≦0.30(式1)、及び0.25≦D/(B+D)≦0.30(式2)を満たすように形成されており、これにより、インクがボール20に十分に供給され、しかも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるようにしているものである。
【0036】
以下、更に、本実施の形態に係るボールペンチップ10について詳述する。
(ボール20)
前記ボール20は、筆記面にインクを塗布するためのものである。
このボール20は、超硬合金、ステンレス、焼入鋼、又はセラミックなどを用いて形成されている。
【0037】
また、このボール20の直径は、0.5mm未満とされている。
具体的には、このボール20の直径を、例えば、0.38mmとすることができる。
なお、ボール20の直径は、0.5mm未満であればよく、0.38mmに限定されるものではない。
(ホルダー30)
また、前記ホルダー30は、ボール20を保持するためのものである。
【0038】
図1に示すホルダー30は、ステンレス製のパイプ材を用いて形成されている。
また、このホルダー30は、図1及び図3に示すように、ボール20を収納するためのボールハウス40と、ボールハウス40に収納されたボール20にインクを供給するためのインク誘導孔50と、ボールハウス40に収納されたボール20にインクが十分に供給されるようにするための3本のインク溝60とを有している。
【0039】
前記ボールハウス40は、ホルダー30の一方側の端部近辺に設けられている。
このボールハウス40は、パイプ材の一方側から他方側へ向けて、パイプ材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成されている。
また、前記インク誘導孔50は、ホルダー30の反ボールハウス40側の端部からボールハウス40まで貫通している。
【0040】
このインク誘導孔50は、パイプ材の内腔をそのまま用いている。
また、前記インク溝60は、インク誘導孔50の内周面に、インク誘導孔50の中心からみて放射状に設けられている。
また、このインク溝60は、インク誘導孔50の内周面のうち、ボールハウス40側の端部近辺にのみ設けられている。
【0041】
また、このインク溝60は、そのいずれの箇所においても等幅に形成されている。
このインク溝60は、パイプ材のボールハウス40側から反ボールハウス40側へ向けてブローチ加工を施すことによって形成されている。
また、前記ボールハウス40は、ボール20の直径よりも内径がわずかに大きい円筒状の側面部70と、そのインク誘導孔50側に位置し、インク誘導孔50側へ向けて内径を次第に小さくする円錐状の底面部80とを有している。
【0042】
また、前記各インク溝60は、それぞれ、ボールハウス40の底面部80に開口部90を有し、これにより、インク誘導孔50とボールハウス40とを連通させて、ボールハウス40に収納されたボール20にインクが十分に供給されるようにしている。
なお、インク溝60の本数は、3本に限定されるものではなく、例えば、4本にしてもよく、あるいはそれ以上にしてもよい。
【0043】
また、ホルダー30は、ステンレス製のパイプ材を用いて形成されるものに限られず、例えば、ステンレス、洋白、真鍮、又は黄銅などの金属製の線材を用いて形成することもできる。
例えば、図2に示すホルダー30は、ステンレス製の線材を用いて形成されている。
【0044】
そして、このように、ホルダー30が線材を用いて形成される場合には、ボールハウス40は、線材の一方側から他方側へ向けて、線材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成することができる。
また、インク誘導孔50は、線材の反ボールハウス40側の端部からボールハウス40側へ向けて、線材の軸心に回転軸を一致させたドリルで切削することによって形成することができる。この場合、インク誘導孔50は、反ボールハウス40側からボールハウス40側へ向けて内径を順次小さくするように、多段に形成されることが多い。
【0045】
また、インク溝60は、線材のボールハウス40側から反ボールハウス40側へ向けてブローチ加工を施すことによって形成することができる。この場合、インク溝60は、インク誘導孔50の最小径部分の内周面に、そのボールハウス40側の端部から反ボールハウス40側の端部まで貫通させるようにして設けられることが多い。
(ボールペンチップ10)
更に、前記ボールハウス40にボール20を収納した後に、ホルダー30のボールハウス40側の端部にカシメ部を形成することにより、ボールハウス40からボール20の一部を突出させつつ、ホルダー30の先端側にボール20を回転自在に保持するボールペンチップ10とされている。
【0046】
そして、このボールペンチップ10は、ボール20の直径をA、底面部80の面積をB、インク溝60の幅をC、各開口部90の総面積をDとしたときに、0.25≦C/A≦0.30(式1)、及び0.25≦D/(B+D)≦0.30(式2)を満たすように形成されている。
即ち、インク溝60の幅は、ボール20の直径に対して25%以上30%以下となるように形成され、また、各開口部90の総面積は、(B+D)の面積に対して25%以上30%以下となるように形成されているのである。
【0047】
ここで、図4は、底面部80の面積(B)、各開口部90の総面積(D)、及び(B+D)の面積を、それぞれ概念的に示したものである。
即ち、図4(1)中の黒く塗りつぶした部分は、底面部の面積(B)を、図4(2)中の黒く塗りつぶした部分は、各開口部90の総面積(D)を、図4(3)中の黒く塗りつぶした部分は、(B+D)の面積を、それぞれ概念的に示している。
【0048】
これにより、(B+D)の面積は、「インク溝がないと仮定した場合における底面部の面積」ともいうことができる。
そして、上記(式1)及び(式2)を満たすようにボールペンチップ10を形成することにより、インクがボール20に十分に供給され、しかも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるようにすることができるのである。
【0049】
なお、C/A<0.25では、即ち、インク溝60の幅がボール20の直径に対して25%未満では、ボール20へのインクの供給量が低下し、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれ易くなったりしてしまう。
一方、C/A>0.30では、即ち、インク溝60の幅がボール20の直径に対して30%を超えるようでは、ボールハウス40の底面部80が磨耗し易くなり、書き味が低下したり、あるいは長期にわたって書き味の良好さを保ち続けることができなくなったりしてしまうのである。
【0050】
また、D/(B+D)<0.25では、即ち、各開口部90の総面積が(B+D)の面積に対して25%未満では、ボール20へのインクの供給量が低下し、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれ易くなったりしてしまう。
一方、D/(B+D)>0.30では、即ち、各開口部90の総面積が(B+D)の面積に対して30%を超えるようでは、ボールハウス40の底面部80が磨耗し易くなり、書き味が低下したり、あるいは長期にわたって書き味の良好さを保ち続けることができなくなったりしてしまうのである。
【0051】
【実施例】
以下、ボールハウス40の側面部70の内径をE、インク誘導孔50の内径をF、インク溝60の本数をG、インク溝60の半径をHとして、実施例及び比較例により、本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0052】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.10mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=3本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.26
また、D/(B+D)≒0.27
(実施例2)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0053】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.095mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=3本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.25
また、D/(B+D)≒0.26
(実施例3)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0054】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.110mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=3本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.29
また、D/(B+D)≒0.30
(比較例1)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0055】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.06mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=4本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.16
また、D/(B+D)≒0.21
(比較例2)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0056】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.06mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数G=5本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.16
また、D/(B+D)≒0.27
(比較例3)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0057】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.06mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=6本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.16
また、D/(B+D)≒0.32
(比較例4)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0058】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.10mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=4本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.26
また、D/(B+D)≒0.37
(比較例5)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0059】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.10mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=5本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.26
また、D/(B+D)≒0.46
(比較例6)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0060】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.12mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=2本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.31
また、D/(B+D)≒0.22
(比較例7)
以下に示す構成のボールペンチップ10を製造した。
【0061】
ボール20の材質:超硬合金
ホルダー30の材料:フェライト系ステンレス製のパイプ材
ボール20の直径:A=0.38mm
インク溝60の幅:C=0.12mm
ボールハウス40の側面部70の内径:E=0.40mm
インク誘導孔50の内径:F=0.23mm
インク溝60の本数:G=3本
インク溝60の半径:H=0.19mm
従って、C/A≒0.32
また、D/(B+D)≒0.33
(ボールペンチップ10の評価)
上記実施例1から3まで、及び比較例1から7までの各ボールペンチップ10について、ボールハウス40の底面部80の耐磨耗性、0m筆記時における描線の濃さ、及び800m筆記時における描線の濃さの各項目の評価を行った。
【0062】
評価にあたり、まず、上記各ボールペンチップ10、及びUM−151黒インク(いわゆる水性ゲルインク、25℃における粘度:100cp)を用いて、ボールペンを製造した。
そして、各ボールペンについて筆記試験を行った。
筆記試験は、ISO規格14145−1に準拠した筆記試験機を用い、筆記速度:4.5m/分、筆記角度:60°、筆記負荷:100g、筆記距離:800mの条件で「らせん筆記」することにより行った。
【0063】
また、筆記試験紙には、ISO規格14145−1に準拠したものを用いた。
ここで、ボールハウス40の底面部80の耐磨耗性は、上記筆記試験機にて800m筆記した後の各ボール20ペンにつき、手書きによる筆記を行い、そのときの感触を下記の基準で判断することにより、「○」「△」「×」の3段階で評価した。
【0064】
(イ)紙への引っかかり感がなく、良好な書き味であった。→評価「○」
(ロ)やや紙への引っかかり感があるものの、概ね良好な書き味であった。→評価「△」
(ハ)紙への引っかかり感があり、良好な書き味ではなかった。→評価「×」
また、0m筆記時における描線の濃さは、上記筆記試験機による筆記を開始した直後の描線の濃さを、下記の基準で判断することにより、「○」「△」「×」の3段階で評価した。
【0065】
(イ)描線が十分に濃かった。→評価「○」
(ロ)描線がやや薄かった。→評価「△」
(ハ)描線が薄かった。又は、描線がかすれていた。→評価「×」
また、800m筆記時における描線の濃さは、上記筆記試験機による筆記を終了する直前の描線の濃さを、下記の基準で判断することにより、「○」「△」「×」の3段階で評価した。
【0066】
(イ)描線が十分に濃かった。→評価「○」
(ロ)描線がやや薄かった。→評価「△」
(ハ)描線が薄かった。又は、描線がかすれていた。→評価「×」
下記の表1に、上記各ボールペンチップ10についてのボールハウス40の底面部80の耐磨耗性、0m筆記時における描線の濃さ、及び800m筆記時における描線の濃さの各項目の評価を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
このように、実施例1から3までのボールペンチップ10については、ボールハウス40の底面部80の耐磨耗性、0m筆記時における描線の濃さ、及び800m筆記時における描線の濃さのいずれの項目の評価も「○」又は「△」であった。即ち、実施例1から3までに示したようにボールペンチップ10を形成すれば、ボール20へのインクの十分な供給と、長期にわたる書き味の良好さの維持とを両立させることができるのである。
【0069】
一方、比較例1から7までのボールペンチップ10については、ボールハウス40の底面部80の耐磨耗性、0m筆記時における描線の濃さ、又は800m筆記時における描線の濃さのいずれかの項目の評価が「×」であった。即ち、比較例1から7までに示したようにボールペンチップ10を形成すると、ボール20へのインクの十分な供給と、長期にわたる書き味の良好さの維持とを両立させることができなくなってしまうのである。
【0070】
更に、C/A、及びD/(B+D)の限界数値についての実験を行ったところ、少なくともC/Aの値を0.25〜0.30の範囲内とし、かつ、D/(B+D)の値を0.25〜0.30の範囲内とすれば、インクがボール20に十分に供給されるようにしつつも、長期にわたって書き味の良好さを維持できるということが確認された。
【0071】
また、C/Aの値が0.25未満では、ボール20へのインクの供給量が低下し、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれ易くなったりしてしまうことが確認された。
一方、C/Aの値が0.30を超えるようでは、ボールハウス40の底面部80が磨耗し易くなり、書き味が低下したり、あるいは長期にわたって書き味の良好さを維持することができなくなってしまうことが確認された。
【0072】
また、D/(B+D)の値が0.25未満では、ボール20へのインクの供給量が低下し、描線が薄くなったり、あるいは描線がかすれ易くなったりしてしまうことが確認された。
一方、D/(B+D)の値が0.30を超えるようでは、ボールハウス40の底面部80が磨耗し易くなり、書き味が低下したり、あるいは長期にわたって書き味の良好さを維持することができなくなってしまうことが確認された。
【0073】
また、ステンレスなどの金属製の線材を切削してホルダー30を形成したボールペンチップ10についても、上記実施例と同様の実験を行ったところ、同様の結果が得られた。
即ち、パイプ材を用いてホルダー30を形成したボールペンチップ10のみならず、線材を用いてホルダー30を形成したボールペンチップ10についても、C/Aの値を0.25〜0.30の範囲内とし、かつ、D/(B+D)の値を0.25〜0.30の範囲内とすれば、ボール20へのインクの十分な供給と、長期にわたる書き味の良好さの維持とを両立させることができるのである。
【0074】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インクがボールに十分に供給され、しかも、長期にわたって書き味の良好さを保ち続けるボールペンチップを提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボールペンチップの要部断面図。
【図2】ボールペンチップの要部断面図。
【図3】ボールを取り除いた状態における図1のI−I線断面図。
【図4】底面部の面積(B)、各開口部の総面積(D)、及び(B+D)の面積を示す概念図。
【符号の説明】
10 ボールペンチップ
20 ボール
30 ホルダー
40 ボールハウス
50 インク誘導孔
60 インク溝
70 側面部
80 底面部
90 開口部
A ボールの直径
B 底面部の面積
C インク溝の幅
D 各開口部の総面積
E 側面部の内径
F インク誘導孔の内径
H インク溝の半径
Claims (1)
- 直径が0.5mm未満のボールと、このボールを保持するためのホルダーとを備え、
前記ホルダーは、その一方側の端部近辺に設けた、ボールを収納するためのボールハウスと、その反ボールハウス側の端部からボールハウスまで貫通する、ボールにインクを供給するためのインク誘導孔と、インク誘導孔の少なくともボールハウス側の内周面に、インク誘導孔の中心からみて放射状に設けた、ボールにインクを供給するための複数のインク溝とを有し、
前記ボールハウスは、そのインク誘導孔側に、インク誘導孔側へ向けて内径を次第に小さくする円錐状の底面部を有し、
前記各インク溝は、それぞれ、ボールハウスの底面部に開口部を有すると共に、そのいずれの箇所においても等幅に形成されているボールペンチップであって、
前記ボールの直径をA、前記底面部の面積をB、前記インク溝の幅をC、前記各開口部の総面積をD、としたときに、下記の(式1)及び(式2)を満たすことを特徴とするボールペンチップ。
(式1)
0.25≦C/A≦0.30
(式2)
0.25≦D/(B+D)≦0.30
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