JP4327679B2 - 半導体レーザ装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体レーザ装置およびその製造方法に関するものである。
DVD−RAMなどの読み込み、書き込みピックアップ光源には、波長650(nm)帯のAlGaInP系赤色レーザ装置が用いられる。また、CD−Rなどの読み込み、書き込みピックアップ光源には、波長780(nm)帯のAlGaAs系赤外レーザ装置が用いられる。この内、赤色レーザ装置は、例えば、図13に示すように、基板301の一方の主面上に、n型クラッド層302、活性層303、p型第1クラッド層304、p型第2クラッド層305、電流ブロック層306、コンタクト層307、p型電極308が積層され、他方の主面に、n型電極309が積層され構成されている。ここで、上記構造を採る半導体レーザ装置を作製するためには、ダブルヘテロ構造形成、電流ブロック層形成、埋め込み層形成と計3回の結晶成長工程が必要であり、図14に示すような二波長半導体レーザ装置の製造には、少なくとも4回の結晶成長工程が必要となるが、成長回数の多さはレーザチップの製造コストの低減に対し大きな障害となっている。
そこで、1回の結晶成長で半導体レーザ素子を作製する手法として、誘電体膜により電流狭窄されたリッジ型の発振波長660(nm)帯半導体レーザ構造が開発・生産がなされている(例えば、非特許文献1)。図14に示すように、この文献に開示された半導体レーザ装置は、リッジ型導波路構造を形成し、SiO2やSi34等からなる誘電体膜406により電流狭窄および光の閉じ込めを行う素子構造を有するものである。具体的には、例えば、図14に示すように、基板401の一方の主面上に、n型クラッド層402、活性層403、p型第1クラッド層404、p型第2クラッド層405、誘電体膜406、p型電極407を積層し、基板401における他方の主面上にn型電極408を積層した構成を有する。
また、活性層403に近いレーザ素子部表面をサブマウントに接合するジャンクションダウン組立時において、リッジ部にかかる応力を原因とする半導体レーザ装置部の劣化等を防ぐため、p型第2クラッド層405の厚みをリッジ部とその周辺領域とで同じとする構成、所謂ダブルチャネル型リッジ構造とすることで、リッジ部にかかる応力を分散させている。
ところで、近年では、DVD−RAMおよびCD−Rの両ディスクに対応可能な装置が要望されており、このために一つのドライブに赤色、赤外の各々に対応する光集積ユニットを具備したドライブが普及してきている。さらに、近年の小型化、低コスト化、光学系組立工程の簡素化などの要請より、一つの光集積ユニットで対応できるよう、同一基板上に二つのレーザ素子部を集積形成した構成の二波長半導体レーザ装置が実用化されつつある。
従来の二波長半導体レーザ装置としては、例えば、同一基板をベースとして、650(nm)帯のAlGaInP系赤色レーザ素子部と780(nm)帯のAlGaAs系赤外レーザ素子部とをモノリシックに集積したもので、一つの光集積ユニット上にDVD/CD用両方に対応可能な光ピックアップ装置としている(例えば、特許文献1参照)。
そして、二波長半導体レーザ装置に対してダブルチャネル型リッジ構造を採用した場合には、図15に示すような構造となる。図15に示すように、この構造を有する二波長半導体レーザ装置は、基板501をベースとして、赤外レーザ素子部50aと赤色レーザ素子部50bとが形成されている。両素子部50a、50bは、基板501の一方の主面上に、n型クラッド層502、506、活性層503、507、p型第1クラッド層504、508、p型第2クラッド層505、509、誘電体膜510、p型電極511がそれぞれ積層され、基板501における他方の主面上に両素子部50a、50b共通でn型電極512が形成された構成を有する。このような構成の装置では、上記図14の半導体レーザ装置と同様に、製造コストの低減という観点での優位性を有することになる。
特開2001−57462号公報 T. yagi et. al., IEEE J. Selected Topics in Quantum Electron., vol. 9, No. 5, pp. 1260-1264, Sep/Oct 2003
しかしながら、上記ダブルチャネル型リッジ構造を採用する二波長半導体レーザ装置では、赤外レーザ素子部50aと赤色レーザ素子部50bとで、それぞれ所望の特性を得るためにダブルヘテロ構造の各層の層厚みを素子部毎に異なる値に設計することが生じる場合がある。このために、この構造の二波長半導体レーザ装置では、図15に示すように、基板501から赤外レーザ素子部50aにおけるp型電極511の表面50afまでの高さと、基板501から赤色レーザ素子部50bにおけるp型電極511の表面50bfまでの高さとが互いに異なる。このため、この構造の二波長半導体レーザ装置を用いたジャンクションダウン組立時には、基板501がサブマウントに対して平行にならず傾いてボンディングされたり、ダブルヘテロ構造の厚さが厚い方の素子部(図15では、赤色レーザ素子部50b)に応力が集中することなどにより、半導体レーザ装置としての特性に重大な影響を及ぼす可能性がある。
ジャンクションダウン組立時におけるサブマウントに対する基板の傾きだけを改善するには、ダブルへテロ構造の厚みを素子部間で同一とし、他の構成要素をもって二波長半導体レーザ装置を設計することも考えられる。しかし、この場合には、装置の設計プロセスにおける制約条件が多く付加されることになり、設計の自由度という観点から問題を有する。
本発明は、このような問題を解決しようとなされたものであって、同一基板をベースとして互いに高さが異なる2以上のレーザ素子部を有する場合にも、ジャンクションダウン組立時において装置が傾くことなく正確な組み立てができ、且つ、各レーザ素子部のリッジ部への応力の集中を抑制することができ、設計の自由度を損なうことなく製造コストの低い半導体レーザ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、次の構成を採用することとした。
(1)半導体レーザ装置
(1−1) 本発明に係る半導体レーザ装置は、一の基板を共通のベースとして、互いに間隔をあけて第1の波長の光を出射する第1レーザ素子部と第2の波長の光を出射する第2レーザ素子部とが形成され、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の各々が、第1伝導型のクラッド層、活性層、リッジ状ストライプ形状の第2伝導型のクラッド層が順に積層された構成を含んでなる装置であって、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とは、基板厚み方向において、基板における素子部を構成する各層が積層されたのとは反対側の主表面を基準とするときの積層上面の高さが互いに異なる状態に設定され、基板の外縁には、第1領域と第2領域とが互いに積層構造をもって形成され、当該第1領域および第2領域は、基板の主表面に沿う方向において、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が形成された部分を中に挟む状態に尾各々が配置され、基板厚み方向において、積層上面の高さが、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の内の高い方の素子部と同一またはそれ以上であって、且つ、互いに同一となる状態に設定されている
また、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間には、基板上に積層構造をもって第3領域が形成され、当該第3領域は、積層上面の高さが第1領域および第2領域と同一となる状態に設定されていることを特徴とする。
(1−2) 上記(1−1)に係る半導体レーザ装置であって、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間には、積層方向に深さを有する分離溝が形成されており、第3領域は、分離溝と第1レーザ素子部との間に形成されており、分離溝と第2レーザ素子部との間には、基板上に積層構造をもって第4領域が形成され、当該第4領域は、第1領域、第2領域および第3領域と積層上面の高さが同一となる状態に設定されていることを特徴とする。
(1−3) 上記(1−2)に係る半導体レーザ装置であって、第1領域、第2領域、第3領域および第4領域は、各々の積層上面に半導体層の層表面が露出する状態で構成されている ことを特徴とする。
(1−4) 上記(1−3)に係る半導体レーザ装置であって、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の各積層上面は、半導体層の層表面が露出することにより構成されており、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部における積層上面に露出の半導体層と、第1領域、第2領域、第3領域および第4領域の各々における積層上面に露出の半導体層とは、互いに同一の材料から構成されていることを特徴とする。
(2)半導体レーザ装置の製造方法
(2−1) 本発明に係る半導体レーザ装置の製造方法は、次の各ステップおよび特徴を有する。
*第1素子部形成ステップ;基板の一方の主面上における一部領域に、第1伝導型のクラッド層、活性層、リッジ状ストライプ形状の第2伝導型のクラッド層を順に積層して第1レーザ素子部を形成する。
*第2素子部形成ステップ;基板における第1レーザ素子部が形成されたのと同一主面上であって、第1レーザ素子部と間隔をあけた領域に、第1伝導型のクラッド層、活性層、リッジ状ストライプ形状の第2伝導型のクラッド層を順に積層して第2レーザ素子部を形成する。
*外縁領域形成ステップ;基板の第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が形成されたのと同一主面上における外縁であって、互いの間に第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が形成された領域を挟む箇所に、第1領域および第2領域の各々を積層構造をもって形成する。
*第3領域形成ステップ;基板の主面上における第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間の領域に、積層構造をもって、且つ、基板の厚み方向における積層上面の高さが第1領域および第2領域と同一となる状態に第3領域を形成する。
ここで、本発明に係る半導体レーザ装置の製造方法は、基板の厚み方向において、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とが、基板における素子部を構成する各層が積層されたのとは反対側の主表面を基準とするときの積層上面の高さが互いに異なる状態に形成され、第1領域と第2領域とが、各々の積層上面の高さが第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の内の高い方の素子部と同一またはそれ以上であって、且つ、互いに同一となる状態に形成されることを特徴とする。
(2−2) 上記(2−1)に係る半導体レーザ装置の製造方法であって、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間には、積層方向に深さを有する分離溝が形成され、第3領域は、分離溝と第1レーザ素子部との間の領域に形成されるものであって、基板の主面上における分離溝と第2レーザ素子部との間の領域に、積層構造をもって、且つ、基板の厚み方向における積層上面の高さが第1領域、第2領域および第3領域と同一となる状態に第4領域を形成する第4領域形成ステップを備えることを特徴とする。
(2−3) 上記(2−2)に係る半導体レーザ装置の製造方法であって、第1領域、第2領域、第3領域および第4領域は、各々の積層上面に半導体層の層表面が露出する状態で形成されることを特徴とする。
(2−4) 上記(2−3)に係る半導体レーザ装置の製造方法であって、第1素子部形成ステップおよび第2素子部形成ステップでは、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部を、その各積層上面が半導体層の層表面が露出する状態に形成し、外縁領域形成ステップ、第1領域形成ステップおよび第2領域形成ステップでは、第1領域、第2領域、第3領域および第4領域の各々における積層上面に露出の半導体層を、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部における積層上面に露出の半導体層と同一の材料をもって形成することを特徴とする。
本発明に係る半導体レーザ装置は、(1−1)にその主たる特徴を示すように、ダブルチャネル型リッジ構造を採っている。このため、成長回数を低減することができ、低い装置コストを有する。
また、本発明に係る半導体レーザ装置では、第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が形成された領域を挟むように第1領域、第2領域が形成され、第1領域および第2領域の積層上面の高さが第1レーザ素子部、第2レーザ素子部の両部分以上であって、且つ、両領域で同一に設定されている。そして、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とは、各々における積層上面の高さが異なる構成となっている。これらの構成を有することより、本発明に係る半導体レーザ装置を用いてジャンクションダウン組立を実施する際には、サブマウントに対して第1領域の積層表面と第2領域の積層表面とが接触することになる。よって、本発明に係る半導体レーザ装置は、ジャンクションダウン組立時において基板の傾きを生ずることがなく、一方のレーザ素子部に応力が集中することもない。
また、本発明に係る半導体レーザ装置は、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とでダブルへテロ構造の各層厚みを同一としなくてもよいので、装置設計プロセスにおける高い自由度を確保することが可能である。
従って、本発明に係る半導体レーザ装置は、ジャンクションダウン組立時において装置が傾くことなく正確な組み立てが可能であって、各レーザ素子部のリッジ部への応力の集中を抑制することができるとともに、設計の自由度を損なうことなく低い製造コストを実現し得る、という優位性を有する。
また、本発明に係る半導体レーザ装置は、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間に第3領域を形成するので、ジャンクションダウン組立時における装置の安定性、素子部の保護を図ることができる。
なお、(1−2)に示すように、第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間に、さらに第4領域を形成すれば、ジャンクションダウン組立時における装置の安定性、素子部の保護という観点から望ましい。
また、本発明に係る半導体レーザ装置の製造方法は、(2−1)にその主たる特徴を示すように、上記優位性を有する半導体レーザ装置を容易に製造することが可能である。
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下の各実施の形態等については、本発明の構成および作用・効果を説明する上で一例として用いるものであって、本発明はこれに限定を受けるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、一例として、ダブルチャネル型リッジ構造を採用し、波長780(nm)帯の赤外レーザ素子部と波長660(nm)帯の赤色レーザ素子部とを同一基板に形成してなる二波長半導体レーザ装置を用いて説明する。
1−1.装置構成
先ず、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10の構成について、図1を用いて説明する。図1は、二波長半導体レーザ装置10の断面構造図である。なお、図1では、二波長半導体レーザ装置10の断面構造を示しているが、実際の装置には、図に示す構成以外に紙面の手前および奥にへき開面からなる反射鏡が設けられ、これによって光共振器が構成されている。
図1に示すように、装置10は、n型GaAs基板101を共通のベースとして、発振波長780(nm)帯の赤外レーザ素子部10aと、発振波長660(nm)帯の赤色レーザ素子部10bとが構成されている。図1のX方向において、赤外レーザ素子部10aと赤色レーザ素子部10bとは、互いに間隙をあけて構成されている。また、両素子部10a、10bの周辺には、周辺領域10c、10d、10eが形成されている。
図1に示すように、赤外レーザ素子部10aは、基板101の一方の主表面上(図1では、Z方向の上側主表面)に、赤外レーザのn型クラッド層102、赤外レーザの活性層103、赤外レーザのp型第1クラッド層104、赤外レーザのp型第2クラッド層105、誘電体膜110、p型電極111が積層され、基板101の他方の主表面上(図1では、Z方向の下側主表面上)にn型電極112が形成され構成されている。ここで、p型第1クラッド層104の上側主面は、p型第2クラッド層105が積層された部分を除き、その主表面全体が誘電体膜110で覆われている。対して、p型第1クラッド層104上に積層されたp型第2クラッド層105の主表面は、誘電体膜110が除去されており、直接p型電極111に接している。このような構成によって、リッジA1が形成されている。
なお、赤外レーザ素子部10aにおける活性層103は、発振波長780(nm)帯の量子井戸構造により構成されている。また、周辺領域10cにおけるp型第2クラッド層109は、赤外レーザ保護層としての機能も兼ね備える。
一方、図1に示すように、赤色レーザ素子部10bは、基板101の一方の主表面上(図1では、Z方向の上側主表面)に、赤色レーザのn型クラッド層106、赤色レーザの活性層107、赤色レーザのp型第1クラッド層108、赤色レーザのp型第2クラッド層109、誘電体膜110、p型電極111が積層され、基板101の他方の主表面上(図1では、Z方向の下側主表面上)にn型電極112が形成され構成されている。そして、赤色レーザ素子部10bにおけるp型第2クラッド層109の主表面上では、誘電体膜110が除去されており、リッジA2が形成されている。
なお、赤色レーザ素子部10bにおける活性層107は、発振波長660(nm)帯の量子井戸構造により構成されている。また、周辺領域10d、10eの各々におけるp型第2クラッド層109は、赤色レーザ保護層としての機能も兼ね備える。
図1に示すように、周辺領域10c、10d、10eは、基本的には上記赤色レーザ素子部10bと同一材料層の積層構造から構成されているが、リッジが形成されておらず、各領域10c、10d、10eにおけるp型第2クラッド層109が誘電体膜110で覆われている。
赤外レーザ素子部10aと周辺領域10c、10dとの間には、図1のZ方向に形成された溝D1を有する。この溝D1は、誘電体膜110が基板101に接触するように、各層102〜105、106〜109が除去され、また、p型電極111も除去されて構成されており、所謂、素子間分離溝である。
一方、赤色レーザ素子部10bと周辺領域10d、10eとの間には、図1のZ方向に形成された溝D2を有する。この溝D2は、誘電体膜110がp型第1クラッド層108に接触するようにp型第2クラッド層109が除去され構成されている。
1−2.各領域の高さ関係
上記構成を有する二波長半導体レーザ装置10では、赤外レーザ素子部10a、赤色レーザ素子部10bと、各周辺領域10c、10d、10eとの間で次のような高さ関係を有している。
図1に示すように、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10では、2つの素子部10a、10bおよび3つの周辺領域10c、10d、10eの中で、赤外レーザ素子部10aの高さが最も低く設定されており、次に赤色レーザ素子部10bが低く設定され、周辺領域10c、10d、10eが同一であって、且つ最も高く設定されている。ここで、赤色レーザ素子部10bと各周辺領域10c、10d、10eとの高さの差異は、誘電体膜110の膜厚み分だけであり、実質同一高さと捉えることができる。
具体的には、基板101における下側の主表面(n型電極112が積層された主表面)のZ方向座標位置を基準位置Bfとし、各素子部10a、10bおよび各周辺領域10c、10d、10eにおけるp型電極111の上側表面のZ方向座標位置を位置10af、10bf、111f1、111f2、111f3とする。このとき、各面は、次のようなZ方向の位置関係をもって設定されている。
Figure 0004327679
Figure 0004327679
なお、上述のように赤色レーザ素子部10bにおける位置10bfと、各周辺領域10c、10d、10eにおける位置111f1、111f2、111f3との差異は、誘電体膜110の厚み分であり、ほとんど無視できる。このことを考慮すると、上記(数2)は、次のようにみなすことができる。
Figure 0004327679
1−3.二波長半導体レーザ装置10が有する優位性
本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10では、周辺領域10c、10d、10eにおける高さが、赤外レーザ素子部10aの高さよりも高く、赤色レーザ素子部10bの高さよりも僅かながら高く設定されている。そして、周辺領域10c、10eは、2つの素子部10a、10bよりもX方向で外側に配され、また、周辺領域10dは、2つの素子部10a、10bの間に配されている。
さらに、上記(数2)および(数3)のように各周辺領域10c、10d、10eの高さは、同一に設定されている。このような設定により、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10は、ジャンクションダウン組立時において、基板101がサブマウントに対して傾くことなく水平にボンディングされる。また、二波長半導体レーザ装置10では、ジャンクションダウン組立時において、基板101がサブマウントに対して傾かないので、ダブルへテロ構造の厚みの厚い側の素子部(図1では、赤色レーザ素子部10b。)に応力が集中することがなく、半導体レーザの特性を高く維持することができる。
また、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10では、ジャンクションダウン組立時におけるサブマウントに対する基板101の傾きを生じることがないので、装置設計における各素子部10a、10bの高さに制約を受け難いという優位性を有する。
さらに、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10では、赤外レーザ素子部10aと赤色レーザ素子部10bとを、互いの素子部表面の高さ位置を同一としなくてもよいので、装置の設計プロセスにおける制約が少ないという優位性も有する。
二波長半導体レーザ装置10に用いる各構成についての一例を表1に示す。
Figure 0004327679
表1に示す層構成を採用するとき、赤外レーザ素子部10aにおける高さ(10af−Bf)は、3.68(μm)であり、赤色レーザ素子部10bにおける高さ(10bf−Bf)は、4.75(μm)である。ここで、仮に上記図15のように周辺領域が構成されていない従来のダブルチャネル構造の二波長半導体レーザ装置では、素子部間で約1(μm)以上の高さの差異が生じる。このため、ジャンクションダウン組立時における基板の傾きや、これから生じる特性への悪影響が発生することになる。
これに対して、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10では、素子10a、10b間で約1(μm)以上の高さの差異があっても、ジャンクションダウン組立時に周辺領域10c、10d、10eの各領域における上側表面で装置が保持される。よって、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置では、ジャンクションダウン組立時における基板101の傾きが抑制され、リッジA1、A2などへの応力集中も回避できる。
1−4.二波長半導体レーザ装置10の製造方法
次に、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10の製造方法について、図2〜4に基づいて説明する。図2〜4は本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置10の製造工程を主要なステップ毎に示す工程図である。なお、各工程におけるMOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)結晶成長技術、フォトリソグラフィ技術、半導体・誘電体膜・電極のエッチング技術、CVD誘電体膜堆積技術、電極蒸着技術については、いずれも公知の技術によるものであるので、以下での詳細な説明を省略する。
図2(a)に示すように、MOCVD法を用いてn型GaAs基板101上に、赤外レーザのn型クラッド層102、赤外レーザの活性層103、赤外レーザのp型第1クラッド層104、赤外レーザのp型第2クラッド層105を順次積層する。
次に、図2(b)に示すように、赤外レーザ素子部10aを形成しようとする領域の両側において、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、n型クラッド層102、活性層103、p型第1クラッド層104、p型第2クラッド層105を除去する。
図2(c)に示すように、MOCVD法を用いて、赤色レーザのn型クラッド層106、赤色レーザの活性層107、赤色レーザのp型第1クラッド層108、赤色レーザのp型第2クラッド層109を順次積層する。
次に、図2(d)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤外レーザ素子部10aを形成しようとする領域に隣接する両側の領域において、n型クラッド層106、活性層107、p型第1クラッド層108、p型第2クラッド層109を除去し、溝D1を形成する。
次に、図3(e)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤外レーザ素子部10aを形成しようとする領域のp型第2クラッド層105の上部に残留しているn型クラッド層106、活性層107、p型第1クラッド層108、p型第2クラッド層109を除去する。
続いて、図3(f)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤外レーザ素子部10aを形成しようとする領域におけるp型第2クラッド層105の一部を除去することにより、リッジを形成する。
図3(g)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤色レーザ素子部10bを形成しようとする領域に隣接する両側の領域において、p型第2クラッド層109の一部を除去する。これにより、赤色レーザ素子部10bを形成しようとする領域にリッジを形成するとともに、その両側に溝D2を形成する。ここで、赤色レーザ素子部10bを形成しようとする領域に隣接した領域に残るp型第2クラッド層109は、装置完成後においては、赤色レーザ保護層としての機能も備えることになる。
次に、図4(h)に示すように、CVD法を用いて、表面全体に対して、例えばSiO2からなる誘電体膜110を堆積する。
図4(i)に示すように、赤外レーザ素子部10aを形成しようとする領域におけるp型第2クラッド層105上、および赤色レーザ素子部10bを形成しようとする領域におけるp型第2クラッド層109上の誘電体膜110を選択的に除去し、リッジに電流注入される構造を形成する。さらに、表面全体に対して、p側電極111を蒸着する。
図4(j)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤外レーザ素子部10aを形成しようとする領域に隣接する溝D1の傾斜面および底面におけるp側電極111を除去する。そして、最後に、基板101のZ方向下側主面に対して、一様にn側電極112を蒸着形成することで二波長半導体レーザ装置10が完成する。即ち、溝D1間の領域が赤外レーザ素子部10aであり、溝D2間の領域が赤色レーザ素子部10bである。また、赤外レーザ素子部10aおよび赤色レーザ素子部10bを除く突出領域が、周辺領域10c、10d、10eである。
なお、各層の材料、伝導型、膜厚、キャリア濃度は、例えば、上記表1の通りである。
(変形例1)
変形例1に係る二波長半導体レーザ装置12の構成について、図5を用いて説明する。
図5に示すように、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置12は、上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10と同様の基本構成を有している。図5では、上記実施の形態1と同一構成の箇所には同一の符号を付し、異なる箇所のみ異なる符号を付している。以下では、上記実施の形態1との相違点を中心として説明する。なお、本変形例についても一例を示すものであって、本発明がこれに限定を受けるものではなく、本発明が特徴とする部分以外の構成については適宜変更が可能である。
図5に示すように、二波長半導体レーザ装置12は、赤色レーザのp型第2クラッド層129の層厚みが領域毎に相違するところにその特徴を有しており、この部分が上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10との差異である。本変形例においては、周辺領域12c、12d、12eにおけるp型第2クラッド層129は、赤色レーザ素子部12bよりも厚く設定されている。
上記構成を有する本変形例に係る二波長半導体レーザ装置12は、上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10と同様に、ジャンクションダウン組立時における基板101の傾きを抑制することが可能であり、さらに、装置10よりも、よりジャンクションダウン組立時におけるリッジA3、A4への応力の集中を抑制することが可能である。即ち、周辺領域12c、12d、12eにおけるp型第2クラッド層129の厚みを厚くすることで、Z方向において、基準位置Bfに対する周辺領域12c、12d、12eの各位置111f1、111f2、111f3と素子部12a、12bの位置12af、12bfとの差異を大きくとることができる。よって、ジャンクションダウン組立時においても、両素子部12a、12bにダメージを受け難い。
(変形例2)
変形例2に係る二波長半導体レーザ装置14の構成について、図6を用いて説明する。なお、本変形例についても、上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10および変形例1に係る二波長半導体レーザ装置12との差異部分を中心に説明する。
図6に示すように、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置14では、周辺領域14c、14d、14eにおけるp型第2クラッド層109と誘電体膜110との間に第2保護層153が介挿された構成を有する。その他の構成に付いては、上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10と同一の構成となっている。ここで、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置14が構成として備える第2保護層153の構成材料には、赤色レーザのp型第2クラッド層109と同一の材料を用いることができ、例えば、(Al0.7Ga0.30.5In0.5P(Znドープ)などの材料を用いることができる。
上記変形例1に係る二波長半導体レーザ装置12においては、周辺領域12c、12d、12eにおけるp型第2クラッド層129の厚みを変更することで、その位置111f1、111f2、111f3を素子部12a、12bの位置12af、12bfよりも高くし、これをもってジャンクションダウン組立時におけるリッジA3、A4への応力集中を抑制することが可能となる。
これに対して、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置14では、周辺領域14c、14d、14eに第2保護層153を介挿させることで、Z方向において、基準位置Bfに対する周辺領域14c、14d、14eの各位置111f1、111f2、111f3と素子部14a、14bの位置14af、14bfとの差異を大きくとることができる。よって、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置14においても、上記実施の形態1および変形例1と同様に、ジャンクションダウン組立時におけるリッジA5、A6の保護を図ることができ、基板101の傾きを防止することもできる。なお、上記変形例1よりも本変形例の方が、プロセスの観点から周辺領域14c、14d、14eの位置111f1、111f2、111f3の高さ精度を高くすることができる。
なお、基板101の基準位置Bfから周辺領域14c、14d、14eにおけるp型第2クラッド層109のZ方向上側主面までの高さが、基板101の基準位置Bfから赤色レーザ素子部14bにおけるp型第2クラッド層109のZ方向上側主面までの高さより小さい場合でも、誘電体膜110およびp側電極111の各厚みの調整により、各素子部14a、14bにおける基板101の基準位置Bfから上面位置14af、14bfまでの高さと比べ、第2保護層153が介挿されている周辺領域14c、14d、14eでの基準位置Bfからp型電極111表面までの高さを同一またはより大きくすることが可能である。この場合もジャンクションダウン組立時における傾きの抑制やリッジA5、A6への応力集中を抑制できるという効果を得ることが可能である。
(実施の形態2)
以下では、実施の形態2に係る二波長半導体レーザ装置20について、図面を参酌しながら説明する。本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20についても、ダブルチャネル型リッジ構造を採用するものであって、発振波長780(nm)帯の赤外レーザ素子部と発振波長660(nm)帯の赤色レーザ素子部とが同一基板をベースとして形成された構成を有するものである。
2−1.装置構成
先ず、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20の構成について、図7を用いて説明する。図7では、上記図1などと同様にへき開面からなる反射鏡などの図示を省略している。
図7に示すように、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20は、n型GaAs基板201を共通のベースとして、分離溝D8を境として、X方向左側に赤外レーザ素子部20a、X方向右側に赤色レーザ素子部20bが各々形成された構成を有している。図7のX方向において、赤外レーザ素子部20aの周辺には、周辺領域20c、20dが形成され、赤色レーザ素子部20bの周辺には、周辺領域20e、20fが形成されている。
図7に示すように、赤外レーザ素子部20aは、基板201の一方の主表面上(図7では、Z方向の上側主表面)に、赤外レーザのn型クラッド層202、赤外レーザの活性層203、赤外レーザのp型第1クラッド層204、赤外レーザのp型第2クラッド層205、誘電体膜211、p型電極212が積層され、基板201の他方の主表面上(図7では、Z方向の下側主表面上)にn型電極213が形成され構成されている。ここで、p型第1クラッド層204の上側主面は、p型第2クラッド層205が積層された部分を除き、その主表面全体が誘電体膜211で覆われている。対して、p型第1クラッド層204上に積層されたp型第2クラッド層205の主表面は、誘電体膜210が除去されており、直接p型電極212に接しており、リッジA7が形成されている。これらの構成に付いては、上記実施の形態1などと同様である。
なお、赤外レーザ素子部20aにおける活性層203は、発振波長780(nm)帯の量子井戸構造により構成されている。
周辺領域20c、20dは、赤外レーザ素子部20aと溝D11によって隔てらた両脇部分に構成されている。周辺領域20c、20dは、赤外レーザ素子部20aと同様に、基板101の主表面上に n型クラッド層202、活性層203、p型第1クラッド層204、p型第2クラッド層205、誘電体膜211、p型電極212が積層された構成を有しているが、赤外レーザ素子部20aと異なり、p型第2クラッド層205と誘電体膜211との間に赤外レーザの第2保護層206が介挿されている。また、周辺領域20c、20dでは、p型第2クラッド層205および第2保護層206とp型電極212との間に誘電体膜211が途切れることなく介挿されている。ここで、周辺領域20c、20dにおけるp型第2クラッド層206は、赤外レーザ保護層としての機能も兼ね備える。
一方、図7に示すように、赤色レーザ素子部20bは、赤外レーザ素子部20aと共通とする基板101の一方の主表面上(図7では、Z方向の上側主表面)に、赤色レーザのn型クラッド層207、赤色レーザの活性層208、赤色レーザのp型第1クラッド層209、赤色レーザのp型第2クラッド層210、誘電体膜211、p型電極212が積層され、基板201の他方の主表面上(図7では、Z方向の下側主表面上)に、赤外レーザ素子部20aと共通するn型電極213が形成され構成されている。そして、赤色レーザ素子部20bにおいても、p型第2クラッド層210の上側表面上の誘電体膜211が除去されており、p型第2クラッド層210とp型電極212が直接接触し、リッジA8が形成されている。
また、周辺領域20e、20fは、赤色レーザ素子部20bと溝D9によって隔てられた両脇部分に構成されている。周辺領域20e、20fは、基板201の主表面上に、n型クラッド層207、活性層208、p型第1クラッド層209、p型第2クラッド層210、誘電体膜211、p型電極212が積層され構成されている。周辺領域20e、20fについても、上記周辺領域20c、20dと同様に、p型第2クラッド層210とp型電極212との間に誘電体膜211が途切れることなく介挿されている。ここで、周辺領域20e、20fの各々におけるp型第2クラッド層210は、赤色レーザ保護層としての機能も兼ね備える。
溝D8は、上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10と同様に、誘電体膜211が基板201に直に接触するように、各層202〜206、217〜211が除去され、また、p型電極212も除去されて構成されている。
2−2.各領域の高さ関係
本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20についても、各素子部20a、20bおよび周辺領域20c〜20fの高さ関係を説明する。
図7に示すように、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20についても、2つの素子部20a、20bおよび4つの周辺領域20c〜20fの中で、赤外レーザ素子部20aの高さが最も低く設定されており、次に赤色レーザ素子部20bが低く設定され、周辺領域20c〜20fが互いに同一高さであって、且つ両素子部20a、20bよりも高く設定されている。ここで、赤色レーザ素子部20bと各周辺領域20c〜20fとの高さの差異は、上記実施の形態1と同様に、誘電体膜211の膜厚み分だけであり、実質同一高さと捉えることができる。
具体的には、基板201における下側の主表面(n型電極213が積層された側の主表面)のZ方向座標位置を基準位置Bf、各素子部20a、20bおよび各周辺領域20c〜20eにおけるp型電極212の上側表面のZ方向座標位置を位置20af、20bf、212f1〜111f4とする。このとき、各面は、次のようなZ方向の位置関係をもって設定されている。
Figure 0004327679
Figure 0004327679
Figure 0004327679
なお、上記実施の形態1と同様に、上記(数5)は、次のようにみなすことができる。
Figure 0004327679
2−3.二波長半導体レーザ装置20が有する優位性
本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20では、周辺領域20c〜20fにおける高さが、赤外レーザ素子部20aの高さよりも高く、赤色レーザ素子部20bの高さよりも僅かながら高く設定されている。そして、周辺領域20c、20fは、2つの素子部20a、20bよりもX方向で外側に配され、また、周辺領域20d、20eは、2つの素子部20a、20bの間に配されている。
このように高さ関係が設定された二波長半導体レーザ装置20では、上記二波長半導体レーザ装置10と同様に、ジャンクションダウン組立時において、基板201がサブマウントに対して傾かないので、ダブルへテロ構造の厚みの厚い側の素子部(図2では、赤色レーザ素子部20b。)に応力が集中することがなく、半導体レーザの特性を高く維持することができる。ここで、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20では、素子部20aと素子部20bとの間に、これらより高さの高い2箇所の周辺領域20d、20eを配置しているので、素子部間に1箇所の周辺領域10dしか配置していない上記二波長半導体レーザ装置10に比べ、リッジA7、A8への応力の集中をより確実に抑制することが可能である。
また、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20では、上記二波長半導体レーザ装置10と同様に、装置設計において各素子部20a、20bの高さに制約を受け難く、設計の自由度という観点からも優位性を有する。
二波長半導体レーザ装置20に用いる各構成についての一例を表2に示す。
Figure 0004327679
表2に示す層構成を採用するとき、赤外レーザ素子部20aにおける高さ(20af−Bf)は、3.68(μm)であり、赤色レーザ素子部20bにおける高さ(20bf−Bf)は、4.75(μm)である。このような素子部20a、20b間での高さの差異を有する場合にあっても、ジャンクションダウン組立時に周辺領域20c〜20fの各領域における上側表面で装置20が保持される。よって、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20でも、ジャンクションダウン組立時における基板201の傾きが抑制され、リッジA7、A8への応力集中も回避できる。
2−4.二波長半導体レーザ装置20の製造方法
次に、本実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置20の製造方法について、図8〜10に基づいて説明する。図8〜10は本発明の実施の形態に係る二波長半導体レーザ装置の製造工程を主要なステップ毎に示す工程図である。なお、本実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、公知であるMOCVD結晶成長技術、フォトリソグラフィ技術、半導体・誘電体膜・電極のエッチング技術、CVD誘電体膜堆積技術、電極蒸着技術の詳細な説明を省略する。
図8(a)に示すように、MOCVD法を用いて、n型GaAs基板201の一方の主面上に、赤外レーザのn型クラッド層202、赤外レーザの活性層203、赤外レーザのp型第1クラッド層204、p型第2クラッド層205、赤外レーザの第2保護層206を順次積層する。赤外レーザ活性層203は発振波長780(nm)帯の量子井戸構造により構成される。
次に、図8(b)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤色レーザ素子部20bを形成しようとする領域において、n型クラッド層202、活性層203、p型第1クラッド層204、p型第2クラッド層205、第2保護層206を除去し、基板201を底面とする凹部D7を形成する。
図8(c)に示すように、MOCVD法を用いて、凹部D7を含めた表面全体に対して、赤色レーザのn型クラッド層207、赤色レーザの活性層208、赤色レーザのp型第1クラッド層209、赤色レーザのp型第2クラッド層210を順次積層する。赤色レーザ活性層208は発振波長660(nm)帯の量子井戸構造により構成される。
次に、図8(d)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤外レーザ素子部20aと赤色レーザ素子部20bの各々を形成しようとする領域の境界となる部分において、n型クラッド層207、活性層208、p型第1クラッド層209、p型第2クラッド層210を除去し、分離溝D8を形成する。
次に、図9(e)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、赤外レーザ素子部20aを形成しようとする領域に残るn型クラッド層207、活性層208、p型第1クラッド層209、p型第2クラッド層210を除去する。
図9(f)に示すように、赤色レーザ素子部20bを形成しようとする領域およびその周辺領域において、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、p型第2クラッド層210の一部を除去し、溝D9を形成する。これにより2つの溝D9に挟まれて残るp型第2クラッド層210をもってリッジを形成する。なお、2つの溝D9よりも外側に残るp型第2クラッド層210は、装置20の完成後において、赤色レーザ保護層として機能する。
図9(g)に示すように、赤外レーザ素子部20aを形成しようとする領域およびその周辺領域において、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、第2保護層206の一部を除去し、溝D10を形成する。
図9(h)に示すように、溝D10の形成領域において、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、p型第2クラッド層205の一部を除去することにより溝D11を形成する。そして、2つの溝D11に挟まれて残るp型第2クラッド層205をもってリッジが形成される。また、2つの溝D11よりも外側に残るp型第2クラッド層205は、装置20の完成後において赤外レーザ素子部20aの第1保護層として機能する。即ち、D11の両外側には、第1保護層(p型第2クラッド層205)と第2保護層206とが積層された形態をもって残ることになる。
次に、図10(i)に示すように、CVD法を用いて、例えばSiO2からなる誘電体膜211を表面全体に堆積する。
図10(j)に示すように、赤外レーザ素子部20aを形成しようとする領域におけるp型第2クラッド層205上、および赤色レーザ素子部20bを形成しようとする領域におけるp型第2クラッド層210上の誘電体膜211を、フォトリソグラフィおよびエッチングにより選択的に除去し、リッジに電流注入される構造を形成する。さらに、表面全体に対して、p側電極212を蒸着する。
最後に、図10(k)に示すように、溝D8の傾斜面および底面におけるp型電極212を、フォトリソグラフィおよびエッチングにより除去し、赤外レーザ素子部20aと赤色レーザ素子部20bとの間の素子分離を図る。さらに、基板201における他方の主面全体に、n側電極213を蒸着して装置20が完成する。
なお、各層の構成材料、伝導型、膜厚、キャリア濃度は、例えば、上記表2の通りである。
(変形例3)
変形例3に係る二波長半導体レーザ装置22の構成について、図11を用いて説明する。
図11に示すように、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置22は、上記実施の形態2に係る二波長半導体レーザ装置20と同様の基本構成を有し、赤外レーザのp型第2クラッド層226および赤色レーザのp型第2クラッド層230の層厚みが上記実施の形態2に係る二波長半導体レーザ装置20と相違する。
図11に示すように、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置22では、周辺領域22c、22dにおけるp型第2クラッド層226の層厚みが、図7のp型第2クラッド層206よりも厚く設定されている。また、周辺領域22e、22fにおけるp型第2クラッド層230は、赤色レーザ素子部22bにおけるp型第2クラッド層210とは異なる層厚みで設定されている。そして、周辺領域22c、22dにおけるp型第2クラッド層226、および周辺領域22e、22fにおけるp型第2クラッド層230の各層厚みは、周辺領域22c〜22fにおける上面位置212f1〜212f4が、基準位置Bfに対し同一となるように設定されている。このようなp型第2クラッド層226、230の設定により、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置22では、周辺領域22c〜22fにおける上面位置212f1〜212f4が各素子部22a、22bにおける上面位置22af、22bfよりも確実に高くすることができる。
上記構成を有する本変形例に係る二波長半導体レーザ装置22は、上記実施の形態2に係る二波長半導体レーザ装置と同様に、ジャンクションダウン組立時における基板201の傾きを抑制することが可能であり、さらに、装置20よりも、よりジャンクションダウン組立時におけるリッジへの応力の集中を抑制することが可能である。即ち、周辺領域22c〜22fにおけるp型第2クラッド層226、230の厚みを素子部22a、22bのp型第2クラッド層205、210よりも厚くすることで、Z方向において、基準位置Bfに対する周辺領域22c〜22fの各位置212f1〜212f4と素子部22a、22bの位置22af、22bfとの差異を大きくとることができる。よって、ジャンクションダウン組立時においても、両素子部22a、22bにダメージを受け難い。
(変形例4)
変形例4に係る二波長半導体レーザ装置24の構成について、図12を用いて説明する。
図12に示すように、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置24では、周辺領域24c〜24fにおけるp型第2クラッド層206、210と誘電体膜211との間に第3保護層254が介挿された構成を有する。その他の構成に付いては、上記実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置20と同一の構成となっている。ここで、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置24が構成として備える第3保護層254の構成材料には、上記変形例2に係る装置14の第2保護層153と同様に、例えば、(Al0.7Ga0.30.5In0.5P(Znドープ)などの材料を用いることができる。
本変形例に係る二波長半導体レーザ装置24では、周辺領域24c〜24fに第3保護層254を介挿させることで、Z方向において、基準位置Bfに対する周辺領域24c〜24fの各位置212f1〜212f4と素子部24a、24bの位置24af、24bfとの差異を大きくとることができる。よって、本変形例に係る二波長半導体レーザ装置24においても、上記実施の形態2および変形例3と同様に、ジャンクションダウン組立時におけるリッジの保護を図ることができ、基板201の傾きを防止することもできる。なお、上記変形例3よりも本変形例の方が、プロセスの観点から周辺領域24c〜24fの位置212f1〜212f4の高さ精度を高くすることができる。
なお、基板201の基準位置Bfから周辺領域24c〜24fにおけるp型第2クラッド層206、210のZ方向上側主面までの高さが、基板201の基準位置Bfから赤色レーザ素子部24bにおけるp型第2クラッド層210のZ方向上側主面までの高さより小さい場合でも、誘電体膜211およびp側電極212の各厚みの調整により、各素子部24a、24bにおける基板201の基準位置Bfから上面位置24af、24bfまでの高さと比べ、第3保護層254が介挿されている周辺領域24c〜24fでの基準位置Bfからp型電極212表面までの高さを同一またはより大きくすることが可能である。この場合もジャンクションダウン組立時における傾きの抑制やリッジへの応力集中を抑制できるという効果を得ることが可能である。
(その他の事項)
上記実施の形態1、2および変形例1〜4では、同一基板をベースとして赤外レーザ素子部と赤色レーザ素子部とを有する二波長半導体レーザ装置を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、同一基板をベースとして異なる波長の光を出射する3つ以上のレーザ素子部を形成することとしてもよいし、形成するレーザ素子部の発振波長も上記のものに限定されない。そして、本発明に係る半導体レーザ装置の構成を採用することで、ジャンクションダウン組立時におけるサブマウントに対する基板の傾きが効果的の抑制され、各素子部のリッジに応力が集中することもない。このため、同一基板をベースとして異なる発振波長の複数のレーザ素子部を形成する場合にあっても、そのレーザ素子部の設計の自由度を高く維持することができる。
また、上記実施の形態1、2では、装置10、20における各領域上面の高さ関係を分かり易くするためなどの目的から、一例として表1、表2に具体的な材料名、層厚みなどを示した。本発明が、これらの材料、数値などに限定を受けるものではないことは明らかである。
また、上記実施の形態1、2および変形例1〜4では、780(nm)帯の波長の赤外光を出射する赤外レーザ素子部10a、12a、14a、20a、22a、24aと、660(nm)帯の波長の赤色光を出射する赤色レーザ素子部10b、12b、14b、20b、22b、24bとを備える構成としたが、出射光の波長などはこれに限定を受けるものではない。ただし、一方の出射光の波長が750(nm)以上820(nm)以下であり、他方の出射光の波長が630(nm)以上690(nm)以下とすることが、実際の装置を構成する上で望ましい。
また、上記実施の形態1、2および変形例1〜4の各装置10、12、14、20、22、24などでは、赤外レーザ素子部10a、12a、14a、20a、22a、24aと赤色レーザ素子部10b、12b、14b、20b、22b、24bとの各間にも周辺領域10c、12c、14c、20d、20e、22d、22e、24d、24eを設けることとしたが、これらは必須のものではない。即ち、同一基板をベースとする2つ以上のレーザ素子部が存在するとき、これらレーザ素子部が形成された全領域を囲む基板外縁に少なくとも2箇所の周辺領域が存在し、この少なくとも2箇所の周辺領域における上面高さが各レーザ素子部の上面高さ以上であって、且つ、少なくとも2箇所の周辺領域の高さを同一としておけば、上述の優位性を有することが可能である。
本発明は、光ディスク装置、あるいは光情報処理、光通信、光計測などに使用され、二波長あるいはそれ以上の波長が発振可能な半導体レーザ装置を形成する上で有効である。
実施の形態1に係る二波長半導体レーザ装置10を示す断面構造図である。 二波長半導体レーザ装置10の製造方法における各工程を示す工程図である。 二波長半導体レーザ装置10の製造方法における各工程を示す工程図である。 二波長半導体レーザ装置10の製造方法における各工程を示す工程図である。 変形例1に係る二波長半導体レーザ装置12を示す断面構造図である。 変形例2に係る二波長半導体レーザ装置14を示す断面構造図である。 実施の形態2に係る二波長半導体レーザ装置20を示す断面構造図である。 二波長半導体レーザ装置20の製造方法における各工程を示す工程図である。 二波長半導体レーザ装置20の製造方法における各工程を示す工程図である。 二波長半導体レーザ装置20の製造方法における各工程を示す工程図である。 変形例3に係る二波長半導体レーザ装置22を示す断面構造図である。 変形例4に係る二波長半導体レーザ装置24を示す断面構造図である。 従来技術に係る埋込エピを有するリッジ構造レーザ装置を示す断面構造図である。 従来技術に係るダブルチャネルリッジ構造レーザ装置を示す断面構造図である。 従来技術に係るダブルチャネルリッジ構造を二波長半導体レーザ装置に適用した場合の装置構成を示す断面構造図である。
符号の説明
101、201.基板
102、202.赤外レーザn型クラッド層
103、203.赤外レーザ活性層
104、204.赤外レーザp型第1クラッド層
105、205.赤外レーザp型第2クラッド層
106、207.赤色レーザn型クラッド層
107、208.赤色レーザ活性層
108、209.赤色レーザp型第1クラッド層
109、210.赤色レーザp型第2クラッド層
110、211.誘電体膜
111、212.p型電極
112、213.n型電極
153.第2保護層
206.赤外レーザ第2保護層
254.第3保護層

Claims (8)

  1. 一の基板を共通のベースとして、互いに間隔をあけて第1の波長の光を出射する第1レーザ素子部と第2の波長の光を出射する第2レーザ素子部とが形成され、前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の各々が、第1伝導型のクラッド層、活性層、リッジ状ストライプ形状の第2伝導型のクラッド層が順に積層された構成を含んでなる半導体レーザ装置であって、
    第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とは、前記基板の厚み方向において、前記基板における前記各層が積層されたのとは反対側の主表面を基準とするときの積層上面の高さが互いに異なる状態に設定され、
    前記基板の外縁には、第1領域と第2領域とが互いに積層構造をもって形成され、
    当該第1領域と第2領域とは、前記基板の主表面に沿う方向において、前記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とが形成された部分を中に挟む状態に各々が配置され、前記基板の厚み方向において、前記積層上面の高さが、前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の内の高い方の素子部と同一またはそれ以上であって、且つ、互いに同一となる状態に設定されており、
    前記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間には、前記基板上に積層構造をもって第3領域が形成され、
    前記第3領域は、積層上面の高さが前記第1領域および第2領域と同一となる状態に設定されている
    ことを特徴とする半導体レーザ装置。
  2. 前記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間には、積層方向に深さを有する分離溝が形成されており、
    前記第3領域は、前記分離溝と第1レーザ素子部との間に形成されており、
    前記分離溝と第2レーザ素子部との間には、前記基板上に積層構造をもって第4領域が形成され、
    前記第4領域は、前記第1領域、第2領域および第3領域と前記積層上面の高さが同一となる状態に設定されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記第1領域、第2領域、第3領域および第4領域は、各々の前記積層上面に半導体層の層表面が露出する状態で構成されている
    ことを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ装置。
  4. 前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の各積層上面は、半導体層の層表面が露出することにより構成されており、
    前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部における前記積層上面に露出の半導体層と、前記第1領域、第2領域、第3領域および第4領域の各々における前記積層上面に露出の半導体層とは、互いに同一の材料から構成されている
    ことを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ装置。
  5. 基板の一方の主面上における一部領域に、第1伝導型のクラッド層、活性層、リッジ状ストライプ形状の第2伝導型のクラッド層を順に積層して第1レーザ素子部を形成する第1素子部形成ステップと、
    前記第1レーザ素子部が形成されたのと同一主面上であって、前記第1レーザ素子部と間隔をあけた領域に、第1伝導型のクラッド層、活性層、リッジ状ストライプ形状の第2伝導型のクラッド層を順に積層して第2レーザ素子部を形成する第2素子部形成ステップと、
    前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が形成されたのと同一主面上における外縁であって、互いの間に前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部が形成された領域を挟む箇所に、積層構造をもって第1領域および第2領域を形成する外縁領域形成ステップと
    前記主面上における前記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間の領域に、積層構造をもって、且つ、前記基板の厚み方向における積層上面の高さが前記第1領域および第2領域と同一となる状態に第3領域を形成する第3領域形成ステップとを有し、
    前記基板の厚み方向において、前記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部とは、前記基板における前記各層が積層されたのとは反対側の主表面を基準とするときの積層上面の高さが互いに異なる状態に形成され、
    前記第1領域と第2領域とは、前記積層上面の高さが、前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部の内の高い方の素子部と同一またはそれ以上であって、且つ、互いに同一となる状態に形成される
    ことを特徴とする半導体レーザ装置の製造方法。
  6. 前記第1レーザ素子部と第2レーザ素子部との間には、積層方向に深さを有する分離溝が形成され、
    前記第3領域は、前記分離溝と第1レーザ素子部との間の領域に形成されるものであって、
    前記主面上における前記分離溝と第2レーザ素子部との間の領域に、積層構造をもって、且つ、前記基板の厚み方向における積層上面の高さが前記第1領域、第2領域および第3領域と同一となる状態に第4領域を形成する第4領域形成ステップを備える
    ことを特徴とする請求項5に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
  7. 前記第1領域、第2領域、第3領域および第4領域は、各々の前記積層上面に半導体層の層表面が露出する状態で形成される
    ことを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
  8. 前記第1素子部形成ステップおよび第2素子部形成ステップでは、前記第
    1レーザ素子部および第2レーザ素子部を、その各積層上面が半導体層の層表面が露出する状態に形成し、
    前記外縁領域形成ステップ、第1領域形成ステップおよび第2領域形成ステップでは、第1領域、第2領域、第3領域および第4領域の各々における前記積層上面に露出の半導体層を、前記第1レーザ素子部および第2レーザ素子部における前記積層上面に露出の半導体層と同一の材料をもって形成する
    ことを特徴とする請求項7に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
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