JP2008021885A - 半導体ウェハ、半導体素子、半導体ウェハの製造方法、半導体素子の製造方法 - Google Patents

半導体ウェハ、半導体素子、半導体ウェハの製造方法、半導体素子の製造方法 Download PDF

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毅 横山
Koji Makita
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Abstract

【課題】へき開方向に沿った端面を有する半導体素子の歩留を向上させる。
【解決手段】n型GaAs基板101と、n型GaAs基板101上に形成されたn型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層103、活性層104、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層105を含み、所定のへき開方向を有する赤外レーザ素子構造110を含む積層部を備え、積層部は、へき開方向に沿って定められた所定の分割線と素子分離溝130との交差位置、又は分割線上であって素子分離溝130と隣接する位置に設けられた凹部10とを有し、凹部10の側壁表面140は、実質上表面段差なく形成されている。
【選択図】図1(a)

Description

本発明は、半導体ウェハ、及びその製造方法、並びに半導体素子、及びその製造方法に関するものであり、その一例として、半導体レーザに関するものである。
半導体レーザは、エレクトロニクスやオプトエレクトロニクスの多くの分野で広く使用されており、光デバイスとして不可欠なものである。特に、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多用途ディスク)などの光ディスク機器は、大容量の記録媒体として現在盛んに利用されている。DVDに用いる記録媒体(メディア)はCDの媒体に比べピット長及びトラック間隔が小さい。従って、用いる半導体レーザの波長もCDに比べDVDの方が短い。具体的には、CD用のレーザの発振波長は780nm帯であるのに対し、DVD用レーザの発振波長は650nm帯である。
ひとつの光ディスク装置がCD及びDVDの両方の情報を検出するためには、780nm帯のレーザ(赤外半導体レーザ)と650nm帯のレーザ(赤色半導体レーザ)の2つの光源が必要となる。近年、光ディスク装置を構成する光ピックアップ装置の小型化、軽量化及び低コスト化のために、1つの半導体チップの中に2種類の波長のレーザ光を発光する2波長型の半導体レーザ素子が開発されている。
特許文献1において、同一基板上に780nmの発振波長と650nmの発振波長の半導体レーザ素子をモノリシックに形成する方法が開示されている。この例を、図15(a)〜(c)、及び16(a)〜(c)に示す。
図15(a)に示すようにn型GaAs基板50の上に、第1のレーザ素子構造を作成するために、有機金属気相エピタキシャル成長法(MOVPE法)などのエピタキシャル成長法により、GaAsからなるn型バッファ層51、AlGaAsからなるn型クラッド層52、活性層53(発振波長780nmの多重量子井戸構造)、AlGaAsからなるp型クラッド層54、GaAsからなるp型キャップ層55を順に積層させる。
次に、図15(b)に示すように、第1のレーザ素子構造として残す領域をレジスト膜で保護して、硫酸系の無選択エッチング、及び、フッ酸系のAlGaAs選択エッチングなどのウェットエッチングにより、第1のレーザ素子構造領域以外の領域でn型クラッド層52までの上記の積層体を除去する。
次に、図15(c)に示すように、第2のレーザ素子構造を作成するために、有機金属気相エピタキシャル成長法(MOVPE法)などのエピタキシャル成長法により、n型バッファ層51上に、GaAsからなるn型バッファ層56、AlGaInPからなるn型クラッド層57、活性層(発振波長650nmの多重量子井戸構造)58、AlGaInPからなるp型クラッド層59、GaAsからなるp型キャップ層60を順に積層させる。
次に、図16(a)に示すように、第2のレーザ素子構造として残す領域をレジスト膜で保護して、硫酸系のキャップエッチング、リン酸塩酸系の4元選択エッチング、塩酸系の分離エッチングなどのウェットエッチングにより、第2のレーザ素子構造領域以外の領域でn型バッファ層56までの上記の積層体を除去して素子分離溝Gを作成し、第1のレーザ素子構造と第2のレーザ素子構造を機能的に分離する。
次に、図16(b)に示すように、レジスト膜により、電流注入領域となる部分を保護して、不純物をイオン注入などにより導入し、p型キャップ層(55、60)表面からp型クラッド層(54、59)の途中深さまで絶縁化された領域61を形成し、ゲインガイド型の電流狭窄構造となるストライプとする。
次に、図16(c)に示すように、p型キャップ層(55、60)に接続するように、Ti/Pt/Auなどのp型電極62を形成し、一方、n型GaAs基板50に接続するように、AuGe/Ni/Auなどのn型電極63を形成し、2つのレーザ素子構造を有する2波長型の半導体レーザ素子を得る。
ここで、図18に、上記2波長型の半導体レーザ素子の元となる半導体レーザウェハ34の平面図を示す。
第1のレーザ素子構造又は第2のレーザ素子構造に対応する複数のレーザ素子構造が形成された半導体レーザウェハ34は、半導体結晶層であるクラッド層、活性層、キャップ層がなす積層部のへき開方向に沿って定めた分割線(図中破線)150と、2本毎の素子分離溝130の中心軸に対応する分割線(図中一点鎖線)190とに沿って分割することで、図16(c)に示す2波長型の半導体レーザ素子に分離される。分割線150の間隔は、各レーザ素子構造の共振器長を与えるように定められる。
なお、図16(b)、(c)に示した領域61及び電極p型電極62は、図18においてストライプ160として示され、図16(a)に示した第1のレーザ素子構造の側壁部600及び第2のレーザ素子構造の側壁部610がなす素子分離溝Gは、図18において素子分離溝170として示される。
特開2004−328011号公報
しかし、図15、16に示した製造方法によって半導体レーザ素子を形成すると、ウェハを分割してチップ、すなわち半導体レーザ素子単体を形成する時に歩留を低下させてしまうような課題が発生する。
上記課題が発生する要因について図17(a)〜(d)に示す。図17(a)、(b)は図16(a)で示した、第1のレーザ素子構造、第2のレーザ素子構造のそれぞれの側壁部600、610の拡大図をそれぞれ示したものである。
まず、図15(b)、図17(a)に示すように、第2のレーザ素子構造を形成するために、第1のレーザ素子構造として残す領域をレジスト膜で保護して、硫酸系の無選択エッチング、及び、フッ酸系のAlGaAs選択エッチングなどのウェットエッチングする工程において、n型クラッド層52、活性層53、p型クラッド層54の組成が異なることに起因してエッチレートに差ができ、特に活性層53と他の層とのエッチレートに基づき、第1のレーザ素子構造の側壁部600で凹段差71が生じる。
又、図16(a)、図17(b)に示すように、第2のレーザ素子構造として残す領域をレジスト膜で保護して、硫酸系のキャップエッチング、リン酸塩酸系の4元選択エッチング、塩酸系の分離エッチングなどのウェットエッチングにより、第2レーザ素子構造領域以外の領域でn型バッファ層36までの上記の積層体を除去する工程においても、前記と同様の要因で第2レーザ素子構造の側壁部610に凸段差72が生じる。
ところで、図18に示す半導体レーザウェハにおいては、分割線150と各素子分離溝170とが交差するため、分離される各レーザ素子の共振器端面の両側面は、第1のレーザ素子構造の側壁部600及び第2のレーザ素子構造の側壁部610に対応することとなる。
したがって、複数のレーザ素子が形成された半導体レーザウェハを半導体レーザチップに分離形成する際、特にへき開方向に対応する分割線150に沿ってウェハを分離するとき、へき開の応力は素子分離溝170に及ぶが、さらに素子分離溝170においては、へき開の応力は、上述のようにして側壁部(600、610)に形成された凹凸(凹段差71、凸段差72)に集中することになる。
このとき、図17(c)(d)にそれぞれ示すように、前記凹凸(凹段差71、凸段差72)を起点として、ある一定の確率で共振器端面の活性層に沿ってクラック(73、74)が発生し、良好な共振器端面を得ることができない。この端面クラックに起因して、共振器端面の瞬時的光学損傷(COD:Catastrophic Optical Damage)が発生するため、高い歩留を期待することが困難になる。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、へき開方向に沿った端面を有する半導体素子の歩留を向上させることが可能な半導体ウェハ及びその製造方法、半導体素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、第1の本発明は、複数の半導体素子構造が形成される半導体ウェハであって、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された複数の結晶層を含み、所定のへき開方向を有する積層部とを備え、
前記積層部は、
並列する前記半導体素子構造同士を分離するための素子分離溝と、
前記へき開方向に沿って定められた所定の分割線と前記素子分離溝との交差位置、又は前記分割線上であって前記素子分離溝と隣接する位置に設けられた凹部とを有し、
前記凹部の内壁は、実質上段差なく形成されている、半導体ウェハである。
又、第2の本発明は、前記凹部の、前記内壁が実質上段差なく形成されている、とは、
前記内壁に段差を有しないこと、又は、
前記内壁の表面に、8nm以下の凸段差若しくは120nm以下の凹段差が形成されていること、
である、第1の本発明の半導体ウェハである。
又、第3の本発明は、前記凹部は、少なくともドライエッチングによって実質上段差なく形成されている、第1の本発明の半導体ウェハである。
又、第4の本発明は、前記分割線上であって、ウェハ本体の端部に形成される前記半導体素子構造より外側に設けられている凹部をさらに備え、
前記凹部の内壁は、実質上段差なく形成されている、第1の本発明の半導体ウェハである。
又、第5の本発明は、前記凹部は、前記素子分離溝と並行な方向に延伸した溝形状を有している、第1から第4のいずれかの本発明の半導体ウェハである。
又、第6の本発明は、前記半導体素子構造は半導体レーザ素子構造であって、
前記複数の結晶層は、前記半導体基板上の上部に設けられた第1のクラッド層と、
前記第1のクラッド層の上部に設けられた活性層と、
前記活性層の上部に設けられた第2のクラッド層とを有し、
前記分割線は、前記半導体レーザ素子のレーザの共振器長に対応した間隔で定められている、第1から第4のいずれかの本発明の半導体ウェハである。
又、第7の本発明は、第1から6のいずれかの本発明の半導体ウェハを、前記分割線と、所定本数毎の前記素子分離溝とに沿って分離することにより得られる単数又は複数の前記半導体素子構造を備えた、半導体素子である。
又、第8の本発明は、1本の前記素子分離溝をその間に挟む一対の前記半導体素子構造を有し、
前記一対の前記半導体素子構造は、発振波長が650nm帯の半導体レーザ、発振波長が780nm帯の半導体レーザのそれぞれに対応するものである、第7の本発明の半導体素子である。
又、第9の本発明は、複数の半導体素子構造が形成される半導体ウェハの製造方法であって、
半導体基板上に、所定のへき開方向を有する複数の結晶層を積層して積層部を作成する工程と、
前記積層部上に、並列する前記半導体素子構造同士を分離するための素子分離溝を設ける工程と、
前記へき開方向に沿って定められた所定の分割線と前記素子分離溝との交差位置、又は前記分割線上であって前記素子分離溝と隣接する位置に、その内壁が実質上段差を有さない凹部を設ける工程とを備えた、半導体ウェハの製造方法である。
又、第10の本発明は、前記凹部を設ける工程は、
前記凹部を、その内壁に段差を有さないように形成すること、又は、
前記凹部の前記内壁の表面に、8nm以下の凸段差若しくは120nm以下の凹段差を形成すること、
を含む工程である、第9の本発明の半導体ウェハの製造方法である。
又、第11の本発明は、前記凹部を設ける工程を、少なくともドライエッチングによって行う、第9の本発明の半導体ウェハの製造方法。
又、第12の本発明は、前記分割線上であって、ウェハ本体の端部に形成される前記半導体素子構造より外側に、その内壁が実質上段差を有さない凹部を設ける工程をさらに備えた、第9の本発明の半導体ウェハの製造方法である。
又、第13の本発明は、前記凹部を設ける工程は、前記凹部を、前記素子分離溝と並行な方向に延伸した溝形状として設ける工程を含む、第9から第12のいずれかの本発明の半導体ウェハの製造方法である。
又、第14の本発明は、第9の本発明の半導体ウェハの製造方法により製造された半導体ウェハを、前記分割線と、所定本数毎の前記素子分離溝とに沿って分離する工程を備え、
前記半導体ウェハから、単数又は複数の前記半導体素子構造を有する複数の半導体素子を作成する、半導体素子の製造方法である。
以上のように、本発明によれば、へき開方向に沿った端面を有する半導体素子の歩留を向上させることが可能となる。
図面に基づき、本発明の半導体ウェハ、半導体素子及びそれらの製造方法の一実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定するものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における、半導体レーザウェハ上の一単位又は完成品としての半導体レーザ素子の構成を示した模式図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)のA’−A直線による断面図、図1(c)は図1(a)のB’−B直線による断面図である。本実施の形態は、650nm帯に発振波長を有する赤色半導体レーザと、780nm帯に発振波長を有する赤外半導体レーザを同一基板上に形成したモノリシック2波長半導体レーザ素子の一例である。
本実施の形態のモノリシック2波長半導体レーザは、n型GaAs基板101上に、赤外レーザ素子構造110と赤色レーザ素子構造120を備えており、各素子の構成は以下の通りである。
赤外レーザ素子構造110は、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層102、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層103、GaAs/AlGaAs系の活性層104、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層105、p型GaInPエッチングストップ層106、リッジ状に形成されたp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層107、p型GaInP中間層108、及びp型GaAsコンタクト層109と、を備えている。
一方、赤色レーザ素子構造120は、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層112、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層113、GaInP/AlGaInP系の活性層114、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層115、p型GaInPエッチングストップ層116、リッジ状に形成されたp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層117、p型GaInP中間層118、及びp型GaAsコンタクト層119と、を備えている。
赤外レーザ素子構造110と赤色レーザ素子構造120とは、n型GaAsバッファ層102までエッチングして形成された素子分離溝130によって電気的に絶縁されている。赤外レーザ素子構造110及び赤色レーザ素子構造120における各層はMOCVD法により形成されている。
又、電流ブロック層121が、第2クラッド層107、117からなるリッジ側面及びエッチングストップ層106、116及び素子分離溝130に亘って形成され、各層を含むn型GaAs基板101の表面にp側電極122が、n型GaAs基板101の裏面にn側電極123が形成されている。
本実施の形態1における特徴は、図1(a)及び(b)に示すように、赤外レーザ素子構造110及び赤色レーザ素子構造120のそれぞれの端面と、素子分離溝130の対向する一対の側壁部とがそれぞれ交差する部分であって、n型GaAs基板101に垂直な側壁を有する凹部10を設けた点にある。
凹部10は、図1(b)に示すように、素子分離溝130に対して左右対称な形状を有し、赤外レーザ素子構造110側については、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層103、活性層104、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層105、p型GaInPエッチングストップ層106の各層の表面によって、n型GaAs基板101に対し垂直な側壁表面140を有するように形成され、同様に、赤色レーザ素子構造120側については、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層113、GaInP/AlGaInP系の活性層114、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層115、p型GaInPエッチングストップ層116の各層の表面によって、n型GaAs基板101に対し垂直な側壁表面140を有するように形成されている。
一方、凹部10が設けられていない赤外レーザ素子構造110及び赤色レーザ素子構造120の間の素子分離溝130は、従来例同様、図1(c)に示すように赤外レーザ素子構造110及び赤色レーザ素子構造120のそれぞれの傾斜した側面部が対向することにより形成されている。図2(a)(b)の模式図にそれぞれ示すように、素子分離溝130によって分離された赤外レーザ素子構造110の側面部には、活性層104と他の層のエッチレートの差に基づく、活性層104の凹み表面段差としての凹段差124が形成され、又赤色レーザ素子構造120の側面部は、同様の原因により生ずる、活性層114の出っ張り表面段差としての凸段差125が形成された状態にある。
これに対し、図2(c)(d)の模式図にそれぞれ示すように、凹部10によって分離された赤外レーザ素子構造110の端面の側壁表面140は、活性層104と他の層とが段差無く一様な壁面として形成され、赤色レーザ素子構造120の端面の側壁表面140についても、活性層114は他の層と段差を有さない状態である。
この構成は、図3に示すように、赤外レーザ素子構造110及び赤色レーザ素子構造120の元となる半導体レーザウェハ30においては、以下のようになる。すなわち、赤外レーザ素子構造110又は赤色レーザ素子構造120に対応する複数のレーザ素子構造が形成された半導体レーザウェハ30は、へき開方向に沿って定めた分割線(図中破線)150と、2本毎の素子分離溝130の中心軸に対応する分割線(図中一点鎖線)190とに沿って分割することで、図1に示す2つのレーザ素子構造を有するモノリシック2波長半導体レーザ素子として分離される。
このとき、分割線150と各素子分離溝130を構成する各側壁部との交点にはそれぞれ凹部10が形成されているため、分離される各レーザ素子構造の共振器端面の両側面は、凹部10の側壁表面140に対応することとなる。なお、半導体レーザウェハ30の左右両端は素子分割溝130を有さないが、これらより外側であって、分割線150上の所定の領域にも、上記と同様の構成を有する凹部10を設けて、半導体レーザウェハ30上の全てのレーザ素子構造が凹部10に挟まれるようにする。
又、分割線150の間隔は、各レーザ素子構造の共振器長を与えるように定められ、図1(a)〜(c)に示したp側電極122は、図3においてストライプ160として示される。
したがって、半導体レーザウェハ30を半導体レーザチップに分離形成する際、へき開の応力は側壁表面140に均等に分散するため、活性層104又は114に沿ってクラックが生ずる可能性を取り除くことができ、端面クラック要因での共振器端面のCODの発生を防ぐことが出来る。したがって、半導体レーザ素子の製造において、高い歩留を期待することが可能となり、又、半導体ウェハから得られる半導体レーザ素子は、良好な端面を有するものとなる。
なお、上記の構成において、n型GaAs基板101は本発明の半導体基板に相当し、n型GaAs基板の上部積層構造は本発明の積層部に相当する。又、赤外レーザ素子構造110、赤色レーザ素子構造は本発明の積層部であって、半導体素子構造、半導体レーザ素子構造に相当する。又、半導体レーザウェハ30は本発明の半導体ウェハに相当する。
又、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層103、(AlGa1−xIn1−yPクラッド層113は本発明の第1のクラッド層に、活性層104、活性層114は本発明のクラッド層に、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層105、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層115は、本発明の第2のクラッド層に相当する。又、これらクラッド層及び活性層の積層部分は、それぞれ本発明の複数の結晶層に相当する。
又、凹部10は本発明の凹部に相当し、側壁表面140は本発明の実質上表面段差なく形成されている内壁に相当する。又半導体レーザウェハ30は本発明の半導体ウェハに、又図1のモノリシック2波長半導体レーザ素子は本発明の半導体素子に相当する。これら各部の名称と本発明の各部との対応は、以下の各実施の形態においても同様である。
又、上記の説明では、側壁表面140は段差を極めてゼロにすることが望ましいが、段差に許容の範囲があることがわかっている。図4(a)(b)は、前記表面段差とCOD劣化発生率の関係を示したものである。図4(a)より、凸型段差、すなわち、図2(b)に示すような活性層114が他の層より突出した凸段差125のような段差となる場合、その大きさを8nm以下とすれば、COD劣化発生率を0%に抑えることが可能となる。又、図4(b)より、凹型段差、すなわち、図2(a)に示すような活性層104が他の層より凹む表面段差124のような段差となる場合、その大きさを120nm以下とすれば、COD劣化発生率を0%に抑えることが可能となり、このような状態であれば、段差を有さない状態とともに、実質上段差がないもの、とすることができる。
又、上記の構成においては、凹部10は、素子分離溝130の対向する側壁部にそれぞれ設けられているが、これは、本発明の凹部を、分割線と素子分離溝との交差位置に2つ設けた例となる。
一方、図示は省略するが、凹部10の底面をn型GaAsバッファ層102まで達し、素子分離溝130より深く形成することにより、素子分離溝130の全体に又がって1つの大きな凹部10を得る構成としても良い。この場合は、本発明の凹部を、分割線と素子分離溝との交差位置に1つ設けた例となる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2として、上記実施の形態1の構造の半導体レーザ素子、半導体レーザウェハを製造する方法について、図5〜図8を参照して説明する。図5〜図8は、本実施の形態における製造方法の各工程を示す斜視図である。
まず、図5(a)に示すように、n型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層102、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層103、GaAs/AlGaAs系活性層104、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層105、p型GaInPエッチングストップ層106、及びp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層107、p型GaInP中間層108、p型GaAsコンタクト層109を、MOCVD法を用いて順次形成する。
本実施の形態では、各クラッド層における(AlGa1−xIn1−yPの組成は、x=0.7、y=0.5とした。
次に図5(b)に示すように、赤色レーザ素子構造が形成される領域において、フォトリソグラフィー技術及びウェットエッチング技術を用いて、上記の積層半導体層を除去し赤外レーザ素子構造110を形成する。
ここで、Pを含む半導体層のエッチングには、塩酸系のエッチャントを用い、Asを含む半導体層のエッチングには硫酸系のエッチャントを用いて、エッチングの選択性を向上させて、n型GaAsバッファ層102を残すようにエッチングを行った。
次に図6(a)に示すように、n型GaAsバッファ層102の表面が露出した領域を含むn型GaAs基板101上に、n型GaAsバッファ層112、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層113、GaInP/AlGaInP系の活性層114、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層115、p型GaInPエッチングストップ層116、及びp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層117、p型GaInP中間層118、p型GaAsコンタクト層119を、MOCVD法を用いて順次形成する。
本実施の形態では、各クラッド層における(AlGa1−xIn1−yPの組成は、x=0.7、y=0.5とした。
次に、図6(b)に示すように、赤外レーザ素子構造110上に形成された赤色レーザ素子構造を構成する上記の各層を除去(赤色レーザ素子構造120の形成)し、同時に、赤外レーザ素子構造と赤色レーザ素子構造を素子分離するために、フォトリソグラフィーとウェットエッチングにより素子分離溝130を形成する。
ここで、赤色レーザ素子構造を構成する各層は、Pを含む半導体層であるため、エッチャントとして塩酸系のエッチャントを用いた。
次に、図7(a)に示すように、赤外レーザ領域、赤外レーザ領域のそれぞれにSiO膜(不図示)を形成し、これをフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いてストライプ形状のマスクパターンに加工する(不図示)。このストライプ状のパターンをマスクとして赤外レーザ素子構造の第2クラッド層107と赤色レーザ素子構造の第2クラッド層117をGaInPエッチングストップ層(106、116)に至るまでそれぞれエッチングし、リッジを形成する。その後、マスクパターンをフッ酸系のエッチャントで除去した。前記エッチングは、誘導結合型プラズマもしくは、反応性イオンプラズマを用いたドライエッチングとウェットエッチングを併用して行った。
以上の各工程は、従来例と同様であるが、本実施の形態においては、さらに凹部10を形成する工程を備える。すなわち、図7(b)に示すように、再び赤外レーザ領域、赤外レーザ領域のそれぞれにSiO膜(不図示)を形成し、これをフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いてマスクパターンに加工する(不図示)。このパターンをマスクとしてGaInPエッチングストップ層(106、116)、第1クラッド層(105、115)、活性層(104、114)をn型クラッド層途中に至るまでそれぞれエッチングし、凹部10となる側壁表面140を形成する。これにより、その後、マスクパターンをフッ酸系のエッチャントで除去した。
前記エッチングは、誘導結合型プラズマもしくは、反応性イオンプラズマを用いたドライエッチングによって行った。ここでエッチングをドライエッチングにより行ったのは、以下の理由による。すなわち、従来例においては、へき開方向にそって形成されるレーザ素子構造の端面と素子分離溝との交差部分は、直接素子分離溝の側面となっており、これは上述してきた本実施の形態の素子分離溝130の側壁と同一形状であり、図2(a)(b)に示すような表面段差を有することになる。その理由は先に述べたように、ウェットエッチングを用いたことによる、活性層(104、114)と、他のクラッド層との組成が異なることに基づくエッチレートの差によるものであった。
これに対し、本実施の形態においては、当該交差部分にさらに凹部10を形成することにより、表面段差のない側壁表面140を得るようにしているが、反応性イオンプラズマなどを用いたドライエッチングは、化学的反応を利用しつつイオン入射も併用することで、イオン入射方向(縦方向)へのエッチング速度が、そうでない方向(横方向)へのエッチング速度より圧倒的に速い状態を作り出し、異方性エッチングを実現することが可能であるため、表面段差を上述のように実質的になくすことが可能となる。なお、ドライエッチングは深さ方向の選択性においてウェットエッチングに劣るため、凹部の内部形状は、n型GaAs基板101に対して平行な底面及び垂直な側壁表面140を有することになる。
次に、図8(a)に示すように、ウェハ全面に電流ブロック層121となる誘電体膜を堆積させ、最後に、図8(b)に示すように、各層を含むn型GaAs基板101の表面にp側電極122を、基板101の裏面にn側電極123を形成する。
以上のように、本実施の形態によれば、ドライエッチングを用いて凹部10を作成することによって、図1に示す各レーザ素子構造の分離溝側壁表面のn型クラッド層(103、113)と、活性層(104、114)と、p型クラッド層(105、115)との間の表面段差を無くすことが可能となる。
なお、上記の説明においては、赤外レーザ素子構造及び赤色レーザ素子構造を有するモノリシック2波長半導体レーザ素子1単位を作成するものとしたが、上記のプロセスは、図3に示したように複数の半導体レーザ素子がへき開方向に沿って定めた分割線150及び2本毎の素子分離溝130の中心軸に対応する分割線(図中一点鎖線)190とに区分けされてなる単位領域内にて行われることとなる。したがって、上記の半導体レーザ素子を製造するための各工程を、加工前のウェハ本体上で繰り返し行うことにより、半導体レーザウェハを製造することができる。これは、以下の実施の形態4、6においても同様である。
又、上記の説明においては、凹部10の形成は、誘導結合型プラズマ又は反応性イオンプラズマを用いたドライエッチングを用いて行うとしたが、一旦ドライエッチングを行った後、さらにウェットエッチングによる表面処理を施しても良い。ドライエッチングによってエッチング表面にプラズマダメージが入り、当該エッチング表面部分の品質が劣化する可能性があり、これを取り除く必要があるためである。ただし、この場合のウェットエッチングは側壁表面140の表層部にのみ施せばよいため、エッチレートに基づく段差を、図4(a)(b)に示す許容範囲内に収めることは可能である。
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3における半導体レーザウェハ上の一単位又は完成品としての半導体レーザ素子の構造を示した模式図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は図1(a)のA’−A直線による断面図である。本実施の形態は、実施の形態1同様、650nm帯に発振波長を有する赤色半導体レーザと、780nm帯に発振波長を有する赤外半導体レーザを同一基板上に形成したモノリシック2波長半導体レーザ素子の一例である。
本実施の形態のモノリシック2波長半導体レーザは、n型GaAs基板101上に、赤外レーザ素子構造410と赤色レーザ素子構造420を備えており、各素子の構成は以下の通りである。
赤外レーザ素子構造410は、n型GaAs基板401上に、n型GaAsバッファ層402、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層403、GaAs/AlGaAs系の活性層404、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層405、p型GaInPエッチングストップ層406、リッジ状に形成されたp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層407、p型GaInP中間層408、及びp型GaAsコンタクト層409と、を備えている。
一方、赤色レーザ素子構造420は、n型GaAs基板401上に、n型GaAsバッファ層412、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層403、GaInP/AlGaInP系の活性層404、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層405、p型GaInPエッチングストップ層406、リッジ状に形成されたp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層407、p型GaInP中間層408、及びp型GaAsコンタクト層409と、を備えている。
赤外レーザ素子構造410と赤色レーザ素子構造420とは、n型GaAsバッファ層402までエッチングして形成された素子分離溝430によって電気的に絶縁されている。赤外レーザ素子構造410及び赤色レーザ素子構造420における各層はMOCVD法により形成されている。
又、電流ブロック層421が、第2クラッド層(407、417)からなるリッジ側面及びエッチングストップ層(406、416)及び素子分離溝430に亘って形成され、各層を含むn型GaAs基板401の表面にp側電極422を、基板401の裏面にn側電極423が形成されている。
本実施の形態3における特徴は、レーザ共振器の端面と素子分離溝430との交差部分を従来例と同様とする代わりに、素子分離溝430の両側に、素子分離溝430と並行に設けられた溝部450を備えた点である。
溝部450は、赤色レーザ素子構造420及び赤外レーザ素子構造410のリッジ両サイドのエピタキシャル成長領域にn型クラッド層途中までの深さを有し、その内壁は、実施の形態1の凹部10の側壁表面140と同様に、n型クラッド層(403、413)と、活性層(404、414)と、p型第1クラッド層(405、415)との間の表面段差が無い点にある。
溝部450は、半導体レーザウェハのへき開方向に沿って定めた分割線(図3の分割線150)に対応する、レーザの共振器端面と交差するように設けられており、実質的には凹部10の全長を素子分離溝430に沿って延伸させたものである。
この構成は、図10に示すように、赤外レーザ素子構造410及び赤色レーザ素子構造420の元となる半導体レーザウェハ31においては、以下のようになる。すなわち、赤外レーザ素子構造410又は赤色レーザ素子構造420に対応する複数のレーザ素子が形成された半導体レーザウェハ31は、実施の形態1の半導体レーザウェハ30と同様、へき開方向に沿って定められた分割線(図中破線)150と、2本毎の素子分離溝430の中心軸に対応する分割線(図中一点鎖線)190とに沿って分割することで、図4に示す二つのレーザ素子構造を有するモノリシック2波長半導体レーザ素子に分離される。
このとき、分割線150と素子分離溝430の両側との交点には溝部450が形成されているため、分離される各レーザ素子構造の共振器端面の両側面は、溝部450の側壁表面に対応することとなる。又、実施の形態1と同様、半導体レーザウェハ31の左右両端は素子分割溝430を有さないが、これらより外側であって、分割線150上の所定の領域にも、上記と同様の構成を有する溝部450を設けて、半導体レーザウェハ31上の全てのレーザ素子構造が溝部450に挟まれるようにする。なお、図9(a)、(b)に示したp側電極422は、図10においてストライプ160として示される。
以上のような構成を備えたことにより、凹部10の側壁表面140と同様の作用を与える。すなわち、半導体レーザウェハを半導体レーザチップに分離形成する際、へき開の応力を溝部450の内壁に均等に分散するため、活性層404又は414に沿ってクラックが生ずる可能性を取り除くことができ、共振器端面のCODの発生を防ぐことが出来る。したがって、半導体レーザ素子の製造において、高い歩留を期待することが可能となる。一方で、素子分離溝430は従来例と同様、活性層が凹凸を有した状態のままとすることができる。
なお、上記の構成においては、溝部450は、本発明の溝形状をなした凹部に相当する。
又、本実施の形態においては、溝部450は素子分離溝430とは独立した形状としてリッジストライプの側面全てを覆うように形成できるため、へき開により端面に生じた応力が、リッジストライプの側面にまで達することがあっても、その影響を防ぐことが可能となる。
又、溝部450の内壁表面によってレーザ端面の表面積を大きく取れるので、実施の形態1より優れた放熱効果が得られる。
(実施の形態4)
(半導体レーザ素子の製造方法)
次に、本発明の実施の形態4として、上記実施の形態2の構造の半導体レーザ素子、半導体レーザウェハを製造する方法について説明する。ただし実施の形態2と同様の部分については省略し、相違点を中心に述べる。
図5〜図7(a)に参照する各工程は、実施の形態2と同様にして行われる。なお、各部において同一名称は同一部、同一機能を有する相当部として示される。
次に、図11(a)に示すように、赤外レーザ素子構造410、赤色レーザ素子構造420のそれぞれにSiO膜(不図示)を形成し、これをフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用いてストライプ状のマスクパターンに加工する(不図示)。このパターンをマスクとして、赤色レーザ素子構造及び赤外レーザ素子構造のリッジ両サイドのエピタキシャル成長領域に、GaInPエッチングストップ層(406、416)、第1クラッド層(405、415)、活性層(404、414)をn型クラッド層途中に至るまでストライプ状の溝部450を形成するようエッチングし、溝内壁を平坦に形成する。その後、マスクパターンをフッ酸系のエッチャントで除去した。溝部450を形成するためのエッチングは、実施の形態2と同様の効果を得るため、誘導結合型プラズマもしくは、反応性イオンプラズマを用いたドライエッチングによって行った。
次に、図11(b)に示すように、ウェハ全面に電流ブロック層421となる誘電体膜を堆積させるとともに、各層を含むn型GaAs基板401の表面にp側電極422を、基板401の裏面にn側電極423を形成する。
以上のように、本実施の形態によれば、各レーザ素子構造の分離溝側壁表面のn型クラッド層(403、413)と、活性層(404、414)と、p型第1クラッド層(405、415)との間の表面段差が存在していても、各レーザ素子構造において良好な端面を得られる構造を形成することが可能である。
(実施の形態5)
図12は、本発明の実施の形態5における半導体レーザウェハ上の一単位又は完成品としての半導体レーザ素子の構造を示した模式図であり、図12(a)は斜視図、図12(b)は図1(a)のA’−A直線による断面図、図1(c)は図11(a)のB’−B直線による断面図である。本実施の形態は、650nm帯に発振波長を有する赤色半導体レーザと、780nm帯に発振波長を有する赤外半導体レーザを同一基板上に形成したモノリシック2波長半導体レーザ素子の一例である。
本実施の形態のモノリシック2波長半導体レーザは、n型GaAs基板501上に、赤外レーザ素子構造510と赤色レーザ素子構造520を備えており、各素子の構成は以下の通りである。
赤外レーザ素子構造510は、n型GaAs基板501上に、n型GaAsバッファ層502、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層503、GaAs/AlGaAs系の活性層504、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層505、p型GaInPエッチングストップ層506、リッジ状に形成されたp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層507、p型GaInP中間層508、及びp型GaAsコンタクト層509と、を備えている。
一方、赤色レーザ素子構造520は、n型GaAs基板501上に、n型GaAsバッファ層512、n型(AlGa1−xIn1−yPクラッド層503、GaInP/AlGaInP系の活性層504、p型(AlGa1−xIn1−yP第1クラッド層505、p型GaInPエッチングストップ層506、リッジ状に形成されたp型(AlGa1−xIn1−yP第2クラッド層507、p型GaInP中間層508、及びp型GaAsコンタクト層509と、を備えている。
赤外レーザ素子構造510と赤色レーザ素子構造520とは、n型GaAsバッファ層502までエッチングして形成された素子分離溝530によって電気的に絶縁されている。赤外レーザ素子構造510及び赤色レーザ素子構造520における各層はMOCVD法により形成されている。
又、電流ブロック層521が、第2クラッド層(507、517)からなるリッジ側面及びエッチングストップ層(506、516)及び素子分離溝530に亘って形成され、各層を含むn型GaAs基板501の表面にp側電極522を、基板501の裏面にn側電極523が形成されている。
本実施の形態5における特徴は、図12(a)及び(b)に示すように、レーザ共振器の端面と素子分離溝530との交差部分を従来例と同様とする代わりに、素子分離溝430の両側に、素子分離溝430と並行な矩形状の凹部550を備えた点である。
凹部550は、赤色レーザ素子構造520及び赤外レーザ素子構造510のリッジ両サイドのエピタキシャル成長領域にn型クラッド層途中までの深さを有し、その内壁は、その内壁は、実施の形態1の凹部10の側壁表面140と同様に、n型クラッド層(503、513)と、活性層(504、514)と、p型第1クラッド層(505、515)との間の表面段差が無い点にある。
凹部550は、半導体レーザウェハのへき開方向に沿って定められた分割線(図3の分割線150)に対応する、レーザの共振器端面と交差するように設けられており、実施の形態1との比較においては、凹部10を素子分離溝530とは別体として設けたものである。
この構成は、図13に示すように、赤外レーザ素子構造510及び赤色レーザ素子構造520の元となる半導体レーザウェハ32においては、以下のようになる。すなわち、赤外レーザ素子構造510又は赤色レーザ素子構造520に対応する複数のレーザ素子構造が形成された半導体レーザウェハ32は、実施の形態1の半導体レーザウェハ30と同様、へき開方向に沿って定められた分割線(図中破線)150と、2本毎の素子分離溝530の中心軸に対応する分割線(図中一点鎖線)190とに沿って分割することで、図12に示す二つのレーザ素子構造を有する半導体レーザ素子に分離される。
このとき、分割線150と素子分離溝530の両側との交点には凹部550が形成されているため、分離される各レーザ素子の共振器端面の両側面は、凹部550の側壁表面に対応することとなる。なお、実施の形態1、2と同様、半導体レーザウェハ32の左右両端は素子分割溝530を有さないが、これらより外側であって、分割線150上の所定の領域にも、上記と同様の構成を有する凹部550を設けて、半導体レーザウェハ32上の全てのレーザ素子構造が凹部550に挟まれるようにする。又、図12(a)〜(c)に示したp側電極522は、図3においてストライプ160として示される。
このような構成を備えたことにより、凹部10の側壁表面140と同様の作用を与える。すなわち、半導体レーザウェハを半導体レーザチップに分離形成する際、へき開の応力を凹部550の内壁に均等に分散するため、活性層504又は514に沿ってクラックが生ずる可能性を取り除くことができ、共振器端面のCODの発生を防ぐことが出来る。したがって、半導体レーザ素子の製造において、高い歩留を期待することが可能となる。一方で、素子分離溝530は従来例と同様、活性層が凹凸を有した状態のままとすることができる。なお、上記の構成において、凹部550は本発明の凹部に相当する。
又、本実施の形態においては、凹部550の内壁表面によってレーザ端面の面積が拡大されるため、放熱性に優れた構造となる。又、前記ホールを複数形成することにより、さらなる放熱性の向上を見込むことも可能である。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6として、上記実施の形態5の構造の半導体レーザ素子、半導体レーザウェハを製造する方法について説明する。ただし実施の形態2、4と同様の部分については省略し、相違点を中心に述べる。
図5〜図7(a)に参照する各工程は、実施の形態2と同様にして行われる。なお、各部において同一名称は同一部、同一機能を有する相当部として示される。
次に、図14(a)に示すように、赤外レーザ素子構造510、赤色レーザ素子構造520のそれぞれにSiO膜(不図示)を形成し、これをフォトリソグラフィー技術及びドライエッチング技術を用い、へき開領域の赤色レーザ素子構造及び赤外レーザ素子構造のリッジ両サイドのエピタキシャル成長領域に、凹部550の底面形状に対応する形状を形成するように、マスクパターンに加工する(不図示)。このパターンをマスクとして、GaInPエッチングストップ層(506、516)、第1クラッド層(505、515)、活性層(504、514)をn型クラッド層途中に至るまでストライプ状の溝を形成するエッチングし、凹部550の内壁を平坦に形成する。その後、マスクパターンをフッ酸系のエッチャントで除去した。
凹部550を形成するためのエッチングは、実施の形態2と同様の効果を得るため、誘導結合型プラズマもしくは、反応性イオンプラズマを用いたドライエッチングによって行った。
次に、図14(b)に示すように、ウェハ全面に電流ブロック層521となる誘電体膜を堆積させるとともに、各層を含むn型GaAs基板501の表面にp側電極522を、基板501の裏面にn側電極523を形成する。
以上のように、本実施の形態によれば、各レーザ素子構造の分離溝側壁表面のn型クラッド層(503、513)と、活性層(504、514)と、p型第1クラッド層(505、515)との間の表面段差が存在していても、レーザ素子構造において良好な端面を得られる構造を形成することが可能である。
なお、上記の各実施の形態においては、半導体レーザを本発明の半導体素子の例とした、2つの半導体レーザ素子構造を備えたモノリシック2波長半導体レーザを例として説明を行ったが、本発明は、3つ以上の半導体レーザ素子構造を備えた半導体レーザに対して適用しても良い。又、単一の半導体レーザ素子構造のみからなる半導体レーザ素子に対して適用しても良い。
又、本発明の半導体素子としては、半導体レーザ以外のダイオード等の能動素子、受動素子等を用いてもよい。要するに、本発明は、半導体基板と、複数の結晶層を含んだ積層部を有し、ウェハからへき開によってチップに分離して半導体素子として利用可能な半導体素子構造であれば、その構成、用途によって限定されるものではない。
以上のような本発明の各実施の形態は、半導体ウェハを半導体レーザチップに形成する際に、共振器端面のクラック及び活性層近傍の段差の発生を抑制し、良好な共振器端面を容易に得ることができる効果がある。
本発明にかかる半導体ウェハ、及びその製造方法は、へき開方向に沿った端面を有する半導体素子の歩留を向上させることが可能な効果を有し、その一例として、光ストレージ分野、医療分野、その他、幅広い応用範囲における半導体レーザとして有用である。
本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の斜視図である。 図1(a)のA’−A直線による断面図である。 図1(a)のB’−B直線による断面図である。 (a)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の作用効果を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の作用効果を説明するための図である。(c)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の作用効果を説明するための図である。(d)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の作用効果を説明するための図である。 本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の元となる半導体レーザウェハの平面図である。 (a)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の凹部内壁表面の表面段差とCOD不良率との関係を示した図である。(b)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の凹部内壁表面の表面段差とCOD不良率との関係を示した図である。 (a)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。 (a)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。 (a)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。 (a)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態1による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。 (a)本発明の実施の形態3による半導体レーザ素子の斜視図である。(b)図9(a)のA’−A直線による断面図である。 本発明の実施の形態3による半導体レーザ素子の元となる半導体レーザウェハの平面図である。 (a)本発明の実施の形態4による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態4による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。 (a)本発明の実施の形態5による半導体レーザ素子の斜視図である。(b)図12(a)のA’−A直線による断面図である。(c)図12(a)のB’−B直線による断面図である。 本発明の実施の形態5による半導体レーザ素子の元となる半導体レーザウェハの平面図である。 (a)本発明の実施の形態6による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。(b)本発明の実施の形態6による半導体レーザ素子の製造方法を説明するための図である。 (a)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の製造工程を説明するための図である。(b)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の製造工程を説明するための図である。(c)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の製造工程を説明するための図である。 (a)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の製造工程を説明するための図である。(b)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の製造工程を説明するための図である。(c)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の製造工程を説明するための図である。 (a)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の問題を説明するための図である。(b)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の問題を説明するための図である。(c)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の問題を説明するための図である。(d)従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の問題を説明するための図である。 従来の技術における2波長モノリシック集積型半導体レーザ素子の元となる半導体レーザウェハの平面図である。
符号の説明
50、101、401、501 n型GaAs基板
51、102、402、502 n型GaAsバッファ層
52 n型AlGaAsクラッド層
53 活性層(発振波長780nmの多重量子井戸構造)
54 p型AlGaAsクラッド層
55、60 p型GaAsキャップ層
56 n型GaInPバッファ層
57 n型AlGaInPクラッド層
58 活性層(発振波長780nmの多重量子井戸構造)
59 p型AlGaInPクラッド層
71、124 凹段差
72、125 凸段差
73、74 クラック
103、403、503 n型AlGaInPクラッド層
104、404、504 GaAs/AlGaAs系活性層
105、405、505 p型AlGaInP第1クラッド層
106、406、506 p型GaInPエッチングストップ層
107、407、507 p型AlGaInP第2クラッド層
108、408、508 p型GaInP中間層
109、409、509 p型GaAsコンタクト層
112、412、512 n型GaAsバッファ層
113、413、513 n型AlGaInPクラッド層
114、414、514 GaInP/AlGaInP系活性層
115、415、515 p型AlGaInP第1クラッド層
116、416、516 p型GaInPエッチングストップ層
117、417、517 p型AlGaInP第2クラッド層
118、418、518 p型GaInP中間層
119、419、519 p型GaAsコンタクト層
121、421、521 電流ブロック層
122、422、522 p側電極
123、323、423、523 n側電極
130、170、430、530 素子分離溝
140 側壁表面
150 分割線
160 ストライプ

Claims (14)

  1. 複数の半導体素子構造が形成される半導体ウェハであって、
    半導体基板と、
    前記半導体基板上に形成された複数の結晶層を含み、所定のへき開方向を有する積層部とを備え、
    前記積層部は、
    並列する前記半導体素子構造同士を分離するための素子分離溝と、
    前記へき開方向に沿って定められた所定の分割線と前記素子分離溝との交差位置、又は前記分割線上であって前記素子分離溝と隣接する位置に設けられた凹部とを有し、
    前記凹部の内壁は、実質上段差なく形成されている、半導体ウェハ。
  2. 前記凹部の、前記内壁が実質上段差なく形成されている、とは、
    前記内壁に段差を有しないこと、又は、
    前記内壁の表面に、8nm以下の凸段差若しくは120nm以下の凹段差が形成されていること、
    である、請求項1に記載の半導体ウェハ。
  3. 前記凹部は、少なくともドライエッチングによって実質上段差なく形成されている、請求項1に記載の半導体ウェハ。
  4. 前記分割線上であって、ウェハ本体の端部に形成される前記半導体素子構造より外側に設けられている凹部をさらに備え、
    前記凹部の内壁は、実質上段差なく形成されている、請求項1に記載の半導体ウェハ。
  5. 前記凹部は、前記素子分離溝と並行な方向に延伸した溝形状を有している、請求項1から4のいずれかに記載の半導体ウェハ。
  6. 前記半導体素子構造は半導体レーザ素子構造であって、
    前記複数の結晶層は、前記半導体基板上の上部に設けられた第1のクラッド層と、
    前記第1のクラッド層の上部に設けられた活性層と、
    前記活性層の上部に設けられた第2のクラッド層とを有し、
    前記分割線は、前記半導体レーザ素子のレーザの共振器長に対応した間隔で定められている、請求項1から4のいずれかに記載の半導体ウェハ。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の半導体ウェハを、前記分割線と、所定本数毎の前記素子分離溝とに沿って分離することにより得られる単数又は複数の前記半導体素子構造を備えた、半導体素子。
  8. 1本の前記素子分離溝をその間に挟む一対の前記半導体素子構造を有し、
    前記一対の前記半導体素子構造は、発振波長が650nm帯の半導体レーザ、発振波長が780nm帯の半導体レーザのそれぞれに対応するものである、請求項7に記載の半導体素子。
  9. 複数の半導体素子構造が形成される半導体ウェハの製造方法であって、
    半導体基板上に、所定のへき開方向を有する複数の結晶層を積層して積層部を作成する工程と、
    前記積層部上に、並列する前記半導体素子構造同士を分離するための素子分離溝を設ける工程と、
    前記へき開方向に沿って定められた所定の分割線と前記素子分離溝との交差位置、又は前記分割線上であって前記素子分離溝と隣接する位置に、その内壁が実質上段差を有さない凹部を設ける工程とを備えた、半導体ウェハの製造方法。
  10. 前記凹部を設ける工程は、
    前記凹部を、その内壁に段差を有さないように形成すること、又は、
    前記凹部の前記内壁の表面に、8nm以下の凸段差若しくは120nm以下の凹段差を形成すること、
    を含む工程である、請求項9に記載の半導体ウェハの製造方法。
  11. 前記凹部を設ける工程を、少なくともドライエッチングによって行う、請求項9に記載の半導体ウェハの製造方法。
  12. 前記分割線上であって、ウェハ本体の端部に形成される前記半導体素子構造より外側に、その内壁が実質上段差を有さない凹部を設ける工程をさらに備えた、請求項9に記載の半導体ウェハの製造方法。
  13. 前記凹部を設ける工程は、前記凹部を、前記素子分離溝と並行な方向に延伸した溝形状として設ける工程を含む、請求項9から12のいずれかに記載の半導体ウェハの製造方法。
  14. 請求項9に記載の半導体ウェハの製造方法により製造された半導体ウェハを、前記分割線と、所定本数毎の前記素子分離溝とに沿って分離する工程を備え、
    前記半導体ウェハから、単数又は複数の前記半導体素子構造を有する複数の半導体素子を作成する、半導体素子の製造方法。
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