JP4321152B2 - 浮上式ベルトコンベヤ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ベルト支承トラフの下部に配設した噴出孔からガスを噴出させてベルトを浮上させた状態で走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置に関し、特にベルト支承トラフとして上下一対をなす円筒管状のベルト支承トラフを用いた浮上式ベルトコンベヤ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のベルトコンベヤ装置では、搬送用ベルトを、ベルト走行方向に配列された複数のローラ上で移動させて走行させるように構成されている。このような従来のベルトコンベヤ装置は、ローラを用いてベルトを走行させるため、ローラの回転抵抗や回転数の制限等からベルトの搬送速度が制約を受けたり、ベルトとローラとの摺動摩擦による磨耗によりベルトの寿命が短くなる等の多くの問題を有していた。
【0003】
そのため、近年においては、ベルトの下面に圧縮空気等のガスを供給することによってベルトを浮上させた状態で走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置が多く用いられるようになった(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0004】
図10は、従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100の概略的な構造を示す図、図11は、そのZ−Z´断面を示す図である。
従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100においては、ベルト110はテールプーリ171とヘッドプーリ170との間で周回駆動され、円筒管からなるキャリア側ベルト支承トラフ101及びリターン側ベルト支承トラフ102内を循環走行する。その際に、キャリア側ベルト支承トラフ101内では、圧縮された空気が空気ダクト120(図11参照)を介して給気管130からベルト110の下面側に供給されている。ベルト110の下面側に供給された圧縮空気は、ベルト110を僅かに浮上させてキャリア側ベルト支承トラフ101の内周面101aとベルト110の下面110aとの間に僅かな隙間を生じさせるため、ベルト110はキャリア側ベルト支承トラフ101内を浮上走行する。
【0005】
なお、ベルト110の下面110aに供給された空気は、形成された隙間を通り抜けてキャリア側ベルト支承トラフ101内のベルト110の上方へと放出される。ベルト110の上方へ放出された空気は、排気管140によりキャリア側ベルト支承トラフ101内から排出されて図示しない集塵機に通され、搬送物から飛散した粉塵等が除去された後に外部(大気中)に放出される。
【0006】
また、同様にしてリターン側ベルト支承トラフ102内では、圧縮された空気が空気ダクト121を介して給気管131からベルト110の下面110aに供給されることにより、ベルト110の下面110aに供給された空気は、ベルト110の上方へと放出され図示しない排気管によりリターン側ベルト支承トラフ102内から排出されて集塵機にて粉塵が除去された後に外部へと放出される。
【0007】
このような従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100は、ベルト支承トラフ101,102として広く一般に普及している鋼管などが使用でき、また、キャリア側ベルト支承トラフ101と、リターン側ベルト支承トラフ102と、これらを連結する側板105,106とにより空気ダクト120を形成するので、構造が簡単で製造工程を簡略化することができる等といった利点を備える。また、鋼管を使用したキャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ101,102は、両者の連結部の数を最小限に抑えることが可能で、搬送物が連結部から漏れ出して環境を汚染するなどというリスクを小さくすることができるといった利点も備える。このため、近年では鋼管のベルト支承トラフを用いた浮上式ベルトコンベヤ装置の設置台数は徐々に増えてきている。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−150929号公報(第3−4頁、第1−6図)
【特許文献2】
特開2001−158517号公報(第3−4頁、第1−4図)
【特許文献3】
特開平11−59838号公報(第3−6頁、第1−10図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、浮上式ベルトコンベヤ装置の全体機長が長い場合、ベルト支承トラフを構成する鋼管を途中箇所で接続して構成する必要があるが、図11に示したようなタイプの従来の浮上式ベルトコンベヤ装置では、ベルト支承トラフの接続部(連結部)の位置合わせが大変重要な要素となる。なぜなら、このタイプの浮上式ベルトコンベヤ装置は、連結部近傍にガスの噴出孔を形成(加工)し難く、連結部近傍におけるベルトの浮上力が他の部分に比べて弱めであるため、例えば位置合わせがずれて接続された連結部の端面の一部にベルトが接触して摩耗することがあるからである。
【0010】
そのため、従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100は、例えばキャリア側ベルト支承トラフ101とリターン側ベルト支承トラフ102のベルト110走行面の高さを同一にするために、ベルト支承トラフ101,102が同一基準軸間距離a(図12参照)で連結部150における端面がそれぞれ完全に一致するように設計されており、フランジ151等を利用することで互いに接続されていた。
【0011】
しかし、従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100では、実際の据付作業の際、連結部150の一方側と他方側とのキャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ101,102の接続部分の端面が完全に一致するように作業現場で調整しながら連結するため、その作業は極めて難しいものとなっている。なぜなら、キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ101,102を構成する鋼管が通常は完全な真円ではなく、また、精度の高いフランジ151等を作製して連結部150の各ベルト支承トラフ101,102の端面が完全に一致するように接続しようとしても、トラフ101,102とフランジ151等とを例えば接合して連結する場合の溶接作業の際に、僅かにトラフ101,102やフランジ151等が変形するなどして精度良く溶接できない場合があるからである。
【0012】
従って、キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ101,102の連結部150における端面は、上下方向や左右方向に僅かにずれた状態で連結されることが多かった。例えば、図12に示す従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100では、キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ101,102の連結部150を境にして図12に向かって左側の両ベルト支承トラフ101,102が右側の両ベルト支承トラフ101,102に比べて上方向にずれて連結されているため、特にキャリア側ベルト支承トラフ101内を走行するベルト110(図示せず)が連結部150において図中矢印で示すように僅かな段差を乗り越えるような状態で走行してしまいその下面110aが摩耗することが考えられる。
【0013】
このため、従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100では、上記のような問題を解決しようと、キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ101,102を連結した後、連結部150などにおけるベルト110走行面の高さの違いを作業現場で実際に確認してからベルト110が擦れそうな箇所(例えば、ベルト110の走行方向側に高くなっている支承トラフの端面箇所)について面取加工を施すなどしてそのずれを修正することが行われていたが、このような作業は現場の施工者の経験や勘に頼る部分が多く、その再現性に同一性が乏しいため必ずしも満足のいく結果が得られるとは限らないという問題がある。
【0014】
この発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造でベルトの摩耗を防止することができる浮上式ベルトコンベヤ装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る浮上式ベルトコンベヤ装置は、ベルト走行方向に複数のガス噴出孔を配設した円筒状のベルト支承トラフと、このベルト支承トラフ内を走行するループ状のベルトとを備え、前記ガス噴出孔から前記ベルト支承トラフの内面と前記ベルトの下面との間にガスを噴出させることにより前記ベルトを浮上させた状態で前記ベルト支承トラフ内を走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置において、前記ベルト支承トラフは、複数の円筒管を軸方向に連結して構成され、前記複数の円筒管は、それらの連結部で前記ベルトの走行方向の上流側の円筒管の下部内周面が下流側の円筒管の下部内周面よりも高くなるように連結されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他の浮上式ベルトコンベヤ装置は、ベルト走行方向に複数のガス噴出孔を配設したキャリア側とリターン側とで上下一対をなす円筒状のベルト支承トラフと、前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ内を走行するループ状のベルトとを備え、前記ガス噴出孔から前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフの内面と前記ベルトの下面との間にガスを噴出させることにより前記ベルトを浮上させた状態で前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ内を走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置において、前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフは、複数の円筒管を前記ベルトの走行方向に連結した構造からなり、前記複数の円筒管は、前記キャリア側及びリターン側のそれぞれの連結部で前記ベルトの走行方向の上流側の円筒管の下部内周面が下流側の円筒管の下部内周面よりも高くなるように連結されていることを特徴とする。
【0017】
なお、本発明の他の浮上式ベルトコンベヤ装置は、例えば前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフの両側面に添設され、ベルト支承トラフの長手方向に延びる一対の側板を有し、前記一対の側板は、前記キャリア側ベルト支承トラフの前記ベルトの走行部分に相当する部分の外周面から離間した位置の外周面に上端部が接合されると共に、前記リターン側ベルト支承トラフの所定位置の外周面に下端部が接合され、前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフと前記一対の側板とで囲まれた空間で前記キャリア側ベルト支承トラフに配設された前記ガス噴出孔にガスを供給するための給気ダクトを形成してなるものでも良い。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して、この発明の好ましい実施の形態を説明する。
図1はこの発明の一実施形態に係る浮上式ベルトコンベヤ装置を示す概略的な側面図、図2は図1のA−A´断面図、図3は図1のB−B´断面図である。なお、この実施形態はいわゆるベルト反転装置を具備した装置の例であるが、ベルト反転装置を具備しない場合にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。
本実施形態による浮上式ベルトコンベヤ装置1は、主に上下一対をなす円筒状のキャリア側ベルト支承トラフ(以下、「キャリア側トラフ」と呼ぶ。)20及びリターン側ベルト支承トラフ(以下、「リターン側トラフ」と呼ぶ。)30と、これらキャリア側及びリターン側トラフ20,30内を通るように配されたループ状(無端状)のベルト10とを備えて構成されている。この浮上式ベルトコンベヤ装置1は、キャリア側及びリターン側トラフ20,30の下部に、例えばベルト10の走行方向に沿って所定間隔毎に複数形成されたガス噴出孔2(図3参照)から圧縮空気などのガスを噴き出すことにより、キャリア側及びリターン側トラフ20,30の下部内周面21a,31aとベルト10の下面11とを離間させてベルト10を浮かせた状態で走行させている。
【0019】
また、浮上式ベルトコンベヤ装置1は、キャリア側及びリターン側トラフ20,30のそれぞれの終端におけるベルト10の導入及び排出口側に、それぞれフラット状のベルト10をU字(円弧)断面形状に湾曲させるためのベルト屈曲案内装置90を備えている。ベルト屈曲案内装置90は、キャリア側及びリターン側トラフ20,30内においてベルト10がフラット状になることにより、例えばベルト10の幅方向両端部が各トラフ20,30の下部内周面21a,31aに強く擦られて摩耗してしまうことを防止する目的で設置されるものである。
【0020】
更に、浮上式ベルトコンベヤ装置1には、リターン側トラフ30の始端及び終端においてベルト10を反転させるベルト反転装置50が備えられている。このベルト反転装置50は、以下のような目的で設置されている。即ち、キャリア側トラフ20内を走行するベルト10がU字断面形状に保持されたまま搬送物Pを積載しつつ供給口86から排出口87までの長距離間を移動するため、リターン側トラフ30内を走行するベルト10をそのままの状態でリターン側トラフ30内に導入して通過させると、リターン側トラフ30内のベルト10がフラット状よりもむしろ逆U字(への字)断面形状となる傾向があり、上述したようにベルト10の幅方向両端部がリターン側トラフ30の下部内周面31aに強く擦られて摩耗してしまうことを防止するためである。
【0021】
そして、この浮上式ベルトコンベヤ装置1には、搬送物Pの供給口86側に供給側シュートカバー80及びテールプーリ89が、搬送物Pの排出口87側にエンドカバー81、排出側シュートカバー82及びヘッドプーリ88がそれぞれ備えられている。
【0022】
浮上式ベルトコンベヤ装置1に備えられたキャリア側及びリターン側トラフ20,30は、この例では複数の円筒管21,31をベルト10の走行方向に連結して構成されており、各円筒管21,31は、連結部40において、それぞれの端部に接続された第1フランジ60及び第2フランジ70を介して接続されている。これら第1及び第2フランジ60,70には、キャリア側及びリターン側トラフ20,30を構成する各円筒管21,31の端部が接続される複数のフランジ孔61,62,71,72が形成されている。なお、これらのフランジ60,70を介さずに各円筒管21,31を直接接続した構造でも良いが、ここでは第1及び第2フランジ60,70を用いた場合について説明することとする。
【0023】
ループ状のベルト10は、ヘッドプーリ88とテールプーリ89との間にループ状に架け渡されてエンドレスに移動できるように構成されているため、図示しないモータ等の駆動源を稼動させることにより、ヘッドプーリ88及びテールプーリ89間を周回駆動する。なお、このベルト10は、上述したようにヘッドプーリ88及びテールプーリ89間を周回駆動する際に、キャリア側及びリターン側トラフ20,30内を走行するように配されている。
【0024】
また、浮上式ベルトコンベヤ装置1のテールプーリ89側には、上述したような供給側シュートカバー80と搬送物Pの供給口86とが設けられると共に、ヘッドプーリ88側には、エンドカバー81が設けられている。更にこのエンドカバー81の下方には、搬送物Pの排出口87と排出側シュートカバー82とが配設されている。
【0025】
また、本実施形態による浮上式ベルトコンベヤ装置1のキャリア側及びリターン側トラフ20,30は、例えば金属製のパイプ鋼管で形成されており、更にキャリア側及びリターン側トラフ20,30の間に配設された、各トラフ20,30の長手方向に沿って垂直に延在する複数の側板5,6により上下一対をなすように構成されている。これら側板5,6の上端部は、図3に示すようにキャリア側トラフ20のベルト10の走行部分に相当する部分の外周面22aから所定間隔離間した位置の外周面22bに、例えば溶接によりそれぞれ接合されると共に、側板5,6の下端部は、リターン側トラフ30の所定位置の外周面32bにそれぞれ接合されている。
【0026】
これにより、キャリア側及びリターン側トラフ20,30と複数の側板5,6とで囲まれた空間がキャリア側トラフ20に配設されたガス噴出孔2にガスを供給するための空気ダクト58を形成する。
【0027】
なお、本実施形態の浮上式ベルトコンベヤ装置1では、例えばキャリア側及びリターン側トラフ20,30を構成するパイプ鋼管を両面亜鉛メッキ処理し、パイプ鋼管から地上まで図示しないアースをとる構成としている。これは、搬送物Pと各トラフ20,30との摩擦による静電気の発生を抑えると共に、アースにより発生した静電気を地上へと速やかに放出させるためである。
【0028】
また、この浮上式ベルトコンベヤ装置1においては、図示しない送風機により送られた圧縮空気をガスとしてキャリア側及びリターン側トラフ20,30の給気管29,39にそれぞれ分配して供給することができ、更に図示しない配管の途中には配管内を流れる圧縮空気の流量をコントロールする流量制御弁が設置されているため、キャリア側及びリターン側トラフ20,30に供給する圧縮空気の供給量をそれぞれ独立して制御し調整することができるように構成されている。
【0029】
このように給気管29から空気ダクト58を経由して供給された圧縮空気は、キャリア側トラフ20の最下部に穿設されたガス噴出孔2からキャリア側トラフ20内に噴出する構成となっているため、キャリア側トラフ20内に導入された圧縮空気はガスとしてベルト10の下面11側に噴出供給されて、キャリア側トラフ20内を走行するベルト10を浮上させる。
【0030】
こうしてキャリア側トラフ20内を走行するベルト10を浮上させた圧縮空気は、キャリア側トラフ20に設けられた排気管28から排出されて、図示しない集塵機に通され搬送物Pから飛散した粉塵等が除去された後、外部(例えば、大気中)に放出される構造となっている。なお、キャリア側トラフ20に設けられるガス噴出孔2の配設方式は図3に示す形態に限定されるものではなく、例えばベルト10の走行方向及び幅方向に沿って複数穿設されていても良い。
【0031】
また、同様にしてリターン側トラフ30の下方には、リターン側トラフ30の長手方向に沿って延在する空気ダクト59が設けられており、この空気ダクト59及びリターン側トラフ30の最下部に穿設したガス噴出孔2を介してリターン側トラフ30内に圧縮空気が噴出供給される構造となっている。こうしてリターン側トラフ30内に導入された圧縮空気は、同様にリターン側トラフ30内を走行するベルト10を浮上させる。
【0032】
なお、側板5,6の連結部40の近傍位置には、第1及び第2フランジ60,70をボルト止めなどにより連結する場合の作業用の作業窓5a,6a(図3参照)が形成されており、空気ダクト58を形成する際にはこれら作業窓5a,6aは蓋7などにより密閉される。
【0033】
次に、浮上式ベルトコンベヤ装置1のキャリア側及びリターン側トラフ20,30の連結部40における連結態様について説明する。
この浮上式ベルトコンベヤ装置1においては、図4に示すように、上下一対をなすキャリア側及びリターン側トラフ20,30の基準軸間距離をaとした場合、連結部40の第1フランジ60におけるフランジ孔61,62の基準軸間距離はa+Lと設定され、第2フランジ70におけるフランジ孔71,72の基準軸間距離はa−Lと設定されている。また、第1及び第2フランジ60,70の各フランジ孔61,62,71,72の基準軸からの半径はrと設定されている。図6は、このように構成された第1及び第2フランジ60,70による連結部40でのベルト10の走行方向上流側から下流側を見た様子を示す図であり、上流側のフランジ孔61(72)と下流側のフランジ孔71(62)とが重なるクロス部分CPは、上流側のフランジ孔61(72)の基準軸を通る水平面と下流側のフランジ孔71(62)の基準軸を通る水平面との間に設定される。
【0034】
これにより、図4及び図6に示すように、キャリア側及びリターン側トラフ20,30のそれぞれの連結部40において、図4中矢印で示すベルト10の走行方向の上流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aが下流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aよりも僅かに高くなる状態で各円筒管21,31が連結されキャリア側及びリターン側トラフ20,30が構成される。このため、この浮上式ベルトコンベヤ装置1では、従来の浮上式ベルトコンベヤ装置で問題となっていた、ベルトが連結部における僅かな段差を乗り越えることによる線状摩耗の発生を効果的に抑えることが可能となる。なお、キャリア側及びリターン側トラフ20,30の上流側と下流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aの段差は、例えば各トラフ20,30の基準軸と各下部内周面21a,31aの最下点とを結ぶ線を基準として、それぞれ各下部内周面21a,31aに沿って±15°の範囲で0.5mm〜1.0mmの範囲内になるように設定されている。
【0035】
また、第1及び第2フランジ60,70は、以下のように形成されていても良い。即ち、図5に示すように、連結部40の第1及び第2フランジ60,70におけるフランジ孔61,62,71,72のうち、上流側の円筒管21,31の端部と接続されるフランジ孔61,72は、下流側の円筒管21,31の端部と接続されるフランジ孔71,62の基準軸からの半径がrで設定されている場合、上部内面までの半径がrで、且つ下部内面までの半径がr−Δsとなるように変則円形状に形成されている。なお、図7は、このように構成された第1及び第2フランジ60,70による連結部40でのベルト10の走行方向上流側から下流側を見た様子を示す図であり、上流側のフランジ孔61(72)については、下流側のフランジ孔71(62)よりも横幅寸法が小さく設定される。このように、上流側のフランジ孔61(72)については、フランジ孔の横幅寸法を小さくすることで、ベルト10の幅方向両端部が走行する各トラフ20,30の側面部においても確実に段差を保持できる構造となるため、キャリア側及びリターン側トラフ20,30内を走行するベルト10の幅方向両端部が連結部40を通過する際にベルト端部での段差による摩耗を効果的に防ぐことが可能となる。
【0036】
なお、好ましくは上下一対をなすキャリア側及びリターン側トラフ20,30の基準軸間距離をaとした場合、図5及び図7に示すように、連結部40の第1フランジ孔60におけるフランジ孔61,62の基準軸間距離はa+ΔLと設定され、第2フランジ70におけるフランジ孔71,72の基準軸間距離はa−ΔLと設定される。このように構成された場合、連結部40において上流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aが必ず下流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aに対して僅かに高くなると共に、更に図6に示したような上流側のフランジ孔61(72)と下流側のフランジ孔71(62)とが重なるクロス部分CPを、図7に示すように、上方にずらすことができる。
【0037】
このように、この浮上式ベルトコンベヤ装置1は、キャリア側及びリターン側トラフ20,30を構成する各円筒管21,31を、連結部40においてベルト10の走行方向上流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aが、下流側の円筒管21,31の下部内周面21a,31aよりも僅かに高くなるようにして連結するため、各トラフ20,30内を浮上走行するベルト10が連結部40において擦れて摩耗してしまうことを効果的に防止することができる。
【0038】
なお、キャリア側及びリターン側トラフ20,30の連結部40において、第1及び第2フランジ60,70は、図8に示すように、例えば伸縮構造を有する蛇腹円筒状のフランジ連結部95を介して連結されていても良い。例えば、円筒管21,31の熱膨張や熱収縮が原因となって第1及び第2フランジ60,70同士を直接接続して連結することができない場合や、浮上式ベルトコンベヤ装置1の設置場所の制限などにより第1及び第2フランジ60,70同士を直接接続して連結することができない場合があるからである。フランジ連結部95を介して第1及び第2フランジ60,70同士を連結する場合、フランジ連結部95の下部内面には、ベルト10の下面11との接触による擦れなどを防止するために、図9に示すような円弧状に列をなすと共にベルト10の走行方向に回転する複数のガイドローラ96が配設されていると良い。この場合、ガイドローラ96とベルト10の下面11との当接位置は、図8に示すように、第1及び第2フランジ60,70におけるキャリア側及びリターン側トラフ20,30を構成するそれぞれの上流側の円筒管21,31の端部の下部内周面21a,31a(図示せず)を基準面nとした場合、例えばそれぞれその基準面nから高さh(h=0〜5mm)の範囲内に設定されていると最適である。
【0039】
次に、主に図3を参照してこの浮上式ベルトコンベヤ装置1の空気ダクト58を構成する側板5,6の上端部の好ましい接合位置について説明する。
ここで、以降においては、キャリア側トラフ20のベルト10の走行部分をベルト配設位置と定義し、キャリア側トラフ20の基準軸から見たベルト10の両端部間の角度(基準軸と両端部とでなす角度)をキャリア側トラフ20に対するベルト10のベルト曲げ角度βとして定義する。また、キャリア側トラフ20の基準軸から見たベルト10の両端部から側板5,6の上端部の接合位置までの角度(基準軸と接合位置とベルト端部とでなす角度)をキャリア側トラフ20の円弧部分の角度αとして定義する。これにより、キャリア側トラフ20のベルト配設位置の裏側(外周面22a)に相当する部分と側板5,6の上端部接合位置との離間距離を表現することとする。
【0040】
なお、図3に示すように、キャリア側トラフ20の基準軸から見たベルト10の左側端部(図3に向かって左側の端部)から側板5の上端部の接合位置までの角度αと、ベルト10の右側端部(図3に向かって右側の端部)から側板6の上端部の接合位置までの角度αとは、通常はほぼ同一であるため、いずれか一方の角度αを測定すればキャリア側トラフ20の基準軸から見たベルト10の両端部から側板5,6の上端部の接合位置までの円弧部分の角度αとすることが可能である。
【0041】
ここで、ベルト10の左側端部の角度αと右側端部の角度αとが大きく異なっている場合には、いずれか一方の角度αが後述する好ましい範囲内にあれば少なからず効果が期待できるが、最適形態としては両端部の角度αが好ましい範囲内にあることが条件となる。
【0042】
なお、ここでは、側版5,6の上端部をキャリア側トラフ20のベルト配設位置の裏側に相当する部分から所定距離離間した外周面22bの所定位置に接合することが最も重要な要素となる。この接合位置としては、キャリア側トラフ20の基準軸を中心として上記角度αにして10°以上離間し、且つ基準軸を通る水平面を高さ方向に超えない範囲のキャリア側トラフ20の外周面22b上にあることが最適である。以下、その理由について説明する。
【0043】
前述したように、キャリア側及びリターン側で上下一対をなす円筒状のベルト支承トラフ101,102を用いたタイプの従来の浮上式ベルトコンベヤ装置100においては、各トラフ101,102内を走行するベルト110の一部に特に大きく線状摩耗が発生するという問題がある。この線状摩耗は、通常、各トラフ101,102内を走行するベルト110がスムーズな弧を描いて湾曲していない場合に起こる現象であるため、ベルト110のトラフ指数の改善等によって改善される場合もあるが、ある特定の部位に発生する線状摩耗はこのような手法によってなんら改善されることは無かった。
【0044】
本願発明者は、この線状摩耗の原因として、キャリア側トラフ20内を走行するベルト10の配設位置と、側板5,6の上端部接合位置との関係を見出した。つまり、通常、側板5,6の上端部の接合位置は、空気ダクト58のダクト面積に基づいて計算されるため、図11に示すように、キャリア側トラフ101のベルト110の配設位置の裏側に相当する部分に側板105,106の上端部接合位置がくることが殆どである。しかし、側板5,6の上端部を溶接により接合する際には、キャリア側トラフ20が僅かに変形し、接合部分の裏側のキャリア側トラフ20の内径が一部小さくなるため、内径が小さくなった部分にベルト10の下面11が接触して摩耗していたのである。
【0045】
このような理由から、側板5,6の上端部をキャリア側トラフ20のベルト配設位置の裏側に相当する部分から所定距離離間した位置に接合することによって内径が小さくなった部分にベルト10が接触しないようにすることができ、線状摩耗の発生状況を大きく改善することができる。
【0046】
また、このような理由により生じる線状摩耗が完全に無くなるような接合位置を検討したところ、ベルト10の配設位置の裏側に相当する部分からキャリア側トラフ20の円弧部分の角度αにして少なくとも10°以上離間していれば大きく改善可能であることが分かった。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、角度αを必要以上に大きくし過ぎて側板5,6の上端部を接合する位置が、キャリア側トラフ20の基準軸を通る水平面を高さ方向に超える位置になった場合には、側板5,6としていわゆる平板を使用することができなくなる可能性があり、側板5,6を湾曲させて接合するなどの手段を構造上採らざるを得なくなる。従って、側板5,6の上端部をキャリア側トラフ20に接合する位置は、キャリア側トラフ20の基準軸を通る水平面までの高さを上限として、その高さを超えない範囲としておくことが最適である。
【0049】
次に、ベルト10のトラフ指数とベルト曲げ角度の関係について説明する。ここで、トラフ指数はベルト10の幅をxとし、その撓み量をFとした場合、比率F/xで求められるトラフ指数T(JISK6322)を指す。
まず、ベルト10の柔軟性が高くトラフ指数が0.25以上である場合にベルト反転装置50を使用した場合は、ベルト10の曲げ角度βで140°〜160°の範囲であることが好ましい。
【0050】
これは、前述した理由から、側板5,6の上端部の接合位置を、キャリア側トラフ20のベルト10の配設位置の裏側に相当する部分と円弧部分の角度αにして少なくとも10°以上離間させ、且つキャリア側トラフ20の基準軸を通る水平面を高さ方向に超えない範囲にした場合の採用できるベルト10の曲げ角度βが160°であるからである。
ベルト10の曲げ角度βを小さくし過ぎた場合に、十分な搬送能力が得られなくなることを考え合わせると、必要以上に小さくする必要もないため、概ねベルト10の曲げ角度βで140°〜160°の範囲としておくことが最適である。
【0051】
また、ベルト10のトラフ指数が0.25以上である場合に、例えばベルト反転装置50を使用しない浮上式ベルトコンベヤ装置では、ベルト10の曲げ角度βで115°〜135°の範囲であることが好ましい。なぜなら、ベルト反転装置50を使用しない場合には、ベルト10は、キャリア側トラフ20とリターン側トラフ30とでベルト10の湾曲方向が逆転するため、各トラフ20,30の下部内周面21a,31aの形状に合わせて湾曲し難くなり、ベルト10の両端部がキャリア側トラフ20及びリターン側トラフ30の内部で下部内周面21a,31aに接触し易くなるからである。従って、ベルト反転装置50を備える浮上式ベルトコンベヤ装置1のようにベルト10の曲げ角度βを160°付近まで大きくした場合には、上述したようにベルト10の両端部がキャリア側トラフ20及びリターン側トラフ30の内部で下部内周面21a,31aに接触し易くなるため、ベルト反転装置50有りの場合に比べてベルト10の曲げ角度βの好ましい範囲を若干小さく設定しておくことが最適である。
【0052】
また、トラフ指数が0.25未満のベルト10は、元々湾曲し難い性質を備えるため、ベルト反転装置50の有無にかかわらず、ベルト10の両端部がキャリア側トラフ20及びリターン側トラフ30の内部の下部内周面21a,31aに接触し易い傾向にあり、ベルト10の曲げ角度βを大きくすることができないため、ベルト10の曲げ角度βとして115°〜135°の範囲で設定しておくことが好ましい。
【0053】
これらのことから、ベルト10のトラフ指数が0.25以上であってキャリア側及びリターン側トラフ20,30でベルト10の同一面側を上面とするためのベルト反転装置50を備えた場合に、キャリア側トラフ20及びリターン側トラフ30に対するベルト10の曲げ角度βを140°〜160°の範囲とし、ベルト10のトラフ指数が0.25以上であってベルト反転装置50を備えずキャリア側及びリターン側トラフ20,30でベルト10の同一面側が上面とならない場合に、キャリア側トラフ20及びリターン側トラフ30に対するベルト10の曲げ角度βを115°〜135°の範囲とし、更にベルト10のトラフ指数が0.25未満の場合に、ベルト反転装置50の有無にかかわらずキャリア側トラフ20及びリターン側トラフ30に対するベルト10の曲げ角度βを115°〜135°の範囲に設定することは、本発明を適応するうえで最適の範囲であるといえる。
【0054】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、ベルト支承トラフの連結部において、ベルト走行方向の上流側の円筒管の下部内周面が下流側の円筒管の下部内周面よりも高くなるように連結されているため、トラフ内を走行するベルトが連結部において擦れて摩耗することは無く、ベルトの寿命を延ばし運転中に発生する振動や異音を効果的に低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係る浮上式ベルトコンベヤ装置を示す概略的な側面図である。
【図2】 図1のA−A´断面図である。
【図3】 図1のB−B´断面図である。
【図4】 この発明の一実施形態に係る浮上式ベルトコンベヤ装置の連結部を示す断面図である。
【図5】 この発明の一実施形態に係る浮上式ベルトコンベヤ装置の他の連結部を示す断面図である。
【図6】 図4の連結部におけるフランジ孔の重なりを示す図である。
【図7】 図5の連結部におけるフランジ孔の重なりを示す図である。
【図8】 この発明の一実施形態に係る浮上式ベルトコンベヤ装置の更に他の連結部を示す断面図である。
【図9】 図8のD−D´断面図である。
【図10】 従来の浮上式ベルトコンベヤ装置の概略的な構造を示す図である。
【図11】 図10のZ−Z断面図である。
【図12】 従来の浮上式ベルトコンベヤ装置における連結部を示す断面図である。
【符号の説明】
1…浮上式ベルトコンベヤ装置、20…キャリア側ベルト支承トラフ、21,31…円筒管、30…リターン側ベルト支承トラフ、40…連結部、50…ベルト反転装置、60…第1フランジ、70…第2フランジ、90…ベルト屈曲案内装置。
Claims (7)
- ベルト走行方向に複数のガス噴出孔を配設したキャリア側とリターン側とで上下一対をなす円筒状のベルト支承トラフと、前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ内を走行するループ状のベルトとを備え、前記ガス噴出孔から前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフの内面と前記ベルトの下面との間にガスを噴出させることにより前記ベルトを浮上させた状態で前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフ内を走行させる浮上式ベルトコンベヤ装置において、
前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフは、複数の円筒管を前記ベルトの走行方向に連結した構造からなり、
前記複数の円筒管は、前記キャリア側及びリターン側のそれぞれの連結部で前記ベルトの走行方向の上流側の円筒管の下部内周面が下流側の円筒管の下部内周面よりも高くなるように連結され、
前記キャリア側及びリターン側に配置される上下一対の円筒管の一端が連結される一対のフランジ孔を有する第1のフランジと、
前記一対の円筒管の一端と対向する上下一対の円筒管の一端が連結される一対のフランジ孔を有し、前記第1のフランジと連結される第2のフランジとを備え、
前記第1及び第2のフランジは、それらに連結される一対の円筒管を互いに異なる基準軸間距離を保って支持するものである
ことを特徴とする浮上式ベルトコンベヤ装置。 - 前記キャリア側及びリターン側のそれぞれの連結部における前記ベルトの走行方向の上流側の円筒管の下部内周面と下流側の円筒管の下部内周面との段差は、0.5mm〜1.0mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の浮上式ベルトコンベヤ装置。
- 前記第1及び第2のフランジの複数のフランジ孔のうち、前記キャリア側及びリターン側でそれぞれ前記ベルトの走行方向の上流側の円筒管の一端と接続されるフランジ孔は、下流側の円筒管の一端と接続されるフランジ孔の半径をrとした場合、上部内面までの半径がrで且つ下部内面までの半径がr−Δsとなるように変則円形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の浮上式ベルトコンベヤ装置。 - 前記第1及び第2のフランジは伸縮構造を有する円筒状のフランジ連結部を介して連結され、
前記フランジ連結部の下部内面には前記ベルトに沿って列をなすと共に前記ベルトの走行方向に回転する複数のガイドローラが配設されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の浮上式ベルトコンベヤ装置。 - 前記複数のガイドローラと前記ベルトの下面との当接位置は、前記第1及び第2のフランジにおける前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフを構成するそれぞれの前記上流側の円筒管の端部の下部内周面を基準として、それぞれその面から高さ0mm〜5mmの範囲内にある
ことを特徴とする請求項4記載の浮上式ベルトコンベヤ装置。 - 前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフの両側面に添設され、ベルト支承トラフの長手方向に延びる一対の側板を有し、
前記一対の側板は、
前記キャリア側ベルト支承トラフの前記ベルトの走行部分に相当する部分の外周面から離間した位置の外周面に上端部が接合されると共に、前記リターン側ベルト支承トラフの所定位置の外周面に下端部が接合され、
前記キャリア側及びリターン側ベルト支承トラフと前記一対の側板とで囲まれた空間で前記キャリア側ベルト支承トラフに配設された前記ガス噴出孔にガスを供給するための給気ダクトを形成してなる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の浮上式ベルトコンベヤ装置。 - 前記一対の側板の上端部接合位置は、前記キャリア側ベルト支承トラフの基準軸を中心として、前記上端部接合位置と前記キャリア側ベルト支承トラフ内を走行するベルトの幅方向端部とがなす角度にしてそれぞれ10°以上離間し、且つ前記基準軸を通る水平面を高さ方向に超えない範囲の前記キャリア側ベルト支承トラフの外周面にある
ことを特徴とする請求項6記載の浮上式ベルトコンベヤ装置。
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