JP4318814B2 - 金属−セラミックス複合材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属−セラミックス複合材料の製造方法に関し、特に接合して大型品を作製する金属−セラミックス複合材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、金属の高靭性、高熱伝導性とセラミックスの高剛性、低熱膨張性を兼ね備えた材料として金属−セラミックス複合材料が注目されている。この材料の製造方法としては、粉末冶金法、高圧鋳造法、真空鋳造法などが従来から知られているが、強化材であるセラミックス粉末の含有量が制御できない、あるいは大型の加圧装置が必要である、ニアネット成形が困難であるなどの理由により、いずれも満足できず、またコストもかかるものであった。これら問題を解決した金属−セラミックス複合材料の製造方法として注目されているのが、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属浸透法(PrimexTM)がある。
【0003】
この製造方法は、SiCやAlなどのセラミックス粉末で形成されたプリフォームにアルミニウム合金を接触させ、これをN雰囲気炉中で700〜900℃に加熱して溶融したアルミニウム合金を浸透させる方法であるが、これは、化学反応を利用してセラミックス粉末と溶融金属との濡れ性を改善し、機械的な加圧を行わくてもプリフォーム中に浸透できるという特徴がある。本発明によれば、プリフォームの形状の自由度が高いので、かなり複雑な形状をニアネットで作ることも可能であり、かつ高価な加圧装置も不要であるので、設備費が少なくて済み、かつニアネットシェイプに成形して加工部分を減らせるので、コスト的にも有利である。
【0004】
これら製造方法で作製された複合材料は、軽量、高剛性といった特徴に加え、さらに制振性が高いという特徴がある。そのため、最近では振動の吸収が必要な測定機器の定盤や高剛性が要求される重量物の土台などの大型品への適用が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら大型品を作製するに当たっては、セラミックス粉末を溶融したアルミニウム合金中に混ぜ、鋳型に流し込む鋳造法で製造すれば、大型品を作製することはできるが、この大型品ではセラミックス粉末の充填率が低く、十分な剛性を確保できないという問題があった。
【0006】
また、先の非加圧浸透法で製造すれば、セラミックス粉末の充填率を高くすることができるので、十分な剛性を確保した複合材料は作製できるが、その大型品を作製するには溶融金属の浸透に長時間を必要とするので、浸透不良が生じる確率が高く、またコスト的にも問題があった。
【0007】
本発明は、上述した金属−セラミックス複合材料の製造方法が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、剛性が高く浸透不良のない大型品を安価に作製することができる金属−セラミックス複合材料の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、Mg粉末を含ませた複数のプリフォームを形成し、その複数のプリフォームを組み上げて大型に成し、それにアルミニウム合金を浸透させてプリフォーム同士を接合すれば、剛性が高く浸透不良のない大型品を安価に作製できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、セラミックス粉末にMg粉末を混合し、その混合したセラミックス粉末で30体積%以上の粉末充填率を有する複数個のプリフォームを形成し、それら形成したプリフォーム同士の表面を接触させて所望の形状に組み上げた後、プリフォーム同士が接触している接合面及びプリフォームとアルミニウム合金が接触する面以外の面にカーボンスラリーを塗布し、その組み上げたプリフォームに溶融したアルミニウム合金を窒素中で非加圧で浸透させることにより、アルミニウム合金で浸透されたプリフォーム同士を接合することを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法とすることを要旨とする。以下さらに詳細に説明する。
【0010】
この製造方法は、30体積%以上の粉末充填率を有するプリフォームを形成することで高い剛性を確保することができ、そのプリフォーム中にMg粉末を含ませることで溶融されたアルミニウム合金の浸透時間を短縮すると同時に浸透不良をなくすことができ、その形成された複数のプリフォームを所望の形状に組み上げることで大型化することができ、その組み上げたプリフォーム中に溶融されたアルミニウム合金を浸透させることでアルミニウム合金で浸透されたプリフォーム同士を接合することができ、その結果、剛性の高い浸透不良のない金属−セラミックス複合材料の大型品を安価に作製することができる製造方法となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法をさらに詳しく述べると、先ずセラミックス粉末としてSiC、Al、AlNなどのセラミックス粉末を用意する。これらセラミックス粉末に浸透促進剤としてMg粉末を添加し、そのセラミックス粉末で複数個のプリフォームを形成する。
【0012】
プリフォームの形成方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、セラミックス粉末に水あるいはセラミックス粉末と反応を起こさない有機溶媒を加え、これにバインダーを加え混合してスラリーとし、フィルタープレスにより形成する方法や、セラミックス粉末にバインダーを加え、混合した粉末をプレスにより形成する方法などが挙げられる。
【0013】
次いで、形成した複数個のプリフォームをその接合面を接触させて組み上げる。接合面は表面処理をしなくても構わないが、平面度をよくして接触を良好にするために、また複雑形状も可能な所望の形状に組み上げるために機械加工を行っても差し支えない。接合面以外はアルミニウム合金の染み出しを抑えるためにカーボンスラリーを塗布するのが好ましい。
【0014】
組み上げたプリフォームにアルミニウム合金を接触させ、それをN雰囲気炉中で700〜900℃の温度に加熱処理することによってアルミニウム合金を溶融し、浸透させると同時にアルミニウム合金で浸透されたプリフォーム同士を接合することにより、金属−セラミックス複合材料から成る大型品を作製する。
【0015】
以上の方法で金属−セラミックス複合材料を作製すれば、剛性が高く浸透不良のない大型の複合材料を安価に作製することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
(実施例1)
(1)金属−セラミックス複合材料の作製
強化材として市販のSiC粉末A(信濃電気精錬社製 GC#180、平均粒径66μm)とSiC粉末B(信濃電気精錬社製 GC#800、平均粒径14μm)とを6:4で混合し、その粉末100重量部に、Mg粉末(山石金属社製#100、平均粒径125μm)を3重量部加え、これにさらにバインダーとしてPVA(ポリビニルアルコール、積水化学社製)を5重量部加え、混合した後、それを金型に充填して25kg/cmの圧力でプレスして150×200×t50mmのプリフォームを4個形成した。
【0018】
得られたプリフォームを4段に重ね、150×200×t200mmの組み上げたプリフォームを形成し、その側面と下面にアルミニウム合金の染み出しを抑えるためにカーボンスラリーを塗布した後、その上面にプリフォーム重量と同量のAl−10Si−5Mgを組み合わせて電気炉に入れ、N気流中で825℃の温度で24時間加熱処理し、冷却して複合材料を作製した。
【0019】
(2)評価
得られたプリフォームの寸法、重量よりセラミックス粉末の充填率を算出した。その結果、50体積%であった。また、得られた複合材料から3×4×40mmの試験片を切り出し、共振法でヤング率を測定した。さらに、得られた複合材料を切断し、その切断面を目視観察し、アルミニウム合金の浸透状態及び接合面の不具合状態を調べた。それらの結果を表1に示す。
【0020】
(実施例2〜6)
実施例2では、形成するプリフォームの大きさを400×400×t25mmとし、これらを2段組み上げて400×400×t50mmの組み上げたプリフォームとした他は、実施例3では、形成するプリフォームの大きさを150×100×t50mmと、50×100×t50mmとし、これらをゲタ状に組み上げて図1に示す組み上げたプリフォームとした他は、実施例4では、プリフォームの大きさを200×100×t35mmと、100×100×t35mmとし、これらをレンガ状に組み上げて図2に示す組み上げたプリフォームとした他は、実施例5では、用いるセラミックス粉末をAl粉末(太平洋ランダム社製LA#400、平均粒径30μm)とした他は、実施例6では、用いるセラミックス粉末をAlN粉末(東洋アルミニウム社製 R15、平均粒径15μm)とした他は実施例1と同様に複合材料を作製し、評価した。それらの結果も表1に示す。
【0021】
(比較例1〜3)
比較のために比較例1では、プリフォーム中にMg粉末を含まないこととした他は実施例1と同様に、比較例2では、プリフォーム中にMg粉末を含まないこととした他は実施例4と同様に、比較例3では、SiC粉末(GC#180)にAl粉末(平均粒径50μm)を加えてSiC粉末の充填率を25体積%にした他は実施例1と同様に複合材料を作製し、評価した。その結果も表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0004318814
【0023】
表1から明らかなように、実施例では全て未浸透部分のない、接合不良部分のない、剛性の高い大型の複合材料となっていた。このことは、本発明の方法で複合材料を作製すれば、剛性が高く浸透不良のない大型の複合材料とすることができることを示している。
【0024】
これに対して、比較例1では、プリフォーム中にMgを含んでいないので、浸透時間を72時間と延長しても浸透させた面より100mmの高さしか浸透せず、また浸透された部分にも未浸透部分が多数見られた。また、比較例2では、やはりプリフォーム中にMg粉末を含んでいないので、浸透させた面より50mmの高さしか浸透せず、また浸透された部分にも未浸透部分が多数見られた。さらに、比較例3では、SiC粉末の充填率が低すぎたので、ヤング率が大幅に低下していた。
【0025】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の金属−セラミックス複合材料であれば、剛性の高い、浸透不良のない大型の複合材料とすることができるようになった。このことにより、剛性の高い複合材料の大型品を所望の形状に問題なく安価に提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で述べる組み上げたプリフォームを示す。
【図2】実施例4で述べる組み上げたプリフォームを示す。

Claims (1)

  1. セラミックス粉末にMg粉末を混合し、その混合したセラミックス粉末で30体積%以上の粉末充填率を有する複数個のプリフォームを形成し、それら形成したプリフォーム同士の表面を接触させて所望の形状に組み上げた後、プリフォーム同士が接触している接合面及びプリフォームとアルミニウム合金が接触する面以外の面にカーボンスラリーを塗布し、その組み上げたプリフォームに溶融したアルミニウム合金を窒素中で非加圧で浸透させることにより、アルミニウム合金で浸透されたプリフォーム同士を接合することを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法。
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